第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

1 捜査体制の整備

(1)組織・人員の効率的な運用と捜査員の増強・育成

 犯罪情勢の悪化に伴い、捜査すべき事件の数は増加し、その内容も複雑化・高度化している。これに対し、警察では、業務の合理化を徹底するとともに、限られた組織・人員の効率的な運用に努めているほか、効率的運用や合理化を進めてもなお不足する捜査員の増強を行い、捜査体制を強化している。また、優れた人材を登用し、その知識及び能力を伸ばすため、都道府県警察における捜査員としての任用予定者に対する教育訓練、警察大学校等における専門的な教育訓練等を施している。
 
 図1-32 捜査体制の整備
図1-32 捜査体制の整備

(2)初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等

 事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。
 警察では、自動車の機動力をいかした捜査活動を行うため、機動捜査隊を編成し、事件発生時に現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行っているほか、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等を編成し、現場鑑識活動を強化するとともに、関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。
 
 機動捜査隊
機動捜査隊
 
 現場鑑識活動
現場鑑識活動

(3)広域捜査力の強化

 通信手段や交通手段の発達等を背景に犯罪が広域化したことから、多くの犯罪捜査では、複数の都道府県にまたがって活動する必要が生じている。このため、都府県警察の単位を越えて広域的に捜査を行う広域捜査隊の編成が進められているほか(平成18年末現在、全国12地域で広域捜査隊の編成に関する協定を締結)、複数の都道府県警察による合同捜査や共同捜査を積極的に推進している。
 また、航空機事故等に関する特別の専門的知識等を有する職員をあらかじめ専門捜査員として登録し、他の都道府県で発生した事案にも活用することができるようにしている。
 さらに、警察庁では、複数の管区警察局の管轄地域で発生している社会的影響の大きい凶悪又は特異な事件で複数の地域にまたがり組織的に捜査を行う必要がある事件を警察庁指定事件として指定し(19年2月までに24事件を指定)、都道府県警察と捜査会議を開催し、捜査方針を協議するほか、関係情報を収集・分析するなど、事件の解決に向けて捜査活動を支援している。
 
 図1-33 広域捜査
図1-33 広域捜査

(4)国民からの情報提供の促進

 犯人を検挙し、事件を解決するためには、犯罪捜査に対する国民の理解と協力が不可欠である。そこで、警察では、都道府県警察のウェブサイトを活用して情報提供を呼び掛けるほか、様々な媒体を活用して、事件発生時の速やかな通報、聞き込み捜査に対する協力及び事件に関する情報の提供を広く国民に呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見、検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う公開捜査を行っている。


コラム2 公的懸賞金の導入

 近年、聞き込み捜査等の「人からの捜査」が困難化していることなどをも背景として、逃走中の重要犯罪被疑者の逮捕や、被疑者不詳の未解決重要事件の解決のため、広く国民から被疑者検挙に資する情報提供を促進し、重要犯罪等の検挙の徹底を図ることを目的として、警察庁が主体となり経費を負担して懸賞広告を実施する捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)を平成19年度から導入した。同制度の対象となる事件等については、警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp)等で広報している。
 
公的懸賞金の公報サイト


(5)ち密かつ適正な捜査の推進

 平成14年に富山県で発生した強姦及び同未遂事件につき、当時富山県警察が逮捕した者が服役を終えた後、別に被疑者がいることが判明したため、19年2月、検察官から再審請求がなされた。また、同月、15年に行われた鹿児島県議会議員選挙に関して鹿児島県警察が捜査した公職選挙法違反事件につき、判決において被告人らの自白の信用性が否定され、被告人全員に対し無罪が言い渡された(19年3月、判決確定)。
 これらの社会的反響の大きな無罪判決等により、警察による捜査における取調べの在り方等について、厳しい指摘がなされている。警察では、国民の信頼を取り戻すとともに、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維持するという責務を全うするため、捜査員に対する指導・教育を強化して、供述内容等の吟味、裏付け捜査の徹底等によるち密かつ適正な捜査を強力に推進し、国民の信頼の回復に努めることとしている。

 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

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