第4章 組織犯罪対策 

3 総合的な薬物対策

(1) 政府の薬物対策
 薬物問題は治安の根幹にかかわる重要な問題であり、政府一体となった対策が進められている。薬物乱用対策推進本部(本部長:内閣総理大臣、副本部長:国家公安委員会委員長、法務大臣、財務大臣等)は、平成15年7月、第三次覚せい剤乱用期の早期終息を図るため、新たに「薬物乱用防止新五か年戦略」(注)を策定するとともに、近年、水際における薬物の押収量が増加しており、水際対策が重要となっていることから、「薬物密輸入阻止のための緊急水際対策」を策定し、これらに基づく総合的な薬物対策を推進している。


注:「第三次覚せい剤乱用期の一刻も早い終息に向けて総合的に対策を講ずるとともに、世界的な薬物乱用問題の解決に我が国も積極的に貢献する」ことを基本目標に、青少年対策、密売対策、水際対策・国際協力、再乱用防止対策を目標として掲げている。

 
(2) 警察の薬物対策
 [1] 供給の遮断
 我が国で乱用されている薬物のほとんどが海外から流入していることから、これを水際で阻止するため、税関、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、外国の取締機関等との情報交換を緊密に行っている。
 また、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、コントロールド・デリバリー等の効果的な捜査手法を活用した捜査を推進しているほか(平成16年中は78件のコントロールド・デリバリーを実施)、薬物犯罪収益のはく奪による資金面からの打撃を与えるため、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)の規定に基づく薬物犯罪収益の隠匿、収受及び仮装(マネー・ローンダリング)の摘発、薬物犯罪収益の没収・追徴の徹底等の対策を推進している。

 
表4-13 麻薬特例法違反事件数の推移(平成7~16年)

表4-13 麻薬特例法違反事件数の推移(平成7~16年)
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 [2] 需要の根絶
 薬物乱用は、乱用者の精神、身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあり、社会の安全を脅かすものである。
 薬物の需要の根絶を図るためには、社会全体に、薬物を拒絶する規範意識が堅持されていることが重要である。警察では、末端乱用者の検挙を徹底するとともに、広報啓発活動を行い、薬物の危険性・有害性についての正しい知識の周知を図っている。

 
表4-14 薬物常用者(注)による犯罪の検挙人員(平成15、16年)

表4-14 薬物常用者(注)による犯罪の検挙人員(平成15、16年)
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注:薬物常用者とは、覚せい剤、麻薬、大麻、あへん、向精神薬を常用している者及びトルエン等の有機溶剤又はこれらを含有するシンナー、接着剤等を常習的に乱用している者をいい、中毒症状にあるか否かを問わない。

 
大学生に対する薬物乱用防止講演会
大学生に対する薬物乱用防止講演会

 
第10回アジア・太平洋薬物取締会議
第10回アジア・太平洋薬物取締会議

 [3] 国際協力の推進
 薬物の不正取引は、薬物犯罪組織により国境を越えて行われており、一国だけでは解決できない問題である。主要国首脳会議、国際連合等の国際的な枠組みの中でも、地球規模の重大な問題として、その解決に向けた取組みが進められている。
 警察では、捜査員の相互派遣、国際会議への参加を通じた情報交換等の国際捜査協力のほか、関係国に対する薬物捜査に関する技術支援を推進している。
 16年9月から10月にかけて、独立行政法人国際協力機構(JICA)と共催で、アジア、中南米等の16か国から薬物取締機関の上級幹部を招へいし、薬物取締りに関する情報交換と日本の捜査技術の移転を図るための薬物犯罪取締セミナーを開催した。17年2月には、25か国、2地域、2国際機関の参加(オブザーバーを含む。)を得て、第10回アジア・太平洋薬物取締会議を東京で開催し、国際共同捜査の効果及び必要性等について討議を行った。

 第3節 薬物銃器対策

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