第4章 組織犯罪対策 

2 薬物犯罪組織の動向

(1) 密輸入事犯の現状
 平成16年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は353件、検挙人員は404人と、それぞれ前年より39件(12.4%)、39人(10.7%)増加した。中でも、覚せい剤の密輸入事犯が急増し、件数、人員共に倍増した。我が国で乱用される薬物のほとんどは、国際的な薬物犯罪組織の関与の下に海外から密輸入されており、最近では、航空機を利用して手荷物品の中に隠匿したり、旅客の身体に巻き付けたりする事犯のほか、国際郵便・国際宅配便等の航空貨物便を利用した小口の密輸入事犯が急増している。
 大量押収(覚せい剤及び大麻は1キログラム以上、MDMA(他の薬物との混合錠剤を含む。)は1,000錠以上の押収をいう。)事件での主な仕出地は、覚せい剤では台湾、香港、乾燥大麻ではフィリピン、南アフリカ、大麻樹脂ではインド、香港、MDMAではオランダ、カナダであった。

 
スモークサーモンに偽装して密輸された覚せい剤
スモークサーモンに偽装して密輸された覚せい剤

 
バッグ内に隠匿して密輸された覚せい剤及びMDMA
バッグ内に隠匿して密輸された覚せい剤及びMDMA

 
(2) 不正取引に深くかかわる暴力団
 平成16年中の覚せい剤事犯の検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は44.4%であり、依然として覚せい剤事犯に暴力団が深く関与している状況がうかがえる。

 
図4-5 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成7~16年)

図4-5 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成7~16年)
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事例
 山口組傘下組織幹部(48)ら8人は、中国の丹東港から横浜港に入港したパナマ船籍貨物船のコンテナ床部に、覚せい剤34.5キログラムを隠匿して密輸入した。16年8月、覚せい剤取締法違反で逮捕した(警視庁、神奈川、愛知)。

 
(3) 来日外国人による薬物事犯
 [1] イラン人薬物密売組織
 平成16年中のイラン人の覚せい剤事犯検挙人員は74人と、前年より35人(32.1%)減少した。このうち、営利犯(営利目的所持及び営利目的譲渡をいう。)は33人と44.6%を占め、他の国籍・地域の者と比べると著しく高率であり、依然としてイラン人が覚せい剤の密売に深くかかわっている状況がうかがえる。最近では、繁華街等での無差別的な密売は減少したものの、携帯電話を利用して客に接触場所を指定する方法による密売が多数敢行されている。

 
図4-6 来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員に占める営利犯(平成16年)

図4-6 来日外国人による覚せい剤事犯の検挙人員に占める営利犯(平成16年)
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 [2] 国籍・地域別の検挙状況
 16年中の来日外国人による薬物事犯検挙人員は624人と、前年より234人(27.3%)減少した。このうち、覚せい剤事犯は374人(前年比160人減)、麻薬及び向精神薬事犯は81人(前年比50人減)、大麻事犯は161人(前年比24人減)と、いずれも前年より減少し、あへん事犯は8人と、前年と同数であった。
 国籍・地域別の検挙状況をみると、ここ数年検挙人員が多かったイランが89人(前年比46人減)、フィリピンが68人(前年比62人減)、ブラジルが99人(前年比22人減)と、それぞれ前年より減少する一方で、カナダが24人(前年比13人増)、台湾が20人(前年比11人増)と、それぞれ前年より増加しており、検挙者の国籍・地域が多様化している。

 第3節 薬物銃器対策

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