第3章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

9 知的財産権侵害事犯、環境事犯等

(1) 知的財産権侵害事犯
 平成16年中の知的財産権侵害事犯の検挙件数は1,233件(前年比444件増)、検挙人員は640人(前年比233件増)であった。
 偽ブランド事犯(商標法違反)では、仕出国が判明した押収品の大半は、韓国と中国から国際郵便、手荷物等として密輸入されていた。販売形態は、街頭販売が約4割、店舗販売が約4割、インターネット・オークションが約2割であった。街頭販売事犯では、来日外国人によるものが約7割を占めた。
 海賊版事犯(著作権法違反)では、会社員や学生等の一般のパソコン利用者が海賊版のCDやDVDを作成し、販売する事犯が目立った。
 警察庁では、韓国と中国から大量の偽ブランド品が密輸入され、また、両国で知的財産権侵害の被害を受ける日本企業が増加していることから、両国の捜査機関に対し国内での取締り強化を要請するとともに、両国の捜査機関と情報交換を行うなど連携強化を図っている。
 また、警察では、権利者と連携して、知的財産権侵害事犯の取締りを推進しているほか、権利者が外国で行う訴訟活動の支援、不正商品対策協議会(注)と連携した知的財産の保護及び不正商品の排除のための広報啓発活動を推進している。


注:昭和61年、不正商品の排除及び知的財産の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等の法執行機関に対する働き掛け等を行っている。

 
表3-10 知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成12~16年)

表3-10 知的財産権侵害事犯の法令別検挙状況の推移(平成12~16年)
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表3-11 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成12~16年)

表3-11 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成12~16年)
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事例1
 無職の男(38)とその妻(36)、弟(34)は、16年3月から6月にかけて、著作権者に無断で複製した人気アニメーション映画のDVDを、インターネット・オークションを利用して販売した。同年10月、著作権法違反で逮捕した(富山)。

事例2
 16年4月、東京都内で自動車に販売目的で偽ブランド品を積んでいた無職の男(53)を商標法違反で逮捕した。その後の捜査の結果、同年9月までに、密輸グループの韓国人ら7人を同法違反で逮捕し、偽ブランド品約9,600点を押収した(警視庁)。

 
押収した偽ブランド品
押収した偽ブランド品

事例3
 16年5月に不正商品対策協議会が開催した「不正商品防止キャンペーン「ほんと?ホント!フェアin京都」」では、警察庁職員が、最近の検挙事例を交えながら、司会者との対話形式で知的財産権保護の重要性や取締りの状況等について説明を行った。

 
ほんと?ホント!フェアin京都
ほんと?ホント!フェアin京都

事例4
 17年3月に不正商品対策協議会が開催した「アジア知的財産権シンポジウム2005」では、警察庁職員が、最近の知的財産権侵害事犯の取締り状況について講演を行った。

 
(2) 環境事犯
 [1] 廃棄物事犯
 警察では、環境を破壊する犯罪のうち、特に、廃棄物の不法投棄事犯等を重点取締り対象とし、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を中心に取締りを強化し、排出事業者の責任を厳しく追及している。また、関係機関に必要な情報を提供して積極的な行政措置を採ることができるよう支援し、環境被害の拡大防止と早期の原状回復を促している。
 近年、軽油引取税を脱税するため軽油を密造する者が後を絶たないが、平成16年中は、これに伴い生成される硫酸ピッチやスラッジの不適正処分事犯を21事件、171人、27法人検挙した。また、産業廃棄物の処理責任を負っている排出事業者を不法投棄、委託違反等で検挙した事件は320事件であった。いずれも10年の統計開始以降最多である。こうした産業廃棄物事犯のうち、行政指導を無視して行われたものは78事件(前年比26件増)であった。

 
表3-12 廃棄物事犯の検挙事件数の推移(平成12~16年)

表3-12 廃棄物事犯の検挙事件数の推移(平成12~16年)
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事例1
 茨城県の無許可廃棄物処理業者(54)らは、茨城県の再三の行政指導を無視して、15年10月から16年4月ころにかけて、自社の廃棄物処分場で、東京都、神奈川県等の解体業者から受け入れた廃プラスチック類等約7万3,000立方メートルを不法に処分した。16年9月までに、処理業者、排出事業者等20法人、34人を廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で検挙した(警視庁、茨城、神奈川)。

 [2] 絶滅危惧種等の野生動植物に係る事犯
 警察では、国際的に商取引が規制されている希少野生動植物の密輸入や国内での違法取引の取締りを行っている。16年中の絶滅危惧種等の野生動植物に係る事犯の検挙件数は20件、検挙人員は15人であった。

事例2
 愛知県の特定非営利活動法人(NPO)代表(52)ら3人は、11年ころから16年2月にかけて、県内の川原等で鷹狩りをし、オオタカ2羽及びハヤブサ3羽を捕獲した。16年4月、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律違反で逮捕した(愛知)。

 
保護されたオオタカ
保護されたオオタカ

 
(3) 保健衛生事犯
 近年、食品の安全や健康、減量等への国民の関心が高まる中、食品の産地等を虚偽表示する事犯やインターネットを利用する未承認医薬品の無許可販売事犯等が発生している。平成16年中の保健衛生事犯の検挙件数は519件(前年比192件増)であった。

 
表3-13 保健衛生事犯の検挙状況(平成15、16年)

表3-13 保健衛生事犯の検挙状況(平成15、16年)
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事例1
 宗教団体関係者(36)ら20人は、15年2月から16年4月にかけて、医薬品販売業の許可がないのに、その有効成分を偽って、アレルギー皮膚炎の治療薬と称した薬約2,900個を販売した。16年8月までに薬事法違反(無許可販売)及び詐欺罪で逮捕した(警視庁)。

事例2
 柔道整復師(52)ら21人は、あん摩マッサージ指圧師の免許を持たない中国人就学生(26)らを雇用して、東京都の19店舗で無免許営業を行っていた。16年7月までに、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律違反で逮捕した(警視庁)。

 
(4) 諸法令違反
 例年、無線局を不法に開設する事犯が多発しており、平成16年中は電波法違反事件を1,202件(前年比301件増)検挙した。また、密漁に係る漁業法違反事件を285件(前年比65件増)、水産資源保護法違反事件を208件(前年比90件増)検挙した。

 
表3-14 主な諸法令違反の検挙状況(平成15、16年)

表3-14 主な諸法令違反の検挙状況(平成15、16年)
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事例1
 16年5月、沿岸の海域において潜水用具等を使用して、あわび、なまこ等を密漁し、漁業権を侵害した住吉会傘下組織組員(39)ら4人を漁業法違反及び県海面漁業調整規則違反で逮捕した(青森)。

事例2
 16年10月、有料成人向け番組提供業者(52)ら3人は、相手と通話することなく極めて短い電話をかけて、自分の電話番号を相手の電話機に表示させる、いわゆるワン切り発信により、他人の携帯電話に有料成人向け番組に接続することのできる電話番号を送信した。同年12月、有線電気通信法違反で逮捕した(山形)。

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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