第5章 組織犯罪対策の推進 

(2) 警察の薬物対策

 警察では、政府の薬物対策の中核を担う機関として、薬物問題を治安の根幹に関わる重要な問題ととらえ、薬物の供給の遮断及び需要の根絶を目指し、国際間協力を図りながら、総合的な薬物対策を推進している。

 〔1〕 供給の遮断
 我が国で乱用されている薬物のほとんどが海外から流入していることから、これを水際で阻止するため、税関、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、外国の取締り当局等との情報交換を密接に実施している。
 また、薬物犯罪組織の壊滅を図るため、コントロールド・デリバリー等の効果的な手法を積極的に活用した捜査を推進しているほか(平成15年中は63件のコントロールド・デリバリーを実施)、薬物犯罪収益のはく奪による資金面からの打撃を与えるため、麻薬特例法による薬物犯罪収益の隠匿、収受及び仮装(マネー・ローンダリング)の事件化、薬物犯罪収益の没収・追徴の徹底等の対策を強力に推進している。

 
表5-14 麻薬特例法違反事件数の推移(平成6~15年)

表5-14 麻薬特例法違反事件数の推移(平成6~15年)
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 〔2〕 需要の根絶
 薬物乱用は、乱用者自身の精神、身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあり、社会の安全を脅かすものである。このため、警察では、薬物の需要の根絶を図るために、末端乱用者の検挙を徹底するとともに、様々な広報啓発活動を展開している。

 
表5-15 薬物に起因する事件の検挙人員(平成14、15年)

表5-15 薬物に起因する事件の検挙人員(平成14、15年)
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 〔3〕 国際協力の推進
 薬物の不正取引は、薬物犯罪組織により国境を越えて行われており、一国のみでは解決できない問題であることから、サミット、国際連合等の国際的な枠組みの中でも、地球規模の重大な問題として、その解決に向けた取組みがなされている。
 警察では、薬物捜査に関する技術支援、関係国との捜査員の相互派遣、各種国際会議への参加を通じた情報交換等の国際捜査協力を積極的に推進している。
 国際協力機構(JICA)が14年から実施している、タイ及びその周辺国への薬物分析技術の移転等を柱とする「薬物対策地域協力プロジェクト」に、薬物取締り等の専門家を派遣しているほか、インドネシアとカンボジアへも専門家を派遣し、我が国の薬物対策に関する技術の移転を図っている。また、15年10月に、アジア等の14か国から薬物取締機関の上級幹部を招へいし、薬物取締り施策の比較研究等を行う「薬物犯罪取締セミナー」を開催したほか、16年2月には、27か国、2地域、2国際機関の参加(オブザーバーを含む。)を得て、「第9回アジア・太平洋薬物取締会議」を東京で開催し、覚せい剤等の薬物情勢及び国際犯罪組織に対する取締り状況について討議、意見交換を行った。

 
第9回アジア・太平洋薬物取締会議

第9回アジア・太平洋薬物取締会議

 第3節 薬物銃器対策

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