第3章 生活安全の確保と警察活動 

(7) 防犯システムたる生活安全産業の育成

 〔1〕 防犯システムとしての警備業の育成
 警備業の業務は、施設警備を始め、雑踏警備、交通誘導警備、現金輸送警備、ボディガード等の幅広い分野に及び、ホーム・セキュリティシステム等に係る機械警備も普及拡大するなど、警備業は、民間のセキュリティサービスとして定着しており、平成15年末現在の警備業者数は9,131業者、警備員数は459,305人に達している。

 
図3-3 警備業者・警備員数の推移(平成6~15年)

図3-3 警備業者・警備員数の推移(平成6~15年)
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 15年12月に犯罪対策閣僚会議が策定した「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」では、「警備員の検定・教育制度の活性化等により、警備業務の種別に応じた専門的な知識及び能力の向上を図る。また、緊急地域雇用創出特別交付金(基金)の活用等により、警備業者等による防犯パトロール事業を推進する。」とされるなど、警備業の活用は、政府の犯罪抑止対策の一環として位置付けられるようになっている。
 また、13年の米国における同時多発テロ事件以降、我が国に対する国際テロの脅威が切実な問題となっている中、空港や港湾、鉄道といった重要施設の警備に警備業者が活用され、テロ防止対策の一翼も担っている。
 このような状況を背景として、16年5月、第159回国会で警備業法の一部を改正する法律が成立した。この法律は、警備員の知識及び能力の向上並びに警備業務の依頼者の保護を内容とするものであり、国民や事業者の自主防犯活動を補完し、代行する重要な役割を担っている警備業のより一層の適正化を図ろうとするものである。

 〔2〕 古物商・質屋を通じた盗品の流通防止と被害回復
 古物営業法及び質屋営業法は、古物商、質屋に盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物(以下「盗品等」という。)が持ち込まれる蓋然性が高いことに着目して、これらの事業者に取引の相手方の確認や不正品の疑いがある場合の申告、取引の記録等を義務付けることによって、盗品等の市場への流入を阻止するとともに、いったん流入した盗品等を発見するなどして、窃盗その他の犯罪の防止及びその被害の回復を図ることとしている。警察では、犯罪情勢や取引実態に配意しつつ、その適正な施行に努めている。
 流通分野における犯罪を抑止するためのセキュリティシステムの形成には、盗品等に関する情報の交換・共有を始めとする業界団体の自主的な取組みが重要であるため、警察では、関係団体等との緊密な連携の下、古物商、質屋等に対する啓発活動に努めている。
 古物商や古物市場主には、古物営業法によって、営業所又は古物市場の管理者に対してその取り扱う古物が不正品であるかを判断するために必要な一定の知識、技術又は経験を得させるよう努める義務が課せられており、古物商等の関係団体は、管理者を対象とした講習を実施しているが、こうした講習は、古物商等の管理者に古物営業法の義務等について再認識させる貴重な機会であり、警察では、講師の派遣等の協力を行っている。

 〔3〕 防犯設備関連業界との連携
 国民の自主的な防犯活動をより効果的なものとするためには、優良な防犯設備の開発・普及が有効であることから、警察では、防犯設備に関わる団体・事業者等の支援に努めている。
 (社)日本防犯設備協会が15年12月に実施した「防犯設備機器に関する統計調査」によると、防犯センサーや防犯カメラ等の防犯設備関連の市場規模は年々拡大しており、12年度に1兆円の大台に乗り、14年度には約1兆1,190億円に達した。防犯に関する国民の関心の高まりから、防犯設備の需要は、今後さらに拡大すると予想される。警察では、良質な防犯設備の供給を促すため、犯罪情勢に関する情報や多発する特異な侵入手口の内容とその手口に弱い建物部品の種類といった分析結果等を開発者に提供するなどの支援策を講じている。
 こうした中、(社)日本防犯設備協会において運用されている防犯設備士、総合防犯設備士は、防犯設備の設計、施工、維持管理に関する専門的な知識・技能を有する専門家として活躍しており、今後の防犯対策に大きな役割を担う者として期待されている。警察では、環境設計活動、防犯相談、防犯診断等の際に、防犯設備士等の支援を求めることができるよう協力体制の確保に努めるとともに、国民のニーズに的確にこたえていけるよう、防犯設備士等に対する研修の充実等を働き掛けている。

 〔4〕 その他
 探偵社、興信所等の調査業については、悪質な業者による不適正な営業活動が後を絶たないことから、警察では、悪質な調査業者の取締り等を行うことによって、調査業に係る業務の適正化に取り組んでいる。

 第1節 街頭犯罪・侵入犯罪を抑止するための総合対策

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