第3章 生活安全の確保と警察活動 

(6) 犯罪類型に応じた防犯対策の推進

 〔1〕 乗り物盗対策とひったくり対策

  ア 自動車盗対策
 警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省と民間16団体から成る「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、「自動車盗難等防止行動計画」(平成14年1月)を策定し、イモビライザ等を備えた盗難防止性能の高い自動車の普及、自動車の使用者に対する防犯指導及び広報啓発、盗難自動車の不正輸出防止対策等を推進している。
 16年4月、同チームは、盗難被害が多発している車種やイモビライザの効果の検証結果を公表するとともに、自動車盗難等防止行動計画を改訂し、イモビライザ等盗難防止装置の装着義務付けの検討やナンバープレート封印の改良等による盗難自動車の流通阻止に関する諸対策等を新たに推進することとした。

  イ オートバイ盗・自転車盗対策
 オートバイ盗の防犯対策として、製造業者に車両盗難の実態や手口に関する情報を提供することなどにより、メインスイッチ部(キー部分)の破壊防止対策の高度化を支援するとともに、大型自動二輪車等に装備されつつあるイモビライザ等盗難防止装置の普及を促進している。また、販売店等の協力を得ながら利用者に対する広報啓発活動を行い、二重ロックの励行やグッドライダー防犯登録制度の普及を促進している。
 さらに、自転車盗の防犯対策として、利用者に施錠の励行や防犯登録を呼び掛けているほか、関係業界に対し、破壊されにくい強じんな錠の開発、改善等の要請を行っている。

  ウ ひったくり対策
 ひったくり事件の多発を受けて、警察では、その発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止のための鞄の携行の方法、通行する道路の選び方等について重点的に指導啓発を行っている。また、防犯協会や自転車関係業界と協力して、自転車の前かごに取り付けるひったくり防止ネットや防犯ブザー等の防犯機器の普及を促進している。

 
ひったくり防止の広報チラシ

ひったくり防止の広報チラシ

 〔2〕 侵入犯罪に係る防犯対策

  ア 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律の施行
 国民に多大な不安を与えている、ピッキング用具を使用した侵入犯罪やドリルを使用したサムターン回しによる侵入犯罪の発生の防止等に資するため、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律が15年6月に制定され、一部の規定を除き、15年9月に施行された。同法により、正当な理由によらない特殊開錠用具の所持及び指定侵入工具の隠匿携帯が禁止され、15年中は、同法違反で227件を検挙した。
 16年1月には、指定建物錠の防犯性能の表示に関する同法の規定が施行され、16年4月に、シリンダー錠等について、一定の条件下でのピッキングによる解錠に要する時間等、製造・輸入業者が表示すべき事項や、その表示の方法等に関する統一的なルールが定められ、それに基づく表示制度の運用が開始された。これにより、市場原理の下で、防犯性能の高い錠前の普及が促進されることが期待される。

  イ 防犯性能の高い建物部品の開発・普及の促進
 侵入手段の巧妙化に対処するためには、ドア、窓、シャッター等の建物部品の防犯性能を高めることが重要である。警察庁は、14年11月、国土交通省、経済産業省及び建物部品関連の民間団体等とともに「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」を開催した。16年4月には、15年度に実施した建物部品の防犯性能試験の結果に基づき、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品15種類、計約2,300品目を登載した「防犯性能の高い建物部品目録」を公表した。16年5月には、この目録に登載された建物部品に共通して使用する標章である「CPマーク」(Crime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの)を制定し、防犯性能の高い建物部品の普及に努めている。

 
CPマーク

CPマーク

 〔3〕 犯罪に遭いやすい対象に係る防犯対策

  ア 金融機関
 警察は、金融機関の防犯体制や店舗等の構造、防犯設備等に関して満たすべき防犯基準を定め、関係機関・団体に対して指導するとともに、防犯訓練や警察官の巡回を実施している。

 
金融機関における防犯訓練

金融機関における防犯訓練

  イ コンビニエンスストア・スーパーマーケット
 深夜(午後10時から翌午前7時)におけるコンビニエンスストア・スーパーマーケットを対象とした強盗事件が、都市部を中心に多発していることから、警察庁では、15年12月、防犯体制、現金管理、店舗の構造等について定めた「深夜スーパーマーケットの防犯基準」を見直して「コンビニエンスストア・スーパーマーケットの防犯基準」を策定し、新規採用従業員に対する指導の強化、現金管理の徹底等を盛り込み、事業者に対する防犯指導を推進している。
 他方、深夜に従業員が稼働しているコンビニエンスストアは、地域安全活動の一翼を担うこともできることから、警察では、自主防犯対策の強化、未成年者への酒類・たばこの販売や少年の深夜はいかい等への対応等について協力を求めるとともに、子ども110番の家や防犯連絡所に指定するなど、コンビニエンスストアの地域安全活動への参画(セーフティステーション化)を推進している。

  ウ タクシー
 タクシーを対象とした強盗事件が、都市部を中心に多発していることから、警察庁では、「タクシー強盗防犯対策会議」を開催し、関係機関・団体の協力を得て、16年3月、防犯責任者の指定・任務、乗務員の平素の心構え・身の危険を感じたときの対応要領、車両に備えるべき防犯設備等について定めた「タクシーの防犯基準」を策定し、事業者に対する防犯指導を推進している。

  エ 貴金属店・チケット店
 15年中、貴金属店・チケット店を対象とする強盗及び窃盗事件は680件発生した。警察庁では、こうした犯罪の発生と被害の拡大を防止するため、防犯体制、金品の管理、防犯設備等に関する防犯基準を策定して、事業者に対する防犯指導を推進している。

  オ ATM、CD
 建設機械やその搬送車両を窃取し、これを使用してATM(現金自動預支払機)やCD(現金自動支払機)を破壊して現金を窃取する大胆な手口の事件が14年以降多発している。警察庁では、建設機械やその搬送車両の盗難を防止するため、エンジンキーの確実な保管、チェーンによるアーム・車体等の固定等の対策を講ずるよう関係業界に要請しているほか、15年7月に、本体やブースの強度、防犯設備等に関する「単体で設置される現金自動預支払機(ATM)等の防犯基準」を策定し、関係機関・団体に対する指導を行っている。

 第1節 街頭犯罪・侵入犯罪を抑止するための総合対策

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