第2章 生活安全の確保と警察活動 

ハイテク犯罪への取組み

(1)政府の取組み

1)サミット等への参画と「サイバー犯罪に関する条約」の署名
 地理的・時間的制約の少ないハイテク犯罪は,国境を越えて犯罪が行われやすい上に,コンピュータ・ウイルス等は一度発生すると世界規模で被害が拡散する可能性が高い。各国で高度情報通信ネットワーク社会が形成されるにつれて,情報セキュリティに対する脅威もまた世界的に深刻化しているため,情報セキュリティ対策は国際的にも重要視されている。G8諸国は,サミットや閣僚会合の場を通じて対策の検討を進めており,我が国としてもこれらの国際的取組みに積極的に参画している((2) 4)「国際的な連携強化」参照)。
 また,欧州評議会(注)では,サイバー犯罪に関する刑事実体法,刑事手続法及び国際捜査協力に関する規定を含んだ世界初の包括的な国際条約として,「サイバー犯罪に関する条約」が制定され(2001(平成13)年11月),我が国は署名開放と同時に本条約に署名した。


(注)欧州評議会は,人権・民主主義・法の支配の実現のために1949(昭和24)年に設立(本部は仏・ストラスブール)されたものであり,2002(平成14)年末現在の加盟国は43か国である。我が国は,アメリカ,カナダ及びメキシコとともにオブザーバーとして参加している。

2)高度情報通信ネットワーク社会形成基本法に基づく取組み
 13年1月に高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が施行されたことに伴い,IT社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため,内閣に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」が設置された。同法第22条は「高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保,個人情報の保護その他国民が高度情報通信ネットワークを安心して利用することができるようにするための必要な措置」を講じることとしていることから,同本部では,重点政策分野の一つに情報セキュリティ対策を掲げるとともに,「e-Japan重点計画」と呼ばれる年次計画を定め,民間部門における情報セキュリティ対策及び普及啓発,情報セキュリティに係る制度・基盤の整備や研究開発の推進等を行うこととしている。また,政府における情報セキュリティの確保や情報インフラ防護のためのサイバーテロ対策を進めるため,「電子政府の情報セキュリティ確保のためのアクションプラン」(13年10月)や「サイバーテロ対策に係る官民連絡・連携体制について」(13年10月)を策定し,個別の対策を講じている。
 警察は,これらの方針・計画に基づき,ハイテク犯罪の取締りを行う立場から積極的に対策を講じている。

 

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