第1章 組織犯罪との闘い 

(6)ロシア

 ロシアの極東地域では,親分と子分という関係を原則とし,枝分かれした組織をもつ犯罪者集団が存在し「盗人講」(Воровской общак)と呼ばれている。「盗人講」は広い組織網をもち,自動車窃盗,強盗,恐喝等の犯罪に関与するとともに,服役者やその家族等を経済的に援助するための基金を運営している。また,矯正労働施設から仲間を取り戻すために公務員を買収することもあるといわれている。「盗人講」に次ぐ犯罪組織としては,スポーツ・マフィアがあげられる。これら犯罪組織は,活動領域を窃盗,恐喝等から海産物,石油製品や非鉄金属の密輸へと拡大させるとともに,石油採掘事業等合法的なビジネスを行う例もある。
 また,周辺国の犯罪組織がロシアに進出してきている状況もみられ,これら外国人犯罪組織は犯罪被害にあっても司法当局に届けることのない不法滞在外国人を対象に強盗等を行うだけでなく,密出入国に関与しているほか,薬物をロシア国内に運び込む一方,ロシアからは,貴金属,石油製品,木材等を運び出しているといわれている。
 ロシアにおいては,内務省の刑事警察局組織犯罪対策総局のほか連邦保安庁経済安全局においても組織犯罪対策を担当している。これらの組織は,平成15年,所管業務の重複による不効率を改めるとともに「薬物の不法流通及びテロリズムとの闘い」の観点から,組織の見直しが行われ,薬物対策を一元的に所管する独立の機関が新設されたほか,薬物のロシアへの不法流入対策等を行っていた国境警備庁が連邦保安庁に吸収されるなどした。
 また,内務省においては,連邦レベルの犯罪に対処するために,組織を見直し,連邦捜査局を創設することも検討されている。

 

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