第3節 関係機関・団体等との連携

1 被害者支援連絡協議会の設立

 犯罪被害者実態調査研究会の行った調査によると、被害者のニーズは、図2-3のように、生活上の支援をはじめ極めて多岐にわたっている。したがって、警察においてそのすべてに対応することはできず、総合的な被害者支援を行うためには、司法、行政、医療、報道機関等の被害者対策に関係する機関・団体等が相互に連携していくことが不可欠である。
 こうした考え方に基づき、警察のほか、検察庁、知事部局や市の担当部、弁護士会、医師会、臨床心理士会及び県や市の相談機関等による「被害者支援連絡協議会」の設立が全国各地で進められており、平成10年5月末現在、22の都道府県に設立されている。
 この連絡協議会では、情報交換や、各種分科会・カウンセリング講習会等の開催により各機関・団体相互の連携を強化するとともに、被害者の必要に応じて相互に適切な機関等を紹介することとしている。

図2-3 被害者のニーズ

[事例] 静岡県では、9年2月、警察本部警務部長を会長とし、知事部局の担当課、医療機関等10機関・団体(顧問3機関)(注)により、「静岡県被害者対策連絡協議会」を設立した。同協議会では、10年5月現在、5回にわたる総会の開催をはじめ、各機関の相談窓口担当者による実務連絡会の開催、会報の発行等による相互の情報交換、カウンセリング基礎講座の開催、女性スタッフによるレディース専用相談所の開設等の様々な活動が積極的に行われている。
(注) 10年4月に、地方検察庁、弁護士会、医師会、  臨床心理士会等の5団体が新たに参加し、計15機関(顧問3機関)が構成員となった。

2 主な民間団体

(1) (財)犯罪被害救援星金
 犯罪被害救援基金は、人の生命又は身体を害する犯罪行為により不慮の死を遂げ、又は重障害を受けた者の子弟のうち、経済的理由により修学が困難な者に対する奨学金又は学用品費の給与、その他の犯罪被害者に係る救援事業を行うことを目的として、広く国民から募った浄財を基に昭和56年に設立された財団法人である。
 この基金は、主な事業として、被害者やその遺児に対する奨学金・見舞金の支給や生活相談を行い、我が国の犯罪被害者の救済の充実に寄与している。また、犯罪被害者相談室((2)参照)等民間の被害者援助団体に対する様々な協力も行っている。
(2) 民間の被害者援助団体
 現在、ボランティア等による民間の被害者援助団体が活発な活動を行っており、その役割は非常に重要なものとなってきている。平成10年5月末現在、犯罪被害者を対象とし、警察等の関係機関との連携を図りながら、被害者の精神的被害の回復のためのカウンセリング等を行っている民間の被害者援助団体は、表2-3のとおりである。
 これらの団体には、相談員等として、精神科医や臨床心理士等の専門家をはじめ、カウンセリング養成講座等を受講した経験のある者、いのちの電話等の各種相談電話の受理経験のある者等が参加している。
 その活動内容は、被害者の精神的被害の回復を図るための電話相談、面接相談をはじめ、ボランティア相談員の養成及び研修、被害者自助グループ(遺族の会等)への支援、被害者

表2-3 民間の被害者援助団体(被害者支援ネットワーク)(平成10年7月現在)

支援のための広報啓発活動等多岐にわたっており、また、警察署の窓口等にこうした広報啓発のための小冊子が置かれるなど、地元の警察との連携も進んできている。
 さらに、民間の被害者援助団体等が協力して被害者支援の重要性等を訴えるための会合を開催するなど、相互の協力・連携の動きも始まっている。
[事例] 9年10月、(財)犯罪被害救援基金、日本被害者学会及び犯罪被害者相談室(東京)の共催で、「第2回犯罪被害者支援フォーラム」が東京において開催され、被害者や遺族、被害者支援団体、被害者問題に関する有識者、警察、司法関係者等のほか、英国のVS(第4節1(4)参照)の代表も交え、今後の被害者支援の在り方、関係機関によるネットワークの構築等について活発な意見交換が行われた。
 このように、これらの団体は、定期的に合同研修会を開催するなど相互の活動内容や諸外国の民間団体の活動に関する情報交換等を行ってきたが、今後更に連携を強化し、我が国における被害者支援活動を一層充実させることを目的に、10年5月、「被害者支援ネットワーク」を構築した(表2-3参照)。これにより、今後、更に被害者支援活動の輪が全国的に広がって行くことが期待されている。
 なお、民間団体の活動等を含めた我が国における現在までの被害者対策の経緯は、表2-4のとおりである。

表2-4 被害者対策の経緯(平成10年6月1日現在)



目次  前ページ  次ページ