第1章 外国人労働者の急増と警察の対応

 現在、我が国では、いわゆる単純労働者の受入れについては、十分慎重に対応することを方針としているが、近年、我が国に一時来日して、いわゆる単純労働の分野等で就労する外国人が急増している。既に、大都市圏では隣人として外国人労働者(注)と接触する機会を持つ国民も多くなっており、今や、外国人労働者問題は市民生活にも密接な関係を有する問題として、広く国民の関心を集めている。こうした中、平成元年には、我が国での就労を目的とする多数の人々が、ベトナム難民を装って、九州等の海岸に次々と漂着するという事態も発生し、社会の耳目をひいた。これらの外国人の多くは、アジア諸国から来日した人々であり、その急増の背景には、これらの国々と我が国との大きな経済格差がある。
 また、我が国の労働市場の一部では、人手不足感の広がり等も背景として、いわゆる単純労働分野等への外国人の受入れをめぐる論議が展開されている。もとより、外国人労働者の大量の流入は、我が国の経済、社会に極めて大きな影響を及ぼすことが予想されることから、外国人労働者が日本で生活する場合に生じ得るであろう様々な問題について、多角的な検討を加えることが必要である。あわせて、かつて、積極的に外国人労働者を受け入れ、既に多数の外国人労働者を抱える諸外国における現状を踏まえ、外国人労働者の流入が治安にどのような影響を及ぼすかを見極めておくことも必要であろう。
 また、概に現在、外国人労働者の流入に伴って、悪質な職業あっせんブローカーが外国人労働者を食い物にする犯罪の多発、来日外国人による刑法犯の増加、いわゆる単純労働に従事する外国人が多数居住する地域における外国人と日本人との社会的な摩擦の発生といった問題が生じてきており、これに的確に対応していくことが緊急な課題となっている。
(注) この白書においては、近年急増している来日外国人労働者に係る問題を取り上げることとし、例えば、我が国に戦前から居住し生活する在日外国人及びその子孫は、検討の対象としていない。


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