オウム真理教は、平成19年5月、麻原彰晃こと松本智津夫への絶対的帰依を強調する主流派(「Aleph(アレフ)」)と松本からの脱却を装う上祐派(「ひかりの輪」)とに内部分裂しました。現在、教団は15都道府県に31か所の拠点施設を有し、両派の信者数は、その活動状況等から合計で約1,500人とみられます。

 主流派は、依然として松本を「尊師」と尊称し、22年中、同人の誕生を祝う「生誕祭」を開催しているほか、拠点施設の祭壇に松本の肖像写真を飾ったり、松本の唱えるマントラを流したりするなど、松本への絶対的帰依を強調する原点回帰路線をより一層強めています。

 一方、上祐派は、ホームページに旧教団時代の反省・総括の概要を掲載したり、これまでの公安調査庁による立入検査の結果を掲載して同派施設から松本の教義に関する教材が発見されていない状況を公表したりするなど、松本色の払拭に努めています。また、同派は、拠点施設の周辺住民に対し、「ひかりの輪」への理解を得るための住民説明会の開催を呼び掛けたりして、「開かれた教団」のアピールに努めています。

 今後、主流派は、松本への絶対的帰依をより一層強める一方、上祐派は、教団のイメージアップを通じて、無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律に基づく観察処分の適用回避に全力を挙げるものとみられます。




 22年中、主流派は、出家信者が代表社員を務める会社の名義で、同派が実質的に所有する不動産の中では最大規模となる不動産を東京都足立区内に取得しており、今後、同派の中心的な拠点施設になるものとみられます。

 一方、上祐派は、千葉県内に新たな出家信者用居住施設を確保し、出家信者数人が、施設内に併設された道場において修行を行いながら集団居住していることが明らかとなっています。

 教団は、インターネットのウェブサイト等を通じたり、教団名を伏せたヨーガ・サークルへの勧誘を通じたりして信者獲得を図り、組織拡大に取り組んでいます。


 
主流派が取得した不動産(「足立入谷施設」)
※鉄筋コンクリート4階建て
土地約530平方メートル、延べ床面積約1,150平方メートル
 



 教団が松本の指示の下に実行した地下鉄サリン事件から15年が経過しました。しかし、7年から手配されている警察庁指定特別手配被疑者の平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は依然として逃走を続けています。

 警察は、3人の発見検挙を全国警察を挙げて取り組むべき最優先課題の一つとし、広く国民からの協力を得ながら、引き続き捜査を推進しています。


 
 平成22年4月に施行された刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律により、地下鉄サリン事件(殺人、同未遂)については時効が廃止され、公証役場事務長逮捕監禁致死事件については時効が延長されました。
 また、地下鉄サリン事件等が「捜査特別報奨金制度」の対象事件として新たに指定され、従来の懸賞金と合わせ、平成22年11月から、1人につき上限額500万円となりました。