北朝鮮は、これまで、科学技術の発展に力を注いできています。さらに、北朝鮮は、核開発及び核兵器の製造を公言し、核実験を実施したと発表しているほか、ミサイルの開発・製造・発射実験を行うとともに、ミサイルやその関連技術を輸出しているとみられます。こうした北朝鮮の動向は、国際社会の平和と安全に深刻な問題を引き起こしており、また、北朝鮮は、それを巧妙に外交の駆け引き材料としている様子がうかがえます。
北朝鮮は、現在、2003年(平成15年)から科学技術発展5ヵ年計画を進めているところであり、毎年1月1日に発表される3紙共同社説(注1)では、「科学革命、技術革命の炎をさらに激しく燃え上がらせ、強盛大国建設において提起される科学技術的諸問題を積極的に解決していくべきである」と述べています。
また、2006年(18年)4月に開催された最高人民会議(注2)第11期第4回会議では、科学技術の発展が議題として上程され、次のような報告がされています。
・「現在、科学技術部門に提起されている重 要な課題は、先端科学技術と先端産業の確固たる土台を構築し、食糧問題、エネルギー問題を始めとする差し迫った経済諸問題を優先的に解決して人民経済の主体性を強化する方向で主要工業部門の改造、近代化を積極的に推し進めることだ」
・「先進技術を導入するという原則の下に海外同胞商工人ら及び各外国企業との合営・合作も実現するなど、対外経済協力事業を活発に展開していくであろう」
・「海外同胞科学者・技術者らとの創造的協力を一層強化しなければならない」
これらからもうかがえるように、今後、我が国の企業との共同経営や在日朝鮮人である商工人、科学者等との協力の強化に伴い、先端科学技術並びにそれに関する情報及び物資の違法な流出が懸念されるところです。
一方、我が国には、朝鮮総聯の傘下団体として在日本朝鮮人科学技術協会(以下「科協」という。)という在日朝鮮人科学者等で構成された団体が存在しており、様々な活動を通じて、北朝鮮の科学技術発展に寄与することを目指しているとされています。
このような団体による情報の違法な持ち出し等を通じて、我が国から先端科学技術等が流出するようなことがあってはなりません。また、こうして我が国から持ち出された先端科学技術等が、核開発や大量破壊兵器の開発等に悪用されるようなことがあってはなりません。このため警察は、先端科学技術等の流出に対する監視を徹底するとともに、違法な事案が把握された場合には、厳正に対処することとしています。
注1:毎年1月1日に朝鮮労働党機関紙「労働新聞」、朝鮮人民軍機関紙「朝鮮人民軍」、
青年同盟機関紙「青年前衛」の3紙が掲載するもので、北朝鮮の1年の基本路線を
伝えるものとして注目されている。
注2:北朝鮮の最高主権機関であり、法案や予算の審議、承認等を行う。
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