犯罪被害者等施策に関する基礎資料

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3.第3次犯罪被害者等基本計画(平成28年4月1日閣議決定)

III 重点課題

第1次基本計画では、犯罪被害者等及びその支援に携わる者の具体的な要望を踏まえて、大局的な課題として、5つの重点課題を指摘し、これは、第2次基本計画においても維持された。

第3次基本計画の策定に当たっても、国民一般や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等から要望意見を聴取するなどしたが、その整理や第3次基本計画に盛り込むべき事項の検討の過程において、第1次基本計画及び第2次基本計画と同様の5つの重点課題が確認された。

したがって、第3次基本計画においても、以下の5つの重点課題を掲げることとする。

なお、個々の施策の実施に当たっては、各課題に対する当該施策の位置付けを明確に認識し、各課題ごとに府省庁の横断的かつ総合的な施策の推進・展開が図られるよう努める必要がある。

〔5つの重点課題〕

<1> 損害回復・経済的支援等への取組

犯罪被害者等は、犯罪等により、生命を奪われ、家族を失い、傷害を負わされ、財産を奪われるといった損害に加え、高額な医療費の負担や収入の途絶等により、経済的に困窮することが少なくない。また、自宅が事件現場になったり、加害者から逃れたりするため、住居を移す必要が生じるほか、犯罪等による被害や刑事手続等による負担についての無理解等から、雇用関係の維持に困難を来すことも少なくない。

もとより、犯罪等により犯罪被害者等に生じた損害について、第一義的責任を負うのは加害者である(基本法前文)にもかかわらず、加害者の損害賠償責任が果たされず、十分な賠償が受けられないことに対する不満が犯罪被害者等から寄せられている。さらに、現行の犯罪被害者等に対する経済的支援施策について、犯罪被害者等が負うこととなる様々な経済的負担からすると不十分であるとの指摘もある。このような犯罪被害者等が直面している経済的困難を打開するため、加害者の損害賠償責任の実現に向けた必要な検討を行うとともに、犯罪被害者等のためだけに設けられた制度以外の制度や民間の取組等を十分に活用することも含め、犯罪被害者等の損害を回復し、経済的に支援するための取組等を行わなければならない。

<2> 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

多くの犯罪被害者等は、生命・身体に重大な被害を受ける。また、当該犯罪等による直接的な精神的・身体的・財産的被害を受けるにとどまらず、自分自身や家族が犯罪等の対象にされたこと自体から精神的被害を受ける。さらに、再被害ないし再被害を受けることに対する恐怖・不安を抱いたり、捜査・公判、医療、福祉等の過程で配慮に欠ける対応をされたことによっていわゆる二次的被害を受けることもある。このような犯罪被害者等の精神的・身体的被害に対し、これを回復・軽減し、又は防止するための取組を行わなければならない。

<3> 刑事手続への関与拡充への取組

犯罪被害者等にとって、事件の正当な解決は、その回復にとって不可欠であり、また、解決に至る過程に関与することは、その精神的被害の回復に資する面もある。もとより、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続は、国家及び社会の秩序維持、個人の人権の保障、少年の健全育成等の考量困難な種々の要請に応えるものでなければならないが、そのことを前提としつつ、「事件の当事者」である犯罪被害者等が、刑事に関する手続や少年保護事件に関する手続に適切に関与できるよう、その機会を拡充する取組を行わなければならない。

<4> 支援等のための体制整備への取組

被害直後から様々な困難に直面する犯罪被害者等が、再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、犯罪被害者等の誰もが、望む場所で、必要なときにいつでも、情報の入手や相談ができ、専門的知識と技能に裏付けられたきめ細やかな支援が受けられるような、継ぎ目のない支援体制を地方公共団体や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体とともに構築していく必要がある。特に、犯罪被害者等は、被害直後から、医療・福祉、住宅、雇用など生活全般にわたる支援を必要としている。そして、犯罪被害者等が被害から回復するためには、時に長い時間を要し、その間、犯罪被害者等のニーズは変化する。また、犯罪被害者等が場所的に移動することなどにより、必要な支援の内容も変わり得る。

したがって、犯罪被害者等を中長期的に支援するという視点からの体制整備への取組が行われなければならない。

併せて、犯罪等により被害を受けた際に、その被害の類型等を問わず、国民の誰もが早期に適切な支援を受けられるよう、政府による犯罪被害者等施策のほか、地方公共団体や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体による取組を含め、これらに関する国民の認知度も踏まえつつ、適切にその周知を推進していく必要がある。

<5> 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

犯罪被害者等施策が措置されても、国民の理解と協力がなければ、その効果は十分に発揮されない。犯罪被害者等は、地域社会において、配慮され、尊重され、支えられてこそ、平穏な生活を回復できることから、施策の実施と国民の理解・協力は車の両輪である。

したがって、様々な機会を通じて、教育活動や広報啓発活動等による息の長い取組を行い、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等についての国民の理解や共感を深め、犯罪被害者等への配慮と犯罪被害者等のための施策への協力を確保するための取組を行わなければならない。

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