1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)
(1) 日本司法支援センターによる支援
【施策番号1※】
ア 日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)においては、民事法律扶助業務として、経済的に余裕のない者が民事裁判等手続を利用する際に、収入等の一定の条件を満たすことを確認した上で、無料で法律相談を行い、必要に応じて弁護士・司法書士の費用の立替えを行っている(法テラスウェブサイト「法テラスの目的と業務(民事法律扶助業務)」:https://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/mokuteki_gyoumu/minjihouritsufujo/)。
犯罪被害者等が、弁護士等に委任して民事裁判等手続を通じて損害賠償を求める必要があるにもかかわらず、弁護士費用等を負担する経済的な余裕がない場合には、民事法律扶助制度を利用することによって当該費用が立て替えられ、原則として毎月分割で償還することができ、経済的負担が軽減される。また、犯罪被害者等が刑事手続の成果を利用して簡易迅速に犯罪被害の賠償を請求することを可能とする損害賠償命令制度(平成20年12月施行)の利用に当たっても、民事法律扶助制度を利用して弁護士費用等の立替えを受けることができる。さらに、26年4月からは、加害者等に対する損害賠償請求に係る弁護士との打合せに同席させるカウンセラー等の費用についても、民事法律扶助制度の対象となり、当該費用の立替えを受けることが可能となった。
【施策番号2】
イ 法テラスにおいては、犯罪被害者等の状況に応じて、犯罪被害者支援の経験や理解があるとして弁護士会から推薦を受けている弁護士を紹介している。30年3月末現在、3,736人の弁護士を紹介用名簿に登載しており、29年度中の紹介件数は1,705件であった。
また、犯罪被害者支援に携わる弁護士によるサービスの質の向上を目指し、弁護士会や犯罪被害者支援団体との連携・協力の下、上記紹介用名簿に登載している弁護士等を対象とした犯罪被害者支援のための研修を共催している。
業務 | 平成20年度 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | |
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犯罪被害者支援業務 | |||||||||||
精通弁護士紹介件数 | 696件 | 898件 | 929件 | 877件 | 1,013件 | 1,330件 | 1,491件 | 1,603件 | 1,677件 | 1,705件 | |
精通弁護士名簿登載者数 | 1,570人 平成21年3月末現在 |
1,839人 平成22年3月末現在 |
2,028人 平成23年3月末現在 |
2,364人 平成24年3月末現在 |
2,454人 平成25年3月末現在 |
2,705人 平成26年3月末現在 |
3,008人 平成27年3月末現在 |
3,441人 平成28年3月末現在 |
3,663人 平成29年3月末現在 |
3,736人 平成30年3月末現在 |
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提供:法務省 |
(2) 損害賠償請求制度等に関する情報提供の充実
【施策番号3】
警察においては、「被害者の手引」(【施策番号196】参照)等により、損害賠償請求制度の概要等について紹介している。
法務省においては、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」や犯罪被害者等向けDVD「もしも…あなたが犯罪被害に遭遇したら」により、損害賠償命令制度について紹介している(【施策番号128】参照)。
損害賠償命令制度については、制度導入以降、平成29年末までに2,479件の申立てがあり、このうち2,368件が終局した。その内訳は、認容が1,093件、和解が545件、終了(民事訴訟手続への移行)が315件、取下げが267件、認諾が95件、却下が30件、棄却が7件等である※。
また、これまで、多くの検察庁においては、犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律に基づき、没収・追徴された犯罪被害財産を被害者に被害回復給付金として支給するための手続(被害回復給付金支給手続)を行っている。28年に8件の被害回復給付金支給手続の開始決定が行われ、開始決定時における給付資金総額は約9,750万円であった。
(3) 刑事和解等の制度の周知
【施策番号4】
法務省においては、刑事和解、公判記録の閲覧・謄写、不起訴記録の閲覧等の制度について説明した犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」を作成し、全国の検察庁等を通じて犯罪被害者等へ配布しているほか、ウェブサイト上に同パンフレットを掲載するなどして、制度の周知を図っている(【施策番号128】参照)。また、検察官等に対しても、会議や研修等の機会を通じて刑事和解等についての理解を深めさせており、検察官等が犯罪被害者等に対して適切に情報提供できるように努めている。
年次 | 支給手続開始決定件数 | 開始決定時給付資金総額 |
---|---|---|
平成23年 | 14件 | 2億604万1,619円 |
平成24年 | 23件 | 3億9,871万6,097円 |
平成25年 | 18件 | 約1億4,600万円 |
平成26年 | 15件 | 約2億5,401万円 |
平成27年 | 13件 | 約8,308万円 |
平成28年 | 8件 | 約9,750万円 |
提供:法務省 |
刑事和解制度による申立てが公判調書に記載された延べ数は、制度導入(平成12年11月)以降29年末までの間に666件、うち29年は26件であった。
年次 | 事例数 | |
---|---|---|
平成25年 | 29 | |
平成26年 | 20 | |
平成27年 | 17 | |
平成28年 | 23 | |
平成29年 | 26 | |
(注) 1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。 2 高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所における被告人と被害者等の間で成立した民事上の争いについての合意内容を公判調書に記載した事例数である。 3 平成28年までは決定等がなされた日を基準に計上していたが、29年以降は当該事件の終局日を基準に計上している(なお、28年以前に決定等がなされ29年に事件が終局したものについては、決定等がなされた日を基準に計上している。)。この計上基準日の変更により、29年の数値は一時的に減少することとなるので留意されたい。 |
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提供:法務省 |
(4) 保険金支払の適正化等
【施策番号5】
ア 国土交通省においては、自動車損害賠償責任保険・共済(以下「自賠責保険」という。)に関して、保険会社・共済組合(以下「保険会社等」という。)による被害者等に対する情報提供措置の義務付け、保険会社等への立入検査(平成28年度実績:62か所)や死亡等重要事案の審査(28年度届出件数:10万4,620件)に伴う指示等を通じて保険金支払の適正化を図っている。また、自動車損害賠償保障法に基づく指定紛争処理機関である一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(http://www.jibai-adr.or.jp/)では、自賠責保険金の支払等に関する紛争処理のため、被害者等からの紛争処理申請に基づき、弁護士、医師及び学識経験者により構成される紛争処理委員による調停を行っている。28年度の紛争処理審査件数は、968件となっている。
年度 | 紛争処理審査件数 | |
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平成24年度 | 894 | |
平成25年度 | 872 | |
平成26年度 | 871 | |
平成27年度 | 940 | |
平成28年度 | 968 | |
提供:国土交通省 |
【施策番号6】
イ 金融庁においては、被害者に直接保険金等が支払われる場合も含め、契約に基づく保険金等の支払が適切に行われるように、「保険会社向けの総合的な監督指針」(17年8月策定)等に基づき、各保険会社における保険金等支払管理態勢整備についての検証を行っているほか、苦情・相談として寄せられる情報を活用して、保険会社の検査・監督を行っている。
【施策番号7】
ウ 国土交通省においては、自動車事故に関する法律相談、示談斡旋(あっせん)等により被害者等が迅速かつ適切な損害賠償を受けられるよう、公益財団法人日弁連交通事故相談センター(http://www.n-tacc.or.jp/)に対して支援(補助金交付)を行っている。
28年度は、同センターが相談所を全国155か所(うち39か所で示談斡旋(あっせん)を実施)で、延べ1万1,829日開設し、4万2,000件の事故相談を無料で受け付けた。
年度 | 延べ開設日数 | 無料事故相談件数 |
---|---|---|
平成23年度 | 8,091 | 39,274 |
平成24年度 | 8,168 | 38,118 |
平成25年度 | 8,720 | 47,665 |
平成26年度 | 8,115 | 48,396 |
平成27年度 | 11,880 | 44,886 |
平成28年度 | 11,829 | 42,000 |
提供:国土交通省 |
【施策番号8】
エ 自賠責保険による損害賠償を受けることができないひき逃げや無保険車等による事故の被害者に対して、自動車損害賠償保障法に基づく政府保障事業によって、本来の賠償責任者である加害者等に代わり、政府が直接その損害の塡補を行っている(国土交通省ウェブサイト「自賠責保険ポータルサイト」:http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/accident/nopolicyholder.html)。政府保障事業における28年度の損害塡補件数は984件であった。
(5) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することが可能である旨の周知
【施策番号9】
法務省においては、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき、受刑者が釈放前に作業報奨金の支給を受けたい旨の申出をした場合、その使用目的が犯罪被害者等に対する損害賠償への充当等相当なものと認められるときは、支給時における報奨金計算額に相当する金額の範囲内で、申出の額の全部又は一部を支給し、当該受刑者が犯罪被害者等への損害賠償等に充当する制度を運用している。
同制度を十分に運用するため、刑執行開始時における指導等の際に告知しているほか、居室内に整備している所内生活心得等の冊子に記載して、引き続き周知を図っている。
(6) 暴力団犯罪による被害の回復の支援
【施策番号10】
警察においては、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律等により、暴力団員による暴力的要求行為の相手方や暴力団員による犯罪の被害者等に対して、本人からの申出に基づき、被害の回復等のための助言や交渉場所の提供等の援助を積極的に行っている(警察庁ウェブサイト「組織犯罪対策部」:http://www.npa.go.jp/bureau/sosikihanzai/index.html)。
各都道府県警察は、弁護士会、都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。)と連携しているほか、訴訟関係者に対する暴力団情報の提供、保護対策等の支援を行っている。
平成29年中に警察等が支援した暴力団関係事案に係る援助の措置件数は27件、民事訴訟件数は57件である。
また、都道府県センターにおいては、暴力団員による被害の相談活動のほか、暴力団員による不当な行為の被害者に対して見舞金の支給等も行っている(全国暴力追放運動推進センターウェブサイト:http://fc00081020171709.web3.blks.jp/index.html)。
年次 | 援助の措置件数 | 民事訴訟件数 |
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平成20年 | 165 | 85 |
平成21年 | 165 | 113 |
平成22年 | 225 | 90 |
平成23年 | 328 | 63 |
平成24年 | 193 | 51 |
平成25年 | 104 | 54 |
平成26年 | 75 | 46 |
平成27年 | 72 | 42 |
平成28年 | 52 | 53 |
平成29年 | 27 | 57 |
(7) 加害者の損害賠償責任の実現に向けた調査の実施
【施策番号11】
平成27年8月、内閣府においては、犯罪被害者等に対する加害者による損害賠償の実態を把握するため、日本弁護士連合会が行う調査に協力した(調査結果については、警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(http://www.npa.go.jp/hanzaihigai/sakutei-suisin/kaigi24/index.html)を参照)。警察庁においては、調査結果等を踏まえつつ、加害者の損害賠償責任の実現に資する方策について、関係省庁と協議している。
犯罪被害者等に特化したものではなく、民事執行一般についてであるが、本施策に資する動きとして、28年9月、法務大臣から法制審議会に対して、民事執行法制の見直しに関する諮問がされた。勝訴判決等を得た債権者が債務者財産に関する情報を取得する制度としては、債務者自身の陳述から情報を取得する財産開示手続が15年に創設されたが、その実効性が必ずしも十分でなく、また、利用実績がそれほど多いとはいえない実情にあるとの指摘等を踏まえて、法制審議会民事執行法部会において、債務者財産の開示制度の実効性を向上させるための検討がなされている。29年9月には、第三者から債務者財産に関する情報を取得する制度の新設等を内容とする民事執行法の改正に関する中間試案が取りまとめられており、引き続き、議論が進められている。