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コラム9 「犯罪被害給付制度の拡充及び新たな補償制度の創設に関する検討会」構成員発言

上記検討会の提言につながった,構成員の主な発言を紹介する。


○ 親族間犯罪被害者への支給

【弁護士 番敦子氏】

(親族間犯罪の場合,一定の配偶者間暴力被害(DV)事案に限り,犯罪被害者等給付金を全額支給できることとされている点に関し)DVがなければだめだということになると,不公正な事例は出てくるのではないですか。年少者被害とか親子関係の問題で起こった場合には,最初からそれだけではだめですよという話になると,やはり不公正な事例が出てくるのではないか。DVに限定する必要があるのかというのは素朴な疑問として感じております。


○ 海外での犯罪被害者に対する経済的支援

【同志社大学法学部教授 瀬川晃氏】

犯給制度の拡充に事実調査の困難性ということがあるとしても,例えば典型的な事件としては,グアムでの殺人ですが,あのようなケースをこのままにして,犯罪被害者に対して何もしなくていいのか。今後ああいう事件を起こった場合を想定して,この場で議論すべきだと思っています。

犯給法と同じような仕組みを作るのではなくて,例えば対象を絞って,殺人事件,死亡事件に限るという方向性は1つあるのではないかと思います。それから,通常言われる見舞金程度のもので,まずはスタートしてはどうかと考えております。


○ 親族間犯罪に係る犯給法及び同法施行規則の規定に関する現場への教育・周知

【(公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長 中曽根えり子氏】

民間の援助団体として,犯給制度の説明を受けるときに,原則親族間は出ないというところから,例外もあるという御説明をいただいているんです。親族間の事件の中でも,少しでも給付がなされるケースがあることを,現場にいる警察の(支援室の)方たちにも周知徹底していただく必要があるのではないかと思います。


○ 重傷病給付金の運用状況の調査

【東京大学大学院法学政治学研究科教授 川出敏裕氏】

給付対象期間が1年であれば,120万でよいのかもしれないけれども,何年も治療を続けておられて,その医療費の負担が非常に重いという事例の紹介もありましたので,それを踏まえて,支給対象期間を延ばした上で,上限も120万以上にならないかという趣旨で申し上げたものです。

【全国犯罪被害者の会(あすの会)代表幹事 松村恒夫氏】

(1年以内に治癒又は症状固定に至った被害者が約7割であるという点に関し)実際,治るときまで面倒見ようというのが基本的な考え方でないと,7割の人が治ったから,あと3割の人は自己負担でやれということで本当にいいのかということなのですね。

【東京大学大学院法学政治学研究科教授 岩村正彦氏】

3割の方についてどうするかという問題は当然あるので,その点については少しデータを今後もある程度継続して取っていただく。それから,期間だけでなくて,例えば傷病類型とかも含めてもう少しデータが取れるようになると,この問題を検討する上での基礎になるのではないかと思います。


○ 本給付の迅速な裁定及び仮給付制度の一層の活用

【(公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長 中曽根えり子氏】

私が聞いている中で,被害者の住所地が県外で,地元に御遺族がいるというケースで,約1年近くになりますが,まだ給付金が出ていない状態です。

御遺族は被害者の居住地まで行き,住まいを引き払う等いろいろなこともありましたし,被害に突然遭うことによって必要のないお金が必ず出てくるわけです。そういう意味では何とか早目に給付をしていただきたいというのがあります。


○ 保険給付に関する保険者,医療機関等への周知

【(公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長 中曽根えり子氏】

医療費が非常にかかる,医療費の負担が,被害に遭った後にすぐにあるということは間違いないので,その点で何とかならないかということは思います。

【弁護士 番敦子氏】

(医療保険の利用について)実は現場ではやっていないんですよ。依頼者の犯罪被害者の方は全額自分で行くたびに払っているんですね。だから,(被害者と医療関係者の)どちらが知らないのか分からないけれども,そんなにスムーズではないという認識です。

【全国犯罪被害者の会(あすの会)代表幹事 松村恒夫氏】

医療保険そのものが,今までは,田舎のほうへ行くと断られたということもあり,それはそれとして解消していただかなければいけない。


○ 市町村における総合的な対応窓口の設置促進

【(公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長 中曽根えり子氏】

被害者支援をするに当たってまだまだ理解が足りないと思うのが市町村です。被害者に対して大変理解のある県・市町村もあるのかもしれませんが,まだまだ少ないように思います。被害者の方が行政に行ったら,経済的な支援も行政の手続も含めて,どういうものがその被害者にとって必要なのかということを対応窓口の職員の方が分かっていて,スムーズに被害者に付き添ってあげたり,アドバイスができるということがこれからの課題なのではないかと思っています。

【東京大学大学院法学政治学研究科教授 岩村正彦氏】

社会保障制度においては,金銭,現物のサービス,医療も含めて,私が見る限りでは,先進諸国と肩を並べるぐらいの充実したものが提供されていると思います。

そうすると,ソーシャルワーカーとか,そういう方々が適切にその時々のタイミングでうまく相談なり何なりという形で介入することによって,それぞれの被害者の個人,あるいは世帯にとって必要な社会保障で提供しているメニューをきちっと受けられるようにする体制というのが,一つのポイントなのかなと思っております。


○ 海外での犯罪被害者に関する連携

【(公益社団)にいがた被害者支援センター理事・支援局長 中曽根えり子氏)】

例えばたまたま海外に勉強のためとか何かで出かけていって,事件に遭われた場合などは,日本に御家族,御遺族となる方がいらっしゃるでしょうから,お住まいの県の行政とか民間の援助団体などと例えば外務省さんとが連携をしながら,その御遺族とか御家族のまずは精神的なサポートも含めて支援することが,少なくとも必要なのではないかと思っています。

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