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3.保護、捜査、公判等の過程における配慮等(基本法第19条関係)

[現状認識]

犯罪被害者等は、犯罪等による被害を受けた後、保護のための機関等に対し、当該被害から逃れるため施設への収容等の保護を求めたり、捜査機関等に対し、捜査・公判等を通じて当該被害を受けた事件の真相解明や適正な処罰が実現されることを求める。また、犯罪被害者等は、公判が行われることによりプライバシーにかかわる事項が第三者の目にさらされることを恐れるなどの理由で、捜査や訴追が行われることを望まなかったとしても、処罰の必要性という公益上の理由から行われる捜査・公判の過程で、必要な協力を求められることがある。ところが、そうした保護、捜査、公判等の犯罪被害者等が必要的にかかわらざるを得ない手続の過程で、また治療や回復の過程でかかわらざるを得ない関係機関において、配慮に欠けた対応をされることによって、二次的被害を受けることがある。近年、これらの過程における犯罪被害者等への対応は一部において相当改善されてきているものの、依然として不十分であり、二次的被害を与えることを防止するための取組が更に必要であるとの指摘がある。

[基本法が求める基本的施策]

基本法第19条は、国及び地方公共団体に対し、犯罪被害者等の保護、その被害に係る刑事事件の捜査又は公判等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、

・犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための訓練及び啓発

・専門的知識又は技能を有する職員の配置

・必要な施設の整備

・その他の必要な施策

を講ずることとしている。

[犯罪被害者等の要望に係る施策]

犯罪被害者団体等からは、

<1> 関係職員への研修の充実

<2> 関係職員の対応・施設の改善

<3> 弁護活動における配慮等

に関する種々の要望が寄せられている。

[今後講じていく施策]

(1) 職員等に対する研修の充実等

ア 警察において、採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる教育、専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対する教育・研修、被害者・遺族等を招請して行う講演会、被害者対策室担当者による各警察署に対する巡回教育、被害者支援の体験記の配布等、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善を進める。【警察庁】

イ 法務省において、検察官、検察事務官に対する各種研修の機会における「犯罪被害者支援」等のテーマによる講義の実施、犯罪被害者等早期援助団体への検察官の派遣、矯正施設職員に対する犯罪被害者団体等の関係者を招へいしての講義等の実施、更生保護官署職員に対する被害者支援の実務家等による講義、地方検察庁に配置されている被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義・講演及び討議の実施など、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善を進める。【法務省】(再掲:第4、2.(11)イ)

ウ 法務省において、検察幹部が犯罪被害者等の心情等に理解を深めるとともに、市民感覚を失い又は独善に陥ることを防止することに資するためのセミナーの実施、検察官に市民感覚を学ばせるため、公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修の実施等、研修内容を検討しつつより効果的な研修を実施し、職員の対応の改善に努める。【法務省】

エ 法務省において、検察官に対し、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていく。【法務省】(再掲:第3、1.(18)及び第4、2.(11)ア

オ 法務省において、副検事に対する研修の中で今後とも、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を行うとともに、被害者及び被害者遺族の立場等への理解を深めるための機会を設けるなど、交通事件をテーマとした科目の内容について一層の充実を図る。【法務省】(再掲:第3、1.(15))

カ 厚生労働省において、平成8年度から実施している医師、看護師、保健師及び精神保健福祉士などを対象とした「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」、平成13年度から実施している医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、児童相談員などを対象とした思春期精神保健の専門家の養成研修の活用を含め、犯罪被害者等の治療、保護等を行う施設の職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修等の充実を図る方向で検討し、3年以内に結論を得て、犯罪被害者等の治療、保護等を行う施設の職員の対応の改善を進める。【厚生労働省】

キ 厚生労働省において、看護教育の充実及び資質の向上を図るため、平成17年度から看護基礎教育のカリキュラム等改正に係る検討を行い、当該検討を踏まえた教育の実施等により、看護に関わる者の対応の改善を進める。【厚生労働省】

ク 厚生労働省において、民生委員に対し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための守秘義務の遵守等について指導を実施していく。【厚生労働省】

ケ 厚生労働省において、公的シェルターにおける犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修及び啓発を実施していく。【厚生労働省】

(2) 女性警察官等の配置

警察庁において、性犯罪被害者への対応等に資するよう、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官等の配置に更に努める。【警察庁】

(3) ビデオリンク等の措置の適正な運用

法務省において、裁判所におけるビデオリンク装置の配備の進展等を踏まえ、ビデオリンク等の犯罪被害者等の保護のための措置について周知徹底を図り、一層適正に運用されるよう努めていく。【法務省】

(4) 民事訴訟におけるビデオリンク等の措置の導入

法務省において、民事訴訟においても、遮へい措置、ビデオリンク、付添いを民事訴訟法(平成8年法律第109号)上認めることについて検討を行い、2年以内を目途に結論を出し、その結論に従った施策を実施する。【法務省】

(5) 警察における犯罪被害者等のための施設の改善

警察において、これまでに整備された被害者専用の事情聴取室の活用のほか、被害者対策用車両の整備を進めるなど、施設等の改善に努める。【警察庁】

(6) 検察庁における犯罪被害者等のための待合室の設置

法務省において、庁舎の建て替えを予定している検察庁では、被害者専用待合室を設置し、それ以外の検察庁については、スペースの有無、設置場所等を勘案しつつ、専用待合室の設置について検討をしていく。【法務省】

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