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第2章 犯罪被害者等のための具体的施策と進捗状況

第1節 損害回復・経済的支援等への取組

1 損害賠償の請求についての援助等(基本法第12条関係)

(1) 日本司法支援センターによる支援 

【施策番号1※1

ア 日本司法支援センター(愛称:法テラス)では,民事法律扶助業務として,経済的に余裕のない方が民事裁判等手続を利用される際に,収入などの一定の条件を満たすことを確認した上で,無料で法律相談を行い,必要に応じて弁護士・司法書士の費用の立替えを行っている(日本司法支援センターホームページ「法テラスの目的と業務(民事法律扶助業務)」別ウインドウで開きます)。

犯罪被害者等が,加害者から任意に損害賠償を受けることができず,弁護士などに委任して民事裁判等手続を通じて損害賠償を求める必要があるものの,弁護士費用などを負担する経済的な余裕がない場合には,民事法律扶助制度を利用することによって経済的負担が軽減される。また,犯罪被害者等が,刑事手続の成果を利用して簡易迅速に犯罪被害の賠償を請求することを可能とする損害賠償命令制度(平成20年12月1日施行)の利用に当たっても,民事法律扶助制度の利用が可能である。

【施策番号2】

イ 日本司法支援センターにおいて,平成18年10月から犯罪被害者支援業務を行っている(同センターホームページ「法テラスの目的と業務(犯罪被害者支援業務)」別ウインドウで開きます)。

業務の具体的な内容は,犯罪被害者等が,そのとき最も必要な支援が受けられるよう

・刑事手続への適切な関与や,損害・苦痛の回復・軽減を図るための法制度に関する情報の提供

・犯罪被害者支援を行っている機関・団体の案内

・犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介

・被害者参加人のための国選弁護制度に関する業務

を実施することである。

利用の窓口としては,固定電話であれば,全国どこからでも3分8.5円(税別)の通話料で利用できる法テラス・サポートダイヤル(コールセンター)のほか,全国各都道府県に地方事務所を設けており,電話や面談による問合せを受け付けている。法テラス・サポートダイヤル(コールセンター)では,相談内容を問わず,様々な法的トラブルに関する問合せを受け付ける一般ダイヤル(0570-078374「おなやみなし」)のほか,犯罪被害者支援ダイヤル(0570-079714「なくことないよ」)という専用の電話番号を設け,犯罪被害者支援の知識・経験を持った専門の担当者が,被害者に二次的被害を与えないよう心情に配慮しながら情報提供を行っている(利用時間:平日9:00~21:00,土曜日9:00~17:00)。犯罪被害者支援ダイヤルにおける平成24年4月1日から同年12月末日までの問合せ件数は8,357件であった。主な問合せ内容は,生命・身体犯被害,配偶者等からの暴力(DV),性被害,ストーカー被害などである。

全国の地方事務所における電話及び担当者との面談による犯罪被害者支援に関する情報提供件数は平成24年4月1日から同年12月末日までに12,022件であった。

また,犯罪被害者支援の経験や理解があるとして弁護士会から推薦を受けている弁護士を,個々の状況に応じて紹介しており,平成25年1月現在,2,397人の弁護士を紹介用名簿に登載している。平成24年4月1日から同年12月末日までの紹介件数は772件であった。

日本司法支援センターでは,弁護士を通じた援助制度として,経済的に余裕のない方に民事訴訟などにおける弁護士費用などを立て替える民事法律扶助業務を行っている。また,同センターでは,平成19年10月から,日本弁護士連合会から委託を受けて法律援助に関する業務を行っている。この日本弁護士連合会からの委託業務は,被害者参加人のための国選弁護制度や民事法律扶助制度などではカバーされない方を対象に,人権救済の観点から弁護士費用の援助を行うもので,生命,身体,自由又は性的自由に対する犯罪,配偶者等からの暴力(DV),ストーカー行為などによる被害を受けた方などに係る告訴・告発,法廷傍聴付添い,刑事手続における和解の交渉,加害者との対話,マスコミ対応,犯罪被害者等給付金申請などを援助する「犯罪被害者法律援助」や,虐待やいじめなどを受けた子どもに係る行政手続や訴訟の代理活動を援助する「子どもに対する法律援助」などがある。

被害者参加人のための国選弁護制度においては,日本司法支援センターは,国選被害者参加弁護士の候補となる弁護士の確保のほか,国選被害者参加弁護士の候補を裁判所に指名通知するなどの業務を行っている。平成25年1月現在,被害者参加弁護士契約弁護士は3,189人となっており,平成24年4月1日から同年12月末日までの国選被害者参加弁護士の選定請求受付件数は215件289人であった。

日本司法支援センターでは,犯罪被害者等の支援に携わる弁護士によるサービスの質の向上を目指し,弁護士会や犯罪被害者支援団体との連携・協力の下,犯罪被害者支援のための研修について広く実施できるように努めている。

日本司法支援センターによる支援
業務 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
犯罪被害者支援業務
  犯罪被害者支援ダイヤル受電件数 8,541件 10,429件 10,482件 9,780件 8,357件
地方事務所受付件数 11,403件 15,616件 14,089件 13,096件 12,022件
精通弁護士紹介件数 696件 898件 929件 877件 772件
国選被害者参加弁護士選定請求件数 29件※平成20年12月~ 204件 231件 282件 215件
被害者参加弁護士契約弁護士数 1,844人
平成21年4月現在
2,219人
平成22年4月現在
2,476人
平成23年4月現在
3,014人
平成24年4月現在
3,189人
平成25年1月現在
※平成24年度は,平成24年12月末現在の速報値である。
提供:法務省
犯罪被害者支援業務

(2) 日本司法支援センターによる支援の検討及び施策の実施

【施策番号3】

第2次基本計画により,法務省及び日本司法支援センターにおいて,犯罪被害者等が提起する損害賠償請求訴訟等の準備及び追行の過程で,代理人である弁護士等がカウンセラー等を犯罪被害者等との打合せに同席させることに対して,同センターが支援を行うことについて検討を行い,2年以内を目途に結論を出し,必要な施策を実施するとされたところ,支援を受ける要件を満たす場合に,同センターが実施する民事法律扶助制度による立替払の対象とすることについて,所要の調整を進めている。

(3) 損害賠償請求制度に関する情報提供の充実

【施策番号4】

警察庁において,「被害者の手引」(P75【施策番号170】参照)などにより,損害賠償請求制度の概要などについて,紹介している。

法務省において,犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」や犯罪被害者等向けDVD「もしも…あなたが犯罪被害に遭遇したら」により,損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度(損害賠償命令制度)について紹介している(P64【施策番号117】参照)。

平成18年6月,「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律」(平成18年法律第86号),「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律」(平成18年法律第87号)が成立した(ともに同年12月施行)。これにより,一定の場合に,財産犯などの犯罪行為により犯人が得た財産である犯罪被害財産を没収・追徴した上で,検察官が,これを被害回復給付金として当該事案の被害者等に支給することが可能となった。

これまで,多くの検察庁において,同法に基づき,没収・追徴された犯罪被害財産を被害者の方々に被害回復給付金として支給するための手続である「犯罪被害財産支給手続」を行っている。

犯罪被害財産支給手続の状況
支給手続開始決定件数 開始決定時給付資金総額 支給手続終了件数 支給総額
平成21年 12件 1億951万6,365円 4件 1,188万6,156円
平成22年 12件 7,892万5,743円 7件 7,911万3,542円
平成23年 14件 2億604万1,619円 9件 2,670万7,881円

提供:法務省

損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度に関しては,「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」により,「犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」が一部改正され,一定の犯罪の被害者等から,刑事事件で起訴されている犯罪事実を原因とした不法行為による損害賠償を被告人に命ずる旨の申立てがある場合には,刑事裁判所が,刑事事件について有罪の言渡しをした後,犯罪被害者等の被告人に対する損害賠償請求について,審理・決定をすることができる「損害賠償命令制度」が創設された(平成20年12月1日施行)。損害賠償命令制度については,平成24年12月末までに954件の申立てがあり,そのうち884件が終局した。その内訳は,認容が456件,和解が157件,終了(民事訴訟手続への移行)が111件,取下げが103件,認諾が35件,却下が13件,棄却が2件,放棄が1件などである※2

(4) 刑事和解等の制度の周知

【施策番号5】

刑事和解とは,被告人と犯罪被害者等との間において,被告事件に関連する民事上の争いについて合意が成立した場合には,当該被告事件の係属する裁判所に対し,共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができ,その合意が公判調書に記載されたときは,その記載が,裁判上の和解と同一の効力を有する制度である(「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律」)。これにより,犯罪被害者等は,被告人から債務の履行がない場合に,別途民事訴訟を提起することなく,当該公判調書により強制執行の手続をとることができる。

刑事和解制度

この制度による申立てが公判調書に記載された延べ数は,制度導入(平成12年11月)以降24年までの間に551件であり,うち24年は38件であった。

法務省において,刑事和解の制度について解説した犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」により,周知を図っている(P64【施策番号117】参照)。また,検察官に対しても,会議や研修などの機会を通じて刑事和解等についての理解を深めさせており,検察官が犯罪被害者等に対して適切に情報提供できるよう努めている。

刑事和解制度の状況
年次事例数
平成20年35
平成21年46
平成22年34
平成23年30
平成24年38
(注)
 1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
 2 高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所における被告人と被害者等の間で成立した民事上の争いについての合意内容を公判調書に記載した事例数である。
提供:法務省

(5) 保険金支払の適正化等

【施策番号6】

ア 国土交通省において,自賠責保険に関して,死亡等重要事案の支払審査のほか,保険会社等による被害者等に対する情報提供措置の義務付け,保険会社等への立入検査や指示等を通じて保険金支払の適正化を図っている。また,自賠責保険金の支払い等に関する紛争処理のため,「自動車損害賠償保障法」に基づく指定紛争処理機関である,一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構別ウインドウで開きますに対し,紛争処理業務に要する経費の一部を補助している。同機構では,被害者等からの紛争処理申請に基づき,弁護士や医師などが支払内容に関する審査・調停を行っている。平成23年度の紛争処理件数は,951件となっている。

【施策番号7】

イ 金融庁において,被害者に直接保険金等が支払われる場合も含め,契約に基づく保険金等の支払が適切に行われるように,「保険会社向けの総合的な監督指針」(平成17年8月12日策定)等に基づき,各保険会社における保険金等支払管理態勢整備についての検証を行っているほか,苦情・相談として寄せられる情報を活用して,保険会社の検査・監督を行っている。

【施策番号8】

ウ 国土交通省において,自動車事故に関する法律相談,示談あっせん等により被害者等が迅速かつ適切な損害賠償を受けられるよう,公益財団法人日弁連交通事故相談センター別ウインドウで開きますに対して支援を行っている。平成23年度は,相談所を全国167か所(うち39か所で示談あっせんを実施),延べ8,091日開設し,39,274件の事故相談を無料で受け付けたところである。

【施策番号9】

エ また,自賠責保険による損害賠償を受けることができないひき逃げや無保険車などによる事故の被害者に対しては,「自動車損害賠償保障法」に基づく政府保障事業によって,本来の賠償責任者である加害者などに代わり,政府が直接その損害のてん補を行っている(国土交通省ホームページ「自賠責保険ポータルサイト」別ウインドウで開きます)。平成23年度の損害てん補件数は2,088件であった。

(6) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することを可能とする制度の十分な運用

【施策番号10】

法務省において,「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」(平成17年法律第50号)に基づき,犯罪被害者等への損害のてん補を図っている。

本制度は,受刑者が釈放前に作業報奨金の支給を受けたい旨の申出をした場合,その使用目的が犯罪被害者等に対する損害賠償への充当など相当なものと認められるときは,支給時における報奨金計算額に相当する金額の範囲内で,申出の額の全部又は一部の金額を支給し,当該受刑者が犯罪被害者等への損害賠償等に充当するものである。

この制度を十分に運用するため,刑執行開始時における指導などの際に告知しているほか,居室内に整備している所内生活心得などの冊子に記載して,引き続き周知を図っている。

(7) 暴力団犯罪による被害の回復の支援

【施策番号11】

警察において,「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(平成3年法律第77号。以下「暴力団対策法」という。)などにより,暴力団員による暴力的要求行為の相手方や暴力団員による犯罪の被害者等に対して,本人からの申出に基づき,被害の回復などのための助言や交渉場所の提供などの援助を積極的に行っている(警察庁ホームページ「組織犯罪対策」別ウインドウで開きます「平成24年の暴力団情勢」)。

暴力団対策法には,指定暴力団員が当該暴力団の名称を示すなどにより資金獲得行為を行う際に他人の生命,身体又は財産を侵害した場合には,その指定暴力団の代表者などが損害賠償責任を負うこと,指定暴力団員が,損害賠償請求や事務所撤去のための請求者又はその配偶者等に対して,威迫,つきまといその他の不安を覚えさせるような方法で請求を妨害してはならないことが規定されている。

各都道府県警察は,都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。),弁護士会との間で,民事介入暴力事案の民事訴訟などに対処するために「民暴研究会」を組織し,訴訟関係者に対する暴力団情報の提供や保護対策などの支援を行っている。また,都道府県センターにおいては,暴力団による被害の相談活動のほか,民事訴訟費用の無利子貸付も行っている(全国暴力追放運動推進センターホームページ別ウインドウで開きます)。

平成24年中に警察などが支援した暴力団関係事案に係る民事訴訟件数は51件,援助の措置件数は193件である。


※1 第2次犯罪被害者等基本計画(P148)との対応状況を明らかにするために付したもの。
※2 最高裁判所事務総局の資料による。
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