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4.第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月25日閣議決定)

はじめに

平成16年12月、犯罪被害者等基本法(以下「基本法」という。)が制定され、我が国の犯罪被害者等施策は、新たな段階に進んだ。

それまでも、昭和55年に制定された犯罪被害者給付金支給法による犯罪被害給付制度、平成8年に制定された被害者対策要綱に基づく警察における総合的な被害者対策、平成11年に検察庁に導入された被害者等通知制度、平成12年に制定されたいわゆる犯罪被害者保護二法による刑事手続における犯罪被害者の保護等、各省庁において、それぞれ、犯罪被害者等施策を進めており、これらの取組は、一定の成果を上げてきたといえる。しかしながら、これらの取組は、政府全体としての取組ではなく、社会においても、必ずしも理解が示されていたとは言い難かったこともあり、犯罪被害者等は、十分な支援を受けられないなど、依然、厳しい状況に置かれていたと言ってよい。

そのような中、「様々な犯罪が跡を絶たず」、「国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない」(基本法前文)として、平成16年12月、基本法が制定されたのである。同法は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とし、犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにして、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するための基本構想を示している。

その後、平成17年12月、基本法に基づき、犯罪被害者等基本計画(以下「第1次基本計画」という。)が策定された。同計画は、個別具体的な施策の着実な実施を図っていくため、4つの基本方針(①尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること、②個々の事情に応じて適切に行われること、③途切れることなく行われること、④国民の総意を形成しながら展開されること)の下、5つの重点課題(①損害回復・経済的支援等への取組、②精神的・身体的被害の回復・防止への取組、③刑事手続への関与拡充への取組、④支援等のための体制整備への取組、⑤国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組)を掲げ、各府省庁が実施すべき施策をこの重点課題に振り分け、整理して示している。また、国の行政機関相互、地方公共団体及び様々な関係機関・関係者と連携・協力を図ること、犯罪被害者等の意見を施策に適切に反映すること、施策の実施状況の検証・評価・監視を行うことなど、犯罪被害者等のための施策が全体として効果的・効率的に行われるための推進体制に関する施策についても示している。

そして、基本法により内閣府に設置され、官房長官を会長とし、関係閣僚及び有識者から構成される犯罪被害者等施策推進会議(以下「推進会議」という。)及び推進会議決定により設置され、犯罪被害者等施策推進会議令により置かれた専門委員(関係行政機関の職員及び有識者)等から構成される会議を犯罪被害者等施策の推進の枠組みとし、同枠組みの下、各府省庁は、第1次基本計画に基づき、各施策を着実に実施してきた。

例えば、「刑事手続への関与拡充への取組」では、被害者参加制度、仮釈放審理において被害者等の意見等を聴取する制度、少年審判の傍聴を可能とする制度などが導入された。これらの取組により、犯罪被害者等からの「事件の当事者」として事件の真相を知りたい等の要望に応えるとともに、刑事手続において被害者は証拠として扱われているにすぎないと批判された従来の状況については、一定の改善が図られたと言える。また、「損害回復・経済的支援等への取組」については、損害賠償命令制度が導入されたほか、重度後遺障害者に対する障害給付金及び生計維持関係のある遺族に対する遺族給付金について、その最高額を自賠責保険並みの金額に近づけ、最低額も引き上げるなど、犯罪被害給付制度の拡充が図られた。損害賠償命令制度の導入は、損害賠償の請求に関する犯罪被害者等の労力を軽減し、簡易迅速な手続による救済を可能にするものとして評価でき、犯罪被害給付制度の拡充は、犯罪被害者等に対する経済的支援の分野における大きな改善であると言える。

また、基本法により、国との役割分担を踏まえ、地域の状況に応じて施策を策定し実施することとされた地方公共団体は、施策担当部局の設置、犯罪被害者等への総合的対応窓口の設置、具体的施策の実施などの取組を始めた。平成22年7月現在、全都道府県で施策担当部局及び総合的対応窓口が設置されており、市町村については、約9割が施策担当部局を設置し、半数を超える市町村が総合的対応窓口を設置している。そして、国、地方公共団体、日本司法支援センター、犯罪被害者支援団体等の連携協力も進んできた。

総じて、犯罪被害者等施策は、第1次基本計画の推進により、大きく進展したものと言える。

しかしながら、内閣府が平成20年度に実施した「犯罪被害者等に関する国民意識調査」によると、国民一般のうち、「裁判員制度」の意味がわかる者は約8割であるのに対し、「犯罪被害者等基本法」及び「被害者参加制度」の意味がわかる者は1割ないし2割しかおらず、犯罪被害に関する国民一般の理解は十分ではないと言わざるを得ない。また、同調査によると、「被害者支援に関心がある」との設問に対し肯定的回答をした者は約5割にとどまっており、国民一般の犯罪被害者等支援ないし犯罪被害者等に関する関心も、高いとは言えない。

一方、内閣府が平成21年度に行った「犯罪被害類型別継続調査」によると、平成19年度から3年間連続して回答した犯罪被害者等(※1)のうち、その精神健康状態が重症精神障害相当とされる者の割合は一般対象者(※2)の10倍近くになっており、犯罪被害が精神健康状態に及ぼす影響の大きさがうかがえる。また、主観的回復状況が悪化傾向にある犯罪被害者等は、加害者だけでなく、捜査・裁判機関の職員、医療機関の職員、民間団体の者、報道関係者、近所・地域の住民、職場・学校関係者、友人・知人、家族など、様々な者から高い割合でいわゆる二次的被害を受けたと感じていることが明らかとなっている。そして、犯罪被害者団体や犯罪被害者支援団体からは、依然として、犯罪被害者等が関係する様々な問題について、改善を求める要望が寄せられている。

もとより、第1次基本計画の推進により、犯罪被害者等の抱える問題が全て解決されたわけではなく、今後とも、国民の理解と配慮・協力を一層促すとともに、政府全体として、更なる取組の強化を図っていく必要がある。

今般、第1次基本計画の計画期間が平成22年度末で終了することから、犯罪被害者等の権利利益の保護が一層図られる社会を目指し、第2次犯罪被害者等基本計画(以下「第2次基本計画」という。)を策定することとする。


(※1) 犯罪被害類型別継続調査は、平成19年度、平成20年度及び平成21年度の3か年にわたり実施された。
この調査では、犯罪被害者団体及び犯罪被害者支援団体を通じて、同一の犯罪被害者等に継続して調査を行うパネル調査と各年度ごとにインターネットを利用して一般生活者のモニターを対象に行うWeb調査(単年度調査)の2種類の調査を実施した。
パネル調査の対象者は、平成19年度調査時点において、過去10年以内に①殺人・傷害等、②交通事故、③性犯罪、④その他の犯罪のいずれかの被害に遭った被害者本人又はその家族若しくは遺族である。
平成21年度のパネル調査回答者(有効回答)は115人(①40人、②63人、③8人、④4人)であり、このうち、3年連続回答者は104人である。
3年連続回答者のうち、精神健康状態に関する質問への有効回答者数は93人であり、そのうち、重症精神障害相当とされる者の割合は35.5パーセントである。
(「平成21年度犯罪被害類型別継続調査調査結果報告書」6頁、81頁)
(※2) Web調査において、過去10年以内に犯罪によって生命・身体に深刻な被害を受けた経験がないとする者(700人)のことである。
この一般対象者のうち、重症精神障害相当とされる者の割合は4.1パーセントである。(「平成21年度犯罪被害類型別継続調査調査結果報告書」121頁)
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