第5節 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

1 国民の理解の増進(基本法第20条関係)

《基本計画において、「速やかに実施する」とされたもの》

(1) 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

文部科学省において、都道府県教育委員会などとの連携、協力の下、体験活動を生かした道徳教育や地域人材の積極活用などにより、命を大切にする心を育むなどの道徳教育を推進するための実践研究を実施している。

また、かけがえのない生命について考えさせるなど、道徳の内容を分かりやすく表した「心のノート」をすべての小・中学生に配布しており、平成20年度においても配布した。「心のノート」の趣旨を生かした創意ある活用を通して、授業や生活に意欲的に取り組み、かけがえのない命について児童が考えたり話し合ったりすることを通して、児童自らの道徳性の育成に役立っている。

さらに、平成21年3月には「心のノート」を改訂し、人を傷つけないことなど、人間としてしてはならないことをしないことについてしっかり指導する観点から、内容の見直しを行った。

▼心のノート
心のノートの写真
提供:文部科学省

(2) 学校における体験活動を通じた命の大切さの学習についての調査研究の実施及びその成果の普及

文部科学省において、学校における自然体験活動や社会奉仕体験活動の充実を図っており、平成20年度は「児童生徒の輝く心育成事業~ふれあい応援プロジェクト~」において命の大切さを学ばせる体験活動プログラムについて調査研究を実施している。調査研究の成果については、教育委員会の担当者などを集めたブロック協議会を開催し、全国の教育委員会や学校に普及する。

(3) 学校における犯罪被害者等の人権問題も含めた人権教育の推進

文部科学省において、「人権教育・啓発に関する基本計画」を踏まえ、学校、家庭、地域社会が一体となって教育上の総合的な取組を推進する「人権教育総合推進地域事業」、学校における人権教育について実践的な研究を委嘱する「人権教育研究指定校事業」を実施している。

また、学校における人権教育に関する指導方法の在り方などについて調査研究を行う「人権教育の指導方法の在り方等に関する調査研究」などを実施し、平成20年3月に「人権教育の指導方法等の在り方について【第三次とりまとめ】」をまとめた。

さらに、「人権教育を推進するための指導者の養成を目的とした研修」において、犯罪被害者等について取り上げている。

社会教育においては、都道府県・市町村教育委員会との連携・協力のもと、「人権教育推進のための調査研究事業」を実施している。

(4) 学校における犯罪抑止教育の充実

文部科学省において、平成18年5月に「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を作成して、各教育委員会・学校などに配布し、これらを活用して非行防止教室の実施を始めとした犯罪抑止教育の充実を図っている。また、20年6月に開催した「生徒指導担当指導主事連絡会議」において、教育委員会の生徒指導担当者に対して、警察などの関係機関と連携した非行防止教室の取組を充実するよう促した。

(5) 子どもへの暴力防止のための参加型学習への取組

文部科学省において、上記「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を活用した非行防止教室の実施を始め、子どもへの暴力防止のための参加型学習の取組を推進している。

(6) 家庭における命の教育への支援の推進

文部科学省において、命の大切さを実感させる意義などを記述している「家庭教育手帳」を作成し、全国の教育委員会などに提供し、学習講座などでの活用を図っている。

本手帳は、一人ひとりの親が家庭を見つめ直し、それぞれ自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう作成しており、母子健康手帳の交付時や、小学校入学時などの機会を通じて配布されるよう促している。また、教育委員会や子育て支援団体などが主催する子育て講座などにおいて、受講者の学習教材として有効に活用されている。

(7) 生命・身体・自由の尊重を自覚させる法教育の普及・啓発

法務省において、平成19年5月、2年間にわたる法教育推進協議会の協議の状況を整理し、「法教育推進協議会の協議の状況について」と題する中間取りまとめを行い、法務省ホームページに公表した。

さらに、この取りまとめに示された方針に従い、また学習指導要領の改訂を踏まえつつ、更なる法教育の普及・充実に向けた検討を行うため、法教育推進協議会の下に、私法分野における法教育の在り方に関する検討などを行うための「私法分野教育検討部会」、小学生を対象とした法教育教材の作成などを行うための「小学校教材作成部会」を設置した。

平成21年2月13日には、法教育を更に普及させるための広報・啓発活動の一環として、福岡市においてシンポジウムを開催した。

(8) 「犯罪被害者週間」にあわせた集中的な啓発事業の実施、犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

内閣府において、11月25日から12月1日までの7日間を「犯罪被害者週間」として設定している。平成20年度は、「乗り越える 勇気をくれる みんなの支援」を標語として、内閣府主催の「犯罪被害者週間」国民のつどい中央大会を開催するとともに、内閣府・地方公共団体(北海道、滋賀県、福岡県、浜松市)共催の地方大会を開催した。また、開催結果を、内閣府犯罪被害者等施策ホームページに掲載するとともに、報告書として関係機関へ配布した。

平成21年度においても、中央大会を東京で開催し、地方大会を複数の地域で開催する予定である。(コラム7「犯罪被害者週間の実施」参照)。


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