1.目的・経緯
犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が直面するその時々の困難を打開することにだけ注目するのではなく、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになることに視点をおいて行うことが重要です。そのため、制度や担当機関などが替わっても連続性をもって当該犯罪被害者等に対する支援が行われるよう、また、犯罪被害者等の誰もが、必要な時に必要な場所で適切な支援を受けられるよう、「途切れない支援」を実施していかなければなりません。
そうした「途切れない支援」の実現のため、「支援のための連携に関する検討会」においては、関係機関・団体の連携ネットワークの充実、強化などについて検討を行い、平成19年8月、最終取りまとめに至りました。同最終取りまとめにおいて、犯罪被害者支援を行う際の留意点や連携方法などをまとめた「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の基礎的自治体レベル、都道府県レベルにおける作成、備付け、内閣府における同ハンドブックのモデル案の作成などが求められており、これを受け、内閣府では、有識者や関係省庁とともに、「犯罪被害者支援ハンドブック・モデル案」を作成しました。
2.作成方法
平成20年4月、内閣府において、作成委員会、作成ワーキングチームを設置し、同年11月まで、計3回の委員会、計6回のワーキングチームを開催しました。
作成に当たっては、モデル案を犯罪被害者等の視点に立ったものとするため、まず、犯罪被害者等に対して、支援者にどのようなことに留意して欲しいか、他機関・団体の紹介を受ける時には、どのような情報を提供して欲しいか、などといったアンケートを実施しました。その結果に基づき、事務局で素案を作成し、被害者支援の実務家からなるワーキングチームにおいて検討しました。さらに、ハンドブックは様々な機関・団体が利用することとなるため、多くの関係機関・団体、専門分野を代表する有識者等からなる委員会において幅広い視点で検討を重ねました。
また、支援者にとって、より使いやすいものとするため、モデル案の内容について、全国の関係機関・団体に対し、アンケートや意見募集を実施しました。
こうして、平成20年12月、非常に多くの関係者の御協力のもと、モデル案は完成しました。
3.内容
モデル案は、犯罪被害者支援に初めて携わる方であっても理解しやすいように、なるべく簡易な記載にし、必要最低限の内容にすることとされました。また、支援者のみでなく、犯罪被害に遭われた方や、身近な人が犯罪被害に遭われた場合にも参考になるようにと、検討が進められました。
具体的には、以下の内容が盛り込まれています。
(1) 犯罪被害者等の抱える様々な問題
犯罪被害者等の直面する困難、心身の不調、生活上の問題、周囲の人の言動による傷つき、加害者からの更なる被害、捜査、裁判に伴う様々な問題を記載。
(2) 支援に携わる際の留意事項
犯罪被害者等に対応する際の留意点、具体的な言葉のかけ方、殺人、交通事件、性暴力など被害類型別の特徴などを記載。
(3) 様々なニーズに対応するための関係機関・団体の連携
犯罪被害者等に他機関・団体を紹介する際に気をつけること、犯罪被害者等に提供する情報、紹介先機関・団体に提供する情報などを記載。
(4) 各機関・団体における支援業務
犯罪被害者等の支援として利用し得る支援や制度、機関・団体を紹介。
(5) ニーズに応じた解決手段
「精神的につらい、体調が悪い」、「医療費の負担を軽くしたい」、「また被害に遭わないか不安を感じる」、「加害者がどうなったのか知りたい」など、犯罪被害者等から受ける一般的な相談ごとに、代表的な支援・制度を紹介。
(資料編)
・「犯罪被害申告票(仮称)」書式
犯罪被害者等が、被害について申し出をしにくい時に活用できるような書式の例示。
・関係機関・団体へ伝達すべき犯罪被害者等支援に関する情報に係る様式
機関・団体同士で犯罪被害者等を紹介する際に、情報伝達にあたって様式が必要な場合の書式の例示。
4.地域におけるハンドブックの作成
作成されたモデル案は、内閣府犯罪被害者等推進室ホームページ(http://www8.cao.go.jp/hanzai/shien/index.html)に掲載され、公表されています。しかし、モデル案は、あくまでモデル案ですので、実際に、各地域においてその実情に応じたハンドブックが作成されることが求められます。
そのため、内閣府においては、全国の地方公共団体にモデル案を配布し、職員向け研修を実施するなどして、各地域の機関・団体におけるハンドブック作成について、検討するようお願いしています。
犯罪被害者等の誰もが、必要な時に必要な場所で適切な支援を受けられるようになるためには、一刻も早いハンドブックの作成、活用が求められます。また、被害者支援には、非常に多くの機関・団体が携わることから、各機関・団体における支援者の育成のほか、機関・団体同士の認識の共有などが必要です。「途切れない支援」の実現に当たっては、機関・団体が信頼関係を構築し、各地域における基盤作りを着実に進めていくことも重要です。