第4節 支援等のための体制整備への取組


COLUMN 7

民間団体の取組

  犯罪被害者等が被害にあってから再び平穏な生活を取り戻すためには、被害直後から中長期にわたって、そのニーズに応じた支援を途切れなく受けられることが重要である。民間団体による支援活動は、犯罪被害者等が有する多様な事情に応じたきめ細かで迅速な対応を可能にするものであり、関係機関間の連携による途切れのない支援を行う上で不可欠である。
  現在、我が国では、犯罪被害者等の分野において多種多様な民間団体が活動しているが、ここでは対象とする犯罪被害類型や活動の主体などに着目して
  <1> 犯罪被害者等早期援助団体とその指定を目指す団体
  <2> NPO法人全国被害者支援ネットワーク
  <3> 特定の犯罪類型の被害者等を対象とする団体その他<1><2>以外の支援団体
  <4> 犯罪被害者等自身が主体となって活動する団体・グループ
に分類して活動事例などを紹介する。

<1> 犯罪被害者等早期援助団体とその指定を目指す団体
  犯罪被害者等早期援助団体とは、被害にあった直後から犯罪被害者等に対し、援助を適正・確実に行うことができる民間団体として、都道府県公安委員会により指定される団体である。都道府県公安委員会からの指定を受けることによって、犯罪被害者等早期援助団体は、被害者等の同意のもとに警察から当該被害者等の情報提供を受けることができる。提供された情報に基づいて、犯罪被害者等早期援助団体は、被害直後の段階から犯罪被害者等の身の回りの世話などの日常生活の支援、病院や法廷への付添い、物品の供与や貸与、役務の提供などの直接的支援を行うことができる。平成19年10月1日現在、犯罪被害者等早期援助団体は13都道府県13団体、その指定を目指している団体は33道府県33団体ある。
  どこに住んでいても、犯罪被害者等が被害直後から必要な支援が受けられるようになるためには、今後、犯罪被害者等早期援助団体が全ての都道府県に存在するようになることが望ましい。
  犯罪被害者等早期援助団体には、例えば(社)被害者支援都民センターがある。

〈(社)被害者支援都民センターの取組〉
  電話相談、面接相談、直接的支援(法廷や病院などへの付添いや自宅訪問)などの形で、犯罪被害者等やその家族が少しでも事件前の生活を取り戻せるように、その回復の過程を支える支援を行っている。センターの職員一人一人が事件直後からの積極的な介入、長期的・継続的な支援の重要性を認識している。また、同センターは後述の自助グループも開催している。

事務所の様子
事務所の様子
提供:NPO法人全国被害者ネットワーク

<2> NPO法人全国被害者支援ネットワーク(以下「ネットワーク」という。)
  ネットワークは、犯罪被害者等への総合的な支援を目指す民間支援団体の連合体である。
  ネットワークでは、犯罪被害者支援関係機関・関係者が集まる「全国犯罪被害者フォーラム」を開催するとともに、毎年2回、全国の加盟団体が一堂に会する全国研修会などを行っている。

「全国犯罪被害者支援フォーラム2006」
  ネットワークの活動は、平成3年10月3日に開催された「犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律制定10周年記念シンポジウム」における、一遺族の社会に支援を求める声に応える形で始められた。ネットワークは、基本法が制定される以前から毎年10月3日を記念してキャンペーン事業を行っている。18年10月3日に有楽町朝日ホールで開催した「全国犯罪被害者支援フォーラム2006」は、前日の「秋期全国研修会」に参加していたネットワーク加盟団体で活動している支援者約200名を含む計450名が参加し、民間被害者支援団体の支援者、被害者支援に携わる機関が意見を交え連帯を確認する貴重な機会となった。加盟団体で活動している支援者は、フォーラムで学んだ結果を各地に持ち帰ることができた。

全国犯罪被害者支援フォーラム2006

「春期全国研修会」
  平成18年2月9日、京都市においてネットワークと(社)京都犯罪被害者支援センターが共同で「春期全国研修会」を開催した。研修会では、「激動する社会の中で被害者支援を考える~世界・日本・地域~、犯罪被害者等基本法制定を受けて」を統一テーマに、韓国犯罪被害者中央センター事務局長や(社)京都犯罪被害者支援センター副理事長による講演、支援のレベルや目的に応じた5つの分科会が行われた。全国研修会は、加盟団体等の相互の情報交換と学習、交流の場として貴重な研修の機会となっている。

春期全国研修会
提供:NPO法人全国被害者ネットワーク

<3> 特定の犯罪類型の被害者等を対象とする団体その他<1><2>以外の支援団体
  現在、我が国には、交通事故や性被害、配偶者からの暴力(DV)、児童虐待など特定の被害類型の犯罪被害者等を対象に支援活動を行っている団体も存在している。
  例えば、いわゆる「民間シェルター」は、民間団体によって運営されているDV被害者が緊急一時的に避難できる施設だが、現在、民間シェルターでは、被害者の一時保護だけに止まらず、相談への対応、カウンセリング、被害者の自立に向けたサポートなど被害者に対する様々な援助を行っている。民間シェルターは、被害者の安全の確保のため、所在地を非公開としている。
  NPO法人全国女性シェルターネットは、これらの民間シェルターがお互いに連携や協力をすることができるようにネットワークを確立し、事務局の機能を果たしている。また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」などの改正に当たって、当事者団体の意見を代表して政策提言を行っている。全国女性シェルターネットでは、平成10年から会員団体、研究者、行政担当者、被害当事者などを集めた全国大会を毎年行い、第10回となる19年は、アジア各国のNGOなどが一堂に会する国際フォーラムの開催を予定している。また、18年から企業と連携して、被害者のためのIT講習を行っており、これまで講習を受講した約600人のうち1割が就労するなど、配偶者からの暴力の被害を受け、社会的、経済的に困難な状況にある被害者の自立を支援している。

<4> 犯罪被害者等自身が主体となって活動する団体・グループ
  このほか我が国には、犯罪被害者等の権利回復に係る各方面への働きかけや、当事者同士の支援などを目的として、犯罪被害者等自身が主体となって活動する様々な団体・グループが存在する。
  その中には、自助グループと呼ばれているものもある。犯罪被害者等は、周りの人との信頼関係が絶たれ孤立している場合も多い。自助グループは、同じような苦しみや辛さを抱えた犯罪被害者等同士が定期的に集い、安心できる環境の中で体験した被害や心情について語り合うことでお互いに支え合い、被害からの回復への手がかりを得ようとするものである。
  こうした自助グループは、犯罪被害者等の精神的被害の回復に重要な役割を果たすものであり、各地の支援団体の支援や協力の下、活動している事例も見られる。その一例として和歌山県犯罪被害者自助グループ「なごみの和」や(社)被害者都民センター自助グループがある。

▼和歌山県犯罪被害者自助グループ「なごみの和」のリーフレット
和歌山県犯罪被害者自助グループ「なごみの和」のリーフレット

和歌山県犯罪被害者自助グループ「なごみの和」のリーフレット

▼(社)被害者都民センター 自助グループの開催
(社)被害者都民センター 自助グループの開催
提供:NPO法人全国被害者ネットワーク
和歌山県犯罪被害者自助グループ「なごみの和」


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