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第4章 支援等のための体制整備への取組

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3 民間の団体に対する援助(基本法第22条関係)

トピックス 民間被害者支援団体における犯罪被害者支援

犯罪被害者等支援に当たっては、個々の犯罪被害者等が抱える様々な事情等に即し、警察等の関係機関・団体等と連携しながらきめ細かな対応を中長期的に行う民間被害者支援団体の存在が不可欠である。

これらの民間被害者支援団体における取組及び支援者の手記を紹介する。

■財政的基盤の充実強化に向けた取組
 新商品「もったいない和」、「おみやげ生うどん」

公益社団法人 かがわ被害者支援センター

公益社団法人かがわ被害者支援センターにおいては、安定的財源の確保に向けて、これまでの被害者支援自動販売機の設置やホンデリング等に加え、令和4年度から新たな取り組みとして、事業者が製造販売する商品の売上金の一部を当センターに寄附していただく仕組みの「犯罪被害者支援商品取扱店」の募集を香川県警察の協力のもと実施しました。

その結果、令和4年7月から高松市内の和菓子店の「もったいない和」、令和4年12月から香川県のソウルフードの讃岐うどんを製造販売している地元業者の「おみやげ生うどん」をそれぞれ犯罪被害者支援商品として販売し、協力いただけることになりました。

このことは、当センターにとりまして財政的基盤の充実はもとより被害者支援の輪を広げ、社会全体で被害者を支えるという機運の向上にも繋がるものと考えており、引き続き犯罪被害者支援商品の取扱店を広げていくこととしております。

新商品「もったいない和」、「おみやげ生うどん」
新商品「もったいない和」、「おみやげ生うどん」

■犯罪被害・交通事故ご遺族の自助グループ 「さくらの会」

公益社団法人 くまもと被害者支援センター

被害者ご遺族の自助グループ「さくらの会」は、罪種を問わない被害者遺族の会です。ご遺族が代表になり運営されている自助グループで、現在、13世帯、21名のメンバーが在籍されています。被害者支援センターは会場や担当者の提供などのサポートを行っています。

犯罪被害や交通事件のご遺族が、同じように大切な家族を亡くした方々との語り合いの中で、想いを共有し、安心して語ることにより孤立感を軽減するなど回復の一助となることを目的としています。

定例会では、月に1回、2時間ほど語り合いを行います。被害から長い年月が経った方からまだ日が浅い方、それぞれ色々な気持ちを話して互いに受け止め、情報の交換等をされています。被害経験等のお話だけでなく、時事ニュースや雑談などのたわいないお話で、笑顔がこぼれる場面もあります。

定例会の他は、手記集を不定期で発行したり、研修等での講演や、街頭活動等への参加協力をしたりしています。

さくらの会は立上げから15年が経ちましたが、初回から現在まで殆ど休むことなく定例会を開催しています。時には参加者がおひとりという事もありましたが、長年継続して会が存続し続けているのは、代表の方の会へのお気持ちと、自助グループのメンバーの絆、自助グループでしか話せない、同じ境遇の人にしか分からない気持ちを受け止める会の存在意義、などの理由があるからだと思います。

支援者としては、ご遺族の率直なお気持ちや、時間の経過とともに変わっていく気持ち、時間が経過しても変わらないお気持ちを聞くことができる貴重な時間だと感じています。自助グループへの関わりは、被害者支援を行う上で欠かせないものだと思います。

自助グループがあること、その大切さを日々の活動の中で感じています。

さくらの会

■支援者の手記 「被害者・ご遺族から受け取った大切なもの」

公益社団法人 ぎふ犯罪被害者支援センター
堀内 美加代

「幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」

歳を重ねるにつれ、なるほどなと思う言葉です。

私はよく本を読む子どもでした。生き辛かったので、人の苦しみについて知りたいと思っていました(楽しい本もたくさん読みましたけれど)。人が何をどのように苦しみ、どのように救われていくのか知りたかったのです。事件・事故・災害に遭われた方や、そうした人に関わり支える人達の本をたくさん読み感じたことは、なるほど人の苦しみは形も手触りもそれぞれに違う。でも、共通しているのは、社会として苦しむ人を支える制度や理解が、この国には足りないということでした。

民間の犯罪被害者支援センターがあり、自分も支援員として活動できる道があると知ったのは、地方紙に掲載されていた記事を読んで。即座に養成講座に申し込みました。12年前のことです。

支援員となった私は、相談電話を取れば「いま笑ったでしょう!?」と怒らせ、不用意に被害者の体に触れては怖がらせ、「皆さんそうみたいですよ」と言っては「他の人と一緒にしないで」と叱られ…。脇の甘い私は、被害者・ご遺族からお叱りを受けることも多く、思い返せば赤面することばかりです。

内部研修や外部研修、また先輩方に、たくさんのことを教えていただきました。それでも、相談員となった今、お叱りも含めて、被害者・ご遺族から教えていただいたことが、何より血肉になっていると感じています。

大切な人を失って悲嘆のどん底にうずくまっても、やがてまた立ち上がって歩き始める。亡くなった人を忘れることなく、その存在と対話しながら精いっぱいの選択をする。そうやって、投げ出すことのできない人生を、どうにかして取り戻そうと奮闘する、その姿を垣間見せていただきながら、人として大切なものを受け取っているなと感じることが、しばしばあります。

被害者支援に携わる歳月を重ねるにつれ、お役に立てることは本当にわずかばかりのことしかないのだと悟るようになりました。なぜなら、被害者・ご遺族が心から望んでいるのは、「傷ついた心や体、失った命を元に戻してほしい」ということなのですから。自分にできることは、目の前にいる人の苦しみに目を凝らすこと、その痛みや悲しみの手触りを懸命に想像すること。何かサポートを求められたときのために、知識やスキルを研鑽すること。そして、「被害者」として生きるだけではないその人の人生全体を、見つめることなのかなと考えています。

私は今、令和3年度から始まったLINE相談の担当者として、子どもや若い人からの相談を受けています。様々な困難を抱える相談者が、匿名で驚くような話を聞かせてくれます。「LINEだから誰にも言えなかったことを話せる」という人達に、力になりたい大人がここにいることを伝えるにはどうすれば良いのか、試行錯誤中。少しずつ、電話をかけて来てくれる人が現れ、面接につながり、加害者が警察に逮捕されるケースも出てきて安堵しています。

「被害者支援」は決して特別なことではない。なぜなら、「被害者」は特別な人ではないのだから。最近、そう感じるようになりました。自分が明日「被害者」になったとしても何の不思議もないのだから、「支援していただく」などと感じなくても良いサポートができればいいなと思っています。

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