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日時: | 平成18年12月11日(月)13時00分~15時01分 | |
場所: | 合同庁舎4号館共用第2特別会議室 | |
出席者: | ||
座長 | 長井 進 | 常磐大学大学院被害者学研究科教授 |
小西 聖子 | 武蔵野大学人間関係学部教授 | |
高井 康行 | 弁護士 | |
本村 洋 | 全国犯罪被害者の会幹事 | |
山上 皓 | 東京医科歯科大学難治疾患研究所教授 | |
荒木 二郎 | 内閣府犯罪被害者等施策推進室長 | |
小田部耕治 | 警察庁給与厚生課犯罪被害者対策室長 | |
代理 | 荻野 剛 | 総務省自治行政局自治政策課理事官 |
井上 宏 | 法務省大臣官房司法法制部司法法制課長 | |
木岡 保雅 | 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 | |
北村 彰 | 厚生労働省参事官(社会保障担当参事官室長併任) | |
依田 晶男 | 国土交通省住宅局住宅政策課長 |
(議事次第)
1.開会
2.「犯罪被害者等の支援に携わる関係機関・団体の連携に関する現状把握調査」(連携調査)について
3.「更なるネットワークの構築(既存のネットワークの拡充、連携強化方策)」について
4.閉会
(配布資料)
資料1 | 連携調査関係資料 |
資料2 | 内閣府資料 |
提言案[PDF形式:24KB] | |
【参考資料1】[PDF形式:29KB] | |
【参考資料2】[PDF形式:18KB] |
(議事内容)
1.「犯罪被害者等の支援に携わる関係機関・団体の連携に関する現状把握調査」(連携調査)について
前回合同会合において、中間報告を行った、「犯罪被害者等の支援に携わる関係機関・団体の連携に関する現状把握調査」(連携調査)について、最終結果報告を行った。概要は、以下のとおり。
○事務局 お手元の調査報告書に基づき、ご報告いたします。サーベイリサーチセンターにお願いし、大変大がかりな調査を行った。
まず、1ページをご覧ください。調査対象機関・団体については、7,450機関・団体に対して調査票を郵送した。回収状況については、有効回収数が3,612件で、48%の回収率となった。
次に、2ページをご覧ください。機関・団体別の回収状況一覧については、ある意味予想どおりというところもあり、ちょっと残念な数字になっているところもあるが、有効回収率について、上から順番に申し上げると、都道府県では3分の2、31の都道府県から回答があった。市町村については、半分以下になっている。これは、国・地方の責務として、昨年4月に基本法が制定・施行になっているが、これから施策の重要性を地方公共団体に認識していただく必要があるのではないかと考えられる。もちろん都道府県などは、まだ被害者の窓口や担当セクションが昨年の段階では決まっていなかった、あるいは決まったばかりのところもあって、このような数字となっている。また、司法に関する相談機関、いわゆる司法書士会や弁護士会などの数字が低いと感想を持っている。児童関連福祉機関も半分のところから回答をいただいているし、その他の福祉機関、いわゆる児童福祉相談所や保健所についても、非常に被害者の対応については大事なところであるが、半分程度の回答であった。医師会や学校・教育委員会も36%、46%ということで、特に児童虐待などについても基本計画ではかなり細かく書き込んであるが、被害者問題についてもう少し認識を持っていただく必要があると感じる。労働関係の労働相談コーナーのところも14%、公共職業安定所も6割弱で、被害者の方の再就職の相談なども非常に大事だと思うが、まだまだ被害者施策は始まったばかりと感じる。
次に、5ページをご覧ください。調査結果のまとめについては、これは連携の状況を調べるのに大きく2つに分けて、自分のところに被害者を紹介されたというケースと、それから自分のところからどこに紹介したかということでアンケート調査をやり、どちらについても、多くて大体3割ぐらいで、もちろん連携なしで自分のところで済ませらるというケースもあり、一概には言えないが、やはり連携としては、あまり十分ではないと推測される。
次に、6ページをご覧ください。上の表は、回答いただいた調査数3,612が、機関別に並んでいる。右の方は、それぞれどのくらい紹介を受けた機関・団体があるかどうか、それから紹介した機関・団体があるかどうかを、大体のイメージで示した数字である。下の方は連携強度の分析ですが、紹介があって、かつ、頻度が100件以上を連携強度100とし、以下、75、50、25として、全く紹介もしたことがないものをゼロとして、連携指数を出した。
連携指数に基づき、どの団体がどの団体とどれぐらい連携をとっているかという分析をしたのが7ページ以下の表である。都道府県については、都道府県の総数は31で、紹介する方が多いのか、される方が多いのかを単純比較する意味で、連携指数を足してみると、紹介する方が69.2、紹介される方が43.6で、都道府県の場合は紹介している方が多いということを大づかみでご理解していただければと思う。
また、それぞれどの段階との関係が深いかということを、連携の強度で示している。交通事故等相談機関、左の下の方ですが、やはり紹介する方が多いという結果が出ている。
それから、その下の市区町村ですと、トータルで844の市区町村からご回答いただき、警察、福祉機関、地方公共団体との関係が深いということが見てとれるかと思う。
次に、8ページをご覧ください。警察・海上保安庁については、警察の場合は、やはり民間の支援団体、民間団体との連携、地方公共団体、女性関連福祉機関等との関係が、紹介される場合も紹介する場合も多くなっている状況が伺える。
それから、その下の裁判所・検察庁・法務局については、やはり警察とか司法相談機関といった、司法関係者同士が多いのが特徴ではなかろうかと思う。
次に、右の9ページ中の司法に関する相談機関、弁護士会だとか司法書士会等については、民間被害者団体から紹介を受ける、あるいは地方公共団体から紹介を受けるというのが多く、逆に警察や海保に紹介する方が多いという結果が出ている。
次に、その下の矯正保護の関係については、全体に連携という意味では非常に薄いのかなということが、全体の数字で見てとれるのではないかと思う。
次に、次の10ページ中の女性関連の福祉機関については、やはり同じ機関同士、あるいは警察や地方公共団体等との関係が深いということではなかろうかと思う。
次に、児童関連の福祉機関については、やはり学校からの紹介が多く、全体に紹介するよりも受ける方が多いというのが、数字から見てとれるのではないかと思う。
次に、11ページの上の方のその他の福祉機関、福祉事務所や保健所については、下の医師会や医療機関等に対しては、紹介するよりも紹介される方が多いという結果になっている。
次に、15ページをご覧ください。15ページで、それぞれの機関・団体で、相談や紹介等に対応する職員の数については、大体4割が3人以下、それから100件以上対応しているというところでも、3割近くは3人以下で対応しているという結果が出ている。
次に、17ページをご覧ください。情報提供あるいは直接支援といった対応については、4分の3が「該当なし」か「50件未満」ということで、そんなに数は多くないという状況である。
次に、20ページをご覧ください。まず犯罪被害者等に係る情報管理の方法については、文書で管理しているのが、全体で6割、それから100件以上対応しているところで、文書で管理しているのが77%。電子媒体で管理しているのが、全体で9%ぐらい、100件以上では20%近くとなっていて、データで管理しているもののうち、データベースを構築していますかという質問が21ページであり、構築しているところが、左側では44%ぐらいである。100件以上の団体にあっては、73%ぐらいが構築しているという結果になっている。
次に、23ページをご覧ください。支援サービスの種類については、どういうサービスを提供していますかということで、100件以上の団体と、それからそれ以外の全体では若干違うが、いずれにしても情報提供が一番多い。それから法律相談、それからカウンセリングといったような順番になっている。
25ページ以下は、それぞれの団体について個別にアンケートの結果があるので、後ほどご覧ください。
次に、220ページをご覧ください。どのような情報を犯罪被害者等に対し提供していますかについては、紹介先の機関・団体の連絡先というのが最も多い。また、紹介先の機関・団体が提供する支援の中身の説明というのが38%ぐらいで、100件以上の団体では、その辺のパーセントが高くなっている。
右の221ページが自由記載で、どんな要望がありますかということについては、やはり紹介先の機関・団体のより詳細な情報が知りたい。担当者や費用がかかるのかどうか、どのくらいかかるのかを知りたい。あるいは、プライバシーを守ってほしいとか、何度も説明したくないという要望が挙げられている。
次に、223ページをご覧ください。ネットワークの状況については、関係機関・団体のネットワークに参画していますかということで、全体では半分が参加していませんとなっている。100件以上対応しているというところでも、参画していないところが4分の1近くあるという状況になっている。
次に、227ページをご覧ください。定期的な情報交換や会合の実施については、全体ではやっているというのが結構あるが、やっていないところも10%以上ある。それから、100件以上の団体でも、全くやっていないところが5%ぐらいある。
次に、228ページページですが、会合は開催しているが、支援ネットワークの運営や連携に関する問題点の自由記述回答については、やはりいろいろ問題があって、まず「人員体制」のところで、公的機関の担当者は異動が多いとか、それから「機能していない」と書いてあり、会議が年数回だけで具体的な活動がないとか、あるいは形だけだとか、平素の連絡がいまいちだというような記載がある。それから、「情報連絡が出来ていない」では、定例会が終始件数報告で終わっている。「支援の具体性がない」では、具体的な行動あるいは情報がない、支援内容のPRが不足しているということである。「財政面」では、公的機関とNPOの格差が大きいという意見が出ている。
次のページの「知識不足」では、他機関の役割が把握できていない、連携している機関の事件に対する理解が不足している、経験が浅くて対応に苦慮しているということである。それから、「その他」では、学校や教育委員会が参画していない、基本法について重要性や民間団体の位置づけが今後確立されるか不安であるという意見があった。
231ページの今後の連携のあり方については、上の方が今の充足度、現状どのくらい充足しているか。それから、下の方が重視している事柄ということで、やはりこの重視度というのは、他機関・団体担当者との信頼関係を重視したい、今はあまりないという感じのところが見てとれると思う。
次に、237ページをご覧ください。今後の連携のあり方についての自由記述回答ということで、一番下のところで、研修交流会だとか、あるいはケース研究会などの学習会の必要性、研究会の必要性、あるいは次のページ、もっとやはり活動内容を認知してもらうための広報が要るのではないか、あるいは役割分担を明確にした案内リストが要るのではないか。それから、システムの構築については、連携する関係機関・団体をコーディネートできる機関の必要性、あるいは法的処理、民事被害に関する救済を早急化する、あるいは取り締まりや行政指導の強化を希望する意見等が見られたところである。
以上が、このリサーチの概要である。被害者施策の浸透の度合い、あるいは連携の問題点等が、改めて明らかになったのではないかと考えている。
○構成員 7ページ目以降に、各団体が他の団体とどういう連携をしているかという連携の強度を数値化しているが、6ページの表2の方で強度の算出方法はわかるが、これはこの表7以降に出ている数値は平均値と思っていいのか。10機関あれば、10個の平均値ということか。
○事務局 はい。1つの機関が年間何回ぐらいという数値が、この指数という形であらわれている。
○構成員 実態が数字ではっきり出て、よく表されていると思う。これをもとに、特に自由記述でいろいろ指摘されているような、連絡会議の充実が必要なのではないかと感じる。
○構成員 とても膨大な調査で、よくやっていただいたと思うが、私もメンタルヘルス領域に関して、いろいろな調査を今見たりしているが、ほぼ回収率などは同じような動きである。現状が、やはりかなりちゃんと出ているのではないかと思う。後ろの数字は、これは回収されたところの数字であるから、例えば20%とか30%とか、それくらいしか回収がないところは、実態としてはもっと連携が、今のところまだできていないのだという感じで考えた方がいいとは思った。本当に自分が実際に知っていることからしても、それから今回の調査の数字からしても、ほぼこのあたりが実態だろうと感じる。
○構成員 私も228ページ以降にある自由記載というのはまさに実態だと思っていて、私もいろいろな地方自治体とか都道府県でやっている支援ネットワークとか連絡協議会で、講演とかを依頼されるのですが、やはり結果、件数の報告と、講演会とかが終わったら、それでもう三々五々で皆さんすぐ分かれてしまうということで、横の連絡が全くないなとずっと肌で感じていたが、これがこういった数字であらわれてきたし、都道府県や市町村からも、内閣府から依頼を出しても回答が来ないというのは、やはりまだまだ認識が低いところがあるのかなと思い、ここは徹底して強化していかなければいけないと思う。
それから、今の詳細な説明の中にはなかったが、私は233ページの充足度で、充足していないという理由についてということも大変に重要な情報が出されていると思っていて、特に233ページの四角の上から3つ目で、「他機関・団体から提案される情報の伝達手段」について、これは伝達手段がきちんと確立されていないから、ファクスだったり口頭だったりばらばらで、当然、情報も均一になっていないし、統一もされていない。よって、結局、資料収集に手間がかかることになる。まさに、私もいろいろな先生方のところに行って聞いてもそのような内容ですので、やはりここは何らかの手段をきちっと確立しなければいけないということも明確になったと思うし、さらにその下から2つ目の「担当者の人員」、先ほど説明があったが、100件以上受けているところでも3人しかいない。3人で100人、1人33件というのはやはり多いと思うので、そういった点も、やはり何とかしてそういった人員確保や基盤整備というのもしなければいけないということも、これでよくわかったのではないかと思った。
○構成員 相当大部なものなので、今の段階では特に申し上げることはない。詳細については別途申し上げる。
○構成員 法務省の関係では、日本司法支援センターができているが、この調査の時点ではまだ営業しておらなかったことから、今回は調査対象外となっている。
ただ、被害者関係の情報提供の実績については、10月、11月の2月間で2,200件程度、既にコールセンターと地方事務所の方からいろいろな情報の提供を行っているという実績もあり、また今後、ネットワークの一員として有効な機能が発揮できるようにしたいと思っている。
○構成員 この調査については、前回の中間取りまとめのときにも非常に感じたのであるが、やはり紹介先の機関・団体はどういう支援ができるかということをきちっと説明していかなければいけないであるとか、紹介先の機関・団体の連絡先がわかるようにすべきではないかということが、今回のアンケートの中でも、220ページあたりで出ているが、支援の連携の関係では非常に重要なのかなと感じている。
○構成員 アンケートの回収率の低さは、私もちょっと意外な感じを受けている。
ただ、私どもが調査しても、当初はこんなものというか、それで催促して上がっていくという状況であり、もちろん、回答すれば何かいいことがありますよというものであれば、もうちょっと高いわけですが、催促して上がっていくというものなのかなというのも1つ思う。
もう一つ思うのは、比較的新しい分野というか、自治体の側にもノウハウがまだ蓄積されていないようなところもあると思う。だから、ちょっと戸惑ってしまったところもあるのかなと感じる。そうすると、今後の対策をいろいろ考えていく中でも、ある程度、国の方で、あまり迷いがないような方向性を示してあげた方がいいと思う。
○構成員 当然のことかもしれないが、連携の度合いが強いところ、弱いところ、特に学校から見ると、似たような関係機関はあるが、随分と関係、連携の度合いが違うところがあるなというのが、率直な印象である。
○構成員 国土交通省の住宅施策については、この関係機関の中では地方公共団体、市町村とか都道府県の中に入っている部分だと思っている。そのような意味で、関係機関相互の連携、ネットワークということの中でも出ている情報提供の問題とか、そのようなことに関するいろいろな課題があると思うが、そういった部分、部局間の中での問題と若干違う部分もあるかもしれないが、そのようなところを、ここでのまたいろいろな実態とかご議論とか、共通する部分もできるだけ抽出しながら、そのようなものが現場で反映できるように、行政の中でのまた情報の共有化みたいな部分でも、議論できたらいいと思っている。
2.「更なるネットワークの構築(既存のネットワークの拡充、連携強化方策)」について
どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報提供・支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りのための提言案について、事務局案に基づき、具体的で実現可能な方策を議論した。概要は、以下のとおり。
○事務局 これまでのヒアリング、あるいは今の調査等を踏まえ、ネットワーク構築について、実質的なご議論をいただきたい。
原則として、事務局でたたき台を作成し、提言案(事務局案)として検討会の前に構成員の皆様にお示ししたい。検討会においては、事務局案をもとにご議論いただきたい。
今回は、参考資料の1のとおり、前回の第6回会合で、連携の現状と問題点についてご了承いただいたことを踏まえ、ネットワークの更なる構築のための既存のネットワークの拡充、連携強化に関する具体的で実現可能な方策についてご議論をいただきたい。
事務局案をご覧ください。
どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報提供・支援等を途切れることなく受けることのできる体制づくりのための提言案について、一番最初に前文をつけた。これは、いろいろな調査を見ても、あるいはこの間の被害者週間等で、いろいろな被害者の方の意見や現場の方の意識等を聞く機会があったわけだが、やはりこの被害者の方が置かれている、どういう状況に陥るのかとか、それから二次的被害を支援すべき人・機関・団体、そこがまさに犯罪被害にもましての二次的被害を与えているのだということについての認識を、ぜひもっともっと広くPRする必要があるのではないかということで、前文として、そのような被害者の方の置かれた状況、あるいは二次的被害を防止することの重要性について掲げ、こういったことを7,450の関係機関のそれぞれの人に周知する必要があるのではないか。
具体的な提言として、事務局からは4点ほど掲げている。
1点目は、犯罪被害者支援のハンドブックを作成し、それを備えつけてはどうか。基礎的自治体レベルにおける「犯罪被害者支援ハンドブック(仮称)」の作成、備えつけということで、調査にもあったように、連携実績が薄い、それからニーズに必ずしも十分にこたえているとは思われない、それから各機関・団体が被害者に提供する情報、あるいは被害者等に関する情報の中身について、やはり大きな差があるということで、有機的な連携が行われているとは言いがたい状況であるということで、信頼関係という言葉もあったが、顔の見える連携を構築するためには、やはり支援に携わる機関・団体、特に一番身近な基礎的な自治体レベルでの関係機関・団体で支援・連携のために必要な知識、ノウハウを共有する必要があるのではないか。
現在、既存のネットワークとして、これは警察署単位で全国に1,200ぐらい、被害者支援地域ネットワークというものがあり、大体、同じぐらいの数の基礎的な自治体である市町村単位で、被害者の支援を行う際の留意点であるとか、あるいは関係機関・団体の支援内容、連絡先等をまとめたハンドブックを作成して、関係機関・団体に備えつけて、その活用を図ることが大事ではないか。
また、市町村レベルでハンドブックを備えつけて、さらにやはり都道府県でも、このハンドブックの作成、備えつけが必要なのではないかと考え、都道府県レベルでの地域をまたぐ支援の対応もあり、都道府県単位でも支援連絡協議会が既にあるので、このような基礎的レベルのハンドブックを踏まえ、主要な機関・団体ということになろうかと思うが、支援ハンドブックを作成し、備えつけるということが大事ではないか。
この間、被害者週間で秋田県に参ったときも、秋田県ではハンドブックという名前ではなかったが、関係機関の連絡先などを一覧表にした冊子を作っておられたので、やはりそういうものが必要であろうと考える。
更に、このような基礎的自治体レベル、あるいは都道府県レベルにおけるハンドブックの作成、備えつけ等に関して、ある程度の水準を確保できるように、国においてハンドブックのモデルを作成し、そのようなハンドブック作成に必要な援助を行ってはどうか。モデル案の内容として、(1)~(4)の内容を盛り込んではいかがか。
(1)は、支援に携わる者が保持すべき倫理や対応に当たっての留意事項として、被害者全般、あるいは家族・遺族等々被害種別ごとの留意事項は必要だろう。
(2)は、犯罪被害者の方に提供すべき情報として、紹介先機関・団体がどういう支援ができるのか、お金はかかるのか、どれぐらいかかるのか、担当の部署やその連絡先を備えつけておくべきではないか。
(3)は、関係機関・団体へ伝達すべき犯罪被害者等に関する情報として、犯罪の概要、これまでの支援の概要、これまで支援してきた内容、被害者の要望や留意点といったことが必要なのではないか。
(4)は、関係機関・団体の一覧表である。
作成・運用上の留意点としては、地域によっていろいろ特殊な状況もあろうかと思うので、それぞれの地域の実情や犯罪の種類、被害の深刻さ等に応じて適切な支援が図られるように、その内容を考えるべきではないか、また、ハンドブックや連絡先などの内容は、人事異動等でどんどん担当者等が変わることから、改訂が的確に行われるように配意すべきである。
ハンドブックやモデル案については、インターネット等によって地域住民・国民一般向けに情報を提供して、内容を広く周知させるべきではないか。
2点目の関係機関・団体へ伝達すべき被害者等に関する情報のガイドラインの作成については、何回も被害に遭った状況を説明しなければいけない、そのこと自体が非常に被害者の方に負担であるということについて、被害者等に関する情報を紹介元の機関から提供する際の問題として、1つはそのように何回も説明を求められるという問題と、もう一つは個人情報保護で法律や条例ができていて、その趣旨を踏まえなければならないということである。
そこで、利用目的を明示して、被害者の同意があれば、当然、被害者の方の情報を関係機関・団体に、その内容については紹介できるわけで、犯罪被害者等に関して、このような条件のもとで、このような情報については大いに共有すべきであるというガイドラインをつくってはどうか。
3点目としては、ガイドラインを作成するとともに、様式をある程度定めたらどうかということで、この様式の話が「犯罪被害者カード」の作成という提言につながるわけである。何回も説明しなくて済むように、被害者等の同意に基づいて、全国統一的な様式を交付して、これで犯罪被害者カードにしてはどうか。
4点目は、倫理綱領の作成であり、アメリカやイギリス等において、ある程度支援に当たる人の倫理綱領あるいは倫理基準を定めており、ハンドブックに盛り込む留意事項と関係するのだが、支援に携わる者の倫理綱領の我が国版をつくってはどうかということで、アメリカのNOVAの犯罪被害者等支援員倫理綱領にあるように、支援員などといった7,450の機関・団体の一人ひとりの担当の人に、被害者等に関しては、誠実に行動し、尊敬と同情を持って接するとかということについて、きちんと倫理綱領としてつくってはどうか。これはアメリカのもので、我が国に合わないようなところもあるが、まず1つは、犯罪被害者等との関係において、被害者の利益を最重要のことと認識するとか、あるいは市民的法的権利を尊重するとか、プライバシーや秘密の権利を尊重するとか、一人ひとりの被害者等に思いやりを持って、個別の状況に応じたサービスを提供するということが挙げられている。
被害者に対する関係について、同僚や関係する他の専門家、世間といった、世の中との関係において、相互理解や公の信頼、サービス向上を推進するような方法で同僚との関係を構築しなければいけないとか、あるいは同僚を批判するコメントは、建設的な場合しかだめだとか、いずれにしても、そのような被害者支援の領域において、同等の敬意と尊厳を受けられるよう関連した専門家との関係を構築するとか、仕事であれボランティアであれ、被害者等支援において知識を共有し、技量、腕前を磨く等々のことが挙げられている。
プロとしての活動については、被害者のためのサービス提供者として、また権利擁護者として、高いプロフェッショナル的な水準を保つとか、いかなる差別も行わないとか、被害者等の特定につながる情報を法律の根拠がない限り公にしないとか、公のコメントにおいて自分の属する組織による立場と個人的な意見の表明を区別するとか、公式の立場を金銭的利益等特別の利益のために利用しないとか必ずしも我が国においては適用しにくいものもあるが、このようなものを参考にしながら、我が国版の被害者支援に当たる人の倫理綱領を定めてはどうか。
○構成員 4ページ3番の犯罪被害者カードとか情報の共通化について、もう少しイメージを教えていただきたい。
というのは、例えば司法の中と、あるいは医療の中とでは、守秘について、具体的に何を守秘義務の中に入れて、入れないということについても、日常の活動をしていて、違うと非常に感じる。例えば、この共通カードに盛り込まれる情報が、どこに保持されて、どのような形でということについて、何かイメージがあればご説明いただきたい。
○事務局 3ページの(3)に、関係機関・団体へ伝達すべき犯罪被害者等に関する情報として考えているのは、その原因となった犯罪はこのようなものですとか、それからこれまでこのような支援がありましたとか、このような支援をずっと受けてきましたとか、メンタルな面で言えば、このような病院でこのような治療を受けたとか、このようなカウンセリングを受けたとかとことになると思うが、このような点を注意しなければいけないとか、被害者からはこのような要望がありますということを一まとめにして、それを被害者カードとして、もちろん被害者の同意が得られたものについて、どことどこにはこれで持っていくようにするということでやってはどうかと考えている。
○構成員 実際に連携の会議とか、そのようなところに行ったときに、情報を出せる範囲が違っていたり、例えば今、診断名とありましたが、特にメンタルヘルスの領域の診断名というのは非常に微妙で、それから裁判にもかかわってきたりして、大きな意味がある。例えば、それが本人にくっついて歩くという形になったときには、かなりいろいろなことを考えないと危ないと、だれにとってもそのようなことが十分あり得ると思う。
もちろん、実際に医療の現場の話を聞いていると、犯罪被害者の支援をしたいし関心はあるが、どうしても手が出ないことの一つの原因として、裁判へのかかわりを強く求められるということがある。例えばそのようなときに、どのように犯罪被害者の方の同意をとって、どのようにすればということをある程度知っていれば、個人情報や守秘義務の範囲内で十分やっていけることはあるので、ある程度の技術というのも当然あると思う。それが今、足りていないと思うが、特に医療やカウンセリングなどを持つ者としては、非常にリスキーなところがとてもある。今度はサービスをする側からも、ある程度安全にできて、このようなことを守っていれば、私はきちんと支援ができて、突然民事訴訟に巻き込まれたりしないのだということが保障されていかないといけないと思っている。どっち側の問題もあると思っているが、そのようなことを考えると、このカードがどのような形でどのような情報をということは、かなり慎重に考える必要がある。
○事務局 私どもが思っているのは、厚いカードではなく、せいぜい1枚紙のカードで、医療の細かい状況まで全部書くようなことまではイメージしていないのですが、少なくともどのような犯罪に遭って、例えばこのような病院にかかっているということだけでもわかれば、それをもらった新しい病院が、そこにおっしゃるような個人情報に深く関係する微妙な話は問い合わせもできるとか、そのぐらいの簡便なものにしないと、なかなかうまく機能しないと思っているが、その辺のイメージは、是非ご議論いただきたい。
○構成員 例えば、ボランティアレベルで持てることと、弁護士や医師といった専門家が持てることとはイメージが大分違うし、倫理指針についてもかなり違ってくると思う。基本的にはこのような形で、情報と理念とハウツーが共有されることについては賛成ですが、その辺をよく考えてやらないといけないし、それからそれぞれの具体的な場所での指針が出てこないとなかなか難しい、実効がある形で書けないなと思う。
○構成員 私も、基本的には構成員と共通する考えを持っているが、この情報の提供も、連絡会議の構成員の中には民間の方たちも、警察署レベルでしたら不動産屋とか葬儀屋とかいった方たちも入ってくるわけで、共通に情報を提供できることではなくて、むしろ裁判所とか検察庁とか警察とかですと、ある程度、共通した情報の枠組みがあると思うのですが、その情報提供のレベルについては、ある程度対象によって分けなければならないところがあることと、もう一つは、NOVAの倫理綱領も、被害者支援を中心とする民間団体のある程度共通した目標とレベルを持った団体が、自分たちはここをこのように気をつけるという倫理綱領なので、それぞれの組織がそのようなものを持つのは適切にできると思うが、各いろいろな団体が共通してというのは非常に難しいので、最小限の、あるいはレベル分けをするということを考えなければいけないのではないだろうか。
○構成員 このようなものを実際に役立てていくためには、常に更新されていること、特に紹介先などは常に更新されていないといけないし、具体的に例えばある組織の長が変わってしまうと、紹介できる相手方の能力の度合いなども、実際に非常に変わったりすることから考えると、やはりウェブ中心というか、もちろん紙ベースもあっていいと思うし、紙でないと見えないこともあるが、できたらインターネット上の情報中心でやった方がいいのではないかと思うが、だれもがそこにアクセスして見ると、新しい情報が見られる。
ただ、これは更新するための手間も必要で、それをどのようにキープしていくかとか、あるいはこれがうまく動かなかったときの苦情とか改編をどのようにするかというようなことを少し考えておかないと、つくって終わり、つくりっ放しで、実際に動かないという形になってしまうのではないかと思う。
○構成員 支援をする立場からお話をされたが、今回の調査にあるように、被害者としては、医者であれ弁護士であれ、だれにしても、また一から話をしなければいけない。それを何とか回避したいというのが、この被害者カードの目的である。今回ご調査いただいた中の233ページに、他機関や団体から提供される情報の伝達手段について、要は各機関で専門的になり過ぎて、ファクスでの伝達が不安であるとか、口頭での連絡ではよくわからないということで、資料収集に手間がかかるということで、ある程度統一された様式で、必要な事件の事実、いつ起こったか、その人はその事件の本人なのか、配偶者なのか、親族なのかとか、自宅で事件があったのかとか、いろいろな基本的な条項を書いたものを一定様式にすることは、被害者にとって非常に有益だと考える。
被害者カードの回し方については、これは被害者自身が持っているものと、支援する連携機関が持っているものが、ある程度同一なものであるべきなのかなと思う。イメージしていたのは、カードというイメージもあるが、母子手帳のようなイメージがあり、当然、その人の氏名と犯罪事実と期日が記載され、その裏に白紙のページがあってもよく、そこに例えば支援センターの方が書くページがあったり、医療の方が書くページがあったり、それを被害者に渡す。それを被害者が次に持っていって、「こういう者です。」と渡すというようにして、詳細な情報は被害者に手渡ししてあげて、連携するところには大きな項目だけを扱ったもの、まさにA41枚とか2枚のカードのものを連携するようにして、あとはそれを照合していくといった形のものかなと思っている。
一番最初に被害者カードと思ったイメージで、例えばその人の病気の症状がどうだとか、その後のその人が受けた被害に対して民事的な損害賠償をするときに、その被害の程度を立証するために使うとか、そのような意味ではないと思っているので、構成員が言われたように、そこの一線を画す必要はあるかもしれない。
提言の中で都道府県レベルと基礎的自治体レベルにおける2段階においてガイドラインをつくって被害者を支援するということで、大変いいことだと思うが、今回ご調査いただいた中の225ページに、都道府県レベルだったり市町村レベルだったり、各都道府県警とか箇所の警察署もあるが、いろいろなところでネットワークをつくっているが、主たる運営というものが本当に統一されているのか。ある県では警察主導、ある県では都道府県主導とか、同じ県内でもここの地域はその箇所の警察の方が一緒にやっているとかということで、主たる運営をどこがやっているのかというところが、今後重要になってくるかもしれない。今回、ガイドラインをつくるに当たって、どこが主たる連携の核となるのか、もしくは核をつくらないのかというのがあるかもしれないが、そこを明確にしなければいけないと思う。
ガイドラインを基礎的自治体レベルや都道府県レベルに置いた場合に、それを利用する国民の方とか被害者の方にも、このようなネットワークができて、このようなことが利用できますよというのを、告知のためのガイドラインではないが、被害に遭った方とか、いろいろな連携する地区に置いてあげて、要は連携だけを強くしても、実際にそんな連携があるというのを知らなくて利用できない場合がありますから、私も犯罪被害者給付金をいただいたが、実はこれを知らなくて、また多くの被害者の方に聞いても、そのようなことを知らずに適用期間を逃れた場合もあったので、きちんとそれを被害者や国民の方、一般の方にも、このようなシーンがありますよというガイドラインを提示する必要があるのではないか。要は、国はこのようなことをやっていますということを国民に知らしめ、支援する側には、このようなことをするのだよということを出す。双方がそれを理解することによって、初めてシステムが動き出すと思うので、基礎的な自治体と都道府県レベルのガイドラインについて、被害者や国民に対してこのような支援をしますということを明示するものがあっていもいいのではないか。
○構成員 今の連絡会議の役割の問題に関連するが、この提言の中で、私は最初に支援の連絡会議あるいは支援ネットワークを地域にきちんと確立するというのが、1つ入った方がいいのではないだろうか、その上でのハンドブックづくりとかがつくられていくとする方がいいのではないかと感じる。
というのは、今、支援のそれぞれのネットワークが必ずしもきちんと確立されていない、あるいは主体がどこになるかまだという、いろいろなレベルの差があるわけで、本来はそれぞれの関係する団体がどのように被害者支援にかかわっているか実態を把握することと、そして被害者のニーズにそれぞれこたえているのかどうかということと、それぞれの連携の間におちこぼれてはいないかという、その3つぐらいをきちんと見て、そして充実させていく役割を持つべきではないだろうかと思う。その最後の連携のところでこのハンドブックとか、そういうものが生きるわけで、幾らハンドブックがあっても、それぞれの組織が十分に被害者のニーズにこたえられなければ、連携をしても意味がないわけで、それぞれの実践レベル、実務者レベルでこのような会議を持って、実務を通じて何が欠けているのか、それぞれの組織をどのように充実させればいいのか、あるいはそれぞれの関係団体の間で落ちこぼれているところをどこが分担するのかということを決めながら、その結果、ガイドラインができていくということにすれば、年々、事例を重ねるにつれて充実したものになっていくのではないだろうかと感じる。
○構成員 端的に申し上げて、これを拝見してもよくわからない。2.と3.はどのような関係になっているのかということがわからないし、例えば被害者カードをつくるのだったら、それを動かす前提となるべきシステムは一体どのようなものなのか。今どき紙ベースで議論するというのは、ちょっとおかしくないか。これはデータベースを構築してウェブでやるのが普通ではないですか。それに対して、守秘をどうするかとか、いろいろな問題があると思う。
今現在、日本に被害者関連の仕事をしている機関があって、この機関が今現在やっていることで、果たして十分なのかという分析・検討はどのようになっているのか。端的に申し上げて、形だけやっているというような参加者も結構いるわけで、現状あるものの上に、このハンドブックをつくって流す。それから、どのような形の被害者カードになるかわからないが、被害者カードをつくって、それを使えるようにするといっても、なかなか難しくないか。結局、そのようなものをつくりましたよというだけで終わって、被害者が置かれている状況は、あまり変わらないのではないかと思う。
特に、被害者カードというのは、本来、被害者情報というのは被害者が管理すべきものではないのか。それを被害者から離れたところで、幾ら被害者の支援団体だといっても、その被害者情報を管理するというのは、基本的に間違っていないかと思う。確かに、被害者しか持っていないと、被害者が行かないと、周りは動けないのではないかという話になると思うが、それは紙ベースで考えるからなので、全国的なネットワークをつくって、それで動かせるようにすれば、そこにいろいろな守秘あるいはその他の技術を重ね合わせていけば、ある程度、被害者が基本的に管理しているという状況のまま、システムを動かすこともできるのではないか。
被害者サイドからいえば、カードを持っていますと。「私は被害者で、支援を受けたい。とにかくこのカードを見てくれ。」と。カードを渡して、カードをコンピューターに入れたら、画面に全部出てくると。先ほど来お聞きしていると、あまり詳しいことは書けないのではないかとかいろいろあるが、被害者が自分で主体的に管理するという情報であれば、事細かく書いてもいいわけである。どこまで開示するかは、その都度、被害者が考えるようにすればいいわけで、例えば私の事務所にある被害者が来ました、私の事務所でこのような支援をしました、というものを全部打ち込み、それがデータとして被害者カードに入っていくと。例えば、その被害者の方が、どこか別の病院なり、別の法律事務所へ行って、「では、○○事務所で何があったの。」といったら、「とにかくカードを見てくださいよ。」と。カードを見たら、そこへ全部きれいに出てくると。一言も被害者が言わなくても、○○事務所で被害者支援で何をやったか全部わかるようにしないと、多分、被害者の方が求めているような状況にはならないと思う。「とりあえず、事件はこういうものだとわかりました。さあ、事件はわかったけれど、それであなたは○○事務所で何をやってきたの。」と。「いや、そういえば、○○さんが難しい顔して出てきて何だかんだと言っていたけど、結果的にお金がこれだけ出たけど、それ以外のことはよくわかりません。」という話になったら、今の状況とあまり変わらないのではないか。
この会議で、おぼろげながらイメージとしてあるような抜本的なことをやろうとしておられるのか、それとも今ある組織の上に乗っかって、非常に悪い表現をすれば、弥縫策的なシステムをつくろうということなのかという基本的スタンスの問題もあると思う。それは、時間と予算の問題もあり、それはそれでやむを得ない場合もあると思うが、もう少し実際のシステムがどのようなのか、組織がどのようなのかという土台の部分をしっかり検討しないと、いきなり幾らそこへハンドブックのようなものを乗っけても、動いていかないのではないか。
○事務局 前のこの検討会でも申し上げたが、この検討会は経済支援とか、あるいは民間団体援助のいわゆるあるべき姿を追求する検討会ではなく、弥縫策ではないが、既存のネットワークないし既存の今ある団体・組織・機関、この連携をどのようにして強化していくか。先ほど連携調査の結果についても申し上げたが、被害者支援についてのレベルが、関係する機関・団体においても、本来やるべきところにおいても、まだまだ全く認識がないと状況で、ここでハンドブックを持ち出したのも、要は犯罪被害者支援という概念があることすら知らないようなところもまだまだあるかもしれない。そのようなレベルだから、まずは既存のネットワーク、都道府県レベルだとか市町村レベルにおける支援連絡協議会のようなものが、これは警察主導ですが、現にあるわけで、今リサーチしたように、全くではないですが、機能していないところもあるということなので、これをどのように動かすのかということを検討して、提言すべきではないか。
今ご指摘があったウェブのことも考えましたが、先ほどから構成員から出たように、非常にウェブの場合はセキュリティーの問題があって、一遍にはなかなか難しいだろうということで、とりあえず何もないよりは、まず被害者カードというものを、今までそういう概念が全く我が国にはないわけで、それをつくって一歩でも進めようということである。
この被害者カードはあくまで本人管理で、やはり本人が持って、それを持っていくというイメージである。むしろ、2.の方は、その被害者情報の管理について、やはり個人情報などのいろいろな制限がありますので、一方では物すごく制限されているし、一方では万が一の場合にとんでもないことになるので、そのガイドラインを決めましょうということを2.のところで強調したかったわけで、あくまでこの被害者カードは被害者の方に利用してもらうということが前提で、もちろんウェブでできればいいが、今の技術では機微にわたる情報になれば難しいのではないか。やはり、被害者カードは紙で、これは必要だろうということである。
現に今、例えば全国ネットワークとか支援団体では、倫理綱領みたいなものは、はっきりした形では多分出ていないと思う。いろいろな団体のそれぞれに、何項目かは入っていると思うが、倫理綱領という形で出ているものがあるのかどうか、そこをお教えいただきたいのと、もう一つは、先ほど申したように既存のネットワークが中心となってということで考えているので、今の被害者支援の地域ネットワークあるいは連絡協議会で、どのような予算措置が可能か、これは連絡協議会になれば警察になるのですか。ほかにもDVだとか、いろいろあると思いますが、そこもお聞かせ願えればと思うが、例えばこのようなハンドブックを備付るとか被害者カードをつくるとなったときに、お金の面をどのように、今、例えば連絡協議会とかネットワークでは運用されているのか。
○構成員 全国被害者支援ネットワークでは、4年ぐらい前に内部での倫理綱領をつくり、それにのっとって情報を外部に漏らしたりしないように心がけているところで、それが恐らく公安委員会の認定とかにも配慮されているのだろうと感じる。
○構成員 実は、私もこのハンドブックはどこの予算でつくるのかと思って、財源のことを聞こうと逆に思っていたぐらいで、ちょっと今手元で協議会がどのような予算づけをされているかはわからないが、このハンドブックをもし全国津々浦々に整備するということであれば、その財源のところもよく考える必要がある。
○構成員 この被害者カードは、どこが発行するのか。発行元はだれになるのか。
○事務局 ご議論いただかなければいけないが、最初に相談に行った機関とかにする手もある。最初から最後まで途切れのない支援ということなので、支援団体でもいいのだと思う。
ただ、被害者カードが必要であると。ここではあまり明確にはどこがというのは書いていないが、確かにそこが一番問題で、私は行ったところがいいのではないかと思うが、そこをご議論いただければと思う。
○構成員 被害者カードの書式、作成要領というのは決めて、統一しておかなければいけないということになりますね。
○事務局 まさにそれを統一しようではないかというのが我々の考えである。
○構成員 民間の団体に最初に来るときもあるが、それでは本当に犯罪があったのかどうか、必ずしも証明できない部分があるから、やはり警察を通ったケースでなければできないだろう。被害者ということだけは、公的なところを通ったケースでなければならないかと思う。
○構成員 犯罪被害者カードについて、そのようなカードを発行するかどうかの議論以前の問題として、犯罪被害者等に関して関係機関に一定の情報を伝達するその内容、伝達するかどうか、これはやはり提供しようとする関係機関にどのような守秘義務がかかっていて、どのような情報管理体制なのか、その関係機関がどのような役割を果たすかによって、全く違った内容になり得るわけで、画一的に一律に、情報をこういう場合は提供すると決めるのは、非常に難しい面があると思うし、機能しないのではないか。そのような利用目的問わずの一律の提供という、このカードについては正にそういうことになり得るわけである。それで仮に被害者の方に一定の行政サービスを提供するということに当たって、警察の何らかの証明なり届け出が必要だということであれば、それはやはり先ほどの繰り返しになるが、情報の提供を受ける関係機関がどのような役割を果たされるのかによっても、相手方の求める情報も恐らく異なってくるでわけで、それはやはり個々具体の判断となり、一律に情報を定式化するというのは、難しいのではないか。
私どもは最初の段階で、例えば被害者の方から被害申告を受けるが、その被害申告が、もちろんほとんどの人は被害者の方本人が感じられた、あるいは体験された内容をそのままにご説明されることもあるが、それがそのままでは証拠上照らして本当に事実認定されるのかどうかといった問題であるとか、中にはやはり虚偽申告ということもあり、それを汎用性の高いものとして流通させようとすると、かえって信用性というところに問題が生じて、結局、発行した側、それは警察以外の方が発行する場合もあり得るだろうから、そこのところをよく考えておかないと、難しい問題があるのかなということでいくと、やはり個々の関係機関同士でどのような情報伝達をやっていくのか、その場合に、被害者の方が同じ内容を何度も説明したくないという心情をどのように反映させた形でお互いが情報をやりとりしていくのかというところをよく考えた方がいいのではないか。
○構成員 被害者には2種類あると思う。実際に被害者として、例えば少なくとも警察によって認知された人、要するに被害届を出したら受理していただけた方と、「私は被害者だ」といって、客観的に僕らが見ても「ああ、これは被害者だよね」と思っても、警察が受理してくれない人、要するに警察が被害者として認知してくれない人もいる。
今ここで行われている議論は、その2つの被害者のうちのどちらを前提にして行われているのか。多分、今まで区別されないで行われているので、両方とも前提になっていると思う。
そこで、この被害者カードの場合は、警察で認知された人、例えばそれは警察が発行するということも可能なのかもしれないが、警察にすら認知されない被害者、被害者問題の非常に大きな問題は、警察に認知されない被害者レベル、これが一番大きな問題で、警察に届け出て、警察が「よし、被害者だ。捜査してやろう。」と言い出したら、それは社会のシステムが、AさんならAさんを被害者と認知して動き始めたということで、被害者支援あるいは被害者問題の半分は、そこでクリアされたことになる。私どものところに来る一番大きな問題は、被害者なのだが警察が相手にしてくれないという問題で、どのようにしたら警察に相手にしてもらえるのか、それは被害者支援、あるいは被害者問題の大きな要素の一つである。そのような人たちに対しては、だれが被害者カードを発行するのかという問題になる。
この被害者支援ということを考える場合に、2種類の被害者がいるということを前提にした議論でないと、なかなか当を得ない場合もある。
○構成員 メンタルヘルス分野ですと、一番たくさん抱える人は、遺族と性暴力被害者、それから虐待、DVであり、この中で警察を通ってくる人がどれくらいの確率でいるかというと、明らかに半数を超えないと思う。警察というか、刑法にかかわって、きちんと法律の中に位置づけられない人たちもたくさんいる。
位置づけられた人たちでも、言いたくない人たちがたくさんいる。自分が持っているのでも、リスキーだと思う人たちもたくさんいる。自分の情報を自分で持って、出せばいいようにしたい。自分で同意したものについては情報を書いておいてほしい、それはある意味ではユーザーの方の権利として考えてもいいかと思うが、全体からいうとなかなかこれは難しい。
○事務局 いろいろな犯罪被害者のタイプの方がおられるが、殺人だとか、今、犯罪被害者給付金を出しているような身体犯の被害者の方、もちろんDVとか児童虐待も含みますが、やはりまず我々が議論した方がいいのは、そういうものをメインとして、実は我々が念頭に置いていたのはそのような感じなのだが、これは本当に被害者で、本当に困っている人、これをどのように救うかということをまず考えたわけで、全く被害者の方が相手にされない今の状況を一歩でも改善するためには、その被害者の方に関する情報のガイドラインをきちんとつくって示すのと、目的も明示しなければいけないし、被害者の同意が必要ですから、あまり機微にわたることなどは書けないかもしれないが、そこは被害者が自分で必要だと思うことをきちんとカードにして、一歩でもそのような身体犯の被害者の方の負担を軽減したい。
DVとか性犯罪の被害者でも、被害を届けない方もたくさんおられるわけで、そのような方も手当てはしなければいけないが、とりあえずカードをつくるとかになると、ある程度きちんとした公的な認定が必要だというご意見であれば、やはりきちんと警察において認知したものをということになるかもしれないし、あるいは警察庁の方から出ていたように、みんながみんなそういうカードを、うちでつくるのは嫌だということなのかもしれないが、それではやはりいけないのではないか。目的をきちんとした上で、そしてその被害者の方が同意の範囲で、これはそういうものをやらないと、なかなか被害者の方が困られるのではないか。目的も示して、範囲なども本人が決められるようにすれば、そのようなシステムもあるのではないか。
○構成員 まず、利用目的の話をしたのは、例えばストーカーであるとかDVであるとか、こういった方については、住民票の開示の関係でいろいろとご相談がある。このような場合については、関係自治体と私どもの方で連携しながら、そのような方に対しての対応をするといったようなこともやっており、あるいは公営住宅の関係についても、私どもの方にそのような被害のご相談があったというケースについては、個別具体にご相談をして、そういった情報提供の仕組みをつくっている。
その目的、相手方でどのようなサービスを受けられるかということがないと、初めにカードありきで何のために使われるかわからないような形の前提ですべてを進められるというのは、それは受け入れられない。
犯罪被害給付制度の関係について、犯給金の支給対象になるような方については、これは現に犯給法の枠組みの中で、被害者の方から同意があった場合については、犯罪被害者等早期援助団体の方にあらかじめ情報を提供することにしていて、その援助団体を通じて、関係機関と連携した支援をするという形でやっているので、改めて二重にそのような情報提供の仕組みをつくる必要はないのではないか。
○構成員 1点目は、提言案の前文について、二次的被害の回避がメインに出過ぎており、何かそれに特化したハンドブックになってしまいそうな印象があるので、もう少し連携の必要性の前提のところを書き加えた方が、バランスがよくなると思う。
情報の更新について、日本司法支援センターでは、法的相談窓口の情報をお知らせするということを主たる業務として行っており、その中で被害者の支援の関係では、法的相談に特化せずに、もう少し広い範囲で被害者支援の業務を取り扱う関係機関の窓口情報も提供しているが、このデータベースについては、今年度末を目途にホームページで公開する予定である。大変大きなデータベースで、2万数千件の窓口が載ったデータベースであるが、例えば地域と犯罪被害などという用語で絞り込み検索をすると、相当程度、使えてくるのではないかと思う。具体的には、当該機関・団体の概要とか、相談対応の分野、時間、場所、予約制か否か、有料か無料か、どのような者が相談に当たるかなどの情報がそこに入っているので、それをインターネット上に公開されているものとして活用していただく余地があるということと、データベースの更新は、最低限年1回は確実にするとしており、あとは個々にその都度その都度それは更新していくということで、なるべく正確な新しい窓口情報が公開できるように努力しているので、ご活用も考慮していただければと思う。
○構成員 まず犯罪被害者支援ハンドブックについて、今回の意識調査の関係からも、こういったハンドブックをつくっていくことは、非常に意義があると思う。
その中で、これは基礎的自治体と都道府県レベルの対応を2つに分けて記述されているが、都道府県レベルの対応のところについて、地域をまたぐ支援への対応を前提として書かれているが、当然そういう場合もあると思うが、あとは非常に重大な事案、死傷者が多く出た、例えば列車の転覆事故であるとか、通り魔的な殺人で非常に被害者が多く出たような事件等については、基礎的自治体の職員なり関係機関だけの対応では十分ではなくて、やはり都道府県全体の枠組みを借りて対応しなければいけない必要も出てくるのではないかと思うので、ここのところの書き方としては、「規模、重大性にもさまざまな対応があって、適切な支援を行うためには基礎的自治体単位だけの対応では困難で、都道府県全体の対応も必要になる場合があり得るのではないか」というように書くのも一つの書き方ではないか。
「支援に携わる者が保持すべき倫理、対応に当たっての留意事項」の、個別項目についてはまた別途、意見がある場合は言おうと思うが、この1.(4)(3)については、関係機関・団体に伝達する内容については、やはり伝達を受ける側にどのような守秘義務がかかっているかとか、相手方がどのような役割を果たす機関であるかといったようなことによって情報の中身も異なり得るし、やはり個別ケースごとに具体的に必要性を判断しなければならず、そういったことが反映された形でなければいけないと思うので、一律にこういう情報を提供すべきであるというのは、なかなか書くのは難しいのではないか。
倫理綱領については、どうして倫理綱領という名称なのかちょっとわからないが、要は被害者支援に携わる方の資質、能力が今のままで十分でないというのであれば、このハンドブックの中で、支援に携わるべき者がどういったことをやらなければいけないとか心構えとかいったことを書いていく。また、実際そこに書かれているとおりのことをできるようにしなければいけないということであれば、全国被害者支援ネットワークの方で研修とかいった形で支援に携わる方の研修の仕組みをつくって、そこに位置づけていくという形で対応していくのではないか。
倫理ということになると、例えば国家公務員であれば国家公務員倫理法もあるし、警察では警察の倫理規程もあるし、やはり関係機関・団体によって、モラルという観点から守るべきものというのはまた別のものがあるので、あえて「倫理」という言葉でなくても、被害者支援に携わるべき者が留意すべき事項なりやることというのは、もっと別の書き方があると思う。
○構成員 ハンドブックの作成自体は、二次的被害の予防だけかどうかは別にして、非常に意味のあることだと思うが、それをどういう形で、どこが中心になって、どういうコストでやっていくのかとかいうところはある程度、中身とともに詰めていく必要があるだろう。
カードのところは、どういう位置づけにして、さらに追記というか、その後どういう形で更新していくのか、いかないのかというあたりも含めて、基本的なところがある程度明らかになっていかないとなかなか難しい。医療とか福祉とかの関係機関のところが何かカードに書き込みをしていくとかいうものはあまり現実的ではないと感じるが、書く場合には、どういうふうな方がそれを見るのかとか、そういう方の守秘義務とか、いろいろなことを考えた上でやっていかないといけないということで、かなりいろいろと問題・課題はあるだろう。
○構成員 まず最初のハンドブックについて、いいことだなと思うが、国の方でモデルも示されるということなので、もちろん地域の実情の部分で変えるのはあり得るとしても、是非ある程度完全な、このとおりやれば大丈夫だというものを示してあげる必要があると思う。
この理由は2点あって、1つは、これはネットワークを中心にして、あるいは警察署単位でやるのかもしれないが、自治体の方も今、大変体制が厳しく、一方で人員削減を迫りつつ、一方で非常に求められる役割というものも大きくなっている。かつ、2番目の理由として、なかなかノウハウもないということなので、ある程度モデルをしっかりと示していただきたい。
2点目として、地方の負担についてご配慮いただきたい。人員の関係、それからこれによって必要な施策が生じてくるのであれば、その財政措置もきちんとしなければいけないと思う。
関連して、すべての基礎的自治体レベルで本当に必要なのかということについても、ご議論いただきたい。基礎的自治体というと、市町村、100万人を超えるような政令市から、合併は進みんだが、まだまだ1万人に満たないような町村まである。能力も違うし、やはり相談件数というのも違うだろうと思う。こういったものは、ある程度担当する側にも蓄積がないと、二年、三年に1つぽんと来ても、やはり慣れていないとうまく処理できずに、かえって安心感が与えられないというようなこともあろうかと思うので、すべての基礎的な自治体に本当に要るのかどうかということについては、ご議論いただきたい。
3点目が、ガイドラインの作成については是非お願いしたい。地方公共団体の職員も守秘義務があって、個人情報保護の条例もある。こういう場合に、どこまで何を出してよいのかということについてしっかりと示していただけないと、もしかしたらこれを出したら処分されるかもしれないと、1回ごとに迷うようでは、なかなか事務も円滑に進まないので、こういう場合にはここまでと示すことが、連携の中では必要な情報だと思う。
カードの関係については、データベースをイメージしてしまったが、そうではなくて紙に書いたものについて、本人が持ち歩くのだということなので、それは理解した。
倫理綱領については、関係するような組織について、すべてにこういう倫理綱領が必要かどうかというのは、まだ検討の余地があるのではないか。
○構成員 特に2.の3のパラグラフの部分については、これはここの部分でガイドラインを定めると言われているが、出す情報の最低限の部分をここで示しているのかと考え、この部分だけは必ず情報共有すべき範囲のものですよということで定めておいて、その部分を皆さん方に伝えるという話であって、それプラスアルファがいろいろとあるとは思うが、それは個別の機関同士の話だと理解していた。
3.の部分の被害者カードの部分については、逆にこれはやはり紙ベースの話だろうなと思っていたが、これもやはり機関の方でつくって、相談に行かれる先がわかれば、そこからそこには送ってあげるのかなといったようなイメージで理解しており、そういうものだったらあり得るのかなと思う。行かれるというのであれば、カードをつくって差し上げて、そっちの方の機関にお届けしておくということがあるのかなと思っていたが、そうでもないようなので、もう少しこの辺ははっきりしてほしいと思う。
○構成員 ハンドブックについては、こういったものが是非必要と思う。それぞれの機関でどういうサービスを提供しているのかの情報提供というのも、個別にするということもあるが、そういった関係機関で、あるいは先ほど国民へのこういった情報の提供も必要だというお話があったが、取りまとめる過程が非常に大事だと思うし、そういったものを総合的な情報発信するという意味でも、ハンドブックの作成については非常に大切なことではないかと思う。
各機関・団体へ伝達すべき情報のガイドラインの部分については、これも恐らく我々住宅局の方は、警察庁からもご協力いただいて情報を得るような仕組みのもとで、配慮が必要な方に対する住宅の提供ということを、今、やる仕組みができているわけであるが、そこで必要とする情報と、それからいろいろ総合的な支援をしていく機関が必要とする情報と、また情報の内容とか程度にも多分違いがあると思うので、ある意味であまりたくさんの情報を関係する機関すべてにということで提供されることによって、また逆にその情報の取り扱いだとか、いろいろと後の倫理綱領の部分もまた関係してくると思うが、多少、重た過ぎる部分もあるのかもしれない。そこは、恐らく支援の内容との関係で変わってくると思うので、提供するガイドラインの中で、最低限のラインというのがあって、プラスアルファの部分があるとか、いろいろとそこは差があるのかもしれないと思う。
カードの部分については、支援を必要とする方の側から積極的にそういったものを、口頭で説明するかわりに提示するという部分においては、意味があるのだろうと思う。
○構成員 犯罪被害者カードについて、これはつくり方がいろいろ難しいところもあるのかもしれないが、被害者の方からの非常に早い時期からの要請だった。これは、特に警察から検察、裁判所、それから矯正施設へ加害者が移っていくときに、その都度、本人が被害者だということを証明していかなければ、その加害者の情報も得られないというようなことがあったからで、それはこれから地方公共団体でも、住宅とか医療とか、被害者に対してサービスをするときに、やはりその公的な証明があるかないかで、非常に大きな違いがある。それで随分、被害者の負担は軽くなるのではないか。
それから、公的に証明されない被害者がたくさんいらっしゃることは知っているが、それは例えば地方公共団体としては、その証明が必ずしもなくても、その実態がはっきりわかれば、いろいろな医療サービスでも住宅の提供でも、することはできる状況になっているから、必ずしもそれは出せなくてもよいと思います。もしそういう方も全部証明が出されるとなると、今度は逆に裁判所とかで証明の真偽が問われるようなことになってしまいます。公的に届けられたケースについて、母子手帳とか障害者手帳のごとく最小限のデータを入れて、本人が利用したいときに一々何度も説明しないで済むというような便宜を図る方法を、配慮していただけたらいいと思う。
○構成員 今、構成員が言われたのは、どちらかといえば被害者であるということがアイデンティファイされる何かカードというように説明を聞きました。一方、先ほど伺った話ではそうではなくて、自分が説明するのがとても大変だから、そのことについて説明するカードをというお話もいただいたと思います。この2つは、かなり違います。
例えば後者だとすれば、今ですと被害者の方が全部自分で情報を集めて、医療だったら診断書なりなんなりを持ってきて、それから司法のところへはまた何かを持ってきてという形でやって、また出さなくてはいけない、そしてまた説明しなくてはいけないというのが大変なのだとしたら、要求があったときに出す書式とか、そういうことは定める。だから、そういう要望にはこたえられるようにするのだが、本人が持っているわけではなくて、書式のみ専門機関同士、あるいはボランティアのところに送るということだけを定めるとか、何かそういう方法ではだめなのか。カードの方には、例えばあるところに相談したとか、あるところで、警察に認定されたでもいいのかもしれませんが、何かそういうことの殻だけでよければ、可能性はあるかなと思ったのだが。
○構成員 構成員が最初に言われた被害者カードというのは、被害者本人が持っているという前提ですか。
○構成員 被害者本人が、自分が被害者であるということを証明できるのは最低要る。
○構成員 被害者が自分で持っているものですか。
○構成員 はい。
それと、私が思っていたのは、被害者として認知される方と認知されない方がいて、ネットワーキングをつくる目的は、例えば警察に届け出ない、届けたくない、それは裁判をしたくないとか起訴してもらいたくないとかという事件に対しても、例えば病院に行って治療を受けているとか支援センターで支援を受けているという方を、被害者ですと認定するシステムが要ると思っていた。
ただ、言われたように、どこが認知するかというのはとても難しい問題だと初めから思っていて、どうするのかという問題は、やはりここで議論していかなければいけない。そこを逃げては通れないと思う。
それから、まずその人が被害者であるから、公的な住居を優先しなければいけない人であるとか、そういったことが一々、国土交通省に行って、それから警察庁へ行って、照合してとかというものではなくて、何かすぐにそこでわかるようなシステムをつくるというのが、ある程度、被害者手帳か何かを持っていってバーコード番号か何かを打てば、この人はどこどこの事件の方だとか何かわかるようなことが、そこですぐに照合できるとか、そういったものがあるといいと思っていた。ただ、具体的なウェブのシステムをどうするかとか、そこまでは考えていなかった。
○構成員 構成員がおっしゃっていることは2つある。被害者であるということを証明する材料が欲しいということと、一々自分が説明しなくても、できるだけ多くの情報が相手方にわかるようにしてもらいたいと。その2つの目的をかなえるものとして、被害者カードというものを考えたらどうですかと。その場合、被害者カードというのは被害者本人が持っているものですよ、あるいは遺族が持っているという前提ですか。
○構成員 はい、前提です。
○構成員 この被害者カードというのは、だれが発行して、被害者が持つものと想定してシステムを考えるのか、そうではなくて第三者が持っているものと考えるかによって、被害者カードに入れ込む情報の量が全然違ってきますね。
○構成員 犯罪被害者として国からの公的な支援なり、ネットワークの中に入って支援を受けたいと思った方が言えば、例えば精神科医の先生に事細かに聞くまでの情報は、それは可能性が薄いわけで、その前段階、ご家族が殺されたとか、家が放火されたとか、そういった基本的なこと、例えばお子様は幾つでしたとか、お名前は何ですかとか、そんなことを一々聞かなくていいような最低限の情報は、本人が承諾すれば、ある程度データベース化できると思っていた。ただ、それ以上の、例えばどこに行って、どんなことを受けましたとか、そういったものはネットワークの中でやりとりするのか、本人が診療結果とか何か受けた結果をもらって、それをファイリングしておいて次に持っていくとか、何らかのやり方はあるのだろうと思う。例えば、一々「私は何月何日どこに行って、こう言われて、今度はここに来てこう言って、今ここに来ています」とか、そういったことを長々といくよりも、早くその人が何に困っているのかとわかるような仕組みをできればなと思う。
○構成員 構成員がおっしゃっている中には、今までの支援履歴は必要ないのか。
○構成員 要ります。
○構成員 それまでの支援履歴も必要か。
○構成員 はい。
○構成員 それはなかなか難しい話だ。
○構成員 そうですね。しかし、一歩前進しなければいけないと思っているのだが。
○事務局 先ほど構成員から母子手帳という話が出たが、この母子手帳の仕組みというものが今おわかりになりますか。
○構成員 詳細を今、持ってはいないが、実際には妊娠がわかったときに保健所などに行って、そのときにもらうというもので、その後は、例えば妊娠したときに、いろいろ健康診査とかを受けますね。そういう記録を自分が書いたり、あるいは、場合によっては保健師が書いたり、出産してから後の身長とか体重とか、そういうものの記録も書き込んでいくというものである。
○事務局 後ほど、是非その詳細な根拠だとか、あるいは個人情報の関係はどうなっているのかとかいうことをお教えいただき、私が事務局として考えているのはそういう感じの、先ほど履歴がどうとかという話もあったが、そこぐらいはある程度要ると思うが、場合によっては必要最小限のことだけでもとりあえずつくるとかいった形にしたらどうか。
○構成員 被害者カードという名称かどうかはともかくとして、いろいろな被害者の方が、例えば被害の関連で行政サービス等を受けなければいけない場合に、その機関との関係で一定の情報伝達を円滑にするための仕組みというのは必要だと思うし、それは現に今までもやってきている。そういう場合に、紙で情報を提供するということもやっている。
ただ、実際、それがどこにどのように流通するかというのは、全くここで今、議論がない中で、およそそれだけを前提に自己目的化的に話を進めていくのではなく、具体的に例えば被害者の方がこういう機関に行くときに、こういう情報が必要で、この機関との関係ではそういうふうな情報流通の仕組みが必要であるとか、もっと個々具体の議論をしていかないと、一遍に全部同じような形でというのは、なかなかその必要性も私たちは説明できないし、とにかく個別具体の議論をやっていくべきではないか。
○事務局 被害者カードが必要だと思うのは、この間も中央大会である被害者の方が、病院に行って、こういう心ない言葉を言われたとかと言われていたのだが、まさに警察とか司法の世界はそれなりだが、やはり病院だとか、あるいは、よくあるのは福祉の担当の方とか、そういった被害者のことが全くわからない方に対して、きちんとした応接をしてほしいという思いなので、今、警察庁の方が言われたのはそのとおりだと思う。
ただ、名称はともかく、カードそのものを否定するものではないという理解でよろしいか。
○構成員 被害者カードという名称かどうかはともかくとして、関係機関との情報連絡の仕組みとして、一律にというのはなかなか難しいのではないかということを申し上げている。個々具体の受け手との関係でやはり情報を提供する。これは逆に私どもが、先ほどのお話であれば、警察では、証拠上被害者として裁判なりいろいろな過程で認定されていなかったが、現実に被害に遭われているといった方も、やはりそういったカードを求めているとして、その方々が関係機関でカードをつくった場合に、我々の目から見ると、証拠上なかなかそれは犯罪被害として認定されないような方が、例えばそのカードを持って私どものところに来たときに、「私は犯罪被害者です。犯罪として、きちんと捜査してください。」と、あるいは、検察庁のところへ行かれて「起訴してください。」と言われても、逆の場合は非常に難しい可能性もある。
だから、やはりどういう関係機関との間でそれが必要になるかということをよく議論しないといけないのではないか。私どもも、公営住宅の場合であるとか、DVの場合であるとか、ストーカーの場合であるとか、やはり個々具体の関係機関との関係で、やはり必要な情報伝達をスムーズにしていくことが被害者の方のためになるということで、現に今やっているわけで、やはり個々具体の現実に問題になっているケースについて、それを考えていく必要があるのではないか。
○構成員 やはり被害者の立場と、実際にそれに対峙して支援される方、それを運用される方で、被害者問題の難しいところは、だんだん支援する側の方の意見が強くなってきて、原理原則、本体のところを忘れてしまうと。本当に困っているのは、自分が被害者であるということを知ってもらうことに、とても時間がかかるということ。逆に、裁判所に行ったりとか、いろいろな福祉関係に行ったときにも、自分がこういう事件に遭いましたよということを言うだけでもとてもつらいことである。それは、必要があれば、警察庁に問い合わせてくれれば出しますからと言っても、そこに問い合わすときに、「私はこういうのが何年何月にあって、ご存じですよね。何とか警察署の何々課で対応してもらいました。」と言わなければいけない。であれば、例えば少なくとも警察の方が取り扱った事件に対して被害者と認定すれば、その都度、警察の方は、警察として受理しましたということを証明してあげるとかいったことがあるだけで、とてもうれしいと思うし、助かると思う。それがどれだけの効力を持つか。免許証みたいに、それで身分証明になるかどうかまではわからないが、「あなたは被害者として国が認定しました。このカードを見せれば、何らかの施設に行けば、迅速な支援を受けられる可能性があります。」とかがあれば、それは一つの安心になると思うし、忘れてもらいたくないのは、被害者の方がいろいろな国の仕組みとか法にはわからないところがあるが、実際に生活する中で、それを一々証明することは面倒くさい、とても言うのも大変だということに対しては、何らかの支援があればうれしいなということで、またいろいろな関係する機関も、どの機関がどんな支援をするかということがだんだんこれから明確になってくれば、被害者の方には被害者カードの裏にも、この機関ではこんな支援ができますよとか、この機関はこんなことができますよということを具体的に書いてあげて渡すようにすれば、このカードとこの裏を見て、例えばここに行こうとかあそこに行こうというような、被害者の方が能動的に次の行動に移せるような仕組みをつくることができればと思う。やはり、主体は被害者であって、すべての情報は被害者にあって、被害者が支援を受けなければ意味がないわけで、その被害者を主体として物事を考えるようにしなければいけないと思う。
○構成員 私たちも、やはり被害者の方が何度も同じ説明をしなければいけないというのは非常につらいというお話は前から聞いていて、十分認識しているつもりである。私たち警察の中でも、そういったことについて配慮ある対応ということはいつも考えているところである。
ただ、今、構成員がお話になられた、例えば警察で1回話した話を、検察でもしなければいけない、裁判所でもしなければいけないというお話だが、これは例えば警察で事件として送った場合、被害届とか一連の書類というのは、もう既に検察庁の方へ行っているわけで、そういった情報を前提として、なおお尋ねになっている部分があるのではないかと思う。ですから、そのカードをつくったら、司法手続上、何回も同じ話をしなければいけないということが解消されるかというと、必ずしもそうではないということはよくご理解いただきたい。
○構成員 はい。わかりました。
○構成員 それから、いろいろな関係機関との連絡について、例えば身体犯の被害者のご遺族の方に対して、被害者連絡をやっている。それで、これは捜査状況であるとか、逮捕された、されなかったとか、そういった状況を定期的にお伝えする仕組みで、その際に被害者の手引というものを渡すことにしている。これについても、途中で立ち消えになってしまうとか、特に被疑者検挙の場合については、いつの間にか、連絡が途絶えしまうとか、いろいろなご指摘をいただいていたので、先日、連絡の頻度等について見直しをするとともに、被害者の手引についても、従来は必ずしもそういった記載はなかったのだが、例えば犯罪被害者等早期援助団体等の民間支援団体、先ほどの警察署レベル、あるいは県レベルの被害者支援連絡協議会、法テラスや日弁連の関係機関のことも、極力今回の被害者の手引で網羅しているので、今後、被害者連絡という形で被害者の手引を受け取られる方は、相当、関係機関でどういう支援が受けられるかということがわかるものをつくったつもりである。
3.その他
次回の検討会は、来年1月下旬を予定し、引き続き、更なるネットワークの構築について議論するとともに、民間団体で支援を行う者の研修やコーディネーター等の育成について議論する。