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経済的支援に関する検討会(第8回)議事要旨


(開催要領)

日時:平成18年10月24日(火)15時00分~17時45分
場所:合同庁舎4号館共用第4特別会議室
出席者:
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
岩村 正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫元オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理出席振角 秀行金融庁総務企画局参事官
中野 雅之厚生労働省政策評価審議官
谷 みどり経済産業省商務情報政策局消費経済部長

(議事次第)

1.開会

2.第10回検討会の日程調整

3.経済的支援制度のあるべき姿についての検討(3)

4.その他

5.閉会


(配布資料)

資料1論点整理関係資料
1-1 経済的支援に関する検討会における検討事項[PDF形式:18KB]
1-2 犯罪被害者等に対する給付例[PDF形式:260KB]
資料2カウンセリング関係資料[PDF形式:26KB]
資料3白井構成員資料[PDF形式:12KB]
資料4法務省資料[PDF形式:10KB]
資料5厚生労働省資料[PDF形式:12KB]



(議事内容)

○ 経済的支援制度のあるべき姿の検討について
 前回検討会における質問事項について、概略以下のとおり説明と質疑応答が行われた。

(事務局)論点整理関係資料、1-1というのがある。これは、前回の検討会でも配付した資料であるけれども、検討の際に必要になるので再提出させていただいた。本日は、多分、2ページ目の手続、給付方法等のところから入るようになるのではないかと考えている。
 その次であるけれども、論点整理関係資料の1-2だが、これは犯罪被害者等に対してモデルケースを設定して試算した資料である。この最初の横紙は、43歳男性で、前回お示ししたものと同じものであるけれども、高額療養費などで制度の改正があったので、その点を若干改訂して最新のものにしたのが、最初の方のものである。モデルケースの3というのは、前回、構成員の方からリクエストがあった、もう少し若い人で所得の少ない人について作ってくれということで、少し見にくいけれども、後ろから四、五枚がそうなっている。この場合も、モデルケースの1、2と同様に、大体この1枚目、モデルケース案の最初を見ていただくと、もちろん所得が低いので、それに応じて給付金、あるいは労災の補償金等も低くはなっているけれども、大体の傾向としては、労災の場合も一時金が出れば、その分、年金の方は少なくなるという感じで、傾向としては前の43歳の場合とほぼ変わらないのではないかと考えている。
 次に、カウンセリング関係の資料2というのがあるので、ごらんいただきたい。これは、前回の検討会において、構成員の方からご指摘があった保険診療とカウンセリングの自由診療との関係等に関する厚生労働省からいただいた資料である。
 その次の資料3-1と資料3-2は、今回、白井構成員から提出された資料である。後ほど説明をいただければと思う。
 資料4であるけれども、これは前回の検討会において構成員から要望があった刑務作業による歳入額で、法務省から資料をいただいている。
 資料5であるけれども、これも前回の検討会で構成員の方からご指摘があったサリン事件の被害者に関するアフターケアと医療費負担との関係について、厚生労働省からいただいた資料である。ご参考にしていただければと思う。
(法務省) 資料4に記載したところであるが、受刑者の刑務作業による年間の歳入額、平成17年度で約61億円ということである。今回、これ以上のことは紙には記載しなかったが、若干、補足してご説明をしておいた方がよいかと思うのは、これは歳入であって、その刑務作業を実施するに当たって、当然、経費がかかっている。何を経費と見るかという範囲、あるいはその金額をどう計算するかという問題があって、紙にはしていないが、若干、口頭で補足させていただくと、いわゆる直接的な経費ということで、こういう作業を行う際の機械器具の更新であるとか、消耗品、消耗資材の調達であるとか電気・水道料等、これを計算すると、17年度について見ると約43億円かかっているということである。
 それから、経費ということではないが、この刑務作業に関係するものとして、受刑者に対するいわゆる作業報償金、これがが約20億円ある。そのほか、経費と言えるのかどうか、あるいはその計算がなかなか難しいけれども、その作業を行う工場、箱物、これについても年間、相当の金額で施設費を使っているということ、あるいは、この作業を指導する職員、技官がいるが、そういう者の人件費等々もあるということである。以上である。
(厚生労働省) まず、資料5であるが、労災のアフターケア制度である。アフターケア制度は、労災の症状が治癒あるいは固定した後に保健上の措置として行うものであって、したがって、そのアフターケア制度で検査をした結果、いろいろなことが起きるかと思うが、業務災害あるいは通勤災害以外の原因による傷病については、労災の保険制度で対応することはできないわけであるが、その傷病が再び発症した、すなわち再発として認定されるような場合は、再び労災の療養補償の対象になると、こういうことであって、個々それぞれのケースによって、その後の対応は異なってくるかと。したがって、事情によっていろいろ対応は異なってくると、こういうことである。
 資料2をごらんいただきたいと思うが、カウンセリング関係資料ということで、前回ご質問があった保険の点数化の課題というか、プロセスということである。医療的というか、医療保険上の医学的なカウンセリングについては、幾つか既に診療報酬上も評価をされているところであるけれども、そういったものに含まれていない既存の項目にない新規のものであるとか、現時点の評価、点数が足りない、要するに、もう少し新しい知見があるので、これだけ効果が高いのだと。なので、今の評価では低過ぎるというような場合には、これは診療報酬の改定時、2年に1度ということになるので、次回は平成20年ということになるけれども、その際に学会などでご意見をまとめていただいて、希望書を出していただくという形になる。この希望書については、一定の様式というものが、通常、定まっていて、そういった中で、例えば医学的な効果であるとか、それから医療経済的な効果といったようなものについてもデータを提出していただいて、その提出していただいたデータをもとにして、厚生労働大臣の諮問機関であるところの中央社会保険医療協議会という中に医療技術の評価をする分科会というものがあって、こちらの方で科学的な根拠に基づいた有効性、それから効率性といった点について評価を行って、保険の方に導入する必要性があると判断された場合には導入されていく、そういうプロセスになるというところである。
 平成20年の改定ということであるので、通常、この学会からの要望というのは、今のスケジュールでいうと、ちょうど年が明けたころにまたいろいろ状況を整理して、通常は改定の年の夏くらいまでにご要望をいただくという形になる。そういったものをヒアリングさせていただき、またワーキンググループで精査させていただいて、最終的に検討すると。
 ちなみに、18年の改定の際には、大体1,000件近いご要望があるということで、そういった中から50件くらいが新規に認められると。医療費に係る状況は、非常に厳しいものがあって、なかなか全体的にマイナス傾向であるので、そういった中では非常に効果の高いもの、社会性、必要性の高いものといった観点から、そこら辺はアピールをしていただく必要があるということである。
 それから、2番目の部分であるけれども、保険診療と自由診療のいわゆる混合診療ということであるけれども、こちらの方は、今回、健康保険法等の改正というものを医療制度改革の中で行っていて、そういった自由診療と保険診療の併用というものをやりやすい形にしてある。そういった中で、技術として保険の適用になっていない医療技術であっても、これは一定の先進性があるということ、そして有効性とか安全性というものが確保されているというものについては、これは法律改正で保険外併用療養という形のものが新しく位置づけられたのだけれども、その中で評価療養という枠組みがあって、その中の一つである先進医療として、いわゆる混合診療的な取り組みができるような形になっている。こちらの方は、いわゆる規制改革の関係でのご要望などもあって、医療現場や患者さんに治療というものについてのオプションを広げるという観点から取り組まれているものであって、これは医療機関の方から、一定の様式があるので、その医療技術の内容とか、先進性、有効性、安全性、さらには現時点での技術の普及性とか、そういったものについてデータをお出しいただき、それを厚生労働省の大臣の会議であるけれども、先進医療専門家会議というところで毎月審議させていただいていて、その中で一定の評価をさせていただいて、適切であるということになると、これはこういった形での併用が可能になるということである。現在、110くらいの技術がこの枠組みに入っていて、届け出というか、こういった技術をやりたいということについて、一定の様式で届け出が出てから大体3カ月以内にご返事をするという形で、これも規制改革の方とのルール化の中で進めているので、だらだらやるというようなこともなく、きちんとその時点、その時点での対応をさせていただく、ご返事をさせていただくというような、そのような対応をさせていただいているというところである。
 詳しくは、具体的な流れなどについては資料の後ろの方につけているので、こういった感じであるということである。また個別に担当の方にお聞きいただくと、より詳しいところはご説明可能かと思うけれども、この時点での概要の説明は、以上という形にさせていただければと思う。
 3番のところに書いているのは、不妊治療に関して、保険の対象になっている薬物療法等によってもなかなかうまくいかなかった場合、これは一定の助成措置として、少子化対策の要望等もあったので、体外受精、顕微受精について一定の助成措置をしているという制度を、これは最近、平成16年度に設けたものであるが、こういう制度があるというご参考のためにという趣旨である。
(構成員) 素人で申しわけないが、このカウンセリングの問題については、犯罪被害者の方々の場合に、被害を受けた本人がPTSDになられるということで治療を受けるという場合だけではなく、そのご家族の方もかなりそういう精神症状になるわけで、そうすると、どの範囲の方々にそういう援助を与えるかという問題と、それからそういう純粋に医療保険上の問題として、どういう手続でそれを保険の範囲内に持ち込むかという、その2つの側面があるのではないかなと思う。この場合、今ご説明いただいたのは、主としてその範囲の問題というよりも、もしその方が医療上、PTSDと診断されて、これこれのこういう治療が必要である、あるいはカウンセリングが必要であるというふうに判断された方について、どういう形で保険に持ち込めるかというお話だと思うが、素人でよくわからないのであるが、これは飛鳥井先生にお伺いした方がよいのかどうかわからないけれども、被害者の方々のアンケートを見ると、そういう被害者本人ではない家族の方々のカウンセリングを受けたいという要望が、非常にたくさん出てきている。それで、そういう方々の場合にも、ここで言う保険の適用の検討の中に入れてもらえる可能性はあるのかどうかということなのだけれども。
(構成員) 一緒にはできない部分も現実にはあるかと思う。実際、遺族の方でも、こういう時間のかかるカウンセリング、心理療法が有効であるという知見は少しずつ出てきていて、私自身も今、被害者本人の方のPTSDの治療の研究と一緒に、遺族の方のためのPTSDプラス悲嘆反応のプログラムを組んで研究しているところあるけれども、必要度というものはかなりあると思う。
 ただ、この前、私が提案させていただいた被害者ご本人の方のカウンセリングについては、これは重傷病給付金の枠の中での要望をさせていただいたので、恐らく遺族の方の場合は、今の犯給法の傷病に対する給付ということには少しそぐわないことになってくるかと思うので、また別立てで何か方策は考えなければならないと思う。だから、一応これは、治療の必要性ということについては同じであるけれども、枠としては別立てということになるかというふうに認識している。
(構成員) 今のご質問に関してだが、ここで今、厚生労働省の方でご説明があったのは、あくまでも公的医療保険の枠の中で、カウンセリングを保険診療で扱うかという話で、そうすると論理としては、その原因がどういうものかというのは関係ない。だから、難しいのは、例えばPTSDについてのカウンセリングを保険診療の中にもっと広げて乗っけるという話になると、それは犯罪被害者の方々あるいはその家族の方々に限らない話であって、およそ何の原因であれPTSDになった人に対してカウンセリングをするかという話になってしまうというところを、議論を公的医療保険の枠の中でしようとすると、そういう議論になってしまう。
 したがって、非常に議論が大きく広がってしまって、先ほど担当の方からもご説明があったように、現在、公的医療保険は非常に財政的に厳しいので、そこに議論を広げてしまうと、今回の検討会とやや方向性がずれていってしまって、議論がほかのところに行ってしまうかなというように思う。
(厚生労働省) まさに医療保険の立場からいうと、治療が必要な方なのかどうかという観点であるので、それは原因のいかんに問わずという話になる。ただ、一方で、そのご家族の方なりにという話になった場合には、それはその治療法というものがご家族にもきちんと効果のあるものであるのかどうかという、先ほど構成員もおっしゃっていたけれども、そういったいわゆるデータなりが必要になってくるということである。
 ちなみに、少し性格は違うけれども、例えば現行の診療報酬の中でも精神の専門療法というようなところの中では、特に統合失調症などの方が中心であるけれども、そのご家族に対していわゆる治療行為を行うことが本人にとっても効果があると認められるような場合には、そういった場合にも算定ができるというような、少し性格は違うけれども、そういったものもあって、いずれにしてもデータがあれば、医療保険の場合は広く国民全般にということがベースになるので、そこのところの出発点は若干違うかもしれないけれども、そういった論理構成の中で対応する。少なくとも、そのデータがあって有効性があるという形であれば、我々の方としてはそういったことを保険に乗せる、乗せないといった部分での議論をする、そういうプロセスは常に、開かれているという言い方もおかしいのだけれども、我々としてはそういう形でいつもご要望というのは受け付けていると、そのような説明になるかと思う。以上である。
(構成員) 構成員のご発言の中で、被害者本人でなくてご家族のPTSDなりに対するカウンセリングをどうするかという問題は、保険になると、その辺は全部一律扱いであろうということで、それはご納得いただけると思う。被害者のご家族についての取り扱いをどうするかということについて、また戻って議論する場合もあるので、そこで必要があればまたご発言いただくということでいかがだろうか。
(構成員) そういうことでいいと思うけれども、今、先生方のお話を伺って感じたのだけれども、やはりこれは公的医療保険制度の中だけで考えていくと、解決が非常に難しい。やはり、一つの犯罪被害者の補償体系の中での独自の援助の仕方というか、支援の仕方というか、そういうことも少し工夫しないと難しいかなというような気がしたけれども。
(構成員)そういう観点から引き続きやっていただいたらいかがだろうか。カウンセリングは、この間、構成員のお話しになったのは、どちらかというと被害者本人の話だった。
(構成員) そうである。
(構成員) だから、その親族の方まで含めてやる必要があるというのであれば、そのご意見というより、むしろそういうことで手を差し伸べなければならないような事実としてどれくらいあるのかということをお示しの上、またもう一度、ご発言いただけたらと思う。
(構成員) 前回もお話をしたと思うが、重傷病給付金というのは、これは被害者に対する給付金である。だから、今の犯給法では、ご家族については手当てがされていない。
 ただ、前回もご説明した、県警察に対してカウンセリングのための補助金を出していて、それを予算化している県がある。こういった県警察では、被害者に限らず、ご家族も含めてカウンセリングを実施しているという状況がある。
(構成員) そういうやり方も、1つはあるけれども。またこれは後ほど、この検討会の答申というものがもし出るとすると、そういうものの中に入れるべき事項かどうかということについて、ご発言をいただきたいと思う。

 経済的支援制度のあるべき姿について、前回検討会に引き続き、概略以下のとおり検討が行われた。

(構成員) 本日は、この論点資料の1-1であるが、既に2までは終わったので、3の経済的支援の手続、給付方法、管理・運営、法形式に関するものと書いてあるところから検討を再開する。
 まず最初に、請求時効ということになるが。
(構成員) 前回、被害者の税制上優遇する措置をというところで終わって、そこに少しつけ加えたいことがあるけれども、いいだろうか。
 例えば、前回の話では、少し軽減しろという、そのパーセンテージだけのことで解釈されたような感じに思っているので、もう少し幅を広げて、例えば控除枠という部分で、盗難に遭ったりしたときには、雑損控除とかがあるのと同じようなことで、犯罪被害に遭ったときの控除枠みたいなものがあるとよいのではないかということなのだけれども。
(構成員) この間、非課税枠ということでご発言があって。
(構成員) そうである。それが、例えばそういう控除枠をつくるということであれば、それはそれでもういいのだけれども。
(構成員) そこのところは、前回、そのことについての私の当時のメモ程度であるが、ご発言としては、給付金そのものは非課税であるが、所得の中へ入ってしまう。それでその次の年あたりからまた税金がかかるので、控除枠の中へ。
(構成員) 控除枠というのをつくって。
(構成員) つくると。
(構成員) はい。
(構成員) 私も、税制はよくわからないので、その点については後ほど整理して、非課税枠というのか控除枠というのか、要するに、給付金そのものは課税されないけれども、所得となった後の次の年ということになるか。
(構成員) そう。例えば、収入によって翌年の健康保険の料金とかが決定される。
(構成員) 税金が上がると、だから結局、非課税枠、控除枠か。やはり控除枠が上がってしまうものだから、要するに、税金を取られる分が少しふえてしまうということはあり得るだろう、給付金がたくさん入ると。私はそのように理解しているのであるが。
(構成員) いえいえ、そうではない。そうではなくて、例えば働けなくなったために収入が減って、その分である。だから、損害の分である。
(構成員) その減った分は、当然それはどういう理由であれ、減っていけば、所得がないから、非課税も何も、そうなってくるのではないだろうか。問題は、給付金をもらった場合に、給付金そのものは非課税である。ただ、それが所得として入るので、後でいろいろなほかとの税制で、ぴょんと1つ、税率のところで上へ上がってしまう場合があるのだろうと。そのアップ分は、少しおかしいのではないかというご主張かと思って聞いていたのであるが。
(構成員) そうすると、私が税金の計算の仕方を知らなかったということなのかもしれないけれども、例えばボーナスとかがカットになったりすると、給付金とは別に普通の、被害者がずっと働いていたけれども、被害を受けたために働けなくなった、あるいはかなりボーナスとかもカットされたりしていて収入が減った場合に、課税対象の収入そのものから、例えば犯罪被害者、犯罪を受けたための控除枠みたいなものをつくるといいのではないかなというふうに思ったのである。
(構成員) 多分、おっしゃりたいことはこういうことなのではないかと思うが、当然、例えば犯罪被害に遭って、ボーナスのカットであれ、給与が減ったということであれば、その年のその時点での所得は減るので、翌年以降の課税では、確かに税額が減る。ただ、時々起きることは、犯罪に遭った年そのものの課税額とか、それから特に国民健康保険などが前年の所得で課税されたり徴収するので、そうすると現実に所得が減ってしまっているのに、前の年の高い所得をベースにした課税なり保険料の請求が来るということがあって、そこでの差が犯罪に遭ったその当年に起きることがあるということである。翌年以降は、構成員がおっしゃったとおり、もともと収入が減っていれば税金が減るので、したがって、翌年以降については課税額も減るし、例えば国民健康保険の保険料額も減るが、犯罪に遭った当年における課税額が、前年ベースですると、収入が減ったときに重い負担が生じるということが起きると。同じような問題は、特に例えば民間のサラリーマンの失業のときに起きることがあって、やはり失業して収入がなくなって、そうすると前年度のベースでもってそのまま課税されるので、負担が重くなると。失業しているのに、収入がなくなっているのに、重い負担だけが残ってしまうということが起きるが、ただ、国民健康保険については、場合によっては保険料の減免が、市町村によるけれども、その年度については、手続をとれば可能な場合があるのではないかというふうに思う。税の方は、わからないが。
 それから、控除については、私も専門家ではないけれども、少なくとも控除という場合には、所得を得るのに必要な費用の発生とか、それから何らかの所得を減少させるような具体的な損失の発生というのが、多分、基本的には要件にして組み立てているのではないかというように思うので、おっしゃられている趣旨そのものが控除という今の枠組みに当たるかどうかというのは、私も専門家ではないからはっきり断言はできないが、なかなか難しいのではないかという気がする。問題は、多分、前段で私が申し上げたことかなというように思うけれども。
(構成員) 税制については、今の発言のご趣旨を踏まえて、事務局で税法上の取り扱いなどについても調べていただいて、きょうは金融庁も、税法は違うかもしれないので、それは何か非常に犯罪被害者に不都合な場合があることになるのかどうかという事実を確認した上で、事務局からの整理に従って、もう一回ご発言をいただいたらいかがかと思う。今、非常に不確かな話だけでやっていると……。前年度のものということであれば、これはもうとにかくそうなってしまう。要するに、私なども退職した後、1年間浪人している間にひどい目に遭って―ひどい目ではなくて、ひどい目に遭ったような気になる、前の年のあれなものだから。それは、いかんともしがたいところがあるのかもしれない。ただ、もらって次の年の分がどうなるのか。そこのところ。
(構成員) 今、構成員がおっしゃったように、この前申し上げた強盗殺人に遭った方の場合は自営業なのであるが、やはり殺されたのが11月だったので、その年の翌年3月に確定申告をする売り上げは結構あったわけである。ところが、実際にはもう11月から店は閉鎖状態で、収入は全くゼロになってしまっているのに、払わなければならないときにはもうかなり経済的に苦しいのに、3月にまず確定申告して払わなければならないと。それから、構成員がおっしゃったように、4月以降の国民健康保険なり国民年金が前年度の実績で出されて、そのためにものすごく、それが何とかならないかということで市の方にお願いしたけれども、それは無理だということで、結局、非常にそれを払うのが、自分としては腑に落ちないというか、そういうことで大変だったということを聞かされている。
 国税の場合は、いただく損害賠償については所得税法の9条で、非課税ということになっているけれども、翌年の予定納税の場合は、その予定納税の通知が来たときに、前年こういうことで犯罪に遭って収入がこうなったということを申請して、そして予定納税を減らしてほしいということを申請すれば、減免の措置があるということが通知書に書いてある。サラリーマンの方は、僕はよくわからないけれども。
(構成員) 繰り返すが、税法上の取り扱いは、もう少し事務局で調べていただいた上で整理してみたいと思う。
(構成員) 現行の犯給法では、被害の発生を知った日から2年、又は被害が発生した日から7年を経過した場合には請求はできないということであるが、これが妥当かどうかという点について、私からも問題提起をしているが、この点について、構成員と構成員からもご指摘がある。
(構成員) 請求時効の件であるけれども、これについては、今お話があったように2年間という期間、いわゆる申請期間から2年ということと、それから被害が発生してから7年間ということで定められているわけであるけれども、基本的にはこの申請を一定の期間ですることによって、そういう意味では事務的にも一定の期間で解決できるという意味合いにおいては、私は、何らかの期間が設定されるということは望ましい必要なことだと思う。
 ただ、今回の構成員からの附属資料にもあったけれども、被害者自身がそういったことを知らないというか、犯給法自体を知らないとか、そういうことも何件か出ている。これは、年月というか、だんだん最近になって、いろいろなハンドブックというか、被害者に対して警察においてご説明される、そういうテキストもできていて、それに基づいて周知がされるということになっているが、現実、そういう周知するという仕組みと、本当にどこまで被害者にそれが周知して理解できているかということは、どうも私はギャップがあるのではないかというように思うので、1つはこの期間ということについて、一定の期間を設けるということは、私は妥当なことだと。それでは、この期間が2年間なのか、何年間が妥当なのかということであるが、今回のアメリカあるいはヨーロッパの調査でも、ドイツを除いて各国で、一定の期間が設けられている。そういうことと比較すると、日本だけが特段短いとかということも言えないのではないかというように考えている。
 ただ、2年、7年と決まっているが、しかしながら、レアケースになるかと思うけれども、例えば児童虐待といったような形でなかなか家族間の犯罪で、こういった期間でいわゆる申請不可能だというようなことがあると思うので、これはフランスでの時効についてのところで前回ご報告申し上げたけれども、私としては一定の期間を設けた上で正当な理由のあるときは、フランスでは失権回復ができるというような表現でご説明があったが、そういったレアケースについては、この期間を超えていても特例的に救済されるというか、そういう形が現実的であり、また世界から見ても妥当な考え方ではないかなというのが私の考えである。
(構成員) 私の方で、この時効というものは、なくすべきではないかというような意見も出しているわけであるが、結局、時効制度を設けているのは、あまり年数がたってしまうと、審査しようにも証拠が集まらなかったり、審査の資料がなかなか集めにくいというような、そういう技術的な面が大きいと思う。要するに、被害者の方の補償の必要性そのものは、何年たっても、もしそれが本当に犯罪による被害で大変な状態にあるということであれば、必要性そのものが時効にかかるということはないわけで、専ら制度を設ける側の技術的な理由で、何年にしようかということを設けているということが多いと思う。いわゆる民事の時効のように、「権利の上に眠れる者は、法は保護せず」というような考え方ということではないような気もする。
 それで、先ほど児童虐待のような例もあったけれども、長野県で発生したように、警察の方は自殺ということで処理していたにもかかわらず、19年目か20年目に真犯人があらわれて、そして真犯人があらわれてからさらに3年を経過して、遺族の方にこういうわけで殺人であることがわかったということなので、もう民事の除斥期間も経過してしまっていると。何もかも法的な手続をとる権利がもう消滅してしまっているというような状態、そういう事件も起きているので、一応、申請については、時効で制限してしまうというよりも、申請は認めて、そしてどうしても資料などが集まらず、あるいは認定することが困難である事例については、申しわけないけれども、その中で裁定上、これは支給することができないという裁定をする、そういうような形でできる限り救っていくという制度を設けても、決して支障にはならないのではないかなというふうに思うけれども。
(構成員) 今の点で構成員に質問であるけれども、失権回復という言葉があるのか。
(構成員) 私は、日本でそういう正式な表現があるのか存じないが、前回のフランスの報告でそういう説明があったので、その言葉を使わせていただいたということである。
(構成員) 関連して、私もこの点は2年、7年というところは、少し問題意識もあるのだが、結局、2年、7年がそのままであろうと、要するに起算点をどこにするのかというのが非常に、「知ったとき」とかというのが今の表現になるわけであるが、知ったときというのは一体いつのことかという点は、必ずしも明確でない場合もあるし、先ほどの児童虐待のケースなどは、知ったけれども、例えばとても申請できるような客観的状況ではなかったというような場合もあるだろうし、だから、そこのところは文言をどうするか、あるいは運用上でどうするのかという問題もあると思う。
 ただ、構成員のおっしゃるのは、どちらかというと期間というよりも、むしろいつでもできるけれども、事務上難しかったら2年、7年ぐらいで勘弁してくれと、こういうお話で、原則では引くなと。
(構成員) 要するに、認定できない場合は、悪いけど支給できないということで足りるのではないかと。
(構成員) だから、要するに時効という考えではないわけで、それは。
(構成員) ええ。
(構成員) だから、そうなると法的安定性とか、いろいろな問題も出てくる。
(構成員) 現行の制度は、今、構成員からお話があったように、犯罪被害者等給付金の支給等に関する法律の第10条第2項で「死亡、重傷病又は障害の発生を知った日から2年を経過したとき、又は当該死亡、重傷病又は障害が発生した日から7年を経過したときは、することができない」という形になっている。これは、日本の現行の他の制度と比較した場合に決して短い期間ではないということが、1点、言えようかと思う。また、他国の立法例との比較から見ても、1年、2年、3年というのが他国の立法例では多いので、これと比べても決して短いわけではないということは言えようかと思う。
 ちなみに、今、時効というお話があったけれども、これは除斥期間であって、時効の中断とか援用とかという制度はない、そういう期間であって、したがって、固定された期間ということでご理解いただきたいと思う。
 ただ、問題は、今もお話があったように、やむを得ない事情によって、その間、申請ができない場合というのはあり得る話なので、それを今のように2年間固定という形でもって本当にいいのかどうかということについて、我々は、実は今、検討していて、例えばそういったやむを得ない期間があれば、それを除くとかいうような形で実質的に延長を図るということができないかどうか、現在、検討を進めている。
 また、7年間がよいのかどうかという話であるけれども、前の基本計画検討会では、岡村先生から、せめて10年にというお話があったけれども、これも10年がよいのか、7年がよいのか、またはなくてもいけるのかどうか、少しこの辺は、また引き続き検討なのであるけれども、ただ、この7年ということにした趣旨は、今、これも構成員からお話があったように、法的安定性の問題とか、また事務処理上、なかなか裁定資料が集まらないとか散逸しているとかということもあるので、そういったことも含めて考えて、7年という形で切っているのだけれども、これがよいのかどうかは、これも含めて現在検討をしているところである。これは何らかの形でご期待に沿えるような前向きに結論を出したいというふうに考えている。
 それから、周知が徹底していないのではないかというようなお話が、構成員からあったけれども、確かに現在、この犯給金の制度があるという教示がきちんと行われているかどうかについては、これは我々も検証しなければいけないと思っていて、これが徹底されるように、さらに努力していきたいというふうに考えている。
(構成員) 今、やむを得ない事情ということでお話しいただいたけれども、我々がフランスに調査へ行ったとき、フランスの支援組織のINAVEMの方で説明を受けたのだけれども、フランスでもやはり申請期間というのは定められているが、その申請期間を知らない弁護士が引き受けて、申請期間を徒過してしまったと。被害者の方から弁護士に対して損害賠償請求をするということで、INAVEMが再度相談を受けた事例があったらしくて、INAVEMの方でいろいろ補償制度を調べて、やむを得ない事情によって申請がおくれた場合は認めるという条項を探し出して、それでクリアしたという説明をINAVEMから受けたことがあるので、場合によってはそういうことも可能なのかもしれないと思って、今。
(構成員) これは、2年、7年が何年になったらよいのかという問題は別途あるかもしれないが、とにかくこの除斥期間をきちんと定めて、一般的にはこの間だけというのはやはり何かないと、システムとして立ち行かない面があるというのは、理解できるような気がする。
 ただ、特別な事情のある場合に、それを、先ほど失権回復というお言葉があったけれども、そういう言葉を我々も使うのかどうかは別にして、正当な理由、あるいは少し原則を変えて例外適用しなければならないような場合があるのかどうか。それで、それについて、ややセービング・クローズ的な文言を用意していくというようなことも考えてよいのではないかと思う。
(構成員) 先ほどの警察庁からのご説明で、周知について努力すると追加説明があったけれども、被害者の立場からすれば、可能な限り早く申請し、そして権利があるものについては受給できるということが望ましいのは、これはもう言うまでもないわけであって、周知の義務化というか、何かそれを徹底させる方策というか、そのあたりのことをもう少し詳しくご説明願えればありがたいと思うのだが。
(構成員) 基本計画の中に、被害者連絡の充実という項目があって、それについて、今、我々は、どういう方策があり得るのか検討しているのだけれども、今お話があった被害者の手引の配布を確実にやらせるとか、そのためのシステム化をどうやってやっていくかということは今現在やっているので、こういった被害者連絡がきちんとシステムとして、組織として管理することができるようになれば、これは恐らく漏れはなくなってくるのではないかと思う。
 今のお話は、もう一つさらに進んで、例えばこういった制度があるということを教示しなければいけないというふうな規定を置くべきではないかというお話だと思うけれども、今現在はそういった教示義務に関する規定はないけれども、それも含めて検討させていただきたいと思う。
(構成員) 結局、この今やっている検討会は補償の検討会なのであるけれども、ほかの検討会で、連携の検討会とかがあるわけで、地方自治体に総合窓口を設けるということもやっているわけであるから、そうした被害者が行く窓口がふえるわけで、警察だけではなくていろいろな窓口で、こういう制度があるということを被害者の方に知らせる、そういう方策もやっていただいた方がよいのではないかなと思うけれども。
(構成員) その点にぴたっと当たるかどうかわからないが、経済支援の運営管理の問題というのは、後ほどまた出てくるが、そこでアドバイザー制度という言葉があるけれども、とにかく被害者に対していろいろとアドバイスを与えていくような、そういう機関というか人がいないと、何も知らずに徒過してしまうということがあるので、そういうことがないようにするための仕組みというのは、別途また後ほど出てくるので、そのときにもう一回、また立ち返ってご発言いただいたらいかがかと思う。
(構成員) 併給調整は、今の犯給制度では、年金を除く他の公的給付とは併給調整がされるわけである。私的保険とは調整がされないということだそうだが、こういう併給調整というのは、制度の建前上は当然のことである。犯罪被害者の特性を考えた場合に、併給調整を外していった方がよい場合はどういうことがあるのかということは、一度、検討してみる必要があると思う。
(構成員) 私の方で出しているのは、現在ある一時金の金額を3,000万円から4,000万円ぐらいに、自動車事故の被害者の方々と同じ程度のものを補償するようにしていただきたいということとあわせて、損害賠償金をどのような名目で、見舞金という形でもらうか、いろいろ加害者から出される場合が多いけれども、それを給付金から差し引いてしまうというシステムは、金額そのものが非常に低くなってしまうということもあるということと、同時に、自動車の損害賠償の保険のやり方と全然違うわけで、自動車の交通事故の場合には、自賠責保険の3,000万円を受領していても、損害賠償金額がそれ以上あれば、その3,000万円を超える部分についてはさらに請求できるというようなシステムで、自賠責保険から加害者にもらったお金を差し引いてしまうということはないわけである。だから、もし自賠責保険で3,000万円ということで認定されれば、加害者から100万円もらっても200万円もらっても、それを差し引くということはないわけだが、それをこの犯給法では調整してしまうために、かなり金額が低くなってしまうと。きょうは、このアンケートの結果を一覧表にして出させていただいて、金額が書いてある人も書いていない人もいるけれども、この金額が1,000万円を超えて受領しているという方は、ほとんどいないわけである。実際には、最高額がこの一千何百万円ということになっていても、多少、刑事裁判をやっている間に、加害者側の弁護士の方からお見舞金というふうにして持ってきたものをいただいたり、加害者側の親族からそういうお見舞金が払われたりすると、それが差し引き勘定になってしまうために、認定された金額よりも低いものしかもらえないと、そういう形になっているので、加害者側からいただいた金額をすぐに差し引いてしまうという現行のやり方は、改めるべきではないかなというふうに思う。
(構成員) 自賠責の話は、私もよく承知していないので、比較の上でお答えすることは難しいが、ただ、一般的に自賠責は、原因者負担による保険制度であるので、同一には論じられないのではないかと思う。
 この今の犯給制度の趣旨をご説明申し上げると、これはご承知のとおりだと思うけれども、この制度は、ほかに何らの救済も受けられずに放置されている、本当にお気の毒な立場に置かれている犯罪被害者に対して、社会の連帯共助の精神から、国が一定の支援を行おうというものであって、言ってみれば補充的な制度だということをぜひご理解いただきたいと思う。
 したがって、同じ原因に基づいて他の制度でもって救済が図られるような場合には、そちらをまず優先していただいて、それでもって救済されない分を、犯罪被害者等給付金という形でもってご支援するというのが制度の趣旨だということをぜひご理解いただきたいと思う。
 それから、損害賠償の分を控除するのはおかしいではないかということであるけれども、犯罪の場合には、基本的に責任を負うべきなのは加害者であるから、まず加害者が責任をもって損害を補てんするのが原則で、そういった加害者が損害を補てんしたという場合については、これはやはり国が加えて犯罪被害者等給付金という形でもって支援するということについては、なかなか理屈が立たないのではないかというふうに私は思っている。
 ちなみに、諸外国の立法例を見た場合についても、我が国の併給調整は比較的緩い方に属していて、決して他の国に比べて厳しい併給調整をしているというわけではないということは、ぜひご理解いただきたいと思う。
(構成員) ここで、構成員と意見をやり合うというのも変なものであるけれども、要するに、今ここでされている検討は、基本計画に基づいて、現行の制度では不十分であり、そして実際の被害者の方々の実情からすると、より手厚い経済的な補償という制度も考えていかなければならないということを前提にしてやっているわけである。だから、確かに構成員のおっしゃるように現行制度の説明としては、それはもうおっしゃるとおりだと思うけれども、今、我々が目指しているものは、本当に被害者のニーズに合った手厚い保護をするためにはどうしたらよいかということをやっていることを、ぜひお考えいただきたいというふうに思うわけである。
 それで、確かに同じたくさんある傷害事件であっても、重傷の傷害事件が6,000から7,000件というふうに言われているし、殺人事件だったら1,400件足らずということであるので、そのうちで原則に従って加害者の方から示談を受けて解決するというケースも、それは中にはあって、それはそれでもう解決すればよいことである。今ここで問題にしているのは、加害者がもう刑務所に入ってしまって支払えないと。そういう人が、私がきょうお出ししたこの表の中でも、加害者からお金をもらっている、賠償金をちゃんと受けたという人は、ほとんどいないわけである。そういう人をどうするかということでやっているわけなので。
 だから、それについて、確かに今ある犯給制度でも、何百万円かのお金をいただいている方はいるけれども、その生活の実情、あるいは損害額の金額から比べても、もう全然その金額が違うわけである。だから、せめて犯給法というか、犯給制度、この補償制度で支給されるものについては丸々出していただかないと、とても損害賠償の一部にも満たないと、そういうようなことなわけである。それが実情なわけである。だから、そこのところをぜひお考えいただきたい。
 私が提出したこの一覧表を見ても、ほとんど殺人事件でも、この犯給制度でいただいているところでも500万円とか600万円とか、そういうものである。ところが、大体、殺人であれば、もう通常の損害賠償でいけば、遺失利益、慰謝料を合わせても、優に3,000万円、4,000万円を超える金額が算定されるわけである。だから、今、実際にいただいているのは、我々、計算して、きょうは損害賠償との比較表を出したけれども、比べていただくとわかるように、今、犯給でいただいているのは、大体皆さん、損害賠償金の10分の1ぐらいだと。だから、今の制度は制度としてわかるけれども、それをぜひ改正していただきたいということが願いである。
(構成員) 構成員に確認というか質問であるが、損害賠償による加害者からの支払いとの調整は、およそ認めないというご主張なのかどうかという点である。殺人とか死亡を伴う場合というのはあまりないのかもしれないが、傷害事件などだと、構成員も言われたように、民事上の損害賠償債務、その満額が、加害者側から支払われるということがあり得るだろうと思う。その場合にも、なお別途、この新たな制度による給付を行うというご趣旨なのかどうかという点でをお尋ねする。
(構成員) 加害者の方から損害賠償額を満額いただいている方について、さらにその補償ということは、現実問題として必要ないのではないかというふうに考える。
 だから、先ほど言ったように、比較的軽い事件で加害者側に支払い能力があれば、それが結構あるわけである。前に、示談率が掲載された犯罪白書もあったけれども、そういう示談率の高い罪種では、かなり加害者側の支払いで賄われているとは思う。
 だが、ほとんど殺人とか傷害致死とか、そういう刑罰の重いものになってくると、それがほとんど払われないと。民事判決が出ていても、払われない。だから、おっしゃったように非常に悩ましいところであるが、では賠償金として幾らまで取ったら補償金を出して、幾らまで取ったら出さないのかというような、そこの限界をどうするのかということは、正直申して我々の方としても検討課題として、というのは、なぜかというと、国民の皆さんに、税金から払うのに、そんなにたくさんのものを払っていいのかというようなご批判をいただく場合もあるし、それはおのずと国民の理解を得られるところというのは限界があるとは思うけれども。
(構成員) もちろんここで議論するのは、犯給法の解釈論をやっているわけではないので、経済的支援の立法論というか、どういう仕組みをつくるかということであるから、犯給法の適用はこうだから、それに従うというような問題ではもちろんない。そういうつもりで議論しているわけではないのだが、ただ、今、構成員からも出たが、損害賠償との併給を外すのか、外さないのかという問題と、犯給法の額がえらく少ないときに賠償金と調整されたのではますます低くなるという、何か運用のことだけを言っているのかという感じもしたけれども。
 だから、どういう場合に賠償金との併給調整してというような、何か線引きがきちっとできるか。つまり、こういう場合は併給調整、こういう場合はしないと、そういうことは果たしてできるのか。
(構成員) それは、立て方というか、補償制度のつくり方によってできるとは思う。とにかく加害者から受領した金額はすべて調整してしまう、そういう必要はないと思うけれども。
 だから、これは根本的に、この補償制度の性格という問題とかかわるとは思うけれども、本当に純粋にお見舞金的な性格なものであれば、本来、併給調整をすること自体はおかしいわけである。ところが、現在の犯給法を見ると、金額はともかくとして、一応やり方としては収入とか賃金、ある程度の所得水準と年齢というものと、それから障害等級とを掛け合わせて支給される仕組みになっているので、見舞金とはいえ、中身の性格としてはある意味では損害賠償の一部の支払いみたいな、そういう性格も持っているような気もするわけである。だから、そうなると、では併給調整ということが出てくるという理屈ではないかと思うが、それは検討して、理屈上こうだというふうに割り切るのはなかなか、私どもも検討中というところである。
 ただ、構成員がおっしゃったように、やはりどうしても金額を―実はきょう、私は持ってきているが、この一覧表のもととなったものには、実際にはどういう生活をしているかということも皆書かれているものがたくさんある。それを見ると、本当に気の毒な状態の方がたくさんおられて、やはりせめてその金額をもっと大幅にアップしていただかないとという、それが一番大きな金額である。
(構成員) だから、結局、給付水準の話になるのではないか。それが低過ぎるから、こういうふうになるというのではないか。
(構成員) 今のご議論を伺っていてのコメントであるけれども、1つは、新しい制度をつくるに当たって、給付のもちろん水準の問題もあるのだが、性格をどう考えるか。これは、例えば従来の判例を前提にすれば、労災などの給付の場合についても、要するに逸失利益の補償という部分で共通であれば調整の対象にすると。しかし、慰謝料というのは調整の対象にしないというのが判例としては確立している。であるので、一つのポイントは、経済的給付といったときに、逸失利益的なものの補償だという形に純化して考えるということだと、あくまでももし損害賠償との調整というのが問題になるとしても、それは逸失利益の損害賠償の部分だけが調整の対象になるのであって、慰謝料については調整の対象にはならないという、多分、そういう整理になるのだろうというのがまず1つである。
 ただ、そうはいっても、他方で、先ほど構成員もおっしゃったように、財源が仮に税であるとすると、慰謝料という名目であれば何でもよいのかという話、調整の対象から全部外れるのかというのも、多分、議論の余地は大いにあるだろうという気はするが、そこは一つの整理点なのかなということと、それからもう一つは、求償というのをどう考えるかということも関係するのだと思う。社会保険の場合もいろいろ問題はあるけれども、最終的には加害者が責任を負うんだという立場をとっているので、したがって、給付をすれば、求償権を保険者の方が取得するという構成をとるので、実態がどうかというのはちょっと問題があるが、建前としては、一応、最終的には加害者に全部責任を負わせるという理屈にはなっているということなので、そこのところをどう考えるのかというのがもう一つである。
 それから最後は、参考にはならないかもしれないが、例えば生活保護などの場合も、第三者からもらったお金を、要するに補足性の原理の関係で、所得に算入してしまうか、してしまわないかという問題がやはりあって、そこについても生活保護の方で一定の基準というか、これは算入するけれどもあっちは算入しないという基準があるので、少しは参考になるかもしれない。例えば、生活保護は、やはり非常に運用が厳しいので、基本的には第三者からお金をもらっても、全部所得に入れてしまうという考え方であるけれども、入らないものもあるというので、少し参考になるものもあるかもしれないということである。
(構成員) この問題というのは、結局、給付金の性格の問題があると同時に、財源の問題が絡んでいるのではないかというふうに思われる。
 構成員のおっしゃる方向づけというのは、私は一つの正しい方向づけを持っていると思うけれども、また、それで進めば、非常に改善される部分も確かにある部分があると思う。だけれども、財源の問題が非常に密接に理論的な問題と絡んでいるのではないか。もう少し財源の問題も含めて考えた上でこの問題を考えるのも、一つの方法ではないかという感じがする。
(構成員) もう一回確認だが、損害賠償金との併給調整を、とにかくトータルにやるんだということではないわけで。要するに、基本として、損害賠償の全く外である、幾らもらおうと、幾ら加害者から出ようと、それは関係ないという議論ではないわけで。つまり、結局は加害者からも大して出ない、こっちからも出ないではという場合ということか。
(構成員) おっしゃるとおり、幾らもらおうと併給調整はやめるべきだと言っているわけではない。やはり、おのずから限界というものはあると思うが、そこのところは今の制度よりはもう少し工夫して、実質的に被害者の方々に渡るお金が十分なものになるようにしていただきたいということを、あとは金額が幾らまで上がるかとか財源の問題とか、いろいろあると思うので、その中でまたお考えいただきたいと思うけれども。
(構成員)求償権との関連で、オウム真理教の事件では、国の債権が犯罪被害者の債権に劣後する、後であるというような立法がなされたわけであるが、こういったようなやり方というのも、今の制度設計と関連してまいるわけだけれども、このオウム真理教事件での特別立法の趣旨というのは、犯罪被害者等に対する給付の求償全般について広げるというようなことが可能なのかどうか。
(構成員) どういうふうになるのかというのは、この段階でご説明するのは難しいけれども、いわゆる優先関係をどうするかについては、いろいろな種類の債権があって、現行法で既に順番がついているわけなので、それを一般的に動かすという話になってくると、それ以外の債権の順番をどうするのかというところまで全部考えないと、ごちゃごちゃしてくるという問題があるのかなという感じがしている。今の段階ではその程度であるが、その辺は全体を見て考えるべき問題があるような気がする。
(構成員) 遡及適用は、実際に、現在までに補償を受けられていない方もあるわけだが、今日こうして基本法が成立して、またこの基本計画ができるという、これを実現したのは、今の被害者の方々が一生懸命頑張って、そしてようやく議員さんを動かして実現したということがあるが、その実現した当のご本人たちは、新しい補償制度ができても何も報いられないということになるというのは、どうもこれは、1つは不公平ではないかと。やはり、そういう実際に生活に困っていて、この法律をつくるために頑張られた被害者の方々にも適用がなされるような遡及適用のことを、1つは考えるべきではないかということと、現実に、過去に犯罪に遭って、現在も非常に苦しい生活をしておられる方々が大勢おられるので、その方たちが、過去のケースだからといってそのまま放置されてよいのかという問題もある。
 我々の方としては、先ほどの除斥期間との問題もあるが、一応例えば新しく年金方式の補償というものができれば、そういう将来にわたって年金の支給を遡及適用して、そういう方たちにも将来にわたる支給をしていただくというような方法も考えられるのではないかというような、いろいろ支給の仕方と遡及適用の工夫の仕方によって、ある程度のことができるのではないかというふう思っているわけである。
(構成員) 私から質問であるが、構成員のお出しになったペーパー等を読んだら、これは遡及適用は一般的にもう全部認めて、すべてさかのぼってやるべきだというのではどうもなくて、現在も昔の後遺症がずっと残っていると、そういう方についてだけ特別に特例を認めると、こういうご趣旨なのか、その辺……。
(構成員) 主として、現在生活がもう大変で困っておられる方々をという、そういうことである。何でもかんでも、すべて遡及適用ということではなくて。実際に被害が継続して、苦しい状況にある人たちということである。
(構成員) そうすると、苦しい状況というのをどういうように認定するかということになるのか。それはどのようにお考えか。
(構成員) この一覧表にも、少し片鱗があるけれども、過去の事件で、実際には職を失ってしまって、そして本当にもう年金だけで暮らさなければならないというような方とか、あるいは現在でも精神的な症状に苦しんでおられて仕事が十分にできないという方とか、そういう現実に目に見えるような形で被害が継続しているという方が、わかる方々がおられるわけである。だから、それは一定の要件と資料で認定することができると思うけれども。
(構成員) そのいろいろな資料によってか。
(構成員) はい。現在の生活の就業状態だとか所得状態だとか家族の構成状態とか、そういう資料で、本当に犯罪被害に遭う、遭ってから以降の状態がどういう状態になっているかということを認定することは可能だと思う。
(構成員) まずそれをだれが認定するかという問題と、どの程度になったら遡及適用を除外していくという、その辺の目安というか、何かお考えはあるわけか。
(構成員) それは今のところ、ここからだというような目当て、そういうことを今すぐにこちらの方でも案を持っているわけではないけれども、基本というのは、やはり国民の皆さんに納得していただけるということになれば、やはり現在本当に生活するのにこれはちょっと、やはりもう少し助けなければいけないのではないかという、そういう本当に必要性に迫られている方々ということになるのではないかと思うけれども。
(構成員) 地下鉄サリン事件でも、そういう被害者の方々が多くて、この基本法ができたときに、一般的な法律の判例として遡及されないだろうということは思っていたわけだけれども、議員の先生から「地下鉄サリン事件で今も苦しんでいる方々に、この法律ができたから適用されますよ」というふうに言われたので、すごい、そういう法律なんだというふうに私は解釈した。
 それで、地下鉄サリン事件が起きた当時、犯給法の等級はまだまだ厳しくて、たしか3級だったと思う、その後に4級になって、その後全体で14級まで拡大されたと思うけれども、だから、本当に地下鉄の事件の被害者というのは犯給法も適用されなかったことがあって、被害も現在まで続いているという被害者の方がいらっしゃるので、この遡及適用されると、かなり助かる被害者の方もいるんではないかというふうに思っている。
(構成員) さっきのお話であるけれども、私も給付、支援は手厚くしようという、そういう気持ちで来ているので、決して現在の制度に固執しながらお話ししているわけではなくて、ただどういった制度であれば今おっしゃったように、国民の理解を得ることができるのかという観点から議論をすべきだということで申し上げているので、ぜひ誤解のないようによろしくお願いする。
 今の遡及のお話であるけれども、これも今、座長からお話があったように、どういうものを遡及するのか、どういう考え方でするのかということについては、いろいろなバリエーションがあって、また制度になじむのかどうかということも、またいろいろ議論しなければいけない。だから、どういった問題が現にあるのかということを、むしろ我々が教えていただきたいと思う。
 ただ、法制度一般からの考え方を申し上げると、また堅いと言われるかもしれないけれども、基本的に制度をつくった場合には、制度は施行した後から適用されるというのが原則であって、ただ格段の事情があれば、また対象になる方についてメリットがある、利益になることであれば、遡及することはあり得べしということに理論的にはなっているけれども、ただそのためには、相当程度の必要性とか合理性について説明をしなければいけないということになる。我々は、そのための法律をつくるとか予算をとってくる立場であるので、その辺は十分に説明ができなければいけないというところがあるので、ぜひその点はご理解をいただきたい。
 古くにさかのぼった場合に、どれぐらいさかのぼるのかとか、またさかのぼった場合に、その方々がその被害をきちんと立証できる疎明資料をお持ちなのかどうかという問題もあって、皆さんが、あまねくそういった形でもってできるというのであればできるかもしれないけれども、ただある方は持っていて、ある方は持っていない、ある方は給付を受けられるけれども、ある方は受けられないという形になると、かえって不公平感が出るから、そういった問題をどう解決するのかとかいろいろな難しい問題があるので、我々も一切検討を拒否するわけではないけれども、ぜひ具体的な事例をお話しいただいて、それが本当に制度としてなじむかどうかは、また検討させていただきたいと思っている。
(構成員) 今お話しされたことと、ほぼ同じである。特段つけ加えることはない。
(構成員) こういう方々がおられるという、そういうデータは、きょうに引き続いてまたぜひ示したいと思うが、例えばきょう出した方で、一例を紹介する。
 例えば、一家の支柱が亡くなられた方であるけれども、この方はもう損害賠償をしてもむだだということで損害賠償金も一切いただいていない。生活費はもう、現在預金を取り崩してようやっと生活しているというような方で、現在もずっと被害が続いているという、そういう状況の方である。  また、タクシー強盗でタクシー運転手のご主人を亡くしていて、奥さんもたまたま働いていたけれども、奥さんも鬱状態で働けなくなってしまって、やっと生活していると、そういう方。この方もずっと、現在も続いているような状態である。
 だから、これは一例であるけれども、こういうふうに実際にどういう状態であるかということを示すことは可能だと思う。
(構成員) これは、一つの制度設計ということで考えると、大変難しい問題だと思う。だから、先ほど構成員からも出たけれども、一体どういう場合に遡及を認めるべきなのだということについて、しかもこれは何というか、ただ大変お気の毒であると、だからというわけにもなかなかいかないのではないかと思う。だから、こういう場合はやはり認めた方が合理的であると、何かそういうご説明がつくだろうか。今のお話は、みんなとにかく、もうそういう制度をやめてしまえというようなご発言では全くないと思うが、どういう場合に遡及すべきなのか、それをいわば制度設計の中に取り入れるのが合理的だというような、何か合理的な説明というのはあるだろうか。それがないと制度設計的に大変難しいというか、もうクリアするハードルが幾つもあって、なかなか大変難しいのではないかという印象は持つのであるが、もう一度その辺、何か明確な基準というか、こういうものはやはりというのは何かあるだろうか。それを踏まえて、またもう一度議論してみたいと思うけれども。
(構成員) 私も多分この種の給付を与える、提供するような制度で遡及した例というのはあまり知らない。社会保障関係でも、制度を変えたときに裁定替え、その他で、今給付を受けている人について給付水準を上げるとかということはあったと思うが、過去にさかのぼって遡及をしてというのは、どうもあまりない、ほとんどないのではないかと思う。
 それは一つには、やはり一番大きな財源の問題があって、どこまで膨らむかの見通しがつかないと。もちろん遡及のさせ方にもよるけれども、財源の見通しが立たなくなってしまう。どこかで線引きをするとなれば、それは線引きされた前と後で、やはり不公平の問題が生じるということになると、結局遡及させる、させないと全く同じ話になってしまうということになって、どこで線引きをするかということ自体が、時間で線引きをするのは非常に難しいだろうと。
 それからもう一つは、だれを対象者にするかということだが、まず第一に定義をどうするかというのも非常に難問だと思うし、例えば卑近な例で最近問題になった例では、例えば原爆症なども、どこで線引き、人の範囲をどうするかということをめぐって、やはり大変な争いになるわけで、かなりそこも絞り込みというのは難しいのかなという気がする。
 ただ、全く遡及させなかったかというとそういうわけではなくて、最近一番新しい例では、石綿のやつが若干遡及的なことをやっていて、一つは労災保険関係であるけれども、石綿が原因で中皮腫その他で亡くなった方について、時効で請求権が消滅してしまっている人について、特別な―名前は忘れたけれども一時金で、請求があればお金を出すということをやっている例がある。これは、もともと制度が存在していて、しかしその中皮腫そのものがお医者さんも実はよくわからない、石綿が原因であるということ自体すらわからなくて、労災請求そのものができなかったという、そういうようなケースが非常に多いので、請求権が消滅してしまった人についても、新しい法律で一時金という形でお金を出すということをしているので、皆無ではないものだから、要するにお金のボリュームの問題と、それから範囲の絞り込みの問題と、どういう形でお金を払うかという問題と、その辺がクリアできれば、できないことではないと思うが、構成員がおっしゃるようになかなか難しいだろうなというふうには思う。
(構成員) 今、構成員からあったように、何かそういう石綿のケースのようなというか、これはやはり制度設計の上で特例を認めて、一時金でやらすのかどうかと、そういうふうにした方がいいというような、何かケースというか、具体的な事実は提示していただけるだろうか。
(構成員) 今すぐには出せないけれども、少し検討はしてみる。
(構成員) ぜひそれを見て。何かこういう場合はまさに例外的に、一般的にどんと認めてしまうというのは、それをやると、もう制度がもたないところがあると思うので、それは例外として、何かこういう場合だけは特例を認めるべきだというような、そういう何か説得できる、ただかわいそうとか何とかではなくて、何かこのケースは経済的支援の制度設計上この方がいい、合理的であると、何かそういうのがお示しいただけるとありがたいと思うけれども。
(構成員) 犯給法ができるときも、この議論がどうもあったようです。多くの方々の努力に報いたいという気持ちは当時の立法関係者の間でもあったようであるけれども、それはなされなかったという事情があります。法的に遡及適用を認めるというのは、やはりかなり無理があるというか、非常に混乱を招くというところがかなり危惧されると思う。そういう点では、真正面から制度設計として遡及適用を認めるという方向性は、やはり私は非常に困難を伴うというふうに思う。特に被害の認定とか証拠の散逸とか難しい問題があるように思う。
 そういう意味で、構成員が言われているように、特に構成員がおっしゃるような救済すべき、社会正義に反するような、補償すべきだというふうな事例があれば、それに対して何らかの手だてを特別に考えるという方策でいいのではないか。
(構成員)次に、給付方法ということであるが、ここでは一番最初に出てくるのは、いわゆる年金型の給付についてである。これについては、これまでにもいろいろなご意見が出てきた。この点について、構成員からは年金型という言葉ではなくて、年払い方式の保証金という言葉を使っている。これも年金型ということで理解しているのであるが、この点ずっと意見を出しておられるので、ご発言があればお願いする。
(構成員) 年金というふうな言葉を使うと、それこそ今の公的な年金と混同されてしまうので、それと区別上はっきりわかりやすくするために、そういう言葉、年払い方式の補償金というふうにしたのだけれども。その言葉のとり方はいいとは思うが、年金、一時金にあわせて年金ということをご提案したのは、やはり被害者の方の中で、継続的に将来の生活が非常に不安定であるという、回復ができないという、そういう状態の方がおられて、そういう方の場合に、月々入ってくる生活の補充になるような形でお金が入ってくるということが非常に安心感というか、そういう生活の安定ということができると、そういうことがあるので、労災保険でも一部そういう併給の制度を設けているところもあるわけだから、そういうことも工夫していただきたいということである。
(構成員) 前にも申し上げたことだけれども、繰り返しになる部分もあるので、そこはご容赦いただきたい。
 一つは、生活の安定という点からすると、何となく歴史的には一時金から年金に進んできたと。例えばこれは労災なんかはそうなのであるが、そういうふうに進んできたということは確かで、生活面での安定という点では、そのとおりの部分はあるが、要するにもう一つは額の問題であって、年金形式、年払いで払っていても、結局のところはトータルで幾ら払うのかという話なのである。だから、そこを抜きにしては、なかなか議論ができないだろうと。
 もう一つは、年払いにしろ年金にしろ、有期型にするのか、それともずっと亡くなるまでお払いするのかというのが、もう一つある。つまり、例えば10年間は年金でお支払いしようということと、それから終身お支払いしようというふうに、もう一つ別の切り口というのが実は存在すると。いずれにしろ、それは最終的には額の問題、トータルで幾らかという、その問題になる。
 それから、ただ年金の場合に問題点としては、一つは前にも申し上げたように、財政運営が非常に難しいというのがある。特に終身にすると、高齢化が今少なくとも進んでいるので、年金のボリュームがどれだけ膨らむかということの見通しが非常に立てにくいということがあり、財政運営がなかなか難しいだろうということが言えようかと思う。
 それから、もう一つは、これはさっきあった併給調整をどうするかということと関係するのだが、実は年金なり年払いにすると損害賠償等の併給調整というのが非常に難しくなる。将来の支給分は調整の対象にしないという最高裁判例があるものだから、そことの関係をどうするのかというのが、年払いの場合は出てくる。もちろん、そもそも併給調整をしないんだという前提に立てば話は別であるけれども、併給調整をするんだという前提に立つと、年払いの場合どうするかという問題が出てくるということも問題点としてあるということが言えるかと思いう。
 公的年金の場合は、ご承知のように社会保険で基本的にやっているので、今の世代の人たちからお金をとって、基本的には今の年金受給者の方々にお金を回すというやり方をやっているので、税金でやるというと、ほぼそれに近いやり方をとることになるし、労災保険はちょっと違って、今の事業主から基本的には将来の年金分も含めて全部金をとってしまおうというやり方をしているので、少し公的年金と違うやり方をしていると。ただ、もし新しい制度が税で運用するということになると、多分労災のようなやり方はできないので、公的年金と同じようなやり方になるとすると、その将来の財政運営ということになると、かなり見通しが難しくなるだろうということは、確実に言えるだろうと思う。以上である。
(構成員) 今の発言に関連してお尋ねすると、年金というのもずっと終身という、そういう感じなのか。それともある程度の有期というか。
(構成員) 今、我々が提案していたのは、終身ということである。
(構成員) これは結局また後、法の理念とか、そういう問題にもなってくると思う。例えば経済的支援というのは、犯罪被害者の自立を支援するんだというようなことに、なってくるとすると、ある程度自立をするまでというような形で限られてくると思うけれども、要するにあくまで一度事由が発生した場合に、ずっと一生という……。
(構成員) 言い方が悪かったのだけれども、もちろんそういう自立した以降、年金払うなんということはあり得ないわけで、そういう支給の事由である状態が継続している以上はという意味である。一応、我々が参考としたのはドイツの所得調整の補償があって、通常の公的年金に上乗せして犯罪被害者補償がずっと終身に支給されるような仕組みがあったので、そういうことで必要があれば、必要がある限りにおいてということであるけれども。
(構成員) 私は基本的には、基本計画で理念のところで申し上げたけれども、いわゆる被害回復の権利と被害回復の責務というものを、どういう具体的な形でこの経済的支援であらわしていくかということが大事なことだと思う。そういう意味で、先ほど来お話に出ているけれども、この給付水準、これが一つは理念をどういう形であらわすかという、大きな指標だろうと思う。
 もう一つが、私はこの支払い方というか、年払いか年金かは別にして、どういう形で理念をあらわすのかという、この2点が私は大きなポイントではないかと、私自身は考えていて、そういう意味では水準は置いて、具体的に現にいわゆる国民年金なり、あるいは厚生年金なりで支給されるという、そういう内容もあるわけであるが、そういったことと、それから薬害とか、あるいは公害とか、その他の関連諸制度との均衡というか、こういうこともいわゆる財源のどういうところからお金を拠出されるかということを考えると大事な点であるので、そういう点も考えると、私は生計維持能力というか、生計能力を喪失されているという、そういうケースについては継続的にそれが月払いなのか年払いなのか、どういう形かは別にして、そういう形で給付されていくという道もつくるべきだと。これは、それぞれの被害者の立場というか、状況で一時金を強く希望されるケースもあれば、そういったことを希望されるケースもあるので、私はそういう道も選択できるというか、そういうことを考える新しい仕組みをここで付加するということが基本計画でうたわれたことを具体的に示すことになるのではないかという、そういうように思っていて、その点についてぜひ検討を進めていただきたいと、こう思っている。
(構成員) お聞きしたいのだけれども、年金型の方を認めた場合、一時金というのは非常に低くてもいいということか。一時金は現行どおりで年金型のものをという意味なのかということが第一である。
(構成員) なかなか痛いところで、提案としては、一応非常に、被害の重大な方で、もし損害賠償金として計算した場合には、例えば億単位になるような、そういう方を想定していたけれども、3,000万円の一時金をいただいても、損害賠償から比べると3分の1にも満たないような、そういう感じなので、あと年金を併給していただいても、それであっても損害賠償の全額までには満たないので、できれば一時金は一時金としていただいて、あと別にという、それが我々の提案であるけれども、それは財源との関係とか金額とかあるので、ただ私がいつも財源の問題ということがあって、では年金にした場合に、その年金の対象者として、我々の提案では労災と同じように7級以上というふうにしてあるが、それをもし4級以上とか3級以上とか、いろいろ工夫した場合に、どれぐらいの人数が年間出てくるのだろうかということで、これは自賠責保険の統計を使って、各等級における、もともとその傷害者の中での後遺障害率というものがあって、全体の傷害の中での後遺障害率が自賠責保険だと39%ぐらいである、それで、その中でさらに年金が必要なような、もし7級以上とか6級以上とか、そういうふうにした場合には、そのうちのさらに何%と、こうなってくるものであるから、実際の年間の年金対象家族というのは非常に限られたものになる。
 それで、もし一月10万円ずつを支払った場合、年間120万であるけれども、それでその対象として予想される家族の人数にかけても、そんなに何億円もいくというようなことはならないと。その等級は家族の実情に応じて、もっともっと絞られると思うので、数字的にはただ先ほど構成員がおっしゃったように、だんだんボリュームが膨らんでいくわけで、将来にわたって膨らんでいくので、10年間なら10年間とかというふうにして計算して、大体どれくらいになるかということを計算しておかないと、将来の財源ということがあるので、そこも計算しておかなければいけないとは思う。
(構成員) もう一つの質問が、実は財源の問題だったけれども、何級までにするかということも含めてなのだけれども、実際、現実にそういう犯罪の被害で生活能力を喪失したケース、これについては私は年金型を導入してもいいと考えているけれども、ただそれをどの程度財源に与える影響があるのかとか、あるいはどこまでやるのか、やはりもう少しきめ細かく議論をする必要があるし、その上で判断する必要があるのではないかというふうに考えている。
(構成員) 先ほどの構成員のご発言、大変傾聴すべきご意見だと思うが、生計能力を喪失した場合ということで。これも、犯罪被害によって生計能力を喪失したと。その人にほかの公的年金が支給される限りは、そちらでいくということで。それも何もないという、本当に救いようがないというか、ほかの制度では救いようのないようなものに対して年金型と、こういうことになるというふうに理解してよろしいか。
(構成員) 私が申し上げたのは、基本的には国民年金とか厚生年金で保障されている金額があるわけであるが、それにプラスというか、付加してという意味なのであるけれども。生計能力維持と申し上げたのは、現在の労働、労災の、あるいはその他の補償制度で、身体あるいは精神的にどういった障害が生じた場合にどういう給付となっているけれども、だんだん最近はいろいろな働き方というか、労働の形態がふえてきているので、そういう意味で生計能力というものを失ったという意味で使ったのだけれども。
(構成員) 私も、実は構成員の言い方で、年払い方式の補償金というものを何か考える場合があるのかという気はして、それを今、例えばいいということを頭に描きながらお聞きしたのだが、この生計能力を喪失した場合というのと、生計能力を維持するためというのはえらい違いがあるわけである。だから、その喪失したという場合、どういう場合なのだろうかと。つまり、ほかの公的年金では一切適用がなくて、もう何らかの給付をしないと生計できていかないという、非常にマージナルな場合なのか、あるところを維持していくという付加してやるということになると、話は全然、私のイメージと違ってくるので、その点を少しお伺いしたいのである。
(構成員) そういう意味では、私が考えているのは、労災で言えば3級というか、これは喪失能力100%は3級以上であるから、そのイメージとしてはそういうところである。
(構成員) 今、構成員の方から3級ぐらいで100%の障害と。前にもお話ししたけれども、障害等級でいったら3級まではいかないのかもしれないが、ある方の場合、全身やけどで、皮膚移植をずっと繰り返しておられるような状態で、やっと今生活保護で暮らしているのだが、それももうぎりぎりの生活と。例えば、こういう被害者の会の会合に出てくる場合の旅費ですら、生活保護費の中から少しずつ少しずつ貯めて、3回に1回ぐらいしか出てこれないというような、実際に普通の人が生活する、レクリエーションだとかそういうことも含めた形での生活はできない状態にあるわけである。だから、等級でやるのが一番わかりやすいとは思うが、そういう生活維持能力を失っている方というのを対象にしたらどうかと思うけれども。
(構成員) ちょっと補足というか、言葉足らずだったと思うのだけれども、3級と申し上げたけれども、これは、いわゆる身体なり精神的な被害というか、その度合いによってということであるけれども、それが直ちに生計能力というか、所得を獲得する能力と相関するということではないという意味合いで申し上げたつもりである。
 つまり、過去というか、非常に同じような働き方で同じように国民が生計をしていたという時代は、そういったことでも十分適用可能だったと思うが、現在の働き方というのは非常に多様化していて、身体的な障害があっても十分働き得るというか、生計能力を維持できるという人もあれば、逆にそういった障害の程度からすれば低いけれども、しかし生計というものを喪失してしまうと、100%してしまうというようなケースというか、そういう働き方というか、生計の獲得の仕方ということに私はなってきているという意味合いで、あまり等級で申し上げると少し違うのかなと思って、そういう表現をさせていただいたと。
 だから、今、構成員がおっしゃった、そことも非常に私は関連しているというか、同じような意味合いで申し上げたつもりである。
(構成員) 論点は、もう出尽くしているかと思うので、若干重複になるけれども、一つは考え方の問題で、所得保障という観点に立つのか、それとも立ち直り支援なのかという問題があると思う。これによって終身の給付なのか、また有期の給付なのか、また一時金なのかということとは関連してくるかなという感じもする。
 今の制度の考え方から申し上げると、これは立ち直り支援という形でもってやっているので、この考え方を変えることについて、果たして国民の理解が十分得られるかどうかという問題があろうかというふうに思っている。
 2つ目には、なぜ年金なのかということなのだけれども、先ほど年金の方が安心感があるというお話があったけれども、恐らくそれだけではなくて、やはり給付水準の話にかかわってくるのではないかなと。最終的には、そこにいくのかなというふうな感じがする。だから、その給付水準について、どれほどの国民的理解が得られるかという問題があるのかなというふうに思う。
 それから、所得保障的な観点に立って年金を出すということになると、他の収入との調整が当然図られなければならないということになろうと思う。それから、また生計維持関係にない方については、年金はお支払いはできないという形に当然ならなければならないということだと思っている。
 あと、外国の立法例であるけれども、これからまたご報告もあるかもしれないけれども、一般的には一時金という形が諸外国の立法例であるということで、年金化しているところは極めて立法例としては少ない。なおかつ日本では自賠責も一時金であるという問題があるというふうに思う。
 あと、加えて役人的なことを申し上げると、年金化をすると相当な事務量が出てきて、恐らく数十名程度の増員をいただかなければ、処理ができないということになろうかと思って、そういうことが今の公務員削減のご時世の中で、果たして十分な理解が得られるかどうかという問題も、ぜひあわせてお考えいただきたいと思う。
(構成員) 特に申し上げることは、さまざまな論点、皆さん方のご意見が出ているのでないが、一つだけ再度、強調して申し上げたいことは、やはりこういう年金制度になると、安定的な財源の確保、これが本当に大事だということだと思っている。
(構成員) 1点だけだが、先ほどの構成員のお話を伺っていて思ったのだが、そして構成員がおっしゃったり、それから構成員がおっしゃったことと関係するが、やはり被害者の方にできるだけ、やはり立ち直って社会の構成員として活動していただくという方向で考えたときに、年金という形態が適切なのかどうか。特に、その終身というのが適切かどうかというのは、検討の余地はかなりあるだろうという気がする。
 お話を伺っていたときに一つ思ったのは、なぜそういうことを言うかというと、やや所得保障の問題と、それからどうやってその後、生活を建て直していくかという、そのサポートの問題とが少し混合されているかなという気がするものだから、サポートの問題として考えていって、どこまでできるかということと、それから年金ということの必要性ということとがどこまであるのかということとの関係を、少し整理していただく必要があるかなというように思った。
 直感的には、公的年金が出ないケースというのは確かにあるので、その部分をどうするかという問題はあるようには思うが、いずれにしても最終的には年金にするか一時金にするかというのは、さっきも申し上げたように、要は保障水準の問題である。給付水準の問題で、とどのつまりはそこをどうするかというお話かなというふうには思う。以上である。
(構成員) 先ほどから幾つか出ているように、一時金というか多額な場合に、また年金ということがあり得るのかという問題もあるし、それから財源という問題もあると。それから、もっと大事なことは、どうも理論的な根拠というのか、そこにそれを合理化するだけの根拠が本当にあるのかどうかということは、もう少し検証する必要があるのではないかという気がする。
(構成員) 仮納付に関してであるけれども、以前、警察庁の構成員から問題意識を持って検討していきたい旨のご発言があった。また、親族間の犯罪等の不支給については、本年4月に制度が改められたと、改正がなされたということであるので、しばらくの間、推移を見守りたいというふうなご意見というか、ご発言があったけれども、それでよろしいか。
(構成員) これは、事件直後に、即座にある程度のお金を支給していただきたいという要求は非常に強い。しかし認定するまでの間に時間がかかるわけである、対象となるかどうかということで。今、重傷病の支給は、一応健康保険の自己負担分の支給ということになっていて、休業補償とかそういうことについては一切制度がないわけである。
 それで、どういうふうに、要するにもし休業補償とかある程度その他の費用、当座の資金というものをどういうふうに支給するかということを考えた場合に、国家的な補償制度の中で仮給付制度という形にすると、どうしても一定の期間、認定期間というものも外すわけにはいかないわけである。そこで、もう少し緊急に支給できる方策として、例えば地方自治体での条例を設けていただいて、条例からの給付でしのいでいただくとか、あるいは別の形でのドイツの「白い環」のように、被害者支援団体の方でもっとラフに、もう被害が起きたらすぐに給付していただくような制度を設けるか、そういういろいろな工夫の仕方はあると思うが、いずれにしても、とにかく事件直後に当座必要な資金をどうやって給付するかというか、そのことについて考えていただきたいのだけれども。
(構成員) 私も構成員と全く同意見で、やはりかなり今の犯給法、給付されるまでにどうしても時間がかかると、これはある程度しようがないと思う。幾ら事務の効率化を図っても、きちっと認定をして申請するという意味では期間がかかるし、仮に犯給法での仮給付制度を充実するにしても時間はかかると思うけれども、しかし現実にはもう被害を受けたその日から、いろいろな出費がかさんできてお金が必要になるが、例えば自賠責などでは、かなり迅速に一時金というのは支払われていて、後で相殺はされるわけであるけれども、少なくともそれに少しでも近づくような形で、非常にフットワークのいい仮払いができればいいと思う。それを今の犯給法の枠内でやることは、なかなか難しいだろうし、そこで構成員が言われたように、自治体で給付するという方法もあると思うが、ただそれについても、各自治体ごとにやはりそれはまた財源の問題があって、できる自治体もあればできない自治体もあるということが出てくるんではないかというふうに考えている。
 そこで、一番最初のときに少し申し上げたような、何か基金制度のようなものを利用して、そちらの方の基金から、これはかなり簡便な審査でとりあえずは支給をして、それに対して、基金に対して後で犯給法の方できちんと認定された後にそれを補てんするといったような、2段構えのような形を導入するのはどうかなというふうに、それはご検討いただければと思うのだけれども。
(構成員) 今お話があったように、犯給法の仮給付については、より迅速にしなければいけないという気持ちは持っていて、例えば今、公安委員会が裁定しているものを都道府県警察本部長の専決にするとか、それからまた、一体、今迅速にできない理由は何かということを都道府県警察の担当者といろいろ協議をしながら、その隘路は何かということも今研究をしているので、何とかより早目に出したいと思っている。ただ、ご指摘のように帰責事由の判断とか併給調整の問題とかあるので、そんなに急に、もう犯罪被害発生後、直ちにお支払いするというわけには、なかなかこれはいかないだろうと。やはり一定の期間はどうしても必要だというふうに思う。
 そういった意味で、今もお話に出たけれども、例えば民間の支援団体から何らかの支援とか貸し付けをするとか、また基金を活用するとかというふうな方法をおとりいただくことができないか、また条例では特定の市区町村では、そういった見舞金を支払う条例もあるけれども、ただこれは、全国で成立していないので、基金的な、また民間の支援団体の支援という形でもって、うまくやっていく方法はないのかなというふうなことを考えている。
(構成員) 経済的支援の対象についてであるが、対象となる犯罪被害者の範囲に関してということにかかわるわけであるけれども、対象範囲については、もう既に幾つかの論点というか重要な論点が残っていて、海外で被害に遭った日本人への適用という問題、それから日本で被害に遭った、日本に住所を有しない外国人への適用という問題、それから、これも古典的な問題かもわからないが、過失犯の被害者への適用、それから財産的被害者への適用といった論点があるかと思う。
(構成員) 海外で被害に遭った方というのは結構あるわけである。だから、それは日本人で海外で事故、事件に遭われた方は、ぜひ対象にしていただきたいと思うけれども。
(構成員) もう説明するまでもなく、そのとおりであるけれども。
(構成員) 私は、論点整理のところで、文章で出させていただいているけれども、その犯罪被害者の給付金の当初スタートの見舞金というか、という性格という視点から考えたら、基本的に被害が海外であろうと国内であろうと、その気の毒さというか、それは変わらない。あるいは場合によっては、海外の方がより気の毒さを増すのではないかということと、それと当然、海外から日本へ帰ってきての補償ということになるわけであるけれども、そこで当然同じように、国内の被害者と同じように生活をするわけであるから、そこで区別をしていくという、その理由というのはないのではないかということと、さらに論点整理の方に欧米の各国の調査結果を考えると、少なくともこのテロに関しては、各国ともそういう海外でも適用するということになっているかと思う。そういう意味で、そういった点も重視して考えるべきだというように思う。
(構成員) 海外の渡航中の被害を対象にするかについて、少し私も整理されていない部分があって、構成員、構成員にお伺いしたいのだが、今民間で海外に行く場合、保険制度がいろいろ整っている。例えば企業職員が行く場合は、当然企業からも労災が適用になるし、それから留学生とか労災適用がないような単身赴任者でも、かなりいろいろな民間での保険制度があるし、それから旅行の場合にも旅行者保険というものがあって、掛け金を出すと、かなり手厚いいろいろなサービスが受けられるということがあるけれども、こういう自分である程度コストをかけて補償制度を受けている人との兼ね合いで、かなり多くの方が実際は保険にかかって海外に渡航されていると思うが、そこの兼ね合いをどうするのかということと、それといわゆる確かに気の毒な例もあるし、しかしかなりアドベンチャー志向で海外に行かれて被害を受けた方、例えばそれこそイラクに行かれた、あるいはペルーに行かれたということで、大変な被害を受けたという場合に、そういう線引きをどうするのかということなのであるけれども、その点について少しお伺いしたいのだけれども。
(構成員) 今のご質問、最も私もその点については十分承知しているけれども、したがって多くの海外に行かれる方々は、保険を自分なりに掛けていかれるわけであるけれども、必ずしもそれですべて救済されるというか、ということはないわけであるので、そういうような視点から、対象とすべきではないかと。当然、現行の運用からすれば、損害賠償等そういった補償と相殺されるというか、そういう形になっているわけだが、それを前提にして考えても、そういったことは必要ではないかというのが、私の考えである。
(構成員) 私は、実際にそういう被害に遭っていないからわからないけれども、ただそういう人から聞いた話では、例えば何回も事件現場に行ったりとか、裁判が始まれば通訳も必要になったりして、そういう経費なんかもかなり、その後、後でかかってきて大変だということは伺っている。
(構成員) 一応私の提案では、日本国民であれば渡航中、旅行中の人であろうと海外赴任中の人であろうと、区別なく国内にいるのと同じように補償適用したらどうだろうかというのが提案である。国内におっても生命保険を掛けたり、いろいろ保険を掛けている方もいるわけで、後は先ほどの併給調整ではないけれども、どういうものを調整するかという問題だと思うが。
 現実に、大学生の息子さんが、インドで渡航中に強盗殺人に遭ったという方のご相談も受けたけれども、インドの補償制度について研究者の先生にいろいろアドバイスをいただいたけれども、全然補償は完全でないというような状態。やはり、そういう方についても同様に補償対象にすべきではないかなと思うけれども。
(構成員) 今の方とてもいい例だと思う。その方は旅行保険に入っておられたか。
(構成員) そこの保険のことまではまだ聞いていなかったのでわからないが、大学生なので、一般的によく航空機に乗るような場合に、旅行者で掛ける保険があって、その程度ではないかと思うけれども。
(構成員) まず海外で身体的被害を受けた日本国民ということで、これは一体どこまで対象とするかというのが実はかなり大問題のような気がする。というのは、国際化が進んで日本国籍を持っている人は世界中にあちこちいて、単に旅行者で行っているだけではなくて、企業で派遣されている人もいれば自営活動をする、さまざまな活動をするために海外に行っている人もいるということになって、まず第一に区分け、その仕切りをどうするかということと、それからもう一つは海外で身体被害を受けたときに、そういう人たちが日本に戻ってくるとは限らないので、そのまま外国に居続けるというケースについてまで補償の対象にするのかという問題ももう一つ。要するに国外支給するのかというのがもう一つの問題がある。これは、日本で犯罪被害に遭って、その後外国に行ってしまうという例も同じ問題、国家主権の問題で出るけれども、それをどうするのかというのがもう一つの問題。それから、犯罪被害給付制度というのが一応、日本の公的な制度なので外国にまで調査権が及ばないので、そこをどうするのかというものがさらにあり、それからもう一つはさっき上げられた、インドの例は向こうのインド側に対応する制度がないけれども、ドイツとかフランスとかどうなっているかわからないが、相手国に対応する制度があったときどうするのか、その問題も実はあると。
 いずれにしても、ちょっとどういう人を実際に想定して、どういう区切りにしてというようなことをもう少し突き詰めないと、ちょっと議論のまとめようがないのではないかという気がする。
 それからもう一つの外国人のケースであるが、これは例えば住所がなくてもというような例は、原爆については不法滞在の外国人でも補償の対象にしているという例はあるけれども、しかし他方で裁判で問題になったように、その人が国外に帰ってしまったときにどうするかという、もう一つ別の話があって、これもまた、どういう人を想定するのかということを、もう少し検討しないと、突き詰めておかないと、ちょっと結論がなかなか出ないかなという気がする。
(構成員) 交通事故の場合、過失でも交通事故の場合は自賠責保険、場合によっては任意保険があるが、そのほかの過失のケース、よく言われるのは、結構お年寄りの方が自転車で重症事故を負う場合が結構ある。そういうようなケースで、ほとんど加害者の方からも十分な補償も得られないというような、そういうようなケースもあって、過失の場合であっても補償の対象とすべき場合があるのではないかということであるが。
(構成員) 私は実は、故意犯と過失犯とをなぜ区別しているのか理由づけというのがもう一つわからないところがある。むしろ被害の実態は同じなのですが、いわゆる方策をとるという点では同じでいいという考え方。だから、実際的な難しさから、現状のままになっていると考える。
(構成員) これは私の方の案では、現在例の振り込み詐欺、暴力金融のああいう被害者については加害者側の資金を没収して、それを被害者に分配するという、そういうあれは組織犯罪対策法の中での検討であるか、そういう法的な工夫が現在一部では行われているが、そういう没収したお金を資金とするなり、あるいはその他の刑事手続の中で加害者側から得られるものを資金としながら、それにプラスアルファか何かするような形で、何とかそういう財産的な被害の方でも分配できないかということを現在検討しておられるということもお聞きしたので、これは金融庁の方が一番よくわかると思うけれども。
 それで、そういったものを完全に別立てで、人身被害の問題とは別立てのものとしていくのか、それとも全体の犯罪被害者補償の中での一部分というような形で、制度的に別の形での給付にしていくのかとか、つくり方はいろいろあると思うが、対象には一応検討すべきではないかなと思うが。
(構成員) 対象犯罪の関係で、今、没収・追徴の話も出たので若干お話しする。一つは過失犯の話が出たが、もちろん政策判断の問題ではあろうかと思うけれども、過失犯を対象にした場合、非常に認定が難しくなる、難しい事案がかなりあるだろうなというふうに思う。もちろん明らかな過失というのはあるわけだが、刑事裁判でも過失犯の立証というのは非常に難しいし、認定というのも非常に難しい場合がある。もっと極端なことを言うと、一見自然災害のように見えても、それが人災ではないかという議論はあるわけだし、製造物による事故であるとか、医療過誤も含めて、いろいろな類型があって、ひとくちに過失犯といっても難しい問題があるのではないというのが一つである。
 それから、財産犯についてであるが、ご指摘のあった没収・追徴を利用して、被害の回復を図ることについては、さきの通常国会で法律が成立したので、その範囲での救済が今後実施されていくということになる。ただ、そのときの国会審議で問題として言われたのは、この制度は、刑事事件として立件されて有罪の認定がされて、かつ没収・追徴がされるという場合に救済がされるというものであるけれども、それ以外の場合、財産犯であっても刑事事件として立件されない場合であるとか、あるいは犯人に財産が残っていなくて没収・追徴がされないというような場合であるとか、そういう場合の救済は別途考える必要があるのではないかという議論があった。ただ生命身体犯と財産犯を比べてみると、やはりそこに被害の質が違うということは考えられるので、そこをどう考えるかということかなというふうに思う。
(構成員) ほかの類型というか国外での犯罪被害者はどうか。
(構成員) 国外の犯罪について取り組むことについて、先ほどいろいろな問題点がご指摘されて、そのとおりだろうと思うが、先ほども少し出ていたが、恐らくこれを認定する手続については、かなり難しい問題があるだろうと思う。国内であれば、いろいろな調査権限を使って、認定機関が調査を行うということができることが、他国において資料なり何なりを集めるというのは、直接にはできないわけで、そうすると外国にお願いをするということがあり得るが、そういう仕組みをどうするのかという、そんな話になっていくのかなと思う。その辺の認定手続の問題は、恐らく実際に運営する側からすると問題が生じるような気がする。
(構成員) 国外で被害を受けた邦人については、今も構成員からお話があったけれども、論点は出尽くしているかなと思うけれども、我々としてやはり一番問題なのは、今お話があったけれども、犯罪であるかどうかの認定とか、それから被害がどれぐらいあったのかどうか、帰責事由の認定とか、今これは捜査でもってやっているけれども、これの認定が極めて難しい。この認定が非常にアバウトであると、ラフであるとすると、制度の乱用がなされる可能性があるということで、実務的には非常に難しい問題があるというふうに我々は思っている。
 これは申すまでもないけれども、今の制度の考え方を申し上げると、今は我が国における連帯共助の精神に基づく支援という形になっているので、国外に出られた方は含まれていない。その危険負担はその方自身が負ってくださいという一応の整理だと思うけれども、もしこれを取り入れるとすれば、制度の考え方は変わらざるをえないというふうに思う。
 それから、国内にいる定住外国人以外の外国人であるけれども、これも今申し上げた考え方からして含まれていないわけであるけれども、これは一種の相互主義の問題もあろうかと思うので、日本だけがやるというわけには、なかなかいかないのかなというふうに思っている。あと不法残留者をどうするのかとか、いろいろな問題が残っている。
 過失犯の話は、これも今、構成員からお話があったように、過失犯はすそ野のひろがりがものすごくあるわけで、これを突き詰めていくと、過失のない事案とか自然災害とかとかかわりを持ってくるわけなので、ではどこで一体切るのかという問題があろうかと思う。今の整理としては、一応故意犯で切っているわけだけれども、これをそこまで広げていくことについて国民の合意があるのかどうか、財源の問題とか、いろいろな問題があるかと思うし、過失犯というのは、結構、責任保険制度に乗りやすい部分があるから、今救済されていない部分がもしあるとすれば、何らかのそちらの方で手当ができないのかということも、あわせて検討すべきなのではないのかなというふうには思っている。
 それから、あとは財産犯であるけれども、これははっきり申し上げて、財源的にものすごく膨大なものが必要になるわけで、ここまで広げることは極めて実際上、難しいのかなと思う。やはり財産犯と身体犯を比べてみると、精神的な面で被害の程度が全く違うわけで、やはり財産犯のすそ野を広げていって救済するということについては、なかなか国民的な合意を得ることは難しいのかなというふうに思う。またどうせ国が救済してくれるからいいやという簡単な気持ちで、例えば詐欺に遭ってしまうとかいうようなこともないわけではないので、そういうふうに防犯意識が薄まってくる可能性もあるから、そこまで広げることは難しいのかなというふうに思っている。
(構成員) 確かに財産犯についてはおっしゃるとおりだと思うが、だから一律にというわけにはいかないとは思うが、現在金融庁の方で検討している方式があれば、ご紹介いただきたいと思う。
(構成員) 財産犯の被害回復はもちろん重要だと思っているが、犯給法の対象に財産犯を取り扱うかどうかというのは、先ほど来議論が出ている財源等の問題もあるので、こういう場でご議論いただければと思っている。
 そのほか財産犯の被害回復については、先ほど構成員からもあったように、さきの通常国会で組織犯罪処罰法等の改正があって、その中で一定の前進を得ている。改正法の運用状況等を見ながら、それ以外にまだ行政に何かできることがあるのかということについて、諸外国の例等も踏まえながら、今後検討していきたいと考えている。
(構成員) アメリカでのそういう犯罪、加害者側から何らかの形で取り上げたお金というか、アメリカでの制度について検討していることはないのか。
(構成員) 海外の事例については、現在調査をやっているところなので、現時点で、申し上げられることはない。
(構成員) 国外にいる日本人についてであるが、これは先ほどもお話があったように、労災保険制度においては、海外派遣の特別加入制度ということで手続をしていただければ対象になるということである。
 それからまた、医療保険制度については、公的医療保険の被保険者であれば、保険者の判断によって、療養費を支給できる場合があると、保険者の判断だということである。
 それから、我が国日本にいる外国人であるが、これは社会保障、福祉制度の適用上、定住されている方や、あるいは実質的に雇用関係にある方について、それぞれの保険制度ないし福祉制度で基本的に一定の要件がある場合であるが、対象になっていると、こういうことである。
(構成員) カウンセリングのところで少し質問しそびれたことがあって、一つだけ短時間で。
 国交省の自賠責の担当の方が来られているのでお聞きしたいのだが、自賠責では必要かつ相当な範囲であれば治療費全額補償というふうに言われているけれども、受診でのカウンセリングについても、その考え方で支給されている実例があるというように認識しているが、その範囲でよろしいかどうかの確認であるけれども。
(国土交通省) 自賠責保険の方では、医師が妥当かつ適正と認めた場合においては、そのカウンセリングについても支払っているというふうに聞いている。
(構成員) 保険外の自由診療についても、支払っているということか。
(国土交通省) はい。
(構成員) その点だけ確認させていただいた。

以上



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