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犯罪被害者等施策
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経済的支援に関する検討会(第13回)議事要旨


(開催要領)

日時:平成19年3月19日(月)15:00~17:45
場所:合同庁舎4号館共用第4特別会議室
出席者:
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
岩村 正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
佐々木 知子帝京大学教授、弁護士
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫元オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
巽 高英警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理出席振角 秀行金融庁総務企画局参事官
中野 雅之厚生労働省政策評価審議官
安井 正也経済産業省商務情報政策局消費経済政策課長
説明者芦塚 増美日本弁護士連合会犯罪被害者支援委員会事務局次長
井上 宏法務省大臣官房司法法制部司法法制課長

(議事次第)

1.開会

2.第16回検討会の日程調整

3.経済的支援制度のあるべき姿についての検討(8)

4.その他

5.閉会


(配布資料)

資料1 論点対応叩き台資料  [PDF形式:26KB]
資料2 警察庁資料  [PDF形式:11KB]
資料3 厚生労働省資料  [PDF形式:96KB]
資料4 外務省資料  [PDF形式:16KB]
資料5 支援のための連携に関する検討会における検討状況  [PDF形式:21KB]
資料6 併せて検討する事項関連資料

6-1 警察庁資料  [PDF形式:13KB]

6-2 法務省資料  [PDF形式:24KB]

6-3 厚生労働省資料  [PDF形式:11KB]

6-4 日本弁護士連合会資料

    (1)  [PDF形式:34KB]

    (2-1)  [PDF形式:231KB]

    (2-2)  [PDF形式:204KB]

    (3)  [PDF形式:197KB]

    (4)  [PDF形式:158KB]

    (5)  [PDF形式:32KB]


(議事内容)

○経済的支援制度のあるべき姿の検討について
 概略以下のとおり議論が行われた。
(事務局) 資料1は毎回出しているたたき台である。
 資料2は、前回の検討会で構成員から質問があった犯罪被害者等給付金の年齢別、男女別の支給実績に関する警察庁の資料である。
 それから、資料3は厚生労働省関係の資料で、これも前回の検討会でご質問があった第三者行為による傷病の医療費の自己負担分の扱いに関する資料及び基本計画の進捗状況等に関する資料である。それから、海外で邦人が犯罪等による被害に遭った場合の支援状況についても厚生労働省から資料が出ているので、後ほどご説明をお願いしたい。
 資料4は外務省の資料である。海外で邦人が犯罪等による被害に遭った場合の支援状況等に関する資料である。これについて若干説明をすると、お金を出すというのは余りないが、外務省として海外において被害に遭った方について以下のような支援を行っているということである。
 まず1つ目は、被害者ご本人に対する支援で、家族への通報、被害の届出、弁護士や通訳のリストの提供、あるいは医療サービスが必要な場合の入院等に関する支援、あるいはパスポート盗難等の場合の渡航書の発給、それから、滞在費とか食費が不足する場合には短期貸付金の貸付が可能であるということである。
 それから、2つ目に、被害者本人ではなくてご家族に対する支援ということで、ご家族からの伝言や連絡の取り次ぎ、あるいはお金が必要な場合には送金の助言、さらに緊急に現地に行かねばならないというときに旅券の緊急発給等について支援を行う。それから、当然現地に到着されたご家族に対して支援を行っているということである。
 それから、亡くなった場合に検死や身元確認に関してのご家族との取次支援、それから死亡証明書の取得にかかる助言・支援、火葬や葬儀あるいは日本への搬送にかかる助言や支援を行っているということである。また、危険な地域に赴かないように危険情報あるいは犯罪についての傾向、対策について情報提供を行い、ホームページ等で「領事のできること」ということでわかりやすく案内をしているということである。
 以上が資料4の簡単なご説明である。ご参考にしていただければと思う。
 それから、資料5は先月開催された支援のための連携に関する検討会第8回で配布された事務局資料のうち本検討会と関係のあるアドバイザー制度に関連する提言部分の抜粋である。内容についてはアドバイザーの議論のときに簡単にご紹介をしたい。
 それから、資料6は、併せて検討する事項ということで、警察、法務、厚労、日弁連からの資料があるので、併せて検討する事項の検討の際にそれぞれご説明をいただければと考えている。
 以上である。
(構成員) それでは、資料3について、構成員からご説明をいただきたいと思う。
(構成員) それでは、資料3をご説明申し上げる。
 前回、当方における犯罪被害者等基本計画の進捗状況について2点お尋ねがあったので、まず1枚目に記している。
 まず、医療保険利用の利便性確保については昨年7月に開催された会議において犯罪被害者の方が医療機関の窓口において保険診療の実施を拒まれる事例があった場合には、本省へ報告するとともに、当該医療機関に対して適切な指導を行うように指示をした。
 それから、その下の長期療養を必要とする方のための施策の検討及び実施に関しては昨年の6月に法改正がなされ、長期療養を必要とする患者の方々が必要な医療サービスを受けられるようにするために急性期から回復期を経て自宅に戻るまで一貫した治療方針のもとに切れ目のない医療を受けられるということで、各都道府県における医療計画を19年度に見直すことにしている。具体的にはその医療計画において各医療機関のそれぞれの適切な役割分担、それからその医療機関ごとの連携体制、これらを都道府県ごとの医療計画で具体的に位置づけ、住民の方々にその医療機関の役割や連携状況を明示するわけである。
 それと同時に、それぞれの医療機関で例えば治療を受ける際にはまず急性期から回復期を経て自宅に戻るまでの治療計画を地域連携のクリティカルパスとしてつくってもらい、これによって関係医療機関、それから患者の方々が情報を共有することにより、切れ目のない医療を的確に受けられるようにするという方向で取り組んでいる。
 このほか当方においてはただちに取り組む事項、例えば児童虐待に対する夜間休日の対応などに取り組んでいるわけであるが、前回質問が出たのが1年以内に実施する項目であったので、ただいまご説明申し上げた2項目以外の1年以内の状況は参考までに記している。
 詳細な説明は省くが、後ほどの議論にもかかわることであるので簡単に申し上げると、被害直後、それから中期的な居住場所の確保ということで児童相談所や婦人相談所の一時保護の現状について調査を実施し、その調査結果に基づき婦人相談所において、調査結果から、自立に向けて就職あるいはアパート等を借りる際に保証人がなくて困ることがあるということが浮き上がってきたので、身元保証人確保対策事業ということを19年度予算に盛り込んで対応しているというところである。
 それから、外国で犯罪被害に遭った場合の対応であるが、まず仕事中や通勤中に災害に遭った場合、原則的には労災保険は、本来国内にある事業所に適用され、海外の事業所で就労する方は対象にならないが、海外派遣者の特別加入制度という制度が設けられている。
 その理由は、通常海外研修の場合は、その当該赴任先の国の災害補償制度が適用されるというのが原則になるわけであるが、ただその適用範囲あるいは給付内容が十分でないということもあってこのような特別加入制度が設けられているわけである。
 それで、手続としては、まずこの労災保険の適用になるためには派遣元の事業主から特別加入の申請書を出していただき、まず特別加入ということで入っていただく。それから、実際に仕事中あるいは通勤中に被災した場合、給付の申請は派遣元の事業主を通じて提出していただく。その際には派遣先の事業主の証明書や新聞記事あるいは在外公館の証明書等を添付していただいて申請していただくということである。
 それから、給付内容は基本的に国内と同様であるが、給付の算定に関しては国内においての療養等を受けた場合の算定基準に基づいて行う。周知の方法はパンフレットその他を労働基準監督署等において配布すること等において対応している。
 それから、海外出張の場合は国内の事業所に所属して、その国内の事業所から指揮命令を受けて仕事をするということであるので、特別の手続をすることなくその者が現在所属している国内の事業所の労災保険により給付を受けることができるということである。
 続いて、健康保険、国民健康保険の海外療養費制度であるが、これは海外に一時的に出張、旅行している場合に治療等を受けた場合である。まず手続であるが、帰国した後ご本人等が保険者の窓口に申請していただくということである。
 それから、給付内容は、海外において支払った医療費について自己負担分3割を控除したものを支給するということである。その給付の算定に際しては国内において同様の場合に療養等を受けた場合の算定基準によって計算されるということである。
 周知方法は適宜ホームページ、パンフレットの配布等によって行っている。
 続いて、第三者行為の場合の自己負担分の取扱いについてである。ここの内容に入る前に、前回構成員からこの第三者行為届をする際に加害者の協力が必要かというお尋ねがあった。それで、確認したところ、第三者行為届の中に第三者、すなわち加害者の住所、氏名等を書く欄がある。ただ、これがわからない場合、そのまま不明で出していただければ構わない。またわかったところで知らせていただければという取扱いをしているので、必ずしも加害者の協力がないと出せないというものではないということである。
 それで、第三者行為による傷病の届出をするしないにかかわらず、こういう被保険者が医療機関で診療を受けた場合には自己負担分は払っていただくという制度である。それで、被害者が第三者行為による被害の届出を提出した場合に、保険者はその傷病に対して行った給付の範囲において加害者に対する損害賠償請求権を代位取得するということである。
 それから、資料6との関連でまた出てくるかと思うが、求償の現状、問題点等をあわせてご説明申し上げる。統計的にデータとしてわかるのは労災の状況があるが、率直に言って求償には苦労しているというのが実情である。ただ、労災の場合はその第三者行為の大部分が交通事故、自動車事故であるので、状況を申し上げると、当該年度の債権立てをしたもの、すなわち前年度からの繰越等を含めて約4割の求償は確保できているという実態がある。ただ、交通事故以外についてはなかなか求償はうまくいっていないというのが現状である。
 我々としてはこういう債権管理等についてマニュアルをつくって対応するとともに、あと必要な場合には弁護士に依頼すること等によって債権確保に努めているというのが現状である。
(構成員)  ただいまのご説明に関してご質問等あればお願いする。
(構成員) 今、第三者行為の届出についてご説明いただいたが、実はつい最近起きた傷害事件で今現在第三者行為の届出をしているケースがある。その書類の中に加害者本人の署名、捺印と、それから加害者の連帯保証人の署名、捺印をいただく誓約書というものを国民健康保険を管掌している市長宛てに出す文書がある。それは加害者側に判を押してもらわないといけない。そのケースの場合には、恐ろしいので加害者に被害者の住所を教えたくないというので、今おっしゃった加害者の住所、氏名を書く文書でも被害者側の署名、捺印のものについては被害者側で作成できるのでいいが、加害者側で作成する文書についてはどうしても加害者と会わないとならない。たまたま私選弁護士がついているのでいいが、もし私選弁護士がつかない被害者の方の場合はできないことになってしまう。
 だから、何かうまい方法を考えていただかないとそういう届出ができなくなってしまうのではないかと思う。
(構成員) 構成員、いかがであるか。
(構成員) 今お話があったことは我々としても個別の保険者ごとにそれぞれ運営しているので、運営の詳細は全国的に把握しきれていない部分があるので、もしおっしゃったような状況にあるとすればそれは困難を来す局面だと思うので、どういう解決策があるか我々としてもよく検討してみたいと思う。
(構成員) 構成員、同じようなことはほかでもあることなのか、それとも今の例だけなのか。
(構成員) それは地方自治体に提出する文書なのでわからない。その病院の場合は非常に全国的にも名の通った大きな病院であるが、その第三者行為の届出用紙がない。それで、その事件の場合は交通事故の場合の用紙を使ってくださいという実情である。
(構成員) 構成員、一度よくそのケースを調べていただいて、その上で対応ということでよろしいか。ほかによろしいか。
 それでは、前回の検討会に続き、資料1に沿って検討を進める。資料1であるが、経済的支援制度の管理・運営はどのように行うべきかという項目の検討に入る。そのうちの(1)は経済的支援に関するアドバイザー制度についてである。
 経済的支援に関してアドバイスを行う制度が必要ではないのかという項目に関してはここで示してありますように、被害者等のための経済的支援の内容及び被害者等が受けることのできる他の社会保障制度による各種給付の内容などについて、被害者等の相談にのり、必要な教示を行うことのできるアドバイザー制度を設けることを、他の検討会と歩調を合わせて検討するということで、このたたき台作成の段階では整理している。
 その後、支援のための連携に関する検討会においていろいろ検討がなされているようである。まず事務局から先ほどご説明のあったとおり、この検討会についての資料があるので、そのご説明をまずお願いしたい。
(事務局) それでは、資料5をお開きいただきたい。連携に関する検討会の2月の第8回会合において、各連携のネットワークをどうつくるかということを議論をして、その上で民間団体で支援を行うものの育成あるいはカリキュラムの内容等々に加え、コーディネーターの育成についてはどうかということで議論し、事務局の提言案を示している。
 まず、カリキュラム・モデル案の作成の後半の部分であるが、内閣府において有識者や各省庁の協力を得て支援に携わる者に求められる研修カリキュラムのモデル案をつくるということで、ここに支援者のレベルを初級、中級、上級、コーディネーターと設定している。アドボケーターあるいはこの検討会ではアドバイザーと呼んでいるが、そういった知識、能力、経験にすぐれた人、上級のそのまた上といったレベルで考えている。コーディネーターも含めてレベル別にカリキュラムのモデル案をつくろうというふうに提言をしている。
 それから、実際に研修を行うカリキュラムを作成したりあるいはそういった資格の認定等をどこがやるのがいいのかということで、この支援のための連携に関する検討会では現在被害者支援ネットワークが早期援助団体あるいは早期援助団体を目指す団体によって構成される我が国唯一のネットワークであることから、このネットワークに対して加盟の団体が統一的に用いることができるようなカリキュラムをつくって研修を実施して、それから認定の証明をしてはいかがかということで提言をしている。
 2の研修費用の補助などの財政的援助についてはもう1つの検討会である民間団体に対する援助に関する検討会の検討結果に基づいた施策を実施していくということで、これは今検討中である。研修費用については、現在も一部警察の方から助成がなされていて、これの拡充あるいはそのほかにどういった具体的な研修費用の補助手段があるかということについては、まだ具体的な提言は出ていない。
 それから、4のコーディネーター等の育成というところである。被害者のニーズが多種多様な分野に及んでいて、刑事もあり民事もあり社会保障制度もあるし医療やカウンセリングや福祉など大変広範な分野に及んでいて、そういうときに相談にのったり情報提供したり、あるいは適切な機関、団体へ橋渡しをする、当然この給付金の支給等についても、あるいは先ほどから出ている病院の問題にしても適切なアドバイスのできるそういったコーディネーター、アドバイザー的な役割が大変重要であるということをまず指摘をしている。
 しかしながら、今申し上げたように、経験に基づいたある程度の実践を経ないとなかなかそういうコーディネーターというのは簡単にはできないのではないか、時間を要するのではないか。先ほど申し上げたように、研修の中で、仮称であるが、初級、中級、上級、その上にそういうコーディネーターの研修というものをきちんとやって、まず育成を図っていく。そして、コーディネーターについても認定制度を実施してコーディネーターとしての能力を身につけることができるようにしていけばどうかということを提言しているところであるので、ご紹介をさせていただいた。
 以上である。
(構成員) このアドバイザー制度というのは経済的支援の一環として必要ではないかということで提言が出ているわけであるが、支援のための連携に関する検討会の方でかなり検討が進んでいて、今説明があったようなコーディネーターの養成というのは、我々の方でも同じような仕組みをつくっていけばよろしいのではないかと私は思う。
 支援のための連携に関する検討会で検討されているコーディネーターの機能の中に、この経済的支援に関する分野のいろいろな知識、技能を持った我々が言うところのアドバイザー、そういうものがどれだけ念頭にあるかというのはそちらの検討会の方とも打ち合わせてみないとわからないが、いずれにしても向こうで今お考えになっているようなカリキュラムを組んで研修を行っていく、それに従ってそういうコーディネーター、アドバイザーというものを養成していく、そういう仕組みをつくるべきだということにおいては全く意見は同じだろうと思う。今後我々の方の中間答申案を書く場合も、そちらの検討会と連携をとりながら書いていけばよろしいのではないかと思っている。
 この点について何かご意見があればお願いする。
 一度向こうの検討会とも打ち合わせてみようと思う。私は向こうの検討会の考え方で大筋よろしいのではないかと思っているが、その点いかがか。当検討会として特に注文をつけておくということがあればご発言いただきたいと思う。
 書く段階でまたもう一度お諮りしたいと思う。
 よろしいか。
(構成員) 今、構成員がおっしゃったように、被害者支援というのは一部分だけではなくてその犯罪被害に遭うことによって破壊されてしまった生活全体あるいは社会生活、職業生活、すべての面での支援を行うということが基本になるかと思うので、支援のための連携に関する検討会の中でのコーディネーター役というのはまさにこの経済的検討会の中で言われているアドバイザー制度であり、当然さまざまな経済的な支援の既存の制度あるいはこれからできてくる新しい制度をつくって被害者の方の生活全般を支えるときには、まさにこのコーディネーターという考え方の中にこのアドバイザー制度も入るかと思うので、それで結構だと思う。
(構成員) 私もそのつもりである。
(構成員) 反対するわけではなくてこれでいいと思うが、参考までに、私どもがヨーロッパ調査でフランスのINAVEMとイギリスのVSを訪問したときに、同じように支援組織で被害者補償の請求について支援をしていた。それで、フランスの場合は裁判所の補償委員会に補償を請求するので、裁判所の中にINAVEMのコーナーがあり、そこへ被害者が行くとそういう補償の請求の書類を作成するアドバイスを受けてその場で出せるような、被害者が非常に利用勝手がいいシステムがある。
 それで、イギリスの場合は、補償を決める機関とは別に不服申立機関があるが、VSの職員の方が不服申立手続についても実際に審査機関とやりとりしながら行っているということである。そこまで突っ込んで支援をしていらっしゃるということをお聞きした。
 だから、できる限り被害者の方々が利用しやすい形でお考えいただければありがたいと思う。
(構成員) こちらの支援のための連携に関する検討会の方でも研修カリキュラムとかそういうものについてはかなり詰めて議論していかなければならないという問題意識は十分持っておられるので、私どもの経済的支援に関するいろいろな側面というものも組み入れてつくっていっていただくように我々の方からよく連携をとってやっていこうと思う。
 それでは、次に進む。(2)の認定機関、不服申立機関というものについての考え方である。現在はこの認定機関、不服申立機関は公安委員会となっているわけであるが、それとは別に独立の認定機関、不服申立機関を設置すべきかどうかという問題である。
 この点については、現行の公安委員会と別に独立の機関を設置していくということが若干非現実的ではないかというのがこのペーパーの考え方である。
 さらに、今度新しく給付水準が上がった給付金の給付事業もやっていくわけであるが、そういうものについても現在公安委員会、警察というラインでやっているその組織の中で処理をしていくのが現実的で、それ以外の新しい機関をつくってやっていくというのは実際に実現するのは難しいのではないかというのが私の認識である。
 この点について忌憚のないご意見をお願いする。
 もちろん今の公安委員会とか警察のやっていることについて注文を付けることは当然あるべきであろうが、だからといって全く別の組織をつくってしまうというのは非現実的ではないかというのが私の認識である。
(構成員) 現在の不服申立があった場合の審査の方法はどんなふうに行っているのか。
(構成員) 構成員、どうか。
(構成員) 基本的には申請をしていただいて、それに基づいていろいろな書面を出していただく場合もあろうかと思うが、いずれにしてもそもそも犯罪による被害であるのかどうか、それから一番いろいろと問題になるのは被害者の方に帰責性があるのかどうかといったようなことにつき、公安委員会において、法律にも定めているが、関係する公私の団体あるいは検察庁等に必要な照会を行っていろいろな資料を集めて、その中でも多分警察からの犯罪事件の捜査に関する書類といったようなものが中心になることが多いのではないかと思うが、そういったものを出していただく。そして、それに基づいて審査をして支給、不支給等を決定するという形になっているのが一般的である。
(構成員) 審査をする方はどういう方がされているのか。
(構成員) 基本的には大体、警察本部の担当課の課員が今申し上げたような、いろいろなところに照会をしながら資料を集めた上で都道府県公安委員会が裁定をするという形になっている。
(構成員) それは不服審査である。審査請求はどうか。
(構成員) 国家公安委員会が審査請求を受けるという形になっているので、国家公安委員会が裁決するが、それに先立って専門委員を3人委嘱しているので、この人たちに専門的な点について調査審議をさせて、その結果を踏まえ結論を出すという形になっている。
(構成員) その専門委員の構成員はどういう方か。
(構成員) 今の専門委員は3人いらっしゃって、1人は細井先生という方で東洋大学の社会学部長である。それからもう1人は三島健二郎先生という委員で、この方はもともと警察におられた方で、犯罪捜査実務に精通しているということで選んでいる。それからもう1人は椎橋隆幸先生という方で中央大学の法科大学院法学部の教授で、このお三方にお願いしている。
(構成員) それで、不服申立をした場合に、審査に当たりいろいろ意見を言ったり文書を出したりそういう申請者側の意見を聞く機会というのは設けられているのか。
(構成員) 基本的には請求者の側からもいろいろな意見書を出していただいて、それに基づいて審査をするという形になっている。
(構成員) 年間それはどれぐらい件数があるのかということと、平均どれくらい期間を要しているのかということを教えていただきたい。
(構成員) 不服審査については、昭和56年から制度を運用しているが、昭和56年から平成17年までの間に22件の審査請求があった。
 期間については今調べますので少しお待ちください。
(構成員) 印象としては非常に少ない感じがする。特に経済的なことについてもっといろいろ実際には困っておられる方もいるはずである。年間1件足らずのように思うが、これは手続にやや複雑な点、あるいは煩瑣な点があるとか、そういう分析はされたことはあるか。
(構成員) 確かに決して多い数とは言えないのかもしれないが、中身で見ると22件のうちの12件というのは被害者側の帰責性、何らかの責任があったかどうかという点で不支給にしたりあるいは3分の1支給にしたりといったようなことがあり、それについての不服審査というものが今申し上げたような数であるので、半数以上を占めているということである。
 手続については特段煩瑣なものを要求していないので、これについては請求される方にとって著しく利便性を欠くとか煩瑣であるということはないのではないかと思っている。
 追加で申し上げると、手続的には行政不服審査法の手続にのっとってやっているので、書類等で不備等がある、足りないところがあるということであれば補正していただいて出していただくというような形で進めているというのが実情である。
(構成員) 不服があった場合にはこういう申立機関があるんだということはちゃんと知らされているのか。
(構成員) もともとの犯給金の支給の申請があって、それに対する裁定を都道府県公安委員会が行い、その際の裁定に不服がある場合は国家公安委員会に審査請求ができるということは書いていて、その旨を説明するようにと指示をしている。
(構成員) 基本的には構成員のご意見が現実的だと思う。ただ質問にもなるが、たしか以前この場に不服審査の内容がどうであったかということの統計をお出しいただいたと思う。それを見るといわゆる却下と自分から申請を取り下げたということのみで、不服審査を認められたケースはなかったと思う。つまり、裁定されるところへ申請するので、先ほどおっしゃったように、専門の先生方の審査を経てということなので、そういう意味で客観性を持つようにはされていると思うが、数字だけを見ると不自然である。たしかイギリスへ調査に行ったときは、不服審査の一部についても認められている。出していただいたあのデータから見る限り、1件も認められていないので、より客観性を担保するという努力、あるいは第三者機関に委ねるか何かそういうことが必要ではないかという気がする。
(構成員) 今の問題は、構成員、どうか。
(構成員) 私もイギリスの実情は余りよく承知していないが、基本的に最初の犯給金の支給をするかどうかの判断というのは都道府県の公安委員会が行っている。それに対する審査請求というのは国家公安委員会に対して行われるので、組織的には全く別のものという理解をしていただきたい。
 それから、国家公安委員会においては先ほど申し上げた専門委員という方々を置いて、それぞれ調査審議をしていただくということをした上で国家公安委員会としての裁決をしているということである。
(構成員) 仕組みの問題と運用の問題というのはあると思う。確かに運用が少し狭すぎるのではないか、本当の意味でいろいろな意見を聞いて実体的な判断をしているのかどうかということはもう少し実体的な判断をするようにすべきではないのかというご議論はいろいろあるのだろうと思う。したがって、そういうことについては当検討会としていろいろ意見を言うことがあると思う。
 ただ、ここで私が言っているのはまさに組織のあり方の問題であって、都道府県の公安委員会から国家公安委員会へのぼっていく、国家公安委員会には審査専門委員というのがいるという仕組みがあって、その仕組みで行う限りはダメで、別につくった方がいいというのは1つの考え方としてあるかもしれないが、しかしそれをどこにどういう形でつくってだれがサポートするのか、データの提供はどうやっていくのかということになると行政の組織としては大変厚いものができてしまうということもあるので、現行の仕組みの中で実態的な判断ができるようにしていくというのがよいのではないかということで、私の考え方であってご提示をしている。
(構成員) 先ほど構成員からご質問のあった平均的な審査請求の期間は、約5カ月ということである。
(構成員) 知らないところがあるので踏み込んでは発言できないが、確かに構成員のおっしゃるように新たな機関をつくるというのは私も事実上は難しいということはよくわかるが、ただ件数から見て、手続の公正さという観点から見るとやはり何か問題があるのではないか。そういう点で、被害者から見て国家公安委員会にアピールするというのは困難なことで、その前の段階で都道府県の公安委員会で何か被害者の方からもう一回再審査してほしいとか何かそういう形での要請はできないのかどうかという点である。
 風通しという点で一考を要しないかということだけである。ただ、これは実態を私も余り知らないので、むしろ支給が非常に公正にされているので年間1件ぐらいにすぎないという理解も可能かもしれないので、その点は余り踏み込んで言わないが、手続的に公正さという点から見れば一考の余地があるのではないかという気がする。
(構成員) まさにそういう運用上の問題というのは1つあって、そういうところに関しつけるべきクレームをつけていくために、先ほど議論になったアドバイザー制度というものがあるのではないか。
 今の日本のいろいろな社会保障制度はなかなか複雑にできているので、どこにどういう形でもっていったらいいかわからない。仕組みが悪いのか運用が悪いのかもよくわからないというようなところもあるので、そこをある程度専門的な知識を持った方が、親身にアドバイスしていけばかなり改善されるのではないかというのがあって、このアドバイザー制度というアイデアも出てくるわけである。
 構成員がおっしゃったように、この不服審査というものについて、今のところ警察の広報活動は足りないのかもしれない。被害者の方々も何をやっていいのかよくわからないところがあるので、アドバイザー制度を充実していく過程でそういう問題は解決していくのではないのかと思う。
(構成員) 不服があって、その対象ではないということが決定したときに、きちんとどういう理由でということがその方にちゃんと説明されるのかどうか。またそれも一般的な、例えばインターネットなどでも情報公開されるということが必要だと思うし、またそのことをいろいろな支援者とかアドバイザーの方が見てこういう前例があるということを学ぶことができたりすると思う。
 それで、その理由にまだ納得できないという人もいると思う。そういう場合にはどこに行ったらいいのか、それがまさに構成員がおっしゃっているようなコーディネーターの方にということだと思う。
 そういう意味では本当にコーディネーターに中立的な立場の方がなっていただければ被害者も相談に行けるという感じはする。
(構成員) そういうことだと思う。構成員、何かあるか。
(構成員) 基本的にはもちろん理由についてはすべてご説明をした上で支給、不支給といったことについての結論をお伝えするという形になっている。
 ただ、今お話があったように、こういう不服があるときに審査請求をするということについてやはりもっともっと周知徹底もされないといけないと私も思っていて、私どもも努力していかなくてはいけないというふうには感じている。
(構成員) 不服審査の機関ということではないが、犯罪被害者給付のこの制度によれば、加害者が逮捕されないような場合であっても給付は出されることになっている。それで、例えば極端な話、被疑者死亡ということで事件が終わったような場合も給付がなされることになるが、そういうような場合にもし不服申立したときに、審査機関の方はいろいろな刑事記録をごらんになっているが、申し立てた方は全然記録を見られない。そうすると、棄却の決定をもらってもそれに対して行政訴訟を起こすかあるいはさらに上へやる場合にも情報が公開されないまま被害者の方は不服申立しなければならないという状態にある。その不服申立をする際の被害者側の権利についてもやはり工夫していただかないと実質的にならないのではないかという気がする。
(構成員) 基本的には行政不服審査法の手続にのっとって行っているということであり、もちろんそういうことで必要な部分についてはご連絡もするという形で行っているということであるが、なおいろいろと問題点があるというご指摘であるので、また今後検討していきたいと思う。
(構成員) 今構成員のご指摘の点は、要するに被害者に対する情報提供ということである。大変重要なことでもあるので、当然中間報告を書く場合に、今の点をご意見として盛り込むようにご発言いただいたらいかがか。
(構成員) 今の話で情報提供の部分であるが、基本的に処分庁の処分理由というのがあって、それはもちろんこの審査請求された方にもご連絡申し上げて、そしてそこからまたいろいろな反論も出していただくという形にしているので、そういう意味では情報提供というのは行われていると考えている。
 なお、そういった制度で行っているが、さらに構成員の方で必要なところがあるということであれば、またそれは検討させていただきたいと思う。
(構成員) 実際の運用がどうかというところも含めて実情を見ていただいて、情報提供にやや不足のところがあるのであればそこは直していく、言うべきところはまた検討会の1つの意見として申し上げていくということだろうと思う。
(構成員) 被害者に対してのみならず般国民に対してもやはり説明する義務があるように思うし、ほかの被害者もどのような実情にあるかということを非常に知りたいところだと思うので、そういう点での透明化という点もぜひ図ってもらいたい。だから、例えば被害者白書が先般出たけれども、そういうところにもきちっとそういうことが記述されているというのが望ましいと考える。
(構成員) 一般広報であるな。わかった。ほかによろしいか。
 それでは、次に進みたいと思う。(4)の経済的支援制度に関する法形式はどうあるべきかという問題であるが、別の言葉で言えば犯給法の改正の延長線上で考えるのか、それとも全く新たな立法形式をとって別の法律をつくるのかという問題である。
 これは大体今まででもういろいろ出尽くした感じはあるが、中間答申の中身に応じていわば表紙がどうあるべきかということであるので、これはまたそのときにいろいろと考えていきたい。立法技術の細かなところは当該所管庁に任せなければ仕方がない問題であるが、ただ基本的な流れとして犯給法の延長線上でいくのかどうかということについては、答申案がまとまった段階でもう一度ご議論いただきたいということである。
 今の段階で何かご意見あればお願いする。
(構成員) 犯罪被害者給付金というと見舞金、一時金というイメージができ上がっているので余り好ましくないと、私は印象としてそういうふうに思っている。
(構成員) ほかに何か。
(構成員) 平成13年に法改正が行われて14級まで広がって、それでその14級までの等級の基本となるものが恐らく自賠責保険の等級表かあるいは労災保険の等級表を使っていると思うが、そういう犯罪被害の実情に合った等級内容であるのかどうかということはぜひ見直す必要があるのではないか。例えば、強姦罪だとか強制わいせつとかそういう性被害の場合とか、あるいは必ずしも犯罪に至らないDVの場合とか児童虐待の場合の被害も入っているので、そういう被害の実情に合った形での等級表であるか、もう一度見直してみるという必要はあるのではないかと思う。
(構成員) 今のご意見は、法形式の問題ではなく、中身の問題である。特に給付の内容の問題である。今までそのご議論は余り出なかったけれども、等級表そのものを直すべきだというご意見であるか。
(構成員) そうである。被害の実情に沿ってもう一度検討を進めるべきではないかと思う。
(構成員) 先ほどの犯給法という名前がどうもよくないというのは、構成員、いかがか。
(構成員) そういうイメージが先行してしまったということであれば、少しそこは考える余地もあるかもしれないが、そこはまた皆様方のご意見もよく伺いながら考えたいと思う。
(構成員) 名前は一回変わったか。
(構成員) そうである。平成13年に。
(構成員) 保障法ということになるかどうかはわからないが、要するに給付水準その他も全く違ってくるので、その意味でも内容が変わったということをきちっと示す法律の名称というのは何かあってもいいのかもしれない。したがって、そこはまた後ほどご意見を出していただきたい。
 それでは、次に進む。5のテロ事件の被害者に対する特例的措置に関するものということでお示しをしているところである。これについては、書いてあるように何らかの特例措置が必要ではないのかと思うが、対象となるテロ事件の定義づけというのは大変難しい、あらかじめ包括的に定めておくというのは非常に難しいわけで、一般の犯罪被害者等とは別に特別の救済策をとることをきちっと法律に書いておくというのは、大変困難であろう。
 ただ、ここのところは私の意見であるが、国家、あるいは社会に対するテロ行為で無差別大量の死傷者を生じたような事件については、直ちに事案に応じた適切な救済措置をとることが国の義務であるということを明確にする内容をこの検討会の提言の中に盛り込むべきではないか。事件が発生したときに直ちに手を打つということはイギリスでもアメリカでもそれぞれのお国柄を反映しながら特例の措置をとっているわけであるから、日本だけが一般被害者と同じように措置をしておけばいいというだけでは済まないであろう。特に現在の国際情勢を見ると、日本においても不条理な無差別大量のテロ事件というのが起きる可能性というのは決して否定できないので、そういう不条理な事件が発生したときに国の意思としてきちっとした救済措置をとるということはある意味では当然のことではないかという感じがしている。
 したがって、国に対してそういう場合には直ちに措置をとれという意思を検討会の1つの結論として訴えておきたいということである。
 若干あいまいなところが残るが、このところはそういうぐらいでいかがかと思う。
 何かこの点に関してのご意見があればお願いする。
(構成員) 今日皆さんにお配りさせていただいた「私にとっての地下鉄サリン事件」という冊子がある。構成員にも手記を書いていただきました。これを17日に、地下鉄サリン事件から12年、遺族にとっては13回忌ということで、会場にいらした方に配布させていただいた。
 ここにも、今構成員がおっしゃってくださったようなことが書かれてあって、やはりいつどこで私たちも国際的なテロに巻き込まれるかわからない、そういう時代になっているのでその被害者の救済が必要だということを構成員にも言っていただいて、本当に力強いお言葉いただいたというふうに思っている。
 それで配布資料で、多分こういういろいろな大量に被害者が出た事件に対して国が保障するあるいは損害賠償金が十分でない部分に対して国が立て替えるというようなことに関して国民の同意が得られるのか、賛同が得られるのかというようなこともあって、国民全体にその負担が及ぶという回答があったと思う。では、国民全体に負担が及ばないで一部のテロ被害者だけに負担を負わせていていいのかということが逆にテロ事件の被害者の言い分としてはある。
 それで、なかなかこの経済的支援の中には入れにくいこともあるということもあって、今回17日の集会の中でもう1つ「オウム被害者救済のための法律を!」ということで声明文を出している。その最後の方に特措法の制定をお願いするというようなことを書いた。
 その特措法は、「テロ犯罪被害者の支援と補償に関する法律(案)骨子」ということで、オウム事件の被害者の関係者、被害者の会とか弁護団が考えました法律案骨子であるが、ここにはテロの定義とか救済法とかいかに早く支援をしていただきたいかということを書いてあるので、ぜひこれをお読みいただきたい。
 そしてまたこの経済的支援の中に入らないということもあるので、これはその都度の対応として、今回オウム事件の被害者にこういう特措法をということで、ぜひ初めてのことだと思うが、実現させたいと思っている。
 こういうことの積み重ねでいろいろないわゆる国ないし社会を敵視して行われたテロ事件、大量の被害者が出たテロ事件に関しての支援の充実が図られていくのではないかと思っている。
(構成員) 1点私から申し上げると、「テロ犯罪被害者の支援と補償に関する法律(案)骨子」ということであるが、私は今ざっと見ただけですが、大体こういったことを詳しく書くことになるのではないか。どういう表現になるかわからないけれども、ここに書いてある基金をつくり、特別に支援をしていくということだろうと思う。こういったことをここの構成員の皆さん方のご意見でどの程度盛り込んでいくのかということだろうと思う。何とか成文化してみたいと思う。
 ただ、非常に難しいのは、オウム特措法というところまで踏み込んでここで何か言えるのかということについては、私自身もそこまで書くべきということを必ずしも言っているわけではない。もちろん構成員はそういうご意見であると思うが、これはもう構成員の皆さんのご意見次第だろうと思う。
 何かあるか。
(構成員) 非常に誤解されるといけないと思うのは、ここでオウム被害の特措法ということを言っているわけではなく、そういうことを踏まえてやはりテロ犯罪の被害者に対する支援は必要ではないか。だから、この論点に対応できるようなものが必要になって、その前例としてやはり地下鉄サリン事件の関係でこのオウムの特措法は私たちは頑張ってやっていきたいと思っている。。
(構成員) 私もテロに関する特別措置というのはやはりこの検討会できちっと書かなければならないと思ったきっかけは、やはり地下鉄サリン事件である。それがあるのでこういうものについてきちっと対応する、直ちに国が手を打つという仕組みをつくっておくべきだということはやはりこの検討会で明確に提言をしていくべきだと思っている。また文章化するときにいろいろご意見を承りたいと思う。ほかにないか。
(構成員) テロによる無差別大量に死傷者が出た場合の特措法ということは盛り込んでいただくのも大変結構だと思うが、細かいことまでは恐らくできないと思うが、少なくとももう一歩だけ踏み込んで、例えばどういったことが必要になるかというようなことぐらいまでは、恐らく早期の対応があり中長期の対応があり、それから傷病者への対応、遺族への対応、それから打撃を受けた地域の回復の問題、それぞれ身体であり精神であり経済的な問題といったようなことがあるかと思うので、大体こんなことが1つの全体像として必要となるというようなことまでの例示は盛り込んでいただけると、より意義があると思う。
 海外ではワールドトレードセンターとか最近ではロンドンの爆破事件の例もあるので、海外ではどういったようなパッケージ、項立てがなされたかということも参考にしながら、例示ぐらいで結構だと思うが、盛り込んでいただければと思う。
(構成員) ほかに何か。
(構成員) そういう点では精神的なものに関しては本当に地下鉄サリン事件の被害者に対しては構成員にもお世話になっているわけで、どういうような状況があったかということを出していただけると助かると思う。
(構成員) 文章を書くときにそういったご意見をどんどん出していただきたいと思う。
 私どもに課せられた課題についての検討は一読解的なものは終わった。今日はせっかく芦塚先生にもお見えになっていただいているので、併せて検討することとされているものの検討に入りたいと思う。順番は、公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非から先にやってまいりたいと思う。
 まず、構成員から、法律扶助制度のある法テラスや新たに立法が予定されている制度を所管するお立場からこの論点についてのご意見をいただき、冒頭にご紹介があった説明者からご説明を承りたいと思う。まず構成員からお願いする。
(構成員) 当方の意見については本日配布されている資料6-2で説明を記載したところである。特に今の議題の関係で言うと、その資料の中の質問2に対応する部分である。事前に提出させていただいているのでごらんいただいているかと思うが、その回答というところに1として公費による弁護士選任、公的弁護人制度関係、それから、2として国による損害賠償費用の補償等の是非についてというところに記載したものである。
 内容はそこに記載したとおりで、現状の日本司法支援センターにおける犯罪被害者支援についてそこに記載してあるような支援を行っているとか、それから財団法人法律扶助協会が行ってきた犯罪被害者に対する援助事業についてその後これをセンターとの関係でどのように取り扱っていくかということについて現在関係者間で協議が進められているということなどを記載している。
 それから、公費による弁護士選任、公的弁護人制度ということについて、全体としてどのように考えるべきかということについては、(3)のところに簡単に記載しているが、現在の制度の枠組みは民事の話について、基本的には民事法律扶助事業で行われているわけであって、それをさらに越えて公費による弁護士選任あるいはそれによって弁護人という形で一定の活動をしていただくことについてどういうことを考えるべきかということについては、そもそもどういう法律事務の提供をしていただくことが必要なのか、それを公費により負担するのが妥当なのか、その場合にどういう要件であるとか対象犯罪、さらには立替なのか給付なのかといったことについての検討が必要になるであろうということをごく簡単に記載した。
 この関連で、今般当方でこの犯罪被害者支援の関連、特に公費による弁護士選任と関連するであろうということで新たな制度について法律案を作成して国会に提出したところであるので、その関係の資料をつけている。もう既にご承知の方も多いかと思うが、犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度、それから損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度、この2つの大きな柱とする法案である。参加の制度については、その参加を許された被害者の方から委託を受けた弁護士も同様に公判期日に出席をすることや、あるいは意見を述べたり証人さらには被告人に質問をする等の活動をその犯罪被害者の方々とともにその委託を受けた弁護士の方でやっていただくということをその制度の中身として盛り込んでいるところである。
 それから、損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度については、刑事の裁判所に対して損害賠償請求の申立をして有罪判決の言渡しの後に簡易迅速にその申立についての判断をする制度を盛り込んでいるが、当然その場合もその被害者等の方の依頼を受けた代理人としての弁護士がその申立をする、あるいはその後の民事の関係の審理について代理人として活動をするということが予定されるものである。
 こういった新たな制度を前提として弁護士の業務が実際に拡大をするということを踏まえて、どの範囲について公的費用でまかなうことが必要なのかあるいは相当なのかといったことをご議論していただく必要があるのではないかということである。
(構成員) いろいろご質問・ご意見もあろうと思うが、説明者のお話を先に承りたいと思う。よろしくお願いする。
(説明者)  まず、お手元の資料をご説明する。「犯罪被害者等に対する経済的支援拡充に関する意見書」(2006年11月22日 日本弁護士連合会)は日弁連の理事会決議で採択された文書で、公的な日弁連の文書である。
 公費による弁護士選任の導入につきましては5ページ以下で書いている。
 大切なことは8ページにこれからの検討課題ということを提言している。あるべき制度を構築するにあたっての検討事項、犯罪の被害に制限を設けるかという点については、生命、身体、自由などの侵害する犯罪行為に限る。資力による制限を設けるか否かについても、資力要件を設けるとしても被害者が法律専門家の援助を受けることが資力の多寡によって左右されるべきではないことに留意する必要がある。弁護士費用を援助する場合の認定機関及び具体的な手続として、総合法律支援法30条1項5号を改正し、日本司法支援センターを認定機関とする。給付手続においては国選弁護人に準じた形式とする。
 刑事対応の場合も民事賠償と区別すべきか否かについても、民事損害賠償も含めた形での被害者支援制度を構築すべきである。被害者の実質的な被害回復という観点から刑事に関連する支援と民事上の損害賠償も切り離して考えることはできないということ、給付制度については給付に統一的であること、法律相談の無料化の推進ということについては無料化を推進するということをうたっている。そして、公費による弁護士制度を導入するにあたっての費用ということで、2005年における財団法人法律扶助協会の犯罪被害者法律援助制度においての支給件数は115件、支給総額は約1,500万円であった。しかし、今後の支援活動を充実させるためには十分な公費を投入することを要望している。
 第2に、「犯罪被害者支援者ニュース」というものがある。これは全国2万3,000の弁護士に配布されている日弁連新聞に添付された資料で、これは全国のすべての弁護士に配布された犯罪被害者ニュースというものである。2枚目に二次被害を防ぐために私が書いたものが添付されて、全国の弁護士に配布されている。
 弁護士はとかく刑法・民法やあるいは刑訴法などの基本六法は習熟しているが、福祉についてはやや知識が欠けており、犯罪被害者がすべての生活再建を目指して法律相談に来たのになかなか十分な対応ができないという点は弁護士が反省すべきだということをここでうたっている。
 そしてまた、被害者のお気持ちとして、事件として立件してもらいたい、事件の内容や手続を知りたい、裁判所や検察庁に行くのが不安である、法廷で加害者に主張したい、弁償してもらいたい補償してもらいたい、こういった制度についてさまざまな点を検討していかなければならないということを述べている。
 3枚目に、「法律扶助だより」というものがある。法律扶助だより93号というものがあって、1枚目に法律扶助協会の自主事業というのがある。
 2枚目に表があって、犯罪被害者法律援助事業実績の推移、平成13年度38件、380万、これからも年々減ることなくすべて増加の一途をたどっております。平成17年度には115件、1,462万円という数字があがっている。
 ここで一番件数が多いのが下にあるとおり、66件の刑事和解を含む示談交渉、55件刑事記録閲覧・謄写というふうに、大体要望が集約されつつあるということがわかってくると思う。犯罪被害者法律援助に関してのデータで一番正確なのはこのデータである。
 ただ、注意すべきは、例えば民事扶助で相手が交通事故の任意保険がついていて任意保険から十分に補償されるような場合、つまり相手に資力があるような場合は民事扶助という形で援助がなされていて、この統計にはあがってきていない。また、一般の私選で弁護士が受けるケースもあって、それはこの統計にはあがってきていない。いわゆる犯罪被害者法律援助事業ということに特化された数字ということになっている。
 次が法律扶助だより84号ということで、これについての表もある。これは平成13年、14年、15年度についての統計である。これについては正直な問題点をここの文献で書いている。この3年間で犯罪被害者法律援助により支援された件数は192件となった、13年度は初年度で制度自体の周知が行き渡らなかったこともあり38件にとどまったが、その後増えている。ただ、各地の弁護士会における支援体制の違いを反映してか、援助実績は支部により大きく異なっており、東京が92件と全体の半数を占めるなど、その他の問題点を書いている。最初は少なかったが、やがて全国の弁護士が認知するにしたがって、先ほどのとおり件数が増えていっている。
 そして、最後の資料は「犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求める決議」で、平成15年10月17日に日弁連として犯罪被害者の権利の確立について決議した。その中での第4項として殺人等の重大事件の犯罪被害者が捜査機関、裁判所、メディアに対する対応に関し弁護士の支援を受け、その費用については公的援助を受けることを可能にする制度を創設すること、つまり、公費による弁護士選任導入をここでうたっている。人権擁護大会というのは日弁連の中で一番大切な大会であり、そこでこの犯罪被害者についての支援をうたっているわけである。
 これが資料の説明である。かいつまんで説明すれば、弁護士というのはとかく刑事弁護で登場するわけで、加害者の味方であるという見方もあるが、そうではなくてやはり地道な支援というのを伝統的に行ってきている。
 例えば交通事故の無料斡旋制度というのは昭和40年代には開設していて、交通事故に限定しては被害者が無料で斡旋を受けられるという制度を構築している。これは例えば交通事故なんかで任意保険基準だと非常に低いが、裁判所の基準で斡旋をすると非常に高くなる、こういった制度を昭和40年代から斡旋している。
 そういういろいろな作業をやっているが、やはり弁護士というのは相手から財産をとって、そしてそれを仕事として受ける形でやってきた。つまり、相手に資力があるかどうかが弁護士が介入すべきかどうかの基準であった。しかし、そうではなくさまざまな被害者のご要望が、事件の内容を知りたいとかそういうことが問題となってきており、さまざまな支援活動をやっている。
 特に一番重要なのは、弁護士でなければできない支援ということである。つまりそれはどういうことかというと、最初の表に書いている、最初の日弁連の意見書の中に被害者のための支援活動ということで、被害届、告訴、そして示談、そして報道機関への対応というようなことを書いている。
 報道機関への対応というのは弁護士固有の権限で、弁護士が例えばマスコミが集中する事件だと弁護士が窓口になることにより被害者のご自宅にマスコミが行かなくて弁護士が対応するということで被害者の方が平穏に生活できるというような被害者の支援もできると思う。
 また、示談の対応ということで、刑事弁護人が加害者側についたときに、被害者側として弁護士が介入することによって適正な示談の金額等が策定されるということになっている。
 そしてまた告訴というようなことも非常に重要で、法律要件、構成要件から告訴状を作成して被害者の支援を行っている。
 そしてまた平成12年に被害者保護関連の法律ができて、新しい弁護士の支援というのができている。一番重要なのは起訴後の段階における起訴状、冒頭陳述書、論告、判決書の閲覧・謄写ということがある。これは起訴後、確定前に閲覧・謄写を弁護士がサポートするということである。これは弁護士以外でもできるが、弁護士が特につく必要があるのは家庭裁判所の事件である。家庭裁判所の事件というのは記録の扱いに非常に慎重で、被害者が行ってもなかなかすっと出すことはない事例が多いが、弁護士がつくことによって家庭裁判所が弁護士限りということで記録の閲覧・謄写を認めてくれたケースもある。家庭裁判所の事件では閲覧・謄写といった場合で、弁護士の活躍する領域が非常に多いといえる。
 また、意見陳述書の作成ということで、平成12年の改正で意見陳述の制度が認められたが、これについて弁護士が事前に陳述書の作成などを援助している。また、これに関係する制度として刑事和解、平成12年の法律で認められた刑事和解という制度があって、刑事裁判の記録に和解の内容を添付する形で和解が認められる。この刑事和解の制度は法律で当事者の出頭ということが要求されている。被害者の方が刑事裁判所に行けばこれは可能だが、被害者の方がなかなか刑事裁判所に行けないときは被害者側の弁護士が代理人として刑事裁判所に行くことにより和解調書の作成が可能となっている。特に刑事和解の制度については弁護士の果たす役割が非常に大きいかと思われる。
 また、不起訴の場合、特に検察審査会への申立ということで検察庁でいったん不起訴になったのを申立書を作成して支援する制度がある。これは平成12年の改正で遺族の申立も認められるように大きく重要な制度となっている。この申立書の作成に弁護士が関与している。
 そして裁判終了後の加害者情報の入手である。今は検察庁の通知制度で起訴したかしないかとかの項目は検察庁の捜査の段階で自動的に被害者の方にお知らせするようになっている。ところが、実際いつ出るか出ないかというのはもうかなり実際刑務所に収監されて出るまで数年かかるので、これも弁護士がついて出所情報を管理するという手続等もある。
 そして、刑事確定記録の閲覧である。刑事訴訟法では確定記録は閲覧とだけしか書いていない。だから、被害者の方が検察庁に行って記録を見せてくださいというと写真を撮影してくださいということを言われる。こうすると例えば高性能のカメラでこういう文書を撮影してもゆがんでしか見えないということになる。ところが、弁護士がやる場合は検察庁内に弁護士会の謄写人がいるので、そこを経由して鮮明な形でのコピーがとれる形になっている。弁護士の果たす役割は非常に大きいと思われる。その他安全のためのアドバイス等々をしている。
 また、被害者給付金の申請ということで、生活保護申請などで弁護士が援助するような制度もある。民間のソーシャルワークがなかなか行政との関係で独立性がないようなところは弁護士が関与していくという制度もある。
 では、この制度がどういうふうに伸びていっているかというと、法律扶助だよりの表をごらんになればわかると思う。一番重要なのが刑事和解を含む示談交渉である。やはり刑事弁護人ということで加害者側に弁護士がつくときは被害者側にも弁護士をつけてもらいたい。そして、和解の内容等も十分に把握できるようにしてもらいたいというようなことがある。そして、刑事記録の閲覧・謄写である。この件数も55件というふうに非常に重要になってきている。これが法律扶助に基づく制度である。
 そして、今現在は日本司法支援センターにおける精通弁護士ということで、弁護士が被害者支援業務に当たっている。昨年11月21日現在に精通弁護士として登録しているのが1,138人である。1,138人の弁護士が登録して被害者支援の業務を行っている。
 総合法律支援法の下で精通弁護士が被害者支援を行うという体制を整えているが、総合法律支援法の30条1項5号というのが情報を提供する、つまり法テラスは有料相談の弁護士を紹介するということだけが法文上規定されている。これではやはり不十分ではないかということを考えていて、総合法律支援法を改正した形で、法テラスの本来業務として被害者支援をやっていただきたいというのが日弁連の意見である。
 総合法律支援法というのは平成16年6月に制定されていて、犯罪被害者等基本法は平成16年12月ということで、その6カ月前にできた法律であるのでやはり犯罪被害者支援については十分でないところがあるので、総合法律支援法30条1項5号を改正して法テラスの本来業務としていただきたいということを日弁連として訴えている。
 そしてまた、この公的弁護人制度については今月13日に閣議決定で被害者参加人ということで決まっている。また、この制度についてはさまざまな意見があって、慎重な言い回しをしなければならないかと思うが、実際動きだしたらやはり損害賠償の請求に関し刑事裁判の手続、成果を利用する制度、いわゆる付帯私訴、そして参加とこの両面が検討されている。いわゆる付帯私訴というのは刑事裁判と民事裁判が合体した手続であるので、やはり民事訴訟法の知識のある弁護士がサポートする必要がある。そしてまた、参加については情状に関しての尋問等に限られるので情状とは何かというようなことを弁護士がサポートする必要があるのではないかと思っている。
 またこういう点がさまざまな形で検討されている。
 以上である。
(構成員) 今、構成員及び説明者からご説明があった。いろいろご質問等あるいはご意見もあると思う、どうぞご自由にお願いする。
(構成員) 今、説明者の案だと、公的弁護人というのはこの訴訟参加、付帯私訴の代理人となるという場合に限っているのか。
(説明者) いや、そうではなくて、従来から法律扶助協会でやっている謄写とかの援助も含んでいる。これがむしろメインになるかと思う。
(構成員) そうすると、従来からやっている犯罪被害者支援の弁護、これも含めて新しく制度ができる、被害者参加制度、それから付帯私訴制度の代理人あるいは弁護人というそれも全部含めて公的な弁護士選任制度ということでよろしいか。
(説明者) そうである。
(構成員) その場合に、国の費用を出すということになると、個々ばらばらに行われて、やっているところもあるけれどもやっていないところもあるというのでは、国の方でなかなか公的費用としては難しいとは思うが、今、日弁連できちっと法律でそういう制度をつくった場合に全国の弁護士会がそういうことに対応できるだけの体制が整っているのかどうかという点はどうか。
(説明者) 全国の弁護士会が52あり、52の弁護士会すべてから日弁連犯罪被害者支援委員が出ている。そしてまた、全国のすべての弁護士会に一般の窓口があって、犯罪被害者を含めた一般の相談にも対応している。そしてまた、犯罪被害者に特化した形の相談が28単位会にあって、28の弁護士会では専門的な相談を行っている。
 また、先ほどの法律扶助だよりを見ていただければわかるとおり、年々増えているので、全国の弁護士会にこの犯罪被害者援助の活動が展開していくと思われる。
(構成員) 法テラスの総合法律支援法を改正して、法テラスの事業としてその公的弁護制度と提案されているが、具体的にはどういう形になるのか。
(説明者) まず、今総合法律支援法の30条1項5号というのは犯罪被害者の援助に関する次の事項に関する情報、資料を収集して整理し、情報通信の技術に利用するその他の方法により一般の利用に供し、個別の依頼に応じて提供することにとどまっている。ところが、民事扶助の場合は国民を援助する事業を行う。援助という言葉は、民事扶助の場合には入っているが、5号の場合には援助という言葉がないことが問題である。直接法テラスとして支援し、本来業務としていただきたいということである。
 要するに今の日本財団からの援助で行っている法律援助事業というのも日本財団の予算が止まればもう立ち行かなくなる。そこはやはり国の制度としてやっていただきたいというのを願っている。総合法律支援法というのが平成16年6月の法律で3年もたっていないのに改正というのはいささかせっかちな面があるかと思うが、やはり時間の前後関係、総合法律支援法ができた後に犯罪被害者等基本法ができたという関係を考えれば、この点の調整を十分やっていただきたい。つまり、総合法律支援法第30条1項5号というのは犯罪被害者等基本法ができていないときにできた法律であるので、この辺をよく調整していただきたいと願っている。
 そして、本来業務としてやはり日弁連の意見書にあるとおり、例えば民事扶助的な国選弁護人制度、刑事の国選弁護人制度と同様に直接に法テラスが業務を行えるということで、日本司法支援センターを認定機関とし、給付手続については国選弁護人に準じた形式とする。つまり、国の予算として出る形になるので、何も日本財団の予算が不足したからといって十分に援助が可能ということになっている。
(構成員) 今の説明者のご発言であったことで、総合法律支援法30条1項5号の改正ということについては、構成員のご見解はどうか。これは質問であるが。
(構成員) やはり基本的にどういう法的サービスを公的費用を負担して行うかという、中身の議論が先に必要ではないかと思っている。先ほどの法律扶助だよりに記載されている平成13年度からのいろいろな実績、これはいわゆる自主事業として行われてきた支援のいろいろな中身であったりあるいはその推移ということだと思う。いずれにしても弁護士にやっていただく事務ということになるので当然法律事務、法的サービスということになるはずである。先ほどのお話の中にもあったが、例えばマスコミ対応という問題がある。被害者、遺族の方にとっては非常に重要な問題であることは間違いないわけであるが、それがいわゆる法律事務、法的サービスとして位置づけられるのかどうかといった議論も恐らく必要になるのではないかと思っている。
 それから、いろいろな事務の性質であるが、いわゆる民事の関係、民事訴訟であるとかあるいは示談交渉も含むのかもしれないが、そういうものについては民事法律扶助ということで既に対応が総合法律支援法の中でもできているわけで、当然それは被害者の方も含まれているわけである。そういうものとそうでないものとを区別して議論する必要があるのではないかと思っている。
 例えば、新たな制度としていわゆる付帯私訴というものを提案をしているが、付帯私訴に伴う民事の関係の審理について弁護士が法的サービスを援助するということについてはまさに民事的な問題であるので民事法律扶助の枠組みで考えるのになじむ話と思う。いわゆる被害者参加の部分で弁護士が被害者の方の委託を受けていろいろな活動をするというのはまさに刑事の問題であり、これまでの民事法律扶助の枠組みを越える部分であるので、それについてまさに公的費用で負担をするのかどうかという実質の判断を議論していただく必要があるのではないかということである。
(構成員) 今の点は日弁連はどうお考えか。民事と刑事の仕分けのところがあるのではないかということであるが。
(説明者) 示談交渉だと、例えば300万とか200万とかまとまってくる事件の依頼を受けて報酬が確保できるという形は民事扶助でできる。つまり民事扶助では資力要件、相手方からいくらか確実にとれて弁護士費用がペイできるものとして今までやってきた。実際の刑事裁判だと、これがもうとてもそういう高額な示談金ではなくて10万とか15万の示談金で終わらせるような形のケースもある。こういった場合に弁護士が介入すると15万の示談金で弁護士費用が最低報酬基準では10万円、依頼者がとるのが5万円といった場合はもう全然介入できなくて、最初の入口の段階からこれはもう弁護士の仕事ではないということでなかなか引き受け手がなかったわけである。そういった場合は給付制ということで弁護士の費用が確保できれば自動的に弁護士が介入しやすいというようなことも考えている。
 それとあとやはりマスコミ対応についても、これもやはり交渉の窓口になる。例えば記者クラブの幹事社に入っているところだったら平穏であるが、それ以外のマスコミがいろいろな動きをした場合は民事保全とか民事裁判の対応をしなければいけないということで、あくまで民事訴訟の準備段階としてこのマスコミ対応は位置づけているので、十分に法律事務という性格はこなせるかと思う。
(構成員) 何かご発言はあるか。よろしいか。
(構成員) 構成員のおっしゃることもわかるが、現実問題として被害者の方から相談を受けて支援につく場合に、ここからこっちは民事でここからこっちは刑事でというふうに、刑事告訴まではするが、その後はしないとかとそういうことはできないので、自主事業としての法律扶助を使って援助をする場合も現実の問題としては全部ひっくるめて最初から最後まで援助するという形にならざるを得ない。
 だから、確かに理屈上は法律事務がどうかということは厳密に分けることになるかもしれないが、例えばマスコミ対応でも、では生活妨害に対する妨害禁止の仮処分申請というのをすれば法律扶助の対象になって、そうではなくて単純にマスコミ対応とすれば対象とならないとかと、逐一そういうことをしていられないと思う。ただ、あえて法律上の理屈を考えればそういう生活妨害に対する妨害排除あるいは妨害予防という法律事務を取り扱うというふうに考えられなくもない。できる限り被害者の要望の実情に合った公的費用の援助ということを考えていただく方がいいのではないかと思う。
(構成員) 私から構成員に1つ質問よろしいか。民事法律扶助の枠組みを越えてどのような場面で弁護士による法律事務の提供が求められているのか。いかなる形での援助が行われるべきか等について検討が行われる必要があるというご趣旨のペーパーであるが、少なくとも私はこの辺のところについては実務も法律もよく分からない。そもそもこれからの制度が非常に動いているのでわからないところがあるが、これはどういう場合が当たると構成員はお考えか。
(構成員) こういう場合にこういうふうにした方がいいのではないかという具体的な案を私どもが持っているということではない。
 制度が非常に動いている部分であり、これまで自主事業としてされてきたことも、もちろんそれは非常に意義のあることだったのだろうと思うが、それを今後、仮に公的費用、どういう形で財源を出すかということがもちろん別途問題ではあるが、国民の負担という形でサービスを提供するかどうかということになれば、その場合の問題としてどの範囲の法的サービスをどういう要件で認めるかというのは当然議論をしなければならない話だろうとことである。
 先ほど申し上げたように、法律事務なのかどうなのかというのを議論しなければならないのはあくまでもそれは弁護士というまさに法律専門家のサービスを公的費用で負担をするということであるならば、それは法律事務であるからこそ、そういう公費の負担ということになるのだろうから、そこの理屈の整理が必要ではないかということがある。民事、刑事の区別の問題も、実務的に難しい問題もあろうとは思うが、やはり民事の問題というのは少なくともこれまで民事法律扶助という形で行われてきたし、相手方の加害者側のそういった法的サービスの問題はどうするのかという問題も他方にあるので、民事と刑事の話をどう整理するかというのもやはり1つの問題であろうと考えている。
 結局いずれにしても公費で負担するということになるので、この検討会でこれまでいろいろと議論をされてきたいろいろな経済的支援のための給付も、もちろんまさに公費でそういった被害者の方にいろいろな意味で支援するための施策であるし、それとある意味では共通する問題である。いずれにしてもどういう被害者に対してどういうサービスや支援をするのか、その中でこういう弁護士のどういうサービスについてどこの範囲で認めるのかと議論がされるべきということである。
(構成員) 今度参加制度とか成果を利用する制度というのができてくる。これもある程度やってみないとわからないところあるのかもしれないが、その中で今の刑事と民事の仕分けであるとか、それから法律サービスの内容というのもいろいろ決まってくるんだろうと思うが、これらの点については構成員あるいは日弁連の方からもいろいろなご意見を承りながらやっていかなければならないと思う。私自身はよく分からないところがあるので、その辺をいろいろと教えていただきたいと思う。
 1つ質問であるが、先ほど説明者からご説明のあった法律援助事業の実績のところでマスコミ対応というのがある。これは先ほどご発言があったように大切な話で、被害者にとってはここら辺をぜひいろいろやっていただきたいというニーズは大変強いのがある。ただ、助けてもらう内容は法律行為なのか事実行為なのかというのは本当に難しい話で、弁護士が行うからそれはある程度法律的な行為ということになるのかもしれないが、そこの切り分けというのはどこまで厳密でないといけないのかという点はいかがか。ジャンル的に書いてあるが、法廷での支援とか示談とか閲覧・謄写とか、そういう項目ごとに弁護士に働いてもらうことは随分あるだろうと思うが、これは法律行為で、これはいいけれどもこっちは違うというところを書くとするとどういう書き方になるか。この辺何か構成員は何かご意見あるか。
(説明者) 今のご質問はとても難しくてなかなか正確に答えがたいが、現在の総合法律支援法で書いてあるいわゆる自主事業の受託に関するところ、30条2項の条文の書き方を見ると、要するに法テラスの方で受けることができる業務というものは、法律事務を契約弁護士に取り扱わせるというところが主になっている。ただそれに主たる法律事務の取扱いに付帯する程度であれば受けられるという枠組みが既にある。整合性という観点からいけばそのあたりで説明するのは一番楽である。
 日本司法支援センターというのはどうしても司法に対するアクセスということを中心にしている。法的な支援を中心にしているので、事実行為だけの支援を表へ出されてしまうと所掌事務ではないのではないかと言われがちであるので、やはりどのような公的支援が必要かということをご検討いただくときにはこれは弁護士に支援してもらうことが不可欠であるとか最善であるとかそういう要素に留意すべきであろう。それがなぜかというとこれは法律事務が中心にあるからであるという考え方から入るのがよい。
 ただ、先ほど構成員からあったように、現実問題としてこのパッケージというか、全体としての支援というお話があることも事実である。しかしながら、現状を申し上げるとそのうち民事的な部分は民事法律扶助のところで何とか一生懸命カバーしているというところで、その限りで刑事的な観点で手薄ではないかということについてはこれは検察庁の職員その他関係機関の者が公的な立場できちんと対応するということでカバーするという枠組みが現状あると思う。
(構成員) もう1つ質問である。そうすると、例えばマスコミ対応という問題で、仮処分をかけていくというようなことがはっきりしないと、法律サービスの場合でも、委託されてその場面によっては法律的なアクションもとり得る、とらなければならない場面があるという場合はひっくるめて弁護士の行うべき法律サービスの中に入ってくる、付帯業務の方に入ってくると、そういう考え方でよろしいのか。
(説明者) 一連の法律事務の取扱いに関して、例えば先ほど記録の謄写というお話もあったけれども、記録の謄写の申請自体はほとんど事実行為的なもので、誰がやってもきっと同じ結論になるべきことである。しかし、何のためにそれを求めるのかというと、それを見て損害賠償請求の当否の法的問題を検討するという観点から説明していただくとそれもプロセスの中に入ってくるということはわかりやすいということにはなる。
 ただ、マスコミ対応というのはそういう意味でいうとやや特別な問題があるということで、即答いたしかねるところである。
(構成員)  余りこれを突っ込んでも仕方がない。
(構成員) マスコミ対応ということでは、実は私は事実と違うことを書かれたので弁護士にお願いして訂正文を出してもらったということがある。そういうことがもし法律扶助協会の方でやっていただけるのであればすごくありがたいことだと思うし、特にやはり加害者は平気でメディア等の問題で損害賠償訴訟を起こしたりするが、被害者の場合というのはなかなかそういうことができない。私はたまたま民事裁判を起こしていて担当の弁護士がいたのでその担当の弁護士に実はこういう報道被害もあったということで対応してもらえたが、なかなか被害者が自分からメディアとのトラブルに対して対応してもらうということがなかなかできないので、やはり法律扶助協会の方でそういう対応していただけるとすごくありがたいと思う。
 それは何回も何回も続くことではないと思う。私もそういうことを一回経験してからやり方がわかって、やはりそういうことが一回学べるわけである。だから、一回そういう支援をしていただくと、こうすればいいということがわかる。だから、一度でもそういうことをしていただくと実際の間違えた文章を訂正することができるし、そのことによって被害回復できますし。あとはもう自分で何かやっていくということもできるのでぜび被害回復のきっかけにもなるし、法律的なことだと私は思っている。
(構成員) とにかくマスコミ対応というのは非常に大切な場面であるし、法律的にきちっと整理して、弁護士の出番だろう。ただ、どの部分が公的な費用を出すような話になるのかというのは、なかなか具体的なケースに即さないとわからないというのもあるのかもしれない。
 ここはどういうことになるか、もう少し事務方ともよく相談をして、どういう形でこれをまとめるのかという点はよく検討してみたいと思う。今ここで何かご意見があったら承る。その方向性だけでも示すようなご意見を承るとありがたい。
(構成員) 一番わかりやすいのはAさんの問題だと思う。ああいうときに被害者はどうしていいかわからないので、そういうときに対応していただけるということが大事だと思う。
(構成員) やはり公的弁護士が必要である。今まで出た問題もそうであるが、新たに今度は被害者参加制度になると被害者によっては刑事も民事も分からないし、聞かれたことにもどのように答えればいいかも分からない。支援センターでいろいろな被害者の方と連絡をとっていると刑事に関しては、それは担当の検事に聞けばいいということであっても実は被害者の方にとって公的なところというのは敷居が高くて実際には連絡をとることさえもできない。そういう被害者の方が、参加制度ができてもそれが使えない、使えるような精神的な回復がなされていない、あるいはどう対処すればいいのかがわからないということで使えないということになると被害者のその後の回復にも影響してくる。
 とにかくある制度はきちっと使えるということが被害者の方にとって必要なこと。現在例えば証言であるとか意見陳述という制度があるが、初めは皆さん躊躇する。それでもそれを実際に使った方に聞いてみると、使って本当によかった。意見陳述ができたということが1つの自分の自信になって次の人生をもう一度考えていこうという気持ちになれたのでよかったということをほとんどの皆さんが、否、全員の皆さんがそうおっしゃる。
 今回の公的弁護人も、もちろん民事にもどれぐらいかかわるかということは細かい作業の上での問題があるのかもしれないが、参加というあたりで全員の被害者の方が使えるようにその周りの環境を整えていただきたい。そのためにはやはり法律の専門家の弁護士がかかわらないと、きちっとそれを使っていくということができないと思うので、この制度についてはぜひ入れていただくという形での検討を進めていただきたいと思う。
(構成員) 何らかの形でこの公的弁護人制度というのを盛り込んでいくということか。
(構成員) それはぜひお願いしたいと思う。
(構成員) その点については、この検討会でもコンセンサスがあるんだろうと思う。ただ、どう書くのか。民事と刑事をどこで分けるのかというような問題もある。これは難しいが、今構成員が言ったようなニーズはあるから、何らかの形で整理しながら書いていくべき問題である。
 それとアドバイザーというのもその前にやはりあり得るか。
(構成員) 当然早期援助団体が全都道府県にできて、被害直後からの支援というものができると、被害者の方たちの不安を取り除いて一緒に支援を行うということはできるが、それでも法的な部分あるいは法的な情報提供というのはとても微妙な部分もあるので、そこはやはり弁護士の役割というものも大きいものがあると思う。そういう点で支援センターあるいはアドバイザーがいるからあるいはコーディネーターがいるからというだけで選任の弁護士がいらないということには全くならない。それぞれの制度が十分にできた上でも役割分担ということは出てくると思う。
(構成員) それと、検察官にもある程度援助してもらわないと、訴訟参加などの場合。
(構成員) それはもう基本的なもので、被害者の方は直接連絡をとるのは検事であるが、それでも被害者の方によっては直接とるということがなかなかできないという場合、すぐ身近なところで安心をして相談ができる弁護士がいれば、代理人として弁護士にお願いすることができるので、参加してよかったと思い、被害回復に大きく役立つと思う。
(構成員) ほか、ご意見あるか。
(構成員) 法務省にもう一度確かめたいが、今度訴訟被害者参加制度ができて、付帯私訴もできるということになってくると、かなり刑事裁判にかかわっていくわけであるが、被告人側は国選弁護人が出てくるが、当然被害者参加人あるいは付帯私訴原告にもそういう公費による弁護士ということは想定できる。その辺のところは構成員はそういうものの必要性ということはどういうふうに考えておられるのか。
(構成員) 今回の新たな制度のうち、先ほども申し上げたが、損害賠償請求に関して刑事の成果を利用する制度の方については基本的には民事裁判と同様の性質を持つもので、民事法律扶助の枠組みで検討するのがなじむ話ではないかという感じがする。
 他方、もちろん参加は刑事の手続そのものであるので、そういうものとして検討する必要があるが、今回の制度は、今の議論の中にも出てきたが、検察官が、被害者が適切に参加できるように十分コミュニケーションをとる、あるいは被害者に対してサポート的な立場をとるということがある意味では前提となっているということからすると、もちろん弁護士が被害者の方についていただくということにもちろん意味があるが、制度の前提として検察官がコミュニケーションをとるあるいはサポートをすることをどう考えるかという問題があると思う。
 要するに、公的費用で弁護士をつけるということになると、まさに公的機関である検察官の役割との公的費用としてはどういう整理がなされるのかということは考える必要があるのではないかと感じている。
(構成員) 検察庁内部のことなので詳しくは分からないが、少なくとも私が経験したところでは、検察官も忙しくて、しかも現在のように公判前整理手続から集中審理ということになるとそれだけでも相当検察官の負担、集中的にやっているので、被害者の方が直接検察官のところへ出かけていってあれを質問してくれこれをやってくれということはなかなか言えるような状態ではない。私たち弁護士が付き添って検察官のところにお邪魔していろいろお話を伺っても、あれやってくれこれやってくれと差し出がましいことを言えるような状況ではとてもないというふうに私は感じている。
 だから、確かに検察官の方ができる限り被害者のことも考えながら被害者参加も進めていくというその言葉自体はありがたいが、現実問題としてはなかなかそういうふうにいかないのではないか。やはり被害者参加代理人というものがきちんと弁護士がついてやらなければなかなか進まないのではないかというふうに感じている。
(構成員) この問題はもう一度議論しなければならない問題であろうと思う。
 ほかにないようであれば次に移りたいと思う。よろしいか。
 それでは、次は損害賠償債務の国による立替払及び求償の是非の検討の件である。これは犯罪被害給付制度あるいは健康保険制度あるいは労災の制度といった現行制度の中で加害者に対する求償権を行使する立場にある警察庁、厚生労働省、そして求償訴訟において関係する法務省からご説明、ご意見をいただきたいと思う。
 構成員からお願いする。
(構成員) この求償の現状あるいは問題点等についてご説明したいと思う。これまで求償権を行使した例としては、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などの4事件の被害者や遺族に対して給付金を支給したことに関して、オウム真理教の破産管財人に対して債権の届出をした事例がある。
 それからこのほかに、昭和63年に発生いたしました殺人事件の遺族に対して給付金を支給したけれども、これに関して求償権を行使して納入されたという事例がある。
 この求償権行使の実効性及び問題点ということであるが、やはり債務者が特定できた事案であっても賠償能力がないということで求償権を行使しても債権の取立が困難な場合が多いということである。もともと犯給制度というのは加害者が無資力であって何らの賠償、補償も受けられないという方、そういう状況にかんがみてつくられた制度ということでもある。
 それからまた、精神障害のために自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を与えたものについては、一定の場合を除いて不法行為の損害賠償責任を負わないとされているので、求償権行使の対象外となっている。
 それからまた、犯罪被害であることは明らかでも加害者が不明の場合など、債務者を特定することはできないといった場合もあるということが挙げられるのではないかと思う。以上である。
(構成員) 構成員からお願いする。
(構成員) 現状も先ほど申し上げたが、求償自体はなかなか苦労しているというのが実情である。ただ、労災の場合に関して申し上げれば、大部分が先ほど申し上げたように交通事故であるので、その件に関してはある程度の回収ができている。当該年度に債権立てをしている、すなわち前年度からの繰越も含めまして約40%強が回収できているという状況である。ただ、交通事故以外のケースではなかなか回収は困難な状況であるということが現状である。以上である。
(構成員) 構成員。
(構成員) 法務省の場合は直接所管する範囲で求償するという例は余り多くないが、証人等の被害についての給付に関する法律というのがあって、証人等に出ていただく方の被害の関係で給付をして求償するというものであり、事例は非常に少ないが、ないわけではない。調べてみたところ、最近の事例でも実際に給付を行って求償のための債権管理を行っているということがある。ただ、実際には加害者が受刑中であったりしてその求償を実際に実現するというのは難しいというのが実情のようである。これはほかの省庁と同様であろうと考えている。
 この損害賠償債務の立替求償の問題についても、求償権を国が取得してそれを行使するという関係に立つ場合は、その限りで国が債務を負担しているということで、加害者の資力がないあるいは乏しいということになる場合には結局その負担を国民全体で負うということになるわけである。この間、この検討会で議論をされてきた給付金の支給、名称はともかくとしてその給付金の支給のさらに延長線上にある問題としてまさにどういう範囲で公的な負担をするのかということで議論する話ではなかろうかと感じているところである。
(構成員) 求償の現状というのは大変厳しい。実効性については難しい問題があるということについては三者三様のご発言があったと思う。この点につき、お願いする。
(構成員) 求償について非常に国の方もご苦労なさっているということが、現在は被害者が個人で苦労している。ここのところを何とかしようということで基本法ができたわけである。特に構成員からの最後のところで、犯罪被害であることが明らかでも加害者不明の場合というのは本当にやられ損でいいのかと、こういうふうに被害者をさせておいていいのかという問題があると思う。だから、そこら辺を何とかしていただきたいというのがある。
 それからあと、地下鉄サリン事件の場合で言えば、非常に努力に努力を重ねてここの12年まできた。そのことに関しては先ほどお配りした最後の声明文の中に入れている。被害者自身と管財人と弁護団が本当に国の議員立法で3つ法律をつくっていただいて、それでもなお現在オウム破産事件に関して34%しか賠償がないというようなことで、残りをどうするのかという問題がある。もう打つ手がない、お手上げ状態ということがある。これは私たちがある程度まとまっていて管財人、弁護団がついているからここまでできたのであって、個々の被害者の人たちは恐らくゼロに近い。
 加害者が服役していたらとれない、その先にもっとひどい事件で死刑になるような事件だったら加害者は死刑になるわけであるからもっととれない。そんなことで被害者が泣き寝入りしなければならないということはやはりこの基本法ができたことによって避けられなければいけない事態だと思っている。
(構成員) 特にご発言ないだろうか。この点については、いろいろなご発言を踏まえてまとめていかなければならないと思う。
 ただいま構成員からの話があって、その実情はよく分かるが、損害賠償の請求については1つの法律の仕組みというものがきちっとあるので、国がどこまで立替払をできるのかということはよく検討してみなければならない問題があると思う。どういう形になるかまたお諮りをいたしたいと思う。
 被害直後及び中期的な居住場所の確保というものの検討を行いたいと思う。
 この被害直後の居住場所の確保については児童相談所、婦人相談所の一時保護等については構成員が対応しているところである。また、構成員が平成19年度の予算でこの項目に関する措置を行うと伺っている。それぞれの構成員から、それらの状況についてご説明をいただきたいと思う。また、中期的な居住場所の確保については基本計画検討会において構成員からいろいろご意見・ご指摘が出ているところであるので、そのご発言のご趣旨について構成員からここでまたご説明いただきたいと思う。
 まず最初に構成員からお願いする。
(構成員) まず、児童相談所において一時保護をし、その後個々の状況により児童養護施設であるとか乳児院あるいは里親、あるいは自宅へ戻ってもらうケースもあるが、そういう形で対応しているところである。現状を申し上げると、我々も一生懸命取り組んでいるが、残念ながら非常に痛ましいケース等も起きたり、それからまた市町村によっては必ずしも十分な一時保護施設の整備状況が整っていないというところもあったので、今年度の補正予算で緊急に手当をしてそういう施設整備も含め緊急に対応できるところは今現在も一生懸命取り組んでいるという状況である。
 それから、DV等の被害者等への婦人相談所の対応であるが、これも婦人相談所を含む配偶者暴力相談支援センターにおいて相談を受け、一時保護の必要な方については婦人相談所に併置されている一時保護施設あるいは民間シェルター等への委託も含めまして一時保護を行っているわけである。
 一時保護の後の対応であるが、中期的な居住の場ということにつながるわけであるが、それぞれの方々の状況に応じて単身の方は婦人保護施設あるいは母子の方は母子生活支援施設、あるいは個々人の状況により自立ということで就職しあるいはアパートを借りてとさまざまなケースがある。
 それで、先ほども少し申し上げたが、そういう自立に向けてアパートを借りて就職するという方について調査の結果、身元保証人が必要なケースがあるということで、それを援助するような予算を本年度盛り込んで、この対応も強化するようにということで努めている状況である。以上である。
(構成員) 構成員。
(構成員) 当方においては平成19年度の予算にこの被害直後及び中期的な被害直後の居住場所の確保ということで予算を盛り込んでいるところで、要求額は3,200万である。これは犯罪被害者等の中には自宅が事件現場になったということで物理的に住むことができないという場合もあろうし、あるいは再被害の危険があるというような場合もあるということであるので、犯罪被害者等の被害直後の保護及び再被害の危険を回避するということで、一時的な避難場所を借り上げるための予算ということで要求をして盛り込まれているという状況である。以上である。
(構成員) これの運用状況というのはまだわからないか。
(構成員) これは19年度予算要求であるので、まだ予算成立していない。
(構成員) それでは、構成員、基本計画検討会のときにご発言いただいているので、特に中期的な居住場所の確保ということについて、どういうご趣旨であるのかご説明いただけるか。
(構成員) 例えば今の構成員の方からお話ししてくださったようなことが主なる理由である。
 なぜ公的なところかというと、まず安心感、安全感というあたりでも被害者の方は一度被害に遭っていると、やはり安全なところに入りたい。ただ、経済的なゆとりがないとそういうところは見つけることができないので、やはり公的なところへ入るということが必要になる。
 それと、なぜ中期的なものかというと、犯罪被害に遭った方たちが自分が本当に被害に遭ったんだということを茫然自失の状態からまた現実に引き戻される、そしてこれからの生活を考えなければいけないというときは、かなり月日がたっている場合が多い。そのときに直後の住宅があってもまたすぐにそこから出なければいけないとなるとそれからの生活の再建という意味ではなかなかもう一度再建をするということが難しいので、直後だけではなくてある程度生活の再建も果たせることができる、せめてそれは人によってさまざまで一概には言えないが、その方の状況に応じて2年とか3年とかはせめて家賃の心配もなくそこで生活できる、あるいはそこで相談もできるというような場所が必要だと思い、問題提起させていただいた。
(構成員) 今、構成員からあった2年、3年という、そこまでお考えになった予算措置であるか。
(構成員) 一応予算要求においては基本的には1年間というのを基本として考えて要求をしたところである。
(構成員) 構成員、1年では難しい場合もあるというのは何か。
(構成員) これは本当に被害者の方それぞれ違うので、1年かからないで大丈夫な方もいれば、やはり2年、3年たっても精神状況も悪くて、元の生活に全く戻れないというような方もいらっしゃるので、やはり個別ごとに対応するということも必要なのではないかと思う。
(構成員) この点について、ほかどなたかご発言あればどうぞお願いする。
(構成員) 私、京都の支援センターに関係しているので、先ほどの構成員のお話のように児童とか女性のそういった一時的な住居についてはそれぞれ工夫されているが、男性、お父さんと子ども、そういったケースについてなかなか確保が難しいという実情があるように聞いているが。
 要するに、そういったことも想定した住居確保をお考えなのかどうかということをお聞きしたい。
(構成員) 政策自体が歴史的な経緯もあり、婦人の保護から始まり、もう1つは児童の保護から始まっているので、男性を直接的に保護するという発想がそもそも基本的には我々の今行っている政策の中ではない。今お話があったように、親子の関係で恐らくお父さんとお子さんのケースのところで、少なくともそこで児童の方が何らかの形で非常に保護する必要があるということになれば児童相談所の方で対応は可能だと思うが、男性の方が保護が必要だということになると、特にこのような形での施策はないが、一般的なもので言えば、例えば住むところがないような形だったらいわゆるホームレス対策のようなそういう一般対策はある。なかなかおっしゃるようなケースに当てはまるような、恐らく今の施策の中ではぴったりするのがないのではないかと思う。
(構成員) ぜひそういう実情も十分考慮しながら進めていただきたいと思う。
(構成員) 実情の把握に努めて、そういう男性の方でも手厚く保護しなければならない現状が実態として、我々は今のところはそのようなケースは余り聞いたことないが、もしそれが深刻な問題としてあるのなら今後の検討課題として考えなければならないと思う。
(構成員) 構成員、杉並区では条例ができて少しカバーする話になるのか。
(構成員) かなりカバーできると思うし、本来は身近な都道府県、市町村レベルでこういう直後あるいは中期に住むところがあって生活の再建を果たせるような場所があるといいと思うが、現実問題としては多分今杉並区だけなのではないか。
 被害者支援条例というものができて、直後から中期に、あるいは被害直後からの付添い支援であるとかさまざまな支援、あるいは貸付金制度などもあるので、国としてももっと身近なところでもそういう施策がどんどん広がっていくようにと内閣府の方も都道府県の皆さんを指導するということにも力を入れていただければと思う。
(構成員) 杉並の場合は男女関係ないか。
(構成員) 関係ない。被害に遭った方が対象であるので。
 もう1つ追加させて言わせていただくと、今まではどちらかというと女性がDV被害ということが圧倒的多数だったかと思うが、最近は男性のDV被害という相談もあるので、その点も社会の変化を踏まえてまた新たに制度の方に取り入れていっていただければと思う。
(構成員) 杉並区の例は高齢者に準備されている住居をケースによって犯罪被害者にも適用されるというように聞いているが。
(構成員) 確かにどういうところを確保するのかという話し合いの段階では既に区として確保しているようなところで、今おっしゃった高齢者住宅ということもあったが、決してそれだけではなく、何ヶ所かある。1つは、防火住宅を建てる間、入居できるアパートもあった。しかし、その法律がなくなったらそこはもう空き家になったままということも被害者支援条例をつくる段階で分かり、そういうところにも入れるというような幾つかの選択肢ができ上がっている。
(構成員) これは地方公共団体にもいろいろやっていただくというのも1つのやり方だと思う。
(構成員) 構成員に確認である。ご存じのように国土交通省で公営住宅の優先入居という制度のガイドラインをつくって地方公共団体に流していて、我々も今地方公共団体にどうやったらもっと被害者支援で頑張ってもらえるかということでいろいろ新しい制度なども検討中である。公営住宅ということになると全く無料というわけにはいかないが、廉価で一応中長期的に住居が確保できる。それでまだ足らないケースもあり得るということか。それともある程度はカバーできるということでよろしいか。
(構成員) 地方公共団体レベルでしっかりとそういう制度ができ上がって専任の相談窓口もあって、そこへ被害者の方が行けばただ単に家があるということだけではなくて、さまざまなサービスも行ってもらえるような制度が整っているのであればかなり有効かと思う。そうなるまでにはかなりの年月がかかるのかと思うので、それは関係する省庁で速やかに進めていっていただきたいことだと思う。
 そして、例えば東京都の場合、いくら国土交通省の方から被害者の方は公的住宅に優先的にという話がいっても、なかなかまだそういう制度ができるようには制度は動いてはいない。図体がとても大きいのでそんな簡単には動けないということを最近も言われたので、せめてある制度はすぐに使えるようにぜひ動いていただきたいと願っている。
(構成員) 構成員が19年度からやろうとしていることが、きちっと実行されていけば大体いい、あとは年数の問題だと、こういうことでいいか。それとも何か、構成員でやることでない何か別のことがあるということか。
(構成員) それについても多分この検討会で詰めていく必要が出てくると思う。ただ、直後に構成員がこういうような住宅を準備をしているということは、直後に被害者に接するのは構成員ですので、構成員がこういうものを準備をしているというだけで被害者の方はやはりとても安心感を持つことができると思うし、よい対応を繰り返して受けるということはその後の被害回復にとってはとても大きなものがあるので、ものすごく意義が大きいものだと思う。
 ただ、いつまでもとなるとそこは大変難しい問題もある。1年で、それできちっとまた社会復帰していくことができる方にとってはこれがあれば大変役に立つと思う。それだけで足りない方にはまた地方公共団体等の力を借りるという連携の部分がとても大事になってくるように思う。
(構成員) 今のご発言を踏まえて我々の提言案というのをまとめていきたいと思う。ほかに何かあるか。よろしいか。以上のご意見を承った段階で私どもに与えられた課題については一応ひとあたりのご発言・ご検討をいただいたということである。
 次回の検討会から中間とりまとめ、提言というもののたたき台の検討に入ってまいりたいと思う。そのたたき台と申すのは何か案が1つないと議論が進まないので、ここは構成員私案として次回検討会までに構成員の皆様にお示しをしたいと思う。なるべく5月までに最終的なとりまとめをしたいと思うので、期間的には非常に詰めたご検討をいただくことになるが、可能であれば次回検討会までに、構成員私案をお示しするので、事務局宛てにペーパーであるいは口頭でも結構だと思うが、ご意見をいただいておくと、次回の検討が効率的に進むのではないかと思うので、構成員の皆様方のご協力をよろしくお願いする。
 以上、大体ご了解いただいて、よろしいか。なるべく早く構成員私案を出し、構成員の皆様方のご意見をきちっとした形で承ってまいりたいと思うので、よろしくお願いする。



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