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犯罪被害者等施策
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経済的支援に関する検討会(第12回)議事要旨


(開催要領)

日時:平成19年2月19日(月)15:00~17:58
場所:合同庁舎4号館共用第2特別会議室
出席者:
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金常務理事
座長代理瀬川 晃同志社大学法学部教授
構成員飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
岩村 正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
白井 孝一弁護士
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫元オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
巽 高英警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理出席振角 秀行金融庁総務企画局参事官
中野 雅之厚生労働省政策評価審議官
安井 正也経済産業省商務情報政策局消費経済政策課長

(議事次第)

1.開会

2.第14回検討会の日程調整

3.経済的支援制度のあるべき姿についての検討(7)

4.その他

5.閉会


(配布資料)

資料1論点対応叩き台資料  [PDF形式:29KB]
資料2内閣府資料  [PDF形式:14KB]
資料3税制関係資料  [PDF形式:261KB]
資料4支援のための連携に関する検討会における検討状況  [PDF形式:21KB]


(議事内容)

○経済的支援制度のあるべき姿の検討について
 概略以下のとおり議論が行われた。
(事務局) まず、資料1であるが、構成員が私案として作成した論点対応の叩き台である。
 資料2は、事前に配布させていただいたが、試算シミュレーションについて構成員と事務局との間ですり合わせを行い、その結果について論点の集約結果として作成した資料である。ご議論をいただければと思っている。
 なお、補足として一番最後のところにグラフになっている資料が、この論点の参考資料ということで出てきているので配布している。構成員のシミュレーションと若干違うところもあるので参考資料ということでご了解いただきたい。
 それから、資料3も事前に配布しているが、前回構成員からご指摘のあった税制に関するご質問について国税庁へ問い合わせをした。その結果、資料3の1ページ目であるが、国税庁の方からまず一般論として、ある年に一定以上の収入があった人について、収入からかかった経費を差し引いた金額に課税されるというのが1つ目の原則。その上で、納税者の事情を考慮して一定の事由による資産減少とか経費外の支出について控除する制度があるというのが2つ目の原則。一般論であるが、そういう原則があるということである。
 財産犯の被害についてはその1の原則では関係ないが、特殊な事情ということで2の段階で、財産の減少ということで雑損控除がなされる制度があるということである。
 それから、身体犯の被害については、犯罪被害者に限らないが、亡くなったりあるいはけがをして収入が喪失、減少した場合は原則の1の段階で評価をされるということで、これは前回もそういう説明であったと思う。
 それから、治療等による支出については2の段階での医療費控除の制度があって被害者にも当然適用になるということである。
 それから、障害者控除と、配偶者が亡くなった場合の寡婦・寡夫控除というのがあって、これについても被害者等に適用がなされるということになっている。
 なお、最後に、葬儀費については相続税で相続財産からの控除制度があるということである。
 身体犯の被害者については、寡婦・寡夫控除、障害者控除、医療費控除等によって2の段階での控除がなされ、これに加えての被害者控除という話であったかと思うが、現段階ではなかなか難しいのではないかということであった。
 制度の詳細等については別添の資料があるので、ご参照いただければと思う。
 それから、資料4も事前に配布しているが、今月の2日に開催した支援のための連携に関する検討会の第8回の会合で配布された事務局の資料のうち、本検討会に関係のあるアドバイザー制度、連携の検討会ではコーディネーター制度というふうに呼んでいるが、これに関する提言部分を抜粋したものである。また、この点の議論がなされるときにご説明申し上げたいと考えている。
 資料については以上である。
(構成員) それでは、本日の検討に入る。ただいま説明のあったうち、資料3については構成員からお尋ねがあった件に対する答えである。一度お読みいただき、何かご意見あればまた後刻ご発言をいただきたいと思う。
 資料2の論点集約結果というものについてはただいま説明があったとおりであるが、前回の検討会で示された2つの試算シミュレーションについて、試算の背景にある考え方の相違点を明らかにした上で検討の対象とすべき論点を事務局が集約し作成したものである。
 この資料に沿って、これまでも検討した論点であるが、中間とりまとめ作成に向けての意見集約のため今一度構成員の皆様からのご意見をいただき検討を進めたいと思う。
 事務局から、説明をしていただく。
(事務局) 先ほど申し上げたように、事務局と構成員との間ですり合わせを行った。試算についてすり合わせをするということであったが、その数字というのは全く概算にすぎないので、数字の突合せということではなくて考え方の相違、それぞれの案の問題点はこの辺にあるのではないかということを明確にして論点を集約しようということで意見が一致した。
 この方針に基づき行った集約作業の過程でかなりの部分の合意ができた。最終的にちょっと違うという部分、議論していただくべき部分というのがこの5つの論点に集約されたところである。それぞれの論点についてはそれぞれのところで議論をお願いしたいと思う。
(構成員) この論点の集約結果についての今のご説明に、何かご質問はあるか。
 それでは、資料2に沿って検討を進めたいと思う。
 この案は事務局と構成員との間ですり合わせをしていただいているので、主としてはほかの皆様方にどんなご意見をお持ちかということを承っていけばいいのではないかと思う。
 まず、論点1として書いているところであるが、ちょっと読んでみると、若年重度後遺障害者に対して、手厚くなるような給付制度を確立すべきではないかということである。現行の犯罪被害者給付制度における障害給付は、50歳代の被害者に対する給付額がピークとなるよう設計されている。しかし、重度後遺障害者に関しては若年層被害者こそ長期にわたる負担があり、給付の必要性が高いものと考えられる。
 重度後遺障害者に対する給付額の引き上げに際しては、若年層に対する給付額についても最高額を自賠責並に近づけ、最低額もこれと連動して引き上げるような制度設計とすべきではないかというのが構成員のご意見である。
 この点につきご意見があれば、ご発言をお願いする。
 構成員、何か補足的にご説明することはあるか。
(構成員) 今ご説明があったように、すり合わせをさせていただたときに、前回までに出されたこちらの想定の金額と、それから構成員の方から出されたシミュレーション、試算の金額で大分前回すったもんだしたが、金額はあくまで両方とも想定でやっているので、金額そのものをすり合わせても余今のところあまり意味がない。むしろ制度の設計の仕方についての考え方が重要ということであった。その点はそうであるということで一致した。
 しかも、余り細かいところまで全部やれないということで、ある程度論点を集約してということでこの5つ整理していただきました。では、これを主にやって、被害者の方が訴えておられるかなり中心的なところであるから、それを5つぐらいに絞ってという形にさせていただいたので、この集約そのものについては私も間違いないというふうに思っている。
 それで、構成員の先生方も大体おわかりとは思うが、さらにわかりやすくするために、今日はお手元にグラフにして一目でわかるようにしている。構成員私案の試算とかそういう計算そのものというよりも仕組みでどうなるかというふうに見ていただきたいと思う。そこのグラフ、例えば1級の後遺障害の補償金だと、ねずみ色のもので棒グラフになっているのが現在の犯給法である。
 そして、自賠責の政府保障事業の逸失利益の計算の仕方だとそのグラフのおうど色のような形になる。
 あくまでこれは仮という話であるが、現在の自賠責の制度をそのままにしてそれを倍額、乗数を倍にしたらどうなるかというのがその折れ線グラフになっているものである。このように年齢で差が出てしまうというのはやはり被害者の実情に合わないのではないかという面がかなりあって、資料2の1として指摘させていただいたのは、やはり新しい制度としては年齢によってそういう大きな差が出てしまうような仕組みは変えるべきではないかということで、若年層に対する給付額について最高額がこのおうど色の部分に近いような制度設計に変えていただきたいということである。
(構成員) ご意見があればお願いする。
(構成員) 理論的な問題であるが、論点の集約の1のところで、若年障害者の方に手厚くするという発想自体はよくわかるけれども、そうすると逸失利益の賠償という考え方から離れるということであるか。つまり、自賠責にしても何にしても基本的には、民事損害賠償の考え方であるから、要するに逸失利益についてその損害を賠償する。したがって、若年者の方が低く出るというのはこれは労災保険も同じであるが、ベースとなる賃金が従来の日本の賃金体系の下だとどうしても若年者の方が低くなるので、その結果として逸失利益という考え方をとるとどうしても若年者の方が低く出てしまうということだと思う。
 この1の考え方をとるということは、今度、もしこういう制度を取り込むということにするのであれば、それは要するに逸失利益という考え方ではなくて、要するに重度障害者の方の介護その他にかかる費用というものなどをよりみましょうという発想に切り替えるということのような気がするが。
 その辺はどういうご理解なのかというのを伺わせていただければと思う。
(構成員) 逸失利益の考え方でいけば、まさに若年者の方が金額は高くなる。だから、大体50歳の中くらいまでは逸失利益だけで4,000万円を超す、そういう計算がある。逆に若年者の方を高くするというのは言い過ぎであるが、若年者も同等に高くしてほしいという考えはむしろ我々としては逸失利益の考え方に近いものである。
(構成員) 関連して私から質問であるが、年齢の要素というのを考えないで負担の軽重で見る場合というのはわかるが、いろいろな制度設計する上で年齢の要素というのを全くなくすというのもなかなか難しいのではないかと思う。その点、負担を重点的にというプライオリティの問題だけであるか、それとも一切年齢は考えないで基本的に負担があるかだけを考えた方がいいか、その点の割り切りはどんなお考えであるか。
(構成員) そのときに細かいところまですり合わせを、この年齢ならこのくらい、この年齢ならこれくらいというところまですり合わせをしたわけではないが、若い人はそれだけもし重い障害を負った場合にずっと長い期間その障害のままずっと過ごさなければならないわけである。それで、今言ったように逸失利益が大きくなるというのとその家族の負担や回りの人の負担も非常に大きくなるわけである。
 もし年齢でということであれば、例えばの話であるが、65歳ぐらいの方がもし機能障害を負ったとすると、直ちに介護保険の適用もあるし、ある程度もう仕事もリタイヤしておられて公的な年金の方も対象になっておられるだろうし、寿命も短い。そういうことになれば、もし年齢によって差を設けるとすればそういう高齢者の方については若干低くするということもあり得るかもしれないと思う。
(構成員) 私もこの1で言っておられることは全くそのとおりで、基本的にはこういう考え方でやるべきではないのかと思う。ただ、その場合、実際に、先ほど来構成員が言っておられるように、具体的に当てはめていくらくらいになるのかというのはもう少し詰めて試算をやらないとどうにもならないことでもあるので、そこは置くとして、基本的な考え方としてはこういう考え方で、重度障害者に対する給付金の引き上げというものは考えていくべきだという点は、この間からずっとここで議論しているところでご異論というのは余りないのではという感じがする。ただ、具体的にいくらになるかというのが問題である。
 特に、この参考資料は非常にミスリーディングなところがある。例えば1級の後遺障害者の補償額の上限額と書いてあって、それでこの薄いブルーで書いてあるところで、構成員案として20歳だと1,715万円というふうに今のところが上がってきている。これは要するに上も下も倍にしたらこうなるというだけの話である。これが私の構成員案ということであるが、私の考え方は決してこういうものではない。上限も下限もかさ上げをしていく過程でその額は上がってくるであろうといっているだけである。その中で、いくらどう当てはめていくのかというのは別の話である。この間から構成員が盛んに引用しておられるAさんとおっしゃる方のように大変お若いけれども重度の負担がかかってしまっている人については1,700万円といわずにもっと上の方でカウントしていくという算定をしていくべきではないだろうかという基本的な考え方では私も変わっていないわけである。ここにある1,715万円ということは、計算したことも全然ない。それが構成員案だという形になるのは私の考えより随分前へ進んでしまっている。いろいろなところでご説明をしていただく場合には、私の案としてはそういうことであるということは付言をしていただきたいと思う。
 いずれにしても私としては、この1に書いてあるような基本的な考え方、このとおり答申案にするかどうかはまた皆さんにお諮りしないといけないと思うが、重度後遺障害者に対する給付制度のあり方というのはまさにここに書いてあるような若年者の負担が多いものについては多くするという考え方で考えるということについてはそのとおりだと思う。
 ほかの構成員の皆さん、いかがであるか。
(構成員) 考え方そのものは私もこれでいいと思うが、ただ、その基礎となる部分は整理しておいた方がいいのかと思う。というのは、この書きぶりを見ると若年層被害者こそ長期にわたる負担があり、給付の必要性が高いという書き方になっているので、そうすると逸失利益の考え方ではない。だから、そこをどういう考え方で若年の重度のところを手厚くするのかということは整理しておいた方が、全体の制度設計の問題だと思うので、その方がよろしいのではないかと思う。
(構成員) 私の意見としては、やはり年齢要素というのはもう少し書き込む必要があるのではないかという感じはする。若年者は上げるけれども、高齢者は下がっていくというのもあるかもしれない。
(構成員) 先ほど周りの人が大変だという言い方をしたけれども、具体的にA君のような場合、長年にわたって家族の介護のために家族が大きな損害を負わなければならないというような介護の負担というのは非常に金額的にも大きいとは思う。
(構成員) この犯給制度について確かに実態的にはこのグラフに出ているように若年層については給付水準が低いということであるけれども、これは基本的にはまさに制度設計として被害者が被災年齢当時の勤労に基づいて通常得ていた収入額をもとに給付基礎額を算定していくということに基づくわけであって、最高額もある一方で、収入のない人についても最低額というのを設けて支給をしているということである。
 この最高額、最低額というのは賃金構造基本統計調査というものに基づいて各年齢層ごとに中間的な賃金を得ていると考えられる層の中での上限及び下限に属する労働者の賃金を参考に算定するということである。
 また、先ほどもお話に出たが、労災保険制度あるいは公害健康被害補償制度などにおいても基本的には被災した当時の平均賃金あるいは年齢層別の最高限度額とか最低限度額、あるいは年齢層別の平均賃金をもとに給付額を定めるということで、そういったことから見てこの犯給制度というのも基本的にはほかの公的給付制度と同様の考え方でできているということである。
 ただ、そうは申しても今ご指摘の点があるので、この重度後遺障害者への給付水準の引き上げについては、もちろんその財源という問題が必要になってくるが、犯給制度の中で対応するという場合にこの若年層の被害者に対する給付を現状より手厚くしていくということで何らかの方策を講じることができるかどうかということだと思う。今後真剣にこれについては検討していきたいと考えているところである。
 以上である。
(構成員) ほかに何か。
(構成員) 私もこの考え方に基本的にはそれほど依存はないが、基本的な考え方として、いわゆる生活保障的な部分と、それから逸失利益を中心にした補償的な部分という2つの要素で構成されるのではないか。それはアメリカあるいはイギリス、フランス、ドイツの補償制度を見ても、ウェイトは別にして、いずれもそういう要素の構成で成り立っていると思う。
 したがって、私はそういう意味で逸失利益を中心にした補償の部分を中心にして、そして生活保障は扶養家族でありあるいは介護といった面を加味していくという考え方を基本に置くべきではないか。ただ、生活保障的部分についてはここでもご説明があったけれども、国民年金あるいは厚生年金の障害に相当する部分の支給があるので、それも含めて考えていく必要があると思う。問題は、そこでも救済され得ないような方々が対象としてあるのではないかと思うので、そういう点も十分加味した上で生活保障的な部分を加味するという基本的考え方で考えていけば、この構成員が論点整理された部分もかなりクリアできるのではないかというのが私の意見である。
(構成員) 1点だけ追加であるが、労災保険では介護の給付が別途ある。介護保険の対象にならない場合については重度障害者の後遺障害については介護の給付が出る。そういった発想の仕方もないわけではないということだけご参考のために。
(構成員) ほかよろしいか。
(構成員) ここの1のところには特に触れて書いてないけれども、先ほど構成員から収入の問題で指摘されたが、実は専業主婦の方が被害に遭われた場合、収入がないということで一番最低額しか出ないという状態に常に置かれているわけである。この間お話した主婦の方は、専業主婦であるために最低の金額で656万6,000円しか出ていない。
 だから、同一被害、同一補償にできる限り近い形ということでやっていただく場合に、もちろんここでは若年層をなるべく平等にと指摘しているけれども、その収入を基本とする場合でも、専業主婦のような方の場合に、なるべく男女による差別が出ないこともやはり必要ではないかと思う。
(構成員) その点、構成員はいかがであるか。
(構成員) その点についても今後全体の制度設計についていろいろと検討してまいりたいと思うので、今のご指摘も踏まえて考えてまいりたいと思っている。
(構成員) ほかによろしいか。
 それでは、1と若干関連するところであるが、2の論点としてここにお書きになっている点についてお願いする。
 これは被扶養遺族についてであるが、年齢ではなくてやはりこれも負担程度の重いものに対して手厚くするような給付制度を確立すべきではないかということである。現行制度ではやはり50歳代がピークになっている。しかしながら、被扶養遺族が実際に抱える負担を考えた場合、年齢よりむしろ被扶養遺族の数など、置かれた状況の違いによる部分の方が大きいものと考えられる。
 したがって、被扶養遺族に対する給付額を引き上げるに際しては、年齢によって一律に差違が生じるような現行制度を改め、最低・最高額とも、被扶養遺族の数など、置かれた状況によって差違を設け、同じような負担状況を抱えるものに同程度の給付がなされるように改めた上で、重い負担を抱えるものの最高額が自賠責並に近づくようにし、最低額もこれに連動した引き上げを図るべきではないか。
 財源の観点から必要ならば、高齢者(例えば65歳以上)に対する給付額を減額して負担の重い若年層に対する給付財源としてもよいのではないかという整理の内容になっている。
 この点についてご意見があればお願いする。
(構成員) この点についてもどうしてこうなったかということを説明させていだたく。この前の想定予算額の計算ではすべての遺族給付について最高額の計算をしたが、それはグラフでお配りしたような形でほとんどが最高額に達するということを前提にした。もう少し実情を考えて、それならば被扶養家族がいない場合、1人の場合あるいは2人、あるいは2人以上の場合というふうにして、それによってある程度金額の差を設ける、場合によっては非常に高齢の方の場合には先ほど言ったように少し金額に差を設けさせてもらうという形で制度設計することもできるのではないかということである。
 私の方で指摘させていただいたのは、扶養家族あり、なしの場合、被害者が殺されたときには確かに扶養家族という形にはなっていなかったかもしれないけれども、それから間もなくお母さんなりおばあさんなりを養っていくということが期待されているような場合、例えば大学院生が殺された事件で、親一人子一人というような形で、大学院を卒業して就職すれば親は扶養を期待しているということが間近であるというものも扶養家族ありということに準じて同じように被扶養家族ありの補償を出していただけるというようなことはぜひとも考慮いただきたいということでお願いした。
(構成員) これは構成員、どんなご見解であるか。
(構成員) この問題についても基本的に今の犯給制度の制度設計というものは、先ほども申したけれども、ほかの公的な給付制度と同様に年齢層別の最高額とか最低額を定めて、賃金実態を考慮して給付額を算定しているということである。
 それでは、この年齢別の賃金実態等を一切考慮しないで制度設計するのがいいのかどうかという点については、少し検討の余地があるのではないかと思っている。
 今でも生計維持関係のある遺族については1,300倍という倍数であるし、生計維持関係のない遺族については1,000倍ということであって、生計維持関係のある遺族に対してはそれなりの手厚さというものを考えている。さらに今後引き上げをするというときにそれがどの程度まで可能なのかということ、あるいは自賠責並にできるのかということについても検討したいと思っている。
 また、この生計維持関係のある遺族の置かれた状況を踏まえたきめ細かな給付ということについては、もちろん被扶養家族の数というのは一番大きな要素になるのではないかと思うが、それについて何らかの方策がとれないかということで、これについても今後検討したいと思っている。
(構成員) 先ほどの1の場合も同じであるが、年齢要素というのをある程度ミニマイズして負担だけをお考えになるというのもわかるが、余りそれをやると実際には、むしろ被害者にとって大変不利になる場合があるのではないか。特に逸失利益というものも大体年齢層で考えるし、ある程度加味してやっていくといった方がごく自然であるし、普通の障害保障制度はみんなそうなっている。そこのところを本当に若い方でお困りになっている人がいるのはわかるが、そこにばかりいくと、30代、40代でお困りになるのではないか。その点はどうであるか。余り明確すぎるといかがかという感じがする。
(構成員) 私たちの方では先ほど言ったように前回の想定予算額は、逸失利益の計算で計算した。それで、死亡の場合の逸失利益の計算の仕方と障害の場合の逸失利益の計算の仕方は少し違う。それで、死亡の場合の逸失利益の計算は、被扶養家族がないような場合の逸失利益の計算もそうであるが、収入から生活費を控除したものに対してライプニッツ係数を掛けるような形で計算していて、そういう問題については折り込み済みで逸失利益を計算する仕組みになっている。それでも大体50歳ぐらいまではほとんどが最高額の金額になる。
 ただ、今はそういう逸失利益の考え方を全面的に採用するというわけではなく、先ほども構成員の方からご指摘もあったように、逸失利益の考え方と生活保障的な考え方を両方加味してということであるし、そうなれば一番いいのは扶養家族がいる、いないで差を設ける。それから、もし年齢で差を設けるとしたら65歳以上という高齢の方についてはやむを得ないのではないか。ほかはある程度平準化した形で制度を設けてもそんなに大きな不都合は生じないのではないかと思う。
(構成員) 分かった。そう違いがあるとは思わない。ここに書いておられること、基本的にはこういう要素を考えてやっていくべきだろうという点では私も同感である。ほかの皆さんはいかがであるか。
(構成員) 多分構成員とそれから構成員とのイメージの違いは、その平準化するというところの平準化の線をどこに引くかというところにあるのではないかと思う。だから、例えば先ほどのグラフで50歳のところで平準化するいう考え方をとれば構成員のような考え方になるし、承っているところで構成員の考え方だともう少し平準化の線が下になるという感じもするので、そこのイメージの違いが1つ。
 それから、先ほどの第1の論点と全く同じであるが、これも結局要するに得ていた賃金をベースにした補償なのか、それとも家族の有り様というものを見た上での生活の支えをするのかという発想がかなり違うように思う。だから、1、2共通しての問題であるが、要するに基本的な制度設計の考え方の軸をどこに置くのかというところを詰めないとなかなかうまく説明がつかない部分が出てくる可能性はあると思う。
(構成員) ほかいかがであるか。
(構成員) 先ほどのお話で、基本的な方向性としては構成員がおっしゃっていることと構成員案と余り変わらないように思っている。今整理されたように、1と2の問題というのは非常によく似ていて、逸失利益の問題をどう見るのか、それを土台にするかどうかということと、やはり年齢をかませないのかどうかということが絡んでいると思う。そういう意味で、先ほど構成員もおっしゃったように、制度設計をもっと具体化する中で考えていくべきだろうと思う。
 私の考えを言うと、年齢というものを、逸失利益もそうであるが、全くファクターとして入れないで負担だけで考えることが制度設計としていいのかどうかというのは全面的に今ここでは賛成できないところがある。なぜかというと、ほかの公的給付とか社会給付の制度と連関するわけであるから、被害者のご遺族の負担ということだけで決することはできるのかどうか。
 もう1つ、構成員が少しヒントを言われたように思うが、被害者全体にとってこの方がいいのかどうかということもぜひもう一度お考えいただければいいのではないか。
 総論的には方向性は違いがないわけであるから、もう少し詰めの段階で議論するということで私はいいのではないかと思う。
 構成員の検討に期待したいと思っているので、よろしくお願いしたいと思う。
(構成員) 本当に具体的にどのくらいの額になるのかというところは実務にお任せしないといけないところはある。これは我々がどういう答申を出すにしてもAというケースについてはこういう計算式になるということはとても出る話ではないと思う。だから、ここはやはり私は基本的な考え方というのをまとめるのがこの場の仕事だと思う。
 これは構成員と後でここのところの実際の文言作成の段階で基本的な考え方をすり合わせていけば、川の両側で声を出しているような問題ではないように思うが、どうか。
(構成員) そのとおりだと思うが、構成員私案でも書いてあるところがあったと思うが、財源の問題と関連して、やはり構成員で頑張っていただくのももちろんそうであるが、この基本法ができるときのいろいろないきさつもあって、基本的に議員立法ということもあり、この財源の確保というのは構成員の指摘していただいた政府全体として必要な財源の確保措置を講ずる必要があるということを考えていただく必要があるのではないかと私は思っている。
(構成員) 分かった。
 ほかにご意見はあるか。2の点について、よろしいか。
 それでは3であるが、これは1年以上の医療費の自己負担の問題である。これに当てはまってくる上記対象者の数は非常に少ないと思われるが、その少ない対象者こそ最も深刻な状況にあると考えられるというご認識である。
 そして、犯罪被害給付制度における対応に限る必要はなく、一定の窮状にある対象者について、厚生労働省において自己負担分の減免等の措置を講ずることはできないんだろうかというのが構成員のご意見である。
 この点についてご意見があれば承る。
(構成員) そこに書いてあるとおりであるが、この前からご紹介させていたたいたBさんという方のケースで、大やけどをさせられて30回近くも手術の繰り返しという実情にあるわけである。医療費は生活保護を受けなければその医療保障給付が出ないというような状態で、本人はもう生活保護を受けながら生活すること自体本当に嫌で嫌で仕方がないと、何とか自分としては働きたいということで、今までに30回ぐらい就職先の紹介を受けて面接に行っているそうである。それでも合格しない。それで、もうやむなく生活保護を受けて医療給付をしていただいているというような実情にあるそうである。
 そういう方の例もあるので、そういう方についてはわざわざ生活保護を受けなくても医療費が無料で医療を受けられることを考えていただけないだろうかということである。それで、今でも本人は一生懸命職業訓練でコンピュータをマスターして、明日にでも就職先があれば面接に行きたいと言っている。
 構成員にぜひお聞きしたいことが幾つかこれに関連してあるが、よろしいか。
(構成員) まず厚生労働省において自己負担分の減免等の措置を講ずることができないだろうかという意見が出ているが、それについて何かあれば。
 その後で何か補足されることがあれば、それに基づいて言ってください。
(構成員) 今のお話の非常に深刻な状況にあるというのはそのとおりだろうと思う。何とか対策をとるべきだろうと思うが、ただ、医療保険制度において一部自己負担をしてもらっている趣旨というのは、この医療保険制度がすべての被保険者の保険料等で成り立っているので、医療を受ける人と医療を受けない人との負担のバランスを図るということが1つと、それとともに患者の方にコスト意識を喚起するためというのが趣旨である。
 その上で、特に保護の必要がある方についてはこの犯罪被害者の対策もそうであるが、そのほか戦傷病者であるとか原爆被害者であるとか障害者であるとか、個々の個別の法律において特別対策としてやっているわけであるので、医療保険制度という一般的な施策で対応するというのは基本的に難しいというのが考え方である。
(構成員) そうすると、要するに、犯罪被害者だったら犯罪被害者の体系の中で考えるということか。
(構成員) そうである。医療保険制度はあくまでも一般施策であるので。
(構成員) 何かあるか。
(構成員) そうすると、今の制度の仕組みの中で無料化すると定めればいいということか。
(構成員) だから、その自己負担分を犯給法の体系の中で、今1年に限られているのを、こういう特別な事情のある方の場合は1年を超えて負担するという仕組みはあり得ると思う。
(構成員) 基本計画の13条関係の中で、医療保険の利用の利便性の確保ということが厚生労働省の担当ということになっていて1年以内を目途にとなっているが、これはどうなっているのか。
(構成員) 恐らく利便性の確保というのは犯罪被害者の方は医療を受けようとした医療保険の窓口において保険での診療を拒まれるケースがあると聞いている。そういうことのないようにきちんと我々として周知をするということである。
(構成員) そうすると、無料化するという問題は、犯罪被害者の制度の中で定めるとして、例えば現在ある保険制度で第三者傷害の届出をして医療を受けると、そういう場合に犯罪被害者がよく拒絶されるというような場合があるという問題がある。
 そこでその点についてお聞きしておきたいが、社会保険の場合も国民健康保険の場合も第三者傷害による届出をする仕組みはあるわけである。それで、そのときに加害者側の協力を得なければその文書が作成できないというように伺っているが、それはどうか。
(構成員) 個別の事情について詳しくないので申しわけないが、いずれにせよそういう犯罪被害者の方が保険適用を受けることができないようなケースはなくそうということで我々も周知に努めている。それがまさにこの計画の中にあった医療機関を指導するということで対応しているということである。
(構成員) もしその第三者傷害の届出を病院が受け付けてくれれば、自己負担分はどうなるか、払わなくていいということになるのか。
(構成員) 自己負担分は基本的には払っていただくわけであるが、その後第三者の方に求償するという形である。だから、責任自体は基本的には第三者の方にあるわけで、そこへ求償するという形である。
(構成員) 第三者傷害の届出をしてもなおかつ自己負担分はいったん被害者の方が病院に払い込まなければならないということか。
(構成員) そういうふうに聞いている。いずれにせよ必要であれば直接の担当がまた改めてご説明に上がりたいと思う。
(構成員) それともう1点だけ厚生労働省の方へ、前回構成員からご指摘いただいた傷病手当金の支給という問題であるが、この傷病手当金の支給は、健康保険でできるけれども、国民健康保険の場合はこの傷病手当金というのはないのか。ある自治体もあるのか。
 ないと思う。制度上はやろうと思えばできるが、実態上やっているところはない。
(構成員) 細かく言うと、条例で定めることになっている。傷病手当金を条例で定めることができるというふうになっているが、私の知っている限りでは傷病手当金を定めている自治体はないと思う。ただ、国民健康保険でも国民健康保険組合という同種同業のところがつくっている組合があって、そこでは傷病手当金というのを出しているところもある。
(構成員) そもそもここのところの整理については、叩き台として示しているのは、今年3ヶ月から1年に延びたところなので、とにかくその実態を見てみて、当てはまらないケースがたくさん出てきた場合にはまた考え直したらいいのではないのかという整理である。ここのところはどうか。
 それで、1年で切った場合には、あとは一般の社会保障にもつながっていくわけであるが、1年にしてどういう状況になるのか、非常に具合の悪いのがたくさん出てくるのかどうか、その辺を見きわめたいというようなご意向も前にあったわけであるが、その点についてはどうであるか。
(構成員) そこは次の4のところとも関連していて、医療のところだけで設計するのかという問題があって、そこは詳しくはすり合わせはしていない。
(構成員) 先ほど構成員がお話になった事例の件であるが、先ほどの方の場合、多分医療保険の中でやるというのは無理だと思う。というのは、生活保護を受けておられるので、そもそも国民健康保険に入れない。それから、お仕事に就かれていないので社会保険にも入っていないということになる。したがって、医療としてはもう生活保護の医療扶助しかないというのが現行法の枠組みだと思う。
 だから、先ほどの挙げられた例とここで提起されている問題とはややずれていて、自己負担分の減免というのは医療保険の適用を前提とした場合に出てくる話であって、そもそも医療保険の適用から外れている生活保護の受給者の方の場合だと話の筋が全然違うところにあると思う。
 そういう方の場合は、もちろん犯罪によって被った傷病についての治療だけでなく、それ以外の一般の傷病の治療も全部生活保護でやるということになるので、ちょっと事情が違うと思う。
 だから、先ほどのような例のお話だとそもそも医療自体を生活保護の枠の外で全部犯給法で面倒見ましょうという話になる。1年を超える部分についての話で限定した場合、そういうことになる。
 だから、議論を区別していただく必要があると思ったのは、あくまでもお話になっているのは犯罪に起因する傷病の治療の問題である。だから、それ以外に例えば風邪とかということについては、これはもう生活保護でしかできないので、それはそういうことでよろしいか。
(構成員) そうである。
(構成員) それから1年以上のところをどうするかということについてはとりあえずまずその現状を見るということは、私もその方がいいと思うが、他方で無条件に1年以上ということにすると、これはこれで結構いろいろ問題を引き起こすことが、労災保険などの場合にも知られているので、延ばすのであれば何らかの手続なり実体要件というものを考える必要があると思う。
(構成員) 私も今構成員がおっしゃったとおりだと思うし、1年で実際にカバーできるのかどうかはちょっと様子を見ようというのは、1つの理屈のある対応だと思う。ただ、それでは間に合わない場合がある、医療保険を1年でとめてはこういう状況でこういうケースがあるというのが幾つか事実として出てくればまた検討の仕方がある。ただ、構成員がおっしゃったように、1年で短すぎそうだから2年にしようという議論はとりにくいのではないかという感じがする。
 したがって、そのところで、構成員の方で1年ではとても済まないという事実があればまたご指摘をいただければ、そういう事案に着目をして1年で済まない場合についてどうするかという議論をここでできるのではないかと思う。私はとりあえずは1年に延ばしたところだから様子を見てみようという原則的な区分けがまずあって、ただ、延ばす場合は何かあるかというのは、実際の立法事実が出てくるかどうかに従った議論ではないかというように思っている。
 この点はその程度でいかがであるか。
 まとめるときまでに、今言ったような1年でおさまらない場合についてご指摘があればしていただくということでいかがであるか。
(構成員) 前も申したけれども、1年以上にするということ自体は私は反対である。過剰医療につながることもあるし、それから、自立支援ということをここで確認しているので、そういう点から見れば、長ければいいとは言えないと思う。構成員も、1年以上にせよということだけを主張しているわけじゃなくて、この場面でこういうように制度設計した場合に抜け落ちる部分で非常に悲惨な方がおられるんじゃないかということを問題として指摘されていると私は理解している。
 そういう意味で構成員の方にもう少し何か検討してもらいたい。いや、犯給法でやってくださいという程度の回答では我々も納得しがたいところがある。もう少し何か実のある、犯罪被害者に対して特化したことは無理かもしれないけれども、そういう制度設計がないのかという気がする。
 先ほどおっしゃったように、条例とか地方自治体でやればということになっていても、何もやってないというだけの回答ではここでは我々も納得しがたいところがある。
(構成員) 今の構成員のお話にも少し関連すると思うけれども、きょうも1、2、3とやってきて、回答をお聞きしても結局犯給法を拡大するというあたりに焦点が当たりすぎていて、その他の、例えば構成員にしても別のところで犯罪被害者の新たな施策をつくるということで関係する部分があると思う。例えば、先ほど労災では介護給付があるということは構成員もおっしゃったし、今の自己負担分も何とかできないかというあたりもまさに新しい施策だと思う。
 今まで構成員が頑張って犯給法をかなり拡大をして助かっている犯罪被害者の人はたくさんいるが、一方で、もしかしたら支給の対象になっていない人たちもまたたくさんいるわけである。そういう人たちも今現在よりも経済的支援を手厚くする方向で新たな施策をつくり上げなければいけないということがこの検討会での役割だと思う。犯給法にほかの省庁の皆さんが余りにも押しつけてしまって、ほかの省庁の皆さんが、では、前向きにここの部分ではこれが考えられるかもしれないとかそういう答えを私は期待して今ここにずっといる。ぜひその点で前向きの回答をいただければと思う。
(構成員) 構成員のご意見はすごくおやさしく、すごくうれしいと思っていたのは、こういう制度設計をつくるときには感情的なものではできないというのは承知しているけれども、医療、保障とか経済的な援助をいただいたことに依存するのではなくて、現在本当に1年以上後遺症に苦しんでいる人はいらっしゃるわけである。そういう人は地下鉄サリン事件の被害者の中にもいて、もうあなたはこれ以上治る見込みがないから、障害者としてあるいは生活保護を受けてくださいということでそちらの方に移行させられている。そのご家族が言っていることは、何で犯罪被害に遭ったのに障害者なのか、障害者というくくりの中に入るのかという思いがすごく強くある。
 だから、確かに1年というある程度の期限を切らないといけないという、ことはあるけれども、機械的に扱われるような感じがして、犯罪被害に遭った苦しみとかその後の生活の大変さというのがほとんど加味されていないような気がする。
 だから、制度をつくるときにも単純に被害者を仕分けしないような形でつくっていただければと思う。
 構成員、何かあるか。
(構成員) 我々としてもこういう犯罪被害者の方の置かれた状況にかんがみて、我々の施策の体系の中でできることは精いっぱいやっていきたいという基本的な気持ちは持っているので、まずその点を申し上げたいと思う。
 その上で、やはり個々の制度になると、制度を運営する立場からすれば、どうしても一般的な制度であればその枠組みの中でやらなければいけないので、その論理からくる限界があるということはご理解いただきたいと思う。ただ、皆様方からいろいろご意見をいただいたように、そればかりを言うのではなく、その中でどういうことができるかということは精いっぱい考えていきたいと思っている。
(構成員) 先ほど国民健康保険の傷病手当金の話が出たけれども、なぜ市町村で定めて条例をつくらないかというと、1つは国民健康保険は非常に財政が厳しくて、そういう条例で定めた付加的な給付まではとても手が回らないというのが1つである。出産については出しているが、傷病については傷病手当金は実際には出していない。
 なぜ傷病手当金を出さないかというのは財政上の問題と、もう1つ実質的な問題があって、1つは国民健康保険の場合は多くの方が自営業者かあるいは年金の受給者のような無業者の方であるということ。したがって、傷病による所得の喪失ということを観念しにくい場合が結構ある。何をベースにして、そもそも傷病手当金を計算するかということ自体が技術的にも非常に難しい。
 それから、市町村が傷病手当金を出さないもう1つの実質的な理由は、これは先ほどの第1番目の理由と関係するが、どうしてもモラルリスクが発生しやすいということがあって、実際には現在市町村で条例で傷病手当金を定めているところはないと理解できると思う。
 国民健康保険組合という同業種などがやっているところの場合はいわば同業の仲間うちの話であって、財政的にもゆとりがあるということもあって比較的やっているところもあるという違いがある。
(構成員) 今まで出たようなご意見を踏まえて、答申案をつくるときには検討していかなければならないと思う。
(構成員) 質問であるか。
(構成員) 先ほど言ったように、基本計画では、13条関係で、2の(6)で医療保険利用の利便性の確保という問題と、それから第2のところの14条関係で長期療養を必要とする犯罪被害者のための施策の検討というところで指摘がなされている。構成員関係は1つ長期療養者の施策がなされていて、1年以内を目途にと両方とも書かれているが、こちらで制度設計する上においてもやはりそういう構成員の方でどこまで犯罪被害者等基本計画に基づいた工夫をしていただいているのかということも、一般的な説明だけではなく、この施策のプランとしてどの程度のものまでしていただいているのかということは全員の共通の認識にしておいた方がいいと思う。何かそういうものを出していただいたらどうか。
(構成員) それは出るか。
(構成員) 次回までに資料を用意したいと思う。
(構成員) 資料ということでもう1つ申しわけないが、この間すり合わせをしたときにも出たけれども、今までは犯給法の支給実績で等級別の支給実績が出ているけれども、被害者の年齢別の支給実績あるいは男女別も含めたそういう統計的なもので結構であるが、それを資料として出していただけないだろうか。
(構成員) それは調べて出せるものならお出ししたいと思う。
(構成員) それでは、時間も押しているが、この論点の集約結果の4と5は同じような問題でもあるので一括してご意見承りたいと思う。
 4は休業損害の問題である。被害者本人の休業損害の問題であるが、上限は自賠責の水準の範囲内にとどめるにしても、休業期間に応じた休業補償だけでなく、通院費用、入通院付添費用等、自賠責で対象となる項目を含めるようにすべきではないかということ。
 それから、入通院の付添費(介護する家族の休業補償も含む)及び将来の介護費用ということである。後遺障害が残る被害者の介護のための費用はこういうふうに整理ができるわけであるが、後遺障害認定には時間がかかる、また障害者自立支援法における対応についても順番待ちが数年におよぶ例があるなど、自立支援適用までに時間がかかり重い負担になっている。そこで、これら重い負担がかかる場合には入通院付添費及び将来の介護費用について一時金とは別途措置をすべきではないかというのがご意見である。
 この点についてご意見があればお願いする。
(構成員) 特に5であるが、この介護の費用の部分は先ほどの論点の1で若年者を手厚くするということとどう整理されるのか。結局のところ、要するに手厚くするということの根拠をどこに求めるかということになると思う。家族のいろいろな介護の負担とかという話が1のところに入っているとすると5とダブるということになると思う。そこをどう整理されるのかということを考える必要があると思う。
(構成員) まず4のところで、限界を設けざるを得ないということで、自賠責と同じ120万円というところまでで一応限界を設けて、その範囲内でそうした費用を支給するという制度設計にした場合で、そこからどうしてもはみ出てしまう場合というのが5の方に入ってくる。
 介護のための費用として、そこにありますように後遺障害が認定されるまでの部分は入通院付添費ということで自賠責の方でやっているが、後遺障害が認定された後の将来の介護費用というのは4のとおりである。
 もし仮に1級の障害の方について4,000万円ということに考えた場合には、確かにその4,000万円のうち1,000万円は介護に必要ということも含めて自賠責では上積みしたと思う。だから、死亡の方は1,000万円上積みになっていないわけである。そういう意味で言えば、将来の介護費用の方についてはその1,000万円の方にかなり含まれているのではないかということは言えると思うが、認定されるまでの間に2年も3年もかかる、あるいはどうしても自立支援法の適用があるまでに時間がかかってしまう。そういう場合には入院通院の付添費はかなり大きな負担になってくる。
 それで、仮に一時金の方で1,000万円の上積みがあったとしても、、認定されるまでの過去の実際の介護の負担で1,000万円以上もの負担をされている方がいる。そういうこともあるから、そうしたかなり重度な負担になる場合には別途考える方策を考えていただきたいということである。
(構成員) 今の構成員のお話を伺っていて気がついたが、仮に手直しをして新しい法律にするとして、給付の支給ということについてどこまで個別事情を考慮して決めるのかという問題がある。恐らく今までの仕組みというのは個別事情を余り考慮しないで給付の額を決定するということだったと思う。そうしないと個別事情を考慮するという話になれば当然調べないといけない事項が増え、そして判断も複雑になり、支給の決定にも時間がかかるということになって、制度設計としては個別事情は余り考慮せずに、いわばベーシックな部分についてこれだけ支給しようという考え方だと思う。
 今の構成員のお話を伺っていると、どうも発想が違っていて、個別事情を考慮してこういうことになるという印象を受けたので、そこもやはり議論を整理しておかないと制度設計の根本的なところにかかわるから、その必要があると思う。私自身としてはベーシックな部分としてこの法律でどこまで面倒を見るのかという話と、それからいろいろ悲惨な事情にある方について個別的にどうするのかということは一応別の話であって、本来の筋から言えば個別的な事情というのは損害賠償でやるというのが筋だと思う。
 だから、ベーシックな部分として一体どこまでをこの法律でカバーするのかというところを一回整理しないとやや議論が混線するという懸念を持つ。
(構成員) 私がここで毎回具体的な被害者の方の例を挙げているのは、やはり具体的な被害者の実情をご紹介しないと一般的に気の毒だということで流れてしまうし、その必要性も理解しにくいだろうと思ってただ挙げているだけの話で、実際にはそれに類した方はほかにもいると思う。
 構成員がおっしゃるように、確かにベーシックなところをまずきちっと定めるということはそのとおりだと思う。それで、この間のすり合わせのときにも天井知らずでどこまでも必要性があるからとお金を出すわけにもいかない、であれば、一応どこかで、1年なら1年という形で区切るのか、それとも120万円という形で上限の金額を区切るのか、どこかでそのベーシックな仕組みをつくらなきゃいけないということなので、4にあるように、120万円ということで基本的な制度を定めるとそこに掲げたわけである。
 しかし、そうはいってもこの犯罪被害の特徴で、そういう予期されないような、しかもかなり重篤なものが家族の負担のまま放置されているというような実情があるものであるから、その場合の手当を、ベーシックな部分から外れる部分をどういうふうにやっていくのかということもやはりこれは犯罪被害者を手厚く支援するという意味での必要ある部分じゃないかなと思う。
(構成員) わかった。要するに犯罪被害者の実情に応じてベーシックな部分も決めるということがこの検討会の仕事だと思う。ただ、だからこそ犯罪被害者の実情に応じていろいろ考える場合にその制度設計としては一応全部を飲み込んだシンプルな形でやらないと、実際の認定のところでいろいろバタバタするということがあってもいけないので、やはり実情を踏まえた上でスパッとした形の制度設計というのはどうしても考えないといけないのではないか。個別的な事情をここに全部組み込んでいくと、それこそ制度設計が非常に複雑になるということもある。
 私はこの4と5についてはこういった種類のものは、今一時金のところで上がるわけであるから、一時金が上がっている上にこういうことを全部考慮していくというのは、制度設計を考える場合には大変やりにくい面があるのではないか。そういうものを含めて実際の一時金の支給の中で考慮していくという方がいいのではないか。
 ただ、それにもかかわらずどうしてもそこから出てくるというものがあるのであれば、それはまた考えなければならないとは思う。ここに書いてあるような通院の付添いの費用とかは一時金を上げた中で組み込んでいくというのが、まさにベーシックな制度設計としてはその方がすぐれているのではないか。全部あれもこれもというふうにすると制度としてごちゃごちゃしないのかという感じがする。だから、一時金の上げ方を十分にすればいいということである。
 だから、4と5については無理な話ではないかという印象を私は持つ。ほかの方、いかがか。。
(構成員) 構成員がおっしゃっているようなことがないと、一時金を上げるためにも、あるいはここででき上がるものがいわゆる犯罪被害者にとって机上の空論になってしまわないように、必要なことだと思っている。だから、例に挙げられた人たちに対してこういうふうにするああいうふうにするということではなくて、そういう人たちのことも考えながらこれからのことを考えていけばいいのではないかと思う。
(構成員) 先ほども指摘したが、長期療養の方、介護が必要な方は、障害者自立支援法の適用の問題が非常に大きな問題になっている。それで、基本計画の中で構成員の方でいろいろ工夫していただくということになっているけれども、先ほど言ったCさんの例では、もうずっといまだに自立支援法の適用で介護を受けられない。それは、まず施設がない。それから、順番待ちの人がものすごくたくさんいて、ケアマネージャーがお宅へ回っていくのはまだ大分何カ月も先の状態で、今とてもお宅の方まで手が回らないということで介護の中身さえ決められない。それで、仕方がないのでご主人が今1年間の介護休暇をとって、全部無給で奥さんの介護をしているが、今年の7月になると介護休暇がもうなくなってしまう。そこから先はどうするのかと聞いたら、まだケアマネージャーが7月までに来てくれればもしかするとできるかもしれないが、そうでないといつになるかわからないので今のところ見通しが立たないという状態である。
 それで、それは今言ったようにこの人を何とかしろと言ってるのではなく、ほかに病気の方で順番待ちしている人も非常に気の毒なのでそっちの方はどうでもいいと言ってるわけではない。犯罪被害者の方に対応して基本計画に基づく何らかの工夫というものは補償金として出すのかどうするのかは別としても、絶対必要ではないかと私は思う。
(構成員) おっしゃるとおり、今言ったケースをそのままにしておくということが、新しくできた制度になってもなおかつそういうことが続くということはやはりあってはならないことで、何とか拾いたい。ただ、それはこの新しくできる制度、それが犯給法の延長なのかどうかは別として、そこでどうするかという問題と、その後につながっていくいろいろな介護・医療の実態、順番待ちでどこへ行っても何もないというのはこちらでいくら頑張ってもどうしようもない問題だから、そこのところはちゃんとしたケアができるような施設や事業をつくっていくというのは、それはやはり構成員の方で当然お考えになることであろうと思う。
 だから、そういう人たちがきちっと手当される仕組みをつくっていくというのは私は当然のことだと思うし、そういうものをそれは個別事情であるから我々は考えないということを私は言うつもりも全くない。ただ、私どもの方としてやる場合は、今例えば一時金がいくらになるか、その後の介護手当、付添手当をどうするかということを考えた場合に、その付添費用というところが一時金が上がった中で埋められるものは埋めていく。一般的なベーシックな制度としてはそれがいいのではないだろうかということを言っているにすぎないわけである。
 行き違いがあるかもしれないが、私の感覚では、1つの仕組みをつくる場合にはある程度シンプルにつくらないといけない。それでうまくいかない場合があれば、また改正するということもあるかもしれないが、いろいろなものを全部入れていくといってもなかなか難しい。今、構成員からあったような事情というのは施設のところで何とかしてもらわないとここではどうにもならないという話であろうと思う。
 したがって、その切り分けをどこでするかということは、ある程度見切なければならない。そこの見切りがどうしてもできない。公的な機関もどこも手当をするところがないというものについては、私の考えでは、民間のいろいろな浄財を使った基金を使ってそこで手当をしていく。とどの詰まりのセービングクローズというのは設けておくのがこの被害者支援というものの制度設計には必要なのではないかと思っている。
(構成員) 今の構成員のお話であるが、構成員の方で事実を調べていただいた方がいいと思うのは、自立支援法の下でケアマネージャーが相談にものらないで放っておくということはあり得ない話なので、犯罪被害者の方のケースだけではなくて、ほかの方もどうなっているのかということも非常に気がかりである。そこはご確認いただければと思う。施設がだめであれば、ケアマネージャーは当然自立支援法の下では在宅でどうするかということをまさにやるべき話であるので、それもやらないということはちょっと考えられない。そこは事実の方をお調べいただければと思う。もし本当にそういうことがあるとすればそれはゆゆしきことだと思う。
(構成員) 大体基本的な考え方として構成員のこの整理の仕方というものについてご意見があればお願いしたい。
(構成員) この4、5については私も前回同じような主張をこの場でさせていただいた。そのときに今構成員がご説明になったが、制度としては全体の実態を踏まえてできるだけ包括するような形でシステムを考えていく。ただし、今おっしゃったように例外的なケースについて、救済できないものがある場合は別途考えていくという形で前回整理されていたので、そういう意味では今ご整理いただいた内容で理解できる。
 ただ、前回までの整理だと、支援基金というか別途の救済機関というお話があったと思うが、介護の部分その他仮給付金もいろいろと今までの議論で出てきているので、一度その支援基金の構想、どういう考え方で救済をするのかというのがある程度見えてくるとより理解がしやすい。今までの整理ではそういう形で考えるというお話であったので、個人的には理解できるが、その具体的な方向、を教えていただきたい。
(構成員) それは今であるか。
(構成員) 後日で結構である。
(構成員) そこのところはある意味では非常に問題である。私の考え方というのは、公的な制度できちっと保障していくというのはぎりぎりまで広げていく。今言ったように1年後でも出てくる費用はすぐ例外措置で基金に持っていくということではなく、そこは公的なところでやれればそれでやる。特に、施設でもう少しきちっとしていただくことができればそれでよろしいわけである。
 ただ、私が考えているのは、これは後で皆さんのご意見を承りながら詰めないといけない問題であるが、例えば、社会保障も受けられないという場合など、非常に例外的な場合のセービングクローズ的なものとして基金を考えるというわけであるから、割とこじんまりしたものを私はイメージとして持っている。ただ、これはまだそれほど詰めていないのでもう少し詰めなければならないと思う。
 私のイメージとしては、この犯罪被害者支援というのは、財源はどこから持ってくるかという大問題はあるが、公的支援としてできるものは、もちろんとにかくとことんやるべきであり、それができないと終わりと言うのではなくて、そこから先をまさに社会連帯で民間のいろいろな浄財を受ける。私が今やっている犯罪被害救援基金というのは民間の浄財を受けて奨学金を渡しているわけである。そういった仕組みがあるわけであるから、公的資金がダメだから終わりというのではない何らかの措置というのはどうしても必要なのではないかというのが私の基本的な考え方である。
 したがって、例えばカウンセリングとかそういう問題も、公的なところはここまでだからあとはもうダメで、それを全部基金が引き受けるというのではなく、そこはもう少し詰めて公的な資金でできるような制度設計をすべきではないか。どうしようもない場合というのはある。それは民間の基金なり機構なりでやらなければならないのではないかということである。私の考え方を詰めさせていただければ、議論が終わったときにはもう少し明確にお話ができるかもしれない。大体そういうことである。
 この4、5についてはほかに何かあるか。
 この5点については少なくとも1、2については事実上余り差はない気がするので、こういったところを踏まえて基本的には構成員がお示しになったことを中心にしながら、修文をしながら考えていけばいいと思う。
 それから、3の医療費の問題については、1年間に延ばしたのでこれでいこうということであるが、それでどうしようもないというようなケースが本当にどの程度あるのか、それをお示しいただければまた考慮の余地があると思う。今のところ1年に延ばしたから実施状況を見ようという整理を中心に、何か書けるのがあるのかどうかを議論していけばいいと思う。
 それから、4と5については、これは基本的な考え方のところで少し違う気がするので、またよく詰めたいと思う。私としては、4と5については大変難しい。一時金を上げると、上げた中でカバーするということでいいのではないかと思うが、全然それはダメであるというのがあればまた構成員からお示しいただいたらと思う。
 そんな整理にさせていただきたいと思う。
 進ませていただきたいと思う。前回の検討会に続いての叩き台のペーパーに沿った検討であるが、第3ページ目の経済的支援の手続、給付方法、管理・運営、法形式に関するもののうちの経済的支援制度の手続はいかにあるべきかの検討に入りたいと思う。
 まず、請求時効の問題である。これについては、私の叩き台の案での整理は、現行の犯罪被害給付制度の申請期間が、2年、7年となっているが、これは維持する。ただし、やむを得ない事情で申請ができなかったような期間というのは申請期間から除外する運用ができるような規定に改めるという案をお示ししている。
 このような方向でいかがかということである。これは叩き台であるので、何かご意見あればご発言をいただきたい。
(構成員) もともと2年としたのは、例えば労災保険が2年となっているということに合わせたのか。
(構成員) 基本的にはほかの制度をいろいろ見ながら、公害補償あるいは自賠責は2年、労災も原則2年となっているので、横並びで考えた整理である。
(構成員) 犯罪被害の場合は不法行為による被害であるので、不法行為の制度に合わせるということは不可能であるか。
(構成員) 3年、20年というご意見が出ているが。
(構成員) 2年という期間が短すぎるのではないかということだろうと思うが、これについては当該犯罪行為による死亡、重傷病または障害の発生を知った日から2年ということなので、知った日というところをどう解釈するのかというのはいろいろな余地があると思う。やむを得ない事情があった場合を救済する方策を考えていきたいと思っている。
(構成員) 構成員のご意見はわかった。構成員の2年、7年というのもわかった。ほかに何かあるか。
 今3年、20年がいいのか2年、7年がいいのかという議論をしていても仕方がない。これは後ほどまた各段階でご意見を承りながら、何が何でも3年、20年がいいのか。私の言ってるのは、請求時効というのは書かないと、法的安定性の問題もあって、ある程度で切らないといけない。ただ、先ほどのお話のように、個別事情を汲んでやむを得ない事情というのがあったらそれをカバーしていくという条項はいるのではないか。ただ、その上でもなお2年、7年でいいのか、3年、10年ぐらいではないかとかいろいろな話があると思う。
 やむを得ない事情で申請ができなかった期間というのは除外をするという運用そのものについてはいかがであるか。
 構成員、いかがであるか。
(構成員) やむを得ない事情ということを比較的柔軟にやっていただける形でもいいとは思う。
(構成員) これはまた案をつくるときのご討議になるのではないかと思う。いろいろなご意見を言っていただきたいと思う。
 この程度でよろしいか。非常にテクニカルな話でもある。ただ、後ほどやはり2年、7年というのは非常に不合理であるというご意見があれば、またおっしゃっていただきたいと思う。いずれにしてもやむを得ない事情というもので少し幅を持たせるという書き方にしたらいかがかということである。
 次に、併給調整である。ほかの公的給付との調整というのはやはりあって、損害賠償を受けたときにはその額の限度内において給付金は支給しないというのが原則であるということである。
 この点についてご発言があればお願いする。
 構成員は、この整理でよろしいか。
(構成員) この前の検討会のときに発言させていただいたと思うが、公的給付とは調整はやむを得ないことだと思うが、加害者側からの損害賠償を受けたとき、すべてどんな程度の金額でも受けたらもう全部それを差し引くということになるのか。今言ったように、仮に被害者に対する補償制度を3,000万、4,000万というふうにして金額が上がったとしても、被害者の損害の実情からすれば決して損害の本当に一部だという形にはなると思う。
 その場合に、いつも私どもが被害者の方から相談を受けるときに刑事の訴訟手続をやっている中で、加害者側の国選弁護人の方から示談というかある一定のお金を受け取ってくれということで、受け取るべきか受け取らざるべきかという問題が必ず起きてくる。そういうときに、お金を受け取らなければ加害者が刑務所に入あるとあと一切払わなくなるという話がいつも出てくる。では、受け取ったら今度は犯給法による補償の方はそれだけ減らされる。今現状はそういう状態である。
 そうであるので、もらったところで大した金ではないのに、どうするかということになっていつも悩みの種である。全部何でも調整しなければならないのか。
(構成員) わかるけれども、犯給法ではどうなるかということであるが、どうであるか。
(構成員) 基本的には犯給法、犯給制度というのは、ほかに何らの救済措置もないという本当にお気の毒な犯罪被害者に対して連帯共助の精神で支援しようということであるので、例えば損害賠償というのは本来加害者が損害をすべて賠償するというのが法律の建前であるからそちらの方から損害の賠償が行われたということになれば、それに加えてまた国が犯給金を支払うということについては、やはり税金ですべてまかなっているということもあるし、説明が難しいのではないかと思っている。
 それから、労災法とか警察官の職務に協力してけがをしたような人に対する法律とか自賠責法などにおいても、基本的には損害賠償があればその限度で給付の責めを免れるという制度になっているということでご理解いただきたいと思う。
(構成員) これは何も犯給法の範囲内で、犯給法の考えで全部やらなきゃいけないという問題ではないが、私は犯給法を離れても損害賠償が入った場合に併給調整するという原則は外れないのではないかと思う。ほかの方はいかがか。構成員のご意見はわかった。
(構成員) 例えば一定の低い金額、50万とか100万とか一定の金額までであれば調整はしない、とかという制度設計はできないか。というのは、当座のお見舞金みたいな形でもってきて、それを医療費だとか当座必要とするものに使ってくださいと持ってくるもの、それが損害賠償金の一部である。それで犯給法の適用が受けられるまでは半年も1年もかかるわけであるから、その間被害者が自分のお金を使うよりも加害者からお金をもらってそれでまかなえればそれに越したことないわけである。だから、それをうまく生かすために、ある程度、例えば100万なり200万なりそういう一定の金額までであれば調整しないという制度設計は可能ではないかと思う。
(構成員)  構成員はどうか。要するに賠償金というようなものではないものであるが。
(構成員) 今の制度については、基本的に損害賠償という性格を持って支払われたものはすべて調整するという形になっている。先ほど申し上げたように、ほかの法律においても同様の制度になっているということもあるので、特定の額以下というものについて例外にするというのはなかなか難しいのではないかという感じがする。
(構成員) 一定少額の賠償は除くということにどうしてもすべきだというのであれば後でご意見言っていただいていいと思う。その場合にはどのくらいかということはお示しいただかないといけないということだけはよろしくお願いしたいと思う。
 ご意見は承った。
(構成員) ご参考までに、労災保険の場合はおっしゃるように、損害賠償から支払われた場合には給付を控除するということになっているが、最高裁判例で見舞金名目で支払われたものは控除の対象としないというふうになっている。
(構成員) それは損害賠償金ではないのか。
(構成員) お見舞金である。ただ、その見舞金かどうかというのは結局金額とかを考慮して判断するとなっていて、多額のものではない。
これはむしろ構成員の方がお詳しいと思うが、今度刑事裁判で民事損害賠償もあわせてできるようになるので、それとの関係もあってこの併給調整の問題というのは先ほどの構成員のご提案との関係でも問題になると思う。
(構成員) その程度でよろしいか。
 では、遡及適用についてである。これも私の叩き台の整理の仕方は、遡及適用は困難である。ただし、過去の犯罪被害によって現在も後遺障害が癒えていない犯罪被害者等については給付対象の項で検討するということである。
 そこで先ほども出たのであるが、また基金ないし機構の話になるわけであある。給付対象のところで、過去の犯罪被害によって現在も後遺障害が癒えていない犯罪被害者等への支援については、その必要性を認められるのは国としての給付は、要するに給付は困難であろう。したがって、遡及適用の問題ではなく、例外的に救済すべきものとして、この例外的に救済すべきものというのはどうなるかというのは構成員のご指摘もあるわけであるけれども、一応例外的に救済すべきものと認定した場合には、それについては支援基金ないし支援機構で自立に必要な支援を行うことができるように制度設計をするという案をお示ししている。
 やはりこれも遡及適用があるという制度設計というのは本当に難しいと思う。ただ、例外的に基金を使っていただいたらどうかというのが私の案である。
 いずれにしても遡及適用という問題については困難であるというのが考え方である。この点、ご意見あればよろしくお願いする。
(構成員) 確かに遡及適用というのがなかなか制度設計上困難であるということはわかるが、やはりこの例外的にという部分で、将来的にもし法案ができて国会で審議されるようなことにもなろうかと思うので、そういう例外的に何らかの形で手当する必要があるというところはやはり検討会のまとめで指摘するときに、最初から別口でやるというのではなくて、少し国会でも検討してほしいというニュアンスを残すことはできないか。
(構成員) だから、そういう事実があるかということを書いて、例外的と一言書くだけではなくて、それこそ具体的にこういうケースもあるということを書いてもいいと思う。そういう場合にはやはりただダメだけではなくて、何らかの形での救済措置がとれるような仕組みをつくっておいたらいかがかという書き方になると思う。ただあくまで原則は遡及適用をこういう場合にはいたしますという書き方はできないのではないかというのが私の整理の仕方である。
 つまり、遡及適用というのはできないと書かざるを得ないということである。そこはある意味ではいた仕方のないことである。こういう場合はできるという書き方はできないというのを、私の場合はあくまで明確にしている。ただ、別の形で何とか救済できるようにという場合の説得材料としてこういうケースがあるというのは明確に示していっていいと思う。そういう事例があればぜひお示しいただきたいと思う。そういう整理の仕方である。遡及適用は困難であると書いてあるが、できないというのが正直なところである。
 この点について何かあるか。
(構成員) 犯罪被害者等基本法ができたときに自民党の先生から私たちの事件の被害者も当然いまだに被害が続いているのだからあなたたちも対象になるということを言われたので、そのことが実現するということに非常に希望を持っていた。今のおっしゃっていただいたことでは、当然対象になるというふうに理解するが。
(構成員) 私もそういう理解である。新しい施策のできる前に起こった事件は、ずっと前にさかのぼって適用するというのは難しい。ただ、その前に起こった事件でも現在までずっと被害が続いているわけである。それをどうするのかというのがあった場合に、現在も被害が続いているという事実に着目して、あれもこれも全部というわけにはいかないかもしれないが、例外的にそういうものは手当ができる。相当重篤で本当にお困りであるというようなケースがあれば、何らかの形で救済できる制度設計をすべきではないか。それはやはり公的資金でというのは大変難しいところがあるので、私どもが今やっているような基金という仕組みがあれば、そこで手当をする。それは社会連帯、みんなの浄財でそれをやっていくという仕組みがあっていいのではないかという整理である。遡及して前の事件を全部拾うという制度設計はできにくいという考えである。
(構成員) 私もそのように理解させていただいた。
(構成員) 細かいことなので後ほど報告書をまとめていただくときに整理されればいいと思うが、法制局的な話で、障害と言うと労災とか社会保険とかだと一応治癒したということで障害の認定をするということになっているので、後遺障害が癒えていないというのは整理がうまくつかないと思う。だから、そこは傷病が癒えていないとするか、あるいは後遺障害が一定の重篤さがあるとか、整理される必要があると思う。
(構成員) すごく具体的な話であるが、PTSDに関してはどのように判断されるのか。
(構成員) 明確に考えているわけではないが、先ほど構成員からあったように、後遺障害が残っているかどうかということは切り分けで考えていけないと思う。私の考えはPTSDでも何でも非常に重篤な場合でも、恐らくある一定期間が過ぎてしまうと公的な医療補助というのはないだろうと思う。それにもかかわらず、どうしてもその犯罪に起因する障害が残っているのであればセービングクローズをかけなければならない場合というのもあるのではないかという感じである。
 ただ、そのために使う資金というのは公的な金というのは非常に難しいだろう。民間の金はどう使ってもいいということではない、その被害の実態に応じてカバーできるところがあるのではないかというのが私の考え方である。ただこれはもう少し詰めないとどこまで言えるのかというのは微妙なところがあるかもしれない。先ほどの構成員のご指摘も踏まえながら、もう少し詰めないといけないと思う。
 ほか、よろしいか。
 後ほど、またもう一回検討する時があるので、次に進ませていただきたいと思う。次は、給付方法はいかにあるべきかということの検討である。まず、年金型、または年金と一時金の併給型の支給を行うべきかということである。これについては今までも私の考えというのは言っている。それにしたがって整理をしているわけであるが、給付は一時金とするという案である。
 これについてご意見があればお願いする。
 つまり、年金はないという整理でいかがか。
 構成員、いかがか。
(構成員) 一時金の方を本当に自賠責並に若年層も含めてきちっと上げていただくということであれば年金というのはその一時金の中で考えられると思う。先ほども指摘したように、継続的に介護とかの出費がずっとかかってしまうというケースの場合、特に介護で大きなお金がかかってしまうという場合に、果たして一時金だけで本当にいいのかという問題がある。先ほど既に論点の整理の中で言わせていただいたので、そのことはぜひとも工夫していただきたい。要するに労災のように介護手当というものを別に考えて、一定の期間支給していただくようなそういう方策か、あるいは別途構成員の方で何らかのお金のかからない介護の方法を考えていただくか、何らかの手当はぜひ考えていただきたいと思う。
(構成員) 質問であるが、先般のヨーロッパの調査のときにイギリスもフランスもいわゆる年金ということではないわけであるが、例外的なケースがあるということで説明を受けた。イギリスでは児童虐待のような被害者に補償することが加害者、つまり親に利する場合には分割、信託の受託扱いにする。あるいは無能力者の保護法廷については財産管理人が財産管理を行うということで、一時金ではあるが例外的に分割で払っていく。フランスでも重い後遺障害が残って日常生活に介護を要する場合、毎月または四半期ごとに死亡まで年金方式で支払う方法もあるという説明を受けた。
 先般、構成員から被害者の実例の一覧表があったが、このケースに当てはまる件が1件、その方は申請されていないというように資料には書かれていたように見受けられた。したがって、こういったケースが日本でもあると思われるので、一時金を被害者が実質的に自分の自立支援に役立てるようなことが現在の枠組みの中でどういう形でなされているのかということを知りたい。
(構成員) 要するに額ではなくて、支払の仕方であるか。
(構成員) そうである。
(構成員) 児童虐待の場合、信託でやるという払い方を新たに設けるということについてのご意見はどうであるか。
(構成員) 今のところはイギリスの事例のようにそういう支払い方というのは多分ないと思う。ただ、今後その支払い方をどうするかという点についても、いろいろと立法上必要な事実あるいはそういう事例等があるのであればその辺の支払いの方法についても考えていきたいと思う。
(構成員) 要するに一時金を出した上に年金というのではなくて、一時金の支払いの仕方ということになるか。
(構成員) そうである。
(構成員) それはまた検討ということであるか。
(構成員) 金額によって払い方も変わるのではないかと思うが、いずれにしても私が申し上げたいのは、被害者が利するような支払い方、一時金であってもそういうことを考えるべきではないかという意見である。
(構成員) ご検討いただけるか。
(構成員) では、また具体的な事例等があれば教えていただいて、それに基づいてどのような形が一番適切な被害者保護になるのか、そういう観点から考えていきたいと思う。
(構成員) ご存じのように、英米の場合は信託が非常に発達しているので、それを利用するというのは英米法の発想からすると非常に自然に出てくる。とりわけ児童虐待のようなケースであれば親に渡したら意味がないわけであるから、当然信託を使うという発想になると思う。だから、日本でそういう発想になるのかどうかというのが1つ。
 それから、フランスも、制度を知らないので具体的にそうやっているかどうかわからないが、政府系の金融機関があって、そこが要するに一時金を預かって、そして年金を支給するというような仕組みを持っている。だから、多分制度から出てくる一時金をその政府系の金融機関に入れて、その政府系の金融機関が管理して分割で年金化して払っているということではないかという推測はできる。これは制度そのものを調べたわけではないので、確たることではない。
(構成員) 構成員の挙げた事例というのは、この間の海外調査の結果として年金方式で支払われる場合として信託制度というのが、児童虐待の場合にあるというご報告をいただいたので、そういうことも踏まえて構成員に今度新しく制度設計する場合に日本でどういうことができるかをご検討いただけたらありがたい。
 よろしいか。
(構成員) 具体的な事例等をまたよく勉強させていただいて考えてまいりたいと思う。
(構成員) ほかにあるか。
 では、ここは給付は一時金とするが、そういった分割払い的なやり方というのはやはり検討していかなければならない問題があるというようにしたいと思う。
 次に進ませていただいてよろしいか。
 それでは次は仮給付である。現行の犯罪被害給付制度により、その制度でより本給付までの期間を短縮するように努めるというのが1つである。
 また、地方公共団体に対して、当座の必要な費用、数十万円だと思うが、金員について貸与するというものを創設するように求め、あるいは貸与制度につき支援基金であるとか支援機構において対応するという案もあるのではないか。本給付をなるべく早くするというのが大原則だろうと思う。それで、この点についてご意見を承りたいと思う。
(構成員) 実際の殺人事件のご遺族の方で事件のショックが大きくて、その後仕事に出ることができなくなり、当然収入がなくなった。全然収入がないので生活保護を受けたいと思い何回か相談には行ったけれども、何回か通ったにもかかわらずとうとうそれは受けることができなかった。しかし、実際にその次の日からはもう食べるものを買うお金もないほど困窮したので、仕方なく損害賠償金という形で加害者の方からお金を少し受け取った。当然まだ刑事裁判が終っていなかったのでご遺族の方にとってみれば、それは受け取りたくもないお金だったわけである。しかし、犯罪被害給付金はもうかなり時間がたっていたけれども、まだ査定中で出ないということであった。結局はその加害者からの損害賠償金によって日々の食費を買わざるを得なくなってしまった。
 そのご遺族の方は本当にそういう状況に置かれてしまうということがとてもショックで、その後被害回復という意味からもおくれてしまいがちになる。せめて日常の生活が何とか行えるように早く仮給付、貸与という形でもそれは構わないが、とにかく被害者がそれ以上みじめな思いをして生活をしていかざるを得ないような状況だけは何とか改善していただきたいと思う。
(構成員) 本給付がどの程度早くなるのかということと、仮給付についてはどのようにお考えか。
(構成員) 未解決事件の被害者が対象と聞いている。
(構成員) 仮給付だと、本給付と額に違いがあったり、あるいは支払うべきでなかったという話になると非常に事務的に煩瑣になってしまうので、むしろ貸与の方がいいのではないか。
(構成員) 貸与であってもとりあえずは自分が受け取るべきもので生活できたということであれば、被害者の方の回復にも、国はそれだけ心配をしてくれてそれなりの貸与金も出してくれたというあたりでとても役に立つと思う。それが加害者に頼らなければいけないというのは被害者にとってとても苦痛なことだと思う。
(構成員) わかった。そういうのがないようにこういう制度はいかがか。
(構成員) 仮給付については平均すると四、五カ月、本給付は七、八カ月である。ただ、これも事案が非常に複雑な場合とか、それから被害者の方にもいろいろな責めに帰すべき事由があるような場合などはもっと長くなる。いずれにしても被害直後の迅速な救済という意味では仮給付といってもまだまだ時間がかかっているということであって、その辺をもっと迅速にできるのかどうか。どこに問題があるのかということは私どもも今検討はしているところである。
(構成員) 貸与というのはいかがか。貸与だから早くなるとも限らないかもしれないが。
(構成員) それは要するに公安委員会から貸与するという形か。
(構成員) いや、都道府県とか地方公共団体である。
(構成員) 貸与ということであれば、それはそれでまた逆にそのお金はお返しいただくという形になるんだろうと思うが、もしそれで迅速な救済ができるのであれば、そういう制度を犯給と別につくっていただくということは非常にありがたいと思う。
(構成員) 現場は貸与についてはどうであるか。
(構成員) 23区では杉並区だけが貸与として一時金たしか30万円を貸している制度はあるが、ほかのところでは見舞金という性格の条例があるところは全国には何ヶ所かあるとは聞いているが、わずかなお金、5万とかである。
(構成員) 20万とかまではある。貸与ではないが。
(構成員) この貸与制度というのはどうお考えか。
(構成員) 貸与でも迅速に出していただけるなら相当に助かるとは思う。だから、それはもし地方自治体でやっていただけるのであれば、ぜひやっていただきたいとは思う。当座の必要なもので貸与ではなくて実際に支給してしまう制度を持っている自治体は結構ある。一番多いのがやはり20万から30万ぐらいまでである。
 それとは別であるが、先ほどの論点整理の集約と関係するけれども、もし仮に入通院中の補償を120万円の補償の中にいろいろ設けていただけるということであれば、そちらの方はやはり迅速に支給していただけるような仕組みをぜひつくって、そうしないとせっかく何のために入通院中の制度を設けるのかという意味がなくなってしまう。
 そういう点は、仕組みそのものとして何らかの迅速にできる方法をお考えいただきたい。
(構成員) わかった。それはそのとおりだと思う。
(構成員) 貸与制度に話が戻るが、ぜひ実現してほしい制度だと思う。仮給付を早めるのは恐らくどんなに努力されても必ず限界というものがあるので、むしろ犯給法よりはより簡便な審査で当座の生活資金を貸与してもらうという制度があればいいと思う。それを今度どのような形で返済するか、犯給法と連動して返済するのかどうかはまた制度的に検討していただければと思う。
(構成員) 貸与という制度で対応できるのであればそれでよろしいと思うが、やはり返済の問題は結構シビアという感じがする。恐らく最も返済を確実にしようと思うと犯給法の給付から天引きするという形になるので、それで皆様のコンセンサスがとれるのであればいいと思うが、それに対しての反発がやはりあるということになるとなかなか貸与というのは貸す側にとっては難しいという気がする。
(構成員) 貸すのであるから返さないといけない。ただ、迅速に何か手を打たないといけないというときに仮給付であれ本給付であれどうしても認定に時間がかかるということが多分あるのだろうと思う。そういう場合に、市町村などで犯罪被害があったという事実に基づいてとりあえずとにかく貸すというのであれば、それは仮給付であれ本給付であれ、それより早くできるのではないかという感じはする。
(構成員) だから、できれば無利息で、それで償還期間も長くしていただきたい。例えば全然違う話であるが、民事法律扶助法があって、支払能力のない方について償還を免除するということがある。それから、自己破産の申請などのように本当に経済的な困窮者の場合は1カ月5,000円ぐらいずつしか償還できないということで低い金額で長期の償還をしているというものもある。
 もし貸与していただく場合には無利息で支払の実情を合わせて安い金額で返済方法を考えていただく。もちろんその間に犯給法の一時金が出ればそれで返すということは当然だとは思う。
(構成員) とにかくそういう大変きめ細かなところまで配慮しないといけないということはわかった。
 今のようなご意見を折り込みたいと思う。
 次であるが、不支給事由・減額事由についてである。これは犯罪被害給付制度での親族間の犯罪における給付制限というのがこのたび緩和されたということもあるので、さらなる緩和が必要かどうかはその運用を待つべきであるというのが基本的な考え方である。これもいろいろなケースによっていろいろあるという感じはする。
 これについて皆さんからご意見をお願いしたいと思う。
 よろしいか。大体この程度で、これからの案の作成に移りたいと思う。
 それから、次であるが、経済的支援の管理・運営はどのように行うべきか、(4)経済的支援制度に関する法形式はどうあるべきかということである。前回申したように、これは経済的支援の対象に関するものが終わった後やった方が議論しやすいのではないかということでここの順番を変えているので、順番を変えてお願いしたい。
 なるべく今日進んでおきたいのでもう少しおつき合いいただきたいと思う。
 経済的支援の対象に関するもの、その対象となるものの範囲はどのようにするべきかということである。まず最初は、海外で被害を受けた日本国籍を有する被害者も新たに対象とすべきかという問題が提起をされている。これは対象外ということでいかがか。あくまでこれは現行でいくというのがある。ご意見を承りたいたいと思う。
 あとは外国人以外の、日本の住居を有する外国人以外の外国人も新たな対象に加えるべきかどうか。
 それから、過失犯の犯罪被害者等を新たに対象に加えるべきかどうか。
 あるいは、財産犯の被害者等を新たに給付対象に加えるべきかどうか。
 この4つはいずれもこのような新たな対象項目については今回はとにかく対象外として、現在の対象でその対象者に対する支給レベルを上げていくということに焦点を絞るべきではないかというのが基本的な考えとなっているが、この点についてもいろいろなご意見があると思うので、この4つを合わせてご意見があればお伺いいたしたいと思う。
(構成員) 海外で受けた日本国籍を有するという方は、現在の犯給制度では全く対象になっていないのか。
 なっていない。
(構成員) それは日本に税金を払って日本の国籍を有していて、たまたま会社の出張で海外に在住していて海外で強盗に遭って殺されたというのを全然補償しないというのはどういうことか。
(構成員) これは犯罪被害が発生したところの法的な仕組みでまず第一次的にやるべきではないか。それを日本でやる場合、どういう犯罪被害に遭ったかというのを認定するのが難しいとかいろいろな理由があるだろうと思う。
(構成員) 海外に出られて被害を受けられた邦人の方については犯給制度の対象になっていないけれども、これについては基本的には構成員がおっしゃったような犯罪被害事実とか帰責性等の調査認定が極めて難しいとか、あるいは危険地域へ自ら渡航されたといった場合をどう扱うのかとか、そういう運用上の難しい点がいろいろとあるということである。
 基本的には海外に出られた方については、その危険負担はご自分で担っていただきたいという考え方、こういう整理でできているということである。
(構成員) 特に私も海外についての意見を述べたいと思う。既に今おっしゃったような点はこの検討会で非常に手続的に難しいということもお聞きしたし、あるいは海外の事例でもどの国も多くの国は対象外にされているということで、そういう実情は理解しているつもりである。しかしながら、海外で被害を受けたということで、すべてがそういう困難さゆえになぜ対象外になるのかというのは私自身は理解できない。
 つまり、基本法で被害を回復、及び自立をする権利と、そして国の責務というものを定められて、そしてまたこの検討会でも連帯共助の精神で、そして自立支援するという基本的な考え方からしても、私は理解できない。
 そういう困難さはあるが、ではどういう条件を付したら可能なのかということが全く考えられないのかどうか。私はそういう観点からこういうようなことであれば可能だということを是非ご検討いただきたいと思う。
(構成員) わかった。これはどう取り扱うか。ご趣旨はよくわかるので、ここのところはカテゴリックではないところがあっていい問題ではないかと思う。ただ、どうやって認定するかとかそういう難しい問題は現実としてあるので、その辺をどうクリアできるかというのは、後で相談させていただこうか。
 今ここでどういう方向というのはないと思う。
(構成員) 先ほどおっしゃった危険な地域ということは条件があっていいと思う。ただ、イギリスでもそういうことは対象外にしているけれども、必ず海外へ行く人にそういうリスクがあるから、またそういう補償もこうなっているからぜひ付保するようにということで徹底しているというなお話も聞いた。もう一方ではそういうことも必要ではないか。今実態がどこまで徹底されるか存じないが。
(構成員) 日本人に対してであるから、検討する。
(構成員) 社会連帯の共助という理念から見れば構成員のおっしゃっているのもっともだと思う。被害を受ける側から見れば、日本で受ける被害も外国で受ける被害も全く同じであって、何ら変わりはない。
 それから、ニューヨークのテロのような場合、旅行している最中にテロに遭って、日本人が被害に遭った場合どうなるのか。極端な例かもしれないが、明らかに危険地域として指定されているわけではないところで、ああいう形で起こった場合どうなるのかということも含めてぜひ検討してもらいたい。
 それから、邦人について外国で被害に遭った場合にどういう手続を踏んでどういう保護とをしているのか。家族とか遺族に対してどういう保護をしているのかも少し調べていただきたい。
(構成員) わかった。
(構成員) 事前にどんなことをアナウンスし、事後にどんなことを保護しているのかということはぜひ調べていただきたいし、我々としても検討すべきことはないか、ぜひここで考えたいと思う。
 わかった。
(構成員) 今まで支援センターでは外国で殺人被害に遭ってご遺族になった方、あるいはナイフなどで刺されて後遺症も残ったというような方たちの相談を受けたことが何件かある。ご遺族の皆さんはわからないがゆえに、例えば刑事裁判に出るにしてももちろん証人となる場合は向こうのお金で通訳さんはつけていただけるが、傍聴であれば自分たちで通訳もお願いしなければいけない、ホテルもとらなければいけないということで大変苦労なさったということを聞いている。ただ、そのとき外国の支援組織の方たちが本当によくしてくれたのでとても助けられたということをおっしゃっていた。
 また、外国でナイフで刺されて日本へ戻ってきた場合、心身の治療あるいは精神的なダメージに対する治療に対しても全部が外国へ行くときの保険でまかなわれるということでもないので経済的負担がとても大きいということも聞いた。ぜひ同じ税金を払っている日本人であるので、外国で被害に遭った場合も何らかの救済措置ができないのかということは検討していただきたいと思う。
(構成員) どうして国が犯罪被害に対して補償しなければいけないかというと、国家が犯罪を起こることを防げなかったことに対する責任というのがあるのではないかと思う。そうすると、国家の管轄外ということになるとそれに対する責務を負うのか、負えないではないかということがあって、ほかの国も外国で起きた犯罪被害については給付しないというふうになっているのではないかと考えているが、それは違うのか。
(構成員) これは後で行政側からも補完していただければと思うが、私は国が犯罪を防止できなかったことの責任の範囲内でということよりも、やはり日本国民で犯罪被害を受けた者に対しては、その被害を受けたのが外国であっても、その者が自立するまでの間は支援していこうというように、そこの概念を広げて考えていいのではないか。
 ただ、おっしゃるように、国家主権の問題というのは無視ができないわけで、どこかの国で起こった事件については当然その国が責任を持ってやっていただくということがあるわけであるから、その兼ね合いで外国まで出ていって責任をとるというのは非常に難しいという仕分けはあるのかもしれない。
 その点どうか。
(構成員) 日本の国として国内で犯罪を防げなかったから犯給制度があって支給するという考え方ではなくて、基本的には犯罪被害を受けられていかなる経済的な支援も受けられない大変お気の毒な方に対してまさに社会の連帯共助の精神で支援をしようというのが今の犯給制度の基本的な考え方である。
 では、どこまで連帯共助が及ぶのかということになるが、基本的には今の法律では我が国の社会の構成員に対する連帯共助の精神という理解であって、そういう意味では海外に出られた方というのはそれには入ってこない。逆にまた日本にいらっしゃる外国人で日本に住所を持って生活の本拠を持っている方はそれに含まれると整理で今の法律はできていると考えている。
(構成員) 犯給法ができたときから、ここの部分は改正されてないのではないか。多分その当時は在外、つまり日本企業の方であるいは政府の方で外国で働かれるという方はそんなにたくさんはいなかったかもしれないが、今はものすごく多いのではないかと思う。外国に観光旅行に行く人までは無理だが、向こうでどうしても仕事の都合上働かなければならない方が増えているという今の日本社会の実情からすれば、日本に税金を払っている人がたまたま外国で被害に遭ったから日本政府の補償を受けられないというのもおかしな気もする。
 だから、現在では立法事実が変わっているということも考慮に入れ、企業で労災適用がある方はいいが、Dさんのような例で、派遣で外国に行ってたまたま自分のアパートで殺されたために業務遂行性がないということで、この事件は労災の公務員災害の適用はないということを言われた。
 そういうことなので、やはり補償の必要性というのがこの法律が制定されたときよりも高まっているということはあるのではないかと思う。
(構成員) 確かに、そういう意味での立法当時からの変化というのはいろいろとあろうかと思う。いろいろな理由で外国に行かれているわけであって、旅行で行かれる方もあればお仕事で行かれる方もあるし、それはさまざまであって、また国もさまざまであろうと思う。その場合に、これを加えて給付の対象にするということになった場合に、やはり先ほど申し上げた実務上の困難さというのがかなり出てくるわけで、そういう点で今海外にいらっしゃる方について、端的に申し上げれば捜査権がなかなか及びにくい。あるいは調査という観点からも国家主権の発動はできにくいという部分がある。これは実際の問題としてかなり大きな問題としてあるわけであり、帰責性の問題をどう判断するのかということもある。
 そういう観点で、例えばイギリスとかにおいても、自分の国の中で起きた犯罪のみを対象としているのではないかと思う。
(構成員) この問題が出たときに、消極的な意見を述べさせていただいた。構成員案と似たような考えであるが、現在たくさんの日本人が出ているが、ほとんど企業の方などは大体会社ベースで補償されている。それから、民間のいろいろな保険が大分充実していて、多分海外に行かれる方、留学の方やあるいは企業で行かれる方、ほとんどの方がそういった保険に加入されていると思う。それで、掛金も渡航費用、滞在費用に比べれば非常に限定された額であるということで、そういう自助努力でかなりカバーされる面はある。
 広く海外の邦人を認めるとなると、自助努力を払っている人とたまたま払っていないために何の補償も受けられない方との不公平といった問題も出てくる。恐らくそういうことも考えて、理念よりもむしろそういう実情を考えて少し消極的な意見を言った。
 それでもしかし、実際に救済が得られず、しかもそれも決して本人自身の努力が足りないというようなことでなくて気の毒なケースがあるということであれば、これは当然救済されていいと思う。そういったかなり限定的な事例があるという場合については対象にしてもいいかと思うが、一般的に広げて対象とするということについては消極的な考えである。
(構成員) 大体ご意見承った。そういうことを踏まえて、ここのところはもう少し詰めて検討してみたい。事務方とも詰めてみたいと思う。ただ対象外というのではなくて、もう少し実情を踏まえ、何かできることがあるのではないかということで詰めたいと思う。
 ほかに何かあるか。
(構成員) 主として財産犯の問題かもしれないが、別の法制の中で検討すべきであるということで、ここで今中心的に検討されている制度とは別個の枠組みが必要だろうというのは理解できるところであるが、その別の法制というのはどうやって検討するかというのが問題であると思います。その課題というのはこの検討会では行わないという整理になるのか。
(構成員) 若干付言することはあっても、これはあくまで我々の対象外である。特に過失犯などは一番問題になるのは自転車とかそういう方たちのようであるので、そういうものは、要するに交通事故の一環としての取扱いというのがよろしいのではないかという漠然とした考えはあるけれども、何も自賠責でやるというところまでは言うつもりはない。ただ、ここでは過失犯あるいは財産犯まで広げるとぼやけてしまうのではないかということで対象外とするという整理にするというのが主眼である。
(構成員) 前にも申し上げたが、主として財産犯の問題であるが、刑事手続との関係では、犯罪被害財産を被害者の方に給付する制度とか、考えられるところを法整備してきているわけであるが、刑事手続にものらない財産犯の被害者が多数いるではないかという議論もあるので、その辺の課題をどうやって検討するかというのは1つの問題ではないかという認識である。
(構成員) わかった。
 そこまでこちらで踏み込んで書かないといけないものであるか。私としては対象外で、そういう意見があったということでも書いておけば済むと思う。
(構成員) いや、別にここでやらないといけないということを申し上げているわけではい。
(構成員) 書いておいた方がいいというのであれば。
(構成員) 主として基本計画上の課題の整理の問題と思う。そこはもう整理の仕方だと思う。
(構成員) 私としてはそこまで踏み込んで書く必要はないかと思う。
 ほかにあるか。
(構成員) 財産犯の方は別の法制でと明確に言えると思うが、過失犯で、今具体的にケースを持っていないのでこういうケースになるということをご指摘できないが、はじめからこれは別の法制でと書き込んでいいかどうかというのは検討させていただきたいとは思う。
(構成員) どうぞご検討いただきたいと思う。
 よろしいか。では、経済的支援の対象とする犯罪被害の程度はどのようであるべきかというところである。当面は現行の被害程度の者を対象とするということで、これも先ほどの問題と同じであるが、本年4月に対象拡大があったばかりであるので、さらなる拡大が必要であるかどうかはその運用を見守るべきではないかという整理である。
 何かこの点について、今具体的に事実があってこれでは都合が悪いというのでもあれば、そういうことも含めてご指摘をいただきたいと思うが、いかがか。
 よろしいか。
 それでは、大体そういった整理でまいりたいと思う。何か後刻お話があればお願いしたいと思う。
 本日の討議はこの程度にしたいと思う。次回は、テロ事件の被害者等に関する特例的な措置に関するところを行いたいと思う。その後は、主としては併せて検討することとされているものにつきまして議論をしてまいりたい。すなわち、損害賠償債務の国による立替払及び求償の是非。それから、2番目が公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非。3番目が、被害直後及び中長期的な居住場所の確保の問題というものについて検討を進めてまいりたいと思う。
 これらの検討はまだ行われておらず、初めての検討になるわけであるが、中間とりまとめを行うスケジュールが大変迫っているので、なるべく効率的に議論を行いたいと思う。その観点から、この3つの問題についてはそれぞれの論点を考える上で、関連の深い省庁からまずは現状等について資料を提供していただき、それに基づいて会議の冒頭ご発言をいただき、その後構成員の検討を行っていくという形をとってはいかがかと思う。
 具体的に申すと、1の損害賠償債務の国による立替払及び求償の是非については、現行制度の中で警察庁、厚生労働省及び求償関係につきましては法務省というのが関係があると思うので、警察庁、厚生労働省、法務省から求償の現状や実行性、問題点等について資料があればそれをご提出いただきご発言をいただく。それから議論に入っていくことにしたいと思う。
 2番目は、公費による弁護士選任、国による損害賠償費用の補償等の是非の問題については、これは法務省から法律扶助制度のある法テラス、あるいは新たに予定されている制度もあるようであるけれども、そういう制度を所管する立場からこの論点についての資料の提出及びご意見等を承ってから議論を始めてはいかがかと思っている。
 3番目の居住場所の確保という問題につきましては、平成19年度予算でこの項目については警察庁において何らかの措置を行うということになっていると承っているので、そういうことについて資料等をお願いした上で議論を進めてはいかがかと思う。
 そこで、いずれにしても各関係省庁から資料等の提出をいただくわけであるが、可能な限り3月5日ごろまでにお願いできたらと思う。大変忙しい進行になるわけであるが、ぜひご協力をいただきたいと思う。よろしくお願いしたい。
(構成員) 公費による弁護士の選任のところで、もしできれば日弁連の犯罪被害者支援委員会があるので、公費による支援弁護士制度をこちらで勝手にプランニングしても、現実にそれを担ってもらう弁護士が果たしているのかどうかというのが非常に大きな問題である。法テラスも被疑者弁護で今大問題になって大混乱になっているような実情である。法テラスと同時に弁護士の体制がとれるのかというあたりを聞くために日弁連犯罪被害者支援委員会の方からも説明に来てもらうのがいいのではないかと思う。
(構成員) わかった。その方向で検討させていただく。日弁連の現場でやっておられる方であるか。
(構成員) そうである。
(構成員) それでは、これをもって第12回の経済的支援に関する検討会を終了する。



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