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(議事次第) 1.開会 2.第11回検討会の日程調整 3.経済的支援制度のあるべき姿についての検討(4) 4.その他 5.閉会 (配布資料)
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(議事内容)
○内閣府犯罪被害者等支援推進室長 皆さん、こんにちは。定刻になりましたので、ただいまから第9回の経済支援に関する検討会を開催いたします。
司会の方を國松座長にお願い申し上げます。
○國松座長 それでは、事務局から議事について説明事項ありませんか。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 本日の議事について説明いたします。議事次第にございますように、本日はまず次々回、第11回の検討会の日程調整を行っていただき、その後経済支援のあるべき姿について引き続き検討を行いたいと考えております。本日の検討で一応論点一通り検討を終える予定となっております。
以上です。
(日程調整)
○國松座長 そうですか。それでは、1月24日、水曜日の3時からという日程でご都合合わせていただくと一番よろしいようでございますが、いいですか。
それでは、1月24日午後3時からということで決めたいと思います。
それでは、経済的支援制度のあるべき姿についての検討に進みます。何点か資料があるようですので、事務局からご説明をお願いいたします。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 まず、論点整理関係の資料1はこの間から配布しております論点整理の資料でございます。本日もこれを用いて検討してまいりたいというふうに考えております。
それから、課税等関係資料というのがございます。1枚めくっていただきまして、一応総務省と財務省と、それから厚生労働省とそういう被害によって所得が減った場合にどんな救済措置があるのかということで質問をいたしまして回答をいただいているものであります。最初の総務省の関係は大きく分けて、これは国税も地方税もほとんど変わらないと思うんですけれども、上の方が徴収の猶予ということで、納入することができないと認められるときには徴収の猶予ができるという規定がございますので、猶予は可能であるということであります。それから、その下の雑損控除の方ですけれども、こっちの方は単に収入が減ったというだけではだめで、盗難、横領の被害みたいに実際に資産が減少したという事実がないと適用がないということですので、ここで言えば(1)の徴収の猶予の方はまだ適用の余地があると。
裏ですけれども、所得が激減したときに翌年の納税が減免される場合はあり得るのかということですけれども、一応地方税法に参考の条文載っておりますけれども、条例の定めるところにより減免ができるというふうな規定がございます。
それから、国税の方でありますけれども、財務省の関係で国の方も大体同じような感じなんですが、これはインターネットの資料で大変申しわけございませんけれども、1枚目がいわゆる雑損控除で、これについてはここにございますように、そういうやはり資産が減らないとだめだということで、これは収入が減ったら減ったというだけでは適用がないと。収入が減ったらその分は減ったやつが翌々年になりますかね、収入が減った年の翌年の税金に反映されるわけですから、その単に収入が減ったというだけでは前の年収入が多かったからといってその減免とか猶予は難しいということであります。
それから、ちょっと予定納税のところは省きまして。
その次に災害を受けたことによる納税の猶予というページがございますけれども、これも左側の方は財産が減ったということですから余り収入が減少したというのは関係ない。右側の方がやはり納付困難だと認められれば猶予があり得るということで、こちらはただ猶予といっても2年ぐらいなんですけれども、そういう制度がありますということであります。
それから、厚生労働省の資料については資料2-3ですけれども、国民健康保険や国民年金に関しても徴収猶予の制度があるということで、これは後ほど厚生労働省の方からご説明をいただければというふうに思っております。
それから、一昨日、白井構成員の方から意見書が出ておりますので、そこに添付をさせていただいております。
以上でございます。
○國松座長 それでは、資料2-3ですか、厚生労働省関係の資料につきまして、厚生労働省からご説明ありますか。どうぞ。
○厚生労働省政策評価審議官 国民健康保険につきましては、保険料の減免、徴収猶予が制度上あるわけでございますが、その基準とは条例に基づいて定められることになっておりまして、条例によって猶予あるいは減免、免除ということもあり得るということでございます。
それから、次のページでございますが、国民年金、これにつきましても保険料の減免や徴収猶予を行うことができることとなっておりまして。失業あるいは事業の休止、廃止などによって保険料納付が困難と認められるときは申請によって減免あるいは猶予ということもあり得るという仕組みになっているところでございます。
○國松座長 どうもありがとうございました。
今のご説明について何かご質問ありますか。よろしゅうございますか。
それでは、白井構成員から新たに意見書の提出があります。具体的な中身は私もちょっと全部見ているわけではありませんが、本日の検討事項に関連する部分もあるようでございます。その点につきましてはその検討の際にご説明をいただくと。また、既に検討済みの事項に関する部分につきましては次回以降これまでの意見を踏まえて各論点を再検討することになっておりますので、その際にご発言いただければと思います。
今の段階で白井構成員から何か特にご発言がございますか。
○白井構成員 白井ですけれども。きょう提出いたしましたのは、日本弁護士連合会の方で犯罪被害者補償制度についても意見書を理事会の方で正式決定なさったということなものですから、参考までにその資料として提出させていただきました。特にこれに基づいて私の意見をどうという趣旨ではございませんが、一応これにはこれからまた検討課題の中に入ってくるかもしれませんけれども、公費による犯罪被害者弁護の制度のあり方等についてもかなり詳しく載っておりますので参考になるのではないかというふうに思います。それと、一応やはり今までここで議論してきた自賠責並みのということもこの日弁連の案にも盛られておりますので、ご参考にしていただきたいと思います。
それから、きょうになってしまって大変申しわけなかったんですが、新聞記事を今まで検討した論点と関係すると思って出させていただきました。これは犯給法ができる前の段階の昭和50年当時の資料を、当時国会の参考人として陳述されました市瀬さんとか大谷先生と一緒に活動されていた方が新聞の切り抜きとして持っていたものを私がコピーさせていただいたものでございますが。私も初めてこのときこれを知ったんですが、法務省が当時このような補償制度の案を作成していたということで、これが今まで我々がここで検討してきた中でかなり労災補償型の被害者補償制度というものを法務省としては案として作成していたということで、療養関係とか、その他私の方で提案させてもらっております休業補償の点なども含めて法務省案ができていたということであります。
それから、その法務省の方で予算がどれくらいかかるかということまで試算されていたというのが、この「国が肩代わり補償」という見出しの新聞記事でありまして。これによりますと法務省は当時国庫の支出は年間約60億円程度というふうに、当時の金額で60億円ということですので、かなり相当の手厚い保護というものを法務省では立案されていたのではないかと。場合によって60億円という推定の、もし法務省資料でもあればどのような資料に基づいてこのような想定をされていたのかということをこれからの我々の検討にとっても大いに参考になるのではないかと思いまして出させていただきました。
それから、もう1つ。ここで検討した中で、今苦しんでいる人で過去に犯罪を受けた方で非常に苦しんでいる方には、できれば新しくできる補償制度についてさかのぼって適用してもらえないだろうかということをお願いしているわけですが。
このもう1つの公明党の当時被害者補償法案によりますと、一番下の欄でございますが、この法律の交付の日以前20年間に行われた行為の犯罪によってということで、そういう案も提出されていたようでありますが。現在のような犯給法ができているということでございますが。
いずれにしても当時そのようなことが現実に必要なものとして各政党とか被害者団体からも強く望まれていたという資料でございます。
ほかにもかなり貴重な新聞記事がございますが、とりあえず今日はこれを出させていただきました。
○國松座長 どうもありがとうございました。
これそれぞれの中身はちょっと今私見ておりませんけれども、いずれにいたしましてもこれまでいろいろと論点整理あるいは今回の議論の中で出てきたものがかなりあるわけでありまして。先般来申しておりますように、ひとあたり終わった後、もう一回各論点について再検討するということにもなっております。したがいまして、そのときにこれを踏まえて主としては白井構成員からこれを踏まえたご発言をいただければ、我々のこの検討会の議論に、このご提出になった皆様方の趣旨が生きてくるのではないかと思います。その都度、その項目にいきましたときにご発言をいただいたらと思います。それでよろしゅうございますか。
○白井構成員 はい。
○國松座長 それでは、そういうことで本日の検討部分に入ってまいりたいと思います。資料1に沿ってご意見を承っていくわけでございますが。前回は論点の資料の2ページの3の(2)給付の方法をご検討いただいた後、(3)と(4)の検討は後に回しまして、3ページに進みまして4の(1)の経済的支援の対象となるものの範囲はどのようにあるべきかという問題についてご検討をいただいております。本日はその続きまして4の(2)経済的支援の対象とする犯罪被害の程度はどのようであるべきかという項目から検討を再開いたしたいと思います。
犯罪被害の程度に関しましては、これは現行の犯給制度では、被害者の死亡、障害あるいは重傷病の場合を対象としております。このうち重傷病につきましては本年4月から改正がございまして、加療1カ月以上でありかつ入院が3日以上、精神疾患につきましては3日以上労務に服することができない程度の症状という症状にまで拡大をされました。今回ご議論いただくのはさらに対象とする犯罪被害の程度をこの今の犯給制度よりも拡大する必要があるかどうかということについてのご意見を伺いたいと思いますが。
今の制度改正後まだ時間もたってはいないのでありますが、その給付の状況を見て何かここでご参考になるようなこと、警察庁の方で何かありますか。
○警察庁長官官房総括審議官 今お話がありましたように、新しく重傷病給付金の支給対象の拡大をしたということで、今年の4月1日から施行したわけでございます。この適用対象は施行日以降、したがって本年4月1日以降に発生した事案にかかる申請についてということになっています。
そこで、申請の状況をちょっとご紹介申し上げますと、本年4月1日以降、10月31日までの間でございますけれども、従来14日以上の入院が必要であるということになっていましたが、新しい制度では3日以上に緩和されました。そこで、この3日以上14日未満の入院にかかる申請が何件あったかということでございますが、これが今のところ7件でございます。それから、あわせて精神疾患の場合には3日以上労務に服することができない程度の場合には申請ができることになりましたけれども、これが現段階で2件ということでございまして、比較的少ないなという感じを実は持っております。ただ、幾つかの県でちょっと調べましたら、これ以外にも相当数支給対象になる事案を都道府県警察レベルで把握しているということでございまして、したがってこれからこういったものの申請が相当数出てくるのではないかというふうに考えております。
ちなみに、こういうことで申請件数は少ないんですけれども、まだ申請されていない方についていろいろお話を聞いてみたところ、どうせ1年分もらえるんだったらまだゆっくり申請しますという方もいらっしゃったということでございます。
○國松座長 この点につきまして、支給範囲拡大というものにつきましてのご意見がありましたらどうぞお願いいたします。何かございませんか。
これは今ご説明がありましたように、拡大してからまだ間がないので、もうちょっと状況を見てみないとよくわからんというところがございますので、新たな制度設計を考えている場合もある程度今の状況を見てからでないと検討のしようがないところもあるのかなと思います。もうちょっと状況を見るということでもよろしいのではないかと思います。特にご発表いただけるようなことが何かございますでしょうか。
○平井構成員 この重傷病についての適用でございますが、2点ポイントあるかと思うんです。1つは、自己負担を補償される範囲の問題、そしてここでは先ほど来ご説明のような形でお決めになっているわけですが。もう1つは対象期間の問題です。ここでのヒアリングでは1年間というふうにお聞きしたわけでありますが、この2点について考える必要があるかと思うんですが。特に期間については1年間ということであればこれはより重症で困っておられる方ということで1年も治療が要する場合というのはより支援の必要性といいますか補償の必要性が高いと思われますし、またそれは件数としてはそれほど多くはないのではないかと思われますので、そういった点についてどのようにお考えになっているか少しご説明をお願いしたいと思います。
○警察庁長官官房総括審議官 これは前にもご説明をしたかと思うんですけれども、まず給付の範囲については保険給付の分を除く自己負担分ということになっておりますけれども、これはほかの制度を見てもやはりこういったところが今の現段階では妥当なのかなと思います。要するに健康保険のレベルでは一応必要な部分の、通常必要と認められる部分の療養については保険給付対象にしているという形でございますから、ちょっとこれをはみ出すことは現段階では難しいのかなというふうに考えております。ただ、これはまたご議論いただければいいと思います。
もう1点の支給期間1年間は短いのではないかということですけれども、これも前にちょっとお話ししましたが、ほとんどのケースではこれについてはカバーができているということでございます。ただ、カバーできていない方についてどの程度お困りの方がいらっしゃるかについては引き続き調べてみたいということでございます。
○國松座長 よろしいですか。どうぞ。
○平井構成員 したがいまして、特に期間のところについて今のお話で考える限り、それほど大きな負担ということにならないということであれば、期間の延長といいますか、基本的にはそういう方については補償していく方向で考えるというのが妥当ではないかなと思うんですけれども。
○警察庁長官官房総括審議官 その点を含めてまたご議論いただければと思います。
○國松座長 まさに今拡大した状況で1年間でいいのか悪いのかというのについては、大体それでカバーできているのではないかという説明があるわけですけれども、そうでもないよというのが何かあれば、それを踏まえてまた我々の制度、答申を出すときに何か盛り込まなければいけないのではないかと思いますが。その点いかが。
今年の4月に広がっているわけですから、その場合は一応もうちょっと様子を見てみようというような対応をする方がいいのではないかなと思いますけれどもね。ただ、そう言いながらも、いや、それではカバーできない、既にこういう事実があるよというのであればまたそれについて検討していくということではないのかと思いますけれども。
ですから、議論は1年でいいのか悪いのかというのでなくて、1年にしてそれで不都合があるのかどうかという事実を踏まえてご議論をさらに進めたらと思うのでありますが。そのためにはまだちょっと状況がやや流動的であるということは言えるのではないかと思います。
何かほかにご発言があれば。どうぞ。
○白井構成員 ずっと前にこの検討会に警察庁の方から後遺障害のデータを今までに何級について何人ぐらい支給したかというデータを出していただいたと思うんですけれども。1年以上治療の期間がかかっている方というので、過去のもしそういう特に7級以上とかある程度級の重い障害の方についてはかなり治療期間も長くなっている方もおられるのではないかと思うんですね。再々私が例に出します山本鉄兵君の例なんかでも1年をゆうに超えて何年間も療養しているわけですけれども。そういう今まであるそういう資料に基づいてもある程度1年以上療養を必要とされていた方々というのはわかるのではないかと思います。
○國松座長 その点はどうですか。
○警察庁長官官房総括審議官 その点も含めて調べたところ、ほとんどのケースで1年未満でおさまっているので、制度としては今回1年以内ということで立案をして、それを実施に移しているわけでございます。ただ、この制度は始まったばかりなので、1年の支給でもってその後またさらに療養が必要で相当大きな負担がかかっているという方がたくさんいらっしゃるという話であればこれまた考えるべきなんですけれども、とりあえず我々は1年でおおむねおさまっているというふうに考えていますから、これでしばらくは様子を見たい。ただ、引き続きこれで漏れている方々がどれくらいいて、どれぐらいお困りかについては調べてみたいということでございます。
○國松座長 この問題につきましては、繰り返すようでありますが、ちょっと現在の制度の実施状況を見てからさらに検討するということでよろしいのではないかと思うのですが。何かもうちょっとここできちっと議論した方がいいというご議論があればまたそれについては、今やるかもう一回立ち戻ってやりたいと思いますけれども。
よろしゅうございましょうか。
では、また引き続き少しここで期間の延長等含めて、あるいは被害の程度の拡大を含めてこうした方がいいというようなご意見がありましたら、また次回以降でご議論いただいたらと思いますが、今日のところはこの程度で、この部分については通過といいますか終わった方がよろしいのではないかと思います。よろしゅうございますか。
それでは、次に移りたいと思います。次は、5のテロ事件の被害者等に対する特例的措置に関するものという項でございます。この点につきましては私から若干提起をしておるところでありますので、後ほど私からも発言をしたいと思います。その前に、平井構成員から、ここでご発言がありましたらお願いいたします。
○平井構成員 テロ被害者についての特例についてですが、9月にヨーロッパ各国へ調査に行ってまいりましたけれども、基本的にはどの国もいわゆる犯罪被害者補償制度の適用ということについては同様に適用されているということでした。何か特例の措置を設けられているということは補償制度としてはなかったというように理解しております。ただ、イギリスのように特別法で救済されるといいますか、新しいファンドで補償をされていくということはございますが、補償制度としてはそういうことではなかったかと。
ただ、対象者について1つは国内の旅行者が特例として適用されています。国内に外国人で居住されている人ということだけではなくて、国内でたまたま旅行をされていて被害に遭われたというケースについても基本的にドイツを除いては適用というように理解をしておりますし。もう1つは海外の旅行者、この範囲もすべてかというわけにはいかないのかもわかりませんけれども、海外の旅行者についても適用の方向で検討されていたのではないかと思います。私としてはそういう観点から検討していくのがいいのではないかと考えます。
○國松座長 この点につきましては高橋構成員、何かご発言がございますでしょうか。
○高橋構成員 私たち自身、刑事裁判でも地下鉄サリン事件、松本サリン事件はテロ事件というふうに認定されておりまして、しかし被害者の救済的救済というのが何もない。これまでの現行法の中での救済でしかないということで、加害者に資産がない場合あるいは少ない場合には非常に被害回復が難しいという状況があります。
そういう中で特例法の措置をいただいておりまして、その1つにオウム真理教が破産になりましたけれども、破産の配当を受ける場合に通常でしたらば破産の時点での資産を債権者が配当を受けるということだと思いますけれども、その後のオウム真理教、アーレフというふうに改名していますけれども、アーレフが持っている資産についてもオウム真理教と同じではないかということでそのアーレフの資産も管財人が損害賠償責任を課すということでいまだに管財人に対しての賠償金の支払を続けているというところでございますけれども。
被害者としては心情的にオウム真理教には早く解散をしてもらいたいけれども、賠償責任を果たすためにはオウム真理教という団体が存在するのもいた仕方がないという矛盾した状況がありまして。非常にこういう状況で被害者が置かれていて11年、間もなく12年になりますけれども、こういう状況でいるということが非常に被害回復をおくらせているということがあります。
できれば、これまで11年間非常に管財人のご尽力もありまして何とか支払をさせてきたオウム真理教に対して支払をさせてきたという状況がありますけれども、そこまで被害者自身も自助努力をしてきてここに至っているわけで、しかもこれまでの回復状況が今年の10月で34%という状況なので、配当率がですね、それも損害額ではなくて債権認定額ということですから本当にひどい状況だなというふうに思っています。できれば少なくとも債権額だけでも100%被害回復をしたいというふうには思っています。何らかのそういう措置を国にはとっていただきたいというそういう活動を今でも続けております。
以上です。
○國松座長 私がこの問題につきまして、実はこれから先は私の意見でありますが、原爆被爆者補償法をモデルにした給付体系の創設を考えたらどうかというようなことを書きましたのは、若干不正確な言い方になるのかもしれませんが、テロ行為というのは本当にある意味では多様でありますし、なかなか定義というのが難しいところがあると思います。ただ、国または社会に対するテロ行為であって、無差別大量に殺傷が生じるというようなケースというのはこれは原爆に匹敵するというのはなかなか難しいのかもしれませんが、全く無辜の被害者が大量に発生するという意味では原爆の場合に準じた何らかの特例的な措置というものをとらないとある意味では均衡を失するのではないかという感じを強くもっております。
もちろん、そうした大量無差別のテロ行為による被害者も被害者でありますから一般的な被害者が受けるべき救済措置というのは当然受けると。その救済措置が現行法では少し足りないので、それをもう少し広げようという議論は我々はやっているわけでありますので、当然広がれば広がるほど、テロの被害者に対する救済措置も当然充実していくというこの関係があるのでありますが。やはりこの、典型的に言えば9・11、日本で言えば地下鉄サリン事件ではないかと思うのでありますが、そういった大規模なしかも無差別の、被害者本人には全く何の縁もゆかりもないような犯罪で被害を受けた場合には、やはり何らかの一般被害者と違った特例措置がとられるべきではないか。
外国の場合ももちろん一般的な被害者としては扱われるわけでありますが、その起こった事案につきまして、例えば9・11というのにつきましては全く別の仕組みが発足しております。ロンドンの地下鉄事件でもそうであります。どちらかというとまさに社会連帯といいますか、民間の寄附を募ったりいろいろなところから金を集めたりしながらそれによって特別な措置を迅速に行っていく仕組みができているわけでありますけれども、やはり国、社会に対する大規模なテロ行為というものが起こった場合には、それに対して生じた事案に応じて何らかの特例措置をとる、そういう仕組みができていないとある意味では文明国家としてやや問題があるということにもなりかねないと思うわけであります。
ただ、そういうことで私もいろいろと考えたわけでありますが、この事前にこういうテロ行為があったらこういう救済措置をとろうということをその具体的な事件が起こる前にいろいろと制度設計をしようといたしますとちょっとなかなか難しい。どういうテロ行為のときに救済措置をとるのか典型的なものはわかりやすいけれども、それをどう一般的、包括的に拾っていくのかというのはなかなか難しいところがあると思います。ただ、今のところの私の考えとしては、そういうものが起こったときにいつまでも何の手も打たない、破産管財人の行動を国が追っかけていくというようなことだけではちょっと済まないところがあると思います。典型的には9・11型の事件というものが仮に日本で起こるようなことがあった場合には直ちに迅速に救済措置を被害者にとってとっていくと。それは一般の犯罪被害者に若干の上乗せをしたもの、その被害の対応に応じてきちっとした手を、その発生した事案に応じてとっていくということが必要だろうと思います。そういうことを我々が答申案をまとめるときに何らかの形で我々のこの検討会の結論として答申なら答申の中に盛り込んでいくべきではないのかなという点は考えておるところでございます。
これは、私の全くの私見でございますが、こういったことにつきまして、きょうは警察庁、法務省の構成員も見えておられますので、それぞれにつきましてご意見があればお伺いしたいと思います。
警察庁、いかがですか。
○警察庁長官官房総括審議官 今お話があったとおりだと思うんですけれども、問題点としては1つはテロとは何かということが事案によって千差万別で、目的も違えば対象も違うということがありますので、それぞれに則してものごとは考えていくべきではないか。また、一般の犯罪被害者に比べてそういう方に対して手厚い支援をするとすれば、まさにその事案の性格に応じてそういった根拠といいますか理由も出てくるんだろうと思います。したがって、一概に一般的にテロ被害者に対して手厚い支援をするということはなかなか難しいのではないかなと思います。
また、諸外国の立法例を見ても今、平井構成員もおっしゃったように、個別の事案に則して行ったケースはありますけれども、テロ被害一般についてというふうな制度はないというふうに認識しておりますので、もしやるとすれば個別の事案に則して検討されるべきではないかと思います。
○國松座長 法務省、いかがですか。
○法務省大臣官房審議官 私も今警察庁の方から言われたことと基本的に同じでございます。テロというのはもともと非常に定義が難しいというふうに言われておりますけれども、先ほど座長の方で言われたのは、その中でも無差別大量といったような一定の類型を念頭に置いたテロ事件ということなのかなというふうに思いましたが、その場合でも、動機、目的等も含めて考えれば、いろいろな事件があり得るのかなという感じがしております。そういうものをどうやって切り取って、どういう理由でどういう上乗せをするのかといったあたりはなかなか難しい問題かなという感じがしております。
○國松座長 私も事前に包括的にこういうテロ行為に対してはこういう救済をという規定をつくるというのは非常に難しいと思いますが、起こった事案に応じては迅速に、これは1つの政治決断だと思いますけれども、迅速に救済の手を打つというのはやはり必要なのではないかと。特にこれからは、こういうことが日本で起こってはいけませんけれども、NBCテロというようなことが言われています。今の国際テロの主流は先ほどもイラクであったようで、爆弾事故であります。そういうのは被害の対応としては外傷系の死傷がダーッと起こるということでありますが、生物化学テロとかましていわんや場合によってはダーティーボンプのようなものが使われるというような事態も想定しておかなければならない事態に今なっているわけでありますので。そういうことが起こりますと限りなく、まさに原爆補償法的な法律も必要である。ただ、それをあらかじめ書いておくといったっていつ起こるかわからない、どんな対応で起こるかもわからないようなことについてなかなか難しいのかもしれませんが。
ですから、事前には難しいのかもしれませんけれども、起こった場合にはその事案の対応に応じて直ちに手を打つというような措置がとれるような仕組みを考えるべきであるというようなことはこの検討会で決まったこととして何らかの形で政府の方に意思表示をしていくべきではないかというのが私の考えでございます。
この点につきまして何かご発言ございましたらお願いいたします。どうぞ。
○高橋構成員 高橋です。テロといって、地下鉄サリン事件の場合には、松本サリン事件もそうなんですけれども、国あるいは松本の場合には裁判所ですけれども、国にかわって被害を受けたものということがありますので、やはりその被害回復というのは国の責任で被害回復を図っていただきたいということがあります。その方法として1つの例として、私たちも既存の制度で学んだ中で、警察官への援護法ですかね、あれと、まさに國松構成員がおっしゃった被爆者援護法ですね、そういうものがあると思っています。
それから、テロということが定義みたいなものがどうしたらいいのかということは私にはもちろん全然わかりませんけれども、ただやはり裁判の判決で出るのは、裁判所はそうすると何を根拠にテロというふうにしたのかというのを1つ知りたいなというのがあります。判決でテロというふうに言われているということ。
それからあと、ちょっと知りたいなと思ったのが、チリの大使館が占拠されたとき、あの後はどうなったのかということがちょっと知りたいなというふうに思いました。
それから、私の意見として、国の安全、日本の治安ということから考えまして、テロの被害者に対するきちんとした補償がなされているということはそこから日本がテロ対策が充実しているというふうにも諸外国から見られるということであるので、やはりテロ対策の一環として被害者への補償制度というのを設けていただけたらというふうに思います。
○國松座長 わかりました。ご意見の方は承りました。チリの事件の、あれはペルーですよね。あのときは被害者というか占拠された、拘束されたのは大体日本人が多いんですけれども。あれはどんな被害があったのか。
○高橋構成員 被害者ですね。
○國松座長 かなり精神的にまいった人もおればけがをした人もいる、そういうものに対してはどういう補償が。
○警察庁長官官房総括審議官 その点、私どもの方で特に犯罪被害者給付金の申請を受けたというようなことは聞いておりませんので、それ以外に何かあったのかそこまで承知していませんけれども、少し調べて。
○國松座長 外務省の話かもしれませんので、後でちょっと調べておきます。ご意見の部分は承っておきます。
テロというのは、非常に地位の高いものが個人的に殺傷されるというものもテロですし、それから地下鉄サリン事件もテロですし9・11もテロというようなことで非常に幅広なものですから、まさに地下鉄サリン事件の救済措置をどうするか、それがNBCでやったのかあるいはただの爆弾のテロなのか、それに応じて、事後的に手を打つということが必要であろうということでございます。
何かこの点についてございませんでしょうか。どうぞ。
○飛鳥井構成員 そういう場合は特例措置として、今の例えば現在の犯給制度の枠外のようなものについてもケースバイケースで応じていくということになるんでしょうか。というのは、座長が言われたようにNBCテロでどういう手段が使われるかによって医療の需要も違いますし、後遺症のあり方も全然違いますし、後遺症の期間も全然違ってきますよね。それから、最初はけがの処置ですけれども、そのうち後遺症の問題と、それからあと圧倒的に生じるのはカウンセリングサービスで大体被害者本人と遺族に対してどこの国でもカウンセリングサービスが行われますけれども。そうすると、現在の犯給制度とまたちょっとさらに上乗せした特別なものが必要になってくるんだと思うんですけれども。そういうのもケースバイケースでそのときの需要に応じて何か立法化しようということになるんでしょうか。
○國松座長 私はそういうふうに考えているんでありまして、まさに被害の、あるいはテロに使われた物質といいますかそういうものによって全然違ってくると思うんですね。ただ、しかし、違ってもそれに応じて十分な措置をとってまいりませんと、一般の犯罪被害者のための例えば医療費の自己負担分とかそんなこと言っておれないケースが随分あるんだろうと思うんです。したがいまして、そういうものについては国が、まさに先ほど申しましたように、政治的な決断ですけれども、直ちに特別措置法をつくって救済していくというのがなければならないと思います。9・11でもロンドンのあれでも、もちろん国と諸団体が一緒になっていろいろな基金をつくってやっていくというような仕組みができているんだろうと思いますね。日本もそういうものをつくるような方向で措置をしていかなければならないのではないかというように思うわけでありまして。
その問題は若干一般の被害者救済といいますか、経済的支援とちょっと違いますけれども、そういうテロについてはそれなりの特例措置をとるべきであるということをこの検討会としても発言をしておくべきではないかというのが私の意見でございます。
どうぞ。
○岩村構成員 今座長がおっしゃったように、1つは特別措置法というやり方というのもあると思いますし、アイデアとしては、現実性があるかどうかはちょっと別ですが、アイデアとしては災害の場合の災害救助法で災害地域を認定してそこに集中的に何かやるというやり方が現行法上もありますよね。ですから、仕組み方としては、例えばテロについては行政がやるかどこがやるかわかりませんけれども、テロであるということを認定して、そして特例的に何かいろいろなものを集中的に動かすというそういう仕組み方もアイデアとしてはあるかなという気はいたします。
○國松座長 それともう1つは何か基金的なものがあれば、そういうところからの捻出ということもあるんだろうと思います。その基金の問題等についてはまた後ほど触れたいと思います。
いろいろな仕組みがありますが、とにかくどういう仕組みで発動するかというのはまさに政府がイニシアチブとって決断としてやっていくということが必要だと思いますので、そのことを強く求めたいということでございます。
どうぞ。
○平井構成員 私も全く賛成なんですが。イギリスでもフランスでも既存の申請、裁定というそういうプロセスではなくして、独自の組織で決めて支給し、被害救済をしています。ですから、通常の犯罪被害とは全く異なるスピードで対処されるているのです。そのことは非常に大事だというふうにお聞きしましたので、そういうことも含めて検討していけばいいと思います。
○國松座長 ほかに何かございますか。
この問題につきましてはもう一回再検討するまでに1つの成案のようなものをまとめまして皆様の方に各構成員にも提示して、それについて詰めていきたいというふうに思いますが。大体若干事前に包括的、一般的に規定するのは難しいにしても、事案が起こった場合に迅速な特例措置をとると。それは特例措置法をつくるという場合もあるし、岩村構成員がおっしゃったように、何か別の法律をそこへ地域的にかぶせてくるというやり方もありましょうし、基金というようなやり方もあるのかもしれませんし。いずれにいたしましても全然別枠での迅速な措置というものがとられるべきであるという方向でちょっと案をまとめてみたいと思います。
どうぞ。
○瀬川構成員 特に独自の意見を持っているわけではないんですけれども。地下鉄サリン事件が発生して、我が国の犯罪対策は大きな衝撃を受けました。非常に歴史的な事件であったというふうに思います。それから、最近、リスク社会化がいわれ、いろいろな危険性が我々を取りかこんでいることが問題となっている。そういう意味で現代国家としての体裁としてもやはりテロに対するきちっとした犯罪対策のみならず被害化対策もきちっと持っているというのがやはり望ましい。私は特別法かどうか別としまして、この報告書の中にきちっとした被害化対策の原理原則を定めておく必要があると考えます。
高橋構成員が先ほど迅速性においてまだまだ不十分な点があると言われ、そのほか事件の経験から我々が反省すべき点、犯罪被害者に対する施策として不十分な点、今日でなくて結構ですのでまた出されて、それを我々としてこういう事件が起こった場合にこういう対策をとりたいという1つの宣言的なものが必要ではないかという気がいたします。
○國松座長 わかりました。
どうぞ。
○大久保構成員 今皆様おっしゃっていましたテロ事件に対する特別法、すぐに対応できるような制度をつくるということはすごく大事なことだと思っています。ただ、被害者支援の現場では集団で被害に遭うとさまざまに支援をしてくださる団体等支援者もすぐにできるんですけれども、個々に放置されています犯罪被害者たちは本当にどのようにその日から暮らせばいいのかということを大変苦しんでおりますし。例えば1年目、3年目というようなまた事件の日がめぐってきましても、だれかが何か追悼式等をやってくれるわけでもなく放置されているという孤立感、疎外感ばかりを感じるということも大変現実問題としては大きいわけです。
ですから、そういうしっかりとしたテロの場合はというようなものを盛り込むのであれば、それに絶対負けず劣らずの個々の被害者に対するものもしっかりと盛り込んでいっていただきたいですし。それを読んだとき、個別の被害者とテロとではこんなに違うということは決して感じるようなことのないようなものに仕上げていただきたいと、そのように思います。
○國松座長 ほかに何かご意見ございますか。
どうぞ。
○高橋構成員 飛鳥井先生がおっしゃったことで非常に重要だと思うのは、地下鉄サリン事件の場合、その前に起きた阪神・淡路大震災からPTSDということが世間一般に知られるようになったわけですけれども、非常に精神的な被害というものが大きく取り上げられてくるようになりました。このテロ対策、テロの被害者への経済的被害回復ということはそれだけではなくて、例えばそういう精神的な治療が必要ということになるとこの検討会だけではなくてやはりほかの医療とか、もちろんそこには経済的な資金が必要にはないわけですけれども、いろいろな検討会と一緒に何か検討していかなければいけないということも出てくると思うんですね。
例えば大阪の池田小学校の事件のときにはメンタルサポートチームというのができて、そういう集中的に被害回復、精神的なものもなされたわけですけれども。地下鉄サリン事件の場合には本当に被害者が広範囲にいたということで、集中的に何かを、被害回復のための集中的な何かに当たるということがなかったので、そこら辺がちょっと不幸だったかなというのがあります。
○國松座長 もちろん今の点につきましてはほかの検討会といろいろとすり合わせをやらなきゃいけない、ほかにもいろいろありますので、それはそうしながらやってまいりたいと思います。
ほかによろしゅうございますか。
では、この問題についてはこの程度にいたしまして、次に進みたいと思います。
次は実は前回こういうことが終ってからの方が話としてはいいのではないかということで後回しにした部分に戻りたいと思います。資料1の2ページの3の(3)経済的支援制度の管理・運営はどのように行うべきか、(4)経済的支援制度に関する法形式はどのようであるべきか、というのが残っておりますのでここに戻って検討いたしたいと思います。
この(3)の経済的支援制度の管理・運営はどのように行うべきかということにつきましてご意見を承りたいと思います。何かございますでしょうか。
ここで経済的支援に関するアドバイザー制度の検討というのを、この項目を挙げましたのは実は私でございますのでちょっとご説明をいたします。これは、アドバイザー制度というのは実はほかの検討会でご検討なさっていることとも関連がありますので、そちらの方で検討していただければいいところもあるのかもしれませんが。実はこの経済的支援につきましてもこれまでのご審議でも出ておりましたけれども、制度としてはあるんですけれども、運用のあり方について被害者の方がおわかりにならなくて何となく徒過してしまうというような問題もありますし。それから、日本の社会保障制度というのはかなり整備されているんですが、複雑多岐にわたっておりまして、ほかの社会保障制度の全体像については被害者の方は余りおわかりにならないのも無理からぬところもあるわけであります。そういったようなことにつきまして、やはりそれぞれの被害者の立場に立って、その被害者に対していろいろと支援、アドバイスを与えていく。今までももちろん被害者に対するアドバイスとしてはいろいろなアドバイスがあるわけでありますが、どちらかというと治療的な面とか精神的な立ち直りとかそういう面でのアドバイザー制度なり、コンサルティングであったと思います。私がここで言うアドバイザーというのはそれとちょっと別なのでありまして、経済的に、つまり被害者がこれからいろいろと自立していかなければならない、その自立をしていくのを支援するためのアドバイザーというような感じでありまして、生活支援といいますか経済的な支援のための仕組みが現在どのように用意されているのかというようなことを含めていろいろと助言をするといいますか、ガイダンスを与えていくというような人が必要なのではないか。今までもいわゆるアドバイザーというのとはちょっと違う面があるのかもしれませんが、この経済的支援に関するアドバイザーというものが必要ではないかということでここに挙げているわけでございます。
この点につきましては、大久保構成員からもちょっと。何か大久保さん、ありますか。
○大久保構成員 座長さんのこのアドバイザー制度というもの、どこが行えばいいというような構想として持ってらっしゃいますでしょうか。
○國松座長 大変難しい質問でございまして、ほかの特に第2検討会の方でもやっておられるんですよね。これは府県の。
○大久保構成員 どこを起点としても支援を受けられると。
○國松座長 各地方にいろいろとこれから支援組織ができてくると思うのでありますが、そういう中でそういった社会保障制度であるとかそういうものについてかなりきちっとした知識を持っている方を一人混ぜておいて、そういう被害者に対してこれからの自立についての支援をしていくということを漠然と考えているのでありますけれども。具体的にどこにどうつけてというのは、まだそこまで詰めて考えているわけではありません。
どうぞ。
○高橋構成員 先ほど今日の一番最初にあった税制の問題とかは初期の段階ではやはり教えていただけたらすごく助かるなと。例えば健康保険とか国民健康保険それぞれにはこういうことが書いてあるとは思いますけれども、では犯罪被害者になったらということでそれをピックアップしたものをお知らせいただけるとすごく私たちはたやすくアクセスすることができるということがあります。
それから、地下鉄サリン事件の場合には労災適用になった人が多いので、会社からあなたはもう障害者の制度の方に移った方がよいとかいうことを会社が計算して教えてもらったりしているような状況です。こういうことをつまりアドバイザーがやってくださったらいいということですよね。それは非常に助かります。
○國松座長 実はこの支援のための連携に関する検討会が今審議をしておるわけであります。その中ではアドバイザーというのではなくてコーディネーターという言葉を使っておられるみたいですが、犯罪被害者等支援のコーディネーターや専門的チームの育成のあり方について各地域における犯罪被害者等支援に係る諸機関・団体等の連携、協調の促進に関してご検討なさるということであります。このコーディネーターとか専門的チームという中身をどのようにお考えになられているのかその辺をすり合わせてみないといかんと思いますけれども、その専門的チームの中に、社会保障としてどういうものが受けられるとか、税金の減免措置とかについてのアドバイスをできるような方を入れていく。
従来ありました犯罪被害者に対するアドバイザーというものをもう少し生活支援といいますかそういう方向に広げたような専門チームが必要ではないか。社会保障制度についてある程度包括的な知識を持っておりませんとアドバイスができませんので、そういう方をこれから養成していかなきゃならないというような問題も出てくるのかもしれませんが。
いずれにしても、そういうアドバイザーというのを設けた方がいいのではないかというのが意見であります。
○大久保構成員 そのような観点でしたら、実は被害者支援都民センターは早期援助団体になっておりますので、警察から被害者の方が出ますと警察は被害者の方の了解を得て都民センターに直接連絡がきますので、割合と早い段階から被害者の方に接して、その被害者の方がその時期に必要な支援をきちんと提供するということができていると思います。
ただ、早期援助団体になる前はどちらかといいますと電話相談を受けたりあるいは面接をする中で、精神的な支援というところに視点を置いておりましたので、積極的に支援センターの方からさまざまな既存の社会福祉と連携を結んでそこを紹介して日常生活の立て直しが1日も早くできるような支援ということは行われていませんでしたけれども、早期援助団体になりました段階で、もちろん精神的支援というのは基本的なものです。ただ、でも話を聞くという考え方だけではなくて、やはり被害に遭うことによって自尊心あるいは健全な自己愛というものもなくしてしまいますので、そういうところをもう一度つくりあげるような精神的な支援ですね。それと同時にやはり日常生活支援というものがとても大切だということもわかりましたので、その時点で各関係機関ですね、医療、福祉、もちろん先ほど雑損控除という言葉も出ていましたけれども、泥棒に入られたような方にはそういうような情報も提供するというような支援も行っておりました。
そういう中で都民センターでは精神的な支援、話を聞けるというよりもこれからは日常生活支援に視点を当てていかなければ被害者の方が1日も早く回復をしていくというところに結びつけることはできないということでして、1年半前に、後ろに座っておりますけれども、野崎といいまして社会福祉を出た方を採用して都民センターの中には入れております。それがまさにこれから被害者支援を行っていくときに各関係機関と連携をとって被害者の方がさまざまな資源を活用できて被害回復を図るために必要なコーディネーター役をできる役割というのが社会福祉関係の方だと思いますので。多分各支援センターにもこれからは入っていく可能性も高いのではないかと思っております。その役割は十分果たしていけると思っております。
○國松座長 その場合は都民センターには税金のことも含めて、その方がお見えになった被害者に対して適切なアドバイスを、それぐらいのノウハウを持った方がおられるわけですか。
○大久保構成員 はい、都民センターではどちらかといいますと犯罪被害に遭うことによって破壊された日常生活をもう一度取り戻すという視点で被害者支援を行っておりますので、相談員全員そういう知識を持つように日々の研修、事例検討等深めておりますので、適切に対応できているのではないかと思っております。
○國松座長 どうぞ。
○瀬川構成員 基本的な結論から言いますと、アドバイザー制度あるいはコーディネーター制度は、名称はともかくとして前向きに検討すべきだというふうに思うんです。ただ、大久保さんが言われた東京都のセンターは非常に恵まれた例であって、ほかの地域ではどうでしょうか。今のところ、まだまだ局地的であるといわざるをえないのではないか。この検討会で全国的なものにするという必要性があるというのが第1点であります。
それからもう1つ、被害者支援について断片的というか、内容についてはかなりばらつきがあったかというふうに思います。そういう点でまず経済的支援に限ってこの点を重点的にやるという方向性というのは私は検討に値するというふうに思います。そういう点でそういう経済的支援に重点を置いたそういうアドバイザーあるいはコーディネーターというのはぜひ必要ではないかという気がいたします。
それから、従来は、大久保構成員のお話からもわかるように、やはり精神的なものに今まで重点が置かれてきたわけですし、実際東京都はともかくとして、ほかのセンターを見ますと、経済的支援、税理面で詳しい人というのはあいにく私は余り知りません。現実に私どももここで話を聞いた段階では非常にわかりにくいのはその税制面であり、ほかの社会保障面との関係ですので、その点は全国的にそういうアドバイザーあるいはコーディネーターができるというのは1つの構想として検討すべきであると考えます。
以上です。
○國松座長 ほかに何か。どうぞ。岩村構成員。
○岩村構成員 アドバイザーなりコーディネーターというのは私も重要だと思いますが。恐らく1つのポイントは、経済的支援と精神的支援とかそういったものがばらばらにならないように、1つのところで全部ができるようにするということが1つ重要なんだろうというのが第1点でありまして。
あともう1つは、今そういうアドバイザーなりコーディネーターとしてどういう人が考えられるかというのは、先ほど大久保構成員がおっしゃったとおりで、一番多分近いのは社会福祉で、社会福祉士という資格がありまして、その方々のお仕事が多分一番近いのかなというふうに思います。ただ、税務になるとちょっと専門性が高くなるので、先ほど瀬川先生もおっしゃったように、ちょっと全国的に均一にとなると税理士などの方々から何らかのバックアップを得るとかそういうことがないとちょっとなかなり大変かなという気はいたしますけれども。
いずれにしろ社会福祉関係での人、社会福祉士といった人たちにこの分野に入ってきてもらうということでの対応というのが1つ十分考えられるだろうなというふうには思います。
○國松座長 大久保構成員。
○大久保構成員 岩村構成員がまさにおっしゃったその例えば税で特に詳しい人とおっしゃいましたが、確かにそういう方を支援センターで抱えるということは大変難しいことですので。ただ支援センターでの犯罪被害者の方の回復のための役割は、そのことについてものすごく深く知っているというよりも、ある程度の知識があって、そしてより詳しい人ときちんとつないであげることができる、まさにコーディネーター役ができればその被害者の方の回復のために大きな力になると思うんですね。ただ、また岩村構成員が先ほどおっしゃってくださいましたように、経済的な面での専門家、何々での専門家といいますと被害者の方にとってはまたそこで縦割り的になってしまいますので、すべてのことが網羅的にある程度できる、そういう人が支援センターのようなところにきちっといればいいんだと思いますが。
そうなりますと、ほかの2つの検討会でも今行われていますように、民間援助団体への財政援助ですよね、つまり財源がなければ到底人も雇うことができませんし、適切な方は今別のところで働いているという方が多いわけなんですね。そうしますと、ここ経済的検討の会だけではなくて、ほかのところとも波及してくる問題もまた出てくるかと思います。
○國松座長 どうぞ。
○白井構成員 白井ですけれども。私もこういう経済的な支援ということについての特別の知識を持った支援者というのはどうしても必要じゃないかなというふうに思います。例えば現在の犯給法につきましても警察の方で相当頑張っていただいているとは思いますが、まだ被害者の方にはそういう制度があることすら知らないという方は大勢いらっしゃって、つい二、三日前も日弁連の被害者の委員会の委員の方から国選弁護でたまたま被害者の方とお会いしたところそういう制度があることすら知らないと、殺人事件でですね、そういう被害者の方もいると。そういうことで、むしろ加害者側の弁護士の方からこういう制度があるよというふうに教えたぐらいだというふうなそういうメールが入っているぐらいで。
やはり新しくこれから私たちがここでつくる新しい補償制度というものをいくらつくっても本当に被害者の方々にそれが知られなければ意味がないことなものですから、やはりそれを日常的にきちっと知らせていくというのは担当の機関だけではとても無理だと思うんですね。ですから、そういう意味でこの経済的支援、そういう社会福祉的な知識を持った支援者というのを養成する必要は絶対あると思うんです。
では、それを、やはりその知識というのは独特の知識だと思うんですよね。例えばそれでは医療関係は医療関係でいいんですけれども、では例えば加害者側に民事裁判を起こすときにその民事裁判の費用というのは一体どうなっているのかというそれが一番心配だと。あるいはそういうことまで含めていろいろな意味での経済的な相談というのが必ず被害者の方にはあると思うんですね。その場合に、やはりある程度広いそうした知識をその支援者の方に持っていただくためには、やはり特別なプログラムといいますかマニュアルみたいなものをある程度計画して、そして正確な知識を全国の都道府県でくまなく持っていただくような、また広報していただけるようなシステムといいますかそういうものはどうしても必要なんじゃないかなと私は思いますけれども。
○國松座長 佐々木構成員。
○佐々木構成員 警察の方で犯罪被害者の対策に力を入れるようになって、多分何かパンフレットとか何とかつくっておられませんでしたか、犯給法が適用になりますとかいろいろあなたはこういう支援を受けられますとか、何かそのように記憶しているんですけれども、それはどの程度機能していますか。
○警察庁長官官房総括審議官 一定の犯罪被害者に対して「被害者の手引」というパンフレットを配っています。これは犯給制度はもとより、刑事、民事の裁判がどう進んでいくのかということについて書いてありますけれども、税の問題まではたしか書いてなかったというふうには思います。それとは別に、被害者の方については被害者の支援員がつきます。もしご質問があれば、当然うちの支援員はそのご質問を伺って調べて何らかのご回答をするということはやっているかと思います。ただ、それがすべての制度について網羅的にできているかどうかちょっとそこまで自信がないんですけれども、可能な限り努力は今進めているという状況ではあります。
○國松座長 どうぞ。
○飛鳥井構成員 ご趣旨は大変理解できますし、恐らくそういう人たちができればサービス向上すると思うんです。福祉の領域ではよくケースマネージャーとかケアマネージャーといいましていろいろな多岐にわたるサービスの知識を得ていて、しかもその人のニーズを評価して的確にサービスとつなげるといったようなそういうキーパーソン的な人が必ず必要でして、そういう活動をしています。恐らく犯罪被害者というともちろん保険医療だけではなくて経済的問題からあるいは法的ないろいろなプロセスに関する知識、かなり膨大な知識を必要として、すべてを対応するというとその方への負担は非常に大きくなるのではないかと思うんです。多分その人だけでは足りなくて、ある程度浅く広く知っていて、さらに深いところはそれぞれの専門家とつなげるということで、そういう各専門家とのパイプづくりということまでその方はしていくということになるかと思う。
実際にはそういったようなかなり保健医療から経済的な問題、法的な問題、すべてをカバーするようなアドバイザーあるいはそういうケアマネージャー、ケースマネージャーというものを考えておられるのか、そうじゃなくてもうちょっと税制とか法制度とかそういうことにも精通した立場の人を考えておられるのか、どちらでしょうか。
○國松座長 全部を知っているのがそろうというのはこれはなかなか難しい。私は結局はネットワークの問題だと思うんですよね。どこに行けばどういう知識が得られるということを知っている人がいてくれるということが必要だと思います。とにかくそこで全部が解決する、全部を知っているというのではなくて、どこへ行けばわかる、どのボタンを押せばいいということをわかっておられる方を置いておくというのが必要です。このボタンの押せる人をつくるというのもなかなか大変なんじゃないかなと。東京都の場合はおられるそうでありますが、全国的に見ればですね、とてもまだまだお寒い状況であろうと思いますので。全国的にそういうものを整備していくことが必要ではないかというのが私の趣旨でございます。とにかく特定の個人全部をこの千手観音みたいな人を置くというのはなかなか難しいのじゃないのかなとは思いますけれども。
警察庁、何かありますか。
○警察庁長官官房総括審議官 すみません、ちょっと訂正させていただきます。「被害者の手引」なんですけれども、今確認しましたら、我々モデル案をつくっていますけれども、税法上の救済制度についてもその中には記載があります。ただ、我々は身体犯について今まで特に支援していましたので、中身は医療費控除とか障害者控除、寡婦控除というのが挙げられていますけれども、今お話になった雑損控除とか納税の猶予とかそこまでは記載がないということでございます。こういうことで一応税までカバーをして手引の中に記載をしておるという状況でございます。
○國松座長 どうぞ。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 先ほどからほかの検討会の話が出ていますけれども、実は連携ネットワークの検討会において来月の検討で、まず連携ネットワークをどう構築するかということで、先ほどから意見が出てますように、ある程度各支援に当たる人のところにきちんと連絡先とかそういったものが必要であろうというようなことを議論していただくこととしております。それから、議題になっておりますアドバイザーないしコーディネーターにつきましてもこの連携、2の検討会の最も大きな柱の1つであります。おっしゃるように、まだまだ人材が不足をしておりますので、その人材をどういうふうに育成していくのか、そのためのお金をどうするのかというようなこともその次の会ぐらいで十分に検討したいというふうになっておりますので、ご報告をさせていただきます。
○國松座長 何かございますか。どうぞ。
○瀬川構成員 私は、余りここで煮詰めてしまわない方がいいんじゃないかと思います。第2の連携の検討会があるわけですから、そこでのいろいろな具体的なデータの集積とかあるいは実態とかを踏まえてもう一回ここで検討するのがいいんじゃないでしょうか。
○國松座長 高橋構成員、何かありますか。
○高橋構成員 その先の話になるんですけれども、例えば早期支援団体でない限りは被害者が訪ねてくるのを待っているという状況だと思うんですね、警察や何かでもそうだと思いますけれども。それで、たまたま私は労災保険を受けていまして、労災保険でその手続とか受けていて何か困ったこととかそういうことが起きると相談する予約のはがきが来るんです。それで私もそのはがきを出して予約日を決めて相談に行ったことがあるんですね。ですから、こういうアドバイザー制度ができたら、経済的なものだけ聞きたいという人もいると思うんですね。ですから、そういうとにかく被害者がどこかにアクセスしたら、そこから逆にそういう相談のチャンスのお知らせなりが来ると、遺族として、そういう制度を利用する側として便利ではないかなというふうに思いました。
○國松座長 今のような点も含めてちょっと別の検討会の方といろいろとすり合わせをしてみたいと思います。
ほかに何かございますか。
アドバイザー制度をつくるということについては大体前向きのご意見が随分多かったと思いますが。つくるにいたしましても結局全国に遍在するということはないということですから、これを何とか養成をしていくというような形がどうしても必要になってくるということがあろうかと思います。そういうこともまたほかの検討会と詰めるべきで。その先の話として、その金はどこから出るのという話になりまして、結局は財源の話になってくるんですね。この問題だけじゃなくていろいろなあれがあるのでありますが。
その財源の問題でここでちょっとほかとの関係でご議論いただきたいなと思うのは、財源の確保について新たな1つの枠組みとして基金といいますか機構といいますか、支援基金あるいは支援機構というようなものを設立してはどうかというような案があるんだと思います。実はこのことにつきましては飛鳥井構成員から既に基金を設けてはいかがかというご意見がありますので、飛鳥井構成員からご意見をご披露いただけませんでしょうか。
○飛鳥井構成員 前回の会議の最後の方でもちょこっと申し上げたんですけれども、私が基金というものの可能性はどうかと考えたのは、フランス方式のように例えば今の犯給法の制度も含めて全部基金で運用するというようなことでは、そこまでの壮大なことではございませんで。今の警察庁がされています犯給法は犯給法でされて、しかしどうしても事務上の手続とかあるいはそれだけではなかなか軽快なフットワークで動ききれない部分について、そういうものについては基金制度でもうちょっと自由度を高めた運用ができないかと思って提案をさせていただきました。
例えば1つには、仮給付の問題とか、当座の、被害を受けたその日から発生するような当座の何か生活資金ようなものとか。しかし、それはきちんと申請を受けて、それから審査して認定して支給するというとかなり時間がかかりますので、何か簡単な審査でとりあえず仮給付をして、また時間をかけて認定してそのほかの今ある制度で認可されればその基金の方に補てんするといったような二段構えにすれば少し全体的なフットワークがよくなるのかなと思います。
現在特に被害者の遺児についてはちょっと漏れている部分についてはその基金で運用されているというふうに聞いておりますので、そういったような必要だけれども、今の制度ではちょっと漏れているようなサービスについても取り入れるものは取り入れていったらどうかといったのが私の意見でございます。
○國松座長 私はできる基金のファンクションとしては今言ったような仮給付であるとかフットワークをよくするという面もあると思いますが、公的な資金でいろいろな医療費の自己負担分を見るとか、あるいはこれからのカウンセリングのここまでを見るとかいろいろなのがあるんでありますが、一般財源を使ってやるということになりますとなかなか広げにくいところがあるんだろうと思うんですね。その広げにくいところをある程度拾えるためには民間からいろいろ基金を集めまして、公的資金ではちょっと拾えないようなところを拾う、少し柔軟な対応がとれないものだろうかと思います。
それから、例えば職業紹介というようなファンクションも出てくるだろうと思うんですね。そういうものは官でやれ、公的にやれと言われてもなかなか難しいところがあると思いますので、そういったようなところをカバーする柔軟な丸みのある支援ができるためにも何かそういう基金をつくった方がいいのではないのかなという感じは持っているんでありますけれども。ただ、基金の安定的な財源をどう確保するのかというのはまたもう1つ別の大問題になってくるかと思いますが。
この基金の創設につきまして、飛鳥井構成員からお話がありましたのに私が若干乗った形でこういう話をしておるんでありますが。ほかの皆さん何かご意見ございましたらお願いしたいと思いますが。いかがでございましょうか。
○大久保構成員 法務省さんにお尋ねしたいんですけれども、今更生保護のための毎年何十億の更生保護、何でしたっけ、ありますね、基金、すみません、ちょっと度忘れしました。更生保護協会だとかありますよね。そういうようなのと同じような形での被害者保護のための何かそういう制度ですよね。それをおつくりになろうという気持ちは全くございませんでしょうか。
この新聞記事読ませていただきますと、30年前にはこれほど被害者に対して勉強して何らかの措置をしなければいけないということを立派にお出しになっていらっしゃいますので、現在またこれをぜひ生かして、基金のための法務省の財源を入れていただくとか、そういうことは全く考えられないことなのかどうかを教えてください。
○國松座長 どうぞ、お願いします。
○法務省大臣官房審議官 財源の問題というのは最初から問題になり、また恐らく最後まで問題になる話だと思いますけれども、基本的に今回の問題は非常に広がりのある問題ですので、法務省の予算がどうこうということよりも、やはり政府全体の予算の中でどういう施策にどういう優先順位で何を投入するのかというそういう形で議論をされるべきことだろうというふうに思っております。
いずれにしましても今、大久保構成員の方で言われた、法務省の方で何かそういうものを基金をつくってということについては今のところそこまでのことを考えているという状況ではないということでございます。
○國松座長 関連して法務省にちょっとお尋ねするわけでありますが。仮に基金を設立するとした場合に、ある意味では安定した財源が必要になります。その場合の1つのやり方として、前から出ている罰金の財源化というのはありますね。それから、いわゆる課徴金制度というんですか、イギリスなんかではそういうことがとられているというような話でありますが、そういう課徴金制度の導入ということについては法務省としてはどのようにお考えになりますか。
○法務省大臣官房審議官 罰金をこういった施策の財源にするというご意見があるわけですが、以前もこの場でご説明したことがございますが、その関係で私どもの方から申し上げることとしては2点ございます。まず1点は、これは前にも申し上げたことではありますけれども、今回の犯罪被害者のための施策についての経費というのは政府全体の歳出という面から見ればまさに純増といいますか、これまで支出しなかったものを支出するということになるわけであります。他方で罰金というのはこれまでも徴収をしてきて、いわゆる一般会計の中に繰入をして政府全体の歳出の一部として使われてきたわけですので、今回の新たな犯罪被害者の支援のための施策のための財源という関係で言えば、罰金を財源にするといっても新たな財源が生み出されているわけではなく、そういう意味で財源を確保したことにはならないということをまずご理解いただきたいと思います。
要するに罰金を財源にするといっても結局はほかの予算として使っている部分を削って犯罪被害者のための予算に充てるということになる話であるということです。
それからもう1つは、罰金を財源にするという場合、罰金を今ままでの一般会計から切り離して特定の目的、犯罪被害者の施策のためだけに支出するということかも知れませんが、いわゆる特別会計がその典型でありますけれども、そういう特別会計を創設するのかどうか、あるいはすべきなのかどうかといった問題もあると思います。ただ、こちらの点につきましては特別会計というのは現在政府の方では廃止統合を進めるという形で行われているわけですので、今回新たにそういう特別会計をつくる必要性あるいは合理性というものがあるのかという議論が当然なされなければならないと思います。
ちなみに、先の通常国会でいわゆる行政改革法が成立しましたけれども、その中でも特別会計の新設というのは事務及び事業の合理化あるいは効率化等に資する場合を除き行わないという規定が置かれておりますので、そういったことを踏まえて検討される必要があるのではないかということでございます。
それから、すみません、課徴金。
○國松座長 課徴金は全部特別会計になるわけですか、そんなことはないですね。
○法務省大臣官房審議官 いえいえ、課徴金についてはどういう制度かということがまず前提になりますので、それを考えないとどうすべきだということが難しいと思います。例えば刑事裁判で有罪になった犯罪者に対して罰金とは別に何らかのお金を納付させるというものを仮に考えたとすると、そのお金の性質の議論もあると思いますけれども、いわゆる損害賠償とかあるいは求償と一体どういう関係になるのかという点が問題ではないかという感じがしております。要するに犯罪被害者の方に対する賠償や救済は本来一義的には犯罪者が被害者の方に損害賠償として支払うべきであります。また、国がこの新たな制度によって犯罪被害者にお金を支出するといった場合でもやはり国はその犯罪者に対して求償するという関係になる、それが原則だろうというふうに考えるわけです。そうするともともとは犯罪者が支出し、犯罪者が負担すべきお金というものと、それと別個に何かお金を徴収するというのはそもそも一体どういう関係になるんだろうというかあたりが理解できないところがございます。
本来犯罪者の側から言えば、当該自分の事件の被害者に対して賠償すべきは当然でありますけれども、それ以外に一般的な被害者救済のために一定の制裁や不利益が課されるということについて果たして合理性があるかという問題でもあります。
以上でございます。
○國松座長 もちろん課徴金を課すということになれば、被害者との関係においての賠償請求に応ずる義務とかそういうものとは別に何らかの賦課金を払うということを認めるかどうか、この問題になると思うんですがね。ですから、それを国民の理解がどれだけ得られるのかというような問題はいろいろあるんですが。法務省として日本の仕組みの中でそういう制度が入ってきた場合に全く制度として成立しないとかいうことはあるんですか。
○法務省大臣官房審議官 そもそも制度の考え方がどういう考え方かによるので、一概にあり得るかあり得ないか言えないだろうと思いますが、やはり本来負っている損害賠償債務に加えて犯罪被害者一般の救済の原資とするために刑罰以外の制裁を課すということの合理性が本当にあるのか。もともとは犯罪者が個々に被害者に対して賠償すべきものについて、それを一般化して賦課金という形で課すことに合理性があるだろうかというそういう問題意識でございます。
○國松座長 加えてでなくて別になんですね。要するに損害賠償をどの程度の額払うかどうかという問題とは別に、犯罪被害者一般に対してなにがしかの賦課金を受認するという、そういう義務を課すということだと思います。
だから、損害賠償とは加えてじゃなくて、別の話だと思うんですけれども。そういう理屈が成り立つのですかということです。
○法務省大臣官房審議官 いや、私が加えてと申し上げているのは、要するに損害賠償債務は損害賠償債務として本来あるわけで、それは賦課金という制度をつくっても存在するわけですので、そういう意味で加えてと申し上げているわけです。もともと個々の対応関係で犯罪者が被害者に対して負っているものがあって、それを間に国が入っていろいろ救済の措置をとるといった場合に、その財源をまた犯罪者から本来の債務とは別途の負担として徴収することに、そこに果たして合理性があるかというそういう問題意識でございます。
○國松座長 そこがまさにどの程度合理性があるかどうかということになりますけれども。
どうぞ。
○白井構成員 課徴金の問題ではないんですけれども、先ほど確かに罰金は一般財源に入っているのでというお話聞いたんですけれども。同じ違法行為に対する国の制裁として交通反則金というものがありますが、それは反則金収入は法律で使途が指定されているわけですよね。そのように必ずしもそういう国家が制裁金として徴収するものをある程度使途を特定させること自体が法律上成り立たないものではないというふうに私は思うわけです。それはだから、その国の使い道といいますか、あり方そのものを決断すればいかようにでも立法は可能ではないかなというふうには思いますが。ただ、基本的にはやはり現在の基本法の下での被害者の経済的補償に関する考え方を前提としますと、やはり一般財源できちっとした十分な対策を立てるべきではないかなというふうには思いますが。
しかし、具体的に言った場合に、やはりそういう加害者がこれはあすの会などでもよく言われるんですが、加害者の方に対して適正な処罰をし、かつ適正な刑罰を課すための費用というものが莫大な費用が使われているのに反して、その犯罪行為によって被害を受けた方々に対して国の予算として支出されるものが余りにも少なすぎると。それはやはりそういう意味では同じ国民に対する国の財政の使い方としては余りにも不公平ではないかというそういうやはり被害者の方々の間に不公平感というのが現実として厳然としてあるわけで。
ですから、直接罰金から使途を決めて、あるいは反則金から使途を決めて被害者の補償の方に回すということにするのか、そうでないにしてもやはりそういう罰金なり反則金なりそういう制裁金として国が取得する収入あるいは加害者の処罰のために使う支出、そういうものに対して見合うだけのといいますか、何といいますかね、それと余りにも不公平にならないような形での被害者への財政の支出ということはやはり合理的な理由があるのではないかな、と私は思いますけれども。
○國松座長 この財源問題といいますか課徴金あるいは罰金の使途の問題を含めて、何かご意見さらにございますか。
○大久保構成員 すみません。くだらないことをまたお尋ねするかもしれませんが。法務省の方ではその加害者の更生保護、矯正等にかけられる予算の額の大きさと比べて被害者にかけられる額がほとんどないというあたりでは全く今までも問題にはならずにきたんでしょうか。それは多少問題だと思ってきているのでしょうか。
○法務省大臣官房審議官 前にこの会議の資料として刑事手続あるいはその後の矯正や保護の手続の中で犯罪者側に支出されている予算について資料等もございましたけれども、それらは、犯罪者の個人的な利益のためといいますか、犯罪者だけのためのものというよりも、その犯罪者を更生させて社会に戻して、それによって犯罪がより少ない社会になっていくという意味では国民全般の利益になる面があるはずでありまして。そういう意味でまさに公の制度としてお金が使われているんだろうというふうに考えています。
ただ、おっしゃるとおり、被害者側にお金が使われている金額と比べると、結果として余りに差が大きいではないかというご議論自体はまさに非常によく理解できるところです。であるからこそ今経済的支援であるとか民間の援助団体への支援だとかいろいろなことがより強く求められているものであり、そのこと自体私どもとしては非常にもっともなことだというふうに思っております。
その先は先ほどの繰り返しになりますけれども、今後必要な犯罪被害者の方への経済的支援の財源は罰金だと言われても、そのことによって新たな財源が生み出されているわけではないので、そこは政府全体の限られた予算の中で何をどのような優先順位に位置付け、どれほど今回の施策に一般的な財源を使うことができるのかという形で議論がされるべきことではないかということを申し上げているということでございます。
○國松座長 先ほど白井構成員から一般財源でやるのが正しいといいますか、そういう方向で検討するのが一番いいというのは、まさに正論だと思います。ただ、一般財源というのは本当にどこかが膨らめばどこかがへこむという意味で大変難しい。今これからこの検討会で経済的支援の充実ということを検討し、一時金の支給の幅も上がるとか医療費の拡充とかをやればやるほどそれに対してどういう財源がいるのかというのはやはり問題になってくると。その場合に一般財源でやろうよとか、あるいは罰金からやればいいじゃないのというようなことだけではなかなかうまくいかんのかなという気がありまして、何かないのかなということで課徴金なんていうのはどんなもんですかねというのが1つちょっと頭によぎったわけです。これはもう少し詰めませんと大問題でもあろうと思います。先ほど法務省の構成員が言ったように、新たな財源として罰金を使うんだといったって何も新たな財源にならないというのはまさにそのとおりでありまして、それだけでは済まないところがある。何か新たな財源というのをつくれれば割と充実した基金もできるしいろいろな給付金のレベルアップもできるということでありまして。ただ、これはなかなか難しい。そこは制度的に許されるぎりぎりのところで何か新しい知恵をこの検討会としても出していかないといけないのかなと思っておりまして。
これはまた財源問題につきましてあともう一回ご議論いただくときに振り返りたいと思いますけれども。どうぞ。
○瀬川構成員 今のご議論なんですけれども、現行制度の範囲内で言えば三浦構成員のおっしゃるとおりであるし、それ以上つけ加えるべきものはないんじゃないかと考えます。結論的に言うと、私はこれは立法的政策の問題であり、ポリティカルな判断を必要とすると思います。現状では、この検討会でも事実を積み上げあるいは理論構成を積み上げないと恐らくどこへ持っていっても通らないというふうに思います。私は課徴金制度に賛成なんですけれども、そういう制度を設けるに当たって何か理論的な根拠あるいはさっき三浦構成員が言われた合理的なというところですね。ほかの類型の被害者を含めて、国民が納得できるだけのそういう合理的な根拠が必要ではないかというふうに思います。そういう視点をふまえて、課徴金制度というのを前向きに検討すべきだというふうに私は思っています。
それから、罰金刑については、極めて大ざっぱな刑罰の歴史で言えば、被害者にもともとは戻っていた、いわば被害者の黄金時代がかつてあった。今は国庫に帰属するわけですけれども。私の考え方から言えば、なぜ国庫に帰属するのかという理由づけは果たしてあるのか。つまり、国庫に帰属する合理的根拠は何なのかということです。今さらそんなこと言われてもしょうがないとおっしゃると思いますけれども、罰金の1,000億が国庫に入っているのかということがやはり再考すべきだというふうに私は考えています。
憲法でもよく言われますように、犯罪者の人権については書いてありますけれども、被害者の権利ということはありません。そういう意味では我々気づかなかった問題なのであって、被害者の再発見という時代に至ってますので、変革の発想というか、新たな時代に向けて何か考える必要があるんじゃないかという気がいたします。
○國松座長 この財源問題は後ほどまた当然戻ってご議論したいと思います。
課徴金の問題は瀬川構成員から賛成であるというご支持のあれがありましたが、法務省ご当局も全く問題にならないということではないような、制度的にそんなことを言うのはナンセンスである、勘弁してくれと言うのかと思ったらそうでもないという感じでありますので。まあ、実際はいろいろ検討してやっていくうちの1つの選択肢として課徴金という問題もあるのではないか、財源確保という意味ではですね。ということで、もうちょっと詰めたいなと思っています。
どうぞ。
○岩村構成員 もう座長のとりまとめで結構なんですが。1つ、できれば事務局の方で調べていただきたいのは、現行法上幾つか課徴金があって、一番最近有名なのは独禁法の課徴金とかというのがありますけれども。それぞれ多分趣旨があって正当化の理由があるんだと思うので、ちょっとその辺を少し調べていただいて、資料か何かでご提供いただければ少し議論ができるかなということと。
今座長の話を伺っていると、どちらかというと課徴金ということなんですが、やや今まで使われている課徴金とは性格が違っていて、犯罪を犯したことに対する課税みたいな何かちょっとそういうのに近いイメージかなという気もするんですね。罰則ではないんだと思うんですが、何か犯罪をしたことによって社会に迷惑をかけたのでそれに対して何か税金かけるみたいなちょっとそういうような色彩かなという気もちょっとするんですが。
○國松座長 私の場合は、本当に詰めてませんのでここで余り言っても仕方がないのでまたいろいろと教えていただきたいと思うんですが。私の言うのは、被疑者として有罪判決を受けた場合に、一般的に犯罪被害者の救済に充てるべきものとして課徴金を課すということでありますので。非常に広い意味での制裁というか税金的なもの。目的税的なものですかね。
○岩村構成員 そういう意味では目的税に近いという感じのイメージがややあるなというのと。
それから、もし広く一般に集めるという話になったときに、これもまた議論する話ですけれども、裁判の被告人になったのだけなのかどうかというのはありますね。その辺もちょっと問題としてはあるのかなという気はいたしますが。
○國松座長 それほど私自信がないんですけれども。
どうぞ。
○法務省大臣官房審議官 課徴金といいましても、私どもとしては要するに具体的にどういう制度なのかが全く見えない状態ですので、その状態でこれは論外だなどと申し上げることもできないわけです。ただ、こういう制度をつくるための財源が必要だから刑罰以外の制裁なり負担を課すんだという理屈は本当に通るんだろうかというのが非常に素朴な疑問でございます。
○國松座長 わかりました。その辺はもう少し検討しないといかん問題だと思います。
ほかに何かこの問題についてご意見ございますか。どうぞ。
○白井構成員 先ほどもちょっと挙げましたけれども、交通反則金を現在法律で使途が指定されているわけなんですが、その一部をこちらの方への財源の1つとして少し方向を変えていただくということは可能なんでしょうかね。
○國松座長 それは今の現状ではできないということですね。ただ、立法論的にはどうかというのはまた別ものだろうと思いますけれども。
いずれにしろここで考えているのはむしろ立法論でありますが、余り妙な制度をつくるのもおかしいのかもしれません。ただ、私の言いたいのは罰金を使うとか反則金を使うとかそれもいいんですけれども、結局今あるやつをこっちに移すだけと。移すとこっちが減ってるわけですよ。だから、そうなるとある意味では取り合いみたいな話になります。もちろん、そういうやり方もあって、今先ほど来から出てますように、今被疑者・被告人といいますか犯罪者の方に振っているお金というのは何もその人のための利益ではなくて、一般社会の治安維持のための広い意味で使うわけでありますから、単純に額を比較するというのはできないかもしれませんが、ただもう少しそれを被害者の方へ移してやるという議論がある。それはもちろんそういうやり方もあるんでありますが、移すだけだとこっちがへこむわけですね。それだったら今までにない新しい課徴金のようなものをちょっとつけていったらどうなんだろうかというのも1つの選択肢だとは思うんであります。
いずれにいたしましてもこの財源問題というのが最終的にまた残ってまいりますので、ここをいろいろと議論していかんといかんのかなと思うわけであります。
この問題はきょうはこの程度にして、ちょっとまだ残りの部分がありますので次に移りたいと思います。
次は、認定機関、不服申立機関の問題でございます。これは現行の犯給制度では都道府県の公安委員会が認定の裁定機関であります。不服がある場合には国家公安委員会に対して不服申立をすると。そしてさらには行政事件訴訟法に基づき処分の取り消しであるとかそういった訴えを提起することができるというのが仕組みになっておるわけであります。公安委員会とは異なる独立の認定機関、不服申立機関を設置するべきかどうか。
本日、白井構成員の方から提出された意見書の中にもそれに関連する部分があると思うんでありますが、この問題につきましては白井構成員、それから高橋構成員、平井構成員からご意見が出ておりますので、それぞれにつきましてご発言をお願いしたいと思います。
まず、白井構成員、いかがですか。
○白井構成員 そもそも犯罪被害者の補償制度そのものを今までのような形での所管でいいのかどうかというそういう問題はあるのかと思います。というのは医療費だとか介護費だとかカウンセリング費用とかいろいろなそちらの方の制度設計がまだ定まっておりませんので、そうした非常に複雑な面倒くさい手続が必要な形になりますと、今のような所管ではとてもやりきれないということは根本問題としてはあると思うんですが。
その不服申立の機関といたしましては、イギリスなどのCICAPですか、そこを見学に行ったときも、実際に審問みたいにして被害者側と認定をしたCICAの方と、真ん中に3人の審査委員がいまして、場合によったら証人尋問まで証人の審尋といいますかそういう形で不服の審査が行われると、そういう形でやっているわけです。それは非公開で、ただし被害者も被害者代理人である弁護士もそこに出席をしていろいろな意見を述べたりいろいろ論争をしてやっているということなわけです。ですから、本来であれば不服申立機関としてはそういう形でのものを設けるものがいいのではないかと。
きょう新聞記事で提出させていただきました法務省の当時の案でも、審査会といいますか、これでも20条以下にありまして、審査委員は3人で委員は弁護士となる資格を有する者または犯罪の被害の補償に関する学識経験を有する者のうちから両議院の同意を得て法務大臣が任命するというような形のものになっておりまして。できればこういう法務省の案なども参考にしながらそうした独自の不服申立機関を設置するということがいいのではないかと思います。
○國松座長 高橋構成員から被害者等の認定についてということで出ておりますが、何かご発言ございますか。
○高橋構成員 自分は被害を受けたのでその被害届を出したんだけれども、それが受理されなかった場合とか、あと地下鉄サリン事件の場合には被害届どころではなくて、もう自分の症状が大変で病院にかかるだけで精いっぱいだったと。後から民事の方の弁護団につながって民事訴訟は起こしたというような人もいます。ですから、被害者であることの認定がどの段階でなされるのか。被害を受けたときなのか、被害届を受理されたのか、加害者が裁判になったときなのかとそういういろいろな段階があると思うんですけれども。何をもって被害者とするのかというところがはっきりしていないのではないかというふうに思ったわけです。
○國松座長 それは今の認定の仕組みだと不明確であるから何か新たに設けるべきだとそういうご意見でございますか。
○高橋構成員 今の認定はどうなっているのかということも含めてですね。
○國松座長 これは、サリンの場合はちょっと特殊経緯をたどった。
○高橋構成員 一般的にいっても。
○國松座長 一般論としてはどうですか。
○警察庁長官官房総括審議官 その被害届が受理されない場合というのがよく分からないんですけれども、まず被害者であるかどうかの認定があって、それによって被害者であれば当然被害届は受理するという形になりますから、ちょっとその被害届を受理しないということのご趣旨がよく分からないなという感じがします。
要するに捜査を尽くして、それによって犯罪被害者であるかどうかということは一義的に決まるものだと思っていますので、別にその手続が被害届を受理したからどうとかという話ではないのではないと思います。
○國松座長 地下鉄サリンの場合は本当に病院に駆け込んでいって、それであといろいろな手続が続いていったという、ちょっと逆転したような流れがあったんでしょうか。一般的にはある程度決まったルートで認定されます。ただ問題はそういう警察の中での認定だけでいいのですかというのが今問題になっているんだろうと思います。それについてのご意見があればということでありますが。
これは平井構成員からも認定機関についてということで出ております。何かご発言がありましたら。
○平井構成員 私の意見もそういう意味では認定機関というよりも先ほど飛鳥井委員からおっしゃったように、少し範囲の広いといいますか、仮給付の点であるとか、あるいは座長おっしゃいましたカウンセリングであるとか職業紹介であるとかそういう内容については、第三者で進めた方がより柔軟で望ましいのではないかという意味合いで申し上げたわけでございます。基本的には独立した犯罪被害者のための一定の範囲についての運営する組織ということができるのは目的が明確になって、そしてそのことに限定して実行されてまいりますので、私はより犯罪被害者支援のためになるという意味合いで申し上げたわけです。
それともう1つは、そういう組織であれば、より財源といいますか、先ほど財源の問題もありましたが、例えば多様な寄附金を確保することもそういう道も開けるのではないかと。できれば税制上の優遇措置といいますか、寄付金に対する優遇措置ができればより財源、この機関の財源の確保に多様な道が開けるのではないかと、そういう意味合いでちょっと申し上げていたわけです。
○國松座長 わかりました。今ちょっと話が違うのかもしれません。今言っているのはまさに犯給制度の中で被害者の認定等が、公安委員会、都道府県公安委員会、国家公安委員会というルートで行われているわけであります。それについてどうかということが問題になってきまして。これは実は新しく措置がされて支援の幅がダッと広がったときにそれをカバーできるんですかという問題がありまして、ただこれはどこまで広げるかというのは決まらないとまた逆にわからない構造でありますので、これはどっちを先に議論したらいいのかという実は微妙な問題があるんでありますが。
私の感じでは、新たな、全く新たにピカピカの認定機関、不服申立機関というのができてくるなんていうのはそれなりの意味はあるのかもしれませんが、実はこれものすごい機構をつくらんといかんことになりますですな。まずどこがやるんですかという問題がありますのと、どういう組織をつくるんですかと。これは人件費その他いろいろなことを考えたらべらぼうなお金のかかる話ですね。ですから、そういうところも含めてどう考えたらいいのかなというところがあるんだろうと思います。その辺についてのご意見をまず聞いて、しかし、これだけ広がったら公安委員会の認定では難しいでしょうということもあると思います。
一応この今の犯給法の仕組みというのはどの程度通用するのかということについてのご意見を承ればいいのかなと思いますが。そういうことで何かほかにご意見はございますでしょうか。
○岩村構成員 多分その1つのポイントは、今座長がおっしゃったように、今までの認定、公安委員会、そして不服審査、国家公安委員会というルートでやれるかやれないかというのが、多分新しい制度の下でどれだけもちろん新しいものが加わるかということと。それから、そういった要素に何らかの、つまり公安委員会などが持っていないような他の専門的な知見というものが認定なり不服審査の段階で要求されるかということによって決まってくることかなという、それがまず1つだろうと思います。
例えば労災保険とか社会保険の場合は独自の不服申立機構を持っていますけれども、それは場合によって例えば障害の程度の認定であるとかそういった、それから業務上災害の、業務上か業務外かとかそういったようなかなり専門的な事項があるので一般の行政不服審査ではなくて特別な機構をつくりましょうというそういう考え方になっていると思うんですね。ですから、その要素というのが新しく入ってくるのかどうか。そういった要素が入ってくるのか。例えば医学的な知見の問題であるとかそういったものが後遺障害の認定とか何かで入ってくるのかどうかというところが1つ考えるポイントなんだろうと。そうすると、例えば認定機関の中にお医者さんを入れなくちゃいけないとか、不服審査のところでもお医者さんとか専門家が必要でしょうとそういう話になってきますし。現に労働保険審査会とか社会保険審査会の中には結構お医者さんが委員として入っているということもありますので。そういうことが1つでしょうと。
それからもう1つは、これはやや微妙な難しい問題なんですが、認定機関は公安委員会ですから都道府県単位なんですが、今だと不服申立、国家公安委員会にいってしまって東京にしかないと。労働保険とか社会保険も同じと言えば同じなんですが、そうしますと実はその不服申立段階になると被害者の方が東京まで出て来なくちゃいけないという問題がついて回るんですね。これは私もたまたまさる再審査の機関の委員に今回なっているんですが、やはり同じことでして、東京まで出て来なくちゃいけない。逆に、東京から出かけていけばいいじゃなかという話になるんですが、それはそれでまた予算を確保しなくちゃいけないとか人の問題どうするかとかそういう話になるので。不服申立のあり方として2段階、認定と再審査という形にしたとして、それを東京に集約するのかどうかというのはもう1つだろうと。もちろん不服審査を経ずに直接行政訴訟へいっちゃうというやり方もあるんですが、それすると新しい制度の下でもいろいろな解釈基準とかそういったものの認定基準が不服審査の段階で統一できなくて、全部裁判所に投げられちゃうということになるので、それはさすがに適切ではないんじゃないかなという気がするんですが。その辺もちょっと問題としてはあるので、ちょっと制度構築という話になってくると、現行法を前提にしながら考えるにしても新しい制度をつくるにしてもいろいろ考えなきゃいけないところはあるかなというように思います。
○國松座長 この問題はいずれにしても公安委員会の仕組みで今の枠内でやっていくのか、どこかほかへ移すとしても例えば、きょうは法務省と厚生労働省来ておられますが、そっちにでも移すのかなというようないろいろな話があると思いますけれども。ちょうどそういう行政のご意見の方も聞きたいと思います。
警察庁、この問題についてどのようにお考えになっていますでしょうか。あと続いて法務省、厚生労働省、恐縮ですが、ご意見を聞きたいと思います。
○警察庁長官官房総括審議官 一般的にこういった裁定とか申立を処理する機関として必要な要件としては、1つは公平、中立かつ適切な判断ができるかどうか。2つ目には、その判断ができるだけの専門性等の能力を持っているのかどうか。また3つ目には今お話があった利便性の問題ですけれども、申請者の利便性にかなうかどうかといったようなことが要件なのかなというふうに思われます。
まず経緯からお話をしますと、今日はたまたま白井構成員からかつての立法の資料が出たんですけれども、この犯給制度を制定するときに、もちろん法務省がこの法律を所管するという話もございまして、当初は法務省中心で警察庁がそれに対してご協力をするという形で進んでいったわけでございます。しかし、問題は裁定機関をどうするかということでありまして、法務省がもしやるとすれば新たな裁定機関をつくらなければいけないということで、そうしますとこの行政簡素化の動きに真っ向から反するのではないか。できれば現在あるものが使えるんだったらそれを使った方がいいのではないかというふうなことで、最終的にいろいろ議論した結果、警察がそれを引き受けて、そのための機関として都道府県に公安委員会がございますから、これが適切に判断できるのではないかということで公安委員会が裁定機関となるという形で最終的には立法化されるということになたわけであります。
つまり、ちょっとこれをもう少し詳しく申し上げますと、公安委員会はご承知のように合議体の機関でありまして、警察とは独立性を持った中立的かつ民主的な機関であるということが1つ言えると思います。
2つ目に能力面でございますけれども、公安委員会というのはこれまでもいろいろな行政処分を行い、不服申立というものを受けてきているということで、そういった一般的な力はあるんだろうと。また加えて、警察は、警察官の職務に協力援助した方で災害を被った方についての一定の給付事務というのをずっと前からやってまして、これは年金給付も含めてでございますけれども、ずっとこれはやってきたというふうなこともあると。
それからまた、この裁定をする上で一番大事なことは、1つは本当に犯罪であったのかどうかということの認定とか、それから被害者側に帰責事由があったのかどうかということを調べるのが非常に大きなポイントになりますので、こういった意味ではまさに警察が公安委員会を補佐する形でもって裁定していただくことが最も理にかなうし、またなおかつ迅速な判断もできるのではないか、したがって、迅速な支援、救済もできるのではないかというふうなことから公安委員会が妥当なのではないかということでございます。
加えてもう1つ、公安委員会は、都道府県に各1つずつございますのでそういった意味で申請者の利便にもかなうのではないかというふうなことで、そういった意味で公安委員会が裁定機関になったということでございます。
そういうことで、これは昭和56年から運用していますけれども、現在まで25年間たっておりますが、私どもとしては格別大きな問題はこれまで生じていなかったのではないかなというふうに思います。もちろんこれから先どういった仕事を担わせるのかによってまたいろいろご議論あるかと思いますけれども、ただ少なくともこれまでは格別の問題はなかったということであります。
次に、不服審査の関係なんですけれども、これは国家公安委員会になりますが、これまで25年間運用してまいりましたけれども、審査請求事案は25年間で22件でございまして、毎年平均すれば1件にも満たないという件数でございます。
その請求の理由の中で最も多いのは何かというと、まずやはり被害者に帰責事由があったのかどうか、責めに帰すべき事由があったのかどうかということが大きなポイントでございまして、これが22件中12件でございます。次に、犯罪に当たるのかどうかというポイントについてが4件ということで、主にこういったことが争われてきているということであります。
ちなみに、今ちょっとお話があった障害等級の認定について不服があるといったような審査請求事案はこれまでございません。なかったということでございます。
それからもう1つ加えて申し上げますと、では専門的な知見は必要ないのかということでございますけれども、国家公安委員会に審査請求がされた場合には国家公安委員会にはこの犯罪被害者給付金の裁定についての審査請求事案を調査審議するための専門委員が3人置かれております。この3人の専門委員が、これは民間の学識経験者の方でございますけれども、この方が1件1件調査をし審議をした上で、それを国家公安委員会に報告をし、それを踏まえて国家公安委員会は判断するという制度的にはそういう形になっているということでございます。
○國松座長 法務省。
○法務省大臣官房審議官 現在の制度の経緯について今ご説明もあったわけですが、法務省所管の組織で考えた場合に、もちろん現状そういった事務を取り扱っていないということもございまして、新たにそういう事務を既存の組織に担わせることができるか考えますと、現実的にはなかなか難しいのかなという感じがしております。例えば検察庁ということを考えた場合でも、先ほどのご説明にもありましたが、犯罪があったかどうかあるいは帰責事由の問題もそうかもしれませんが、そもそもどういう事件があったのかという資料は検察庁に事件が送られてきた後については資料があるわけですが、まだ犯人も捕まっていない、ただ被害があったことは事実だというような段階については検察庁には資料が何もないというのが通常でありますから、そういうことを考えても迅速な対応が検察庁でできるかというような問題もあろうかというふうに考えています。
○國松座長 厚生労働省、いかがですか。
○厚生労働省政策評価審議官 厚生労働省におきましては、先ほど岩村構成員からのお話にございましたように、こういう不服申立機関として社会保険審査会でありますとか労働保険審査会で運用しているわけでございますが、実際にこういう不服申立にあがってくるような事案というのは非常に難しい案件であります。今一番我々が苦労しておりますのはそれをいかに早く対応するかでございます。非常に長期間かかっているということで国民の皆さんからお叱りを受けるケースもありまして、今懸命に早く処理しようということで取り組んでおります。
この犯罪被害者の方の給付制度等に関わって言えば、内容が厚生労働省が所管するようなものといかに関わりがあるかどうかということであると思います。基本的にはやはり今これまであったような件数であれば厚生労働省が直接担うことではないのかなと思っています。
それからあと1点、機関でありますから確かに不服申立の制度自体も基本的には労働保険の場合などは2段階でやってまして、都道府県労働局のレベルで労働保険審査官というこれは行政官でありますが、審査官がまず対応し、それでなおかつ不服がある場合に再審査ということで中央レベルでやっていると、こういう形で対応しているということをご参考に申し上げます。
○國松座長 今の行政3省からのお話がありました。それを踏まえて何かご意見ございましたらお願いいたします。この問題につきまして。どうぞ。
○白井構成員 現行の犯給法で果たして申立てを請求をした方がどの程度法律上強い請求権といいますか権利性を持っているのかということにもかかわってくると思うんですね。と申しますのは、不服申し立てをしても請求権の性質がそれほど強くなければ、よほど大きな極度に著しい行政の審査の乱用そういうものがない限りはその範囲内でいくら不服申し立てても不服申立がなかなか認められるということはなかなか難しいことだと思うんですね。特に被害者の方にとってみれば、お見舞金としてこういうものが国から支給されますよと言われれば、それが少ないと感じようがいろいろ言いたいことがあってもなかなかそれを警察の方にこれじゃ少ないから気に入らないから不服申し立てるよということはなかなか難しいことだと思うんです。ですから、25年間に22件というのは確かに少ないけれども、それは少ないからといって不服がなかったということではないと思うんですね。そもそもは申請件数も非常に少ないわけですから、犯罪の被害の数に比べて25年間の申請件数自体も非常に少ないわけですよね。ですから、そういうこともあるとは思うんです。
最初の認定機関というのは確かに警察で迅速にやっていただけるならそれが早くいくというのはあると思うんですね。しかし、これからやはり被害者の権利としてそういう補償を請求することができるということになってきますと、かなり不服の申立てということも出てくるのではないか。特に法テラスができて犯罪被害者の支援に精通した弁護士の紹介ということで全国にそういう体制が整う、そうすると被害者が弁護士を依頼しやすくなっているわけですから、そういう中で不服申立が出てくるということも出てくる。
また、認定そのものもそうですけれども、例えばもし私どもがお願いしている休業補償も支給していただけるというようなことになってくる、あるいは長期にわたる医療費とか介護費、カウンセリング費用なども支給していただけるというようなことになってそれが途中で打ち切られてしまうというような場合にももし不服申立の対象にするのかどうかということもあると思うんですね。
ですから、今現在までの犯給制度であれば特に大きな問題もなくきたということはそのとおりなのかもしれませんけれども、やはり今後の問題としてはなるべく被害者の方に見えるような、また被害者の方が自分である程度被害者側からの意見もどんどん述べられるような形での不服審査のあり方というかそういうことをやはり考えていくべきじゃないかなと私はそう思いますけれども。
○國松座長 何かありますか。
○警察庁長官官房総括審議官 今お見舞金というお話があり、だから我々が自由裁量でやっているというふうに受けとられたのですが、そうではございませんで、これは法律上要件が決まっていて、我々は羈束裁量で一定の要件に該当すれば支給しなくてはいけないわけでございますから、別に今言われたように権利性が少ないから審査請求が少ないという話には私はならないと思います。
あと後段のお話は、これはこれからの制度構築でどういった制度をつくっていくのか、それが非常に簡便に判断できる中身なのか専門性を必要とするのかまだわかりませんから、それを見ながらそれにふさわしい制度をつくっていくということにすればいいわけでございまして、ちょっとまだその辺についてはっきりしない段階で、だから公安委員会はだめという話には直接はならないのではないかなというふうには思います。
○國松座長 ほかに何かございますか。どうぞ。
○瀬川構成員 独立の機関を設けるべきかどうかという方向もありますが、現在の運用を大胆に改善するという方向性もあるように思います。そういう運用というものの改善で白井構成員がおっしゃったような問題を乗り切る面もあるんじゃないかという感じがしますので、もう少し検討を加えてみないとわからないという感じがいたします。
○國松座長 そうですね。今私も白井構成員のお話を聞いて、どうも不服申立が少ないというのはこれからそれこそ法テラスがいろいろとご相談を受けてやればふえてくる。問題はそれを受けてやれるだけの体制が今度国家公安委員会の方にあるんですかというのが問題で、これはまたまさに今おっしゃったように運用の問題になってくると思いますが。
その辺はいずれどういうものが入ってくるのか、どういうものというのはつまり給付の内容としてどういうものが入ってくるかにもよって随分違ってくると思います。そこまでやられたら今度は逆に警察庁の方もとても引き受けられませんというような話になるかもしれませんし、そうでなければその範囲内でおさまるのか、そういうことにもよりますので。ご趣旨を踏まえてちょっと一回論点をもう一回整理してみようと思います。
ほかに何かご質問ございますか。ご意見。
それでは、時間がきておりますが、もう1つおつき合いいただきたいと思います。最後になりますが、法形式の問題でございます。経済的支援制度に関する法形式はどのようであるべきか。つまり、新たな経済的支援制度というのは犯給法の改正で行うべきなのか、新規立法で行うべきなのかという問題提起が1つされているわけであります。これは今の認定不服審査の問題と大体実は同じでございまして、中身としてどういうものがあるのかということによって犯給法の改正の範囲内でおさまる場合もありましょうし、そこまで入れるんだったら犯給法では無理でしょうということにもなりますし。これはある意味で立法技術的な問題でもありますので、その辺についてはまた行政当局にいろいろご検討いただくという形でやる以外ないのかなと思うんでありますが。
この点につきまして何かご意見ございましたらお願いいたします。
よろしゅうございますか。
関係省庁の方も何かお話がございますか。
では、今言ったような形でちょっとまず犯給法の改正で対応できるかどうかということも含めてこれから中身を検討した上で立法形式については立法技術の問題等も絡めて検討していけばいいというように一応させていただきたいと思います。
これで大体ひとあたり検討は終わっているのでありますが、実は1つちょっとここでご議論いただきたいのは、実は瀬川構成員から出されたモラルハザードの問題についてであります。結局こういった認定とか審査とかいう問題とも絡んでくると思いますので、ここで瀬川構成員からモラルハザードの問題についてご意見を賜りたいと思います。
○瀬川構成員 特に特殊な意見を持っているわけではありませんし、私は岩村構成員からこの検討会の早めの段階でレクチャーをいただいたときにモラルハザードの問題提起をされたことが印象深く残っています。
きょう配布された新聞記事とおなじ、1975年当時の学会での議論を調べてみたんですが、立法に関係されました同志社の大谷先生が、書物の中で虚偽申請の防止と補償不適格という項目がありまして、現在のモラルハザードの問題をかなりきっちりと取り扱っておられる。犯給法制度は四半世紀の間に、いろいろな不十分な点があったかもしれませんけれども、制度が定着していった理由としては、やはりこの段階で75年当時に、つまり、立法の五、六年前にそういうモラルハザードといいますか虚偽申請の防止と補償不適格の問題をかなり綿密に検討していたという経緯があることは参考に値します。
したがって、そういう意味でこの問題というのは制度設計する前に、当然のこととしてやはり議論すべきことではないかというふうに思います。そういう点で抜きがたい論点だろうというふうに考えております。
特に制度に対する信頼性といいますか、国民の信頼を得ないとこの制度というのは成り立ち得ないと思いますので、この点ぜひご議論の中に加えるべきだというふうに思っております。特に支援の必要な人により手厚く補償制度が運用されるべきで、そういう点では注意深い制度設計というものが必要だということを痛感しております。
さらに、また岩村先生にご議論いただいた方がいいかと思いますが。
○國松座長 そちらに振られましたので、お願いします。
○岩村構成員 突然玉が飛んできてあれなんですが。既に申し上げたとおりだと思うんですけれども、やはり今回こういう形で議論をしてもし実を結べば、従来の犯給法に比べると多分補償が手厚くなるだろうというふうに思いますので。そうするとどうしてもやはり例えば経済的支援というものに対しての依存度というのが高まる可能性があって、そこからモラルハザードというのがどうしても起きてくるということはある程度起こるのかなと。特に、傷病の療養を理由とする休業に関する所得保障給付についてはモラルハザードが起きやすい。
それから、それは実は被害者の方だけではなくて、例えば恐らく問題としてあるのは医療だろうという気はしているんですね。医療で例えば全く自己負担なしにすると、これは被害者の方もそうなんですが、医療機関がモラルハザードを起こすんですね。ですから、その辺のところをどういうふうにコントロールするかということもやはり考えておかなければいけないのかなと。
経済的支援との関係で言うと、やはり座長もおっしゃっていたように、被害者の方のできるだけ早期の経済的な自立というものにどうやって結びつけていくかということをうまく組み合わせるということを考えることによってモラルハザードの問題というのは支援への依存という問題からはある程度対策は考えられるんだろうというようには思いますけれども。今、瀬川先生おっしゃったように、やはり制度を拡充するとどうしてもその問題というのは出てくるだろうと思いますので、やはりちょっと検討をきちっとしておいた方がいいのだろうというふうに思います。
○國松座長 このモラルハザードの場合、今の現行の犯給制度の中ではどのように対処しているというか、その点は何かありますか。
○警察庁長官官房総括審議官 今の犯給法ですと15条に規定がありまして、「偽りその他不正の手段により犯罪被害者等給付金の支給を受けた者があるときは、国家公安委員会は国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた犯罪被害者等給付金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。」とありまして、要するにお金を返していただくということになっております。もちろんこれに加えて詐欺に当たるということになれば、これは当然詐欺として立件されるということになっています。
○國松座長 わかりました。新しい制度につきましてもモラルハザードを防止する何らかの手当といいますかそういうものが必要なんだろうと思います。
どうぞ、何かありますか。
○白井構成員 先ほど岩村先生の方からそういう医療機関などによる不正請求の恐れということを指摘されたんですけれども、現在の例えば自賠責保険とか労災保険とかいろいろあると思うんですが、そういう中でモラルハザードの防止策というのはどういうふうな形になっているのかというのを。
○國松座長 お願いします。
○岩村構成員 まず、ご存じだと思いますが、自賠責についてはこれはもう医療機関のモラルハザードだらけですね。結局今損害保険協会と各種医師会との間で協定を結んで、それで診療報酬点数1点単価を大体取り決めると、これ独禁法との関係で非常にややこしい話があるんですが、そういうやり方で特に件数を非常に水増してして膨らませて請求するということについてはコントロールはしていますね。
他方で、自賠責の場合は医療保険と違ってレセプトチェックがないので、本当に過剰診療をやるんですね。ですから、点数のところでコントロールしても今度過剰診療のところで問題が生じるということで、これはどうしようもなくて、よほどひどいところについては訴訟を保険会社が起こすと、不当利得返還請求とかそういう形でやるというそういうやり方しか現状は手がないだろうと思います。労災保険の方はレセプトのチェックをしますので、ですからそこでおかしなものについてはコントロールできるということだろうというふうに思います。
○國松座長 ほかに何かご発言はございますでしょうか。
これで大体、まだ検討事項の中で6として合わせて検討することとされているものが3つございます。これを除きましては大体ひとあたりのご議論をいただいたと思います。合わせて検討する事項はいずれ後でまたやっていくことでございますが、これまでの検討と議論の流れを踏まえまして、次回以降これをもう少し詰めていくことになるわけでありますが、その詰める場合、座長としての本当にたたき台でありますが、たたき台のようなものを用意いたしたいと思います。今までのご議論を整理した形で、そこの中には当然座長としての考え方というのを色濃く入ってくるのかもしれませんが、そういうものを一応出したいと思います。もちろん、それで決めるわけではもちろんありません。そのたたき台に従ってもう一回議論をしていったらいかがかと。そのたたき台はなるべく前広につくりまして皆さんにお示しして、次回はそのたたき台に従って議論をしていくという進行にしたいと思っているわけでございます。
この点について何かご意見ございましたらお願いします。
○白井構成員 私どもの方もあすの会の方でも今までの議論を踏まえていろいろ課題というかかなり大きな要求もしてきているわけですが、やはり議論を踏まえまして現実的にどういった制度がいいのかということにつきましても検討しておりますので、まとまりましたらまた出させていただきたいと思います。
○國松座長 議長のたたき台というのはそれと全く違うことになるかもしれませんが、そういうたたき台がないと前に話が進まないと思いますので、そういう措置にいたしたいと。その際にぜひそういったいろいろな被害者団体、そういうところのご意見もお聞かせをいただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
そういう進行になるということでよろしいでしょうか。どうぞ。
○佐々木構成員 確認で申しわけないんですけれども、犯罪被害者の白書が出てもうかなりのものが達成されたというふうに掲載されているようなんですけれども、それにプラスアルファーが今後の私どもが今審議しているということになるわけですね。
○國松座長 そういうことでございます。各省庁で基本計画にのっとって各省庁でやっていけるものというのはかなりございます。先ほど話が出ましたが、警察庁としてはもう既に犯給法の改正というのをやっているわけです。そういうので全部やっていきますと何%と言った、相当数は実際に実現しておると。ただ、ここでやっているのは積み残しというわけではありませんが、まだこれから議論しなければならない問題であるということでありますので、それ以外の問題をこれからやるということでございます。
○瀬川構成員 それに関連してなんですけれども、この白書というのはいつ出るんでしょうか。新聞の見出しを見ますと閣議で決められたというふうな見出しがあるようですし。それから、内容、見出しの打ち方が9割実施であったり、8割実施があったりしたかと思うんですけれども、その差が1割というのは大分大きなものだというふうに思います。先走って言って申しわけないんですけれども、ぜひ見たいなという気はしております。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 白書につきましてはここにおられる構成員の方々のご協力もいただきまして、おかげさまで今週の火曜日に閣議決定がなされました。それで今実は有識者の構成員の方にはお送りしようということで郵送の手続を進めておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
そして、その中で8割だとかか9割だとか書いてあるのは、ご案内のように、基本計画258の施策がございまして、そのうち約8割はすぐ直ちに実施するというふうになっておりますから、直ちに実施してないと閣議決定違反になりますので、そういう意味で8割はやっていると。それから、1年以内に実施というのが実は10数件ございまして、これを加えたりあるいは全体258ですけれども、実はだぶっているのも結構ありまして、やると大体9割方は施策としては実施されている。
ただ、施策を実施したからといって、例えば国土交通省なんかでそういう被害者の方の優先入居みたいなガイドラインも出していただいているんですけれども、それが本当に現場で被害者の方に届いているのかというとこれはなかなか現場の実施状況まではまだまだそこまで確認できていませんので。だから、施策を実施したということとそれがもうそれですべて満足だということにはならないわけであります。そういうこともきちんと記者発表のときには説明はしてあるんですけれども、どうしてもそういう形の新聞記事になっております。
いずれにしても早急に郵送できるように今手配をしておりますので、お手元に届くかと思います。なお、市販本は大臣のあいさつがそれにくっついたものになるんですけれども、それは12月過ぎになってしまうのではないかというふうに考えております。ありがとうございました。
○國松座長 よろしゅうございましょうか。
それでは、本日の議事につきましては以上で終わりたいと思います。
次回、12月20日にたたき台についてのご議論をいただきたいと思います。
ちょっと1つ事務局から話があるそうです。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 1つだけ。先ほど座長から座長私案をお示しするということでお話がありましたけれども、12月20日が次回の検討会でございますので、できればその1週間ぐらい前にはお示しできるように作業を進めてまいりたいというふうに考えております。
それから最後にあれなんですけれども、実は佐々木構成員の方から何か差し入れがあるということで、忘れずにお持ち帰りいただければと。
○佐々木委員 土佐のおみやげです。
○内閣府犯罪被害者等施策推進室長 今から配りますのでひとつよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○國松座長 ほかよろしゅうございますか。
それでは、以上で本日の議論を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。