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経済的支援に関する検討会(第4回)・支援のための連携に関する検討会(第3回)・民間団体への援助に関する検討会(第3回)合同会議 議事録


(開催要領)
日時: 平成18年6月30日(金) 15時01分~18時58分
場所:中央合同庁舎第4号館共用第2特別会議室
出席者:
[経済的支援に関する検討会]
座長國松 孝次(財)犯罪被害救済基金理事長代行・常務理事

飛鳥井 望(財)東京都医学研究機構東京都精神医学総合研究所参事研究員
大久保 恵美子(社)被害者支援都民センター理事兼事務局長
佐々木 知子帝京大学法学部教授・弁護士
白井 孝一弁護士
瀬川 晃同志社大学法学部教授
高橋 シズヱ地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人
平井 紀夫オムロン(株)特別顧問
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
中江 公人金融庁総務企画局総括審議官
片桐 裕警察庁長官官房総括審議官
三浦 守法務省大臣官房審議官
代理村木 厚子厚生労働省政策評価審議官
代理谷 みどり経済産業省商務情報政策局消費経済部長

[支援のための連携に関する検討会]
座長長井 進常磐大学大学院被害者学研究科教授

奥村 正雄同志社大学大学院司法研究科教授
小西 聖子武蔵野大学人間関係学部教授
高井 康行弁護士
本村 洋全国犯罪被害者の会幹事
山上 皓東京医科歯科大学難治疾患研究所教授
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
廣田 耕一警察庁犯罪被害者対策室長
下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
井上 宏法務省大臣官房司法法制部司法法制課長
坪田 眞明文部科学省初等中等教育局児童生徒課長
代理矢田 真司厚生労働省参事官(社会保障担当参事官室長併任)

依田 晶男国土交通省住宅局住宅政策課長

[民間団体への援助に関する検討会]
座長冨田 信穂常磐大学大学院被害者学研究科教授

中島 聡美国立精神・神経センター精神保健研究所成人精神保健部成人精神保健研究室長
林 良平全国犯罪被害者の会幹事
番 敦子弁護士
荒木 二郎内閣府犯罪被害者等施策推進室長
廣田 耕一警察庁犯罪被害者対策室長
下河内 司総務省自治行政局自治政策課長
辻 裕教法務省刑事局参事官
代理矢田 真司厚生労働省参事官(社会保障担当参事官室長併任



説明者奥村 正雄(上記構成員欄参照)
冨田 信穂(上記構成員欄参照)
安部 哲夫獨協大学法学部教授
小木曽 綾中央大学法科大学院教授

(議事次第)

1.開会

2.海外の実情に関する有識者からのヒアリングについて

  ・イギリス(同志社大学大学院司法研究科教授 奥村 正雄 氏)

  ・アメリカ(常磐大学大学院被害者学研究科教授 冨田 信穂 氏)

  ・ドイツ(獨協大学法学部教授 安部 哲夫 氏)

  ・フランス(中央大学法科大学院教授 小木曽 綾 氏)

3.海外調査について

4.閉会


(配布資料)

  資料1  奥村構成員資料[PDF形式:352KB]
  資料2  冨田構成員資料[PDF形式:47KB]
  資料3  安部教授資料 [1][PDF形式:25KB]  [2][PDF形式:148KB]
  資料4  小木曽教授資料[PDF形式:195KB]


(議事内容)

○事務局(内閣府犯罪被害者等施策推進室長) 皆さん、こんにちは。定刻になりましたので、第4回の「経済的支援に関する検討会」、第3回の「支援のための連携に関する検討会」、第3回の「民間団体への援助関する検討会」の合同会議を開催いたします。
 本日は、岩村構成員が有識者の中では欠席をされることとなっております。
 本日の司会進行を、経済的支援検討会の國松座長にお願いをしております。座長、よろしくお願いいたします。

○國松座長 それでは、司会を務めさせていただきます。
 本日の議事につきまして、事務局からご説明をお願いします。

○事務局 お手元の資料の一番上、議事次第をご覧いただきたいと存じます。本日は3検討会の検討事項に関連いたしました海外の支援制度あるいは体制等につきまして、4名の有識者の方からそれぞれご説明いただくことを予定いたしております。説明の時間はおおむね1人当たり30分程度ということでお願いをしております。その後、それぞれの説明の後で10分程度の質疑応答を設けまして、全部が終わりました段階でさらに、これも10分程度で余り長くありませんけれども、質問時間を設けてございます。ヒアリングの後に海外調査の予定につきまして事務局の方からご報告をさせていただきたいと考えております。

○國松座長 それでは、海外の実情につきまして、有識者の方々からお手元の議事次第にあります順に従いましてご説明をお願いいたしたいと思います。
 最初に、イギリスの事情につきまして、支援のための連携に関する検討会の構成員でもいらっしゃる同志社大学大学院司法研究科の奥村正雄教授からご説明をお願いいたします。

○奥村構成員 同志社の奥村でございます。外国の制度を正確にご紹介申し上げるというのは極めて困難な作業でありますけれども、もし誤りがあればお許し願いたいのですが、私の知る限りのことでご報告申し上げたいと思います。
 お手元のレジュメをご覧いただきながら、よろしくお願いいたします。
 まず、総論的な話でありますけれども、イギリスにおける犯罪被害者対策は第2次大戦後に始まっていくわけですけれども、広い意味ではご案内のようなイギリスの第2次大戦後の綿々と続いてきております「ゆりかごから墓場まで」という社会福祉政策の一環だととらえることが可能かと思います。
 それから、狭い意味といいますか刑事政策との絡みで申し上げますと、まず4つの段階に分けることが可能かと思います。まず第1は、1964年に始まりました犯罪被害者補償制度による経済的な支援。そして第2段階は、1974年に始まった民間ボランティア支援組織による犯罪被害者支援の段階であります。これらの2つの段階では少なくとも、目的は最初は受刑者の社会復帰施策との脈絡で発展してまいりました。
 そして、第3段階に入りますと、1980年代に二次被害防止、これは世界的な動きとしてあるわけですけれども、二次被害防止など刑事手続における被害者の保護の問題がクローズアップされてまいりました。70年代からのイギリス経済の疲弊による犯罪増加とか検挙率低下に対抗するために、サッチャーのいわゆる法と秩序政策に基づく被害者市民の捜査への協力体制の必要性とか、あるいは1985年の国連の被害者宣言とか、87年のヨーロッパ協議会の勧告を受けまして、被害者対策を大々的に展開してまいります。そして、それが第4段階で90年代に入りまして、90年に被害者憲章を発表いたしまして、経済的支援とか民間ボランティア組織、これは後で申し上げるビクティムサポートという組織がありますが、これによる支援とか。刑事手続上の被害者保護施策を充実すべく、特に刑事司法機関に被害者支援の努力義務を課したわけであります。そして、そのほか、ストーカー対策法とか性犯罪者法などの被害類型に応じた被害者関係の刑事立法を整備してまいります。
 その結実とも言えるものとしまして、2004年に「DV、犯罪及び被害者法」という法律ができました。これはちょっとDV対策の問題も、必ずしも1つの性格だけではありませんけれども、そこに列挙しておりますような幾つかの性格を持つ法律ができました。特にここでの報告との関係では、被害者憲章が96年に新バージョンになっていたわけですが、これまではこれらはあくまでも憲章でありまして、法的義務ではなかったために努力目標という形でありました。それがこの2004年法の中に犯罪被害者のための実務規範として結実して、法的義務として課せられるということになります。この点につきましては後ほどご紹介申し上げます。
 それから、この中には若干申し上げておくと、その被害者諮問委員会という被害者の代表10名と政府の委員とかビクティムサポートの委員とかを入れました委員会を組織いたしまして、被害者と刑事手法との関係についていろいろな意見表明をする組織を立ち上げました。それが法制度化されたということでございます。
 時間の関係でちょっと先を急ぎまして、ここでの最初の検討課題であります、犯罪被害者補償制度、経済的支援のところからお話を申し上げたいと思います。
 イギリスの現行制度は1995年犯罪被害者補償法に基づきまして96年4月1日より施行されているのですけれども、もともと旧制度は先ほど冒頭で申し上げましたように、1964年8月1日より、最初は法律ではなくてスキームとして施行されました。そして、性格も国が与える恩恵としての性格づけがありました。このイギリスの制度の当初の特徴は、算定基準が損害賠償型でございました。犯人の肩代わりをするような形でございました。そして、財源は国の一般会計に求めておりました。これは被害者側にとって利点としては相当高額の補償裁定が行われまして、日本円で1億円を超す場合も毎年10数件見られるところでございました。
 しかし、欠点としては民事訴訟と同じようなことになりますので、被疑者被告人の故意とか過失の認定が困難で必ずしも容易ではないというところから被害補償の裁定とか給付が遅延化する結果となった。それから、毎年1億円を超すようなケースを10数件とか出しておりますと莫大な補償費用によって国家財政が負担になっていったということもありまして、94年から損害賠償型を原則廃止いたしまして、障害等級表というタリフスキームという1級等から25等級の障害の段階に応じた、けがの程度に応じた補償という形で、全国一律支給の形態をとるようになりました。
 そういうことで、何度かの改正によりまして、現行制度は今申し上げたように、95年法に基づきまして施行されております。障害等級を一度改正された後に、現在は2001年の制度を現行制度として施行されております。一方、今申し上げた障害等級というのは、この傷についてはいくらと一律決まっているわけですけれども、それにプラス損害賠償型の性格も残しているところがイギリスの被害者補償制度の特徴でございます。
 その特徴として4点ほど挙げております。障害等級表に基づく25段階の障害の程度に応じて1,000ポンドから25万ポンドの支給という形になっております。1,000ポンドというとちょっと、暴行を受けまして前歯が折れたという程度らしいのですけれども、そういう程度からもう本当の一生涯の障害を負うような25万ポンドの支給までございます。
 それから、第2番目が先ほど申し上げた損害賠償型の性格を残しているという点なのですが、就業者に対する28週間を超える逸失利益の補償をしております。ただし、これは経済的な格差が当然あるわけですけれども、国民の平均賃金の1.5倍の限度内ということになっております。その28週以内につきましては法定疾病給与制度によりまして1週に約56ポンド給付がなされていると言われております。ただし、これは公務員とか民間企業に勤めている有職者に限るということなので、それ以外の有職者でない方にはこれは適用されません。
 それから、3つ目ですけれども、これもイギリスの特徴かと思うのですが、特別の医療費給付として、イギリスはご案内のようにNHSで国民の病気の治療は基本的には無料でございますけれども、高度医療には大変なお金がかかるわけですが、そういった特別の医療経費とか、それから手足の障害によりまして住居の改造が余儀なくされた場合とか、それから介護サービスなどの費用も負担してくれることになっております。
 それから、4番目に、遺族給付ということで、葬儀費用、それから被扶養関係にありました配偶者、親権者・子どもに対する遺族給付が行われます。子どもに対しては18歳、成人に達するまでということになっております。そして、この遺族給付につきましては、どちらかというとイギリスでは亡くなった方よりも生存している方の補償を重視する傾向が見られます。
 この(1)から(4)の合計で、損害賠償型の逸失利益の分も含めまして、すべて含めて最高50万ポンド以内ということになっております。約1億円ほどかと思うのですが、そういうことになっております。若干毎年1、2件出ていると言われております。
 制度の概要でごありますけれども、まず制度の趣旨、今申し上げたような特徴を持つイギリスの被害者補償制度の趣旨でございますけれども、これもいろいろな意見があって、国が犯罪の被害を防止できなかったことに対する不履行責任として国家が被害補償する責任があり、だから給付するんだというふうに考える学説・見解もあるんですけれども、イギリスの政府は一貫して、旧制度では恩恵として位置付けていましたし、現行制度もそこに書いておりますように、政府が国民を代表して同情と社会の連帯共助の精神から給付するんだと。市民間で生じた犯罪の被害についてはその責任は基本的にはその個人にあって国にあるのではないというスタンスをとっております。
 財源は旧制度と同じように国の一般会計でございます。
 次に、受給資格の点でございますが、イギリスの場合は法制度のところがちょっとややこしいところがございますが、被害者補償制度につきましてはイングランド、スコットランド、ウェールズということでグレート・ブリテンを対象にして、暴力犯罪による被害を受けたことということで、北アイルランドは別制度になっております。この3つのところ、イングランド、スコットランド、ウェールズで暴力犯罪による被害を受けたことが1つの理由でありますので、外国人被害者も含まれることになります。イギリス人が海外で受けた被害は適用外ということになりますが。ただし、現在はEU諸国で受けた被害につきましては、その国の犯罪被害者補償制度の申請手続を補助するサービスをこのイギリスの被害者補償制度の後で申し上げる組織が行っております。
 それから、次に第2点の性格としては、暴力犯罪の被害者と刑事補償の対象者ということになっておりまして、この暴力犯罪というのは実は定義がございません。CICAと書いてありますけれども、これが犯罪被害者補償制度の審査会でありますが、この裁量によりまして個別事案ごとに判断しておりまして、殺人とか傷害等のほか、強姦とか放火、DV、汽車転覆等の罪、それから被疑者の逮捕に協力してその結果障害を負ってしまったというような形の刑事補償の対象者が入ってまいります。財産犯、交通事故被害者など過失犯は含まれません。財産犯については莫大な額になるからというのがその理由でありますし、交通事故被害の過失犯については過失の認定というのは非常に困難だというようなことで、故意犯に限定しております。故意犯の生命身体犯ということでございます。
 それから、3番目の特徴としては、被害の結果、肉体的及び心理的影響を受けたことということで、いわゆるPTSDなども対象になっております。ただし、これは非常に認定が難しいということをCICAでは言っております。
 それから、先ほど申し上げましたように、障害等級表の最低基準1の1,000ポンドを受ける程度の障害を受けた者ということになっております。それから、事件後速やかに警察に通報して協力しなければいけないということと、協力義務が課せられておりまして、事件後2年以内の申請ということが原則となっております。
 支給の現状ですけれども、これはCICAのアニュアルレポートを当局に問い合わせたのですけれども、最新版の返事がございませんでした。ネットで公開されているのは2002年度しかございませんで、2004年度のがもう出ているはずなのですが、リスポンスがございませんでしたので、申し訳ないのですけれども、2002年度でご勘弁願いたいと思います。
 別表1をご参照いただきたいと思うのですけれども。障害等級に基づく支給が別表1でございまして、1億3,201万7,000ポンドということでございまして、約25万ポンドの最高額が支払われたのが3件ございました。なかなか障害の程度によって支払が決まってまいりますので平均というのはとりにくいわけですけれども、多くが、50%を超えるものが1,000ポンドから2,000ポンドの間ということでございます。
 それから、逸失利益等の補償も含めまして、現行制度では総額が2億747万4,000ポンドということで、日本円で215円ぐらいで換算いたしますと、約436億円の支給が行われているということでございます。
 支給の具体例で理解を深めるために申し上げますと、イメージでございますけれども、暴行事件による両足大腿骨の骨折で12か月、1年間休職したといたします。その被害者が、イギリスはご案内のように週給制をとっているわけですけれども、基本的に週給として週に400ポンドの収入があったと。休職中に週に約100ポンドの社会保障給付を受給していたといたします。そして、後ほど申し上げます損害賠償命令が出たとして、500ポンド支払命令が出ていたといたします。その補償裁定時に200ポンド受け取ったと仮にいたします。そういうことでありますと、そこによりまして大腿骨骨折レベル10ということで5,500ポンドと。逸失利益が29週を超えた分であります、1年間で52週と、差し引き24週ということで、週に400ポンド掛けますと9,600ポンド。社会保障給付費、これは今の逸失利益がプラスでありますけれども、そこから公的給付の二重支給は認められないということで、社会保障給付について24週の100ポンド掛けましたら2,400ポンドが引かれます。さらに損害賠償命令、これは後ほど申し上げますけれども、これについての200ポンドがマイナスされまして、実際は500でありますが、残額300ポンドまだあるわけですけれども、これは犯罪被害者補償審査会の方にいくことになっております。したがって、これについてはもらえない、引かれた分、200ポンドもらった分は差し引かれると。そうなりますと、その差し引きで裁定額が1万2,500ポンドと、こういうふうな計算になっているようでございます。
 支給方法でございますが、一括方式が原則で、被害者の希望によっては年金方式も可能でありますけれども、基本的には一括方式ということでございます。
 仮給付ですけれども、これは基本的には行われないということです。なぜかと言いますと、裁定に関する医学的な検査ですね、こういう調査とか認定に時間がかかるということでございました。ただ、この間昨年の7月7日のロンドン爆弾テロ被害についてはこういうものについては迅速な対応が必要だというちょっと例外的扱いをしているようでございます。
 それから、他の公的給付との関係ですけれども、先ほど申し上げましたように、公的給付の二重支給は認められないということでございます。それから、他の社会保障給付とか年金等の当然調整、減額が行われます。
 それから、不支給事由ですけれども、1,000ポンド以下の被害については支払われない。それから、通報とか警察の捜査協力を怠った場合とか出ません。それから、暴力犯罪の被害から生じたものでない場合、被害者側に落ち度とか前科がある場合も不支給または減額されます。それから、同居親族間の犯罪も基本的にはだめです。しかし、既に加害者が訴追されたか、親族関係が破綻して同居をやめて再び同居の可能性がない場合は補償対象となっていることになっております。
 裁定と不服申立でありますけれども、先ほどちょっと申し上げました審査をする機関が内務省から独立の官庁として犯罪被害補償審査会というものをつくって、そこで組織化しまして判断しております。これはロンドンとグラスゴーに本部がありまして、私も参りましたけれども、ほとんどが内務省の出向者でございます。申請受理後1年以内で平均8か月以内の申請処理をしているということでございます。
 これにつきまして、被害者側に不服がありました場合は不服申立ができるということであります。それについても再度CICAが申立を却下した場合は、さらに上訴としてCICAPという犯罪被害補償上訴委員会というまた別の組織でありまして、弁護士とか医師とか一般人からなる内務大臣が任命した3人の委員によりますヒアリングが行われて、そこで再度判断されるという二重の仕組みになっているということでございます。
 それから、求償でありますけれども、有罪被告人からの犯罪被害者補償支給金の求償を明確に2004年法で入れました。被告人は被害者補償の一部または全部についてCICAの求償に応じる義務があるということでございます。
 それから、新しい制度といたしまして、アメリカやヨーロッパの幾つかの国でも既にできているものでありますが、イギリスでも被害者基金というものができました。2004年4月より実施しておりまして、当初は犯罪収益から剥奪しました約400万ポンドを原資としまして、犯罪被害者に対する支援のための基金としまして、現在は性犯罪被害者の支援活動をしている組織に補助金を出しております。
 2004年法の中にもう立法化されたわけですけれども、刑罰賦課金、サーチャージというのをいずれは原資としていきたいということにしているようであります。2004年法の14条によって新設されました。これは、裁判所がいわば犯罪行為への課税、一種のタックスという形で行うという性格を持って、反社会的行為を行った者に社会への償いの一部として被害者支援に貢献させるということで、犯罪行為を行ったことに対する課税という性格を持っているものであります。必ずしもこれは被害者のない薬物事犯が入るほか、常習的な交通違反者に対する反則金も入りますので、必ずしも被害者がいる犯罪とは限らないわけであります。5ポンドから30ポンドぐらいの賦課金を課すということで、それを原資として被害者支援活動とか被害者補償制度の原資としていこうと、こういう動きがあるようでございます。
 それから、もう1つ被害回復制度のものとしましてイギリスには損害賠償命令というのがございます。被害者自身について刑事事件には裁判におきまして有罪被告人に一定の賠償額の支払を命令し、被害者への迅速な被害回復の実現と被害感情の緩和ということを行っております。これは刑事制裁として科せられまして、刑の減軽とかとは一切リンクしません。そういうことで、生命・身体犯・財産犯による損害のケースについて言渡しを行いまして、簡易迅速な被害回復を図ろうとしております。そこに出ていますように、2004年度では、治安判事裁判所というところでは平均142ポンドですし、それから15%ほどの言渡しです。刑事裁判所ではわずか7%の言渡しで平均609ポンドということで、理由は犯人が資力不足だということなどが原因であります。被害回復には不十分な現状ではありますけれども、ともかく有罪被告人に簡易迅速な被害回復をさせることによって若干の被害回復と、それから被害感情の緩和ということをねらっております。
 経済的な支援に関しましてはその程度としまして、次に、犯罪被害者支援に係る機関・団体の点に移ります。
 先ほど申し上げましたように、2004年法の中に犯罪被害者に対する実務規範というのが制定されました。制定されて、その中身は実務規範というのが2004年4月3日からでございます。刑事司法機関による支援を初めて法律により義務付けることになりました。時間の関係で一々読みあげることはいたしませんが、別表3をご覧いただきますと、そこにフローチャート的に警察による支援とか、検察による支援、あるいは警察と検察のワンストップショップのような証人保護部というのが設けられたのですが、そういうところによる支援など、裁判所とか保護観察とか刑務所とか、そういったところの刑事司法機関による被害者の支援のことが義務付けられて、主に情報提供でございます。そういうネットワークがなされているということでございます。
 それから、珍しいところでは、犯罪事件再審査委員会というのが、これは97年にできたんですけれども、有罪判決か量刑について再審査して、再審請求に向けて行う控訴裁判所・刑事裁判所への付託決定に関する情報提供ということです。要するに有罪判決とか量刑について問題がある場合に、さらに再審を請求するというそういう組織でありますが、それとこの情報提供というものでございます。
 こういった刑事司法機関の不服申立でありますけれども、書面による不服申立はできますけれども、この結果につきましては不履行につきましては、刑事上、民事上の責任を負わないということになっております。
 それから、ネットワークとしてのいわば1つの性格としてのワンストップショップのような性格でもっているのがその性暴力付託センターと言われるものでありまして、86年から実施されておりまして、内務省、厚生省の連携によりまして全国に14か所あるということですが、主に病院内であります。先ほど申し上げました被害者基金を利用して、現在は行われていると。それは強姦とかその他の重大な性暴力被害の被害者が医療とかカウンセリングを受けることとか、あるいは検証のための身体検査とか証拠採取を含む警察の捜査を援助するという組織でありまして、医師・看護師・危機ワーカーと言われる人たちが活躍していると言われるわけであります。そういうものがございます。
 それから、4つ目に、民間被害者支援団体の活動でございますが。援助団体犯罪類型別、そこに幾つか列挙しておりますように、総合的なものとしてはビクティムサポートがありますけれども、それ以外のものとしては児童とかDVとか交通事故とか性暴力とかというふうに分けてございます。この財源は政府の委員会とかあるいは地方自治体、警察などから補助金の財政的援助を受けている団体もありますけれども、ごく一部でありまして、主として個人や企業からの寄付金、資金調達のためのイベント主催とか出版活動などによって財政を確保しているようでございます。ボランティアにつきましては新聞・インターネット等で募集しているというところであります。
 その中でも特に注目されるのが、世界的にも有名なこのビクティムサポートという組織であります。1974年に誕生いたしまして、79年に全国組織として慈善団体となりました。80年には有給スタッフを採用しまして、警察などと連携した支援活動を主に行う準公的性格を持った組織でありまして、ロンドンに本部があります。全国300か所以上の支部と、刑事裁判所、治安判事裁判所に証人サービスという付添いサービスなどを行う事務所を置いております。
 スタッフで約1万5,000人、これは特に資料によって若干の差が出てくるのですけれども、約1万5,000人、約1,500人の事務職員でありまして、事務職員の方はボランティアの方もいるのですが、多くが有給スタッフと言われております。ちょっとネットで見ますと、大体安い人で日本円で350万円から650万円ぐらいの待遇を与えているようであります。すべて全体で93%がボランティアの方だということであります。
 それから、各VSの構成ですけれども、そこに挙げてあるのはシニア・コーディネーターとかボランティアとかいるわけですけれども、これは各基本でありまして、実際には支部でも地方でもかなりそれを統括する場所にはもっとほかの職員、マネージャー、事務局マネージャーとかその補佐とか有給のスタッフがおりますし、それから最近では特に専門的な支援が必要だということで、先ほど申し上げました証人保護部というところに専門的能力を持った有給スタッフがあるいはケースワーカーなどが置かれております。
 それから、活動資金としてはそこにありますように、内務省から2,907万ポンドもらって、合計で約2,919万ポンド、日本円で約61億8,000万円の補助金をもらって活動しております。それについては別表4、ちょっと細かくて見にくいのでありますけれども、そこをご覧いただきましたらおわかりになると思います。約96%が2004年度では内務省の補助金でございました。各支部は内務省のVS本部から60%がありまして、その他自治体の補助金とか個人や企業からの寄附金などでございます。
 それから、相談員はVS本部が作成しました訓練マニュアルに従いまして、犯罪類型別の訓練を受けて、相談員の能力に応じまして比較的軽微な犯罪被害から重い犯罪被害へと能力に応じて活動しているようでございます。
 活動内容につきましては、情報提供とかそこに列挙しております危機介入の段階から短期、中長期の支援を行っております。それから、先ほど申し上げた証人サービスという裁判所での付添いサービスなどを行っております。
 基本的には素人の方でございますけれども、特別の訓練を受けました一般人から募集した方でありまして、それを新聞とかインターネットなどで募集していると。しかし、最近はペイドスタッフの非常に専門的な能力を持った人も雇っているようでございます。
 そういうわけで、ちょっと駆け足でまいりましたけれども、最後に、このように犯罪被害者補償制度につきましては支給対象の範囲が葬儀費用とか特別の医療費とかを払っているという点とか、不服申立の審理方法がちゃんとしてあるということとか、被害回復の制度で損害賠償命令が置かれているということであります。それから、最近被害者基金制度が制度化されたというようなことで、ちょっと我が国にはない制度がその点でございます。
 それから、被害者支援のネットワークですけれども、実はこれ今刑事司法機関のネットワークがあると申し上げましたけれども、しかし、これはいわゆる継目のない、それからビクティムサポートが紹介サービスなどを行っておりますけれども、いわば継目のない、端から端までの支援体制の構築というのはこれからのイギリスでも課題でありまして、それが自覚されておりまして、イギリスでは労働党のマニフェストの中に被害者ケアユニットというものを立ち上げて継目のない支援体制を構築すべきだということで、これからのイギリスでも課題であるということでございます。
 それから最後に、民間団体の援助につきましては、ビクティムサポートのような援助団体が政府内務省から巨額の財政資金を受けている。なぜイギリスの場合ビクティムサポートだけなのかということでありますけれども、ビクティムサポートというのは1つ法的根拠としてはチャリティー財団であると。チャリティー財団に対しては補助金が出せるということですけれども、ほかの組織はどうなのかというと、ほかの組織もチャリティー財団がほとんどなんですね。では、なぜビクティムサポートだけなのかということなんですが、立ち上げのときからの性格でありまして、もともと立ち上げましたときがナクロの関係者が当たったということで。ナクロというのは犯罪者の社会復帰を検討する組織でありますけれども、そういったところのいわゆる保護観察の人たちとか、あるいは地元の警察とか、そういった自治体との絡みで、民間ボランティア組織でありましたけれども、そういった警察とか保護観察とかそういったところと密接に関連した組織であったということで、政府としてもそういう組織を援助しています。
 そして、犯罪被害者については先ほど申し上げませんでしたが、ほとんどが警察から情報提供が、被害者の情報提供がビクティムサポートにリファーされまして、それによってビクティムサポートが動くというシステムをとっております。
 そういうことで、先ほど申し上げたように、準公的な性格を持っているということもありまして、政府内務省としてはある意味ではこれは安上がりの対策だということでありますけれども、ボランティアの働きだけ見ますと、お金に換算すると約年間270万ポンドぐらい匹敵するらしいんですけれども、それをビクティムサポートはほぼ、有給のスタッフもいますけれども、基本的には相談員はボランティアでやっているということで、いわば安上がりになっている点がございます。ということでありまして、そういう組織でございます。それも検討の課題かなということでございます。
 時間がまいりましたのでちょっと駆け足で大変申し訳ございませんでした。以上で終わります。

○國松座長 どうもありがとうございました。
 ただいまの奥村先生のご説明につきまして、何かご質問がありましたらどうぞご自由にお願いをいたします。

○瀬川構成員 この会議ではいずれ問題になろうかと思うのですが、被害者の権利というフレーズなのですけれども。イギリスの変遷を見ますと、若干最近変化があったのかなという感じもいたしますけれども、現時点で被害者の権利といった場合にイギリスではどういうことを意味するのかということが第1点。
 2番目に、2004年11月の法改正によって何らかの大きな変更がもたらされるのかという点、この2点。

○奥村構成員 被害者の権利、90年の被害者憲章のときもビクティムズライツという形でライツという言葉を使っておりました。諸権利という言葉なのですが、直訳すれば。しかし、これは先ほど申し上げましたように、法的な権利としては認めないということでございました。これが2004年法になって初めて法的権利として認められることになったということでございます。

○白井構成員 先生の2ページの支給の具体例で、この先生の具体例ですと両足大腿骨骨折で12カ月休職ということで、最終的には治って12カ月で、13カ月目からは職場に復帰したということを前提の算定だと思うんですが。それで、この後ろの方のタリフスキームの25段階のあれを見ますと、ずっと重い方があると思うんです。その重い方で後遺障害が残って、そして例えば仮に片足1本切断してしまったというようなケースで、将来にわたって逸失利益が生じているような場合、そういう場合はタリフスキームで支給されるお金以外に、将来の逸失利益も支給されるということがあるのでしょうか。

○奥村構成員 それは先ほど申し上げましたように、そういう後遺障害残るような重障害を負ったと、それはタリススキームに当たるかどうかで判断せざるを得ないわけですね、その障害につきましては。それが最高25万ポンドの範囲内で支払われると。
 さらにそれであと29週を超える部分の逸失利益が出るようなものにつきましてはそれの部分については有職者に関しましては逸失利益の判断をして、その部分のプラスして、最高50万ポンド以内で支給ということでありますので、当然支払われるものと判断いたします。
 この具体例は私がつくったものではなくて、あちらの説明書の中に、例えばこういうものだというものが載っていましたので、それをご紹介申し上げたわけでございます。

○白井構成員 もう1つそれに関連いたしまして、2ページ目の遺族給付の点なのですけれども。被扶養者の数によって支給されることになるんですが、5,500ポンドオンリーということなのか、それともずっともし働けないような寡婦になった奥さんがいた場合、ある程度そういう逸失利益も見込んでこの5,500ポンド以上のものが支給されることになるのかどうかということなんですが。

○奥村構成員 この点は、この被害者補償制度のスキームの中では原則これになっているわけですね。ですから、例えば先生が今おっしゃったような場合とか、あるいは学生とかまだ有職者ではない人が将来、日本の場合逸失利益の判断とか出てまいりますけれども、そういうものも考慮されるのかということですが。例のあすの会の先生方がおつくりになられた報告書の中にはそういう場合もあり得るという向こうの答弁があるそうですけれども、スキームの中には書いてございませんね。だから、ちょっと私としてはされているのかどうかは判断つきかねます。

○平井構成員 先ほどのご説明では、枠組みとしては、補償として上限が1億円ということですね。

○奥村構成員 50万ポンド。

○平井構成員 けれども、平均すると1件当たりの支給額は55万円ぐらいになります。別表を見ますと、随分上の方の少額のところに分布しているんですが。

○奥村構成員 そうですね。

○平井構成員 それは先ほどの具体的ケースで見ますと、社会保障給付と損害賠償命令などと相殺があるいうことですけれども、それだけではなかなかそんなに相殺額が大きくなると思えません。例えばそれ以外の損害賠償の相殺というんですか、何か大きな要因があってこの少額のところに集中していると言えるのか。あるいは逆に実態的にこういう形で少額の被害者給付というんですか。そのあたりのところが少し知りたかったんですが。

○奥村構成員 この別表はあくまでもタリフスキーム(障害等級)に従ったものなんですね。したがって、その逸失利益の分は含んでおりません。その逸失利益を含んだもの総額は先ほど申し上げましたように出ているんですが、具体的に逸失利益が出た分、当該個々のケースについていくら出したか、いくら算定したかという資料は残念ながら公表されておりませんので、ちょっとその点はわかりにくいところがございますが。実際はほとんどが1,000ポンドから2,000ポンドぐらいの中で実際行われていると。中に最高50万ポンドまで支払われるような特異というか幾つかのケースがあると、そういうことだろうと思うんですね。
 ですから、そこの資料がこの別表からはわからない、この表が出てこないんですね、あちらが資料を公開しておりませんので。それは前も1億ぐらい出ている人の具体例を教えてほしいとあちらに行ったときにCICAの方に申し上げたら、それは大体ある程度被害者が特定されてくるので、それは明らかに公表はできないというふうにおっしゃっておりました。
 ですから、細かいことはわからないので、申し訳ございません。

○本村構成員 貴重なお話ありがとうございました。幾つか中身を教えてもらいたいんですけれども。まず、2ページ目にあります(4)の支給の現状というところに、2002年度は7万9,248件の申請を解決というふうに記載がございます。3ページ目の下の方に、2002年度では申請不適格約3万9,000件とございますが、これは7万9,248件のうち3万9,000件が不適格と判断されたということですか。

○奥村構成員 これは次年度へ越しているものもありますので、新たな申請、次のところで、申請は約1年ということですが、それを越えるものもありますので、必ずしも8万件ぐらいのものの中でということではございませんが。毎年大体これぐらいあって、そのうち半数近くが申請不適格ということに、半数近くというか2002年度で言えば3万9,000件あったということでございます。

○本村構成員 かなり審査の内容が厳しいということですね。

○奥村構成員 厳しい内容でありまして。これもあちらで伺ったときに、PTSDの診断が非常につきにくいと。これは医師の診断ではなくて、CICAの専門スタッフによって判断されるわけですけれども、その審査が非常に難しいと言っておりました。性犯罪被害者のPTSD、精神的被害に関します補償についてなかなか裁定されないのは問題だと。ビクティムサポートはそういう批判をしております。

○本村構成員 4ページ目の損害賠償命令というものについて勉強させてもらいたいんですが。これは被害者の賠償の意思ありなし関係なしに裁判所が独自の判断で下すというふうに考えてよろしいですか。

○奥村構成員 そうでございます。有罪被告人に対して必ず法によって決められているわけですけれども、損害賠償命令を検討しなければいけないということでございます。それはただし、犯人の資力以内と。

○本村構成員 資力を見て、犯罪だけではなくてということですか。

○奥村構成員 家庭があって家もあるじゃないかと、しかし、奥さんとか子どもさんいらっしゃるような場合、家の処分までとかいうのは難しいということであります。したがって少額にとどまっているのが現状であります。

○本村構成員 ここで支払命令が出たものは強制力があって被害者側に支払われるということになるわけですか。

○奥村構成員 そうです。

○本村構成員 最後になりますが、ビクティムサポートの活動の、8ページ目、最後のページの一番下のところに、年間130万人の被害者云々というところの括弧の中ですが、ほとんどが警察からの付託制度を利用した情報提供に基づくというふうに記載がございますけれども、付託制度というのは何か法制度があるというものですか。

○奥村構成員 いや、それは法制度ではなくて運用で行ってきたわけでありまして。先ほど申し上げましたように、もともと警察とか保護観察所とかそういったところと連携しながら立ち上げてきました組織でありますので、警察は内務省というところが監督しているわけですけれども、この内務省もそういった警察との連携を持っているという公的性格があるというそういうチャリティー財団なので資金を出してやっていこうと。
 プライバシーの保護の問題とか出てくるわけですけれども、それはデータプロテクションアクト(情報保護に関する法律)ということで保護されているとあちらで行ったときに聞きましたけれども。特にそのための被害者のプライバシーのためだけの法制制度というのは特にないようであります。
 この130万というのは非常に数が多いわけですけれども、1つは軽微な事犯については自動的に付託されまして、だから、どんどん入ってくると、毎日のように。ちょっと重い犯罪については被害者の同意を得てから付託されるということでございまして。これだけ多いのは自動的に軽微な事犯も入ってくるということだけであります。だから、軽微な事犯については、これもビクティムサポートの人に伺いますと、それはもう対応しないと。被害者が言ってこられたときだけ対応するというふうにしているようでございます。

○本村構成員 情報だけもらって、被害者が来たときに対応するというような形ですか。

○奥村構成員 そうです。重い犯罪については被害者の同意を得ていますので、当然被害者と対応すぐできるわけですね。そういう組織でございます。

○山上構成員 被害者支援の活動に対する資金のことに関し、被害者基金のところで、配付資料4ページの下の方に被害者基金がまず性犯罪者を対象に、そしていずれは交通被害者や遺族に対する支援にも活用予定と書いてあり、ビクティムサポートに関連して、あるいはSAMMなどに関連しても、その団体によって政府がお金を出したり、犯罪の種類によってお金を出したりという基準が今あるようですが、これはどういう考え方に基づいているのか。それから、過渡的なものとしてこれから対象が広がっていくものなのか、その辺を教えてほしいのですが。

○奥村構成員 先ほど申し上げましたように、なぜイギリスの場合ビクティムサポートだけなのかと。クルーズ遺族ケアという、殺人遺族の会につきましては厚生省が出したりとか、それはあくまで行政機関の政策的な判断で、チャリティー財団なら出せるということでの考慮から出しているというところでありまして。
 なぜこのビクティムファンドが性犯罪にまず限定されて今出されているのかということにつきましても聞いたのですけれども、性犯罪被害者というのは特にやはり極めて深刻な状況だと。だから、それに対する支援が必要なんだということで出しているという説明でございました。
 ということで、将来的にはこれをもっと、この法制度、刑罰賦課金というのができたわけですけれども、これを原資としながらそれを今後中身についてはまだ検討中というところであるようでございます。

○高橋構成員 3ページ目の(5)支給方法の最後に、ロンドン爆弾テロの被害者に適用可能というふうになっていますけれども、実際にはこれは適用されたのでしょうか。もしされたとしたら、最高額1億円ぐらい出されたのかどうか。

○奥村構成員 その点私は、これはCICAの資料で読んだだけでありまして、具体的にロンドンの爆弾テロ事件について仮給付がなされたのかどうか、それでいくらなされたのかということの情報は持ち合わせておりません。申し訳ありませんが。

○國松座長 内閣府の方でどこかで調べることは可能ですか、今の件は。

○奥村構成員 照会すれば可能かと思います。いくら出したのかと。

○國松座長 海外調査というのがあります。やはりお役所からいった方がいい、その辺はどうなんですかね。

○事務局 一応調査に行きたいと考えております。

○國松座長 海外調査の課題になると思いますね。

○奥村構成員 その情報自体は細かいところはわからないというところです。

○國松座長 後ほどまたそれは検討課題ということで。

○林構成員 お聞きしたいんですけれども、先ほど2004年に被害者の法的権利が認められたという、その理由と、その活動主体、その2つ、何だったのかだけ教えていただければ。被害者の権利ですね、先ほど質問の中で2004年法で被害者の法的権利が認められたということでしたけれども、なぜそうなったのかを教えていただきたいなと。

○奥村構成員 従来から被害者の権利を要求する声は非常に強かったわけでありますね。ただ、政府は、先ほど申し上げた被害者の権利を充実させるということを言いながら、実際は憲章という形で法的な義務付けをしなかったと。しかし、やはりこれは世界的な動きもあると思うんですけれども、被害者の権利を認めていくべきだという声が強くなった。それで法的な権利として格上げしていくという形になったと思うんです。ただし、それに対して不履行について国は責任を負わないという1項目を置いて、そういう努力目標と、法的義務として努力目標化したということでございます。

○林構成員 活動主体、そのことを言い続けた主体はどこだったのですか。

○奥村構成員 ビクティムサポートなども非常に叫んでいたようであります。

○林構成員 ビクティムサポートが。

○奥村構成員 多くですね、そういう声が非常に強かったということですね。
 それ以外の被害者支援のいろいろな組織もあると思うんですが、そういったところも主張していたと思うんですが、主にはビクティムサポートの主張が多かったと思います。
 それと、内務省自身が被害者対策というのを、先ほど冒頭に申し上げましたように、非常に重視して取り組んできたというところがございますので、これを、イギリスというのはまず先行してともかく走ってみてそれでいろいろパイロット的にいろいろなことをして、うまくいけばそれに乗っていくと。慎重かつ大胆にやっていく国、国民性があるように思うので。内務省としてもそれを法的義務化してもいいだろうというふうに判断したのではないかと、これは私の判断ですけれども。

○國松座長 続きまして、アメリカの事情につきまして、民間団体の援助に関する検討会の座長でおられる常磐大学大学院被害者学研究科の冨田信穂先生からお願いをいたします。

○冨田構成員 それでは、私の方からアメリカ合衆国における犯罪被害者支援ということで、お手元の資料2に従いましてお話をしてまいりたいと思います。
 まず、その背景でございますけれども、アメリカ、弁解めきますけれども、アメリカ合衆国の犯罪被害者支援の全体像を得るということは、私の能力不足もありますが、非常に難しいわけです。その理由といたしましては、比較的長い歴史があるということ。それから、多様な被害者を対象としていること。それから、何よりも連邦と州の二重構造の問題があるということです。そこで、こちらの方から求められた項目を中心にできる限り具体的にお話ししてまいりたいと思いますが、求められている項目で分からないところも随分ございました。
 まず、その歴史ですが、最初に、制度的には1965年のカリフォルニア州の被害者補償制度だと言われています。先ほどイギリスの制度が64年、そのすぐ前のニュージーランドの制度が64年ですので、その翌年には制定されているということでかなり早い時期から始まっていると言えるかと思います。
 1970年代にはLEAA(ローエンフォースメントアシスタンスアドミニストレーション)という法執行援助政策というんでしょうか、主として警察等の法執行機関の改善のため補助金が出されまして、それを用いていくつかの被害者支援プログラムが始まっていると言われています。特にフロリダで始まったビクティムオンブズマン制度なんていうのがそのうちの早いものだと言われています。このころにNOVAなどの民間団体も設立されたということです。
 それから、もう1つは、特にフェミニズムなどを背景として性犯罪の被害者、それからDV被害者などの様々な被害者グループが結成されて、それが自助グループ的な活動をすると同時に、法改正を求めるというような一種アドボカシーの活動もこの頃から始まっていると思います。
 ただ、アメリカ全体を見たときに、被害者支援をめぐる状況で一番大きい転換点というのは1982年で、この年の4月に当時のレーガン大統領が被害者支援の必要性というのを強調されて、すぐその後「犯罪被害者に関する大統領特別委員会」これはよく知られているものですが、それが設置されて、これが大規模なヒアリングを行いまして、その12月、もう本当に1年もたたないうちに報告書を出して、これがファイナルレポートというものですが、今読んでも非常におもしろいと思います。これが出されました。
 これは、警察や検察や裁判所や行政や社会全体に対して68のレコメンデーション(勧告)を含んでおりまして、アメリカ合衆国の被害者支援、ここでは具体的にこの機関はこういうことをやらねばならぬのだというようなことを具体的に書いておりまして、これがかなり強く方向づけたと言われております。
 この年に、この段階ではまだ内部的なのですが、オフィスフォービクティムズオブクライム、犯罪被害者対策室と仮に訳しておきますが、設置されました。正式には88年です。1984年に連邦の犯罪被害者法ですね、VOCA(ビクティムオブクライムアクト)が制定されまして、後でもご説明いたしますけれども、犯罪被害者基金(クライムビクティムファンド)が設立されたわけです。
 その後に、この刑事手続における、このころアメリカで1960年代からなんですが、ナショナルクライムサーベイなどの被害者調査が広く行われることによって被害の実態が明らかになってきた。とりわけいわゆる二次被害のことも明らかになってまいりまして、その刑事手続における犯罪被害者の法的地位の向上というようなことを目指して様々な立法がなされたわけです。
 特にビクティムビルオブライツと呼ばれる権利宣言というものが、立法の形式はさまざまですが、各州で制定されました。今、合衆国では33の州に州の憲法の中には被害者に関する条項があるわけです。90年代では連邦の法律が矢継ぎ早にありまして、女性に対する暴力法だとか反テロリズムとか権利明確化法とかあります。それが2004年にジャスティスフォーオールアクトというのは、これはちょっと変な訳をしてありますが、できて、これは実は連邦憲法の中に被害者の権利に関する条項を入れるという動きもあったんですが、最終的にそれができなくて、半ば一種妥協のような形で連邦の被害者権利法、もっと明確な形で出されたということです。最近では、特に同時多発テロ以降では、テロリズム被害者に対する支援というのが強調されていると言えるかと思います。
 次に、経済的支援にまいりたいと思いますが。アメリカにおける経済的な被害者が被った経済的損失を回復するための制度としては、これからご説明するコンペンセーション、被害者補償制度、それから損害賠償命令、レスティテューションオーダー、それからもちろん民事訴訟、賠償請求というのがあるわけですが。このうち、国による経済的支援と言えるのはコンペンセーションですので、以下そのコンペンセーションを中心にというか、ほぼそれに限定してお話をしてまいりたいと思います。
 そのほかに公的給付制度は余り充実していませんがありますし、それからもちろん民間の保険制度もあるわけですが、余りそれほど大きな、犯罪被害者の被った被害回復という視点では余り大きな役割を果たしていないと言えると思います。
 アメリカの被害者補償の基本的な性格は、暴力犯罪の被害者に対して、もうそのほかのいかなる手段、ここ特に特徴的なのは、自分の掛けている民間の保険も含めてどんな手段を用いても回復できないときに、いわば最後の手段として用いられるというものです。ただ、アメリカでは一部もちろん健康保険というのもかなりほとんどが民間保険ですし、それからまた、一部低所得者向け、高齢者向けの公的な医療保険制度というのはあるんですが、そういういわゆる低所得者層はそういう保険にも入っていないので、そういう人にとってはこの犯罪被害者補償というのは最初に利用する手段というか、もうそれしか利用できないということが言えるかと思います。
 現在合衆国では、先ほど64年に法律ができたということですが、65年から制度が動いていますが、カリフォルニア州が始めて、すべての州にあります。そのほかDCにもありますし、そのほかのそこに書いてあるような領土にも制度があります。
 その支給の対象は、これは州によって異なるわけですけれども、基本的には州内において発生した暴力犯罪の被害者及び殺人事件の遺族ということで、財産犯の被害は除外されます。
 それから、これは後でも実際に支払の例を見てもわかるように、アメリカのかなりの特徴は、DV被害者と、それからここには書きませんでしたが、性犯罪、そして飲酒運転の被害者がかなり重視されているということです。それから、最近ではというか、外国でテロリズムの被害となった州民にも、それぞれの州の制度が適用されるということです。
 支払われる内容なのですが、そこに書かれているようなもので、それぞれの被った損害について、この申請書を出し、もちろんそれぞれの州で定めている額の範囲内で支給がなされるということです。
 ただ、暴力犯罪であっても、それによって被った物品の損害については支給の対象になりませんが、認められているものもあります。ニューヨークでは500ドルを限度としてとかいうのもあります。慰謝料は認められていませんが、ただ性犯罪関係では認めている州もあるようです。
 支給金の最高額というのはかなりそれほど高くはないわけで、1万5,000ドルから2万5,000ドルです。ただ、カリフォルニア、これは最大の被害者補償制度を持っている州ですけれども、ここでは7万ドルぐらいあります。それから、ニューヨークでは医療費上限がないというようなことです。
 それから、損失給与補償関係ですが、これは概して州によって違うのですが、低くて、例えば26週以内だとか52週以内だとか、1週当たり200ドルとか、その額は高くはありません。
 具体的な支給の実績なのですが、2002年度では4億4,800万ドルですね、500億円ぐらいが出ていまして、支給件数が約16万件となっています。アメリカの場合は広く浅くと申しましょうか、件数は多いんですが、1件当たりの支給額というのは低いわけで、この2002年で2,800ドルほど、それから2004年度の統計を見ましても似たようなもので17万件、平均2,400ドルということで非常に低いです。
 先ほどもちょっと触れましたけれども、どんな事件に支給されているのかというと、ちょっと連邦全体の統計が見当たらなかったものですからカリフォルニアの統計を見ました。カリフォルニアは約5万人の申請者がありまして、申請が認められるのが88%です。それから、これを見てわかるように、一般の暴行傷害も多いのですが、児童に対する虐待ですね、虐待に対する支給が非常に高いということが言えるかと思います。
 それから、あと、属性ですが、被害関係者でいうと被害者本人が多いと。これは先ほど言ったように、DVだとか児童虐待だとかになると本人の比率が当然高くなってくるかと思います。それから、女性が非常に高い。これも今言ったことと関係ある、性被害、DVということで反映されていると思います。それから、成年、未成年の比率は60%、40%で、DV関係が26%です。
 何に使われているかと申しますと、医療費、それからこれは歯科も含みますが、35%、精神保健関係も、カウンセリング費用等も認められていることもあって、かなり高くなっております。賃金関係はそれほど高くはありません。
 それから、不支給・減額事由ですが、これは一般的なものだと思います。まず、親族関係ですが、これは州によって違いますが、親族関係があるということで一律に出ないということではどうやらなさそうです。これはDVを逆に言うと重視するためにそういう形になっているという言い方もできるかと思います。
 それから、被害者の有責性ですが、これも減額・不支給の理由となるということです。
 直接その被害とは関係ない別の事件での前科前歴というようなものを理由として支払われないということも州によってはあるようです。
 それから、迅速な通報だとか捜査への協力だとか、申請を速やかに行わなくてはならないというようなこともあります。
 他の給付との関係ですが、そのほかの手段はすべて考慮されるということで、ここには民間の保険、それからレスティテューションオーダーも入るということです。
 先ほどもこれも言いましたように、公的な補償制度が充実しておりませんので、低所得者層にとっては犯罪被害者補償制度というのは極めて意味が大きいと言えます。
 どこが運営しているかということですが、州によって違うわけですけれども、パブリックセーフティですね、公安部であるとかクリミナルジャスティスというところが多いです。あとはアターニージェネラルのところもあります。そのほか、数は少ないですが、社会保険関係、福祉関係というところもあります。あと例外もありますが、これは大したことではありませんので、そこは省きます。
 財源が、アメリカの場合はかなり知られているところではありますが、特色があるかと思います。州レベルで見ますと、犯人が支払う財源、それから一般財源なんですが、州レベルで見ますと、後でご説明いたしますけれども、ほとんど犯人が払う罰金であるだとか没収された保釈金であるとか、そういうものを財源とするものが多いです。ただ、州の場合はかなり多様な財源を使っております。
 極めて特徴的なのは、連邦から州に対する補助でして、先ほどもご説明いたしましたけれども、1984年の犯罪被害者法に基づいてクライムビクティムファンド(犯罪被害者基金)ができました。このお金は、各州が前年に、現在は前年に被害者補償のために支出した金額に対して支給されるということで実績主義ですが、現在は前年に被害者補償に対して支給したお金の60%が翌年度に支給されるということです。これが2004年度ですと1億8,600万ドル、200億円ぐらいでのお金です。5%を限度として運営費に充当できることになっています。
 後の被害者支援に関する補助にも関係してくることですので、この犯罪被害者基金についてご説明しておきますと。これを運営しているのは連邦の司法省の司法プログラム局犯罪被害者対策室(OVC)です。このOVCは被害者補償だけをしているわけではなくて、合衆国の被害者支援を考える上で極めて重要な役割を果たしている機関です。補助金のほか、独自の被害者支援プログラムの開発も行っています。これはまた後でご説明いたします。
 財源は、連邦法違反の罰金、それから保釈保証金が没収されたもの。それから、スペシャルアセスメントという特別賦課金と訳しておきましたけれども、これは犯人から犯罪の軽重に応じて徴集されるもので、具体的な額は、そこにミスディミーナー(軽罪)の中でもランクがあって、個人5ドル、法人25ドルぐらいのところから、フェロニー(重罪)では法人400ドルというようなことになっています。ただ、全体に占める割合ではこの特別賦課金というのはそれほど大きくなくて、かなり大きな連邦法違反の没収財産ですね、それなんかが大きくて、かなり少ない事件の没収されたお金というのがかなり基金の中心になっています。
 テロ関係のことを先ほど申しましたけれども、新しい法律ができて寄付や遺産等も組み込むことができるようになったということです。
 キャップと呼ばれている上限があるんですが、実際の額で言うと、2003年度で5億ドル以上、上限として6億ドル、その時点であったお金が13億ドルということですね。2005年度では結構たくさん入っていまして、8億ドル入っていると。使える上限が6億ドルというぐらいです。
 この基金の使い道ですが、これは法律で規定されておりまして、優先順位が決まっています。まず、児童虐待関係の事件の捜査関係に使う。これが200万ドルで、これが合衆国の厚生省関係と司法省関係とで分けられる。それから、あとはインディアンのレザベーションというのは連邦の管轄ですが、ここでの児童虐待事件にも使うということになっています。
 それから次に、連邦の刑事司法制度の改善のためで、特に被害者通知システムです。連邦では、(今我が国でも被害者通知制度が行われていますが)コンピュータ化された被害者通知制度、被害者にID、パスワードが与えられて、アクセスすれば自分の事件についての情報が分かるというようなもので、今この整備がかなり進んでいると思います。それから、そのほかの研修にも使う。反テロ関係に5,000万ドルまで使う。
 残額の47.5%を先ほどからご説明している州の被害者補償制度に補助金を出すと。それから、後でご説明いたします州の被害者支援プログラムに47.5%を上限として出せるということです。それから、5%を上限としてOVCが裁量的に使うことができるということです。
 重複しますが、2004年度で見ますと、手持ちのお金が約11億ドルで、出していいお金が6億7,000万ドル、実際に使ったのがそこに書いてあるような額ということになります。これを見ておわかりのように、一番多いのは各州では民間公的機関が行う被害者支援活動に州が出すお金に対する補助金ですね、これに一番多く使われてきているということです。
 支援関係ですが、連邦で被害者支援に携わっている機関の中心は、先ほどご説明しているようにOVCです。OVCの責務というのは、国家的な立場から支援策を考える。4月には被害者権利週間であるとかいうのを主催していますし、それから先ほど来ご説明している助成等をしています。
 この組織、最近というか2、3年前に変わりまして、現在5部門に分かれていまして、連邦の援助部門、それからさまざまな被害者支援プログラム等考えるプログラムディベロプメントなんかの部門、州に対する補助金関係の部門、訓練及び情報普及部門、それからこれが新しいのですが、テロ国際被害者部門という、これは新しくできた部門です。
 こんなことで、州の被害者支援担当部局というのは様々ですが、アターニージェネラル(司法長官)のところが多いと思います。カウンティー(郡)の検察官関係、それから市の警察部等々いろいろなところが被害者支援に携わっているということです。
 1つ大きな課題ですが、民間団体への援助関係ですが、アメリカで民間団体あるいは民間と考えるときになかなか事情が違うというかわかりにくいところは、1つは、独立してあるいは主として地方の刑事手法機関と協力して行う活動、コミュニティベースドオーガナイゼーション、地域ベースの活動と、それからアンブレラオーガナイゼーションと呼ばれているものがあるということです。ただ、アンブレラオーガナイゼーション、例えばNOVAは別に民間団体だけが会員ではないわけですから、そこがちょっとわかりにくい。それから、公的機関も、例えば警察と直接民間ボランティアを使っているということがありますので、民間と公的機関のすみ分けというのか実はよくわからないというかはっきりしていないと言えるかと思います。
 それから、公的機関を会員とする民間機関もあります。これは先ほど被害者補償は州が行うということを申しましたけれども、その州の被害者補償を裁定する委員会ですね、コンペンセーションボードというのですが、そこを会員とするナショナルアソシエーションオブクライムビクティムコンペンセーションボードという団体もありますし、それから州の被害者支援補助金を担当する州の機関を会員とするナショナルアソシエーションオブヴォカアシスタンスアドミニストレーターズというようなものもあります。
 そこで、民間団体の活動は、これもよく知られてきていることですが、10ページに書かれているようなかなり広範囲な活動をしているということです。
 11ページの方にまいりたいと思いますが、これは先ほども申しましたように、民間機関の種類というのも多様ですし、公的機関でも民間人を使っていますし、それからいわゆるアンブレラオーガナイゼーションはどちらかというとアドボカシー活動なんかも中心にしていますが、それは連邦も行っていますし、余りすみ分けというのがどうやら私にも余りはっきりしているようには思えません。人材の確保という項目がありましたので、これはそれぞれの機関が行っていると同時に、特にNOVAの研修会であるとか、例えばMADDの研修会だとか、非常に大きい規模で行われますので、そういうところも非常に大きな訓練の機会になっています。それから、OVCのTIDも非常に大きな役割を果たしています。
 この民間機関には限らないんですが、民間機関の財源というのは様々なところを利用していますが、かなり重要な位置を占めているのが先ほどからご説明している犯罪被害者基金からの補助金であります。この連邦から州に補助金があるんですが、まずどういうふうに出されるかというと、各州に対して基礎額があるわけです。これが50州とそこに書いてあるDCだとかプエルトリコみたいなところは50万ドル、そのほかのところは20万ドルと基礎額が与えられまして、あとその人口に応じた額が支給されるということです。
 この額なんですが、約3億5,000万ドルです。これも連邦から州に出すときに優先的に配分する部分があって、このプライオリティエアリアズと呼ばれているところで児童虐待、DV、性的暴行、このプログラムに優先的にお金を支給するということで、40%はこちらに使うということです。それから、アンダーサーブドビクティムエリアというのがあって、ここにも優先的に使う。これはかなり州の裁量が働くようなのですが、飲酒運転、暴行・傷害、それから高齢者虐待というようなところです。
 どんなプログラムを出しているかというのはそこにプログラムの数と比率を示してありますが、今ご説明したことが反映されているかと思います。
 では、どんなところがお金をもらっているかというと、これも先ほどからご説明しているように、この連邦の支援金というのは民間団体というわけではありませんで、市の警察部が行ったり、保安官事務所が行ったりする被害者支援プログラムにも出されるわけです。公的機関の数は、次のページにわたりますが、全体の28.7%です。その内訳ですが、検察ベースが一番多いです。半分ぐらい検察ベースで、次が警察というか警察・保安官ですね。それから、公的機関以外は余り多くないですが、病院ベースだとか精神保健関係だとか、これが4%です。それから、非営利の民間団体、これが我々のイメージする民間機関ですが、これが66%です。この中でその他というのがよくわからないのですが、いわゆる様々な活動をしている民間団体ということになります。あと、ネイティブ・アメリカン関係もあります。
 それから、この補助金は具体的に、今お話ししたことから大体イメージが得られるかと思いますが、どんな活動に用いられているかというのが14ページの表であります。情報提供だとか、とりたてて珍しいものはないんですが。ほぼ民間機関等が行っている被害者支援を代弁していると、代表しているというふうに考えられます。
 一応できる限り求められた項目についてなるべく答えるような形で書いたんですが、どうもまとまりがつかなくなってしまったというところです。

○國松座長 以上のご説明に対して何かご質問がありましたらお願いいたします。

○瀬川構成員 先ほど奥村構成員に質問したのと同じような観点からですけれども、被害者の権利というのは何を意味するのかという点です。どうやら2004年にアメリカでもといいますか、イギリスと同様に若干の変化があったように見受けられるということですね。レジュメの2ページに2004年に「全ての者に対する正義法」が成立し、犯罪被害者の権利がさらに明確化されているというふうに書いておられるのですけれども。この具体的な内容ですね、この点を教えていただきたいのですが。

○冨田構成員 アメリカの被害者の権利については、州の憲法などに書いてあるのはごく一般的なことです。例えば損害賠償命令を受ける権利だとか、被害者にとって刑事手続が迅速に進むようにされる権利であるとか、そんなようなことが書いてあります。連邦の方でも、1982年以来、制定された様々な法律の中で被害者の権利が書かれているのですが、この2004年の法律では、訴追を受けている者から合理的、適切に守られる権利であるとか、それから訴訟の手続について正確に、そして時宜を得て知らされる権利であるとか、それからこの刑事司法の各段階について情報提供される権利だとか、それぞれの段階で意見を陳述する権利であるとか、ごく一般的に言われているような被害者の権利が書かれております。

○瀬川構成員 そこで意味する権利なのですが、いわゆる法的な権利を意味しているのか、いわゆるあいまいなというか抽象的な権利を意味しているのか、これはどちらなのでしょうか。

○冨田構成員 一般的にはコーズオブアクションなるものではないというようなことが書かれております。そういう意味では訓示的な規定だと一般的には言えるかと思います。

○中島構成員 詳細なご説明ありがとうございます。各プログラムに対する被害者支援補助金の使用目的に関して、お伺いしたいのですが。例えば日本では人件費とか家賃に対しては使用できないような規制がありますが、アメリカにおいてはどういった範囲の内容について支給されるのか、あるいはその制限等があるのかをお伺いしたい。

○冨田構成員 プログラムの本体の運営に用いるのが原則で、人件費等は5%以内という原則があったかと思います。それから、その被害者補償の方もそうですね。人件費等は5%以内ということになっています。

○山上構成員 犯罪被害者基金の財源と助成方法についてお聞きしたい。財源の方では特別賦課金とかいろいろ工夫をして犯罪者の関係のところからお金を入れているようですが、それはどういう議論のプロセスを経てこういう基金の財源を確保したのか、何かそういう規定をつくっていったプロセスがあるのかどうかというところが1つ。
 もう1つは、助成する際に、州で給付している支援活動について、政府はその何%と決めて助成していますが、そうすると、州単位でそれぞれの支援プログラムを選別して支給を決めているのだと思うのですが、州のレベルでは一体どういうところがその支援活動の給付の判断をしてどういう基準を持って助成しているのか、その2点をお伺いしたいと思います。

○冨田構成員 前半質問の意図はまた後でお聞きします。後半の方ですが。まず、配分する額が決まっています。州で担当する部局はさまざまですが、その連邦からの補助金を担当する部局があります。そこが、これが先ほどご説明した優先エリアだということも示して募集をかけます。その後の判断はいわゆる競争的基金で、いいプログラムに対して支給するというのが原則。競争的な基金ということになっています。

○山上構成員 前半の質問は犯罪被害者基金の財源についてです。犯罪被害者法に基づいて決められたと言いますが、その基金の財源というのが、犯罪者の矯正施設での労役の収入からとかあるいは特別の賦課金とか、いろいろ工夫してとっているように見えるものですから。それは一体どういう論議を経て、どこにどのような規定をつくったのか、そういう工夫がどういう論議を経てできたのかなと思い、お聞きしました。

○冨田構成員 この辺かなり説明が難しいんですが。とにかく一番は被害者補償を充実させていかなければならないと。しかし、一般財源から出すというのは増税に結びつくと。だから、それ以外の財源、特に実際に犯罪者から取るのが一番ふさわしいと、かなりそういう乱暴な議論だと思います。
 それで、各州ですと犯罪者だけではなくて、かなり州の方の被害者補償の財源は運転免許関係だとか婚姻関係だとかかなり多様なものを使っています。連邦の方はこういう罰金関係が多いのです。ただ入る額から言うと、そういう連邦法違反の個々の犯人が払う額というのは非常に少ない。例えばよく言われた、1996年あたりにある日本企業が連邦法違反の事件で、それで何億ドルというお金を払って一気にクライムオブビクティムファンドの資金が潤沢になったというようなことがありました。
 いろいろ可能性は見ていますけれども、実際にどこがお金をたくさん負担しているかというとそういうケースがほとんとです。それがまた広く浅く、財源の方は余り広く浅くとっていないので安定していないのではないかという批判もあります。

○大久保構成員 資料12ページの(3)を読ませていただきますと、州の被害者支援補助金を受けた機関という中に公的機関で刑事司法機関の中に例えば矯正あるいは裁判所、法執行機関、保護観察などありますけれども、日本ではここのあたりにおきまして被害者支援ということがまだ多分行われていないのではないかと思いますが。具体的にプログラムの内容といいますのはどのようなことがあるのでしょうか、教えていただければと思います。

○冨田構成員 今私もこの辺具体的に、特に矯正関係などがどう具体的に被害者支援をやっているのがちょっとイメージがわかなくて、日本で言うような被害者の視点を持つ矯正教育みたいなことを言っているのかどうか具体的に私もよく見ていませんのが今お答えできません。

○大久保構成員 わかりましたらまた教えてください。

○國松座長 またアメリカにも行くようでありますので、そのときの課題なのかと。

○高橋構成員 4ページの申請者の属性なんですけれども、(1)のところに被害者本人とありまして、その下に被害者関係者とあるんですけれども、この被害者関係者というのはどういう人たちを指すのでしょうか。

○冨田構成員 余りいい訳語ではないと思いながら、これは遺族であるとか家族であるとかというそういうことです。

○本村構成員 2点だけ質問させてください。まず、2ページ目の経済的支援でアメリカでは3つの主要なものがあるということで、犯罪被害者補償制度、損害賠償命令、民事賠償とありますが。損害賠償命令と民事賠償について教えてもらいたいのですが。損害賠償命令というのはいわゆる刑事裁判の中で陪審員が有罪と認めた場合に裁判官が命令するものでございますか。

○冨田構成員 そうです。これは刑罰としての損害賠償命令で有罪となった被告人に対して裁判官が命じる損害賠償命令です。これはすべての州にこの制度があります。ただ、どこでも言われているように、実際の弁済能力がそうないから実は機能していないとか、それを実際に履行するにはさまざまな困難があるというようなことは各国と同じように指摘はされています。

○本村構成員 7ページ目の下から2行目ですね。具体的には連邦の被害者通知システムというところのお話の中で、被害者にID等が与えられて、自分でネットからパソコンで検索すれば自分の事件のことを知ることができるということで、極めて合理的なシステムだなと思ったのですが。もしこの具体的な中身をもう少しわかっていれば教えていただきたいんですけれども。

○冨田構成員 具体的にというと、私もいくつかの州に行ったときにそのシステムこういうふうに動いてるんだよというような説明を受けた記憶があるというのが1つと。
 話題的になって恐縮ですが、州の被害者関係の大会なんかに出ますと、各種業者のシステムの売り込みというのがかなりブースを出してありまして、そういうところから1つの市場になっているし、そのシステムというのがかなり定着しているだろうなというぐらいで、具体的にどこの会社がどういうシステムでというようなこと、ちょっと今情報を持っておりません。

(休 憩)

○國松座長 それでは、会議を再開させていただきます。ドイツの事情につきまして、獨協大学法学部の安部哲夫教授からご説明をお願いいたします。

○安部氏 30分という短い時間でございますので、いただきました宿題につきましてすべて克明に回答できるかどうか、それから正直申し上げまして私の能力を超えている部分も随分ございますので、私の可能な範囲で今日はお話を提供させていただくということでご理解いただければと思っております。
 お話をいただきましたときに、ちょうど6月の3週間ほどオランダの性犯罪者施設とか人格障害の処遇困難者の施設を参観するプロジェクトといいますかそちらの方の仕事でオランダに行っておりましたので、ちょっとドイツに立ち寄りまして、皆さん方よくご存じのマインツにございます「白い環」、バイサーリンクの本部にお邪魔いたしまして、広報責任者のシャルピンさんにお会いいたしました。
 私の持っている知識の確認と、若干資料等もいただいたりもしてまいりましたが、何せあらかじめきちんとお膳立てしたアポイントメントをとった形の訪問ではございませんでしたので、本当に気楽にリュックサック背負って立ち寄るような、それから後でご案内申し上げますが、ドイツ国内どこからでも0180-343434という、ホットラインでつながりますので、私も電話をして、そこから明日伺いたいのだけれどもということで急にお邪魔をするということになりましたので、1時間程度の面談しかしておりません。その意味で不十分な点もございますが、そこから得た情報も参考に少しお話ができればとも思っております。
 あとはレジュメに沿ってお話をさせていただきます。今日のお話のポイントとしまして、4つのことをお話ししようと思っています。第1番目のものはこれまでの状況等を簡単に整理させていただくということで、簡単に被害者支援の発展の経緯ということで見てみたい。
 そして、2番目には、恐らくこれがここでの重要課題というふうにお聞きしておりますが、被害者補償の現状ということ。法制度とその運用の現状、これについてお話をさせていただきます。
 それから、3番目には、これも重要課題でございますが、被害者支援のネットワークあるいは支援の民間活動といったことにつきましてお話をさせていただくということになります。さらに、ドイツの、訴訟参加の制度でありますとか被害者付添人制度でありますとか様々に法的な制度改革の発展が被害者支援の団体から見てどう受けとめられているのかという視点で少しお話をさせていただければと思っております。
 最初のところでございますが、被害者支援の発展をほぼ4つの段階で見ることができるのではないかというふうに私は思います。これは先ほどイギリスの方でもアメリカの方でも大体70年代に体制が固まってきたというお話がございましたが、ドイツでも1976年に国の法律と、それから民間の支援団体の設立、この2つの動きが同時にスタートいたしました。もちろんその前提としては、そこに至る目に見えないいろいろな活動があったと思いますが、表に出てきたところで見ますと、76年の暴力犯罪被害者補償法というように、暴力犯罪という頭がつきますけれども、犯罪被害者補償法が制定されまして、これに基づいて被害者補償が進められていっているということでございます。
 そして、同じ年にバイサーリンクつまり「白い環」という、もう世界的にも有名な支援団体でございますが、この活動が始まったということでございます。ちょうど今年で30年でございまして、この「白い環」のホームページを開きますと、30年の歴史を振り返るというようなところもございまして、かなり支援活動等についての現状も公開されているというところでございます。
 さて、その後ご案内のように第二次的な被害に対して対応を急がなければということが、ドイツでも問題になってまいりました。1984年にドイツ法曹大会、ユリステンタークというのがございますが、その大会の刑事法における重要課題がその被害者の地位の確立と改善といった問題でございました。その刑事裁判の流れの中で、被害者つまり証人ですね、被害者証人が劣悪な地位に置かれているのではないかということでこの問題を核にしまして、被害者保護法という法律が整備されていったわけでございます。
 したがって、現在もそうですが、ドイツにおける刑事裁判の中で被害者の保護という点はかなり進められている状況にあるというふうに、私は評価しております。
 そして、さらに90年代に入りますと、実体法上、刑法典の中に被害者の最大関心事といいますか、やはり被害を回復するというねらいといいますか、これを刑法の中に導入したらどうだろうということで、1994年の犯罪対策法というふうに訳されたりする法律によって刑法一部改正が行われまして、46a条が導入されたということはご案内のとおりでございます。
 そして、その主眼は、加害者と被害者、テーター、オッファーという言い方ですが、被害者と加害者とのバランスをとる、アウスグライヒですからこれは平衡にするということですね、平均台のはかりをバランスよくするということがアウスグライヘンということになるわけですが、加害者と被害者との和解を進めるという努力を加害者がすれば、刑の減免措置を行いましょうということです。実際これは90年のときに既に少年裁判所法によって少年については法制化されております。そして、それ以前からも法律上の根拠はございませんでしたが、少年犯罪あるいは成人犯罪のダイバージョンのプログラムとして一部モデル事業等が行われていたところがございました。これが94年に確立期に至ったというところが第3の発展期なのかなというふうに思います。これによって被害者の損害回復が進められればそれに越したことはないということでございます。
 そして、4番目には、これは最近の動きということになってまいりますが、やはり2番目のところで被害者の刑事司法上の地位というのは高まったわけでございますけれども、それでもまだまだ十分ではないということで、被害者弁護人制度、付添人制度、これをより強化しようということで、2004年の改正におきましては被害者本人だけではなくて、遺族の方が証人として出廷する場合、その遺族に国の費用で付添人、被害者弁護人をつけるという制度を今回実現しようということになったわけでございます。
 そういうふうに徐々にではございますが、被害者の司法における地位改善ということもドイツでは大きな発展が見られているというふうに言えると思います。
 さて、本日の報告の第1のポイントであります被害者補償の領域でございますが、2-1というところです。これは性格としてイギリスとは少し似ているところがありますが、アメリカとは明らかに違う部分がございまして、社会補償制度の枠の中での実現というふうにはっきり言えると思います。そして、その根拠としまして、国家というものの位置付けから申しますと、社会国家主義的な理念を持って経済的な支援を弱者について行っていくのは当然の責務ということになります。国の制度が不十分であるがゆえに一定の被害を被ったりするわけでございますので、これは社会的な連帯と国家的な責任という名でもって補償をしていこうという考え方がとられていると思います。
 ただし、これは被害者補償法独自にやるということではなくて、社会補償制度の枠組みの中ですから、実は準拠法というのが別にございまして、連邦戦争被害者給付法という法律がこれでございます。戦争被害者と同じように扱うということはどうなのかというご指摘があるかもしれませんが、国からしますと、自国の軍隊が被害を与えたという場合ももちろん含んで、戦争被害を受けた人々に対して一定の給付金を支給するという法律と同様の観点でもって、給付基準を決めているということでございます。
 そして、何よりの特色として申し上げますと、これらの支給の大部分は年金として支払うという考え方に見られます。戦争被害者、傷病者への経済的補償と同等の補償をするという姿勢がここでは進められております。
 それゆえにこれを扱う部署といいますか、事務管轄は、厚生労働省のようなところでございます。これまで、連邦健康社会保健省というところがずっとやってまいりました。今年からは、ホームページを見ますとこれが分かれたようでございまして、健康省が独立をしまして、労働部門を全面に出して連邦労働社会福祉省という名で、これを所管しているという現状でございます。
 そして、具体的には、年金給付局、これは各州に統括窓口になるようなものがたくさんございますが、州によっては例えばザールラントなんて小さな人口も余りいないところは1か所しかないのですけれども、例えばバーデンヴュルッテンベルク州などの州になりますと、これは40か所ほどもこういう統括窓口を引き受けているような部局があったりします。
 それから、この被害者補償を受けている年金受給者は、これはトータルでございますが、2005年6月、ちょうど1年ほど前の時点で、約1万4,300人という数字があがっております。
 受給資格につきましては、これは補償法の中にきちんと明記されております。当然暴力犯罪の被害ということになりますが、まずドイツ国域内であるという属地主義の原則がとられております。もちろんドイツの航空機・艦船内も含まれます。したがって、逆にドイツ人が国域外で、つまり外国で被害を受けた場合には対象から外されるといいますか、そういう補償の対象にはなっておりません。その国固有の補償制度によるべきだということになっております。
 そして、外国人につきましては、この2-4の次の受給資格者bのところにありますが、EU加盟国、そして相互主義下の国民も当然その資格を持っているということであります。さらにEU加盟国でなくても、例えば日本人である私がこういう受給申請できるのですかという質問をいたしますと、あなたが3年以上、確かに法律にはそう書いてあるわけですが、3年以上合法的に居住をし続けていれば当然資格を持ちますよということになります。正確に言いますと、6か月以上から3年までの間で減額受給もありますけれども、ドイツ人と同じ資格を有するのは3年以上というような規定になっております。
 そして、暴力的な攻撃という概念につきましても定義規定はございますが、この中で注目すべきところは、毒物による犯罪被害もこれに含まれているということです。必ずしも有形力の行使といったような攻撃ではなくても、毒物による被害というようなことも含まれてまいります。
 さて、給付内容であります。まず、(1)の方は、被害者が亡くなられた場合でございます。残された人に対してどういう給付がなされるかということですが、葬祭料・葬儀料でございます。これも支給されるということです。ただし、金額はさほど大きなものではございません。その方が生存して一定の年金を受けると被害者補償制度の枠の中での年金を受けるということになったときに受けられるであろう月額分の3倍の葬祭料が出るという規定になっておりまして、実際これを計算しますとせいぜい30万円か40万円ぐらいの金額にしかならないということでございます。
 そして、その配偶者につきましては、これは年金となりますが、基礎年金として月額372ユーロが規定化されております。子どもにつきましても、一人についてということになりますけれども、ほかの児童手当でありますとか社会保障上の社会福祉的な手当との関係がありまして調整年金という形でございますが、片親の場合、例えば母子家庭になったといったような場合には184ユーロ、そして両親ともに失ってしまったとか、前々から片方がいなくて今回片方の親が亡くなったといった場合でありますが、この場合には256ユーロといったように規定になっております。
 被害者自身につきましては、生存している場合でありますが、一時金として医療費、交通費、リハビリ費用、休業補償、そして生活雑費、介護費等々が支払の対象になるということでございます。
 そして、終身年金として一定の金額が月々支払われるということになりますが、実際のところその金額はそんなに多くはございません。ただ、これはバイサーリンクの方も強調しておられましたが、終身、死ぬまでこの金額は支払われるというところを利点として挙げておられました。もう寝たきりといいますかベッドでの生活をせざるを得ない一切仕事ができないといったような場合100%ということになりますが、この場合には約10万円の月額給付金が支給されるということでございます。
 さらに高齢者の場合には一定額が上乗せされるということです。高齢者の場合には、これは高齢者福祉的な視点が加味されまして、最大37ユーロですから、これも5,000円ぐらいの金額でございますが、追加されるということです。
 実際に統計から見た申請状況でございますが、暴力犯罪、これは警察統計年報からまず警察が把握している数字だけで見ますと、21万という数字になります。しかし、実際に申請されているケースというのは2万件ほどでございますから、約10%。これはこれまでもいろいろな方がご指摘されておられますが、ほとんど70年代からこの割合は変わっておりません。申請適格といいますかそういう問題があるのかもしれませんが、ほとんど10%ぐらいの申請ということになっております。
 では、その10%、2万件申請されて100%申請が認められるのかというと、これもそうではなくて、50%ぐらいというような形で申請が認められている状況であります。これは年度での話ですから、2万864件分の8,256ということではもちろんございません。しかし、各年度大体似たような数字になっております。
 この申請が認められた件数、8,256件の中で、やはり一時金として支給されるものの方が認められやすいという形になっておりまして、その件数の方が多くなっております。年金として支給されるのが1,725件、被害者本人が1,395件というような状況です。
 お手元にドイツ16州の申請状況あるいは支給状況、これをグラフ化したものです。ここで申請した人の数が一番多いところで言いますと、このページにおいてですが、バーデンヴュルテンベルクが一番多くなっています。細かい数字までは余り必要ないかと思いますが、大体2,200ぐらいの数字が申請であります。この中で支給決定がなされるのが846でございます。そして、年金支給を受けているのが152ということでございます。大体各州どこもこの比率でほとんど実施されているという状況でございます。
 州の中でノルトライン・ウエストファーレンでは、人口が非常に密集しておりますので、当然申請する数字、それから年金支給者も多くなっております。
 さて、もう1つのテーマでございますが、「白い環」の主要な活動ということでお話をさせていただきたいと思います。「白い環」そのものは、先ほど申し上げましたように、76年9月に発足をいたしました。当時、BKAという、これは日本の警察庁と科学警察研究所が合体したような組織でございますけれども、そこの長官でありますとか、被害者学の権威でありますシュナイダー教授でありますとか、刑事政策の権威でございましたアレキサンダーベーム教授、こういう方々が当初組織委員会に名を連ねておられます。ある意味ではドイツ国の肝入りで発足したところがございます。
 現会長は3代目に当たりますけれども、バンベルク上級裁判所の長官をされたラインハルト・ベッチャーさんでございます。現組織委員会には、刑法・刑事政策・少年法のハンス・シェヒ教授でありますとか、シュヴィント教授などが名を連ねております。
 具体的な活動としてはやはり1番目の被害者への直接的な支援を進めるというところ、これが一番大きな役割ということになります。どんな直接的な支援かということについては後ほど申し上げます。そのほか被害防止活動、防犯活動、警察がやはりバックにあるということもあるのですが、防犯キャンペーンをはったりするというような試みをやっております。そしてさらに、被害者理解を深めるための広報活動や地域活動、そして募金活動、それからボランティアの方によって支えられていますから、このボランティアの方々の研修などもやっておられます。
 そして、もう1つ特色的なのは、法政策集団への働きかけ、ロビー活動とでも申しましょうか、そういうことをかなり熱心にやっておられます。各州の司法大臣でありますとか、連邦の政策責任者等との懇談や働きかけというのが、ホームページを見ますと熱心に行われているなというのがよくわかります。
 被害者に直接的にかかわる支援の中身でございますけれども、その中で一番大きなのは、やはりこの精神的な支援ということで、寄り添い、相談、助言といったような活動がございます。そのほか、具体的な障害、被害を受けているという場合には医療的な支援、治療、看護、介護といったことも行います。そのほか、少し重大な問題を抱える場合には医療施設など他機関との協力・協働を進める体制になっている。さらに、警察への付添い、裁判所への付添い・助言といったようなこともやっております。その場合には専門的な知見が必要であれば弁護士が付き添うというようなことにもなります。そういった弁護士費用等も、ボランティアでおやりになる方もございますけれども、原則的には法定活動はボランティアでは行われておりませんで、弁護士費用は支援団体、「白い環」が出しているということになっております。そのほか、医療費、生活雑費や法的手続、申請手続等にかかる諸費用、これらもすべて支援をしていくという姿勢でいるようです。さらに、被害者家族への癒し的なプログラム、レクリエーションといったようなこともプログラムの中にございます。
 こうした活動を「白い環」がどんなふうにやっているのかといいますと、ドイツ全域に約400か所被害者支援センターがございまして、本部は先ほど申し上げましたマインツにございますけれども、ラント(州)にも支部が置かれております。
 この400か所の支援センターにはほとんどがボランティアの方がカバーしておられます。本部でありますとか、ラントの支部などには常勤の有給のスタッフもございますけれども、約2,700人のボランティアの支援活動ということになっております。
 私も電話をかけましたが、全国どこからでも1分9セントで、9セントといいますと大体15円ぐらいでございますけれども、一応お金は払わなければいけない、15円のお金はかかりますが、直接これはマインツの本部に電話が入ってきまして、その後どこの場所かということもわかりますから、地域センターへ配信をして、相談あるいは駆けつけるといったようなこともやっているようです。
 この「白い環」の活動がどんなふうに支えられているか、特に金銭的な面で申し上げますと、現在会員数は約6万人。これはだれでも会員になれますが、月額2.5ユーロ、年間に直しますと30ユーロになりますから4,500円、これを支払う形で支援活動の輪に入るということになります。
 「白い環」の活動費としましては、これは2004年度の会計報告書というのがございましたのでそれを見ますと、3番目の繰越基金というのは基金からの持ち越し金といいますか、もともと動かせないお金なんですね。したがって、これはほとんど使われません。
 そして、ここからもおわかりのように、約1,000万ユーロほどのお金があるわけですけれども、そのほとんどは、主に寄付金でもって賄われているということです。半分は寄付金だということですね。これはいろいろな財団でありますとか、それから有力的なところで言いますと、ドイチェ・バーンという、日本で言うとJRのような鉄道組織ですが、そこのところも大口の支援をしているというような事実もございます。
 大体において毎年同じ寄付団体があるわけですが、この510万というのは寄付によってまかなわれているということになります。一般の市民の会費収入というのは160万ほどです。
 それから、もう1つ特色的なのは罰金の引当というのがございまして、これはただ刑罰としての罰金ではございません。行政罰としての過料金のようなものですね、交通事犯といったような区裁判所で処理するような事案、これについては行政的な処理として引当られているようでございます。これについてはちゃんとした刑罰制度との連携をするべきだという「白い環」の主張が今でもございます。
 さて、支出の方でありますが、これもやはり具体的な被害者支援、直接的な支援に500万ユーロ、つまり寄付金の部分がそっくり使われているということになります。そのほか事務管理等のお金もかかります。
 この活動実績として、これは「白い環」の30年の記録から引き出したのですが、2001年までの25年間のうちに大体14万件の被害者に対して直接的な支援を行っています。大体その被害者といっても36%が性犯罪の被害者。暴力的な性犯罪の被害者が比較的多いということです。
 そして、この「白い環」の活動がどんどん広がってきておりまして、1984年にはスイスに「白い環」が発足しております。ホームページもちゃんと持っております。ただ、これらのドイツに近い近隣の国の「白い環」は全く独自の「白い環」でございまして、名前は同じですけれども、組織は全く違うものです。ただ、連携はもちろんしているということです。そしてまた、ヨーロッパフォーラムでありますとか欧州評議会への働きかけなども積極的に行って広がりをヨーロッパ全域にもたらしてきているところでございます。
 さて、最後になりますが、刑事手続での被害者の地位に関連したお話を少しさせていただきたいと思います。これはもう既に紹介がいろいろありますように、86年の被害者保護法によって刑事司法上、とりわけ刑事裁判上の被害者の地位というものはかなり飛躍的に伸びたといいますか、伸長したと思います。その中で特色的なのは、被害者が訴訟に直接参加をするという刑事訴訟法の395条の規定が置かれているということです。犯罪概念が限定されていますけれども、性犯罪、重大な暴力犯罪被害者につきましては直接参加をして、裁判官に対し不信感がある場合、忌避する権限も認められている。鑑定人を忌避する権限も認められている。異議申立も認められる。意見陳述ももちろん認められるといったようなところがございます。さらに3番目に、弁護士が付き添うということもちゃんと明記されてございます。
 それから、損害賠償等が実効性を持たせるためには、犯人、加害者に罰金刑を科すということもございますが、その罰金を科すことのゆえに被害弁償ができないということもございますので、そういった場合には賠償優先といったようなことが条文上明記されております。そういうところに配慮しなければいけないということです。
 さらに、地位の改善に関しましては、証人保護法によっていわゆるビデオリンク方式というものがきちんと成文化されましたし、最近の権利改善法という法律では証人の権利保障規定がきちんと条文の中に盛り込まれるということになってまいりました。先ほど冒頭で申し上げましたように、遺族にも国選の被害者弁護人をつけるというようなところまで発展をしてきているところでございます。
 そして、この「白い環」の視点から申し上げますと、ずっと30年来言い続けていることは今でも変わってございません。それは3つのポイントでございまして、国費による被害者支援を進めるべきだと。被害者補償制度というのは当然国費でやっているわけですけれども、これはまだまだ不十分である。看護、介助、付添いも国費でやるというところまで、国選のというところはございましたけれども、一部できているところもあるのですが、まだ十分ではない。それを支援団体「白い環」が支えているということですけれども、国がちゃんとそれをやはりやるべきだと。
 そして、最近のテーマになっていますが、被害者のプライバシーあるいは被害者から得ているデータ、これはビデオリンクで証言内容等も録画されるわけでございますけれども、これの利用の仕方でありますとかそういうことにつきましてもやはりデータ保護との関係で「白い環」がかなり慎重な対応をすべきだという主張をし続けております。
 そして、基本的には司法手続においては被告人と同じ権利保障をきちんとすべきだと、そういうふうに法律の中にも書き込むべきだということでございます。そして、被害者個人に対しましては、「あなたはひとりではない」というメッセージを常に直接的に出しているという動き方をしている。
 その背景には、4-4、被害者保護の根本理念と書いておきましたが、やはり基本法第1条の最初に出てくる文言でございますが、「人間の尊厳は不可侵である。なんびとも侵すことはできない」というところから出発しています。そして、これはペーター・リースの言葉を借りますと、「国家は被告人と同様に、被害者の人間性を重んじるように法の整備を進めなければならない」ということで例の86年法が整備されたわけであります。
 しかし、ペーター・リースはそのときにもう1つ課題を出しておりまして、そのことで加害者の人権といいますか、権利が後退してしまっては元も子もない。だから、それは謙抑主義という視点もやはり近代刑法の遺産でございますので、これも尊重し続ける。したがって、刑法典の中ではこの「処罰から和解へ」といったメッセージを出していくことも1つのテーマになるのではないかというふうに展開されていくわけです。それが冒頭でお話ししましたTOAですね、加害者と被害者との関係調整をしていくという法制度の整備につながっていくわけです。
 このTOAの実施状況を最後にちょっとだけ説明しておきますが。大体毎年5,000件ぐらいの処理が行われている。加害者、被害者との関係調整で進められてきています。しかし、発足当時は1,652件という数字でありますので、現在増加してきているということでしょう。なかでも司法前処理としてのTOAが圧倒的に多く運用されています。つまり、警察段階で、それから検察の起訴猶予的な裁量でもってTOAが進められるということでございます。
 罪名では傷害事件が一番多い。財産犯は比較的少ない数字になっております。対象となる加害者の年齢はやはり若年層と、ドイツでは18歳未満が未成年でございますが、18歳未満及び若年成人、いわば若年者で大体半分を占めているということです。
 そして、注目すべきところは、このTOAでどんな結果が出てきているかということなのです。それは謝罪が中心です。謝罪にプラス賠償をする、損害賠償をするあるいは慰謝料を払うといったような措置がつくのは25%ということでございまして、4分の1ということです。しかもその損害賠償額は極めて低い金額に集中しております。200ユーロ以下でございます。200ユーロでございますので3万円以下です。これは未成年者などが大半でございますので、そういう金額で謝意を示す、謝罪の意図を示すということでございます。慰謝料も別途支払われているようでありますが、4,001ユーロ以上というのは非常に少ない数字であります。
 しかも、この処理にかかる時間が大体平均すると20週、21週ということでございますから、事件発生から半年ぐらい時間がかかっていまして、こういう形での処理になっています。
 したがって、そういう現状を踏まえてでありますが、「白い環」は正直申し上げましてこのTOAに余り期待をかけておりません。やはり被害者にとって損害回復、被害回復が何よりも重要である。被害者よりも加害者の社会復帰を強調しすぎるようなTOAの制度は余り評価をしていない。TOAは本当の意味で被害者の損害回復に役立っているのだろうかというような指摘もございます。
 シャルピンさんの話を踏まえながら、また少し資料などを示しながら、雑駁で大変恐縮ですけれども、大急ぎでお話しさせていただきました。ありがとうございました。

○山上構成員 「白い環」の活動を大分以前に現地で見たことがあります。常勤のスタッフが全国で数十人で、それがほとんどマインツの本部に集中しているということで、地域ではボランティアの方が補償金などの交付の説明とかそういうものを中心にしていると聞いたのですが、そういう活動とか職員の構成がかなり変わってきたのだろうかというのが1つ。
 それから、もう1つは、6、7年前の宮澤浩一先生の報告の中でこういう「白い環」の活動の足りないところを、性犯罪の被害者等に対する専門家のPDSD治療に関連する、カウンセリングとかいろいろな支援の活動が活発になってきていると聞いていたものですから、そういう「白い環」以外の支援活動というのをもうご存じでしたら教えていただきたいのですが。

○安部氏 職員構成に関しましてはほとんど変わっておりません。ほとんどが無給の方々ですが、有給の方でもその8割方が女性でございます。その中で大体2割ぐらいの方が常勤であるというふうに聞いております。そしてまた、ラント、地方の支部におきましても大体常勤者は2名から3名といったようなことであとはほとんどボランティアというような状況でございました。したがって、余り変わっていないということだと思います。
 それから、「白い環」以外に専門的な支援団体があるのかということでございますが、この「白い環」が専門家を抱え込むといいますか、いろいろな病院でありますとか、性犯罪被害者への心理的なサポートをするといったようなことも含めて、そういう方々のリストを全部持っています。そういうところと連携してやっておられる。その病院でありますとかカウンセリングの専門的な機関等が独立して何か活動しているというふうには聞いておりません。したがって、かなりこの「白い環」が全ドイツを広範にカバーする唯一の機関と言っていいほど大きな組織になっているというふうに私は受けとめております。

○瀬川構成員 ドイツでは1986年に被害者保護法ができて、さらに2004年に被害者の権利改善法できたわけです。かなり被害者の権利というのは明確化されていると思うんですが。ドイツで権利と言った場合に一般的にどういうふうに理解されているのか。
 先ほどの英米の動きというのはどういう印象を持たれたのか、少しその点2点をお聞きしたいと思います。

○安部氏 終わりの方からお答えしますが。感想で恐縮なのですが、ドイツの場合ははっきり申し上げまして、何かあればマインツに行けば大体全部資料が収集できるという状況にあります。もちろん細かいところまでは正直言ってなかなか立ち入れない部分もございます。いろいろな支援活動の現状といいますか、何か実際にその場に行って、あるいは付添いの具体的な場面でサポートする人とずっと一緒に活動するということまではなかなかカバーできないのですけれども。やはりマインツではかなり情報だけは得られるなという印象を私は持っております。
 それに比べますとちょっと失礼な言い方ですが、やはりアメリカなどは州独自がやはりいろいろな活動をしていますから、州の中でまさにいろいろな地域のボランティア団体の活動でありますとかいろいろな活動があるというふうに、先ほど冨田先生のお話でも伺いました。イギリスでも類似のところがあると思います。その意味で、ネットワーク化という点だと思うのですけれども、この点ではドイツは優れているというふうに私は判断いたしております。
 それから、最初の権利に関してでございますが、特に被害者の権利に関して定義規定を置くとか、何らかの法典をつくって、被害者の権利法典をつくるといったようなことはドイツはやっておりません。あくまでも刑事訴訟法典の中で具体的な個々の尋問権であるとか異議申立権であるとか、これははっきりとこういう権限があるというふうに明記されていますから、まさしく権利ということでよろしいかと思います。
 権利に関しては、レヒトという言葉が使われています。この法律、2004年の方もそうですが、被害者の権利の改善というときに被害者のレヒトという言葉を使っています。ですから、タイトルのところではレヒトというふうに使うのですけれども、では、その権利とは何かという一般総論的な規定を置いているわけではございません。私自身はむしろ個別に1つ1つこういうところが不十分だからこういうところをきちっとカバーしていこうということで具体的な法律化が進められているのではないかという理解をしております。

○小西構成員 山上構成員のご質問に加えてご質問したいのですが、私も多分2000年ぐらいですが、実際にドイツに行って、私は女性に対する暴力の支援という立場からちょっと見に行ったのですけれども。どちらかというと山上構成員がおっしゃったのと同じ印象でして。むしろ実際の支援の連携の中から「白い環」が見えてこないんですね。「白い環」というのは基本的にお金を払ってくれる場所という感じに、例えばDVとかレイプの被害者の支援の現場では、そのときにはそういうふうに言われまして。今ここで見せていただいたら、21ページのところでは、36%は性犯罪の被害者にお金としては払われているということです。私も同じ質問をしたくて、では、この人たちの実践的な支援というのはどうなっているんだろうかなと。何か変わったところは、特にこういうバウですね、バイオレンスアゲンストウィメン(女性に対する暴力)の領域で変わったことがあったらぜひ教えていただきたいなと思います。

○安部氏 これもちょっと法律の話になって恐縮なのですけれども、レジュメの方に1つ入れていたかなと思うのですが。2002年に暴力行為、つきまといの被害者の民事上の保護に関する法律というのが整備されまして、これは特にドメスティックバイオレンスといいますか、ドイツではパートナーバイオレンスという言い方をしています。婚姻間だけではなくて、パートナーとして生活をともにしている人に対する暴力被害を保護するという法律が生まれております。
 ただ、これは十分まだストーキング、ストーカー等に対する対応ができておりませんので、最近日本で言うストーカー規制法、これに類するようなものをつくろうと、あるいはつくれという主張をこの「白い環」もかなりやっております。
 恐らく小西構成員の疑問なり懸念ということになろうかと思いますが、やはりこのマインツというところに本部が置かれて、そしてすぐ川を渡ればヴィースバーデンという別の州になるのですが、そこには連邦機関BKAが置かれている。そして、警察、国、連邦ですね、これらと非常に密接した関係にもある。したがって、なかなか具体的な現場での対応というところと制度をどうするかとか、あるいは先ほど申し上げたように政策集団に対していろいろな働きかけをしていくことをどうするかということで、かなり落差があるわけですね。具体的な活動というものはもちろん本部ではやっておりませんから、それぞれの支援センター等での活動であるとか、そしてそこにリスト化されている人たちの紹介とか協働とかいう協力体制をとってやっているというふうに説明を受けました。
 ドメスティックバイオレンスについては個別に病院であるとかシェルター活動であるとかそういうものもあるやに聞いております。ただ、それがどこまで組織化されているかという話になりますと、私もよく了解しておりません。

○白井構成員 私たちも日本の被害者でどうしても年金が必要だという被害者の方々が大勢いるので、ドイツでは年金方式で補償がなされているということで調べたこともあるんですけれども。この先生のレジュメの2ページで、いくらぐらい払われるのかというところが、-5、-6というところに指摘されているんですが。私たちの方で調査したときには、犯罪被害者の補償の年金につきましてはその被害に遭う前に得ていた所得と被害後、労働能力が喪失して所得がなくなったその喪失した所得の差ですね、その差の42.5%をまず計算しまして、それを補償すると。
 それで、まず基礎年金で先生がご指摘していただいている基礎年金でそれを補償して、それに足りない部分は所得調整年金という形でさらに上乗せして補償するというそういう2段階で終生補償されるということだったのですが、その辺はどうなるかということをお聞きしたいのですが。

○安部氏 今、45%という数字、私は具体的には何を根拠に出てきているかがよくわかりませんけれども、恐らく算定方法というのが個別にあるのだろうと思います。それを前提にして連邦給付法の31条に明記された基準ができているのだろうと思います。これはあくまでも今おっしゃられた基礎年金に関するところですね。もちろんこれで十分な生活ができないという場合には、ちょうど日本で言います生活保護的な形の支給、社会保障の枠の中ですからこれで十分な社会保障が達成できない、生存権保障ができないということになりますと、当然上乗せ額といったようなことも別のシステムで考えていくと。ただ、これはあくまでも犯罪被害を受けたということを前提にして計算される基礎年金であるということでご了解いただければと思っております。
 その上で、当然一定の生活水準に達していないからということで差額が別途また別の制度で考えられたりする可能性はあると思うのですが。ちょっとそのあたりについて私はよく勉強しておりませんので、恐縮ですが、以上でお答えさせていだたきたいと思います。

○白井構成員 私たちが調べたときには所得調整年金というのはあくまで犯罪被害者の補償の制度の1つとしてということで、生活保護的な一般的な福祉の制度ということではなく答えられたんですけれども。

○安部氏 そうですか。さらに勉強させていただきます。申し訳ございません。

○國松座長 そういうことで、今のお話は経済的支援に関する検討会のときにはもうちょっと詰めて話すべきことと思います。ドイツに行ったときにでもそれは1つの重要な調査事項になるんだろうと思いますね。もう少し詳しく調べてきた方がいいなという感じは持っておりますけれども。その程度でいかがでございますか。

○飛鳥井構成員 実際的な話で1つ教えていただきたいんですけれども。ドイツも個人情報保護は非常に厳格な国だと承知していますけれども。今言ったように、警察と「白い環」のような団体との被害者の情報に関する受け渡しについてはどんなシステムとかどんな法的な根拠を持って運用しておられるか、おわかりになったら教えていただきたい。

○安部氏 確かに先ほど申し上げましたように、公的な機関との連携も非常にパイプは太いということはございます。ただ、個別の事案に関して具体的に警察から「白い環」のセンターの方に話が来るかというと、そういうシステムにはなっておりません。あくまでも被害者本人が先ほど申し上げた電話番号のところにまずはコンタクトをとっていくようなシステムになっております。もちろんEメールで悩み相談のような形でアクセスしてくるという場合もあろうかと思いますけれども。
 公的機関が最初に窓口になって「白い環」に来るということは原則的にはそういうシステムにはなっていない。あくまでも「白い環」の受け皿がまず直接被害者に対応するというやり方をとっているようですね。
 もちろんそうは言っても、警察でいろいろと事件処理をしてくれた場合に、警察で話をしたりする場合というのはあろうかと思うんですけれども、ただやはりドイツの警察の制度と日本の警察の制度はかなり違いがあるというふうに私は理解しております。そのあたりははっきり申し上げまして非常にドラスティックではないかなと思います。

○飛鳥井構成員 そうすると、あくまでも被害者本人が相談なり行動を起こさないと援助が開始できないということになるわけですね。

○安部氏 そうです。アクションは被害者本人がまずということですね。ただ、例えば性的な被害、そういうバイオレンスを受けた人を発見した機関などが代わりに「白い環」に連絡をしてくるとかいうようなことはもちろんあろうかと思います。

○本村構成員 ドイツは健康保険制度がかなり進んでいる国で医療費はすべて国費で負担というふうに聞いておりますので、犯罪による被害もすべて国費で被害者は医療されていると思うんですが。もしその犯罪にまつわる医療費というのがどのくらいあるのかということがわかれば教えていただきたい。また、国家としても犯罪を犯した人に対して当然被害者に国費で医療費を払った以上、回収するシステムというのがどのくらい充実しているのかというのがもしわかれば教えてもらいたいんですが、お願いします。

○安部氏 その点私も関心があったのですが、ちょっとその辺の資料が得られませんで、「白い環」自身は、例えば社会保健省などのデータなどを克明に持っておりませんで、実はちょっと私も資料収集ができなかった点、悔やまれております。ちょっと今の質問、両方ともですけれども、ちょっとお答えできません。申し訳ございません。

○國松座長 その点については後ほど、今日の様々な有識者のご発言を踏まえて、海外調査の調査事項として何があるかということを事務局の方にお寄せいただいたらいかがでしょうか。今ちょっとお答えができなかったようでありますので。その点はそういう形で処理していただいたらいかがでしょうか。

○林構成員 ドイツでも、日本でもそうですけれども、被害者というのを自称する人がいると思うんですけれどもね。そこでドイツはどうしてはるんですかね、その人が本当に被害者であるかということの、被害者カードみたいなそういうのは。

○安部氏 それはどの段階ででございますか。

○林構成員 こういう支援を受け入れるという意味での段階です。

○安部氏 被害者支援センターにとにかく話がいった場合には、もう当然被害者という視点で対応されていると思います。実際にそれが事件としてその後警察、それから検察といったところまでいくときに、当然付添いといったようなこともありますので、あくまでも最初話が出てきた段階では当然被害者としてどなたでも受け入れるというそういう対応をされている。

○林構成員 電話があった時点ではそういう形だということですね。

○國松座長 最後になりますが、フランスの事情につきまして、中央大学法科大学院の小木曽綾教授からご説明をお願いいたします。

○小木曽氏 それでは、まず特徴から申し上げます。レジュメに従ってお話しをいたします。3つ柱がございます。1つは、行為者からの迅速な賠償ということで、フランスには伝統的に附帯私訴という制度がございます。そこに1970年代後半からというふうに書いてありますが、これはその附帯私訴というのは伝統的にはあったのですけれども、政策として一貫性のある施策が用いられるようになったのは1970年代後半からという意味であります。
 それから、国家補償制度、特徴のある国家補償制度がございます。それから、全土にアソシアシオンというふうに言っていますが、民間団体といいますか、もしかすると公益法人というふうに言った方がいいのかもしれませんが、団体が全土にありまして、それを束ねる機関がINAVEMと書いてありますが、ございます。その3つがおそらくフランスの被害者支援の特徴であろうと考えます。
 もう1点申し上げておかなければなりませんのは、後ほど附帯私訴のところで申し上げますけれども、フランスの刑事手続というのは日本のそれとは違いまして、いわゆる職権主義という考え方がとられております。これは一言で言いますと刑事手続、刑事裁判というのは裁判所による真実発見の手続であるというふうに考えるのでありまして、英米、それからそれをモデルにした日本の現在の刑事裁判では、国と被告人の間の主張、立証、攻撃防御を想定するという当事者主義と言われる刑事裁判のあり方とは、随分異なった手続を用いております。
 その刑事手続に附帯私訴ということで犯罪の被害者が参加することができます。これは刑事裁判と同時の損害賠償請求をすることができる制度であります。
 先ほどからご質問が出ておりますのを1点補足いたしますと、権利の形式でありますけれども、フランスには抽象的に被害者の権利をうたった基本法といった法律はございません。憲法レベルでも法律のレベルでもありません。被害者の権利はもっぱら個別具体的な施策を定めた個別の立法及びそれが組み入れられました主に刑事訴訟法に定められております。したがって、それに組み入れられているものにつきましては法的な拘束力があるということであります。
 それでは、経済的支援の部分に入ります。今日の焦点が附帯私訴ではないだろうと思いましたので、ごく簡単にしか書いてございません。先ほど申しましたように、これは犯罪の被害者が当事者として訴訟に参加する制度でありますけれども、これはあくまでも刑事裁判所で損害賠償請求訴訟を同時にするものであります。ですから、直接的には犯罪被害者に刑事訴訟への参加権を保証したものではないという建前をとってはおります。しかし、実際には犯罪被害者が私訴原告、附帯私訴原告として当事者となることで一件書類の閲覧権や裁判所を通じた証人尋問権、証拠調べの請求権あるいは上訴権もございますが、得られることを通じて、犯罪の実態解明への事実上の参加権を得ることができるのだという機能が重視されているように思われます。
 先ほど申しましたように、このような制度が許されるというのは概念的にはいわゆる職権主義という裁判でありますので、これは裁判所の責任による真実解明が目的ですので、当事者の中に被害者が参加していても、裁判所の知恵と責任で真実が明らかになるのだと。同時に、民事の手続も終ってしまえばこんなにいいことはないというふうに説明されるわけであります。この点が日本、それから英米の刑事手続の構造と違う点であろうと思います。
 でありますので、被害者にとっては極めて容易に、極めてと言いますか、民事裁判を別に起こすのと比べて容易に損害賠償請求訴訟ができる。同時に手続参加ができるというメリットがございます。
 ただし、本来の目的としております損害賠償、損害補てん手段としての実効性が高いかといいますと、これはさほど高いわけではありません。そこで、国家補償制度が充実しなければいけないということであります。
 レジュメの方では割愛しておりますけれども、フランスでは1977年に初めて身体犯の国家補償制度ができました。このときの対象は身体犯だけでありまして、財源は国庫の一般財源から出しておりました。その後、犯罪の対象を財産犯、それから性犯罪に拡大しまして、それが1980年代のことですけれども、拡大をしてまいりました。フランスでは1980年代の初めにテロが頻発したということがありまして、その事態を受けて一般犯罪の補償制度とは別にテロ被害者への国家補償制度というのを創設しました。これが1986年のことであります。
 この2本立てで被害補償をしてきたのですけれども、1990年になりまして、レジュメに書いてありますテロ及び犯罪被害補償基金というこの基金に制度を統一いたしました。という経緯があります。ですから、一般犯罪についてはまず国庫から補償をしておりましたけれども、テロ、迅速に何とかより十分な補償をしなければいけないというので何か方策はないかというので考えだされたのが補償基金というものでありまして、これが現在では一般犯罪にも補償をしているということであります。
 その理念ですけれども、国民の「連帯」の印としての国家補償制度であるというふうに説明されております。すぐ後に申しますけれども、この理念と、それから財源、それから受給資格というのはリンクしていなければいけないはずですけれども、後に申しますように、余りリンクはフランスの制度については明らかではありません。
 レジュメの一番後にグラフをつけておきましたけれども、その上の折れ線グラフと青い線のグラフ、これが2005年の補償の実績を示したグラフでありまして、青い棒線が請求件数で、これ左側の数字です。大体こう見ると1万7,000件くらいの請求があったということになります。2005年の数字です。折れ線グラフが支給額でありまして、これは単位は100万ユーロでありますので、2005年の数字を見ますと約2億4,000万ユーロくらいが総額で支払われているということになります。
 平均しますと大体、これはただ割っただけですが、1万4,000ユーロくらいになるはずでありまして、私は145円で計算しておりますが、そうすると200万円くらいになるのではないかと思います。そういう支給の実績になります。
 それから、ついでにそのグラフの下のグラフですが、これは基金が支払った場合に犯罪者に対して求償権を行使することができるようになります。その場合に、犯罪者が弁済をしたのがそのグラフでありまして、2005年ですと4,180万ユーロくらいになるのだと思います。そういうグラフであります。
 さて、この財源ですが、これは先ほど申しましたテロ及び犯罪被害補償基金というのが管理をしておるものですけれども、財源は損害保険に課す目的税であります。1契約当たり、2005年には3.3ユーロ、恐らく480円か500円かくらいだと思いますが、1契約当たりに課されて、これを保険会社を通じて基金がプールをするという仕組みになっております。それプラス先ほど申しました行為者からの弁済と併せて財源としているというわけであります。
 これがおそらくフランスの制度の特徴だろうと思います。このような財源を持っているということですね。
 一体何でこの財源なのかということですが、これはよくわかりません。テロの被害、できるだけ迅速に十分に補償する必要があるということでつくられた制度、1986年につくられた制度に現在は一般犯罪の被害についての補償ものっかっているということでありまして、一番効率よく広く浅くとることのできる制度なのだろうと思われます。
 受給資格ですけれども、これ一般犯罪について申しますが、まずフランス国籍を有する者ですが、これには国外で犯罪の被害に遭った者も含むことにされております。
 それから、それ以外の国籍の者については、国内犯、フランスの領土内の犯罪であって、かつEU加盟国の国籍保有者であるか、または適法に滞在している者とされます。この滞在というのがどの程度の滞在を言うのかについて私は把握しておりません。
 それから、過失相殺など、先ほどから話が出ておりますように、ございます。その場合は減額の対象になります。それから、社会保険であるとか生命保険などの受給があった場合にはその額を減額するないしは勘案するという制度であります。したがって、この補償制度は補充的な性格のものであります。
 対象犯罪ですが、これはまず過失を含みます。2種類ございまして、補償限度額が設けられていない対象犯罪と、限度額が設けられている対象犯罪とございます。補償の限度額が設けられていないのは被害者が死亡した場合、または1か月以上働くことができなくなったような障害を受けた場合。それから、性犯罪と、この2つについては補償の限度額が設けられておりません。
 限度額があるのは、それよりも短い期間の就労不能になったような障害、それから窃盗、詐欺など一定、これは確か7種類に限定されていたと思いますが、の財産犯であります。これには厳しい制限がついておりまして、被害者の月収が2006年の数字で1,288ユーロ以下、ただし扶養者の数に応じてこの1,288ユーロに、例えば90ユーロとか80ユーロとかというのが加算されて月収がそれ以下という条件がついております。
 行為者が不明であって資力がないこと。他の損害補てん手段がないこと。経済的困窮状態にあること。という条件がついておりまして、補償の限度額は2006年に3,864ユーロということになっております。
 支給内容とか範囲ということであります。どのような具体的なケースでどのような補償がされるのかということでありますけれども。これはどうも個別判断で種々ばらばらであります。ケースバイケースでありまして、全国で統一されているわけではまるでありませんし、地域差も大きくあります。パリは高い、よそへ行くと低いというようなことがございます。何でそれでいいんだということを一度私は聞いたことがあるんですが、自分たちの裁量だからいいんだという答えでありました。何度聞いてもそういう答えしか返ってきませんでした。ですから、全国統一して同じ基準でやらなきゃいけないというふうには考えていないんですね。
 ただ、そういうふうにやってきましたものですから、あるケースでは補償され、あるケースでは補償されないということが不満として出てまいりまして、2005年にこの基準を制定するための委員会を設置したという情報がございました。これはその後どうなったかは把握しておりません。
 ただ、枠として決まっておりますのは、被害者本人については、例えば経済的な損害ですね、精神的被害、逸失利益等々が当然ございます。
 それから、相続人については、これは破棄院の判断で被害者本人の請求権を相続するわけではないというふうに言われております。相続人については被害者の死亡による相続人自身の損害を補償するんだということだそうで、例えば葬儀費用であるとか病院の行き帰りの交通費であるとか宿泊費であるとか精神的被害。当然これには収入が減った場合の収入も入ってくることになるわけでしょうけれども、といったようなのが一般的には考えられます。しかし、それはこれから述べます補償委員会の判断に委ねられているということであります。
 手続は、先ほど言いました基金がするわけではありませんで、全国の、そこにCIVIと書いてありますが、これは大審裁判所、日本で言うと地方裁判所を大体イメージしていただけるとよろしいと思いますが、そこに補償委員会というのが設けられております。これは構成主体は裁判官です。そこに宛てて被害者が請求をいたします。損害を示す資料を提出いたします。それがそのまま補償基金の方に送付されまして、補償基金がそれを見て補償額をまず被害者に提示するということになっていまして、被害者がその額で満足してそれを承認すれば形式的に補償委員会の委員長がそれを承認して、補償基金から支払われるという仕組みになっております。もし提出された資料を基金が見て支払う必要がないと考える、あるいはもっと低い額でいいはずだと考えるとか、あるいは基金が提案した額が被害者には納得できないといった場合には、今度は補償委員会が審査を行います。これ裁判官が審査をすることになります。ですから、これは裁判手続と同じような手続になります。裁定と書いてありますが、裁判と言ってもいいかもしれません。当事者の言い分を聞いて資料の提出を受けて額を決める。それにさらに不服がある場合は上訴ができます。したがって、そのような意味で被害者に権利があるというふうに言ってもよろしいのだろうと思います。
 概略経済的支援についてはそのような制度で支援が行われているということであります。
 それから、支援のための連携ということでありますが、これはいただいた聴取事項にきちんと答えるものかどうかはよくわかりませんけれども、1999年に閣僚といいますか政府のレベルで被害者政策協議会というものができました。法務大臣が主宰して、関係省庁から代表者が来る。それから、後に述べますINAVEMから代表者が来る。研究者などを含めて政策全般について評価、立案するという機関ができました。
 それから、つい最近、実態は正確には把握しておりませんけれども、日本でも法テラスというのができましたけれども、それに似た、要するに身近な法律相談を受ける窓口というのを全国に配置しておりまして、その役割の1つがやはり犯罪被害者の受け入れということであるようであります。
 それから、もう1つ追加して申しますと、警察署に犯罪被害者の受け入れ窓口を設けるための話し合いが進んでいるというふうに聞いております。
 それから、民間団体への援助ということですが。これは主にINAVEMという機関が担当するわけですけれども、INAVEMといいますのは全国の支援組織の連絡調整、代表、それから教育機関として、1986年から活動している被害者支援連盟のような組織であります。
 役割としては、政府との連絡、連携を進める。支援団体職員の教育であります。この教育の中には例えば被害者との接し方であるとか、悲しみのコントロールですとか、刑事訴訟法の知識などを習得するための短期集中講座のようなものを随時開催するということであります。いろいろな大会もいたしております。コンフェランス等の開催もします。電話相談も受け付けております。2004年に1万9,000件の電話があったということです。
 それから、被害者、加害者仲裁のための活動も、INAVEM自身がするわけではありませんが、その加盟している支援組織が仲裁をする場合にはそれの行為規範といいますか基準づくりといいますか、といったことをする。それから、警察とか判・検事の養成校などに出向いて被害者に係る教育、授業担当といったこともしているようであります。
 それから、最近、例えば電車の事故とかあるいはモンブランのトンネルで事故があったとかというような大きな事故、それによる被害者がたくさん出るわけですけれども、それについても支援をするという活動をしているようです。
 このINAVEMというのに全国の支援組織が加盟するということになっておりまして、全土に150加盟機関がある。このほかにも幾つか加盟していない支援機関というのはあるようですけれども、INAVEMが組織しているのは150だそうであります。
 もともと1986年にINAVEMというのは発足しているんですけれども、そのときに既に全国にあった50余りの支援機関、これを統括するといいますか連絡調整する機関としてINAVEMというのが発足いたしました。現在では全土に約650の受け入れ、事務所と書いてありますが、窓口があるということであります。2004年には全体で19万3,000人の犯罪被害者を受け入れているということです。だけれども、この窓口に来る人々の中には厳密に言うと、先ほども話が出ていましたけれども、犯罪被害者だというわけではない人々も相談に来るようであります。
 それから、予算ですが、このINAVEMという組織本体の予算、2005年の報告書を見ますと、予算は185万9,000ユーロですか、ほぼ半額が法務省からの補助金、そのほかは寄付であるとかそれ以外の省庁からの補助金などであります。それから、短期集中講座なんかやりますと、その参加費などが収入としては計上されることになります。支出が194万8,000ユーロだそうであります。この中には人件費などが入っております。
 被害者支援活動全体については、2004年に1760万ユーロが支出されたということであります。これは政府それから地方自治体が分担をしているということです。
 INAVEMに加入する被害者支援組織、全土で約1,500人、常勤・非常勤含めて勤務しているということです。どのような人々がそこで働いているのかということですが、人材募集広告を見ますと、弁護士、それから心理学者と書いてあるのは厳密に心理学者ではないかもしれません。要するに心理学のトレーニングを受けた人という程度に理解しておいた方がいいかもしれません。それから、事務の担当者。それから、事務所長としてリクルートをするということもあります。でありますので、それ自体が1つの事務所というか組織というか、としてその支援組織の運営を専門にやる人、つまり被害者支援の専門家ではない人たちもその事務所を構成しているということであります。
 それから、これも追加で申しますと、例えば2004年にはその全土の被害者支援組織で受け入れた被害者の罪種ですが、身体犯が約60%、財産犯が約25%、日本で言うところの交通関係業過、交通事故の被害者が11%ほどだそうです。身体犯が60%、財産犯が25%、交通事故が11%というような内訳になっているようであります。
 具体的な支援活動としては、情報を提供すると、それから裁判所であるとか警察あるいは病院を紹介してそこに同道するという活動がほぼ8割を占めるということだそうであります。
 それから、心理学的なカウンセリングが10%ちょっと。それから、緊急に必要になる金銭的な支援というのはごくごくわずかであります、0.2%程度だという資料であります。というのを各支援窓口で行っているということであります。
 すぐにインターネットで見つかった窓口を1つ取り上げますと、オルレアンですね。そこでは支援組織を構成するのは、代表者を出している機関はということですが、このアソシアシオンというのを構成するのが市役所からの代表者、県議会議員、裁判所からの代表者、弁護士、社会保険事務所、それから警察、女性保護団体などなどから代表者が出てアソシアシオンというのを構成して、その監督の下に具体的な受け入れ窓口がございまして、これはオルレアンのそこでは4、5人のようですけれども、その構成は弁護士、それから心理学の専門家のほかに事務職員、事務職員としては自治体から派遣されている職員というのも含まれるようですけれども、というような人々で実際の現場の窓口は構成されているということのようでございます。

○山上構成員 テロ及び犯罪被害補償基金のことに関連するのですけれども。国家補償であるとか政府がお金を出すとかあるいは主に法務省が出すというのと、この犯罪被害補償基金というのはどういう関係にあるか、国が出すものはすべてこれから出るということなのか、それともこの基金とは別に政府がお金を出す部分があるのか、その辺がちょっとわからなかったのですが、わかるようにお願いします。

○小木曽氏 経済的な補償については補償基金が支払うということでその財源が目的税であるということであります。それ以外の支援機関の活動やそれに係る人件費などは政府や自治体が支出するということでありま。

○白井構成員 補償限度額なしの例で、もし分かればということなんですが、大体一番高額の金額でどれくらいが補償されているのでしょうか。

○小木曽氏 結論から申しますとわかりません。この補償委員会、一度私訪ねたことがありまして、やはり同じ質問をしたのですけれども、ケースがいろいろで答えられないと。これは恐らく先ほどからの話で、しかるべきルートを通して聞いていただければ具体的なデータを出してくれるのではないかと思います。

○瀬川構成員 附帯私訴のことなんですけれども、損害補てん手段としての実効性は高くないてということなんですが、高くないということから余り意味がないというふうに評価されているのか、それとも、いや、なお制度としては続ける意味があるというふうに考えるのか、これはどちらなんでしょうか。

○小木曽氏 意味があると考えているようです。というのは、この訴え提起の方法が年々簡易になっているんですね。それから、実際損害賠償を言い渡されても資力がなければ払えないという意味で実行性がないということですけれども、民事の訴訟を別にやらなくてもいいわけで、そういう意味では被害者にとっては手間がかからないという意味のメリットはもちろんあります。それから、重大な犯罪については必ず私訴原告というのがおりまして、それに弁護士がついて法廷の中にいます。弁論の権利があるんですね。これが非常に重要なようであります。
 ですから、そういう意味では参加権というのを重視している、そういう機能も同時に果たしているという点が重視されているように見えます。ただ、もちろんこれについては乱訴の危険があるとかいう批判はかつてからありますけれども、しかし、体制としてというか政策として附帯私訴制度を意味のないものだというふうに評価しているということは決して言えないと思います。

○大久保構成員 レジュメの2ページにあります日本で言うところの法テラスではないかという部分ですが、被害者支援のために具体的にどのような活動をなさっているのでしょうか。

○小木曽氏 やはり適切な機関へ振り分けてやるための相談窓口というような役割だろうと思います。これはつい最近できたもので私も実態はよく把握しておりませんが、恐らく情報提供だろうと思います。具体的な支援についてはINAVEMに加盟している支援団体が行うということだろうと思います。

○大久保構成員 そこで情報提供としてINAVEMを紹介してINAVEMが具体的な直接的支援ですとかをやるという形になっているということですか。

○小木曽氏 はい、恐らくそうだろうと思います。

○平井構成員 基金についての質問なんですが。受給資格が国内外ということで、国外の被害者も対象にされているということなんですけれども。多くの国では国外での犯罪被害は対象外ですが、この基本理念からすれば一応理解できるんですが、国外での犯罪被害者を対象にされている特段の理由があれば教えていただけますか。

○小木曽氏 フランス国籍の者が国外で被害に遭った場合、これはフランス人だからというので連帯だという、どうもそういうことらしいですね。ですから、もちろん77年に国家補償制度をつくる、それから86年にテロのための補償制度をつくるときに、当然その理念をどうするかという議論はあったらしいのです。国がやはり犯罪の起こるのを防止しなければいけない責任を負っているのにそれに反したから国が補償しなければいけないという責任を負うのかとか、あるいは社会保障制度、公的扶助ないしは社会保険的なものを考えるのかということの議論はあったようですけれども、1件1件起こる犯罪についてそれをすべて防止する義務が国にあるということはとても言えないというので、国家賠償的な発想は捨てられました。ただ、あとはできるだけ十分に賠償できるための手段は何かということを考えた結果なんだろうと思います。
 そのときに連帯という言葉で、何でも入る革袋のようなものですけれども。十分にそこのところは詰めきれていないのではないかと思いますけれども、しかし、同じフランス人なんだから国外で被害に遭った場合はという発想なんだろうと思います。

○本村構成員 3ページ目のINAVEMというフランスの一番大きな支援の予算のところなんですが、ほぼ半額は法務省からの補助金で、その他は他の公的機関等からの補助金ということでしたが。ここに働かれている方というのは基本的にはボランティアの方が多いんでしょうか、職員の方が多いんでしょうかというのが最初の質問です。
 それともう1つは、このINAVEMの150の加盟支援機関というところの運営の資金というところもこのINAVEMというところが国からいただいた補助金を配布しているのか、この150の加盟の支援機関は独立でそういった資金を持っているのかという点について教えてもらいたいんですが、お願いします。

○小木曽氏 構成ですけれども、資料が古いのですが。これは1999年4月の話ですが、全体で457人の専任職員がいて、805人のボランティアがいたらしいですね。ですから、ボランティアの方が多い。ただ、一番最近の資料では専任の職員の方が多かったような記憶があります。
 それから、予算ですけれども、各地の支援団体にはこのINAVEMから補助金がまず行くということ、それから、それぞれの自治体でさらに補助金。それから、寄付なんかもあるようですけれども。ですから、これに加盟すると補助金をもらえるという仕組みになっているようです。

○本村構成員 ということは、(3)の予算というところのB)のb)に、地方自治体に対しても被害者支援活動全体でいくらかのお金が出ているということですが、この地方自治体に配られた国のお金がまたINAVEMに加盟しているところの支援機関に流れているというような構造なんでしょうか。

○小木曽氏 この(3)のB)の被害者支援活動全体にというのは、政府全体でというかフランス全土でそれだけが出資されていて、それを出しているのが政府と地方自治体であるということであります。

○山上構成員 関連する質問なですが。INAVEMに加盟する150団体は法によって認可された支援団体といっていますが、例えばこれはINAVEMに関する何か規定があっての上でのことなんでしょうか。例えば日本ですとNPO法人であればみな自動的にここに入れるというかそういうことになるのか、ちょっとその基準が、その法というのがどういうものなのか知りたいんですけれども。

○小木曽氏 これは、1901年法というのがありまして、これがアソシアシオンといういろいろな、これはフランス社会の1つの特徴だと思うんですけれども、いろいろな民間団体がございます。例えば動物愛護団体とか、それから人道に対する罪を追求する団体とか消費者団体とかとにかくさまざまな団体がありますが、それが1901年法というのに従って組織の目的であるとか事務所であるとか構成であるとかということを申請して登録しないといけないことになっております。それがその法によって認可されたという意味です。
 そういう意味では公益法人というふうに言ってもいいのかもしれません。例えば犯罪を目的にするアソシアシオンというのは無効であるとかいうことが書いてあります。その1901年法には。もし目的に反して登録をしている場合には刑事上の制裁を課すというような規定もある、そういう法律の認可を受けているということです。

○飛鳥井構成員 死亡、重障害については補償限度額を設けていなくて、それから過失相殺ありということで、イギリスの旧給付制度とちょっと似ているところがあるかなと思ったのです。その場合、2点お伺いしたいんですが、一定のタリフスキームのようなもの、あるいは日本で言う障害等級のようなものの考えは導入されていないのかということが1点。
 それから、限度額を設けないで過失相殺ありというと、調査から裁定までかなり手間暇がかかると思うのですが、実際、公正な判断をしようと思う。そういうところで、あるいは逆に不服申立ても非常に増えてくると思うんですが、そういうところでの運用上の非効率というようなことが問題にされていないのか。あるいは何らかの工夫をされているのかどうか。

○小木曽氏 個別の補償委員会でやはり、例えば極めて軽度、軽度、軽中度、中度というようなタリフスキームはやはり設けているようです。それに従って判断をしているようです。たた、統一的なのを用いているのかどうかということは把握しておりません。
 上訴ができるということなので、それを争うと時間がかかるといことはあるのでしょうけれども、私がかつてこの補償委員会に行って話を聞いたときには、それで時間がかかってしょうがないとは言っていませんでしたが、でも、聞けばそういうふうなこともあるのかもしれません。

○國松座長 以上で有識者の先生からのヒアリングは一応終わるわけでありますが、全体を通してこの際どうしてもという追加的なご質問がございましたらお願いを、4先生に対して、どなたでもよろいしんですが。

○高橋構成員 全体的にです。特にお答えいただきたいのは冨田先生だと思うんですけれども。例えばアメリカの3ページの上に、支給対象のところに、また外国でテロリズムによる被害者となった州民にもそれぞれの州のものが適用されるというふうにお聞きしましたけれども、この外国でというのが例えばフランスとかドイツ、イギリスでも、イギリスは駄目なのですか、そちらの国でのテロで巻き込まれたアメリカ人がそこの国で補償されて、またアメリカの州でも補償されるのかどうか。

○冨田構成員 州民、基本的にはアメリカの被害者補償制度は州の制度ですので、自分の州の州民が国外でテロリズムの被害に遭ったときにはその州の被害者補償の項目に従って必要な補償がなされるということです。後の外国人に対する補償がある国との関係ですが、おそらく、これ私はっきりしませんが、推測ですけれども、その国外、例えばイギリスならイギリスでそこで支給になれば、当然州の方ではその額は減額の対象になるというのがほかの原則から考えれば出てくることだと思います。

○國松座長 イギリスは先ほどのご説明で、それは相殺されるわけでしょうね。イギリスの場合いかがですか。

○奥村構成員 イギリスは国外で受けたものについては適用対象外で、EU諸国で受けた場合はEU諸国の中の被害者補償を受ける場合には申請手続については補助をするということだけでして、あくまでもイギリス国内ということに限定されております。だから、イギリス人が外国でテロリズムに遭っても、EU諸国で受けられる場合以外は補償にならないと。もし受けられればこちらでは補償しないだろうと思いますが、イギリスの補償制度の対象にはならないということだと思います。

○國松座長 ドイツはいかがでしょうか。

○安部氏 ドイツもイギリスと同じように国外での被害については補償しないと、ドイツ人についてはですね、という状況でございます。

○國松座長 フランスはいかがですか。

○小木曽氏 二重の補償はないと思いますね。

○高橋構成員 日本人がイギリスで被害に遭ったら補償されるのですか。日本人が海外で被害に遭っても、労災とか厚生年金の補償とかっていうのはありませんよね、そこら辺、イギリスには日本人がイギリスでの被害に巻き込まれたときに補償があるのかどうか。

○奥村構成員 外国人はイギリスの制度の中の適用除外要件にはなっていません。したがって、イギリスでもし、これも向こうで聞いてみたんですけれども、私が旅行者で来ているけれども、ビジターでもいいのかと尋ねたらいいとか言ってました。それは別に条件の中には、先ほど3年以上滞在しているとかそういう条件がドイツの場合は必要だということでしたけれども、そういう条件は全くありません。ただ、それは条文には書いてないことなので、実際どの程度具体的にいるのか、それから現実にそういう旅行者が被害に遭った場合に補償制度が適用されているのかという点については定かではありません。

○飛鳥井構成員 今の件で、例えばアメリカとイギリスなんかでそれがぶつかった場合、補償支払の要件が。アメリカ人がイギリスで例えばテロの被害を受けた場合、どちらも支払わなければいけないという場合、多分二重には支払われないと思うんですが、そこら辺の優先、どちらの国の補償制度を優先するかというような、慣習でもいいんですけれども、何かあるのでしょうか。

○奥村構成員 私もちょっとその点についてはわかりません。申し訳ありません。

○國松座長 ドイツはいかがですか。

○安部氏 例えばEUの中で、例えばドイツ人がオランダで被害に遭ったという場合、当然病院に担ぎ込まれたりするわけですから、当然オランダ側のシステムで一定の一時的な支払を受けたりするようなことがあろうかと思いますが、それを完全に治癒してドイツに帰って来て改めて補償請求というようなことになるわけですが、それは当然いわゆる先ほど申し上げたような社会保障の枠の中で支払える限度額というものかございますから、それはその限りで受けられるということになります。

○小西構成員 簡単で結構なんですが、医療費について、4人の方にお伺いしたいのです。いずれの国でも補償として医療の補償というのがあったと思いますけれども、保険制度がそれぞれ違いますから、例えば日本ですと医療保険を普通に適用すると3割の自己負担とか高度医療に関する限度額とかそういうものか適用になって一定の負担があるわけですよね。例えばアメリカのように皆保険ではないところでの負担というのが何割というのはわかりませんが、要するに保険と重ならないで出す場合、あるいは医療費を補償する場合に、大体どのくらいが補償されるかということがわかるでしょうか。例えば100%補償するのか、限度があってするのかということで、具体的に分かれば、簡単にで結構ですけれども、教えていただきたいと思います。

○奥村構成員 先ほど申しましたように、イギリスは医療については基本的に国民健康保険で全部無料、ナショナルヘルスサービスで無料になっております。ただ、どうしても特別な医療が必要だと、高度の医療的な措置が必要だというような場合については、それは補償の対象になっています。そういう形で対応しているようです。基本的に一般的な医療についてはもうすべて無料というのが、これは別に犯罪被害者だからということではなくて、国民一般の医療制度だということでございます。

○冨田構成員 アメリカの場合にはもう基本的には、ちょっと専門ではないので誤解あるかもしれませんが、基本的には公的な医療保険はなくて、メディケアという高齢者に対する保険制度だとかメディケートという低所得者向けのものがあるように聞いていますが、基本的にはそっちはでません。それで、全然全く健康保険制度の適用を受けない者が大体アメリカでは15、6%いるというようなことを言われていまして、その人たちにとってはこれが、先ほども申し上げましたけれども、被害者補償が最初に、そこからしか補償を受けられないということになるということです。
 それで、額についてはもう例えば歯科の医療であればこれだけと、それぞれのコンペンセーションボードの方で基準額が決まっていて、請求書に応じてその額が裁定され、支払われるというふうに理解してます。

○安部氏 イギリスみたいにしっかりしたものではございません。医療保険制度はもちろんあります。ただ、医療保険がどんなふうに支払われているのかということを私了解しておりませんで、被害を受けた人が国からあるいは社会的なシステムの中で医療的なサービスを受ける限度がどの程度なのかということについては正直了解しておりません。ただ、足りない部分については「白い環」の方から当面お金は出してもらえるというふうに伺っております。そういうお金がかなり「白い環」の方ではかかってくると。「白い環」が負担する医療費というのがですね、というふうに聞いております。

○小木曽氏 少なくとも限度額のない補償を受けられる種類の犯罪については自己負担分が補償されるということだろうと思います。

○小西構成員 ちょっとお伺いしたのは、日本の保険が適用されるけれども、自己負担分についての補償をという議論が去年の検討会でかなりでておりましたのでちょっとお伺いしたものです。どうもありがとうございました。

○大久保構成員 イギリス、アメリカ、ドイツについて少しお伺いしたいと思います。先ほどフランスにつきましては日本司法支援センターのような組織があるということをお伺いしましたが、そのほかの3つの国についてはそのような組織があるのかないのか、もしあるとすればその中で被害者支援に対してどのような役割を果たしているのかということを教えていただきたいと思います。

○奥村構成員 日本の法テラスのような形のところはまだないと思います。イギリスの場合は、先ほど別表でありましたように、刑事司法機関それぞれが情報提供するという形、あるいはビクティムサポートがするという形になっていますけれども、ただシームレスになっていないわけですね。継目があるわけです。そこで継目のないものが必要だということでそういう情報提供も含めてする被害者支援組織が、今度労働党のマニフェストの中でうたわれて、これは今後の課題みたいな形が現状だというふうに思います。

○冨田構成員 弁護士との関わりですが、アメリカで被害者支援の活動をしている弁護士団体、ちょっと名称は正確に今出てきませんが、それがあって、ホームページ等もあるんですが、具体的にどういう活動をしているのかというとちょっとわかりません。
 それから、もう1つは、この被害者補償の申請等に対して具体的に被害者を支援している弁護士の活動というものはあることはあります。今ちょっと申し上げられるのはそのくらいです。

○安部氏 ドイツは国の法律でもってきちんと法律家が支援しなければいけないというようなシステムに変わってきていますから、「白い環」が、先ほど来申し上げましたように、弁護士さんを紹介する、具体的にそういうリストが個々の被害者支援センターにはあるということでございます。そのほかに「白い環」、いくつかの団体の中で扶助協会的なものもつくってやっておられるというふうには聞いております。ただ、大体は「白い環」が把握したものについては「白い環」の弁護士さんが、「白い環」所属というわけではもちろんございませんけれども、そちらを通して無償で弁護士さんが活動する。そして、そのうちのいくらかについては国が費用を出すというような仕組みになっているということです。

○國松座長 ありがとうございました。まだほかにもいろいろとあると思いますが、本日のところはこの程度にいたしまして。海外事情につきましては後ほどまた海外調査というところもございますので、そのときのご意見として別途お伺いをするようにいたしたいと思います。
 以上をもちまして有識者の方からのヒアリングは終わりたいと思います。
 奥村先生、冨田先生、安部先生、小木曽先生、それぞれ大変お忙しいところ時間超過をしてお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、事務局から海外調査についてご報告をお願いいたします。

○事務局 海外調査を本日ご説明いただきました4か国を対象ということで、9月ごろに行いたいと考えております。アメリカに有識者の構成員の方1名と事務局1名で2名程度でどうだろうか。それから、イギリス、ドイツ、フランスに同じく有識者の構成員の方2名と、事務局職員1名ぐらいで派遣する方向で現在事務局におきまして会計面の調整と、それから人選を進めているところでございます。
 具体的な調査事項、訪問先等につきまして、本日もかなりいろいろ疑問点が出てきましたので、本日の質問等を踏まえまして、またそれぞれの検討会の次回会合にて皆さん方からご意見を賜りまして、調整をして決定してまいりたいというふうに考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

○國松座長 今日出た質問等は一応テイクノートしていただけるんでしょうね。例えばロンドンの爆弾テロへの補償とか。

○事務局 当然今日出た質問等についてはテイクノートしていきたいと思います。

○國松座長 それは一応登録済みということで。ただいまの事務局からの報告に何か質問ございますか。
 それでは、本日の議題は以上で終わりたいと思いますが、最後に事務局から何か連絡事項がありましたらお願いいたします。

○事務局 長時間ありがとうございました。次回は経済的支援検討会の第5回会合は7月26日の午後3時から、それから支援のための連携に関する検討会第4回会合は7月24日の午後1時から、それから民間団体への援助に対する検討会第4回会合につきましては7月13日の午後3時からということで、いずれも場所はこの会議室でございますので、よろしくお願い申し上げます。 ありがとうございました。

○國松座長 これをもちまして合同会議を終了いたしたいと思います。本日はほぼ1時間ほど時間を超過いたしましたが、長時間ありがとうございます。以上で終わります。


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