1.犯罪被害者等の抱える様々な問題
1-2 具体的に困難な状況
(1)心身の不調 *2
[ 直後 ]
あまりに突然の予期できないことについては、人間は対処できません。体も心も頭も動かないものなのです。その場に立ちすくんでしまうような状況になります。
その結果、次のような反応が見られます。
- 信じられない、現実として受け止められない
- 感情や感覚が麻痺してしまうために恐怖や痛みをあまり感じない
- 頭の中が真っ白になる、何も考えられない、ぼうっとする
- 周りのことが目に入らない、注意集中できない
- 自分が自分でないような気持ちがする
- 現実感がない、夢の中のような感じがする
- 事件の時のことがよく思い出せない
- 様々な気持ち(恐怖、怒り、不安、自分を責める気持ち)がわいてくる
- 自分が弱い、何も対処できないという気持ちが強くなる
- 気持ちが落ち込んだり、沈み込んだりしてしまう
- 体の反応がある
(どきどきする、冷や汗をかく、手足に力が入らない、手足が冷たい、過呼吸になる)
※ 周りの人からは、ぼうっとして見えたり、逆に落ち着いているように見えるために、犯罪被害者等が混乱していることがよく理解されないこともあります。
[ 中長期 ]
被害直後のショックが落ち着いた後も、様々な症状や反応が出てくることがあります。
<精神的な不調の例>
- 気持ちがひどく動揺し、混乱していると感じる
- 気持ちや感覚が自分から切り離されたような状態になる
- 事件に関することが頭の中によみがえってくる
- 神経が興奮して落ち着かない
<身体的な不調の例>
- 眠れない
- 頭痛やめまい、頭が重い
- 吐き気、嘔吐、胃がむかむかする、食欲がない、下痢をする、便秘になる
- 身体がだるい、疲れやすい、微熱がでる
- お腹や身体のその他の部分が痛い
- 生理がない、月経周期の異常、月経痛がある
【 子ども 】
言葉でうまく表現できないために、理解されづらく勘違いされる場合もありますが、概して下記のような様々な行動や反応を示す場合があります。
- 突然不安になり興奮する
- なんとなくいつもびくびくする
- 頭痛、腹痛、吐き気、めまい、息苦しさ、頻尿等を訴える(身体の病気でなくても起きます。)
- 著しい赤ちゃん返りがある、夜尿・指しゃぶりが始まる
- 表情の動きが少なく、ぼうっとしている
- 集中力がなくなる、上手にしゃべれない
- 家族や友達と関わりたがらない、遊ばなくなる
- 親への反抗、不登校、非行(性非行を含む)が始まる など
このような反応は、時間とともに軽くなっていく場合もありますが、日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関等に相談することを勧めることも重要です(「5. ニーズに応じた解決手段 1 総合的相談」参照)。
*2 犯罪被害者のメンタルヘルス情報ページ(http://www.ncnp.go.jp/nimh/seijin/www/index.html)参照。
コラム ―犯罪被害者等に現れることが多い精神疾患―
被害後、一時的な精神反応にとどまらず、下記のような疾患をきたす場合があります。
PTSD
再体験症状(フラッシュバック、悪夢など)や、回避・麻痺症状(事件に関連することを避ける、感情が感じられないなど)、覚醒亢進症状(眠れない、些細なことに過剰に驚くなど)が続く状態となります。
うつ病
気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなり苦痛を感じます。疲れやすくなり、食欲がなくなったり、眠れなくなるなど、日常の生活に支障が現れます。
パニック障害
突然動悸が激しくなり、息苦しくなります。めまいや冷や汗、手足に震えがきて心臓発作を起こしたかのように思い、死ぬのではないかという恐怖に襲われます。このような発作がいつ起こるのかと不安で外出することが困難になったりします。