「地域で被害者支援を行うために」
コーディネーター:
服部 知之(神奈川県弁護士会 犯罪被害者支援委員会 副委員長)
パネリスト:
渡邉 治重(基調講演者、「ピア・神奈川」代表)
永野 弘幸(神奈川被害者支援センター 所長)
上野 進(川崎市 地域安全推進課長)
(服部) それではこれから、パネルディスカッションに移らせていただきます。パネルディスカッションのテーマは「地域で被害者支援を行うために」です。今回被害者支援に携わるパネリストの皆様にお話いただき、地域で被害者支援を行うためにはどのようにしていけばいいかを考えていければと思っております。
最初にパネリストの皆さんが、被害者支援にどのように関わっておられるのか、簡単に自己紹介を交えてお話させていただきます。
まずコーディネーターという大役を仰せつかりました、弁護士の服部知之と申します。神奈川県弁護士会の犯罪被害者支援委員会に登録し、これまで性犯罪、交通事案をはじめ、被害者の方、殺人事件のご遺族等の法律相談をはじめ、民事、刑事の裁判を担当してきております。また、団体としての弁護士会の活動としては、川崎市をはじめとした自治体、被害者支援センターも参画されております、神奈川犯罪被害者サポートステーションなどと、被害者支援に関する連携協議を行っております。
では続きまして、パネリストのご紹介をさせていただきます。まず最初に、神奈川被害者支援センターの永野さん、自己紹介と、支援センターの活動内容をお話いただけますか。
(永野)皆様こんにちは。ただいまご指名をいただきました、神奈川被害者支援センターの永野と申します。私は令和3年4月から、当センター神奈川被害者支援センターで、被害者支援に携わっておるものでございます。私の被害者支援の経験は、平成20年から21年にかけて、神奈川県警察本部 警務課 被害者支援室、当時は対策室と言っておりましたけど、そちらにおいて勤務経験がございます。在勤中において、神奈川県犯罪被害者等支援条例の制定に警察側のメンバーとして加わらせていただきました。また、川崎市が、今年の4月から施行された川崎市犯罪被害者等支援条例の制定のための、川崎市犯罪被害者等支援有職者会議のメンバーも務めさせていただきました。現在は横浜市犯罪被害者等施策に関する懇談会、相模原市犯罪被害者等支援に関わる有職者会議の委員を務めさせていただいております。
それではこれから当センターの概要について簡単にお話をさせていただきたいと思います。当センターは平成20年3月26日に神奈川県公安委員会から、被害者支援を適正かつ確実に行うことができる、営利を目的としない法人として、犯罪被害者等給付金の支給等による、犯罪被害者等の支援に関する法律第23条に基づいて、犯罪被害者等早期援助団体に指定をされております。被害に遭われた直後の被害者やご家族ご遺族の多くは、これは渡邉さんのお話にもありましたが、事件事故のショックにより混乱状態に陥り、その後の日常生活にも支障が出るなど、多くの苦痛を抱えられております。その上、刑事手続きや関係機関等で、被害状況を繰り返し説明することは、大きな負担となっております。このような方々が支援を必要とされ、警察から情報提供を受けまして、必要な支援を開始することになっております。
また、当センターは、神奈川県、神奈川県警察とともに、県内犯罪被害者等支援の中核組織であります神奈川犯罪被害者サポートステーション、通称名としてサポステと呼んでおりますが、このサポステは唯一の民間の被害者支援団体でございます。神奈川犯罪被害者サポートステーションは、神奈川県犯罪被害者等支援条例が、これは先ほど申し上げましたように、平成21年4月1日に施行され、この条例に基づいて開設された施設であります。犯罪等の被害に遭われた方やその家族の方々からの様々な相談に応じ、必要とする情報や支援を総合的に提供するため、県、県警察、民間被害者支援団体である認定特定非営利活動法人 神奈川被害者支援センターが一体となって運営している組織でございます。
次に、渡邉様が基調講演の中でお話しになったことで、非常に記憶に残っている言葉として、被害者支援をする上で一番大切なことは、被害者や遺族の立場に立つことが大切である。この人のために何かしてやろうとか、支援をしてやろうとか、という姿勢ではなく、傾聴、寄り添う心、つまり気持ちを汲み取り、受け止めてあげる精神的支援が大切である、と申されており、私もまさしくその通りであると思います。被害者を孤立させないことが重要であり、本日のテーマであるこれからの被害者支援として、より一層、地域全体で被害者を支えることが求められていると思っております。
そしてまた、被害者の声としてこのようなことを聞いております。この事件で一番悲しく悔しかったのは本人ですが、残された家族も深い悲しみに包まれると同時に、その日を境に家族の生活と周囲の人々の関係が一変してしまいました。事件直後は自宅近くで出会う地域の人々は、避けるように遠巻きに見ているようで、自分たち一家が地域の中で隔離されたように感じられた。その一方で、家族が気分転換に外に出る気持ちにもなれず、家の中に引きこもり、引き込こもるしかない状況に追い込まれた、と言っておられます。そのように被害者というのは、被害を受けることによって非常に経済的ダメージだけじゃなくて、精神的にも肉体的にもいろんな面で非常につらい立場に追いやられるということをご理解いただきたいと思います。簡単でございますが以上でございます。
(服部) 永野さんありがとうございました。続きまして川崎市の上野さん、自己紹介と川崎市の活動内容、また今年4月に制定された川崎市の犯罪被害者支援条例についてご説明いただけますか。
(上野) こんにちは。川崎市 市民文化局 地域安全推進課長をしております、上野と申します。所属の地域安全推進課でございますが、地域の安全と地域の交通安全に関する業務を行っております。主なものとしましては、地域安全では、犯罪被害者支援をはじめ、防犯灯の維持管理ですとか、LED防犯灯の設置、防犯カメラの設置補助などを行っております。また交通安全の関係業務では、交通安全実施計画のもと、交通安全全般に係る広報啓発、スクールゾーンの交通安全対策などを行っております。
本市では平成20年5月に犯罪被害者等支援相談窓口を設置し、県警OBによる面接または電話での相談に応じ、被害者の状況に応じた支援制度を案内する他、県の支援センターや法テラスなどの専門機関を紹介するなど関係機関と連携をとりながら支援を行ってまいりました。ただ、相談件数も年間で20件ぐらいという中で、具体的な犯罪被害に遭われた方からの相談というよりも、地域でのトラブルですとか、そういった相談が多くあったところです。
川崎市犯罪被害者等支援条例につきましては、令和3年12月15日に制定し、本年4月1日に施行いたしました。この条例に基づき、神奈川県警被害者支援室および、永野所長もいらっしゃいます神奈川被害者支援センターと連携を図りながら、被害者等からの相談により、その状況や困りごとのご要望に応じて、各種支援の提供、窓口に関する情報の提供や、被害者からの相談によりに助言、提供を行っております。
政令指定都市の中では、横浜市、さいたま市など、8都市が先行して特化条例を制定しておりました。我々川崎市につきましては、本年4月1日に施行したわけですけれども、静岡県浜松市、広島県広島市、この3市が今年4月1日に条例を施行しております。
本市の条例ですが、犯罪被害者等基本法の趣旨にのっとり、基本理念、市、市民、事業者の責務等を定めています。第7条、相談および情報の提供等においては、犯罪被害者等の支援について相談に応じるとともに、必要な情報の提供および助言を総合的に行うための窓口を設置するものとしており、ワンストップ相談窓口を設けております。第8条では、日常生活等支援という形で、犯罪被害に遭われた方への支援を行うことを定めております。
本日お忙しい中、基調講演いただきました渡邉さんありがとうございました。また警察庁におかれましては、このような形で川崎大会を開催できたことを本当にありがたく思っております。講演の中での渡邉さんのお言葉ですが、ある日突然交通事件が起こってしまい、大切なお子様が亡くなった、遺族になった、という話でございます。事件事故というのは突然起きてしまい、誰もが被害者等になる可能性があるということ。私にも3人のこどもがおります。いつそのこどもたちが、被害に遭うかというところは想像もできませんし、今現状では想像したくないというのが本音でございます。私自身もですが、皆さんも他人ごとという形ではなく、犯罪に遭われた方を自分ごとという形で考えていかなければいけないとつくづく感じたところでございます。
本日もご主人が一緒に連れ添っていらっしゃっていますが、被害に遭われた当時ご主人はサラリーマン、とにかくバリバリの会社員であったにもかかわらず、朝昼晩とお食事の用意をされているというところをお聞きしました。今でさえ男性がですね、家庭に入り、食事、掃除、育児に関わっている方も多くなってきていますが、その当時、本当にご主人も苦労されたと思いますし、ものすごく頑張ってこられたのだなと思います。
またご近所のお友達からのおかずの差し入れが、とてもありがたいという言葉がございました。これはやはり渡邉さんがそれまでに築き上げた地域のコミュニケーションだと思っております。現在なかなか地域社会の中で、一人一人コミュニケーションが取れない時代になっています。そういうことも考えますと、このような地域の繋がりというところが、これから本当に大事であるし、犯罪被害に遭われた方の支援にとっては大変必要なことだと感じたところでございます。簡単ですが私からは以上でございます。
(服部) 上野さん、ありがとうございました。
渡邉さん、先ほど基調講演の中で活動されている自助グループのこともあろうかと思います。ここからは支援者としてお話いただくこともあろうかと思いますので、自助グループの活動内容を踏まえて、もう一度ご紹介いただいてよろしいでしょうか。
(渡邉) 私は、現在被害者支援自助グループ「ピア・神奈川」の代表として20年近く活動しております。
被害者支援、唯一の支援特徴は被害を受けた方の電話・面接相談を行っていますが、私たちは当事者、サバイバーとして色々な体験をしていますので精神的な心の支援、グリーフケアに重きを置いていますので、相談をされた方とか、それから電話をかけてくださった方に、本当に気持ちがわかりますと唯一言える立場にあります。ですから相手もその深いところや人に話せないことでも話していただいて相談に乗ることができます。
他には、これから裁判を起こす方には様々な支援をしています。刑事、民事裁判についての違いや被害者参加制度に提出する意見書の書き方、陳述書の書き方のポイント、弁護士の選び方、裁判所で被害者関係が座る位置、傍聴人の必要性等ささいな事でも質問があった事に対して全力で支援をしています。
場所としては神奈川県民センターです。そこで水曜日1回、それから茅ヶ崎市役所で、犯罪被害者支援をしております。県民センターでは、被害者支援というので、どんな被害者の方もおいでになって、受け入れて相談させていただいています。あと自助グループは、ほとんどが県民センターで、今まではさせていただいていましたが、コロナで3年ほど場所が使えなくなったり、時間制限があったり、いろいろありまして、今は小休止という状態ですが、当事者と2人だけか3人だけの小さい自助グループ活動はしております。私どもも被害者支援センターのように面接とか面談とか、それから先ほど申し上げました、刑事事件の裁判とか民事裁判の助言、それから弁護士の方がすごく専門的な用語を言われているけど、何を言われているかわからないというときには、これはこういうことを言われているのよなど、そういう解説などもしています。
県民センターでは精神的な支援が主ですけれど、茅ヶ崎市では、神奈川県の条例や茅ヶ崎市の条例がありまして、そこでは金銭的な支援とかお部屋の提供とかいろいろできる限りの支援とともに、何かもし他の支援が必要であったら、市役所としての他の支援の窓口にも話かけるような充実した支援ができ上がっております。
先ほど自助グループの活動の話をお願いしたいということでしたが、私もそうでしたが、その被害を受けた当時は、自分が被害者になるとか遺族になるとか、裁判とか警察とか、今まで全然関係ないところにいたものが、突然その全ての関係に関わってくるわけですけれど、その順序もさっぱりわからない。何もわからない。ですから、もし私たちの近くにそういう方がいらっしゃれば、神奈川にはこういう支援体制が整っていますよ、法テラスという弁護士事務所も親切に受け持っていただけますよ、警察署にも被害者支援の相談窓口がありますよ、民間にはこの様な相談する場所がありますよというようなことをお伝えしています。
私が被害者支援の活動をしていると、やはり最初の方は本当に顔が真っ青でこんなに痩せこけて、相談に見える方がいらっしゃるのですが、何度も何度もお話させていただいているうちに、段々と髪の毛も梳かしてくるようになったり、マスクもそんなに大きいマスクをしなくなってきたり、少し頬に赤みが差してきたり、そういうお姿を見ると、何かお役に立てたなと思います。
面談の一番初めは、相談者の動揺している姿が見て取れますので自分の考えで直ぐ答えられるような簡単な質問をしてあげます、今日は何か朝召し上がりましたか、今日バスで来ましたか、電車で来ましたか等の簡単な質問をしてから必ず自分で答えさせます。そして少し冷静さを取り戻してあげ、それから本題に入っていく、そういう相談内容をしております。
(服部) 渡邉さんありがとうございました。ここで次のスライドを展開いたします。
ここからはですね、犯罪が発生し被害に遭った直後の支援のことをお話していただこうかなと思います。
私も先ほどの渡邉さんのお話を伺いながら、自分が支援に携わってきたご遺族のことを考えてお話を聞いておりました。渡邉さんが被害に遭われたときというのは、今と比べて被害者支援という言葉すらない、本当に人の助けがなかなかなく、独力で何とかするしかないという状況に置かれていたのだなということを改めて思うとともに、そういった渡邉さんたちのような、ご遺族であったり被害者の方の活動があって今のこの被害者支援に繋がっているのだろうなと考えながらお話を伺っておりました。
事件直後というワードでお話を伺いたいなと思ったのは、先ほどの渡邉さんのお話の中で食事の献立を考えることもできない、体が重い。ご家族の中でもこの話をするというのが、ご家族の中で話をするからこそ、またぶつかり合ってしまうようなこともあったのかなというふうに思ってお話を伺っておりました。
ここで渡邉さん、今は御遺族として支援に携わってはおられますけれども、当時思い返して被害の直後、どういった支援があったら助かったとか、ありがたかったなと思うようなことはあるでしょうか?
(渡邉) その当時は被害者支援っていう体制はありませんでしたけれど、私は警察という立場がすごく重いと思ったのですね。ともかく何にも説明していただけなかった。自分が今、これからどうしていいのか、何を考えればいいのか、被害者に配慮がなされなかったということは、先ほどもお話の中で話をさせていただきましたけれど、とにかく配慮がなかった。そして説明をしてくれなかった。これからどうなるかも全然わからなかった。自分を支えてくれるというか相談に乗ってくれるという、そういうアドバイスをしてくれるアドバイザー的な方が本当にいらっしゃらなかった。遺族になってしまいましたが、周りに同じ境遇の方がいらっしゃらない。誰に相談していいかわからない。
裁判するには弁護士さんが必要だというのはわかりましたけれど、その弁護士を決めるのに周りの方が、私が弁護士さんを紹介してあげるという方法で紹介していただきましたけれど、弁護士さんには得意な分野があります。例えば交通事故だったら交通事故、殺人だったら殺人、医療介護だったら医療介護、そういう方がいらっしゃるということさえもわからなかったということなので、やっぱりそういう何か手立てが欲しかったなということを思いました。
ともかく周りも、今までの被害者というのは、被害を受けた人はあなたにも落ち度があるという対応でした。あなたにも落ち度があるからそういう被害を受けたのでしょう。そういうことを言われて、加害者を擁護するというのが世間の風向きだったと思うのです。今は被害者支援ができて、そうではないということが段々理解できて、本来加害者を弁護する弁護士さんも、被害者を弁護してくださったりする弁護士さんもいて、服部さんもその専門の方だと思うのですけれど、それができて、警察には被害者支援対策室もできましたし、被害者支援センターもできていますので、私はもうあの当時必要だと感じたことは、今は90%出来上がってきているなと思っています。
(服部) ありがとうございます。今渡邉さんがお話になってくださった、いわゆる交通整理というか、アドバイザー的な立場というので私ども弁護士が被害者支援として担う役割は大きいと思っております。ただ、先ほどの基調講演であったり、今の渡邉様のお話を踏まえた上で、川崎市や支援センターとして、先ほど、機関の紹介がありましたけれど、具体的にどういった支援を行えるのかについてお話しいただければと思います。
まず永野さん、支援センターとして、いわゆる急性期というか、被害直後からどういった支援をセンターとしては行っているのでしょうか?
(永野) 先ほども紹介させていただきましたが、神奈川犯罪被害者サポートステーション制度についてお話をさせていただきます。
この制度をお話する前に、この俗に言うサポステ。これは神奈川県の条例が平成21年4月1日に施行され、このサポートステーションは、平成21年の6月1日から活動を開始しています。神奈川県、それから神奈川県警察、それから民間の当センター、この3者がこういう形で運営しているところは全国にも稀です。ですから開所当時は全国からいろんな方が、視察に見えたというようなことで、神奈川県の被害者支援というのは、当時警察をはじめとして、全国でも非常に先駆け的な存在で非常に先進的な取り組みでやっておりました。
当時、私も関わったのですけど、やはりそれだけの自負を持って運営をしてきております。渡邉さんのピア・神奈川さんも、横浜西口の鶴屋町にあるかながわ県民センターに入っているということですが、私達は14階に入っております。渡邉さんは何階に入っていますか。
(渡邉) 12階です。
(永野) ご近所ですね。今後ともまたよろしくお願いします。
そういうようなことで、センターと、神奈川県、県警察の三者が同じフロアの中で業務を行っております。何が一番メリットであるか。迅速性です。それから、細かい支援は後ほど話します、支援調整会議の話をさせていただきますけど、そういった要するに電話相談からこれは支援が必要だという案件について、すぐに隣で電話もやらなければ、メールもいらないFAXもいらない、私の声が大きいですから、かえって離れて話すぐらいの、そういった形で調整を行っております。これが第1のメリットじゃないかと。やはり週1回そういった形の支援調整会議的なものを持ってらっしゃる県はありますけど、同じフロアにおいて、こういった形で支援をやっている県というのは、多分全国で神奈川県だけじゃないかと、そういうふうに思っております。
少し前段が長くなりましたけれど、そういうことで今、申し上げたようにサポステは、県、県警察、それから神奈川被害者支援センターの3者により運営されており、犯罪被害者に対する支援内容を話し合い、実行に移しております。犯罪の被害に遭うと、被害者の方は警察に行き被害届を提出して、犯罪被害に遭ったことを申告します。その席において犯罪被害者の方が、弁護士さんによる法律相談やカウンセリングを希望したい旨を伝えると、警察署の方から、警察本部の被害者支援室にその希望が取り継がれ、県、それから県警察、被害者支援センターの3者による週1回の支援調整会議に諮られ、その決定をもって犯罪被害者等の支援に精通した、服部先生が所属されております、神奈川県弁護士会所属の弁護士さんによる法律相談を実施しております。また、カウンセリングを希望している被害者の方には、犯罪より受けた心の傷を回復するために、臨床心理士等によるカウンセリングを実施しております。
カウンセリングについては、県から当センターが事業の委託を受けて実施しているところであり、神奈川被害者支援センターのカウンセラーの先生方、臨床心理士の先生方が担当しております。設立が平成13年5月で、20年を過ぎております。設立から在籍しておられる先生方もいらっしゃいます。非常に犯罪被害に精通している専門家であります。犯罪被害者に対するカウンセリングについては、私も専門じゃないのですけど、通常の相談者の精神的なケアのカウンセリングとは異なり、この分野における知見なり、多くの経験を必要としていると言われています。実際に、ある市の方が条例を制定し、施行するにあたり、カウンセリング業務をその管内の市内の総合病院に依頼をしようとしたところ、犯罪被害者に対するカウンセリングができないと断られたと聞いております。したがって、それだけ専門性が高く、犯罪被害者の情報を共有できる当センターの存在は非常に大きいと、そういった点でも自負しております。また、来年度からは神奈川県臨床心理士会の協力を仰ぎまして、当センターが独自に、犯罪被害者のカウンセリングができるカウンセラーを育成するための取り組みも推進していきたいと考えております。
次に、直接支援についてお話をさせていただきます。直接支援は被害者の希望に応じて、警察署や裁判所、法律相談に付き添います。この事業につきましても、県から補助金を受けて当センターが独自の事業として実施しているところであります。この事業は、当センターの中核事業でもあり、犯罪被害者等からの支援要請に応えるもので、服部コーディネーターがおっしゃっている急性期における被害者支援そのものであると考えております。今後も直接支援の件数は増えることがあっても減ることはないだろうと、そのように思っております。
民間の被害者支援団体としてやるべき被害者のための支援であることから、今後については県、市町村、関係機関、民間企業、県民の皆様にご支援とご協力を賜りたいと考えております。
渡邉さんの講演の中でもお話になっておられましたが、犯罪被害に関わると、自分が自分でなくなるということであり、いつもできていることができなくなり、何をしたらいいかわからなくなってしまうということをおっしゃっていました。被害者の方は、まさか自分が犯罪に巻き込まれるなんてないだろうと思っていたでしょう。犯罪被害に対して、他人事として捉えている方が多いのが、現状だと思います。それは当然のことです。
朝、元気に行ってきますと言って家を出ても、被害に遭うことによってただいまという一言が言えなくなります。誰もが朝、犯罪被害に遭うために行ってきますと、言ってはおられないと思います。それだけ自分が犯罪被害に遭うとは、誰一人と思ってらっしゃらない、それが犯罪被害でございます。被害者はある日突然、非常事態に陥り、心身ともに極限状態にあるので、今までできたことができなくなったり、判断力や行動力も損なわれます。そして、今まで経験したことのないようなことも次々に降りかかっていきます。
そういった方については、絶対に救いの手が必要であり、センターがこのような被害者のためにできることは、被害者に寄り添い、救いの手を早急に、そして迅速に差し伸べることであると思っております。
いろいろとサポステの制度と支援の仕組みについて説明してまいりましたが、民間の被害者支援団体としての当センターの使命と役割は、途切れのない支援にさらにこの漏れのない支援、ということを努めてまいります。犯罪被害者等のニーズは多様です。多様な犯罪被害者等のニーズに対応するためには、1人でも多くの被害者の声を聞き、その声を聞き続けることが必要であります。それを誰かがやらなければならない、それをできるのは通常の業務、いろいろな業務に追われている行政ではありません。それをできるのは信頼のおける民間の被害者支援団体であると考えております。
そして私たちは、被害者の声を聞き、声を上げようとしても声にならない被害者の無念に寄り添い、声を上げることができない被害者に声を上げることができるようになるまで、末永く支援の手を差し伸べ少しでも明日への希望が持てるようなお手伝いをする、これを使命として日々、被害者等の支援に携わっております。犯罪被害者等が1日も早く被害から回復し、社会の中で再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、犯罪被害者一人一人に寄り添ったきめ細かな充実した支援が必要であると考えております。そういったことで、急性期の支援としての付き添い、直接支援、それからカウンセリング等が当センターの使命として、今後も充実させていきたいと考えております。以上でございます。
(服部) ありがとうございます。私ども法律相談をしたり、裁判に行ったりするときに、センターの方が被害者の方と寄り添って同行していただいて、法廷での活動のときに1人にならないように寄り添っていただく、ただそれだけでもすごく心強いというお言葉いただいておりますので、大変私どもの活動でも助かっております。
続いて上野さん、先ほどの川崎市の支援条例が制定されて、いろんな支援施策を作られておられるかと思いますが、先ほどの渡邉様のお話を踏まえて、条例だとどういうことができるのか、こういった点について、支援の内容をお話いただけますか。
(上野) 先ほど渡邉さんの講演の中で、事件に遭われた後に、気力がなくなり、何もできなくなり、食事の支度や家事ができなくなるというお話がありました。永野所長の方からも話がありますけども、本市の条例においては、日常生活支援として、家事のヘルパー、配食にかかる費用の助成を行うことができるようにいたしました。今回メニューを検討するに当たりまして、配食については、被害に遭われた方が、ヘルパーをご自宅にお入れするのも抵抗があるというような話も聞いております。また今このようなコロナの状況で、他の人を自宅に入れるのはなかなか気が気じゃないというところもありましたので、川崎市としては配食支援という形で支援メニューを作らせていただいたところでございます。
支援センターの方で、カウンセリングを10回ほどできるような形になっているのですが、市としましてはそちらと連携した支援を行っております。先ほど永野所長がお話しされたカウンセリングについて、本市では1案件14回のカウンセリングをできることにしました。センターと協定を締結しまして、センターで10回カウンセリングをした後、川崎市において引き続き14回。最大で合計24回のカウンセリングを受けることができるようになります。これは条例や、支援内容を検討している中で有識者会議において、カウンセリングっていうのは、やはり時間がかかるものだというようなご意見をいただきましたので、本市としては、なるべく多く回数をできるような形で決めたところでございます。この辺は何が利点かと言いますと、やはりカウンセラーを変えることなく、そのまま引き継いで最大24回カウンセリングできるというところが利点であり、我々としては工夫をさせていただいた点になっています。
本市の支援メニューをご紹介させていただければと思います。本日お配りした資料の中に、ピンクのリーフレットが入っております。また、ご自宅に戻られてからご覧になっていただければと思うのですけども、ちょっと簡単に本市の支援条例に基づいた支援内容を説明させていただきます。
相談支援として、先ほど言いましたカウンセリングを1案件14回まで受けることができます。同じく相談支援ということで、法律相談、弁護士への相談、1案件2回相談することができるようになっております。
あと、住居支援としまして、転居の支援ですね。現住居において犯罪被害に遭われた方、自分の今住んでいるところに住むことが困難になったという場合に、新たな住居に転居するための費用という形で転居費用の支援を設けております。あと緊急避難支援。県で3日間ホテル等への緊急避難支援というのがございますが、それプラス4日間本市の方で引き続き延泊できるような形にしましたので、最大で7日間緊急避難することができるようにいたしました。
あとは経済的支援という形で見舞金です。遺族見舞金、重傷病見舞金、性犯罪被害見舞金というのを設けております。これは政令指定都市の中では神戸市と本市しかないんですけども、教育支援という形で犯罪被害に遭われたこどもの教育関係費を助成する教育支援を設けさせていただきました。
日常生活支援として、先ほどお話しました家事等に関わる支援ということで、家事や介護のヘルパーサービス、一時保育支援として就学前のこどもに対する一時保育を利用する際の費用を助成いたします。あと、小学校の児童の一時預かりをするというところの費用も助成いたします。配食支援ということで、先ほど言いましたような形でご自宅で料理ができないというところで被害に遭われた方々、ご家族の皆さんに配食費用の助成という形で支援をしております。
簡単でございますが、支援の内容は以上です。この条例に基づく支援内容ですが、どのような支援内容をしていくかというところは、先行して横浜市さんを参考にしながら検討するとともに、条例や支援内容を決めていく中で、有識者会議ですとか、議会からのご意見を踏まえながら検討し、決定したところでございます。説明は以上でございます。
(服部) ありがとうございます。やはり今、伺った支援内容というのが、生活の基盤、生きていく基盤ということに対して目を向けられて、支援がなされていくのだということはとても重要なことであり、これがいかに周知されていくのか、本来であれば被害が発生しないことが一番なんですけれども、被害に遭われたときに積極的に使われていくことが、次の課題になってくるかなと思いながらお話を伺っておりました。
ありがとうございます。スライドを展開してください。
ここからは先ほど渡邉さんのお話を伺いながら思っていましたのが、被害に関する話というのをしたくない、避けたいと思う場合と、聞いてもらいたいというこの二つの場面、局面があるということで話を伺っておりました。これからの地域で行う支援というときに、やはり皆さんが被害者の方ご遺族の方と接するときに、その辺りをどのようにすればいいのかというところを少し考えていければと思っております。
まずは、私が支援をしている中で、やはり被害者の方は、事件のことについて何度も警察や裁判の中でお話しをしなければいけない。繰り返し話すことが負担になるというお話を聞くことがあるのですが、渡邉さんのご経験だとこのあたりいかがですか。
(渡邉) 私は被害者支援をしている方たちのお話を伺って、今は本当に少なくなっていると思いますが、やはり横の繋がりですね。窓口が変わると、またあの事件のことを最初から話さなくてはいけない。そうしなければ書類が作れないとか、その方が理解していただけないということで、すごく心が痛むということを伺いますが、やはり遺族はその事件や事故で深いダメージを受けて、すごいショックを受けてそこで思考が止まるのですね。でも現実に事件としてやっぱり調書も作らなきゃいけない。いろいろな話をしていかなければいけないということも、自分では少しはわかっているのです。だから一度ぐらいはお話をするけれど、その窓口が変わって、また詳しい話を最初からしなければいけないということは、非常に負担になるのです。
それはどうしてかというと、自分の事件や事故、私のことを軽く扱われているのではないかと思うのですね。軽く扱われているから、何度も何度も同じことを平気で聞く、こちらの身になっては全然考えてくれないということが、すごく負担になっています。やはり何度も事件のことを聞かれると、ショックはよみがえることになりますから、それはもう避けていただきたいということです。
私の被害者支援グループの説明の中で、少し説明が足りなかったことに気がつきました。先ほど、川崎の方も、カウンセリングの相談は何回かしたら、それでおしまい。警察もいろいろ被害者の支援をするけれど、刑事裁判が終わったら、そこで相談もできなくなってしまう。被害者支援センターも、相談回数が何回かということが決まっていると言っておられましたが、私のところでは、長い方は3年以上カウンセリングを受けておられます。簡単に事件から立ち直れないわけです。なぜそうなるかというと、普通は何もなくても、やはり私が話したように、命日とかお盆とか誕生日とかが来ると、頭が混乱してものすごくつらい。でも話す人がいない、家の人にはやはり話しにくい。家の人同士はなかなか話せないのですよね。だからピア・神奈川では、何年でも、5年前の事件でも、5年前の事故でも、いつでもこちらに伺って話していいのです。その間、休憩があっても、またお話していただいてもいいのですということを話したかったと思います。
(服部) ありがとうございます。今の渡邉さんのお話の中で、やはり同じことを何度も聞かれることで、より自分が軽く扱われているのではないか。それは何かすごくそうだなと感じました。
しかしながら、行政手続きを行う上で、何度か同じお話を聞かなきゃいけない場面は、どうしても出てきてしまうとは思うのですが、この点上野さん、川崎市として何か留意されているようなことっていうのはあるのでしょうか。
(上野) 本市としては被害に遭われた方が様々な手続きを行う際には、先ほどからお話あるように、事件の話を何回も説明することが、つらいという話を聞いております。また、聞き手側によってはやはり、何気ない言葉が傷つけてしまうというような話も、伺っております。
本市においては、支援相談窓口で支援する際には、ご本人の了承をいただいた上で、手続きをする関係部署、相談をする部署も含めて、事前に説明し、それぞれの窓口に行くことなく、手続きでいうと区役所が中心になるのですけれども、区役所の会議室等を確保した上で手続きをその場で一括で終わることができるような形を取り組んでいます。
これらの手続きをスムーズに行うには、区役所、市役所がございますが、そういったところの連携というのがやはり行政内ですけれども必要になってくると思っております。市全体の職員が考えていかなければいけないことではありますが、まずは窓口の職員が、犯罪被害者等支援条例および支援内容についての理解を深める必要があるのではないかと考えています。
各区役所においては、独自で窓口の接遇研修をやっているのですが、そういった中に被害者の置かれている状況ですとか、認識っていうのを深める研修というのを、これから組み入れて実施していきたいなと考えているところでございます。
(服部) ありがとうございます。やはりどうしても行政手続きの複雑さという点で、いろんな窓口で次はこっちということで、特に人が亡くなられたときなんていうのは、行う手続きが多いので、そのためにいろんなとこに行くっての負担かなと思っておるところですが、今のお話だと、1ヶ所でお話を伺えば、そういった手続きをまとめて執り行っていけるというのは、被害者であったりご遺族の方の負担軽減に繋がるのではないかなと思います。
ただですね、支援センターの方にお話を伺う際は、いわゆる行政手続きの場で話すお話よりも、いわゆる直接支援であったり、カウンセリングであったり、先ほどの支援メニューをお話していく上で、より被害の中身について踏み込んでお話を聞いていくことというのが出てこようかと思います。そういったときに支援センターさんの方ではどういったところ、今度は深いところの話をしたりしなきゃいけないという点についてどういったところを留意されておられるのでしょうか?
(永野) 私の方から被害者の方からの電話相談等を受けたときの対応について、特に電話相談の窓口での対応について、日頃から相談員の方に指導しておりますことも含めて、お話をさせていただきたいと思います。
まず、相談者からの電話については、丁寧に話を聞き、相手の立場になって親身になって話を聞くということに努めるよう指導しております。やはり被害者の方は藁をも掴む思いでこのサポステに電話をかけてこられております。そういった被害者の方の心情を当然汲んで、使っていい言葉、使ってはいけない言葉、その言葉を選んで対応しなさいというようなことを研修などで指導しております。
やはり今、課長がおっしゃったように、その人によってその言葉が非常に重くのしかかる、それから受け流すことができない。でも相談員の人はある面では、「なんでこの言葉が。」と後々から反省するというような部分もあります。だからこそ、相手の話を聞きながら、電話相談で相手の顔は見えないのですけど、相手の被害の状況、それから置かれている立場、そういったものを踏まえて、言葉遣いには気をつけるようにということと、先ほど申し上げましたけど、相手の立場になってじっくりと傾聴に努めるということになります。
そして、やはりセンターとして、センターというよりもこれはサポステになります。要するにサポステの相談の中において、やはり話の内容からすると、ちょっと電話相談の部分についてはまたちょっと後ほどお話をさせていただきたいと思っていますけど、要するにサポステで対応できる案件と対応できない案件があります。
サポートステーションにおいては、基本的には刑法犯の身体犯の18罪種プラス交通事故の、要するに重症、それからひき逃げ、死亡事故等が、サポステの案件になっています。そうすると、やはりそれに満たない、その対象にならないものについては、センターで、サポステとしてそれを対応できないと、じゃあどうしたらいいのかと。その対応の仕方については、後ほど電話相談という部分でお話をさせていただきますけど、そこで一番大事なのは、他の機関にその紹介をする際に、どうしたらいいのかと。一番簡単なのは、これはサポステの案件じゃありません。他に電話してください。でも先ほど申し上げたように、本当にセンターだ、サポステだったらどうにかしてくれると、そういう被害の状況を訴える被害者、その声を、そういった形でできるかどうか。
実際には、犯罪被害者の心情といったものをご理解いただいてない。要するにどことは申し上げませんけど、やはりそういった窓口の方がいらっしゃいます。どうするか。サポステのパンフレットがありますから、ここに電話してみたら。でもサポステの案件じゃないのですよ。サポステに電話されても、それを対象として支援をすることができないのですよ。そうすると、被害者の方や相談者の方はどう思うか。言葉は悪いのですけど、たらい回しになるのですよ。だからお願いしたいのは、そういうふうな窓口を開設されるところの担当者の方は、この被害者の主訴、何を訴えられているのか。経済的な部分なのか、法律相談をしたいのか、心のケアをしてもらいたいのか、カウンセリングを受けたいのか、そういったものをしっかりと聞いていただいて、くれぐれも被害者の方がたらい回しにされたというふうな印象を受けないような形で対応していただきたい。
そこで当センターとしてはどのようにしているか。センターとしても、当然ながら今申し上げたような形でできない部分もございます。そういったときに頼りになるのは、各市町村が制定している被害者支援条例なのです。日常的な、給食の手配だとか、それからヘルパーさんだとか、それから見舞金、支援金と言われる経済的なそういう支援については、これはセンターとしてもサポステとしてもできません。やはりそれができるのは条例を制定した市町村においてできる話です。
それから、当センターの職員に対しては、相談者の方に了承を得て、住所なり、電話番号をお聞きして、折り返し電話をさせてもらっています。その間に例えば、川崎市は条例がありますから、こういった被害者の方、川崎市に居住の方がこういったことを言って、相談に来られました。川崎市の方で対応できますか、相談に乗っていただけますか。そういった形で窓口と連絡先を確認して、とりあえずお話は聞きます。というようなことで川崎市の担当の窓口の方には、相談者から聞いた住所、電話番号、お名前、こういったものをお知らせして、こういった方が電話あると思いますから、内容的には主訴というのですけど、こういったことを希望されています。そういったことでお話をじっくり聞いていただけますか。という対応をさせていただきます。
サポステとしてもできることとできないことがあります。そして大事なことは、できないことをあえて引きずるような形で、できるような希望を持たせることもこれは厳禁です。きちっとそれを専門的にやっているところに、今言ったような形でしっかりと紹介をしていく。それが大切じゃないかと思っております。まさしくそのことが二次的被害を発生させないようになると思います。
被害者からの電話を受けたところで、一旦電話を切って、事務局同士がやり取りをして、窓口同士で連携をとれば、とりあえずお話を聞いていただいて、ただ、そこで話を聞いてできるかできないかとの判断はありますけど、とりあえずは何かの条例の部分、それから通常の行政がやっている業務の中でここの部分でどうにかできないかという話はできると思います。
私はそれこそが行政だと思います。だからこそ、被害者支援条例が市町村で制定され身近な基礎自治体で対応していく、これがベストの被害者支援ではないかと思っております。
(服部) すいません。少し次の部分のところの話になってきているので、一度ここで切らせていただきます。
今のお話の中で、被害者の方があまり進んで話をしたくないという観点においては、今の支援センターさんのお話では関係機関と連携して、情報共有することによって、先ほどの川崎市さんと同じように、同じこと何度も話さないで済む、かつ、その大事なことを聞き漏らさないようにするというような工夫がなされているかなというふうに感じております。次のスライドに展開していただきたいと思います。
今度は被害者の方が話したいと思ったときに、その時、支援者としてはどうするのかということのお話を伺えればと思います。
私も支援に携わっている中で、特に人が亡くなった事案の場合、亡くなった方のことを聞くのは、負担になるのかなと思って接することが、支援当初はあったのですが、やはり支援を続けていく中で、逆にそのご遺族の方が亡くなった方のことを、むしろ積極的に話をしてくれる場面というのも、触れることがあります。それは後々になって、お話を伺うと、この事件の話を人に話すのは嫌だと思うけれども、支援をしてくださる方は、私のことをよく知っているだろうから話しても大丈夫かなと思って話せたというような言葉を聞いたときに、何か自分の中で目に見えないですけど、支援というものができたのかなと感じたこともあります。
今度は渡邉さんご自身の傾聴というところも踏まえてお話を伺うときのスタンスとして、大事なことというのはどういったところなのか、先ほどの基調講演でもお話いただいたところであろうかと思うのですが、この点を渡邉さんにもう一度お話をいただいてもよろしいですか。
(渡邉) 今のお話では、支援者として話をする場合と、それから私達のような当事者として相談を受ける場合と、それから民間の普通のお隣同士の方たちが話をする場合という3者の場合があるのですけれども、私達は聞く立場で、こちらが質問する立場ではないということです。近所の方でも、絶対にこちらからどうだったの、事件はどうどういうふうになっていくの、裁判はあるのなど、そういう話はもう本当に迷惑というか、もうあなたに何の関係があるのという話になるので、当事者の話すことを聞く。傾聴ですよね。そういうスタンスが大切です。
私が一般的に被害者支援をしている上では面談ですね。電話相談ではなくお会いしてまず自分の自己紹介をする。私はこういう立場のこういう当事者で、こういう仕事をしていますよと、それから必ず守秘義務、ここで話したことは絶対にどこにも漏れませんよというお話をして、安心させてあげる。そしてその次に、やはりその被害者相談にみえるということ自体はもう胸は自分のことで山盛りになっているのですね。だからそのことをちょっと落ち着かせるために、先ほどもお話しましたけれど、すぐに頭で答えられる、身近な話。今日は何時に起きましたか、今日はここにお一人でいらしたのですかとかというと、必ず自分で答えられる。そういう話をして5分ぐらいの間に、その相談者とこちらの対応者との信頼関係を作るのです。
やっぱり遺族は、すごい負のエネルギーが強くて、私を刺すように見ます。初めて相談にみえられる方は、どういうふうに見るかというと、この人、私の重大な話を聞いてくれるような人かしら、理解してくれるような人かしら、本当にわかってくれるのかしらという思いがすごく詰まっているのです。だから必ず、簡単に答えられる質問をして答えさせてあげて、向こうから、今日は相談に乗ってくださいというような話になるまでちょっと時間をおきます。しばらくすると自分から本題を話し始めます。そうしたら、ゆっくり話をさせて、せかすことはしません。混乱しているため話がこっちに行ったりあっちに行ったりと話しますけれど、一生懸命聞きます。そこで長く話をしていて、もう本当に気の毒だな、かわいそうだなというふうに自分で思ったら、自分も涙を流したらいいのです。私は涙を止めてはいけないというふうに習いました。そしてもう本当に傾聴、寄り添う姿勢ですね、それから寄り添う心です。そして、本当に立ち直るには長い時間がかかりますよということを言って焦らせない。焦らないで何度も何度も話をしていいのですと言って、安心させてあげるのです。言葉には出さないけれど信頼関係ができたならば、私を支えてくれているのだ、何でもこの人には話していいのだというような関係ができたら、本当にいいと思います。
言ってはいけないことそれは、自分の倫理感、こうしなければいけない、こうするべきよとか、倫理感は絶対に言ってはいけません。まして、当事者でない人は、あなたの気持ちがわかりますという言葉は絶対に言ってはいけません。わかるはずがないと私も思っています。経験をしてない人に、気持ちがわかるはずがありません。それからできない約束というのは絶対してはいけません。私たちにできることは精神的な負担を減らすことと、情報を提供することぐらいしかできないけれど、何度でも来ていい、それは拒まないから安心してくださいということは言います。
また、一番大切なことは、そういうときに引っ越したいとか、もう離婚したいとか、そういう方がたくさんいらっしゃるのですが、この話のときには大きな決断は決してしてはいけないということを伝えます。
そしてまた話していくところで、被害者遺族の求めている支援、この人はいったい何を一番支援として求めているかということに私達は気づいて、それに当てはまるその情報なり機関なりを伝えていかなければいけません。
最初に来た方は2時間ぐらい話しています。その方たちの話を、うんうん、もちろんなど、いくら傾聴だからといって、聞いているだけではないのです。必ず相手がその中で、本当に悲しいのです、本当につらいのですと言ったら、うんうんというふうではなくて、それと同じ言葉を、角度を変えて返してあげるのです。そうですよね、本当に悲しかったですね、本当につらかったですねとそれだけでいいのです。それだけで私の言葉を、私の悲しみをこの人はちゃんと聞いているというふうな答えになっているのですね。そういう対応が必要です。
涙もたくさん流しますから涙を拭くものを持ってない人は手でこうやって拭いていますけれど、ティッシュはその人に差し上げてはいけません。ティッシュの箱を置いて、自分でティッシュを取る。そのことが支援になる一歩です。ともかく、自分で何かを思って何かを行動する、それの一番初めが、そんな支援になりますが自分で判断して行動する支援が大切です。
(服部) ありがとうございます。すいません先ほど永野さんの話を遮ってしまったのですが、先ほどの点を踏まえて、支援者として携わる中でいわゆる傾聴の観点から、留意されていることをお話いただいてもよろしいですか。
(永野) 今、渡邉さんの方からいろいろと話がありましたが、重複する、かぶる部分がありますけど、私の方も、やはり被害者の方というのは一人一人が置かれている状況なり、立場が違うということを認識して支援に当たることが重要だと考えております。
同じ被害者といっても、やっぱり希望するその支援内容は異なります。そういうことをやはり早く把握して、この被害者がどのような希望を持ってらっしゃるのか、というようなものをやはり早急に把握するというか、理解するというかそれが大事ではないかなと思っております。
そして被害者に向き合う姿勢として、重要であるのは渡邉さんも言ってらっしゃいましたけど、寄り添う心、これしかないと思います。これが全てであると思っております。被害者の心に寄り添う。被害者の心に寄り添うということが重要であると考えております。犯罪被害にあって間もない被害者の方は何を言っても記憶に残っていません。だから根気強く、必要なことを何回も言うことも場合によっては大事かもしれませんが、「何かありましたらこの私にいつでも言ってください。」という一言が心に残るように、被害者に寄り添うのじゃなくて、被害者の心に訴えかける、被害者の心に寄り添うという意味から大切じゃないかなと思っております。
被害者の気持ちを誰よりも理解するように努めることであり、被害者にとって、被害者の側にいてくれるということが救いになるのではないかと。こういう言い方がいいかどうかわかりませんが、やはりある面ではですね、センターの支援として行っている直接支援、こういった支援員は、べったりと被害者に寄り添うということもある面では必要です。でも、被害者が必要としているときにスーッと傍から声をかける。要するに、空気みたいな存在として、いるのかないのかわかんない。でも必要としているときにそばにいてくれる。これが大きな安心感に繋がるんじゃないかと、そのように私は思っております。
事情聴取なり、裁判に出廷して意見を述べることができ、そのことで被害者の利益と権利を擁護することができると考えております。まさしく被害者支援の目的というのは、被害者の利益と権利を守ることであります。被害者が安心できる環境や雰囲気を醸し出すことができる支援は素晴らしい、こういったセンターとして、こういった支援員を多く育てなければいけないと、それも被害者支援センターの使命であると考えております。
そして、何気ない一言が被害者を傷つけてしまうこともあれば、小さな行動が被害者の助けになる場合もあります。だからこそ被害者支援にマニュアルは必要ないと考えております。支援員が不安な顔をしたり、態度に表せば、おのずから被害者を不安になりパニックに陥ることもあります。私が考える被害者支援とは、被害者にとって何が一番重要か、被害者の利益を一番に考えた対応をとることが重要であると信じております。当たり前のことを当たり前のこととして行うことが、被害者の希望にかなった支援ではないかと考えております。
また、被害者支援はできない、ということを考えるのではなく、どうしたらできるか、どうしたら被害者が平穏な日々を1日も早く取り戻すことができるか、常に考えて、被害者に寄り添う気持ちに従って、行動することが大事じゃないかと思っております。また、被害者が安心できる環境を構築するにはどうしたら良いかということであります。
例えば被害者が平穏な日常を取り戻すためには、加害者の存在が大きいと考えております。刑期を終えて加害者が出所してくると、被害者の方は大変不安になります。自分の居場所を探すのではないか、報復されるのではないかと心配で心配でたまりません。だからこそセンターとしても関係機関と連携して、加害者の更生の参考になればと、加害者の更生には被害者の声を踏まえて、真に被害者に対する謝罪が必要であると。そういった機会を、機会あるごとに話をさせていただいて、被害者の現状について、加害者、それから加害者の更生に携わる人たちに理解をいただくような活動も進めさせていただいております。以上でございます。
(服部) ありがとうございます。それでは、最後のまとめのところに移させていただきたく思います。今回、パネルディスカッションのテーマの「地域での支援」、ということに関しまして大切なことは絶えない支援、絶え間ない支援ということがでありまして、今いただいた皆さんのその関係機関への支援というのは当然あるのですけれども、最終的には地域に住んでいる皆さんが被害者の方と接する中で、どのように支援ができるのかということが絶え間ない支援という観点から重要ではないかと思います。
ここで最後にパネリストの皆様から、地域の皆様に被害者支援として望むことについて、渡邉様から一言ずついただいていってもよろしいでしょうか。
(渡邉) 今日の被害者支援のまとめになりますけれど、地域の被害として、やはり被害というのは絶対人を選んでくれないということです。それはいつ自分の身に起こるかわからない。今日のお話を聞いてくださった方は、きっと自分でもシミュレーションというか、自分が被害者になったらどうなるかということは、ちょっとお考えになっていると思うのですけれど、やはりこの話を聞いてくださった方がそれを周囲に伝えていただけるということがすごく大切だと思うのです。そしてやはり命は自分だけのものではなく、本当に大切なものなのだということをお話していただけることがあればいいと思います。
やはり今日お話を聞いてくださった方が自分に知識があれば、少し冷静に対応できる、自分の受けたい支援にすぐにたどり着けるということもあるのだなということにも気がついたと思うのです。ですから私の最後のお願いは、一つ一つ本当に立派な独立した被害者支援になっているのですけど、その被害を受けた人は意外と、適切な自分が何の被害の支援を受けたらいいかということに気がつかない場合があるので、何か紙に書いた一覧にしたものがあって、こういう方はこういう支援がありますよ、心の支援だったらこことここがありますよ、弁護士だったら法テラスとかこういうふうにありますよというなんか大雑把なものでもいいのであればいいと思います。それを願っております。ありがとうございました。
(服部) 渡邉さんありがとうございます。続いて永野さんお願いします。
(永野) 私の方からも、犯罪被害者等支援条例の制定の必要性についてです。
これは川崎市さんは4月から施行されていますけど、やはり条例があることによって被害者の方、それから地域の住民の方が救われるというようなことがあります。
当センターが進めている漏れのない支援というのは、要するに途切れのない支援プラス、漏れのない支援というのは、サポステが18罪種、これから漏れる、例えば神奈川県迷惑行為防止条例の取り締まりの対象である痴漢、盗撮。これはサポステの案件ではありません。そうするとサポステでは支援できませんと。この痴漢なり、それから盗撮が強制わいせつとどこが違うのだと。女性の方は被害者の方が精神的ダメージを受けるのは同じだと思います。だからこそ、これはセンターとして今後やっていかなければならない。
やはりそれによって、何が重要になってくるかと申し上げますと、川崎市さんは、逆にですね、罪種に特定はないのです。単純に言うと全ての罪種ということになります。刑法犯の18罪種というようなことはありませんので、だからこそ、そういった被害に遭ったときに、川崎市内の方が、どこの区であっても川崎市さんの相談窓口に電話して、こういったことで来ているのですけど法律相談希望されています、カウンセリングを希望されます。こういった形のお話ができるのです。
これが重要なのです。何回も言いますけど、神奈川県は33市町村があって、既に条例が制定されているのは6市町村のみです。やはり神奈川県が、条例を平成21年に作って、そのサポステのシステムが非常にうまくいっていたのですね。全てにおいて網羅できるような形で、警察に被害届が出される。その被害届を県が吸い上げて、それでサポステの支援調整会議にかける。そうすると、警察が受けてくれるのだから、何で市町村が条例を作る必要があるのですか。そういう話を伺っております。そうじゃないのです。基礎自治体である市町村が、地域で被害者支援をやるのが基本になると思います。だからこそ条例が必要なのです。
犯罪の被害に遭った方が、どこに住んでいるかによって支援を受けられるか受けられないか、これは非常に不合理です。来年また一市なり一町なり、そういうところでの被害者支援条例の施行が予定されているとも聞いております。それを入れても、8市です。早く作っていただきたい。今日こちらに来ている方が川崎市以外の方がいらっしゃるかどうかわかりませんけど、住民の力によって行政を押し上げていくというようなことも大事ですし、それから支援センターとして、今後、今言ったような形で、住民の方が不合理を感じるような行政はいかがなものかと。あくまでもお願いベースですが、市の方とお話する機会があったらそのようにお願いを申し上げております。そういうことで、1日も早く条例を作っていただきたい。
また、これは神奈川県をはじめとして、既に条例を制定している市であっても、条例は作ってしまえば、あとはもうそのままでいいのだよということはありません。被害者のニーズは日々変わっております。そういうようなことで、被害者のニーズに合わなくなった条例については、いつでも改正をお願いしたいと、これもあわせてお願いしておきたいと思います。私の方は以上です。
(服部) 永野さんありがとうございました。最後に上野さんよろしくお願いします。
(上野) 川崎市犯罪被害者等支援条例第5条でですね、市民の責務を定めている条文がございます。そこでは犯罪被害者等が地域で安心して生活するために、犯罪被害者等の置かれている状況について理解を深め、二次被害および再被害を防止することや、地域社会で孤立させないことを市民に求めております。住み慣れた地域で暮らし続けるためには、やはり周囲の人の温かい支え、被害者の生活の直接的な支援というだけではなく、被害により、人や社会に対する不信感、信頼感が揺らいでいる被害者に対して大きな支えになると考えております。犯罪被害に遭った方の抱える、様々な問題について知っていただき、被害に遭った方がさらなる生活のしにくさに苦しむことのないよう、地域の皆様が温かく見守ってくれることを願っております。
また我々も、条例を作った、支援施策を作っただけではなく、本当に広くこの条例の支援を、市民の皆様に知っていただけるよう、周知するところを課題ととらえて多くの方に犯罪被害に遭われた方の気持ちですとか、どのような対応したらいいかというところを、やっていかないといけないとつくづく思った大会でありました。以上でございます。
(服部) 皆さんありがとうございました。私も最後にお話を伺っていて、最初に被害者支援の業務に私がついたときに、何で援助という言葉でなく支援という言葉なのかっていうのを先輩に聞いたことがあります。今日、皆さんのお話を伺いながら、やってやるのだという、助けてやるのだというものではなくて、あくまでも支える。それが寄り添うということなのだなということを改めて感じたところです。
いろんな制度があったり、支援の内容があったりはしますけれど、やはり大事なところというのは、寄り添うという、その気持ちなのではないかというふうに感じながら、今日のお話を伺っておりました。もう少し話を深めてお話できればなと思っていましたがコーディネーターである私の不手際で時間の管理が十分できておらず、議論が尽くされないまま終わってしまうところがあろうかと思いますが、その点ご容赦ください。
今日の話を通しまして、皆様が被害者支援に携わっていただき、広く途絶えない支援が実現されるようご協力いただけますと幸いです。それではこれでパネルディスカッションを終了させていただきます。パネリストの皆様ありがとうございました。
また会場の皆様、配信をご覧の皆様も長時間お付き合いいただきありがとうございました。