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犯罪被害者等施策講演会(第6回)


日時:平成25年3月25日(月)14:00~15:00
場所:中央合同庁舎4号館6階共用620会議室
テーマ:「犯罪被害者としての私」と「犯罪被害者支援の実情と今後の課題」
講師:平井紀夫氏(認定特定非営利活動法人 全国被害者支援ネットワーク 理事長)
平井紀夫氏 第6回犯罪被害者等施策講演会の様子

○講演要旨
資料1 「犯罪被害者としての私」と「犯罪被害者支援の実情と今後の課題」(PDF形式:403KB)別ウインドウで開きます
資料2 ホンデリング ~本でひろがる支援の輪~

皆様、こんにちは。今、御紹介賜りました平井でございます。今日、こういう形で、内閣府の主催の犯罪被害者に関する講演会という場で私どもの活動のお話ができることを大変光栄に思っております。本当にありがとうございます。

後ほど御紹介いたしますが、私どもは全国の都道府県に活動の拠点がございます。日ごろは、本当にいろいろな面でお世話になっていることと思います。深く御礼を申し上げます。

今、御紹介がございましたように、私は犯罪被害者ということからこの支援活動に携わりました。そういう意味合いで、今日は、私の経験を少しお話しさせていただいて、その上で、日本の犯罪被害者支援の実情というものを御紹介申し上げたいと思っております。

時間が1時間30分ということで、お話は長くても1時間10分ぐらいということでございますので、少し端折る場面もあるかと思いますけれども、私が今考えていることをできるだけお伝えしたいと思っています。

私は、先ほど御紹介いただきましたように、オムロンで42年在籍をしている後半の頃に、長男が北京で殺害されるという事件に遭遇した、被害者遺族の一人でございます。私の場合は1996年でございましたので、もう17年になるわけでございますけれども、正にこの犯罪被害者等基本法に書かれておりますように、自分が被害者になるということはそのときまで全く考えたこともありませんでした。

長男が中国への旅をしておりまして、毎週日曜日には「今ここにいる」という電話が自宅へ入ったわけでございます。丁度3週間目の日曜日の午後6時ごろですが、息子からの電話だと思って電話に出ましたら、「いや、外務省です」ということで息子の死を告げられたわけでございます。今日も外務省から海外邦人安全課の方が御出席でございますが、当時は、邦人保護課ということでございました。何をどう考えて、何をしていいのか分からないときでしたけれども、外務省からの電話一本で、確か、携帯電話の番号を教えていただいて、「何かあればここへ全て相談しなさい」と。24時間のホットラインでございます。

私はこのとき本当にいろいろなことがございました。特に、外務省から電話が掛かった直後から翌朝の2時まで、マスコミが我が自宅へ、そして電話が鳴りやまない。ですから、親戚へ電話をすることも、会社へ電話することも、その合間にするということで、家族全員がマスコミ恐怖症に陥ったぐらいでございました。ですけれども、本当に命の綱と言いますか、この外務省のお電話で、夜中もいろいろなことを御相談しました。翌朝5時には自宅を出て北京に向かったわけでございますが、その間、本当に救われた思いでございました。誠にありがとうございました。

実は、そのときには「殺害された」というようなことは言われませんでした。恐らく、まだ捜査中ということで、「死亡した」ということでございました。そして、「首を切られている」、「財布がない」、この3つを仰いました。ですから、私たち家族としては、「確かに死亡した」とお聞きしているわけですけれども、まだ生きているというような気持ちでございまして、朝、空港に向かうときも、まだそんな気持ちでありました。

しかし、今振り返ってみますと、当日の夜は、亡くなった前提で親戚に連絡したり、会社、私の上司が社長でありますけれども、社長に状況を説明したりということはきちっとやっているわけでございますが、翌朝、空港に向かうときは、「まだ生きている」と。ただ、空港で朝刊を見ましたら、各紙で記事が大きく報道されておりました。そこで、これは間違いないということで会社の部下に電話をしたわけでございます。

その経緯は、丁度去年11月の朝日新聞で取り上げていただきまして、御紹介をしていただきました。

そういったことで、自分自身としては、何をしているか、何をして良いかということが分からないというような状況。ただ、たまたま私どもの会社は北京においても事務所がございました。事務所の人たちの全面的な支援と外務省・領事館の御支援で、息子と面会をし、確認して、そして当局の取調べと言いますか、そういうものを済ませるということができたわけでございます。4日後に帰国して、そういう意味では、正にエスカレーターに乗っているような感じでございます。会社の方でそういった準備も全てしてくれました。そして、告別式を終えることができたということでございました。

今、幾つか思い出しますと、昨日も、「今日この話をしなくてはいかん」と思いますと余り眠れない。十何年経っても被害者はそのときに戻ってしまうと言っても過言ではないと思うのでございます。

今も私が思っていますのは、「なぜこの旅行を止めなかったのか」。親戚からもそういうことを言われました。ですけれども、私は、仕事の関係で、年間40~50日ぐらいは海外へ行っておりましたので、海外へ行くことの抵抗も余りありませんでした。むしろ、自分の子供がこうして海外へ行って、そして、全く違う言葉と、ものの考えと、文化と、その背景を理解するということはこれから本当に役立つと固く思っておりましたので、中国へ行くということも何の抵抗もなく、「気を付けて行ってこいよ」というぐらいの気持ちで送り出したわけでございますが、本当にそれが良かったのかという自分の責任と言いますか、それが今でも残っております。

また、私の家族は、被害直後というのは混乱しておりますので、中々系統立てて御説明できませんが、例えば、1週間、10日経つと、買い物に行かなくてはいけない。で、妻が買い物に出掛けました。そこで知り合いの方に出会って、「あっ、お元気なんですね」と言われたわけでございます。これが大変ショックでした。何とか家の食事も作らなければいかん、何とかの思いで出てきたのに、「お元気ですか」と言われた。今考えてみますと、恐らくその方は、病気になって寝込んだり、そういうことをせずに良かったですねという気持ち、あるいは励ましの気持ちで多分そういうことを仰ったのだろうと思うのでありますけれども、被害者本人は、そういうことを言われただけでも非常なショック。今もそういうことを言います。

私どもも家庭でいろいろな話をして笑うわけでありますけれども、「笑い声が聞こえる」と近所の方から言われました。これも、伏せ込んでいるだけではなくて、また元のようにと思っておられるのだと思うのですが、我々としては大変なショックであったというようなことがございます。

今日はこういったお話をいろいろ申し上げる時間はございませんが、参考までに、内閣府でこの被害者について調査されたものを私なりに分かりやすく整理したものを資料として準備しております。その被害直後、どういうところで精神的に被害を受けたかというところがございます。正にこの調査のとおりであります。ですから、何気ない一言が傷つくということであるわけでございます。

皆様方は、犯罪被害の関係、あるいは安全・安心の関係のお仕事をなさっておるわけでございますので、そういったことについてはよくよく御存知かと思います。しかし、一方では、私がこうしてこういう活動をして、現在72歳でありますけれども、そういうことをできているというのは、実はこの17年間、多くの人に支えられたということだと私は思っています。当然、犯罪被害者も、正に今まで歩んできた人生を加害者から全く否定をされて、これから全く異なる人生を歩めというような事態に陥れられるわけであります。ですけれども、被害者自身が自分の人生の現実を自ら受けとめて、自分が一歩前へ進まなければ、被害回復はないと私は思っています。私たちも犯罪被害者支援活動をしておりますけれども、その支援があるから犯罪被害者の方が立ち直れると言いますか、被害が回復できるのだということでは決してありません。犯罪被害者自身が自ら立ち上がると言いますか、自分が自分の人生を歩み始める、それを被害者支援がどう支えていくか、あるいはそれにどう寄り添っていくのかという活動でございます。

私はいつも「世界に一つしかない犯罪被害者支援」ということを申し上げています。それは、犯罪被害者の方も、例えば50歳としましょうか。そうすると、50年間歩まれたその人生というのは世界で一つしかないわけです。そして、犯罪被害者を支援する方ももし50歳としますと、やはり世界で一つしかない自分の人生を歩んでこられた支援者であります。支援者が犯罪被害者の回復のために寄り添って支援活動をする。これは世界に一つしかない。何か答えがあるものでもないわけであります。自分自身が創り出していく。被害者支援をされる方が創り出していく活動であります。私は極めて尊い活動だと思っています。

私どもの団体は、大多数がボランティアであります。これが尊いと思います。これは、内閣府の別の調査でございます。被害者の方がどこを頼りにしているか。今日はこの資料を付けておりません。大変恐縮でございますけれども、関係される地方自治体なり国の機関は非常に少ない。被害者が頼りにするという所は非常に少ないのであります。当然、警察であるとか、そしてまた、我々のような民間活動という所は、被害者からそれなりに高い回答を得ておりますけれども、極めて少ない。我々報酬をもらって、仕事としてやっているということではなく、報酬ではなくて、自分の気持ちで、ボランティアでやっている。ですから、被害者の方もそれは輝いて見えるわけであります。

ちょっと脱線しましたけれども、私自身がこうして今ここに立っていられるのは、最初は、外務省の邦人保護課の電話からであります。そして、北京へ行けば、会社の仲間たちであります。関西空港へ帰ってきましたら、会社の仲間たちであります。家へ戻れば、近所の人たちであり、親戚の人たちであります。

そして、私は、2週間ぐらいは会社へ行けませんでした。もう辞めようかと。この人生、誤ってきたのではないかと思いました。いろいろ相談をして、やはり続けるべきだということで再スタートしたわけですが、それでも2週間休みました。

当時、私は「IR(Investor Relations 投資家向け広報活動)」と言いまして、世界の投資家に我々の業績を説明する仕事をしておりました。10月の中ごろにはヨーロッパ。ヨーロッパは、イギリス、フランス、イタリア、スイスに投資家がおられますので、そこを2週間ぐらい訪問する。さすがに1カ月後のこの「IR」には行けませんでした。それは、妻のこともございますし、そこまで回復はしていなかったわけですが、11月の下旬にはアメリカ。アメリカの場合は、当時、ニューヨークとボストンであります。あるいはサンフランシスコ、ロスアンゼルス、もう少し言えば、シカゴ、デンバーという所に投資家がおられます。11月には私はまいりました。ですから、2カ月ぐらいは、いくら復帰したといっても復帰にはなっていない。そこで、「経営トップであるのに」というようなことも、直接は聞きませんでしたけれども、間接的には聞きました。「そんな重要な仕事をしている人が2週間も休むとは何事だ」というのは、私もそういう立場でなければそう考えたのではないかと思いますけれども、そういうようなことでありました。職場の仲間たちのいろいろな支援がございました。今ここで詳しく申し上げることはできませんけれども、そういった支援のおかげで、私自身も何とか仕事を継続することができたということでございます。

そこで、私は、新しい人生、何を考えたか。時間がございませんので、一言で申し上げますと、「息子とともに歩む人生だ」と。今まで私は、率直に申し上げて、会社の仕事を第一と言いますか、それが全てでありました。ですけれども、これからはそうではない。会社の仕事も、四六時中そうではないのですけれども、重要なときどうするか。この犯罪被害者支援に携わるのはどうかというのも実はそうであります。恐らく、私がこの被害に遭っていなかったら、それは受けていなかっただろうと思うのです。「この活動を京都でスタートするから参加してくれ」という要請を受けたわけでありますけれども、それはそういう自分の人生観からこの活動に携わるようになったということでございます。全て「息子とともに歩む人生」と思って、今もこういった活動をしているということでございます。

というようなことで、私の経験はもうこのぐらいにさせていただいて、もう一つのテーマ、「日本の犯罪被害者支援の実情と今後の課題」ということについてお話しさせていただきたいと思います。

全てを御説明いたしますと時間が足りません。できるだけ資料を用意させていただきましたので、皆さん方で御覧いただくとして、大事な所と言いますか、私が強調したい点だけをお話し申し上げるということで御理解賜りたいと思います。

私たちの犯罪被害者支援の活動というのは、1980年に日本の犯罪被害者の給付金が創設され、その10周年の記念シンポジウムというのが東京でありまして、そこで、大学の先生方が犯罪被害者支援についていろいろ議論をされた。そこに参加されていた一人の被害者の方がこのシンポジウムの最後に質問をされたところから始まるわけでございます。その方は、大久保恵美子さんという、富山の交通事故で御子息を亡くされた方で、この犯罪被害のことをいろいろと勉強して、アメリカにまで行って勉強されてまいりました。そこで手を挙げて、「私たち犯罪被害者は耐えることしかないんです。何か一歩からでも支援を始めてください」ということを訴えられたわけであります。壇上でパネリストとして登壇されていた、当時の東京医科歯科大学の山上教授が、その声に応える形で、1992年に犯罪被害者相談室を東京医科歯科大学の研究室でスタートされたというのが実は始まりでございます。私は、その1990年にそういった行動を起こされるというのは当時考えられなかったことではないかという気がいたします。そういう話は少し置きまして、そこからスタートしたということでございます。

東京でそういう支援がスタートしたわけでございますけれども、全国各地でそういう支援の輪が広がって、私どもの組織である全国被害者支援ネットワークという組織が1998年にできたわけでございます。ここで是非御理解賜りたいことは、我々の組織は、センターありきと言いますか、都道府県で支援組織が立ち上がっている。ですから、京都もそうでありますけれども、東京も、愛知も、大阪も、全てそれぞれで組織化されているわけであります。我々ネットワークがその組織作りに関与していると言いますか、支援をしてできた組織ではありません。むしろ、各県警本部のいろいろな御支援。京都もそうであります。一つのNPOなり公益法人を立ち上げるということは、データを始め、いろいろな準備をする必要がありますけれども、とてもボランティアではそういうことができないわけであります。京都も警察本部の大きな御支援を得て立ち上がりができたわけでありますけれども、そういった形でネットワークが全国の組織を立ち上げると言いますか、そういうネットワーク主導で立ち上げた組織でないということを是非御理解賜りたいと思います。

ですから、我々は傘団体でございます。何か指揮命令ができるかというと、センターに対してはそういう指揮命令というような権限は一切ありません。ですけれども、私は今、この組織内で申し上げていることは、もうそれが許されない時代。このグローバルな社会によって、アメリカも、日本も、アジアも、ヨーロッパも一つになっている社会が、傘団体だとか、組織形態がどうだとか、そういうことを言っていることは社会から許されないと思っています。私どもに我々の組織外からいろいろなお話がまいります。それは、全国の組織の代表として期待をしたと言いますか、そういう位置付けとして要請をされてきます。現状はそうは言っていられないと思うわけでありますけれども、1998年に設立をいたしました。

これは資料にございませんが、その翌年に権利宣言ということを発したと言いますか、これは今から考えますと、犯罪被害者等基本法の下敷きになると言いますか、全て盛られていることではございますけれども、この7つの権利があるのだということを主張したわけであります。このときには、組織的にはセンターが10ぐらいしかないときでありますけれども、社会に対しては、我々としては、犯罪被害者の権利というものを、これは恐らく、当時の山上理事長がアメリカ、ヨーロッパの実情と言いますか、それを御覧になって、日本でも権利宣言ということが必要だと思われたのだと思います。

そういった経緯から、あとは、皆様方は犯罪被害に関係なさっていますので省略させていただきますけれども、2000年に入って基本法ができ、基本計画ができ、今、第2次基本計画がスタートし、また内閣府の検討会が進められているということでございます。

これは日本の犯罪被害者支援の状況というものを私なりにまとめたものでございます。ヨーロッパ、アメリカの犯罪被害者支援とどう違うのかということを少し御紹介申し上げたいと思います。

先ほど申し上げましたように、日本では、1980年に給付金。これは1974年の、所謂、三菱重工ビル爆破事件というものが大きなきっかけになり、そして、市瀬さんという、自分の息子を殺害された被害者が全国の被害者を回って、一人一人この会に入っていただいて、そして犯罪被害をなくすという活動をなさってきた。そういう活動と相まって、1980年に給付金ができたということでございます。

その後、先ほど申し上げましたように、1990年代に、我々としては各地でセンターといいますか、各都道府県での被害者支援の拠点作りを進めてきたわけです。併せて、これは警察庁あるいは検察庁で、様々な犯罪被害者に関する取扱いの考え方というものを整理されて、そういったことを一人一人の警察官に徹底されて、犯罪被害者について、とりわけ配慮と言いますか、意を注ぐようにということを側面的にはしていただいてきているわけであります。そして、2000年になって、我々の組織が全国的に立ち上がりまして、併せて、先ほど申し上げましたような基本法ができて、いわば総合的な犯罪被害に対する施策がスタートした。

丁度この頃に、私ども、京都で行われた全国の研修会で、イギリスに「VS(ビクティム・サポート)」という組織がございますが、そこの初代の事務局長のヘレン・リーブスさんという方にわざわざ来ていただいて、この犯罪被害者等基本法についてお話をいただきました。イギリスの犯罪被害支援というのは世界で最もすぐれている一つだと思うのでありますけれども、その方がこの基本法を見て、「これは世界一の法律と言いますか、世界一整理されている」ということで本当に感激をされました。「あとは、その中身をどう充実していくか」というお話があったことを覚えています。それほど日本の犯罪被害者等基本計画というものは網羅されているということでございます。

毎年、犯罪被害者白書が出されていますけれども、そういう意味で、毎年、充実され、そして進められているということだと思います。我々から申し上げたいことはまだまだたくさんございますけれども、客観的に見ればそういうことだと思います。

そこで、これは皆さんのお手元にございますけれども、アメリカ、あるいはヨーロッパの補償制度とボランティアの全国団体の設立、そして、被害者に関する法律がどのようなときにできたのかというのを整理するとこういうことなのです。

ざっと申し上げて、日本は20年遅れています。言い過ぎかもしれません。10年か20年遅れています。ただ、網羅的にいうと、先ほど申し上げましたように、基本計画の全体像はそうではないと思います。中身がどうなのかということを考えていくのがこれからの我々の被害者支援活動だろうし、また、皆さん方もそれぞれの立場でどういう課題があるのかということを是非お考えいただきたいと思います。

もう御説明しませんけれども、こういう日本の経緯とヨーロッパのこういう歴史だけ見ても、我々として非常に遅れをとっているということであります。例えば予算規模で申しますと、これは2007年の内閣府の調査。丁度私が第1次犯罪被害者等基本計画で経済的支援に関する検討会の構成員の一員として、約1年半、議論に参加させていただいたときの内閣府の最初に出されたペーパー。円は今、安くなってきたと言われていますが、当時は130円ぐらいだったと思うのです。イギリスが約90億。95%は政府のお金であります。正に福祉国家イギリスだなと。イギリスは、御存知かと思いますけれども、ナショナル・ヘルス・サービスというシステムがありまして、医療費は国民全員無料。これは見直しが行われていますけれども、そういう国柄なのです。ですから、私も内閣府の検討会の一員として、このビクティム・サポートと当時のイギリスの内務省に参りました。そこで実際になさっていることを聞き、実際に見せていただきましたけれども、確たると言いますか、研修、マニュアル、認定方式をきちっとなさっています。正に国の一つの組織と言って良いぐらいきちんとなされています。

昨年も、それではイギリスはどうなっているかということでちょっと調べますと、その構造はほとんど変わっていないということであります。

フランスは、当時の資料で確か45億でございました。フランスの場合は、犯罪被害補償基金というのがございまして、国の外郭団体で補償する基金があります。ここで補償と言いますか、いろいろな支援をしています。そして、自ら、加害者から徴収していろいろなことをやるわけであります。お金を集めたり、全く違うシステム。ドイツはと言いますと、犯罪被害者は、そういう意味では、戦争で亡くなった、戦争で傷ついた方と同じだと。それはなぜか。世界で唯一、ドイツだけなのですね。犯罪被害は国家の責任だと。もっと言えば、警察の責任だということを仰っています。ですから、年金制度です。年金制度は極めて充実しています。それだけに、「白い環(ワイザーリング)」という我々と同じような犯罪被害者支援団体がありますけれども、ここは予算が数億程度で、正に我々と同じように国からの支援と言いますか。ドイツの場合は、交通事故の罰則金と言いますか、犯罪被害だけではありませんけれども、そこから支援をやっている。確か全体の17%ぐらいというお話でしたけれども、ドイツは少し様相が違うということであります。

それでは、どれだけの犯罪被害者を支援しているか。イギリスは140万人。びっくりです。日本は何人ですか。今、1万7,000人なのです。後ほど御説明しますけれども。これは、支援される数が多いからより充実している国だということでもないと思うのですけれども、非常に差がございます。アメリカでも数十万件。ドイツは、我々と同じぐらいで1万7,000件ぐらい。2006年時点でそういうお話でした。内閣府の我々の検討会でお出しいただいた資料に確かそういうデータがございました。

私自身もそういう形で犯罪被害者支援に携わってまいりますと、その国の社会保障制度、もっと言えば国民の考え方が犯罪被害者支援に反映していると考えています。これが典型的なのはフランスであります。フランスは、ボランティア団体が百何十万あって、正に自由・平等・友愛だと。自由・平等・友愛の原点は個人であります。被害者であります。被害者支援する人は自分であります。これが原点なのです。そういう仕組みで、犯罪被害者支援に対しても法務省が管轄されて、日本で言う都道府県ごとに認定をされているということであります。つまり、国民の様々なものの考え方、社会保障制度等の中で、この犯罪被害者支援というものも考えていかないと、地に着いたと言いますか、多くの人から納得の得られる仕組みにはならないのではないかというのが私の考えであります。そのような考えも当然ございます。全く異なる方もいます。私はそう考え、(全国被害者支援)ネットワークでそういうことを申し上げて、そういう組織を目指そうではないかということを申し上げているのです。ですから、アメリカ、ヨーロッパ各国の犯罪被害者支援の実情を学ぶにつけ、日本は日本らしい犯罪被害者支援活動というものを創り出していかなければいけないという結論であろうと。私はそう確信をいたしています。ネットワークは丁度この4月から第2期の3年計画をスタートさせます。そこではそのようにそういうことをベースに訴えているわけでございます。

時間の関係もございますので、次からは、お手元にございませんが、基本法あるいは基本計画について私が整理したものがあります。

これから20分ぐらいネットワークのことをお話し申し上げたいと思うのですが、細かなことは別にして、ネットワークの理念というのは3つございます。1つは、関係機関との連携。我々だけでできるというのは限られているわけであります。関係機関というのは被害者団体。もう一つは、被害者支援されているいろいろな団体、組織。これは、国、地方行政のいろいろな機関もございますし、民間団体もございますが、そういう連携ということを非常に重要視している。ですけれども、現在のネットワークの現状を申し上げますと、ここにはまだほとんど手をつけられておりません。これからここに我々としても力を注ぐというように考えています。

もう一つは、当然のことながら、犯罪被害者の被害回復・軽減であります。我々の組織からすれば、当然それが第一義的な目標であるわけであります。そして、基本法にございますように、犯罪被害者の平穏な生活を取り戻す。私は、先ほど冒頭で申し上げましたように、犯罪被害者が自ら自分の生活を取り戻すということにどう支援するかということだと思うのです。そのようなことをネットワークとしては掲げております。

こういうネットワークの理念がございます。目標というのがお手元にもあるかと思うのですけれども、これは基本理念で謳われていますように、全国どこでもいつでも被害者が求めれば支援に応じられるということを目標にしております。今、全国どこでもというのは、一応、組織的には全都道府県にございますけれども、都道府県によって、北と南、西と東に距離がある。京都もそうであります。我々、京都市にセンターがございますけれども、一番北の舞鶴まで行こうとすると3時間ぐらい掛かるわけです。被害者の方の所へ支援に行くということになると一日掛かりということでありますから、今、京都では北部に支援拠点を設けようというようなことでありますけれども、ビジョンとしてはそういうことを目指そうと。

ですけれども、考えてみれば、これだけ情報システムが進んだわけでありますから、私は、物理的な拠点も必要ですけれども、情報システムによって解決可能だと思っています。これからの仕事でありますけれども、何とか私の在任中にそれが見えるようにしたいと思っています。

そこで、方向性として3つございます。なぜこういうことを我々は掲げたかということでありますけれども、資料の背景にある一つは、私たちの組織というのは社会の中の一つの組織であります。個人もそうであります。支援をする人も、日本の社会の一員であります。つまり、日本の社会の個々人、人々、そして我々の組織という視点で、我々の在り方を考えなければならないと思っています。これは、私が引き継ぐまでの我々の組織の在り方と根本的に異なる。「根本的に異なる」というのは山上理事長に叱られるかも分かりませんけれども、大きく異なることでございます。それを私は強く打ち出しています。

というのは、もし旧来の在り方で、我々の独善と言うか、自分たちの考えだけでこの組織運営をしていれば、恐らく社会から見放されるだろうと私が思うからでございます。それはどういうことか。民主党のときには「新しい公共」ということが言われました。その前の自民党政権のときは、厚生労働省のホームページしか私は見ていませんけれども、日本の社会保障の在り方の提言の中に「自助・共助・公助」ということが大きく謳われていました。今、我々の組織は「公助・共助・自助」なのですね。これをひっくり返すと「自助・共助・公助」なのだと。個人もそうなのだと。被害者支援の皆様方が世界で一つしかない被害者支援を創り出そうと、自らが能力を高め、自らが経験を深めていかなければならないと私は思っています。このセンターはいろいろな研修があるから、そこで研修を受ければ、一応こういう研修が終わったから資格が与えられるということではないと私は思っています。

組織もそうであります。「公助・共助・自助」ではなくて。「自助、共助、公助」。自助というのはどういうことかといえば、大きくは、特にネットワークの場合、財政、財産状況であります。ほとんどが今、寄附に頼っています。それはそうだよと。これだけ社会に役立つことをやっているのだから。確かにそういう側面は強うございます。ですけれども、自分たちの組織は自ら資金を獲得し、自ら運営していくのだと。そこに共感された国民の皆さんだったり、企業や団体の皆さんだったり、国や自治体の皆様方からいろいろな形で御協力いただくということを考えてやっていかなくてはならないと思っています。ただ、そう思っていても、姿はどうするのだと。実は共助の姿が見えないのです。これは、今日御参加の皆様方のお仕事だと思うのです。日本の共助はどこへどうするのだ、どういう姿なのですかと。これは別に被害者支援のことだけではありません。あるいは公助はどうなるのだと。自助というのは、私は企業ですから、二十何年前から自立と言いますか、プラン・ドゥ・シー・チェックというマネージメントサイクルを自ら自分でやりなさいということが原点になっています。ですけれども、我々から見ると、公助はどこまでやれば良いのか、私は今分かりません。それは、見られるようにしてくださいというのも変な話で、創り上げていくわけですから、実は私は私の考えで進めようと思っています。それは、このネットワークの共助への努力は、我々の活動を全部オープンにしていくことから始めたいと考えています。

私は、去年の5月末に理事長に就任させていただきました。最初にさせていただいたのが、6月に内閣府の犯罪被害者等施策推進室と警察庁の犯罪被害者支援室、そして、我々が大きな支援をいただいている日本財団に、我々の3カ月報告というのをさせていただきました。企業でいうと四半期報告というのですが、これは、決算も含めて、今、ホームページに掲載することが義務付けられているわけでありますけれども、私はそういう活動を皆様方に御報告して、そこからいろいろな御意見を吸収して、そして翌年度の我々の活動に生かしていく。我々がもし行き過ぎていたら、あるいは間違っていたら、いろいろな意見が寄せられると思います。それを改めるしかないと私は思っています。これはステップアップのマネージメントなのです。

実は私は、先ほど御紹介がございましたように、会社で企業経営に携わって、その企業経営のことを同志社の大学院のビジネススクールというところで5年ほど教えました。それは、私が経験したことを整理して、会社経営というのはこういうものだということを学生たちに教えたわけであります。丁度その中頃に、京都大学は母校でありますので、国立大学の法人化がありまして、民間企業の役員が要るということで、私も4年間、京都大学の監事をさせていただきました。これは、同志社大学で教えたことを京都大学に当てはめたわけであります。これは、京都大学の監事ですから、京都大学の経営に意見をいろいろ申し上げました。御関心の向きは京都大学のホームページを見ていただいて、監事のところをクリックしていただきますと、私の報告書が出ておりますので、御覧いただいたらと思います。

丁度そこで言ってきたことを、今、(全国被害者支援)ネットワークで実行しているわけであります。そういう意味で、私は恵まれているなと思っているのですけれども、その共助の組織をこれからどう日本で作り上げていくのかということに私自身としてはチャレンジしたいと思って、今、ネットワークではそういうことをお話ししています。それには、先ほど申し上げました、これはできるだけ情報を開示させていただいて、説明させていただいて、そしてマネージメントに生かしてステップアップしていく。ステップアップしていくマネージメントの次に、我々の新しいステージがあるのだと。そういうことで、私たちとしてはこの3つの方向性というものを打ち出したわけでございます。丁度この資料にあります第2期3年計画の柱でございます。他にもございますけれども、ポイントとしてはこの3つであります。

これは資料にはなかったと思いますが、ここにございますように、実はたくさんのことを考えています。それは、先ほどの3つの方向性の中から、育成と組織、中央機関としての機能と広報ということで、それぞれの理事が担当するようになっていまして、こういう計画で3年計画をしようということであります。

特に重要なのは人材育成です。全国で支援に参加される方々の研修のクラスを初級、中級、上級、その上にコーディネーターというように設定しまして、こういう形でカリキュラムを、初級、中級、上級はどういう研修を受けるべきかということを明示してあります。

そして、これはまだ全部実施できているわけではありません。今後5年間でこれを全て立ち上げたい。今、3分の2ぐらい立ち上がっていますけれども、これは支援員の方々と組織を維持する、いわば事務局を含めて、どういう研修をやっていくのかということを、企業では「OJT」と言うのですが、研修と事例研究と言いますか、実際に裁判所に行って直接支援の勉強をするというようなことも含めて、実は去年の4月から研修体系をこういう形でやろうということでスタートしたということでございます。

我々の団体は、この資料にございますが、年間1万7,000件ぐらいの相談に応じていて、1,300人ぐらいのボランティアと160名ぐらいの事務局。これが多いのか少ないのかということはいろいろ意見があるかと思いますけれども、実情はそういう形でございます。

資料にお付けしておきました。我々の組織は、こういう形で全国各都道府県に1つのセンターがございまして、犯罪被害者の方々に対応しているということでありますけれども、多くのセンターは10時から5時までとか、しかも、土曜・日曜は休んでいる。夜はやっておりません。私は今、一生懸命言っているのですが、犯罪被害者からすると、働いている人は10時から5時と言ったら皆仕事に行っているわけで、本当は夜とか休みに相談したいということだと思うのです。今、そういうことを働き掛けていまして、これから、所謂、支援の充実ですね。時間と場所があります。時間と場所をどうするのかということを議論しているところであります。

これも資料が付いておりますけれども、この白抜きのところが中・四国です。お手元に資料はございませんが、犯罪被害者等早期援助団体ということで、給付金の法律で、一定の人数の相談員がいて、そして面接したり、電話を受けます。これは守秘義務がございますから、そういう設備が整っていて、そして事務的なお金の出し入れもきちんとできるというようなことがきちんとマネージメント、管理できる体制になっているかということを認定されて、公安委員会からこの犯罪被害者等早期援助団体というものの認定を受けますと、所謂、警察から犯罪被害者の同意を得て、犯罪被害者の情報を提供いただくことができるようになるわけであります。そういう犯罪被害者の最も重要な、できるだけ早い時期に支援をするということが可能になるということで、今、そういうことを目指しているのですが、先ほどありました3つ、北北海道というのがあるから4つの組織がまだ早期援助団体の指定を受けられておりません。それは、先ほど申し上げた支援員とか場所の問題、あるいは事務の問題とか、そういう条件が整わないということで、まだ認定を受けられていないということであります。何とかこれは早急にそういう状況を解消したいと思っています。

時間の関係もございますので、少し飛ばさせていただきます。

どういう相談なのかということであります。これは、私ども、各センターからのデータを整理したものをお付けしておりますので、御覧いただきたいと思うのですが、全体の35%は犯罪被害ではない相談があるということ。つまり、65%が犯罪被害の相談。ですから、様々な電話相談があるということでございます。被害者からの相談の多くは、次の資料にありますように、身体犯と性犯罪被害。特に最近は性犯罪被害という相談が急増しているということで、どのセンターでも、この相談にどう対応するか、大変大きな課題になっております。今、内閣府を中心にして、所謂、ワンストップセンターということで、性犯罪被害の方が1カ所のところへ行けば、お医者さんも、あるいは弁護士も、警察もというような形で相談に応じていただけて、1カ所で解決できるということを全国で進めようとされております。我々も、例えばこの4月から宮城、高知、岡山、福岡とか、福島も始まるかと思います。そういう形で、今、この性犯罪被害のための被害者支援というものに大変力を注ぎつつあるということでございます。

相談者と被害者の関係ということですが、これは下を見ていただきますと分かりますように、本人の相談が減って、両親の相談が増えてきている。これは、恐らく、性犯罪被害の関係が急増しているということと相関するのだろうと思いますけれども、そういう傾向が出ているということであります。

そして、どういう相談をしているかということでありますけれども、半分は電話相談だけ。そこで解決と言いますか、一応完了するというのが過半数でございます。「直接支援」と申しまして、裁判所の傍聴に一緒に付き添って行ったり、病院に一緒に付き添って行ったり、そういう直接、被害者の方と一緒に付き添って支援をするというものが、ここにありますように非常に増えてきている。これは、早期援助団体としての指定を受けて、そして被害者の情報を頂いて、非常に重い事件の方が多いわけですので、そういう方々からそういう直接支援に結びつくということで、早期援助団体の指定を受ける我々のセンターが非常に増えてきたということと相まって、この直接支援が増えてきているということでございます。

最後に、この表を出させていただこうかどうか迷ったのですが、財政状況であります。一番下を見ていただきたいのですけれども、約42.6%が赤字ということであります。これは、人口の多寡によってA・B・C・D・Eと分けておりますけれども、この多くは赤字の問題と言いますか、ここに非常に大きな課題があります。更には、この4月からは、振り込め詐欺の預保納付金が犯罪被害者支援にも助成されるということで、一応その審査が終わった段階であります。我々がこの預保納付金について取り組んだのは4年ほど前からでありますが、実際にそういうことで具体的に動き出しまして、審査結果が出て、この4月から預保納付金の助成を受けるということでございます。ただし、これは、有限と言いますか、期間を限ったものでありますから、我々としてはその間に、先ほど申し上げました自分たちの努力で財政基盤を構築していくということを進めていかなければならないわけであります。予算規模が平均で2,000万ぐらいということであります。ざっと御覧いただくと分かりますように、小さな人口の所ほど地方自治体の助成が多いと言いますか、頼っている。逆に言えば、自分たちで会員を増やし、寄付金を増やすという努力が中々できない。これは対象者の問題もありましょうし、いろいろな背景の問題もありますから、一律に申し上げられませんけれども、こういった財政の実情にあるということでございます。

最後になりますけれども、私どもとしての大きな課題は、冒頭申し上げました連携の問題であります。ここにございますように、様々な犯罪被害者に係わっていただかなければならない機関なり、団体があるわけであります。ちょっと抽象的な言い方で恐縮ですけれども、犯罪被害者が真ん中にいて、支援をする人たちがそれを取り囲んで犯罪被害者支援をするという体制にしたい、するべきだと。これは、5年、6年ほど前、私がイギリスの「VS」に行ったときにもお聞きしましたけれども、そういうことを試みておられます。つまり、今、内閣府がお進めになっている「(性犯罪・性暴力被害者のための)ワンストップ(支援センター)」を犯罪被害全体にということになるわけでありますけれども、これは中々難しい。私はそれは物理的には難しいと思います。ですけれども、お互いの連携でそれを解決できるのではないか。例えば、今日は栃木の御関係の方がお出でになっておりますけれども、この連携の話は昨年の我々の研修での発表でありました。栃木のセンターは、ある交通事故事件で県と市とセンターが一緒になって支援するということから、関係するところが幾つあるか、数えたら32あったのです。ですけれども、そのうちの22は県と市なのです。つまり、犯罪被害者が、県でも市でも、1カ所に行けばいろいろ助けていただいて、支援を受けられるようにしていただくと、本当に助かると思います。被害者の被害内容によって関係する部署が多い少ないはございますけれども、交通事故のケースでは、そういうことで行政の方に非常に御努力いただいて、そういう一覧表を作っていただきました。これをどう使ったというと、実はまだそこまで至っていないのです。これだけ関係者がいるということは分かったというのが栃木の現状であります。そういう報告をされていました。

これから我々も各センターでそういう努力をしていかなくてはいかんと思っているわけでございますけれども、今日、御参加の皆様方も是非、そういう視点で、犯罪被害者が中心になって、今ある組織で連携することによってワンストップができるのか、できないのか、どうすればワンストップができるのか。例えば弁護士であるとか、あるいは行政の所の連携というのは、我々のセンターに相談に来られたら、そういう所の連携はできる限りやろうとしています。ですけれども、その組織の更に関係する所までの連携というのは能力的にも無理だと思いますので、是非このことをお考えいただければ有り難いと思います。

あとは、ざっと見ていただきますと、フォーラムと言いまして、被害者支援について、皆さん方の御支援を得て、犯罪被害者の声と、これから我々の活動をどうしていくのかということを年に一度こういう形で進めているということでございます。これはその会場の写真でございます。

そしてもう一つは、警察庁の大きな御支援を得て犯罪被害者支援の表彰制度というものを去年の秋からスタートすることができました。これは、10年ないし15年以上、犯罪被害者支援に携わっている支援の皆様方、そして団体を職員も含めて表彰するという仕組みでありまして、今まで、犯罪被害者にかかわる人たちが社会的に認められるというような場がなかったわけでありますけれども、こういう形で、おかげさまでスタートすることができた。今年からは、各センターで、例えば5年とか7年とか、そういう方を表彰し、もう少し長くなれば全国で表彰を受けるというような、そういう仕組みを構築していきたいと考えているところでございます。

これは、2011年、丁度20周年のとき、秋篠宮殿下、同妃殿下、御一緒に我々のこのフォーラムにご臨席いただいて、被害者の声をお聞きいただいたということでございますので、御紹介までと思って持ってまいりました。

これは、被害者週間に、ライオンズクラブの御協力を得てこういう形での募金活動をしているということでございます。

以上でございます。時間がちょっと過ぎてしまいましたけれども、ありがとうございました。

○質疑応答

【質問者】
外務省の海外邦人安全課です。17年前、前身の邦人保護課におりましたが、担当していませんでしたので、今回初めてお伺いしました。

【平井氏】
そうですか。ありがとうございます。

【質問者】
2つ質問をさせてください。

1つは、被害者支援ネットワークというか、各センターで、警察とかから情報提供が行なわれて被害者の方に連絡できる形になっているとお伺いしましたけれども、このタイミングというか、どういうふうな形でつないでおられるのでしょうか。例えば警察署とかでいろいろな話をされますね。犯罪被害者と刑事さんとか。そこの場で出てくるのか、それとも、後でセンターの方が連絡先を教えてもらって直に連絡されているのかというのを1点伺いたいです。

もう一点は、私どもでは実際に海外で被害に遭った方の支援をしておりますけれども、千差万別でありまして、真相を知りたいからということで毎日電話を掛けてこられるような方もいれば、心が折れてしまって気力が全く失せてしまった、仕事も辞めてしまったという方もいまして、特にお伺いしたいのは、心が折れてしまって引きこもってしまった方への支援は、実際にどういうふうな形でやられているのかお伺いしたいです。

【平井氏】
第1点目でございますけれども、まず、早期援助団体の指定を受けるというのは、先ほど申し上げましたように、警察からの情報提供が可能ということですが、我々への相談の全体からすればそれはごく一部でして、県とか市のいろいろな情報誌に我々自身が広告を出したり、そういう形で市民の方に知っていただく。ですから、広く相談電話が掛かってくるということでございます。ただ、その中で、重大な事件と言いますか、被害者の方については、警察や本人の同意を得て我々に情報提供できるとなっているのです。

そのステップはどの時点なのだということですが、これは、千差万別と言いますか、まず御本人の同意ということですので、いつ同意が得られるか。もう一つは、我々の組織力の問題もあるかと思うのです。我々の組織は、本当にしっかりしていれば、警察からの情報提供もかなりいろいろなケースでございましょうけれども、この段階では、我々の組織はまだそこまでできないということを警察が考えられると、その情報提供は少し遅れてしまう。御本人と警察の捜査状況と我々の組織力のようなことが勘案されて、それで時期が決まってくる。杵淵室長は実際に現場におられたから一番詳しいと思うのですが、我々から見るとそんなことでございます。ですから、我々でも、組織がきちっとできて対応できるところは、事件が起こって、しばらくして情報提供といいますか、そういうことが可能だというようなところは京都でもございます。ですけれども、少し時間が経ってから、警察の捜査が終わって検察庁へ送られる時点で来るというようなケースもございますし、様々でございますので、一概に申し上げられないということだと思います。我々から見るとそういうことでございます。

もう一つは、結局、心が折れてしまった状態の方には我々は電話も掛けられないので中々難しいのですが、情報提供を受けている方で、もしそんなことであれば、我々は実際に家庭を訪問しております。ただし、勝手にというか、一方的に行けませんので、事前に電話をして、「いや、今は困ります」と言われれば行けませんけれども、「来ていただいてよろしいです」と了解をされれば、その家庭を訪問する。もし邦人安全課の方でそういう方がいらっしゃったら、是非都道府県のセンターにつないでいただければ、個人情報のこともありますので、一定のことは必要だと思うのですけれども、我々の方ではそれは十分可能だと思いますし、できる範囲でさせていただく。当然ですけれども、そういう場合ですと、電話を受ければ、まず、インテイクの面接ということで面接をさせていただいて、そして、必要な、我々が連携していく臨床心理士、ないし、精神科の先生を御紹介する。それも最近、そういった費用については、京都の場合は京都府から助成されていますので、被害者の方は、そういう意味では一定の金額までは支援を受けられるという仕組みもございますので、是非つないでいただければと。

先ほど「犯罪被害者支援センター」の一覧表がございましたけれども、3分の2の組織は「犯罪」ではないのです。「被害者支援センター」なのです。ですから、「犯罪」ではなくてもと言いますか。例えば、典型的なのは、東日本大震災がございました。これは犯罪被害ではないわけでありますけれども、我々の場合は、宮城では実際に遺体安置所の支援を約1,000名いたしています。これは、警察からの要請もあって、我々は犯罪被害者の付き添いもしておりますけれども、そこで遺体に面会されると言いますか、会われるというところでは支援が必要ですから、それは我々もさせていただいた。あるいは、岩手、福島においても、我々の組織でできる範囲で、震災を受けられた方々に対する支援と言いますか、そういうことをさせていただいているということでございます。

ただ、今、全国的にそういう組織的な体制ができておりませんので、我々は昨年の12月に緊急広域支援チームというのを立ち上げました。まだ立ち上がったばかりであります。最近、複数県にまたがる広域の犯罪被害が増えてきております。正に連携が必要なのですけれども、我々も連携が必要だと。ですから、事件が起こったセンターが対応するわけでありますけれども、全国の支援者が一定の割合で、先ほど言いましたが、コーディネーターと言いまして、上級を卒業してコーディネーター研修を受けて認定試験を受けて合格した方が、実はこのチームの構成員になります。そして、センターから要請、あるいは我々から声を掛けることがあるかと思いますけれども、広域の被害に対して全国で支援するという体制を今作りつつございます。申し上げるほどの体制はまだまだできておりませんけれども、ここ2、3年でそういう体制も作りたいということで始めているところでございます。
ということでよろしいですか。

【質問者】
法務省です。

今、私が係わっている業務は再犯防止施策というものになりますが、法務省の中で、加害者に対して働き掛けを行う。教育ですとか、指導ですとか、処遇を行う矯正局の職員。刑務所や少年院の職員や保護観察官などは、自分が受け持つ目の前の加害者をよく知ることや指導に力を尽くすことはもちろんのことなのですが、犯罪被害者に関することも知っておくべきだと考えています。特に、例えば刑務所や少年院の職員や保護観察官などが加害者に働き掛けを行う際に、今は個々の職員が自分の関心事項やそういうことを自ら学んでいるのが現状なのですけれども、法務省の関係職員とかにこういうことは知っておいてほしいというメッセージ等があればいただきたいと思います。

【平井氏】
ありがとうございます。これは、法務省と言いますか、そういう御担当だけではなくて、私が今一番痛感しているのは、いかに犯罪被害者の声を、いかに国民一人一人に伝えるかということだと確信しております。つまり、これだけいろいろな形で犯罪被害のことについて講演がなされ、また新聞報道もされ、私もネットワークの理事長ですが、企業に寄附のお願いにまいります。大体、企業のトップと会います。役員の人たちに、「実は私はこういうことをしているのだ」と。「犯罪被害? それ、知っているよ」と。ですけれども、私が出会った100人は100人とも、「犯罪被害」のことは御存知ですが、「犯罪被害者」のことは御存知でありません。決定的に違うことです。ですから、全体的に申し上げたいのは、いかに被害者の声を届けるかということだと。これが原点であります。

それで、今の法務省の御質問でございますけれども、そういった形で、矯正と言いますか、加害者に係わっておられる方。例えば京都ですと、刑務所を出所されるときに、我々の支援している人がその出所する人に犯罪被害者の心情というお話をしにまいります。あるいは、刑務所の職員であった方が、今まで加害者に係わっていたけれども、今度は自分は定年になったので、被害者の支援をしたいということで、実際に京都でも我々の支援員になっていただいております。ですから、加害者の方に直接犯罪被害者の声をというのは難しいわけでありますけれども、私どものネットワークでは、犯罪被害者の声というのを冊子で出しております。あるいは、その被害者支援のフォーラムの冊子もございます。必ず犯罪被害者の声を伝えるようにしております。ですから、より犯罪被害者の声に近いことをお伝えいただく。あなたが被害者の実情はこういうことなのだといくら間接的にお話になっても、これは中々難しいのではないか。是非直接の声をお伝えいただきたい。ただ、被害者にも当然いろいろなお考えの方がいらっしゃいますから、我々のフォーラムもそうでございますけれども、そういう所に出て、そして、自分の経験を伝えたいという人もあれば、それは絶対できないという人もありますので、いろいろ異なりますけれども、是非そのことを原点に置いて、あと、どういったことが可能なのか。で、もし我々に御要請があれば、可能な範囲で協力をさせていただきたいと思います。

東京でなさることもありましょうけれども、それぞれの都道府県でなさるときには、我々のセンターが協力できますので、是非御相談していただいて、少しでも我々の活動を知っていただければ有り難いと思いますし、被害者のことを御理解いただけると有り難いと思います。

最後に、ホンデリングのお話。実は財政問題は大変重要なことでございまして、我々としてもいろいろ資金づくりをしているのですが、これは「ホンデリング」と言いまして、被害者支援だけのスキームでございます。これは、古本を御寄附いただく、その御寄附いただいた、所謂、買取価格が私どものほうに寄附されるという仕組みでございます。ですから、皆様方あるいは関係者の皆様方が捨てられる、あるいは売却されるかも分かりませんが、要らなくなった本を、ここにありますように御連絡いただくと、宅急便が取りにまいります。言われれば、その日中に取りに行ってくれますので、非常に手軽に御協力いただけるということです。参考までにホンデリングというものを御紹介させていただきましたので、是非御協力いただければ有り難いと思います。これはネットワークのホームページから入手していただけますので、是非御関係の皆様方も御活用いただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。


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