本調査は、第3次犯罪被害者等基本計画に基づき、被害類型別、加害者との関係別に、犯罪被害者等の置かれた状況について調査を実施し、犯罪等被害が心身の健康状態に及ぼす影響、主観的な回復状況とその要因に関する認識等を把握し、各府省庁の施策の企画・立案等に反映させることを目的とする。
本調査の企画及び分析は、次の企画分析会議構成員による議論・検討に基づき実施した。企画分析会議は全3回開催された。
座 長 | 辰野文理 | (国士舘大学法学部教授) |
委 員 | 齋藤 梓 | (目白大学人間学部 心理カウンセリング学科 専任講師) |
島田貴仁 | (科学警察研究所 犯罪行動科学部 犯罪予防研究室 室長) | |
白岩祐子 | (東京大学 人文社会系研究科 社会心理学研究室 専任講師) | |
中島聡美 | (福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター 特命准教授) | |
中土美砂 | (被害者支援都民センター 犯罪被害相談員、犯罪被害者遺族) | |
阿波亮子 | (警察庁長官官房参事官(犯罪被害者等施策担当)) |
一般生活者を対象に、インターネット上に公開した調査票に既存のモニターがアクセスして回答するインターネット調査(Web調査)によって実施した。
※ | 倫理的配慮 |
本調査は、国士舘大学倫理委員会の承認を受けた(承認番号:29-5)。調査の実施に当たり、協力が任意であること、得られた情報の目的外使用の禁止、調査への回答はいつでも中止できること等について、事前に画面上で説明し、同意を得られた人のみを対象とした。また、調査によって回答者が精神的な不調を感じた場合への対応として、調査票末に複数の相談先を記載した。 |
平成30年1月19(金)~28日(日)
インターネットによる調査モニター(20歳以上)から抽出した、次のいずれかに当てはまる方を対象とした。
過去に次のいずれかの犯罪等被害にあったと回答した本人又は遺族(遺族にあっては交通事故、殺人のみ)の方。
<犯罪被害類型>犯罪被害類型のそれぞれの定義は下表のとおり。
配偶者からの暴力(DV) | 配偶者(夫や妻のこと。事実婚の関係にある方を含む)から受けた以下のような暴力や心身に悪影響を及ぼす言動。
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ストーカー行為等 | 好意あるいはそれが満たされなかったことに対する恨みを持つ特定の他者から受けたつきまとい行為により、身体の安全や心の平穏が著しく害される不安を覚えたこと。
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児童虐待 | 18歳になるまでの間に、同居する保護者から受けた、以下のような虐待。
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性的な被害 | 痴漢等 | 痴漢、盗撮、のぞき、露出 等 |
無理やりにされた性交等 | 無理やりにされた、以下の性行為、性的な接触。
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交通事故 | 交通事故による家族の死亡又は自身が負った全治1週間以上のけが。 | |
殺人・殺人未遂又は傷害等の暴力犯 | 暴力被害 | 配偶者以外から受けた傷害等の暴力により、自身が負った全治1週間以上のけが。 |
殺人、殺人未遂 | 家族(死亡)又は自身が受けた、殺人、殺人未遂の被害。 |
なお、前回までの調査では、「過去10年以内」に被害にあったと回答した方を調査対象としていたが、今回の調査ではこの条件を除いている。一方で、被害にあった時期(同じ被害に何度もあっている方は最も被害が深刻であった時期)を「過去10年以内」と「それ以前」に分けて質問することで、被害の時期別の分析を可能としている。
過去において犯罪等被害を受けた経験がないと回答した方。
犯罪被害者等 | 配偶者からの暴力(DV) | 125 |
ストーカー行為等 | 163 | |
児童虐待 | 140 | |
性的な被害 | 169 | |
(うち、痴漢等) | (100) | |
(うち、無理やりにされた性交等) | (69) | |
交通事故 | 191 | |
殺人・殺人未遂又は傷害等の暴力犯罪 | 129 | |
(犯罪被害者等小計) | 917 | |
一般対象者 | 779 | |
合計 | 1,696 |
犯罪被害者等の現況の把握に加えて、一般対象者にも調査を実施することで、犯罪被害者等と一般対象者の身体上の問題、精神的な問題、悩み等について比較・分析をしている。また、6つの犯罪被害類型別に、身体・精神・経済の状況の意識に関する傾向や、生活状況、支援・制度の利用状況についても分析を行っている。
なお、調査結果において掲載されているK6とは、うつ病、不安障害に対するスクリーニング尺度である。2002年に米国のKesslerらが項目反応理論に基づき提案、日本語版は同年に名古屋市立大学大学院医学研究科教授の古川らが翻訳して3、国民生活基礎調査でも用いられている。6つの設問の合計値(合計24)が高いほど精神健康に問題がある可能性が高くなり、合計値13点以上では重症精神障害の診断に該当する可能性が高いとされ、7~12点では、軽度精神障害の可能性ありとされている。本調査では、アンケート調査票のQ29において、過去30日間に「神経過敏に感じた」、「絶望的だと感じた」、「そわそわ落ち着かなく感じた」、「気分が沈みこんで、何が起こっても気が晴れないように感じた」、「何をするのも骨折りだと感じた」、「自分は価値のない人間だと感じた」の6つの設問に対する回答選択肢について、「全くない」=0、「少しだけ」=1、「ときどき」=2、「たいてい」=3、「いつも」=4とスコア化し、各回答のスコアを合算して得点を算出している。
回答者の基本属性として、性別、年齢、婚姻状況、子の有無をまとめる。また、被害の状況として、犯罪被害者等・加害者の属性、被害の時期、被害の継続期間、被害時・現在の職業、被害時の同居状況、けが・後遺症の状況についてまとめる。
女性が占める比率は、性的な被害(92.9%)、配偶者からの暴力(以下、DV)(85.6%)、ストーカー行為等(以下、ストーカー)(66.9%)、児童虐待(61.4%)で高い。一方、男性が占める比率は、殺人・殺人未遂又は傷害等の暴力被害(以下、殺人・傷害)(66.7%)、交通事故(63.9%)で高い。 一般対象者では、男性61.1%、女性38.9%となっている。
痴漢等では女性が97.0%、無理やりにされた性交等では87.0%となっている。
性的な被害、児童虐待、ストーカー、殺人・傷害で年齢が比較的若く、20~30歳代が約半数を占める。一方、DV、交通事故は年齢が高く、40歳代以上で2/3以上を占める。 一般対象者では、各世代が比較的均等に回答している。
未婚者が最も多いのは児童虐待(53.6%)、既婚者が最も多いのはDV(99.2%)である。 一般対象者では、未婚47.9%、既婚52.1%となっている。
子供がいるとの回答が最も多いのはDV(84.0%)、子供がいないとの回答が最も多いのは児童虐待(66.4%)である。 一般対象者では、子供がいるとの回答が40.7%、いないとの回答が59.3%である。
交通事故及び殺人・傷害(のうちの殺人・殺人未遂)の犯罪被害者等に、誰が被害にあったかを尋ねたところ、交通事故では回答者自身(「あなた」)が85.7%である。また、殺人・殺人未遂では回答者自身(48.6%)と「ご家族」(51.4%)がほぼ均等である。
家族が被害で亡くなったとの回答者に、当該家族との関係を尋ねたところ、交通事故では「父、母」(34.6%)、殺人・殺人未遂では「兄弟姉妹」(42.1%)が最も多い。
DVでは「配偶者、元配偶者」(100%)、ストーカーでは「交際相手、元交際相手」(26.4%)、「全く無関係の人、知らない人」(22.1%)、「職場、アルバイト先の関係者、通っていた学校の関係者」(19.0%)、「わからない」(14.1%)、「知人、友人」(12.9%)、児童虐待では「父」(56.4%)、「母」(30.7%)、性的な被害、交通事故は「全く無関係、知らない人」(それぞれ75.1%、87.8%)、殺人・傷害は「全く無関係、知らない人」(31.0%)、「職場、アルバイト先の関係者、通っていた学校の関係者」(13.2%)、「兄弟姉妹」(11.6%)、「知人・友人」(10.9%)の回答比率が高い。
痴漢等では「全く無関係の人、知らない人」が91.0%と大半を占める。無理やりにされた性交等では「全く無関係の人、知らない人」が52.2%と最も多く、次いで「職場、アルバイト先の関係者、通っていた学校の関係者」(10.1%)、「知人、友人」(7.2%)等となっている。
全体的に男性が多いが、児童虐待、ストーカーでは女性も比較的多い。
回答者又は家族が被害にあった時(被害が長期にわたって継続している場合には、被害が始まった時)の回答者の年齢を尋ねたところ、DVやストーカーは20~30代、児童虐待は幼児期から小学生、性的な被害は小学生から20代前半、交通事故は20~40代、や殺人・傷害は10~30代が多くなっている。
被害を経験した時期(被害に何度もあっている方は、最も深刻であった被害時期)を尋ねたところ、DVは64.8%、ストーカーでは58.9%と「過去10年以内」の回答比率が高く、児童虐待は88.6%、性的な被害は62.1%、交通事故と殺人・傷害はそれぞれ59.7%と「それ以前」の回答比率が高い。
被害の継続期間については、DV、児童虐待とそれ以外の類型を、異なる選択肢にて尋ねた。
DVでは「1年未満」、「1年以上3年未満」、「3年以上5年未満」、「5年以上10年未満」、「10年以上」とも約2割ずつとなっている。児童虐待では「5年以上10年未満」と「10年以上」で約2/3を占めており、被害が長期間継続していることが読み取れる。
ストーカーでは「1ヶ月以上半年未満」、「半年以上1年未満」、「1年以上」がそれぞれ2割強を占めており、被害が比較的長く継続している。性的な被害、交通事故、殺人・傷害では、「1回限り」との回答が最も多い。
被害時と現在の犯罪被害類型別の職業構成は図表2‐13のとおり。DVにおいて、被害時と現在の職種構成は比較的変わらず「会社員などフルタイムの仕事」、「無職(専業主婦・主夫も含む)」、「パートやアルバイト」が多い。児童虐待と性的な被害では被害時に「児童・学生・生徒」である場合が多く、ストーカー、交通事故、殺人・傷害では「児童・学生・生徒」に加え「会社員などフルタイムの仕事」が多くなっているがこれら5類型の現在の職業は「会社員などフルタイムの仕事」や「無職(専業主婦・主夫も含む)」が多くなっている。
被害時の同居相手については、DVでは「配偶者、恋人、パートナー」、ストーカーや殺人・傷害では「父」、「母」、児童虐待や性的な被害では「父」、「母」と「兄弟姉妹」、交通事故では「父」、「母」と「配偶者、恋人、パートナー」が多くなっている。「同居家族はいなかった」との回答は、他類型と比べてストーカーで多くなっている(32.5%)。
被害で負ったけが及び後遺症の状況を尋ねたところ、けががあるとの回答は、「全治1か月以上のけが」は交通事故で46.3%、殺人・傷害で22.2%、「全治1か月未満のけが」は殺人・傷害で58.3%、交通事故で52.5%、DVで40.0%、児童虐待で37.9%となっている。
後遺症があるとの回答は、「後遺障害等級の認定がなされた後遺障害」は交通事故で6.8%、「後遺障害等級の認定がなされていない後遺障害」は殺人・傷害で16.8%、交通事故で14.2%となっている。 ストーカーや性的被害においては、けが、後遺障害があるとの回答は1割未満となっている。
※ただし、本調査では、交通事故及び殺人・傷害のうちの暴力被害については、自身が被害にあった場合、1週間以上のけがを負っていることを条件としているため、その他の犯罪被害類型と同列に比較はできない(「1-5.調査対象」参照)。犯罪被害者等と一般対象者の回答結果から、生活上の変化、身体・精神・経済的状況の比較を行い、犯罪等被害が犯罪被害者等の生活等に与えた影響を分析する。
犯罪被害者等は、一般対象者よりも休学・休職、長期入院、別居・離婚、家族間不和等、生活や対人関係のネガティブな変化が多くなっている。
また、犯罪被害者等は一般対象者と比較して、過去30日間に精神的な問題や悩みを感じたとの回答比率、重症精神障害相当の状態に達している比率、日常生活に支障を来す日数等が高く、一般対象者よりも高い割合で精神的な問題や悩みを抱えている。また、犯罪被害者等は、精神的な問題への対処方法として、医療機関やカウンセリングに通うケースが若干多くなっている。
犯罪被害者等に事件後から現在までの生活変化(出来事)のうち事件と関連があると思うもの、一般対象者には最近5年間程度の生活変化(出来事)を尋ねた。両者を比較すると、犯罪被害者等では「学校または仕事をしばらく休んだ」(12.1ポイント)、「家族間で不和が起こった」(10.2ポイント)、「長期に通院したり入院したりするようなけがや病気をした」(6.8ポイント)、「自分が別居・離婚した」(5.7ポイント)等において、一般回答者の回答比率を上回っている(括弧内は両者の差)。犯罪被害者等では生活や対人関係のネガティブな変化が多くなっていることがうかがえる。
過去30日間に身体上の問題を感じたかを尋ね、犯罪被害者等と一般対象者で比べたところ、「感じた」との回答は犯罪被害者等(29.9%)と一般対象者(25.8%)の間で大きな差はみられない(図表2‐17)。
犯罪被害者等について、身体上の問題の有無を被害の時期別にみたところ、「感じた」との回答比率は「過去10年以内」(35.9%)で「それ以前」(25.6%)より高くなっている(図表2‐18)。
身体上の問題への対処では、犯罪被害者等、一般対象者ともに「医療機関に通った」(それぞれ49.1%、44.3%)、「特に何もしていない」との回答比率が高く(同35.9%、37.8%)、両者に大きな差はみられない(図表2‐19)。
過去30日間に精神的な問題や悩みを感じたかを尋ね、犯罪被害者等と一般対象者で比べたところ、「感じた」と回答した割合は、犯罪被害者等(41.0%)が一般対象者(23.5%)の約2倍となっている(図表2‐20)。
犯罪被害者等について、精神的な問題の有無を被害の時期別にみたところ、身体上の問題と同様に「感じた」との回答比率は「過去10年以内」(51.0%)では「それ以前」(33.8%)より高くなっている(図表2‐21)。
精神的な問題にどのように対処しているかについてみると、犯罪被害者等、一般対象者ともに、「何もしていない」(それぞれ52.3%、69.4%)が最も多く、次いで、「医療機関に通った」(同24.9%、19.1%)、「家族や知人に相談した」(22.0%、11.5%)となっている。また、犯罪被害者等では一般対象者より「家族や知人に相談した」で10.5ポイント、「公的機関や民間団体において、カウンセリングを受けたり相談したりした」で8.3ポイント、「医療機関に通った」で5.8ポイント上回っている(図表2‐22)。
犯罪被害者等と一般対象者の精神健康状態をK6の値で比べると、重症精神障害相当とされる13点以上の割合は、犯罪被害者等(18.5%)が一般対象者(9.1%)を9.4ポイント上回っている(図表2‐23)。
犯罪被害者等について、K6の値を被害の時期別にみると「過去10年以内」(19.8%)と「それ以前」(17.5%)の間で、13点以上の割合は大きく変わらない(図表2‐24)。
この1年間で仕事や日常生活が行えなかったと感じた平均日数は、犯罪被害者等(26.2日)が一般対象者(7.5日)の約3.5倍に達しており、犯罪等被害の与える影響の大きさがうかがえる(図表2‐25)。
犯罪被害者等について、被害の時期別にみると、「過去10年以内」(28.7日)では「それ以前」(24.3日)と比較して約4日上回っている(図表2‐26)。
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犯罪被害者等(N=912) | 26.2日 |
一般(N=779) | 7.5日 |
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過去10年以内(N=384) | 28.7日 |
それ以前(N=528) | 24.3日 |
経済的状況に関する意識について、犯罪被害者等と一般対象者を比較すると、犯罪被害者等では裕福(「裕福だと思う」と「やや裕福だと思う」の和)との回答比率が23.9%、困っている(「生活に少し困っている」と「生活にとても困っている」の和)が35.3%と、ともに一般対象者(それぞれ17.7%、29.1%)よりも高くなっている(図表2‐27)。
犯罪被害者等の経済的状況に関する意識について、被害の時期別にみると、「過去10年以内」(38.4%)では「それ以前」(33.1%)と比較して、困っているとの回答割合が高くなっている(図表2‐28)。
現在の世帯年収水準については、犯罪被害者等と一般対象者で大きな差異はみられない。
犯罪被害類型別に、被害による生活上の変化、身体・精神・経済的な影響、被害からの回復状況・悪化の原因等の観点から分析し、各類型別の特徴を検討する。
事件後から現在までに起こった、事件に関連のある生活上の変化については、DVで「自分が別居・離婚をした」(34.4%)、ストーカーで「学校または仕事を辞めた、変えた」(17.2%)、児童虐待で「家族間での不和が起こった」(39.6%)、交通事故で「学校または仕事をしばらく休んだ」(22.0%)、「長期に通院したり入院したりするようなけがや病気をした」(22.0%)、殺人・傷害で「学校または仕事をしばらく休んだ」(23.7%)等が多い。
<被害による身体・精神的影響>過去30日間になんらかの身体上の問題を感じたとする回答比率は、交通事故(39.5%)、殺人・傷害(32.6%)で高い。身体上の問題への対処方法として「医療機関に通った」との回答比率も交通事故(68.0%)、殺人・傷害(52.4%)で高い。
過去30日間になんらかの精神的な問題を感じたとする回答比率は、児童虐待(54.0%)、DV(48.4%)、性的な被害(41.4%)で高い。精神的な問題への対処方法としては全ての犯罪被害類型で「特に何もしていない」との回答比率が最も高いが、「医療機関に通った」は殺人・傷害(32.7%)、交通事故(30.9%)で、「家族や知人に相談した」はストーカー(34.4%)、交通事故(30.9%)で高い。
K6の値で重症精神障害相当とされる13点以上の比率は、児童虐待(29.4%)、殺人・傷害(23.8%)、DV(18.8%)となっている。
日常生活が行えなかったと感じた平均日数は、児童虐待(45.6日)、殺人・傷害(28.2日)、性的な被害(24.8日)となっている。
<被害による経済的影響>DV、性的な被害、児童虐待では、現在の世帯年収の水準が他類型と比較してやや低い傾向がみられる。
<回復状況・悪化の要因>事件直後と現在の身体的状況の変化は、多くの犯罪被害類型で「変わらない」又は回復基調(「回復した」と「少し回復した」との和)との回答比率が高い。一方、悪化基調(「悪化した」と「やや悪化した」との和)は、殺人・傷害(20.3%)、交通事故(19.5%)、児童虐待(17.8%)で高い。「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(73.3%)、交通事故(70.3%)、殺人・傷害(69.2%)で高い。
同じく精神的状況の変化では、悪化基調との回答比率は、児童虐待(32.1%)、殺人・傷害(26.0%)で高い。「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(81.5%)、殺人・傷害(72.7%)、児童虐待(68.9%)で高い。
同じく経済的状況の変化では、悪化基調との回答比率は、DV(30.4%)、殺人・傷害(26.0%)で高い。「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(63.2%)、殺人・傷害(50.0%)、交通事故(48.0%)で高い。
<被害からの回復状況>犯罪被害者等の主観的意見による回復状況では、半分以上回復したとする回答比率は、性的な被害(91.1%)、交通事故(89.8%)、ストーカー(88.9%)等で高く、児童虐待(79.3%)で最も低い。
事件後から現在までに起こった、事件に関連のある生活上の変化を尋ねたところ、犯罪被害類型別に回答比率が高いのは、DVで「自分が別居・離婚をした」(34.4%)、「家族間で不和が起こった」(24.6%)、ストーカーで「学校または仕事を辞めた、変えた」(17.2%)、児童虐待で「家族間での不和が起こった」(39.6%)、交通事故で「学校または仕事をしばらく休んだ」(22.0%)、「長期に通院したり入院したりするようなけがや病気をした」(22.0%)、殺人・傷害で「学校または仕事をしばらく休んだ」(23.7%)等となっている。一方、性的な被害では、事件と関連したこれらの生活上の変化はないとの回答比率が高くなっている(79.3%)。
過去30日間になんらかの身体上の問題を感じたとする回答比率は、交通事故(39.5%)で最も高く、次いで殺人・傷害(32.6%)となっている(図表2‐31)。 身体上の問題を感じたとの回答者に、事件との関係を尋ねたところ、事件と関係している(「事件が大いに関係している」と「事件がある程度関係している」の和)との回答比率は、DV(62.5%)が最も高く、次いで交通事故(61.4%)、殺人・傷害(58.5%)となっている(図表2‐32)。
身体上の問題への対処方法としては、「医療機関に通った」との回答比率は交通事故(68.0%)、殺人・傷害(52.4%)で高く、「特に何もしていない」は性的な被害(59.5%)、児童虐待(50.0%)、DV(43.8%)で高くなっている(図表2‐33)。
過去30日間になんらかの精神的な問題を感じたとする回答比率は、多くの類型で身体上の問題よりも高い数値を示している。犯罪被害類型別には、児童虐待(54.0%)が最も高く、次いでDV(48.4%)、性的な被害(41.4%)となっている(図表2‐34)。
精神的な問題を感じたとの回答者に、事件との関係を尋ねたところ、事件と関係している(「事件が大いに関係している」と「事件がある程度関係している」の和)との回答比率は、DV(70.0%)で最も高く、次いで交通事故(63.7%)、児童虐待(60.0%)となっている(図表2‐35)。
精神的な問題への対処方法としては、全ての犯罪被害類型で「特に何もしていない」との回答比率が最も高い。「医療機関に通った」との回答比率は、殺人・傷害(32.7%)、交通事故(30.9%)で、「家族や知人に相談した」は、ストーカー(34.4%)、交通事故(30.9%)で高くなっている(図表2‐36)。
過去30日間になんらかの精神的な問題を感じたとする回答比率は、痴漢等では31.0%、無理やりにされた性交等では56.5%となっている。
精神的な問題と事件が関係している(「事件が大いに関係している」と「事件がある程度関係している」の和)との回答比率は、痴漢等では35.5%、無理やりにされた性交等では46.2%となっている。
精神的な問題への対処方法としては、痴漢等、無理やりにされた性交等ともに「特に何もしていない」との回答比率が最も高く(それぞれ61.3%、64.1%)、次いで「医療機関に通った」(22.6%、15.4%)、「家族や知人に相談した」(16.1%、12.8%)となっている。無理やりにされた性交等では「公的機関や民間団体においてカウンセリングを受けたり相談をしたりした」(12.8%)との回答もみられている。
犯罪被害類型別にK6の値を見ると、重症精神障害相当とされる13点以上の割合は、児童虐待(29.4%)で最も高く、次いで殺人・傷害(23.8%)、DV(18.8%)となっている。
K6値が重症精神障害相当とされる13点以上の割合は、痴漢等では13.2%、無理やりにされた性交等では20.6%となっている。
日常生活が行えなかったと感じた平均日数は、児童虐待(45.6日)で最も多く、次いで殺人・傷害(28.2日)、性的な被害(24.8日)となっている。
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平均日数 |
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配偶者からの暴力(DV)(N=125) | 20.9日 |
ストーカー行為等(N=162) | 21.3日 |
児童虐待(N=139) | 45.6日 |
性的な被害(N=167) | 24.8日 |
交通事故(N=190) | 19.3日 |
殺人・殺人未遂又は傷害等の暴力被害(N=129) | 28.2日 |
日常生活が行えなかったと感じた平均日数は、痴漢等では13.9日、無理やりにされた性交等では41.2日となっている。
平均日数 | |
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痴漢等(N=100) | 13.9日 |
無理やりにされた性交等(N=67) | 41.2日 |
犯罪被害類型別に経済的状況に関する意識をみると、裕福(「裕福だと思う」と「やや裕福だと思う」の和)との回答比率は、性的な被害(30.8%)で最も高く、交通事故(26.6%)、ストーカー(24.7%)がこれに続く。一方、困っている(「生活にとても困っている」と「生活にやや困っている」の和)との回答比率は、児童虐待(45.7%)で最も高く、殺人・傷害(40.1%)がこれに続く。
現在の世帯年収の水準については、DV、性的な被害、児童虐待では、他類型と比較して年収水準がやや低い傾向がみられ、「100万円未満」との回答も比較的多くなっている。
被害にあう前の世帯年収の水準については、性的な被害でやや低い。児童虐待では「わからない」との回答も多い。
被害にあう前と被害後の年収水準につき、「100万円未満」、「100万円以上300万円未満」、「300万円以上600万円未満」、「600万円以上」のそれぞれの区分からの移動状況から増減をみたところ、「増えた」との回答はストーカー、児童虐待で、「減った」との回答はDVで比較的多くなっている。ライフステージの変化の影響が含まれること、「わからない」との回答が多いことから、参考情報と位置付ける。
事件直後と現在の身体的な状況の変化を尋ねたところ、多くの犯罪被害類型で「変わらない」ないしは回復基調(「回復した」と「少し回復した」との和)との回答比率が高くなっている。一方で、悪化基調(「悪化した」と「やや悪化した」との和)は、他類型と比較して殺人・傷害(20.3%)で最も高く、交通事故(19.5%)、児童虐待(17.8%)がこれに次いでいる。特に児童虐待においては、「悪化した」(12.1%)との回答比率が他の類型との比較で最も高くなっている(図表2‐43)。
身体的な状況の悪化と事件の関連については、「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(73.3%)で最も高く、次いで交通事故(70.3%)、殺人・傷害(69.2%)となっている(図表2‐44)。
事件直後と現在の精神的な状況の変化を尋ねたところ、悪化基調との回答比率は、児童虐待(32.1%)で最も高く、次いで殺人・傷害(26.0%)となっている(図表2‐45)。 精神的な状況の悪化と事件の関連については、「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(81.5%)で最も高く、次いで殺人・傷害(72.7%)、児童虐待(68.9%)となっている(図表2‐46)。
事件直後と現在の精神的な状況の変化について、悪化基調との回答比率は、痴漢等では11.1%、無理やりにされた性交等では20.2%となっている。
精神的な状況が「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率は、痴漢等では20.0%、無理やりにされた性交等では64.3%となっている。
事件直後と現在の経済的な状況の変化を尋ねたところ、悪化基調との回答比率は、DV(30.4%)で最も高く、次いで殺人・傷害(26.0%)となっている(図表2‐47)。
経済的な状況の悪化と事件の関連については、「事件に関連する問題によって悪化した」との回答比率はDV(63.2%)で最も高く、次いで殺人・傷害(50.0%)、交通事故(48.0%)となっている(図表2‐48)。
被害からの回復状況(犯罪被害者等の主観的意見)をみると、半分以上回復したとする回答比率は、性的な被害(91.1%)が最も高く、交通事故(89.8%)、ストーカー(88.9%)が続いている。最も回答比率が低いのは児童虐待(79.3%)となっている。
被害からの半分以上回復したとする回答比率は、痴漢等では93.9%、無理やりにされた性交等では86.9%となっている。
「被害の潜在化」に特に着目し、警察への通報状況、相談相手・機関、通報・相談までに要した期間、相談しなかった理由、相談しやすくなるための条件、事件後に傷つけられた/支えられた相手等について分析する。
警察への通報率は、犯罪被害類型別には交通事故(91.1%)で最も高く、次いで殺人・傷害(48.8%)である。児童虐待(5.0%)、DV(9.6%)、性的な被害(20.1%)等では低い。被害時の年齢が上がるほど、警察への通報率が高まる傾向がみられる。
<相談相手・機関>被害にあった際の相談状況では、「どこにも(誰にも)相談していない」との回答比率は、児童虐待(74.3%)、性的な被害(52.1%)で高く、交通事故(21.5%)、ストーカー(23.9%)で低い。相談相手・機関は全ての犯罪被害類型で「母」との回答比率が最も高い。また、「家族」への相談が主となるDVと交通事故、「家族」に加え「友人・知人」への相談も多いストーカーと殺人・傷害に分類できる。交通事故及び殺人・傷害にあっては警察等の「専門機関」への相談も多くなっている。
<通報・相談までに要した期間>被害にあってから最初に通報・相談するまでに要した期間については、交通事故、性的な被害、殺人・傷害は「1時間未満」、「1時間以上1日未満」の回答比率が高く、通報・相談までが早い類型である。一方、ストーカーでは「1ヶ月以上6か月未満」、児童虐待では「3年以上」等の回答比率が高く、通報・相談までに時間がかかる類型となっている。
<相談しなかった理由>どこにも相談しなかった理由としては、DVでは「他人に知られたくなかった」(47.5%)と「おおごとにしたくなかった」(47.5%)、ストーカーでは「どこに相談すればよいかわからなかった」(23.7%)と「相談するほどのことではないと思った」(23.7%)、児童虐待では「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(73.1%)、性的な被害では「他人に知られたくなかった」(29.5%)、交通事故、殺人・傷害では「特に理由はない」(それぞれ24.4%、27.5%)との回答比率が最も高い。
<相談しやすくなるための条件>官民の相談機関・団体に相談しやすくなるための対応・取組については、警察では「周りの人に知られずに相談できること」、自治体や民間の相談機関・団体では「周りの人に知られずに相談できること」に加えて「無料で相談できること」との回答比率が高い。
<事件後に傷つけられた、支えられたと感じた経験と対象>事件後に、「人々の言動や態度によって気持ちが傷つけられた」、「精神的・情緒的に支えられた」との回答はどちらも約4割であり、いずれの対象も「家族や親族」が多くなっている。「傷つけられた」、「支えられた」対象のいずれも「家族や親族」が多くなった理由として、犯罪被害者等がその犯罪等被害を相談する相手として最も多いのが、「家族や親族」であることを反映していると考えられる。
犯罪被害類型別に、回答者又は家族が受けた被害について、警察に通報した(「あなたが通報した」と「あなた以外の人が通報した」の和)との回答比率(=通報率)をみると、交通事故(91.1%)で最も高く、次いで殺人・傷害(48.8%)となっている。児童虐待(5.0%)、DV(9.6%)、性的な被害(20.1%)等ではその比率は低い(図表2‐50)。
被害の時期別に警察への通報率をみると、「過去10年以内」は44.3%で「それ以前」の32.4%と比較して11.9ポイント高い(図表2‐51)。
被害時の年齢別には、年齢が上がるほど、警察への通報率が高まる傾向がみられる。0~10歳代では通報したとの回答比率は低いが、19~22歳くらいから通報した/しないが均衡しはじめ、40歳以上では通報したが高くなっている(図表2‐52)。
加害者との面識の有無別には、「面識あり」の通報率18.1%に対し、「面識なし」は60.2%となっている(図表2‐53)。
回答者又は家族が受けた被害について、警察に通報した(「あなたが通報した」と「あなた以外の人が通報した」の和)との回答比率(=通報率)は、痴漢等では16.0%、無理やりにされた性交等では26.1%となっている。
犯罪被害類型別に、初めて被害にあった際の相談状況をみると、「どこにも(誰にも)相談していない」との回答比率は、児童虐待(74.3%)、性的な被害(52.1%)で高く、交通事故(21.5%)、ストーカー(23.9%)で低くなっている。
また、相談相手・機関をみると、DVでは「母」(40.0%)、「父」(18.4%)、ストーカーでは「母」(28.8%)、「勤務先の同僚・友人」(17.2%)、「学校等の友人」(17.2%)、児童虐待では「母」(7.9%)、「学校の先生・学生相談室・スクールカウンセラー」(7.9%)、性的な被害では「母」(23.1%)、交通事故では「母」(27.7%)、「父」(25.7%)、「警察」(22.0%)、「配偶者」(20.4%)、殺人・傷害では「母」(26.4%)、「父」(18.6%)、「警察」(18.6%)等の回答比率が高くなっている。
これを「家族(父、母、配偶者、兄弟姉妹、それ以外の家族)」、「友人・知人(勤務先の同僚・友人、上司、学校等の友人、先生、交際相手)」、「専門機関(弁護士、行政、警察、民間団体、医療機関)」の3分類にまとめてみたところ、「家族」への相談が主となるDVと交通事故、「家族」に加え「友人・知人」への相談も多いストーカーと殺人・傷害に分類できる。交通事故(31.9%)及び殺人・傷害(26.4%)にあっては、それぞれ31.9%、26.4%と「専門機関」への相談も多くなっている(図表2‐54)。
被害の時期別にみると、「誰にも相談していない」との回答比率は、「過去10年以内」(27.2%)に比べ、「それ以外」(46.9%)で高くなっている(図表2‐55)。
被害時の年齢別には、多くの世代で「家族」との回答が多いが、0~18歳では「どこにも(誰にも)相談していない」との回答比率が高く、20代以降は「専門機関」との回答比率が比較的高くなっている(図表2‐56)。
加害者との面識の有無別には、「誰にも相談していない」との回答比率は「面識あり」(42.4%)が「面識なし」(32.8%)より高く、専門機関に相談したとの回答比率は「面識あり」(13.5%)が「面識なし」(24.4%)を下回っている(図表2‐57)。
初めて被害にあった際の相談状況をみると、「どこにも(誰にも)相談していない」は痴漢等で47.0%、無理やりにされた性交等で59.4%となっている。また、相談相手・機関をみると、痴漢等では「母」(25.0%)、「学校等の友人」(14.0%)、無理やりにされた性交等では「母」(20.3%)、「警察」(8.7%)等の回答比率が高くなっている。
犯罪被害類型別に、被害にあった際に最初に相談した相手・機関をみると、DVでは「母」(40.5%)、ストーカーでは「母」(20.3%)、児童虐待では「母」(30.6%)、「学校の先生・学生相談室・スクールカウンセラー」(19.4%)、性的な被害では「母」(36.3%)、交通事故では「配偶者」(21.3%)、「母」(20.0%)、殺人・傷害では「母」(21.6%)との回答比率が高くなっている。
これを「家族」、「友人・知人」、「専門機関」の3分類にまとめてみたところ、「家族」への相談が主となるDVと交通事故、「家族」に加え「友人・知人」への相談も多いストーカー、児童虐待、性的な被害、殺人・傷害に分類できる。「専門機関」への相談が多いのは交通事故(23.3%)、殺人・傷害(21.6%)となっている。
被害にあった際に最初に相談した相手・機関としては、痴漢等、無理やりにされた性交等ともに、「母」(それぞれ35.8%、37.0%)が最も多くなっている。
被害にあってから最初に通報・相談するまでに要した期間は、犯罪被害類型により大きく傾向が異なる。交通事故、性的な被害、殺人・傷害は「1時間未満」、「1時間以上1日未満」の回答比率が高く、通報・相談までが早い類型となっている。一方、ストーカーでは「1ヶ月以上6か月未満」、児童虐待では「3年以上」等の回答比率が高く、通報・相談までに時間がかかる類型となっている。児童虐待では「わからない」も多くなっている(図表2‐59)。
加害者との面識の有無別には、「面識なし」では1日未満(「1時間未満」と「1時間以上1日未満」の和)との回答比率が68.1%となる一方で、「面識あり」では20.4%となっている(図表2‐60)。
被害にあってから最初に通報・相談するまでに要した期間は、痴漢等では「1時間未満」(43.4%)、「1時間以上1日未満」(17.0%)、無理やりにされた性交等でも「1時間未満」(32.1%)、「1時間以上1日未満」(17.9%)等の回答比率が高い。一方、「わからない」との回答も、痴漢等で20.8%、無理やりにされた性交等で14.3%となっている。
警察に通報・相談しなかったとする回答者にその理由を尋ねたところ、犯罪被害類型別には、DV、ストーカー、交通事故では「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」(それぞれ46.0%、39.4%、35.3%)、児童虐待、性的な被害では「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(同79.4%、30.4%)、殺人・傷害では「警察に相談できることだと思わなかったから」(35.4%)との回答比率が最も高くなっている(図表2‐61)。
加害者との面識の有無別には、「面識あり」では「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(37.0%)との回答比率が最も高く、「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」(29.9%)、「警察に相談できることだと思わなかったから」(29.4%)がこれに次いでいる。また、「面識なし」では「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」(32.7%)が最も高く、「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(23.8%)、「どうせとりあってもらえないと思ったから」(23.1%)がこれに次いでいる(図表2‐62)。
警察に通報・相談しなかった理由は、痴漢等では「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」(32.1%)、無理やりにされた性交等では「被害の話をするのがつらかったから」、「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(それぞれ31.4%)との回答が最も多くなっている。
同様に、どこにも(誰にも)相談しなかったとする回答者にその理由を尋ねたところ、犯罪被害類型別には、DVでは「他人に知られたくなかった」(47.5%)と「おおごとにしたくなかった」(47.5%)、ストーカーでは「どこに相談すればよいかわからなかった」(23.7%)と「相談するほどのことではないと思った」(23.7%)、児童虐待では「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(73.1%)、性的な被害では「他人に知られたくなかった」(29.5%)、交通事故、殺人・傷害では「特に理由はない」(それぞれ24.4%、27.5%)との回答比率が最も高くなっている(図表2‐63)。
加害者との面識の有無別には、「面識あり」では「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(42.1%)との回答比率が最も高く、「どこに相談すれば良いか分からなかった」(24.1%)、「おおごとにしたくなかった」(23.6%)が続いている。「面識なし」では、「相談するほどのことではないと思った」(23.1%)との回答比率が最も高く、「どこに相談すればよいかわからなかった」(22.3%)、「被害について誰かに話すことが恥ずかしかった」(19.0%)、「他人に知られたくなかった」(19.0%)が続いている(図表2‐64)。
どこにも(誰にも)相談しなかった理由としては、痴漢等では「相談するほどのことではないと思った」(31.9%)、無理やりにされた性交等では「他人に知られたくなかった」(41.5%)との回答が最も多くなっている。
警察に通報・相談しなかったとする回答者に、どのような対応・取組があれば被害を相談しやすくなるかを尋ねたところ、交通事故を除く類型で「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」との回答比率が最も高くなっている。交通事故では「夜間や休日でも相談できること」(41.2%)が高くなっている(図表2‐65)。
この点について男女別に比較してみると、女性では「希望する性別の職員に対応してもらえること」、「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」等への回答比率が高く、男性をそれぞれ16.3ポイント、13.1ポイント上回っている(図表2‐66)。
どのような対応・取組があれば警察に被害を相談しやすくなるかについては、痴漢等、無理やりにされた性交等ともに「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」(それぞれ51.2%、64.7%)との回答比率が最も高くなっている。
同様に、弁護士・法テラス、行政の相談窓口、民間の犯罪被害者支援団体、医療機関に相談しなかったとする回答者に、どのような対応・取組があれば被害を相談しやすくなるかを尋ねた。犯罪被害類型別にみると、「性的な被害」と「交通事故」以外の類型で「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」と「無料で相談できること」が1、2位になった。性的な被害では「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」(54.9%)と「希望する性別の職員に対応してもらえること」(50.0%)が、交通事故では「無料で相談できること」(59.4%)と「相談窓口が近くにあること」(36.9%)の回答比率が高くなっている(図表2‐67)。
性別にみると、前項「(1)警察に相談しやすくなるための条件」同様に、女性で「希望する性別の職員に対応してもらえること」、「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」等への回答比率が高く、男性をそれぞれ21.9ポイント、16.7ポイント上回っている(図表2‐68)。
どのような対応・取組があれば自治体や民間の相談機関・団体に被害を相談しやすくなるかについては、痴漢等では「相談窓口が近くにあること」(54.5%)、無理やりにされた性交等では「周りの人に知られずに相談できること、プライバシーが守られること」(63.1%)との回答比率が最も高くなっている。
事件後に、人々の言動や態度によって気持ちが傷つけられたと感じたことがあるか、ある場合その相手について尋ねたところ、「家族、親族」との回答比率が20.6%と高く、次いで「同じ職場、学校等に通っている人」(9.6%)、「加害者関係者」(9.0%)となっている。また、「あてはまるものはない」との回答が60.1%となっている(図表2‐69)。
相談の有無別にみると、「相談経験あり」、「相談経験なし」では大きく傾向は変わらないが、前者では「警察官」、「加害者関係者」の回答比率が比較的高く、後者をそれぞれ5.4ポイント、3.9ポイント上回っている(図表2‐70)。 犯罪被害類型別にみると、交通事故を除いた類型では「家族、親族」との回答比率が最も高くなっている。交通事故では「警察官」(9.5%)との回答比率が高くなっている(図表2‐71)。
事件後に、人々の言動や態度によって精神的・情緒的に支えられたと感じたことがあるか、ある場合その相手について尋ねたところ、「家族、親族」との回答比率が28.2%と高く、次いで「友人、知人」が22.5%、「同じ職場、学校等に通っている人」が10.4%となっている。「あてはまるものはない」との回答比率は56.6%となっている(図表2‐72)。
相談の有無別にみると、「相談経験あり」では「家族、親族」、「友人、知人」、「同じ職場、学校などに通っている人」との回答比率が高く、「相談経験なし」をそれぞれ23.7ポイント、13.5ポイント、11.6ポイント上回っている。また、「あてはまるものがない」との回答比率は「相談経験あり」で46.7%、「相談経験なし」で72.5%となっている(図表2‐73)。
犯罪被害類型別にみると、全ての類型で「家族、親族」、「友人、知人」との回答が上位1、2位となっている(図表2‐74)。
犯罪被害類型別の分析でも被害の影響が大きいとされた児童虐待につき、その被害状況を、加害者、自分以外の被害者、虐待に気づいていた人、介入してくれた人等の視点から分析する。
児童虐待の加害者は、「父」(56.4%)、「母」(30.7%)がほとんどを占める。男性は父からの加害が主であるが、女性は多様な加害者からの被害を受けている。
虐待に気づいていた人としては「母」(36.0%)、「兄弟姉妹」(25.9%)、「祖父母」(15.8%)等の回答比率が高い。一方、「気づいていた人がいない」も35.3%となっている。
虐待に気づいていた人のうち、虐待を辞めさせるために「介入してくれた人はいない」との回答は68.9%である。介入者としては「母」(13.3%)、「祖父母」(7.8%)との回答比率が高い。
児童虐待の加害者としては、「父」(56.4%)、「母」(30.7%)がほとんどを占める(図表2‐75)。
被害者の性別にみると、男性では「父」が加害者である比率が70.4%と高くなっている。一方、女性はより多様な加害者からの被害を受けている(図表2‐76)。
被害者の年齢別にみると、年齢が上がるにつれ、父母以外の比率が少なくなっている(図表2‐77)。
回答者以外に児童虐待の被害にあっていた人としては、「兄弟姉妹」が66.7%で最も多く、次いで「母」が50.5%となっている。
回答者への虐待に気づいていた人としては、「母」との回答比率が36.0%と最も高く、「兄弟姉妹」(25.9%)、「祖父母」(15.8%)がこれに次いでいる。「気づいていた人はいない」との回答も35.3%となっている(図表2‐79)。 被害者の性別にみると、男性では「母」(54.7%)、「兄弟姉妹」(34.0%)、「祖父母」(20.8%)、女性では「母」(24.4%)、「兄弟姉妹」(20.9%)、「父」(18.6%)との回答比率が高くなっている。「気づいていた人はいない」との回答は、男性の28.3%に対して、女性では39.5%となっている(図表2‐80)。
虐待に気づいていた人のうち、虐待を辞めさせるために介入してくれた人はいたか、いる場合その相手について尋ねたところ、「介入してくれた人はいない」との回答比率が68.9%と最も高い。介入してくれた人の中では「母」(13.3%)、「祖父母」(7.8%)との回答比率が高くなっている(図表2‐81)。
被害者の性別にみると、男性では「母」(21.1%)、「祖父母」(15.8%)、女性では「母」(7.7%)との回答比率が高くなっている。「介入してくれた人はいない」との回答比率は、男性で57.9%、女性で76.9%となっている(図表2‐82)。
なお、児童虐待の被害者が受けた精神的被害とその影響、経済的不安、被害からの回復度合いの遅れ等については「2-3.犯罪被害類型別の特徴」を参照されたい。
警察介入後の「再被害」に着目し、DV及びストーカーの犯罪被害者等を対象に、警察・行政への通報・相談状況、警察・行政の対応状況、その後の加害者の状況、再被害の状況、再被害の影響について分析する。
警察への通報率はDVで9.6%、ストーカーで32.5%、警察への相談はDVで6.4%、ストーカーで16.6%、行政への相談はDVで5.6%、ストーカーで5.5%となっている。
警察や行政への通報・相談により、DVでは「警察が加害者を呼び出して警告した」ケースが22.2%、「ストーカー規制法に基づく書面警告が行われた」ケースが16.7%、ストーカーでは「警察が加害者を呼び出して警告した」ケースが33.3%みられている。「これらの対応は行われなかった」ケースもDV44.4%、ストーカー33.3%となっている。
その結果、DVでは「懲役刑の判決を受けたが執行猶予が付いた」(33.3%)、ストーカーでは「罰金刑を課された」(26.9%)ケースもみられている。
警察が上記対応をとった後に再被害を受けたとの回答比率は、DVでは66.7%、ストーカーで33.3%となっている。
「再被害を受けたことがある」回答者では、K6の値が高く、日常生活が行えなかったと感じた平均日数も多い。被害からの回復度も低く、受けた身体上・精神的ダメージの大きさがうかがえる。
※ただし、DV、ストーカー被害の回答者においては、通報・相談したとの回答比率が低いため、警察・行政の対応状況以降は回答数も少なく、参考情報と位置付ける。警察に通報した(「あなたが通報した」と「あなた以外の人が通報した」の和)との回答比率(=通報率)は、DVで9.6%、ストーカーで32.5%となっている(図表2‐83)。
警察に相談したとの回答は、DVで6.4%、ストーカーで16.6%となっている。また、行政の相談窓口に相談したとの回答は、DVで5.6%、ストーカーで5.5%となっている(図表2‐84)。
警察や行政への通報・相談行為により、加害者に対して警察がとった対応としては、DVでは「これらの対応は行われなかった」との回答比率が44.4%と最も高いが、「警察が加害者を呼び出して警告した」(22.2%)、「ストーカー規制法に基づく書面警告が行われた」(16.7%)がこれに次いでいる。また、ストーカーでは「これらの対応は行われなかった」(33.3%)、「警察が加害者を呼び出して警告した」(33.3%)との回答比率が高くなっている。
※ただし、DV、ストーカー被害の回答者においては、通報・相談したとの回答比率が低いため、本設問への回答数も少なくなっていることに留意する必要がある。そのため、参考情報と位置付ける(以下、本節内においては同様)。警察が上記対応をとった後の加害者の状況としては、DVでは「懲役刑の判決を受けたが執行猶予が付いた」(33.3%)、「刑罰を科されなかった」(33.3%)との回答比率が高い。ストーカーでは「罰金刑を課された」(26.9%)、「刑罰を科されなかった」(26.9%)との回答比率が高い。
警察が上記対応をとった後に再び何らかの被害(再被害)を受けたとの回答比率は、DVで66.7%、ストーカーで33.3%となっている。
再被害の有無別に、身体上・精神的な問題と事件との関係をみると、「再被害を受けたことがある」とする回答者では、事件と関連する身体上・精神的な問題を感じているとの回答比率が高くなっている(図表2‐88、図表2‐89)。
また、「再被害を受けたことがある」回答者では、K6の値が高く(図表2‐90)、また日常生活が行えなかったと感じた日数も多い(図表2‐91)。被害からの回復度も低く(図表2‐92)、受けた身体上・精神的ダメージの大きさがうかがえる。
被害の特徴と加害者属性との関連、加害者属性と被害者行動との関連、加害者属性と被害状況との関連を分析する。
分析に際しては、加害者を、「家族」(父、母、継父(母の恋人を含む)、継母(父の恋人を含む)、兄弟姉妹、子、祖父母)、「配偶者・交際相手」(配偶者(事実婚を含む)、元配偶者(事実婚を解消した方を含む)、交際相手、元交際相手)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」(職場、アルバイト先の関係者、通っていた学校の関係者(上司、同僚、部下、取引先の相手、学校の教員など)、知人、友人)、「知らない人等」(全く無関係の人、知らない人、わからない)、「その他」に分類した上で、クロス集計を行う。
犯罪被害類型別に加害者属性をみると、DVでは「配偶者・交際相手」(100%)、児童虐待では「家族」(96.4%)、交通事故では「知らない人等」(94.2%)が多くを占めている。ストーカーでは「知らない人等」(36.2%)、「知人、友人等」(31.9%)、「配偶者・交際相手」(29.4%)が同程度である。性的な被害では「知らない人等」(78.7%)のほか「知人、友人等」(10.1%)も一定数みられる。殺人・傷害では加害者構成が多様となっている。
加害者が「家族」や顔見知り(「家族」、「配偶者・交際相手」、「知人、友人、職場・学校の関係者等」の和)である場合は被害が長期化している傾向がうかがえる。
<加害者属性と被害者行動との関連>警察への通報率は、加害者が「家族」(13.5%)の場合に最も低く、「配偶者・交際相手」(18.1%)、「知人、友人等」(25.4%)、「知らない人等」(58.6%)と関係性が密接でなくなっていくにつれて、高くなっている。加害者が家族の場合には相談をしない犯罪被害者等も多くなる(66.1%)。
どこにも相談をしなかった理由としては、加害者が家族の場合には「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(76.6%)、それ以外の場合には「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」との回答比率が高くなっている。
<加害者属性と被害状況との関連>加害者との関係性の密接さとの関連は、身体上の問題よりも精神的な問題において大きいこと、日常生活が行えなかった日数は加害者が家族や知人、友人等の場合に長くなる傾向がうかがえること、加害者との関係性が密接であるほど、被害からの回復度が低い傾向があること等が示唆される。
犯罪被害類型別に加害者属性をみると、DVでは「配偶者・交際相手」(100%)、児童虐待では「家族」(96.4%)、交通事故では「知らない人等」(94.2%)が大半もしくは全てを構成している。ストーカーでは「知らない人等」(36.2%)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」(31.9%)、「配偶者・交際相手」(29.4%)が同程度である。性的な被害では「知らない人等」(78.7%)のほか「知人、友人、職場・学校の経験者等」(10.1%)等も一定数みられる。殺人・傷害では「知らない人等」(40.3%)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」(24.0%)、「家族」(17.1%)、「配偶者・交際相手」(9.3%)等、加害者構成が多様となっている。
被害が継続した期間と加害者属性との関連をみる。DV、ストーカーでは被害が長期になるほど、加害者が「家族」である比率が高まっている。児童虐待、性的な被害、交通事故、殺人・傷害でも被害が長期になるほど、加害者が顔見知り(「家族」、「配偶者・交際相手」、「知人、友人、職場・学校の関係者等」の和)となる傾向もうかがえる。
警察へ通報した(「あなたが通報した」と「あなた以外の人が通報した」との回答の和)との回答比率(=通報率)は、加害者が「家族」(13.5%)の場合に最も低く、「配偶者・交際相手」(18.1%)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」(25.4%)、「知らない人等」(58.6%)と関係性が密接でなくなっていくにつれて、高くなっている。
加害者別に相談経験の有無をみると、「家族」の場合に「相談経験なし」との回答が66.1%と高くなっている(図表2‐96)。
相談した相手としては、加害者が「家族」の場合には「誰にも相談していない」(66.1%)が、「配偶者・交際相手」、「知らない人等」の場合には「家族」(それぞれ50.5%、43.1%)が、「知人、友人、職場・学校の経験者等」の場合には「友人・知人」(48.1%)が最も高くなっている(図表2‐97)。
警察に相談をしなかった理由としては、加害者が「家族」の場合には「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(76.6%)との回答比率が、それ以外の場合には「警察に相談するほどの被害ではないと思ったから」(「配偶者・交際相手」42.2%、「知人、友人、職場・学校の関係者等」39.2%、「知らない人等」30.5%)が最も高くなっている(図表2‐98)。
どこにも相談しなかった理由としては、加害者が「家族」の場合には「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」(68.8%)、「配偶者・交際相手」の場合には「他人に知られたくなかった」(39.3%)、「おおごとにしたくなかった」(39.3%)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」の場合には「おおごとにしたくなかった」(37.0%)、「知らない人等」の場合には「どこに相談すればよいかわからなかった」(21.5%)、「相談するほどのことではないと思った」(21.5%)との回答比率が最も高くなっている(図表2‐99)。
加害者の属性別に身体上・精神的な問題と事件との関連をみると、「身体上の問題と事件が関連していると思う」との回答比率は加害者が「知人、友人、職場・学校の関係者等」(28.3%)の場合に最も高く、次いで「知らない人等」(16.2%)となっている。一方、「精神的な問題と事件が関連していると思う」は加害者が「家族」(34.9%)、「知人、友人、職場・学校の関係者等」(34.4%)の場合に高くなっている。これらから、加害者との関係性の密接さとの関連は、身体上の問題よりも精神的な問題において大きいことが示唆される(図表2‐100、図表2‐101)。また、日常生活が行えなかった日数は加害者が「家族」、「知人、友人、職場・学校の関係者等」の場合に、長くなる傾向がうかがえる(図表2‐102)。
加害者属性と被害からの回復状況との関連をみると、半分以上回復した(「5~6割程度回復した」と「7~8割程度回復した」と「9~10割程度回復した」の回答の和)との回答比率は、加害者が「知らない人等」(91.5%)の場合に最も高く、次いで「知人、友人、職場・学校の関係者等」(83.9%)、「配偶者・交際相手」(84.0%)と続き、「家族」(71.7%)が最も低い。加害者との関係性が密接であるほど、回復度が低い傾向がうかがえる。
被害の構造に関し、犯罪等被害による身体上・精神的な問題の影響、事件の影響と身体上・精神的な問題との関連性、身体・精神状態と時間との関係について分析する。
身体上・精神的な問題が事件に関連しているとする回答者では、K6の値、日常生活が行えなかった日数ともに高い数値となっている。また、K6値の全区分(0~6点、7~12点、13~17点、18~24点)において、日常生活が行えなかった平均日数が、一般対象者より犯罪被害者等の方が多く、生活機能への影響は犯罪被害者等の方がより深刻であることがうかがえる。
身体上の問題と事件が関連しているとする回答者では、精神的な問題と事件が関連しているとの回答比率も高くなっており(逆も同様)、相互に密接に関連していることがうかがえる
身体上・精神的な問題と被害時期との関係をみると、過去10年以内の犯罪被害者等では、それ以前の犯罪被害者等より、身体上・精神的な問題を有する回答者の比率がそれぞれ約14、約19ポイントずつ高くなっている。このため、時間の経過が事件と関連する身体上・精神的な問題を軽減する作用を有していることがうかがえる。しかし、重症精神障害相当の状態にある人(K6で13点以上)とそれ以外の人との割合については、事件後経過時間によって大きな差はみられない。
身体上・精神的な問題と事件との関連別にK6の値をみると、重症精神障害相当の状態である13点以上は、「身体上の問題と事件が関連していると思う」回答者で32.4%、「精神的な問題と事件が関連していると思う」回答者で39.7%となっており、身体上・精神的な問題と事件が関連していないと思う回答者と比して高い数値となっている(図表2‐104、図表2‐105)。
日常生活を行えなかった平均日数をみると、「身体上の問題と事件が関連していると思う」回答者は61.4日、「精神的な問題と事件が関連していると思う」回答者は61.1日となっており、身体上・精神的な問題と事件が関連していないと思わない回答者の27.6日、36.3日と比較して、高い数値となっている(図表2‐106、図表2‐107)。
K6の値別に日常生活が行えなかった平均日数をみると、K6の値が「13~17点」では犯罪被害者等が38.0日、一般対象者が33.3日、「18~24点」では犯罪被害者等が121.6日、一般対象者が86.1日となっている。K6の値による区分では精神健康の障害程度が同じ場合でも、犯罪被害者等では、一般対象者と比較して日常生活が行えなかったとする日数が多く、生活への影響がより深刻であることが読み取れる(図表2‐108)。
平均日数 | |
---|---|
身体上の問題と事件が関連していると思う | 61.4日 |
身体上の問題と事件が関連していないと思う | 27.6日 |
身体上の問題はなかった | 9.7日 |
平均日数 | |
---|---|
精神的な問題と事件が関連していると思う | 61.1日 |
精神的な問題と事件が関連していないと思う | 36.3日 |
精神的な問題はなかった | 4.8日 |
0~6点(N=521) | 9.7日 | 0~6点(N=602) | 1.9日 |
7~12点(N=210) | 27.2日 | 7~12点(N=106) | 5.6日 |
13~17点(N=86) | 38.0日 | 13~17点(N=37) | 33.3日 |
18~24点(N=80) | 121.6日 | 18~24点(N=34) | 86.1日 |
身体上の問題と事件が関連しているとする回答者では、精神的な問題と事件が関連しているとの回答比率も高くなっており(逆も同様)、相互に密接に関連していることがうかがえる(図表2‐109、図表2‐110)。
被害の時期(事件からの経過時間)別に、事件に関連して生じたと思われる身体上・精神的な問題の有無を比較すると、被害の時期が「過去10年以内」の回答者では、事件と関連した身体上の問題を抱えているとの回答が25.2%、事件と関連した精神的な問題を抱えているとの回答が36.4%となっており、被害の時期が「それ以前」の回答者と比較してそれぞれ約14、約20ポイントずつ多くなっている(図表2‐111、図表2‐112)。
しかし、重症精神障害相当の状態にある人(K6で13点以上)とそれ以外の人との比較では、事件後経過時間によって大きな差はみられない(図表2‐113)。
精神健康状態をスコア化するK6の値をベースに、被害を取り巻く周辺要因との関係をみることで、精神健康状態に及ぼす要因を分析する。
重症精神障害相当にある犯罪被害者等を類型別にみると、児童虐待、殺人・傷害、DV等で多くなっている。また、重症精神障害相当にある回答者における加害者との関係をみると、加害者が判明している人のうち、割合が高いのは「母」、「兄弟姉妹」、「父」となっており、犯罪被害者等との関係性の密接さが精神健康の悪化に関連していることが考えられる。
精神的状況、経済的状況については、「事件に関連する問題によって状況が悪化した」との回答者で、重症精神障害相当にある人の割合が高くなっている。
経済状況については、「事件に関連する問題によって経済的状況が悪化した」との回答者や、生活に困っている回答者では、重症精神障害相当にある人の割合が高くなっている。犯罪等被害の影響は、経済状況にも関連することがうかがえる。
重症精神障害相当(K6の値が13点以上)の犯罪被害者等を犯罪被害類型別にみると、児童虐待(29.4%)で最も多く、次いで殺人・傷害(23.8%)、DV(18.8%)となっている(図表2‐114)。
また、重症精神障害相当にある回答者における加害者との関係をみると、加害者が判明している人のうち、重症精神障害相当の割合が最も低いのが「祖父母」(12.5%)であり、次いで「交際相手、元交際相手」(13.0%)、「全く無関係な人、知らない人」(13.2%)となっている。割合が高いのは「母」(41.8%)、「兄弟姉妹」(35.3%)、「父」(24.4%)となっており、犯罪被害者等との関係性の密接さが精神健康の悪化に関連していることが考えられる(図表2‐115)。
精神的状況については、「事件に関連する問題によって状況が悪化した」との回答者で、重症精神障害相当にある人の割合が高くなっている。身体的状況ではこのような関係はみられていない(図表2‐116、図表2‐117)。
事件後の経済的状況の変化とK6の値との関係をみると、「事件に関連する問題によって経済的状況が悪化した」との回答者で、重症精神障害相当にある人の割合が40.6%と高くなっている(図表2‐118)。
また、現在の経済的状況に関する意識とK6値の関係をみると、「生活に困っている」、「生活にとても困っている」との回答者では、重症精神障害相当にある人の割合がそれぞれ20.3%、36.8%と高くなっている(図表2‐119)。 これらから、犯罪等被害の影響は、経済状況にも関連することがうかがえる。
Q38(現在、事件による被害からどのくらい回復したと感じているか)で尋ねた、被害からの主観的な回復度を基に、回復に及ぼす要因の抽出とその影響を分析する。
被害からの回復状況では、多くの犯罪被害類型で半分以上回復したとの回答が8~9割を占める中、児童虐待では69.3%にとどまっている。また、被害の継続期間別にみると、長期にわたって被害を受けていた犯罪被害者等ほど回復度が低い。被害の時期別には、「過去10年以内」と比べて「それ以前」では回復度が高い。時間の経過が事件と関連する様々な問題を軽減することが読み取れる。
加害者との関係では、被害から半分以上回復したとの回答比率は、加害者が「全く無関係な人、知らない人」や「交際相手・元交際相手」等で高い一方、「父」、「母」では低くなっている。また、加害者との面識がない回答者は、面識がある回答者と比較して回復度が高い。これらから、犯罪被害者等との関係性の密接さが、被害からの回復度の低さの一要因となることがうかがえる。
回復度と、生活の状況、世帯年収との関係をみると、裕福だと思っている回答者や、世帯年収が高い回答者で、回復度が高い傾向もうかがえ、回復状況と経済状況の間に関連があることが読み取れる。
犯罪被害類型別には、多くの類型で半分以上回復した(「5~6割程度回復した」と「7~8割程度回復した」と「9~10割程度回復した」の回答の和)との回答比率が8~9割を占める中、児童虐待では69.3%にとどまっている(図表2‐122)。
被害の継続期間別にみると、長期にわたって被害を受けていた犯罪被害者等ほど、回復度が低いことがうかがえる(図表2‐123)。
被害の時期(事件からの経過年数)別にみると、半分以上回復したとの回答比率は、「過去10年以内」の82.5%と比較して「それ以前」は86.3%とやや高く、特に「9~10割程度回復した」との回答比率は「過去10年以内」の33.1%に対し、「それ以前」が47.4%と14.3ポイント高くなっている。時間の経過が事件と関連する様々な問題を軽減する作用を有していることが読み取れる(図表2‐124)。
加害者が判明している回答者について、犯罪被害者等との関係をみた(一定(二桁)以上の回答数が確保された加害者区分のみを分析対象とする)。
被害から半分以上回復したとの回答比率は、加害者が「全く無関係な人、知らない人」(91.8%)、「交際相手、元交際相手」(90.7%)等において比較的高い一方、「母」(68.2%)、「父」(73.5%)では低くなっている(図表2‐126)。
加害者との面識の有無別にみると、半分以上回復したとの回答比率は、「面識なし」で91.8%、「面識あり」で79.5%となっている。「面識なし」では「9~10割程度回復した」も58.4%に達している(図表2‐127)。
これらから、犯罪被害者等との関係性の密接さが、被害からの回復度の低さの一要因となることがうかがえる。
被害からの回復度が高い回答者では「学校や職場、地域の人々との関係が親密になった」、「自分が結婚した」、「同居している家族に子どもが生まれた」等のポジティブなライフイベントを経験している傾向がみられる。一方、回復度が低い回答者では「家族間に不和が起こった」、「学校や職場、地域の人々との関係が悪化した」、「自分が別居・離婚をした」、「学校または仕事をしばらく休んだ」等のネガティブなライフイベントを経験しており、回復状況と生活の変化に関連があることがうかがえる。
ただし、回復度が高まったためポジティブなライフイベントを経験したのか、ポジティブなライフイベントを経験したため回復度が高まったのかという因果関係は本調査では明らかにはできていない。
回復度と経済的状況に関する意識の関係をみると、裕福だと思う回答者ほど、回復度が高いことがうかがえる(図表2‐129)。
また、現在の世帯年収との関係をみると、他と比較して「600万円以上」では、「9~10割程度回復した」との回答比率が高くなっている(図表2‐130)。
これらの結果から、回復状況と経済状況の間に関連があることがうかがえる。
今後の支援・制度の検討に資するため、犯罪被害者等が給付・支給・賠償等を受けている状況、支援を受けた/制度を利用した機関・団体とその満足度、被害直後と現在の支援ニーズ等について分析する。また、地方自治体に設置されている犯罪被害者等への総合的な対応を行う窓口「総合的対応窓口」の認知度等を調査する。
事件に関連して受けた給付・支給・賠償等としては、「民間団体の給付・支給」が10.0%、「加害者からの賠償」が8.8%、「公的な給付・支給」が4.8%で、「いずれも受けたことがない」との回答も78.5%となっている。犯罪被害類型別には、給付・支給・賠償等を受けたとの回答比率(全体(100%)から「いずれも受けていない」との回答を除いた割合)は交通事故(64.6%)で高く、児童虐待(5.8%)、性的な被害(7.1%)、DV(8.9%)、ストーカー(9.8%)で低い。
支援を受けた/制度を利用した機関・団体としては、「警察」(12.2%)が最も多く、次いで「法テラス」(5.6%)、「地方自治体」(5.5%)となっている。犯罪被害類型別には、DVでは「法テラス」(8.9%)、ストーカー、性的な被害、交通事故、殺人・傷害では「警察」(それぞれ12.4%、9.5%、21.1%、19.0%)、児童虐待では「学校・職場」(5.0%)との回答比率が最も高い。被害の時期が「過去10年以内」の犯罪被害者等では、「それ以前」と比較して「いずれの機関・団体の支援も受けていない/制度も使っていない」との回答比率が17.3ポイント低く、支援・制度の利用が進んでいる。対応の満足度が高い機関・団体としては、「民間支援団体・被害者団体・自助グループ」、「検察庁」、「学校・職場」等が挙げられる。
被害直後及び現在必要な手助け・支援としては、双方とも「どのような支援・配慮が必要かわからなかった」との回答比率(それぞれ37.3%、36.9%)が最も高いが、具体的ニーズとしては、被害直後は「事件・被害に関する話を聞いてもらう」(30.9%)、現在では「特になし」(33.0%)がそれぞれ最も高い。
総合的対応窓口の認知度は19.2%で、性別では男性(25.4%)、犯罪被害類型別には、DV(25.9%)やストーカー(5.8%)で高い。
事件から現在までの間に、事件に関連して給付、支給、賠償等を受けたかについては、「民間団体の給付・支給」が10.0%、「加害者からの賠償」が8.8%、「公的な給付・支給」が4.8%となっている。「いずれも受けていない」は78.5%となっている(図表2‐134)。
犯罪被害類型別には、給付・支給・賠償等を受けたとの回答比率(全体(100%)から「いずれも受けていない」との回答を除いた割合)は交通事故(64.6%)が最も高い。一方、児童虐待(5.8%)、性的な被害(7.1%)、DV(8.9%)、ストーカー(9.8%)で低くなっている(図表2‐135)。
被害の時期別には、給付、支給、賠償等を受けたとの回答比率は「過去10年以内」(25.0%)でやや高くなっているが、「それ以前」(19.0%)と大きな差はない(図表2‐136)。
回答者や家族が支援を受けた/制度を利用したことがある機関・団体については、「いずれの機関・団体の支援も受けていない/制度も使っていない」との回答比率が77.1%と最も高く、次いで「警察」(12.2%)、「法テラス」(5.6%)、「地方自治体・福祉機関・医療機関」(5.5%)となっている(図表2‐139)。
犯罪類型別には、「いずれの機関・団体の支援も受けていない/制度も使っていない」との回答比率が最も高いのは児童虐待(87.1%)であり、次いで性的な被害(85.2%)、DV(81.5%)となっている。支援を受けた回答者の中では、DVでは「法テラス」(8.9%)、ストーカー、性的な被害、交通事故、殺人・傷害では「警察」(各12.4%、9.5%、21.1%、19.0%)、児童虐待では「学校・職場」(5.0%)との回答比率が最も高くなっている(図表2‐140)。
被害の時期別には、「過去10年以内」の犯罪被害者等では「それ以前」と比較して、「いずれの機関・団体の支援も受けていない/制度も使っていない」との回答比率が17.3ポイント低く、支援・制度の利用が進んでいると言える。「過去10年以内」では、全機関・団体において支援を受けた、利用したとの回答比率が高くなっているが、特に「警察」の利用が11.4ポイント高くなっている(図表2‐141)。
回答者や家族が支援を受けた/制度を利用したことがある機関・団体の対応についての満足度を尋ねたところ、満足との回答(「満足した」と「やや満足した」との和)は、「民間支援団体・被害者団体・自助グループ」(77.7%)、「検察庁」(69.3%)、「学校・職場」(57.1%)等で高くなっている。
回答者とその家族が被害直後に必要とした、また現在必要としている手助け・支援を尋ねたところ、双方とも「どのような支援・配慮が必要かわからなかった」との回答比率がそれぞれ37.3%、36.9%と最も高くなっている。具体的なニーズを挙げた意見の中では、被害直後では「事件・被害に関する話を聞いてもらう」(30.9%)が最も高く、「警察・検察との応対の手助け、付き添い」(13.8%)、「精神的な支援」(12.9%)、「そっとしてもらうこと」(10.0%)がこれに続いている。現在では「特になし」(33.0%)が最も高く、「事件・被害に関する話を聞いてもらう」(10.2%)、「そっとしてもらうこと」(9.4%)、「精神的な支援」(8.9%)が続いている。
地方自治体に設置されている犯罪被害者等への総合的な対応を行う窓口(総合的対応窓口)の認知度、認知のきっかけについて尋ねた。
総合的対応窓口の認知状況としては、「知らなかった」(80.7%)との回答比率が高く、認知度(「被害にあった後に知った」と「被害にあう前から知っていた」の和)は19.2%となっている(図表2‐144)。
性別には、男性の認知度は25.5%、女性の認知度は15.5%である(図表2‐145)。
年齢別には、若年層と高齢層で認知度が高く、壮年層で低い傾向がみられる(図表2‐146)。
被害の時期別には、「過去10年以内」(25.8%)の認知度が高くなっている(図表2‐147)。
犯罪被害類型別には、ストーカー(25.9%)、DV(25.8%)の犯罪被害者等で認知度が高くなっている(図表2‐148)。
総合的窓口を知ったきっかけとしては、「テレビ・ラジオ」(24.6%)との回答比率が最も高く、次いで「地方自治体の広報誌・チラシ・パンフレット等」(18.3%)、「周りの人に教えてもらった」(17.1%)となっている(図表2‐150)。
犯罪被害者等の性別で比較すると、男性で比較的多いのは、行政機関の電子的媒体(ホームページ、ソーシャルメディア等)と広報誌等(チラシ・パンフレット・白書等)を通じた認知の割合は女性よりも男性が多く、女性で比較的多いのは、マスメディア(新聞、テレビ等)と口コミを通じた認知の割合は男性よりも女性の方が多くなっている(図表2‐151)。
年齢別には、回答数が十分でないため参考値となるが、比較的若年層では電子的媒体中心、高齢層ではマスコミ中心、壮年層ではバランスの取れた認知等が多い傾向がうかがえる(図表2‐152)。
犯罪被害者等からのコメント(自由回答)から、身体上・精神的な被害の影響、通報・相談状況、施策への要望等について重要事項を列記する。
身体上・精神的な被害の影響に関し、犯罪被害者等から寄せられた自由記述形式での回答を以下に整理する。
被害の影響は非常に長期、あるいは一生にわたって継続する。特に被害の長期化が懸念される児童虐待、DV、性的被害のみならず、ストーカー等や交通事故、殺人・暴力等の被害についても被害の影響が日常生活に影を落としている。被害の長期化が深刻な様子がうかがえる。
<DVの被害者>離婚で被害に一区切りはついたが、トラウマは残るとの意見がみられる。
<ストーカーの被害者>被害から数十年経っても恐怖は忘れない、今でも思い出すと嫌な気分がよみがえる、いまだに夢に出てくる、男性不信となっている等の意見がみられる。
<児童虐待の被害者>大人になっても虐待の傷は癒えない、永遠に苦しむ、鮮明に苦痛を覚えている、子供の時に受けた傷はその人の将来に少なからぬ影を落とす、年齢を重ねるほどフラッシュバックが多くなる、苦しめられた年数に比例して立ち直りにくくなる、いまだにまっすぐ人の目を見て話すことができない等の意見がみられる。
<性的な被害の被害者>時折思い出すと吐き気がする、事件後心身状態が悪化していき休職を余儀なくされた、孤独である、男性不信から男性上司・同僚の言動に過敏に反応してしまう、被害から十年以上経っても苦しい等の意見がみられている
<交通事故の被害者>事件後は横断歩道が怖くて渡れなかった、事故があった道の通行を避けた、車に乗るのに慎重になった、一人でハンドルを握れるようになっても何度も冷や汗が出た、事故のことを思い出すと心拍数が上がる、事故の恐怖は忘れない等の意見がみられている。
<殺人・暴力等>被害者とその子どもの心の傷は現在も癒えることはない、テレビ等で加害者と似ている人を見ると思い出して嫌な気分になる、忘れたくても思い出してしまう等の意見がみられている。
通報・相談に関し、犯罪被害者等から寄せられた自由記述形式での回答を以下に整理する。
どこにも相談できなかった理由を聞くアンケート設問では、「低年齢であったため、相談することを思い至らなかった」、「どこに相談すればよいかわからなかった」、「他人に知られたくなかった」、「相談するほどのことではないと思った」をはじめ、多様な理由が示された。自由回答においても多様な回答がみられている。
配偶者や身近な人からの被害の場合、相談した後の展開等を考え、相談を逡巡する例がみられる。また、性的な被害等においては、誰かに話すのが恥ずかしい、他人に知られたくない気持ちが相談をしにくくしている。これらの方々でも「通報・相談しておけばよかった」との後悔の念を持つ方もいることから、被害を潜在化させない対策が必要と言える。
低年齢であったために、相談という行動を思いつかなかったり、的確な判断ができなかったりする例がみられる。これらの場合には、目撃者や周囲の大人が適切な対応をしてくれれば状況が変わり得るとの意見がみられている。
特に犯罪被害者等が低年齢者の場合や、加害者が近所に住んでいる者の場合、加害者に口止めされる、加害者からの仕返し・再被害を怖れる等により相談できず、被害が潜在化する例がみられる。
一方、通報・相談したいのに、物理的にできない、証拠がないからできないと考えている犯罪被害者等もみられる。これらの犯罪被害者等には相談窓口等の情報を周知することにより、相談行動を顕在化できる可能性がある。
相談したが、具体的な効果が得られなかった、あるいはむしろ傷つけられた等の場合には、さらに被害の潜在化が進む可能性がある。児童虐待やDV等の被害は家庭の問題だからと取り合われず、犯罪被害者等の落胆を生む例もみられる。また、昔の被害において、このような例が比較的多くみられる。
相談したことで、周囲の支援が得られ、加害者が制裁を受けた、自身の身体的・精神的状態が改善した例もみられる。
そこでは、相談したことで自分が強くなれ解決を早めた、様々な人々に支えられ少しずつ元の生活状態に戻っている、カウンセリングに通院して自分の存在を認めることができるようになってきた、相談や助言だけでは解決には至らないため弁護士に強制執行をしてもらった等の意見がみられている。
犯罪被害者等向け施策への要望に関し、犯罪被害者等から寄せられた自由記述形式での回答を以下に整理する。
相談窓口・避難場所・支援等を知っていれば、もっと早く相談できていれば、支援を行ってもらえていれば、早く回復できたかもしれないという意見は多い。また、そのような意見は、児童虐待、性的被害、DVの被害者から多くみられている。相談窓口や支援窓口の普及広報が必要とされている。
現在も、とくに精神的被害の影響が継続しているとの回答は多くみられている。これらの方々からは、カウンセリングを受けたいとの要望が多くみられている。相談窓口・支援窓口のみならず、相談窓口や支援窓口の普及広報も必要である。
犯罪被害者等からは、自身の情報不足から、必要な支援を得られず、何が必要かもわからず、報われない日々を過ごしたとの意見もみられている。支援を受けたかったとの意見も多い。昔と比べて現在では、支援メニューも充実してはいるが、その支援メニューを国民に周知することが必要である。
犯罪被害者等は、家族、知人友人、加害者関係者、警察、報道関係者等から二次被害を受けている。これらの二次被害を防止するための教育・指導の推進を希望する意見がみられる。
その他の施策ニーズとして、社会全体で犯罪行為を発見したら通報・相談をするよう促進する広報活動、とるべき具体的を一緒に考えてくれること、精神不安者による犯罪を起こさせないような加害者メンタルケア等が挙げられた。これらの意見は児童虐待、DV、ストーカー行為等の被害者から多く出されていることが特徴である。