9 調査結果概要

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(1) 「2 基本属性(一般対象者の回答との比較によるもの)」

被害者は、一般対象者よりも高い割合で精神上の問題や悩みを抱えている。一般対象者も健康上・精神上の問題を抱えてはいるが、被害者とその状況を比較すると、被害者の方が重症精神障害相当の状態に達している比率、日常生活に支障を来す日数等が顕著に高く、犯罪被害による影響の大きさがうかがえる。

(2) 「3 基本属性(被害類型別の特徴)」

殺害・傷害等は、他類型と比較すると最も深刻な状態に陥ってしまう傾向がある。

交通事故は、他類型と比較すると深刻度合いは若干低い傾向となっている。

性犯罪は、殺害・傷害等と比較すると全体的な深刻度合いは低くなるが、精神上の影響が強く表れている傾向となっている。

(3) 「4 被害の構造に関する考察」

健康上の問題と精神上の問題は、相互に密接に関連・影響しており、事件との関連の有無により影響の深刻さが増減していることがうかがえる。

また、事件に関連して生じたと思う精神上の問題を抱えている人のK6得点を見ると、事件に関連して生じた精神上の問題を抱えている人の半数近くが合計値13点以上となっている。さらに、日常生活が行えなかった日数について、K6の合計値で13点以上の一般対象者と被害者を比較すると、被害者の方が仕事や日常生活を行えなくなった日数が約100日多くなっており、同じ重症精神障害相当の状態でも、被害者の方が程度の深刻さが顕著であることがわかる。

精神・健康状態と事件経過後の時間との関係を見ると、事件経過後3年未満で問題を抱えている人の割合は4割前後となっているのに対して、事件経過後3年以上で問題を抱えている人の割合は2割半ばにとどまり、10%から20%の差がある。このことから、時間の経過が事件と関連する健康上・精神上の問題を軽減する作用を有していることが示唆できる。

(4) 「5 精神健康状態に影響を及ぼす要因」

重症精神障害相当の状態にある被害者を類型別に見ると、性犯罪及び殺人・傷害等で多くなっている。また、重症精神障害相当にある人と、加害者との関係を見ると、加害者が判明している人のうち、最も割合が低いのが「全く無関係な人」となっており、被害者との関係性が密接になっていることが、K6の数値を高める要因の一つとして考えられる。

身体的状況、精神的状況、経済的状況ともに「事件に関連する問題によって状況が悪化した」という回答では、重症精神障害相当にある人の割合が高くなっている。また、重症精神障害相当にある人は、事件から回復していないという回答割合も多くなっており、現在でもなお不安定な状況に悩んでいる様子がうかがえる。

(5) 「6 回復状況とその影響要因」

主観的回復度における被害からの回復状況では、いずれの被害類型においても約7から8割が半分以上回復したと回答している。回復状況と事件後経過年数の関係を見ると、事件後経過年数3年以上で回復状況は改善しており、時間の経過が事件と関連する様々な問題を軽減する作用を有していることが示唆できる。

主観的回復状況を被害類型構成別に見ると、家族や遺族が著しく回復度が高いわけではなく、直接の被害者のみならずその家族まで被害に苦しんでいる様子がうかがえる。

主観的回復度と、事件後に関わった人々から傷つけられることがあったと感じたか否かとの関係を見ると、事件後に関わった人々から傷つけられたと感じた人ほど、回復度が低い。二次的被害が、回復を妨げている要因の一つであることがうかがえる。特に、家族・遺族から傷つけられたと感じた人が最も回復度が低く、身近な人からの二次被害の方が、回復を妨げる影響を与えていると考えられる。

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