第1章 極左暴力集団等の動向と警察の対応

~「テロ、ゲリラ」の根絶を目指して~

 極左暴力集団は、社会主義、共産主義革命等を目指し、平和な民主主義社会を暴力で破壊することを企てている集団であり、多数の悪質な「テロ、ゲリラ」(注)を引き起こして社会に多大の被害を与えている。
 極左暴力集団は、昭和32年に誕生して以来約30年間、種々の闘争課題を掲げて、火炎びん等による街頭武装闘争、連続企業爆破等の爆弾闘争、内ゲバ等の様々な過激な行動を繰り広げてきた。警察は、極左暴力集団によるこれらの違法な行動に対し、全力を挙げて厳しい取締りを行い、治安の維持を図ってきたところである。しかしながら、最近、極左暴力集団は、再び活発な動きを示して悪質な「テロ、ゲリラ」を多発させるようになった。
 しかも、最近の「テロ、ゲリラ」は、
○ 中核派等の大セクトが、「テロ、ゲリラ」の専門部隊である非公然・軍事部門を組織して、計画的に行うようになったこと
○ 発射装置を用いて爆発物等を遠距離から攻撃対象に撃ち込むなど、警戒警備の困難な方法が取られるようになったこと
○ 強力な設置式爆弾を攻撃対象施設に仕掛けて爆発させるなど、再び爆弾が武器として使用されるようになったこと
○ 攻撃対象が、空港関連施設等直接に闘争の目標となる施設ばかりでなく、民間会社、個人の居宅等闘争目標と直接関係のないものにまで拡大し、さらには、都市機能の破壊、混乱を企図して鉄道施設等にまで拡大するなど、多様化、無差別化したこと
など、かつての集団武装闘争や小セクトによる爆弾闘争の時とは、その質を異にしたものとなってきた。
 このため、警察では、61年から、非公然・軍事部門を壊滅して「テロ、ゲリラ」を根絶するために緊急対策を講じ、現在、総力を挙げて諸対策の推進に取り組んでいるところである。これにより、59年から急増し、60年は87件、61年は89件に達していた「ゲリラ」事件の発生件数は、62年には37件にまで減少するなど、非公然・軍事組織の活動を相当程度押さえ込むことができた。
 しかし、極左暴力集団は、今後更に「テロ、ゲリラ」を実行していくことを公然と主張しており、様々な闘争課題の下に、際限なく闘争手段をエスカレートさせていくものとみられる。現在及び将来にわたって治安を維持し、社会の安全を守るためには、今ここで、「テロ、ゲリラ」の増加、悪質化に歯止めを掛け、その根絶を図ることが強く求められているといえよう。
 また、日本赤軍は、近年、日本国内の支援組織はもとより、国際テロ組織との連携を強める傾向がみられるが、国際テロ根絶に向けた国際的関心の高まりや、国際テロと我が国との関連性の深まりとあいまって、我が国としても国際テロについての対策を強化しなければならない状況にある。
 以上のような状況にかんがみ、警察では、今後とも、国民の理解と協力の下に、また、国際協力を通じて、諸対策を強力に推進し、「テロ、ゲリラ」の根絶を期することとしている。
(注) 「テロ」と「ゲリラ」の区別は必ずしも明確ではないが、国内の事件については、一般に個人を直接攻撃するものを「テロ」、施設等を攻撃するものを「ゲリラ」と言っている。


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