第2章 犯罪情勢と捜査活動

1 犯罪の認知と検挙の状況

(1) 若干減少した刑法犯の認知件数
ア 刑法犯の認知状況
 昭和61年の刑法犯の認知件数(注)は、158万1,411件で、前年に比べ2万6,286件(1.6%)減少した。刑法犯認知件数と犯罪率の推移は、図2-1のとおりである。

図2-1 刑法犯認知件数と犯罪率の推移(昭和23~25、52~61年)

 刑法犯認知件数は、近年、増加の傾向を示し、60年は戦後最高を記録したが、61年は7年ぶりに若干減少した。
 61年の包括罪種別刑法犯認知件数を60年に次ぐ戦後第2の認知件数を記録した23年と対比してみると、表2-1のとおりで、凶悪犯、知能犯、風俗犯が大幅に減少した一方、窃盗犯が増加している。
(注) 罪種別認知件数は、資料編統計2-3参照

表2-1 刑法犯包括罪種別認知件数の比較(昭和23、61年)

イ 主な罪種の認知状況
(ア) 凶悪犯
 61年の凶悪犯認知件数は、7,151件で、前年に比べ274件(3.7%)減少した。これを罪種別にみると、強盗が134件(7.4%)増加したが、殺人が104件(5.8%)、放火が252件(12.4%)、強(かん)姦が52件(2.9%)それぞれ減少した。過去10年間の凶悪犯認知状況を指数でみると、図2-2のとおりである。

図2-2 凶悪犯認知状況(昭和52~61年)

(イ) 粗暴犯
 61年の粗暴犯認知件数は、4万6,032件で、前年に比べ2,463件(5.1%)減少した。これを罪種別にみると、恐喝が225件(1.8%)増加したが、凶器準備集合が20件(17.9%)、暴行が1,363件(11.2%)、傷害が1,131件(5.1%)、脅迫が174件(14.1%)それぞれ減少した。過去10年間の粗暴犯認知状況を指数でみると、図2-3のとおりである。
(ウ) 窃盗犯
 61年の窃盗犯認知件数は、137万5,096件で、前年に比べ6,141件(0.4%)減少した。これを手口別にみると、ひったくり等の非侵入盗が1,548件(0.3%)増加したが、住宅や会社事務所等の建物内に侵入して現金や品物を盗む侵入盗が3,249件(1.1%)、自動車、オートバイ等を盗む乗物盗が4,440件(0.9%)それぞれ減少した。過去10年間の窃盗犯認知状況を指数でみると、図2-4のとおりである。

図2-3 粗暴犯認知状況(昭和52~61年)

図2-4 窃盗犯認知状況(昭和52~61年)

(エ) 知能犯
 61年の知能犯認知件数は、8万1,084件で、前年に比べ1万1,650件(12.6%)減少した。これを罪種別にみると、詐欺の9,636件(12.9%)を中心に、すべての罪種で減少した。過去10年間の知能犯認知状況を指数でみると、図2-5のとおりである。

図2-5 知能犯認知状況(昭和52~61年)

(オ) 風俗犯
 61年の風俗犯認知件数は、6,466件で、前年に比べ846件(11.6%)減少した。これを罪種別にみると、賭博(とばく)が347件(24.9%)増加したが、猥褻(わいせつ)が1,193件(20.2%)減少した。過去10年間の風俗犯認知状況を指数でみると、図2-6のとおりである。
(2) 高水準を維持した検挙率
ア 刑法犯の検挙状況
 昭和61年の刑法犯の検挙件数(注1)は99万650件、検挙人員(注2)は39万9,886人、検挙率は62.6%で、前年に比べ、検挙件数は4万2,229件

図2-6 風俗犯認知状況(昭和52~61年)

(4.1%)、検挙人員は3万2,364人(7.5%)減少した。検挙率は、1.6ポイント低下したものの、依然として高水準を維持している。過去10年間の刑法犯の検挙状況は、図2-7のとおりである。
(注1) 罪種別検挙件数は、資料編統計2-4参照
(注2) 罪種別検挙人員は、資料編統計2-5参照
なお、検挙人員には、触法少年を含まない。

図2-7 刑法犯検挙状況(昭和52~61年)

イ 主な罪種の検挙状況
(ア) 凶悪犯
 61年の凶悪犯検挙件数は6,247件、検挙人員は6,007人、検挙率は87.4%で、前年に比べ、検挙件数は397件(6.0%)、検挙人員は261人(4.2%)それぞれ減少し、検挙率は2.1ポイント低下した。過去10年間の凶悪犯検挙状況を検挙率でみると、図2-8のとおりである。

図2-8 凶悪犯検挙状況(昭和52~61年)

(イ) 粗暴犯
 61年の粗暴犯検挙件数は4万2,185件、検挙人員は5万6,210人、検挙率は91.6%で、前年に比べ、検挙件数は2,764件(6.1%)、検挙人員は3,456人(5.8%)それぞれ減少し、検挙率は1.1ポイント低下した。過去10年間の粗暴犯検挙状況を検挙率でみると、図2-9のとおりである。
(ウ) 窃盗犯
 61年の窃盗犯検挙件数は80万6,634件、検挙人員は26万533人、検挙率は58.7%で、前年に比べ、検挙件数は2万1,184件(2.6%)、検挙人員は

図2-9 粗暴犯検挙状況(昭和52~61年)

図2-10 窃盗犯検挙状況(昭和52~61年)

2万530人(7.3%)それぞれ減少し、検挙率は1.2ポイント低下した。過去10年間の窃盗犯検挙状況を検挙率でみると、図2-10のとおりである。
ウ 年齢層別犯罪者率
 過去10年間の年齢層別犯罪者率の推移は、図2-11のとおりで、14歳から19歳までの犯罪者率が著しく高い。

図2-11 年齢層別犯罪者率の推移(昭和52~61年)

2 昭和61年の犯罪の特徴

(1) 社会情勢の変化と犯罪
ア 食品企業等に対する恐喝事件の多発
 昭和61年は、食品企業等に対する恐喝事件が多発したが、特に、大手食品会社が警察に事件を通報することなく多額の現金を喝取されていた事実が7月に明るみに出て以来激増し、年間を通じて、222件(前年比約2.2倍)が発生、119件、117人を検挙した。
〔事例〕 うなぎ輸入販売業者(55)は、前年、食品会社から多額の現金を喝取することに成功したことから、6月、再び同社に対し現金5,000万円を要求する脅迫文を郵送して、現金を指定銀行口座に振り込むよう要求し、CD(現金自動支払機)を利用して喝取しようとした。7月3日逮捕(警視庁)
イ コンピュー夕犯罪
 警察庁では、コンピュータ犯罪を「コンピュータ・システムに向けられた犯罪又はこれを悪用した犯罪」と定義して、その発生実態の分析と対策を進めているが、コンピュータ犯罪は、犯行の態様から、CD犯罪(金融機関の現金自動支払システムを悪用した犯罪をいう。)とそれ以外のコンピュータ犯罪の2つに分けることができる。
(ア) コンピュータ犯罪(CD犯罪を除く。)
 コンピュータ犯罪(CD犯罪を除く。以下(ア)において「コンピュータ犯罪」という。)には、「不正データの入力」、「データ、プログラム等の不正入手」、「コンピュータの破壊」、「コンピュータの不正使用」、「プログラムの改ざん・消去」、「磁気テープ等の電磁的記録物の損壊」の6つの類型がある。
 コンピュータ犯罪の認知状況は、表2-2のとおりで、61年に警察庁が把握したものは17件であり、過去最高を記録した。

表2-2 コンピュータ犯罪の認知状況(昭和46~61年)

〔事例〕 銀行のコンピュータセンターにプログラマーとして派遣された男(30)は、同センターにおいて、不活動多額預金者を検索し、自 分の長女名義の普通預金通帳の磁気ストライプ部分に当該不活動多額預金者のデータを印磁した上、同銀行の支店においてCDを操作し、8回にわたり合計1,171万円余を窃取した。3月18日逮捕(福岡)
(イ) CD犯罪
 CDの設置台数、キャッシュカードの発行枚数の伸びは著しいが、反面、キャッシュカードの管理が不十分であることなどから、図2-12のとおりCD犯罪が多発しており、61年には、886件を認知し、716件を検挙している。
 事件内容をみると、窃取したカードを使用して現金を引き出したものが大部分で、被害者の暗証番号の選択、管理に問題があったものが多い。  61年のCD犯罪における暗証番号を知った方法別検挙状況は、表2-

図2-12 CD犯罪の認知、検挙状況(昭和57~61年)

3のとおりである。

表2-3 CD犯罪における暗証番号を知った方法別検挙状況(昭和61年)

〔事例〕 無職の男(32)は、特急列車内において乗客の背広内ポケットから現金やキャッシュカード在中の財布をすり取り、翌日早朝、被害者宅に警察官を装って電話し、「拾得物件の確認のため暗証番号を言ってください」と申し向けてキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、銀行のCDから現金114万円を引き出した。5月17日逮捕(福井)
ウ クレジットカード犯罪
 61年におけるクレジットカードを利用した犯罪は、認知件数が1万108件、検挙件数が1万973件、検挙人員が702人で、前年に比べいずれも減少したものの、依然として多発している。事件の内容をみると、窃盗等の方法により組織的にクレジットカードを入手し、広域にわたり連続的に詐欺を行うといった職業的なグループによるものや、来日外国人が海外で偽造したクレジットカードを使って詐欺を繰り返すものなど、悪質かつ巧妙なものが目立った。クレジットカードを利用した犯罪の認知、検挙件数等の推移は、図2-13のとおりである。
 なお、サラ金カードについても、そのシステムが全国的に制度化されたことに伴い、これを悪用した犯罪が発生しており、61年の検挙件数は、詐欺が13件、窃盗が12件であった。
〔事例〕 飲食店店員の男(32)は、他の2人と共謀の上、クレジットカードで商品をだまし取ることを企て、自ら窃取したクレジットカー

図2-13 クレジットカード犯罪の認知、検挙件数等の推移(昭和55~61年)

ドや窃盗やノックアウト強盗等の方法により組織的に集めている他のグループから入手したクレジットカード合計11枚を利用して、60年11月から61年5月までの間に、2府6県にわたり440件の犯行を繰り返し、合計2,000万円相当の電子機器等をだまし取った。6月2日~8月13日逮捕(富山)
エ 深夜スーパーマーケット対象強盗事件
 深夜も少人数の店員を置いて営業するスーパーマーケットの増加に伴い、現金等の強奪を目的として、これらのスーパーマーケットをねらう強盗事件が多発傾向にある。61年の認知件数は、65件で、前年に比べ34件(109.7%)増加した。
 61年に認知した65件について防犯設備の設置状況をみると、防犯カメラ、防犯テレビをともに設置していない深夜スーパーマーケットが14店 舗(21.5%)あった。また、防犯カメラと防犯テレビの作動状況をみると、防犯カメラについては、設置26台中作動していたものが13台(50.0%)であり、防犯テレビについては、設置32台中作動していたものが12台(37.5%)と少なく、深夜スーパーマーケットの防犯対策の不十分さがうかがわれる。61年における深夜スーパーマーケット対象強盗事件の認知、検挙状況は、表2-4のとおりである。
(注) 深夜スーパーマーケット対象強盗事件とは、午後10時から翌日午前7時までの間に、スーパーマーケットの売上げ金等の強奪を目的として行われた強盗事件(事後強盗を除く。)をいう。

表2-4 深夜スーパーマーケット対象強盗事件の認知、検挙状況(昭和60、61年)

(2) 悪質、巧妙化した凶悪事件
ア 保険金目的の殺人、放火事件
 過去10年間における保険金詐取を目的とした殺人事件(未遂を含む。)と放火事件の検挙状況は、表2-5のとおりである。昭和61年の検挙件数は、殺人事件は7件と前年に比べ1件増加し、また、放火事件は30件と前年に比べ3件減少した。61年の放火事件の検挙件数は、過去最高であった前年に次ぐものであり、依然として多発傾向にある。これらの内容をみると、被害者を海外に連れ出して殺害したり、時限式発火装置を使用してアリバイ工作を施すなど、悪質で巧妙な事件が目立った。

表2-5 保険金目的の殺人、放火事件の検挙状況(昭和52~61年)

〔事例〕 伐採夫(54)は、伐採夫仲間(55)を殺害して生命保険金をだまし取ることを企て、4月15日、栃木県内の山林においてパラコート入りの牛乳割り焼酎を飲ませて、同人を殺害した。10月7日逮捕(栃木)
イ 身の代金目的誘拐事件
 61年の身の代金目的誘拐事件の認知件数は、11件で、前年に比べ4件(57.1%)増加したが、いずれも検挙されている。その内容をみると、誘拐直後に被害者を殺害した上で現金を要求するなどの残忍卑劣な犯行が目立った。
〔事例〕 金銭に窮した無職の男(45)は、5月9日、東京都内において言葉巧みに小学生を誘拐し、その直後に近くの神社の境内で殺害した上、身の代金2,000万円を要求した。5月10日逮捕(警視庁)
(3) 贈収賄事件
 昭和61年の贈収賄事件の検挙状況は、検挙事件数が112事件、検挙人員が436人で、前年に比べ、事件数は6事件(5.7%)増加したが、人員は108人(19.9%)減少した。最近5年間の贈収賄検挙事件数、検挙人員の推移は、図2-14のとおりである。

図2-14 贈収賄検挙事件数、検挙人員の推移(昭和57~61年)

ア 収賄被疑者の状況
 61年に検挙した収賄被疑者198人の身分別状況は、地方公務員が151人(76.3%)と最も多く、次いでみなす公務員が21人 (10.6%)、国家公務員が14人(7.1%)、特別法による収賄被疑者が11人(5.6%)となっており、みなす公務員が前年に比べ6人(40.0%)増加したことが目立っている。最近5年間のみなす公務員の検挙人員の推移は、表2-6のとおりである。

表2-6 みなす公務員の検挙人員の推移(昭和57~61年)

 また、61年に検挙した収賄被疑者のうち、市町村の首長は、17人と依然として多い。最近5年間の市町村の首長の検挙人員の推移は、表2-7のとおりで、増加傾向にある。

表2-7 市町村の首長の検挙人員の推移(昭和57~61年)

イ 態様別状況
 61年に検挙した贈収賄事件を態様別にみると、表2-8のとおりで、

表2-8 贈収賄事件の態様別検挙状況(昭和60、61年)

各種土木、建築工事の施工をめぐるものが依然として多い。
〔事例〕 三沢市長(64)らは、同市が発注する無線放送施設設置工事に関し、指名業者選定等に便宜を図った謝礼として、電気通信工事業者から現金170万円を収賄した。12月12日逮捕(青森)

3 暴力団対策

(1) 暴力団の現況と動向
ア 暴力団勢力の現況
 昭和61年12月末現在の暴力団の勢力は、3,133団体、8万5,935人であるが、中でも、特に強大な勢力を有し、62年に指定暴力団(注)に指定された山口組、稲川会、住吉連合会の3団体(以下「指定3団体」という。)及びその傘下団体の勢力は、1,154団体(全団体数の36.8%)、2万9,879人(全暴力団員数の34.8%)となっており、指定3団体による寡占化の傾向が続いている。
(注) 指定暴力団とは、集中取締りの対象として警察庁が指定した悪質かつ大規模な暴力団をいう。
イ 不安定な暴力団情勢
 60年1月、我が国最大の暴力団である山口組の四代目組長ら3人が一和会系組員により射殺された事件を契機として、山口組と一和会の対立抗争事件が、61年6月までの間に、2府19県にわたり317回発生した。警察では、この対立抗争事件を機に両団体に対する集中的な取締りを行ったが、これと併せて市民による暴力団排除活動が活発に行われたことなどにより、62年2月、山口組と一和会は、それぞれの傘下の暴力団員に対し抗争の終結を指示した。
 しかしながら、山口組においては、五代目組長を誰が襲名するかにつ いても決着が着けられておらず、その襲名をめぐって内部対立が生ずるおそれがあるほか、その傘下団体が全国的に他の暴力団との対立抗争を繰り返すなど、組織統制の弱体化がみられる。このように、全国の暴力団情勢は、山口組を中心に不安定なものとなっており、対立抗争事件、銃器発砲事件等が多発している。
(2) 暴力団犯罪の現況
ア 対立抗争事件、銃器発砲事件の多発
 昭和61年における対立抗争事件の発生状況は、23事件、218回で、前年に比べ、事件数は1事件、回数は75回それぞれ減少した。しかし、その発生回数は、過去10年間で最高であった前年に次ぐものであり、暴力団の対立抗争事件は、依然として多発している。
 61年の対立抗争事件のうち、山口組対一和会の対立抗争事件は、2府8県にわたり86回(全体の39.4%)、九州における山口組対道仁会の対立抗争事件は、4県にわたり50回(全体の22.9%)となっており、対立抗争事件の大規模化及び広域化の傾向がみられる。
 対立抗争事件の内容をみると、爆発物の使用や、喫茶店、スナック、一般公道におけるけん銃の発砲等、一般市民を巻き込むおそれの大きい悪質なものが目立っている。また、対立抗争事件に伴う死傷者数は、死者が18人、負傷者が67人で、前年に比べ、死者は14人、負傷者は12人それぞれ減少した。
 61年における銃器発砲事件は、317回と前年に比べ9回減少しているが、これに伴う死傷者数は、死者が59人、負傷者が106人で、前年に比べ、死者は15人、負傷者は10人それぞれ逆に増加しており、悪質化、凶悪化の度を増している。
 対立抗争事件、銃器発砲事件の発生状況の推移は、図2-15のとおりである。

図2-15 対立抗争事件、銃器発砲事件の発生状況の推移(昭和52~61年)

〔事例〕 会津小鉄会系暴力団組員(27)ら3人は、不動産問題のもつれから、京都市内のレストランにおいて、一和会系暴力団幹部(37)ら2人に対してけん銃を発砲し、殺害した。9月29日逮捕(京都)
イ 犯罪性の高い指定3団体
 61年の暴力団員による犯罪の検挙状況は、表2-9のとおりであり、検挙件数は7万7,288件、検挙人員は4万5,065人で、前年に比べ、件数は2,352件(3.0%)、人員は3,148人(6.5%)それぞれ減少した。
 その中にあって、指定3団体の暴力団員による犯罪は、検挙件数が3万2,597件、検挙人員が1万9,277人で、全暴力団員による犯罪に占める割合は、検挙件数で42.2%、検挙人員で42.8%となっており、指定3団体の犯罪性が高いことを示している。

表2-9 暴力団員による犯罪の検挙状況(昭和60、61年)

ウ 多様化、巧妙化の度を深める資金源活動
 暴力団による資金源活動は、伝統的資金源である賭博(とばく)、ノミ行為等にとどまらず、更に新たな資金源を求めて多様化、巧妙化している。市民の日常生活や経済取引に民事上の権利者や関係者の形で介入、関与し、不法な利益の獲得を図る「民事介入暴力事案」は、年々増加の傾向を示しており、また、政治活動や社会運動を仮装、標ぼうして企業等から不法な利益を得ようとする事案も多くみられた。
 61年に警察に寄せられた民事介入暴力事案の相談受理件数は、1万 8,707件で、前年に比べ3,557件(23.5%)増加した。類型別にみた相談の受理件数の推移は、図2-16のとおりで、「金銭消費貸借に絡むもの」、「交通事故の示談等に絡むもの」及び「売掛債権等の取立てに絡むもの」が上位を占めている。

図2-16 民事介入暴力事案の類型別受理件数の推移(昭和56~61年)

〔事例〕 住吉連合会系暴力団組長(48)ら4人は、建設会社が倒産した、ことを知るや、同社の経営者(48)を監禁するなどして強引に倒産整理に介入した上、同人を組事務所に呼び出し、けん銃を示して「倒産整理の工作費に1億円を要したから返せ。撃ち殺すぞ」などと脅迫し、畏怖した経営者に自宅を抵当に2,000万円を借りさせて、その一部を喝取した。10月20日逮捕(警視庁)
(3) 暴力団総合対策の推進
ア 「暴力団総合対策要綱」の制定
 近年の暴力団をめぐる犯罪情勢は、民事介入暴力事案や社会運動、政治活動を標ぼうして企業等から不法な利益を獲得しようとする事案の多発にみられるように多様化、巧妙化の傾向を強めており、また、公道等における対立抗争事件、銃器発砲事件の頻発にみられるように市民に直接脅威を与える事案が目立つなど、新たな局面を迎えるに至っている。
 これらの情勢に的確に対処し、取締り活動と暴力団排除活動を運動させ、警察の総合力を発揮した暴力団対策を推進するため、昭和61年12月「暴力団総合対策要綱」を制定し、現在、その推進に努めている。
 本要綱で示した総合対策の主要な点は、次のとおりである。
(ア) 推進体制の確立
 暴力団対策を総合的に推進するため、各都道府県警察に警察本部長を長とする「暴力団総合対策推進委員会」等を置くほか、暴力団の広域化及び国際化に対処するため、各都道府県警察相互間及び警察庁と海外関係機関との連携体制を確立する。
(イ) 暴力団に対する取締りの徹底
 首領をはじめとする暴力団員の大量反復検挙と長期隔離、資金源犯罪の取締り及び銃器等の取締りの3つを基本とし、さらに、対立抗争事件に対する取締りを徹底するなど、集中的、計画的取締りを推進する。
(ウ) 暴力団排除活動の徹底
 暴力団の資金源を遮断し、あらゆる地域、職域から排除するため、建設業、公営競技場からの排除活動、組事務所の撤去活動等の暴力団排除活動の徹底を図る。
イ 暴力団取締りの推進
(ア) 指定暴力団に対する集中取締りの推進
 山口組、稲川会、住吉連合会の指定3団体に対する全国的な集中取締りを推進し、61年には、1万9,277人を検挙し、傘下の35団体、332人を解散、壊滅に追い込んだ。
(イ) 銃器取締りの推進
 対立抗争事件、銃器発砲事件を封圧し、市民の安全を確保するため、全国警察を挙げて銃器取締りを推進し、61年には、暴力団関係者から1,551丁のけん銃を押収した。
 これは、前年に比べ216丁(12.2%)の減少となっているが、依然として高い水準を示しており、また、その押収形態も、暴力団員がけん銃を所持、携帯しているところを職務質問により現行犯逮捕し、押収したものが多くなってきていることなどから、暴力団員の間にけん銃が広く行き渡ってきていることがうかがわれる。
 過去10年間の暴力団関係者からのけん銃押収数の推移は、図2-17のとおりである。
(ウ) 資金源犯罪取締りの推進
 暴力団の主要な資金源である覚せい剤の密売、賭博(とばく)、恐喝及びノミ行為等(公営競技4法違反)に対する取締りを徹底し、61年には、これらの犯罪により2万2,736件、2万251人を検挙した。
(エ) 総会屋対策
 61年12月末現在、単位株を取得している総会屋は約1,400人であるが、

図2-17 暴力団関係者からのけん銃押収数の推移(昭和52~61年)

61年は、企業に対する執拗(よう)な資料の要求や質問状の送付、電話による嫌がらせ、株主総会会場における粗暴行為等を行うことにより、賛助金名下に金銭を要求する事案が多発し、また、多数の架空名義による株付けやグループ間の連携等、企業に対する勢力の誇示がみられた。
 このような活動を封圧するため、総会屋に対する取締りを強化した結 果、61年は、前年に検挙のなかった商法違反事件の検挙が相次いだほか、株主総会会場における議長に対する暴行事件、賛助金名下の恐喝事件等の悪質な事件を検挙した。
〔事例〕 陶器メーカーの常務取締役総務部長(59)ら3人は、同社の臨時株主総会及び定時株主総会に際し、株主である総会屋(33)に対し、株主総会への出席や会場における発言を差し控えて欲しい旨を依頼し、その謝礼として、同社応接室において250万円を供与した。  このほか、同様の趣旨で、他の総会屋3人にも合計595万円を供与した。7月31日~10月2日逮捕(愛知)
ウ 暴力団排除活動の推進
(ア) 暴力団事務所撤去活動
 警察では、暴力団の活動拠点である暴力団事務所を地域社会から締め出すため、地域住民との連携を強化し、その撤去活動を強力に推進しているが、61年には、住民運動が盛り上がりをみせ、暴力団事務所の立ち退きを求める民事訴訟等が行われたことなどにより、山口組傘下暴力団事務所43箇所をはじめ、全国で113箇所の暴力団事務所が撤去された。
(イ) 公営競技場からの暴力団排除
 資金源封圧と市民保護の観点から、60年11月1日以降全国一斉に公営競技場からの暴力団及びノミ屋等の排除を実施した結果、61年12月末までに、暴力団員8,486人、ノミ屋等4,600人を排除し、また、場内ノミ行為、建造物侵入等で86件、151人を検挙した。
(ウ) 建設業からの暴力団排除
 建設業については、1回の工事請負に係る取引額が大きく、また、多くの工事現場を抱えていることなどから、暴力団の介入が数多くみられた。これに対し、61年5月には、警察庁の要請により、全国建設業協会において「暴力団等に関する排除決議」が採択された。さらに、12月に は、暴力団員に建設業の許可を与えないこと、公共工事における指名審査を厳格に行い、暴力団が実質的に経営を支配している不良業者を公共工事から排除することなどを骨子とする通達が、建設省から都道府県知事等に出され、建設業からの暴力団排除が全国的に推進されることとなった。なお、61年の建設業に絡む暴力団犯罪の検挙件数は、217件であった。

4 衆、参同日選挙の違反取締り

 第38回衆議院議員総選挙と第14回参議院議員通常選挙は、衆議院が6月2日に解散されたことに伴い、昭和55年6月以来、憲政史上2度目の同日選挙として施行された。
 警察では、選挙の公正を確保するため、違反取締り体制を強化し、不偏不党、厳正公平な取締りを実施した。
(1) 第38回衆議院議員総選挙の違反取締り
 昭和61年6月2日、第105回臨時国会で衆議院が解散されたことにより、第38回衆議院議員総選挙は、6月21日に公示され、7月6日に施行された。
 この総選挙は、定数の1.64倍に当たる838人が立候補し、戦後最低であった前々回の1.63倍をわずかに上回る史上2番目に低い競争率となり、少数激戦の選挙となった。
ア 検挙状況
 第38回衆議院議員総選挙の違反検挙状況(投票日後90日現在)は、表2-10のとおりであり、検挙件数は5,114件、検挙人員は1万1,176人で、前回(58年)に比べ、件数は480件(10.4%)、人員は3,008人(36.8%)それぞれ増加した。

表2-10 衆議院議員総選挙における違反検挙状況

 これを罪種別にみると、買収の検挙件数、人員は、それぞれ4,604件、1万84人であり、件数で全体の90.0%、人員で全体の90.2%を占めた。
イ 警告状況
 警告状況(投票日後90日現在)は、表2-11のとおりであり、警告件数は1万5,871件で、前回に比べ1,355件増加した。

表2-11 衆議院議員総選挙における警告状況

(2) 第14回参議院議員通常選挙の違反取締り
 第14回参議院議員通常選挙は、昭和61年6月18日に公示され、7月6日に施行された。
 この通常選挙は、改選126議席に対し506人が立候補し、総定数を選出 した第1回選挙(22年)、第2回選挙(25年)に次いで史上3番目に多い立候補者数となった。
ア 検挙状況
 第14回参議院議員通常選挙の違反検挙状況(投票日後90日現在)は、表2-12 のとおりであり、検挙件数は273件、検挙人員は724人で、前回(58年)に比べ、件数は115件(29.6%)、人員は327人(31.1%)それぞれ減少した。
 これを罪種別にみると、買収の検挙件数、人員は、それぞれ199件、577人であり、件数で全体の72.9%、人員で全体の79.7%を占めた。

表2-12 参議院議員通常選挙における違反検挙状況

表2-13 参議院議員通常選挙における警告状況

イ 警告状況
 警告状況(投票日後90日現在)は、表2-13のとおりであり、警告件数は1万404件で、前回に比べ1,038件増加した。

5 犯罪情勢の変化と捜査環境の悪化に対応する捜査活動の推進

(1) 捜査活動の困難化
 近年の情報化の進展や交通手段、科学技術の発達等の社会情勢の変化に伴い、新しい形態の犯罪が多発したり、犯行の広域化、スピード化が進むなど、犯罪は質的な変化をみせている。また、基本的捜査活動である聞き込み捜査が困難になってきており、被害品、遺留品等から被疑者に到達していく物からの捜査も難しくなるなど、捜査活動は困難化して

図2-18 民間協力を主たる端緒とした検挙件数の検挙総数に占める構成比の推移(昭和57~61年)

いる。図2-18は、民間協力を主たる端緒とした検挙件数の検挙総数に占める構成比の推移を最近5年間にわたってみたものであるが、被害者や第三者の協力により検挙に至る割合が減少傾向にあることが分かる。
 また、図2-19は、刑法犯の発生から検挙までの期間別検挙状況について昭和52年と61年を比較したものであるが、1日未満で検挙したものが21.0%から16.9%に減少したのに対し、1年以上を要したものが14.7%から26.0%に増加しており、検挙に要する期間の長期化を示している。

図2-19 刑法犯発生から検挙までの期間別検挙状況(昭和52、61年)

(2) 「刑事警察充実強化対策要綱」の制定
 このような社会情勢の変化を背景とした犯罪の質的変化、捜査を取り巻く環境の悪化等に対応するため、昭和61年10月、刑事警察運営の中長期的展望に立った「刑事警察充実強化対策要綱」を制定した。
 この要綱は、
○ 優れた捜査官の育成及びち密な捜査推進体制の強化
○ 科学捜査力の強化
○ 国際捜査力の強化
○ 広域捜査力の強化
○ 重要知能犯罪捜査力の強化
○ 特殊事件捜査力の強化
○ 暴力団対策の強化
を柱としており、現在、これらの柱に係る諸対策の推進に努めている。
(3) 捜査活動の科学化の推進
 捜査を取り巻く諸情勢の変化に対応し、迅速、的確な捜査活動を推進していくためには、各種の捜査情報を広範な分野から収集し、組織的に分析することが必要であるが、警察では、収集した大量かつ多様な捜査情報をコンピュータで分析、照合する新しい捜査支援システムの導入を進めている。
 また、物的資料の採取、分析、鑑定業務の精度の向上をより一層推進し、従来困難であった微物等の資料の利用を有効に行うことができるよう、科学技術の活用の高度化を図っている。
ア コンピュー夕の活用
 警察庁では、捜査情報を集中的に管理し、処理するコンピュータ・システムの充実を図っているが、その一環として、重要事件に関するデータをコンピュータに登録して、他の重要事件との照合を行い、類似事件を抽出して犯罪捜査に活用する重要事件関連検索システムを開発し、運用を開始している。また、犯罪捜査の過程で容疑者となる可能性を有する者が複数の観点(例えば、A企業の関係者、B地域の居住者等)からそれぞれ多数把握された場合、コンピュータで重複者の検索を行うことにより、容疑者の範囲を絞り込む多角照合システムの開発、普及を進めているほか、次のようなシステムの開発、運用に努めている。
(ア) 自動車ナンバー自動読取りシステム
 自動車利用犯罪については、緊急配備による検問を実施する場合でも、実際に検問が開始されるまでに時間を要すること、交通量が多い場所では検問の効果的実施が困難であること、徹底した検問を行うには交通渋滞を覚悟しなければならないことなどの問題がある。
 警察庁では、これらの問題を解決するため、道路上のカメラと路側のコンピュータによって、走行中の自動車のナンバーを自動的に読み取り、手配車両のナンバーと照合する自動車ナンバー自動読取りシステムを開発し、61年度から配備を開始しているが、今後とも、このシステムの整備充実に努めることとしている。
(イ) 音声自動識別システム
 音声の異同識別に要する時間の短縮と精度の向上を図るため、音声自動識別システムの開発を進めている。このシステムは、
[1] 犯人の音声と容疑者の音声をデジタル化する
[2] デジタル化された数値から、コンピュータを用いた計算処理によって個人特性を表す係数を算出する
[3] 算出した係数を犯人と容疑者について相互に比較照合することにより、異同識別を行うものである。
 61年度から、このシステムを実用化するための各種検証等を行っている。
(ウ) 個人特徴自動識別システム
 警察は、被疑者写真等個人の特徴を把握するための捜査資料を保有しているが、例えば、被疑者写真は、具体的な容疑性がある程度浮上した段階で、参考人に呈示するなどの方法で一部活用されているにすぎない状況にある。また、一方では、防犯カメラ等の普及に伴って、被疑者の人相等に関する資料が存在する事案が増加している。このため、コンピュータを利用することにより、防犯カメラや目撃者の証言等から得られた被疑者の特徴に関する資料と警察が保有している捜査資料とを照合する個人特徴自動識別システムについて、61年度から開発を進めている。
イ 現場鑑識活動の強化
 捜査環境の悪化に対処するため、最新鋭の資機材や「生きた鑑識機材」 としての警察犬を活用して、綿密、徹底した現場鑑識活動を行い、犯罪現場等に犯人が遺留した物的資料やこん跡から科学的、合理的な捜査を行うことが重要になってきている。
 今後は、指紋や足跡のほか、犯人が無意識のうちに遺留する微量、微細な資料も残さず発見、収集し、これらを捜査に迅速、有効に活用する「ミクロの鑑識活動」を積極的に推進することにより、現場鑑識活動の一層の強化を図ることとしている。
〔事例〕 4月22日、山県郡加計町で発生した殺人、死体遺棄事件では、徹底した現場鑑識活動によって微物(動物毛、繊維片等)を採取し、これを分析した結果、猫の体毛が発見されたが、これが有力な決め手となって、猫を飼育していた被疑者を逮捕するに至った(広島)。
ウ 鑑識資料センターの充実強化
 犯行手口の悪質、巧妙化に伴い、指紋や遺留品等の物的資料が犯罪現場に明白な形で残されることが少なくなってきているため、犯人による証拠隠滅が困難な微量、微細な資料を活用して、科学的、合理的な捜査を行う必要性が高まっている。このため、警察庁においては、
[1] 犯罪捜査の対象となる繊維、土砂、ガラス等の各種鑑識資料をあらかじめ収集する
[2] これらを最新鋭の高性能機材を用いて分析し、製造メーカー等の付加情報を加えてデータベース化を図る
[3] そのデータと各都道府県警察が犯罪現場等から採取した微量、微細な資料の分析データとを比較照合して、製造メーカー、流通経路等を解明する
[4] その結果を捜査情報として関係都道府県警察にフィードバックする
ことを主な業務とする鑑識資料センターを61年10月から運用しているが、現在は、信頼性の高いデータベースを構築するため、資料の計画的な収集を行い、また、データベース化に欠くことのできない高性能分析機材の整備充実等を図っている。
エ 鑑定の高度化
 現場鑑識活動によって採取した資料の分析、鑑定は、その結果が証拠として使用されることが多いが、血液、毛髪、覚せい剤等の法医、理化学関係の鑑定件数は、年々増加するとともに、その内容も複雑多岐にわたっており、高度な専門的知識、技術を必要とするものが増えている。
 捜査の科学的な裏付けとしての分析、鑑定を一段と信頼性の高いものにするためには、鑑定検査技術の高度化を更に図る必要がある。このため、警察庁の科学警察研究所や都道府県警察の科学捜査研究所(室)においては、最新の技術と高性能機材を活用した分析、鑑定を行うとともに、法科学研修所では、全国の鑑定技術職員に対し、法医、化学、工学、指紋、足跡、写真等の各専門分野別に、鑑定検査技術の高度化に必要な技術研修を実施し、鑑定検査技術の一層の向上に努めている。
(4) 広域捜査の推進
 広域にわたる犯罪に対処するためにも、また、裏付け捜査等の必要上からも、都道府県警察間の捜査協力や警察庁、管区警察局の指導、調整等による広域捜査体制の強化が必要になってきている。このため、警察庁、管区警察局、都道府県警察に広域犯罪を担当する捜査官を配置し、情報の交換を緊密に行うとともに、関係都道府県警察において合同の捜査体制を取るなど、効果的な広域捜査の推進に努めている。
 また、犯人の行動のスピード化、広域化に対応した初動捜査体制、広域緊急配備体制を充実させるため、科学技術の導入を進めるとともに、事件の発生直後における警察庁、管区警察局、都道府県警察相互間の連絡の一層の円滑化を図っている。
(5) 優秀な捜査官の育成
 犯罪の質的変化、捜査環境の悪化に適切に対応し、国民の信頼にこたえるち密な捜査を推進するためには、各種の専門的知識を備えた優秀な捜査官を育成しなければならない。このため、各都道府県警察において、新任、若手の捜査官に対して実践的な教養を行うとともに、警察大学校等において、国際犯罪捜査、コンピュータ犯罪捜査、大規模事故事件捜査等に関する教養を実施するなど、社会の変化、犯罪の変化に対応し得る捜査官の育成と捜査幹部の指揮能力の向上に努めている。
(6) 国民協力確保方策の推進
 犯罪情勢の急激な変化に対処するためには、警察が最大限の努力をすることはもとより、捜査活動に対する国民の深い理解と協力を得ることが必要不可欠である。
 このため、警察では、国民に協力を呼び掛ける方法の一つとして公開捜査を行っており、新聞、テレビ、ラジオ等の報道機関に協力を要請するとともに、ポスター、チラシ等を人の出入りの多い場所に掲示、配布するなどの方策を講じている。昭和61年11月に実施した「指名手配被疑者捜査強化月間」においては、警察庁指定被疑者10人、都道府県警察指定被疑者35人について公開捜査を行い、都道府県警察指定被疑者7人をはじめ、5,167人を検挙した。
 また、5月には、「捜査活動に対する国民の理解と協力の確保月間」を実施し、広報活動を通じて、事件発生の際の早期通報、聞き込み捜査に対する協力等を呼び掛けた。このほか、被害者に対し、捜査の途中経過、終結等を連絡し、被害者の不安感の解消を図る被害者連絡制度を積極的に推進するとともに、告訴、告発事件の受理や民事介入暴力事案等についての相談を通じ、国民の要望にこたえる捜査活動の推進に努めている。


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