第9章 災害、事故と警察活動

1 災害警備活動

(1) 概況
 我が国は、その国土のほとんどが急しゅんな山岳地帯であり、残りのわずかな平野部に多数の人口と産業が集中している。気象条件は、温帯季節風地帯に当たっており、梅雨前線豪雨、台風、豪雪等が襲来し、毎年のように多くの風水害をもたらしている。更に、地象的には、環太平洋地震帯に位置する世界有数の地震国であるため、過去幾多の大震災を被っている。
 このように、自然災害を被りやすい日本の気象、地象条件と過去の大災害の経験から、ここ数年、幸いにも大災害を被ったことがないとはいえ、国民の大災害に対する警戒心は強い。
 最近は、都市の過密化、モータリゼーションの進展、避難場所の減少、危険物施設や石油コンビナートの増加等大地震発生の際に大災害に拡大する要因が増大しており、国民の不安を更にかきたてているといえよう。
 特に、昭和52年は、51年に発表された東海地震説が、マスコミに大きく取り上げられたこともあり、防災対策についての国民の関心が著しく高まり、大震災対策の基本となるべき特別立法の必要性を訴える声も大きくなった。
 このような状態の中で、大震災対策は、緊急重要な課題として、今日その対策の強化が図られている。
ア 大災害対策の推進
 警察は、大災害対策の充実強化を図るための施策の一環として、「国家公安委員会・警察庁防災業務計画」を全面的に改正した。改正の主な内容は、次のとおりである。
○ 大震災対策の推進として、都道府県警察の大震災警備体制の確立、被災地域住民の救出・救護、避難誘導、被害状況の収集、伝達、防災関係機関との連絡等について、現在の計画を更に充実、強化する。
○ 各種大災害発生時における都道府県警察相互間の広域応援派遣計画を整備する。
○ 大災害警備訓練に関して、従来にも増して、より効果的な広域的、総合的な訓練を行う。
 警察では、これを基本として、災害警備対策の刷新強化に努めている。
イ 大震災警備訓練の実施
 昭和52年は、大震災に対する国民の関心が著しく高まり、大震災対策の推進が緊急の問題として各方面で取り上げられ、警察においても、更に具体的な対策の推進を図った。
 この対策の一環として、6月8日午前6時30分、駿河湾西部から遠州灘にかけた地域を震源地とするマグニチュード8.4の大地震が発生し、静岡県を中心に1都11県にその被害が及んだという想定の下に、東海地震災害警備訓練を実施した。
 この訓練は、警察庁、関東、中部の両管区警察局、警視庁、茨城、栃木、群馬、埼玉、神奈川、山梨、長野、静岡、岐阜、愛知、三重の各都県警察が主催し、警察職員約7万人、ヘリコプター7機、車両約500台、地域住民約12万7,000人が参加した。
 今回は、静岡県を激じん被災地に指定した場合を想定し、陸、海、空から、隣接都県警察の災害警備部隊及び災害警備装備資器材を緊急に輸送するという訓練をはじめ、激じん被災地域での交通規制、道路上の障害物の除去、避難誘導、救出・救護、緊急自動車の通行、無線通信等の訓練を実施した。
 このほかにも、
○ 10月13日 安芸灘、伊予灘地震災害警備訓練
 主催 中国、九州の両管区警察局、岡山、広島、山口、福岡、大分の各県警察
参加人員警察職員約1万5,000人、一般住民等約9,000人
○ 10月24日 京阪神地域大震災警備訓練
主催 近畿管区警察局、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の各府県警察
参加人員 警察職員約3万7,000人、一般住民等約1万6,000人
○ 10月29日 東北東部地域地震災害警備訓練
主催 東北管区警察局、宮城、福島、岩手の各県警察
参加人員 警察職員約7,000人、一般住民等約4,000人
○ 11月1日 四国管区いっせい広域震災警備訓練
主催 四国管区警察局、徳島、香川、愛媛、高知の各県警察
参加人員 警察職員約4,000人、一般住民等約4,000人
等それぞれの管区警察局を中心にした大震災警備訓練を行った。
(2) 自然災害と警察活動
 昭和52年における台風、大雨、地震等による主な災害としては、豪雪(1~3月)、有珠山噴火(8月)、沖永良部台風(9月)によるものが挙げられる。これらによる被害を含め、1年間に発生した主な被害は、

死者・行方不明者 226人
負傷者 780人
家屋全(半)壊、流失 4,376むね
床上浸水 1万288むね
床下浸水 4万8,969むね

で、年間に合計1万6,593世帯、5万6,530人が被災した。
 これらの災害に際して、全国で警察官延べ約6万人が出動して、災害警備活動に当たった。
ア 雪害発生状況
 昭和52年1月から3月末までの新潟を中心とした日本海側の豪雪被害は、19道府県に及び、死者・行方不明者86人、重軽傷者375人に上り、これは、最近では38年の雪害による死者・行方不明者241人、重軽傷者375人に次ぐも

のであった。なお、家屋の被害状況は、全(半)壊1,472むね、床上(下)浸水925むねであった。
 警察では、「雪害警備本部」や「雪害警備連絡室」を設置し、機動隊を含む延べ約9,000人の警察官を動員して、被災者の救出・救護、行方不明者の捜索、交通の確保等の活動を行った。
イ 有珠山噴火による災害
 8月7日午前9時12分、北海道南部の有珠山山頂付近で大規模な噴火が起こり、きのこ状の噴煙は高さ1万2,000メートルに達した。この降灰は、胆振支庁管内をはじめ、道内119市町村4万2,189平方キロメートルの広範囲に及んだが、災害は、降灰の特に激しい有珠山周辺の伊達市、壮瞥町、虻田町、洞爺村等1市2町1村に集中して発生した。
 幸いにも人的被害はなかったが、農林水産物は大きな被害を被り、そのほかに、道路損壊、上水道汚染、列車の運休、河川の汚濁等の被害が発生した。
 この有珠山噴火に対し、北海道警察は、火山性地震がこれ以前にも多発していたことから、大噴火発生の前日である8月6日に災害対策連絡室を設け、事前の連絡体制を整えていたが、8月7日の大噴火直後には、北海道警察本部及び伊達警察署に災害警備本部を設置し、12月末日現在までの間、警察官延べ約2万1,000人、車両延べ約2,000台、ヘリコプター等を出動させ、住民の避難誘導、避難後の防犯措置、交通規制等所要の災害警備活動を行った。
 特に、降灰の激しかった伊達市、壮瞥町及び虻田町においては、大噴火直後に避難命令が出され、降灰の中、関係機関と協力して、危険地域の住民約1,300人を小、中学校の体育館、公民館等へ避難誘導するとともに、9月23日までの間危険区域への通行禁止、う回誘導等の交通規制を行った。

ウ 沖永良部台風の影響による災害
 沖永良部台風は、9月9日、中心気圧905ミリバール、中心付近の最大風速毎秒55メートルという超大型台風に発達しながら、沖縄本島東海上を北上し、9日夜、鹿児島県沖永良部島を直撃して、東支那海から中国大陸方面に去った。これに際し、警察庁は、都府県警察に対して災害警備体制の早期確立、災害警備活動の迅速的確な実施等を指示し、各都府県警察では、警察官延べ約1,300人を動員して、各種の災害警備活動を行った。
 この台風の影響により、沖永良部島をはじめとして各地で河川のはん濫や山(がけ)崩れ等があり、1都21県で死者1人、負傷者129人という被害が発生した。
 特に、鹿児島県大島郡沖永良部島では、負傷者122人、家屋全(半)壊2,586むね、家屋一部破損2,137むね等全島民約1万7,000人のうち3分の2以上の人が被災するという大災害を被った。鹿児島県警察では関係機関と協力し、早期避難の勧告、救出・救護、避難誘導等に当たり、被災者を中学校や警察署等に避難させた。その結果、超大型台風の直撃を受け、民家、農作物等に壊滅的な被害を受けたにもかかわらず、人的被害は比較的軽微であった。

2 雑踏警備活動

(1) 一般雑踏警備活動の現状
 昭和52年に、各地の行事や観光地等へ出掛けた人は相当の数に上り、警察が雑踏整理に当たった人の数だけでも延べ約6億2,000万人に達し、前年に比べ約1,800万人の増加となった。これに伴い、雑踏警備のため出動した警察官の数は、延べ約71万人に及んだ。なかでも初詣では全国の主要な神社、仏閣等に延べ約6,200万人の人出があり、雑踏事故防止等のため延べ約3万7,000人の警察官が警備に当たった。また、春のゴールデンウィークでは、全国の観光地等に延べ約5,400万人の人出があり、延べ約5万3,000人の警察官が警備に当たった。
 最近5年間の雑踏警備実施状況は、表9-1のとおりである。
 年間の主な雑踏警備事案としては、名古屋市と札幌市で開催された中国展や、バレーボール世界ワールドカップ等の国際的催し物の警備、海外の人気ロックバンド「キッス」、「ベイ・シティ・ローラーズ」、「スコッティーズ」等の公演に伴う警備、交通機関のストライキにより通勤客らで混雑した首都

表9-1 雑踏警備実施状況(昭和48年~52年)

圏主要駅等での警備等が挙げられる。
〔事例〕 イギリスのロックバンド「ベイ・シティ・ローラーズ」一行が東京はじめ全国14箇所で公演したが、このロックバンドは、来日前から女子中、高校生らに異常な人気があり、少女らのなかには、保護者の心配をよそに各地の公演について行く者もあり、警察で、家出、深夜外出、喫煙等で延べ1,780人を補導したほか、ロックのリズムに興奮し、失神した延べ630人が救護された。
(2) 公営競技場警備活動の現状
 全国の公営競技場は、競輪場5。箇所、競馬場36箇所、モーターボート競走場24箇所、オートレース場6箇所の合計116箇所であるが、昭和52年の入場者数は、延べ約1億3,700万人であった。警察では、公営競技をめぐる紛争事案の防止や雑踏事故の防止のため、延べ約19万3,000人の警察官を出動させて警備に当たった。
 最近5年間の公営競技場警備実施状況は、表9-2のとおりである。

表9-2 公営競技場警備実施状況(昭和48~52年)

 52年に公営競技をめぐる紛争事案は、4件発生した。これは、前年に比較すると3件の減少であり、また、紛争の原因をみると、前年には3件あった施行者の不手際による紛争事案が1件も発生しなかった。
 しかし、競技場内におけるノミ行為の勢力争いから、暴力団員同士による猟銃、日本刀を使用しての傷害事件が発生しており、場内秩序維持について自主警備を強化する必要がある。警察では、各競技場の監督官庁を通じ、又は、直接各競技関係者に対して、競技運営の適正化、自主警備の強化、施設の整備等を推進するよう指導を強化している。
〔事例1〕 5月、川崎競馬場で、人気のあった競走馬2頭が骨折等により途中で棄権したため、ファン約500人がレースの無効を訴えて騒ぎ出し、投石、放火、暴行等の不法行為を行った。神奈川県警察では、警察官530人を出動させ事案の鎮静に当たるとともに、放火未遂、公務執行妨害、暴行、器物毀棄等で17人を検挙し、約6時間後紛争は治まった。
〔事例2〕 福岡県警察では、県下の公営競技場8箇所に働き掛け、各競技場の場内秩序の維持、ノミ行為の排除、騒乱発生の防止等について、競技場及び関係機関が緊密な連携を図ることを目的とした「福岡県内公営競技場連絡協議会」を設立させた。

3 水難、山岳遭難の防止と救助活動

(1) 水難
ア 事故発生の概況
 昭和52年の水難事故は、発生件数4,512件、死者・行方不明者3,020人であり、前年に比較すると、発生件数では10件減少したものの、死者・行方不明者では17人増加した。
 最近5年間の水難事故の発生状況は、表9-3のとおりである。
(ア) 夏期は年々減少
 水難事故が多発するのは、例年6~8月であり、この期間中の犠牲者は、表9-4のとおり年々減少の傾向を示しているものの、昭和52年においても、依然として年間の約半数に当たる1,394人が、この期間中に水の犠牲となっている。

表9-3 水難事故発生状況(昭和48~52年)

表9-4 水の犠牲者(昭和48~52年)

表9-5 年齢層別水死者の状況(昭和51、52年)

(イ) 幼児が依然として多い
 昭和52年の犠牲者を年齢層別にみると、表9-5のとおりで、幼児の犠牲者は前年に引き続き減少したものの、全犠牲者の約3割と依然として高い比率を占めている。
(ウ) 海での事故が増加
 水の犠牲者が多い場所は、図9-1のとおりで、海と河川で全体の63%を占めており、特に、昭和52年は、海での犠牲者が多く、前年より116人増加した。年齢層別にみると、小学生以下では河川での犠牲者が多く、中学生以上では 海での犠牲者が多い。

図9-1 水死者の場所別発生状況(昭和52年)

(エ) 魚釣中がトップ
 行為別では、図9-2のとおり魚釣中の犠牲者が579人と最も多く、例年最も多かった水泳中の犠牲者を抜いてトップになった。

図9-2 水死者の行為別発生状況(昭和52年)

 魚釣中の犠牲者が増加しているのは、釣ブームに乗って愛好家が増え、悪天候を無視して高波にさらわれたり、危険な岩場から転落するなど無謀な行為によるものと考えられる。
イ 事故防止対策
 警察では、水難事故を防止するため、日常パトロールを通じて、事故が発生するおそれのある危険な場所を調べ、管理者や関係機関、団体に対し、安全施設の整備や危険区域の指定、標識の設置等を促進するよう働き掛けている。
 また、巡回連絡、座談会、ミニ広報紙による広報等の警察活動や、報道機関の協力により幅広い広報活動を行い、地域住民に事故防止に対する注意を呼び掛けるとともに、小、中学校や幼稚園に対しても、児童・生徒の事故防止について指導している。
 水難事故が多発する夏期には、主要な海水浴場に臨時の警察官派出所を設置し、海浜パトロールを行うほか、警備艇による海上パトロールやヘリコプターによる空からの監視活動を行うなど、陸、海、空の連携による活動を推進している。
(2) 山岳遭難
ア 事故発生の概況
 昭和52年の山岳遭難事故の発生状況は、表9-6のとおりで、死者・行方

表9-6 山岳遭難事故発生状況(昭和48~52年)

不明者数、負傷者数共に過去10年間で最低を記録した。
 52年の事故発生の特徴としては、1月上旬北アルプス等に例年にない大量の降雪があり、鹿島槍ヶ岳では行方不明者13人、穂高岳連峰で死者・行方不明者4人の遭難者を出すなど、1月だけで発生件数36件、死者・行方不明者25人、負傷者17人に上り、最近5年間の最高を記録したことが挙げられる。
イ 事故防止対策
(ア) 事故防止活動
 山岳地帯を管轄する警察では、春、夏、冬の各登山シーズンを前に、関係機関、団体と協力して、危険箇所の調査や道標、警告板の設置、整備等を行うとともに、それぞれの山岳の実情に応じた各種の事故防止対策と救助体制の確立に努めている。
 各登山シーズンには、山岳情報や過去の遭難箇所の表示等を盛り込んだ「夏(冬)山情報」(山梨)、「冬山登山の心得8項目」(長野)、「縦走路等危険場所略図」(鳥取)等の広報誌やパンフレットを登山団体等に配布している。特に、警視庁、長野県警察では、年末にアルプス方面への登山者を対象に、新宿駅で冬山遭難の警告文、冬山情報等のパンフレットを配布し、併せて登山相談をするなど遭難事故防止を呼び掛けた。また、岐阜県警察では、春山シーズン中、北アルプス登山者を対象に登山者実態調査を実施して、事故防止対策、救助活動等山岳警備活動の基礎資料として活用した。
(イ) 救助活動
 昭和52年に山岳遭難救助のために出動した警察官は、延べ約5,000人に及び、民間救助隊員等との協力によるものを含め、年間574人の遭難者を救助

し、遺体110体を発見、収容した。
 山岳遭難事故は、険しい岩場や雪崩の起こりやすい谷間等で発生するため、救助隊員は、二重遭難の危険を冒して救助活動を行うことが多く、日ごろの訓練を通じて高度な登山、救助技術の習熟、強じんな体力の練成に努めている。
 しかし、5月4日北アルプス北穂高岳滝谷で遭難者の捜索活動に従事中の岐阜県警察山岳警備隊員が、滑落によって殉職するという事故が発生した。

4 各種事故と警察活動

(1) 火災、爆発事故
ア 火災
 昭和52年の火災発生状況は、表9-7のとおりで、発生件数と死者・行方不明者数はやや増加したが、負傷者数については、最近5年間で最低の2,147人であった。
 特徴としては、2月に発生した札幌市白石区内における「白石中央病院」の火災で、新生児3人を含む4人が焼死、3人が負傷するなど、地方の病院

表9-7 火災発生状況(昭和48~52年)

において入院患者や新生児に多数の焼死者を出した事故が目立った。
 警察では、火災が発生した場合、迅速に現場に出動して負傷者の救出・救護や交通規制、群集整理等により、人的被害を最小限に抑えるとともに、現場を中心とする混乱を早期に解消することに努めている。
 また、一部都道府県警察では、レスキュー部隊等の人命救助専門部隊を編成して特別訓練を実施している。

イ 爆発事故
 昭和52年のガスや火薬類による爆発事故の発生状況は、表9-8のとおりで、前年に比べ発生件数と負傷者数は減少したが、死者・行方不明者数は、108人と大幅に増加した。
 死者が、大幅に増加した主な理由は、三井石炭鉱業株式会社芦別鉱業所の爆発事故で死者25人を出すなど、炭鉱における大規模な爆発事故が発生したこと、多数の死者を伴う都市ガス及びプロパンガスの爆発事故が続発したことによる。

表9-8 爆発事故発生状況(昭和48~52年)

 警察では、このような事故の発生に際しては、速やかに警察官を現場に出動させて、負傷者の救出、二次災害の防止、交通規制、群集整理等の警備に当たっている。
(2) 航空機、列車等の事故
ア 航空機の事故
 航空機事故の発生状況は、表9-9のとおりで、最近5年間は、ほぼ横ばいの傾向にある。

表9-9 航空機事故発生状況(昭和48~52年)

〔事例〕 11月7日午後1時過ぎ、厚木基地を飛び立った米軍機がエンジン火災を起こして横浜市内に墜落した事故で、死者2人、重軽傷者7人、家屋の全半焼3むね、一部損壊17むね、車両の損壊14台を出した(神奈川)。
イ 列車の事故
 最近5年間における列車に関係した事故の発生件数は、表9-10のとおり増加の傾向にあり、昭和52年は前年に比べ15件増の170件となった。52年の死傷者のほとんどは、列車の脱線、転覆及び列車からの転落や接触によるものである。

表9-10 列車に関係した事故の発生状況(昭和48~52年)

ウ 船舶の事故
 昭和52年の船舶事故の発生状況は、表9-11のとおりで、前年に比べ発生件数、負傷者数とも減少したが、死者・行方不明者数はやや増加した。

表9-11 船舶事故発生状況(昭和48~52年)

 52年の船舶事故は、小型漁船が高波によって転覆した事故、モーターボートの運転を誤った事故等が目立った。
 警察では、小型船舶の事故防止のために海上、河川、湖沼等における無免許操縦、無検査船の指導取締りを実施するなど、船舶の安全確保に努めている。
(3) その他の事故
 小学校のプールで水泳中の児童ら3人が、ろ過装置の漏電により感電して意識不明となった事故、2階の宴会場の床が抜け落ち22人が負傷した事故等昭和52年におけるその他の事故発生状況は、表9-12のとおりで、前年に比べて発生件数、死傷者数とも増加した。

表9-12 その他の事故発生状況(昭和48~52年)

 その他の事故の原因をみると、管理者らの不注意や関係者の軽率な取扱い等によるいわゆる人災に起因するものが大部分を占めている。
 警察では、管内の危険箇所等の実態は握に努め、管理者に対して是正措置を要請したり、また、事故が発生した場合には、その原因を究明し、再び同じような事故が発生しないよう管理者らに対し指導、助言を行うなど、事故の未然防止に努めている。
〔事例〕 10月、7万4,000人の観客を集めて、富士スピードウェイで開かれた「77年F-1世界選手権最終戦・日本グランプリ」の決勝レース中、第一コーナー付近で、外国選手同士のレースカー2台が接触し、うち1台が分解しながら観客の中に飛び込み、観客ら2人が死亡、10人が重軽傷を負うという惨事が起きた(静岡)。


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