第5章 少年の非行防止と保護活動

1 少年非行と補導活動

(1) 少年非行の概況
ア 非行少年等の補導数とその推移
 警察は、少年の非行を防止し、その健全育成を図るため、非行少年(注1)や不良行為少年(注2)の早期発見に努め、発見した非行少年や不良行為少年について捜査や調査を行い、関係機関に送致、通告し、あるいは注意、助言を行い、必要に応じて家庭等へ連絡するなどの補導活動を行っている。
 昭和52年に警察が補導した非行少年と不良行為少年の数は、表5-1のとおりである。

表5-1 非行少年、不良行為少年の補導数(昭和52年)

 警察が補導した非行少年の過去10年間の推移は、図5-1のとおりで、刑法犯(注3)で補導した少年(以下「刑法犯少年」という。)の数は過去10年間で最高となった。また、特別法違反で補導した少年も47年以降増加傾向にある。
(注1) 非行少年とは、犯罪少年、触法少年及びぐ犯少年をいう。
(1) 犯罪少年…罪を犯した14歳以上20歳未満の者(少年法第3条第1項第1号)
(2) 触法少年…刑罰法令に触れる行為をした14歳未満の者(少年法第3条第1項第2号)
(3) ぐ犯少年…性格、行状等から判断して、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある20歳未満の者(少年法第3条第1項第3号)
(注2) 不良行為少年とは、非行少年には該当しないが、飲酒、喫煙、けんかその他自己又は他人の徳性を害する行為をしている20歳未満の者をいう(少年警察活動要綱第2条)。
(注3) ここでいう刑法犯とは、第4章でいう刑法犯と同じである。

図5-1 警察が補導した非行少年の推移(昭和43年~52年)

イ 高原状態の少年非行

図5-2 主要刑法犯少年の人口比、人員の推移(昭和24~52年)

図5-2は、戦後における主要刑法犯(凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯をいう。)で補導した少年の人員及び人口比(注)の推移をみたものであるが、人口比でみると昭和49年の11.6人に始まり52年は11.9人と4年間続けて高い数値を示しており、現在の少年非行はいわば高原状態にあるといえる。
(注) 本章中、人口比とは、同年齢層の人口1,000人当たりの数である。
ウ 成人の4倍に達した人口比
 刑法犯少年と刑法犯で検挙した成人(以下「刑法犯成人」という。)についてその人員と人口比の最近5年間の推移をみると、図5-3のとおりで、昭和52年の刑法犯少年の人口比は12.4人(注)に上り、49年以降12人台にある。それに比べ、刑法犯成人の人口比はほぼ減少傾向にあり、その結果、52年の刑法犯少年の人口比は刑法犯成人の人口比のちょうど4倍になった。

図5-3 刑法犯少年及び刑法犯成人の人員と人口比の推移(昭和48~52年)

 なお、52年の成人を含めた全刑法犯検挙人員(36万3,144人)の中に占める少年の割合は、32.8%に達している。
(注) 52年の14歳以上20歳未満の少年人口は約958万人である(51年11月厚生省人口問題研究所推計による。)。
(2) 少年非行の特徴的傾向
ア 増加を続ける遊び型非行
 刑法犯少年を罪種別、手口別にみると、万引き、乗り物盗や放置された自転車等を対象とした遺失物横領等犯行の手段が容易でしかも動機が単純ないわゆる遊び型非行が増加を続けていることが注目される。
 昭和52年の刑法犯少年と刑法犯成人の罪種別構成を比較すると、図5-4のとおりで、刑法犯少年のなかで窃盗の占める割合は刑法犯成人に比べ著しく高く、74.9%を占めている。また、少年による窃盗を手口別にみると、万引きや自転車盗、オートバイ盗その他の乗り物盗が多い。

図5-4 刑法犯少年と刑法犯成人の罪種別構成比の比較(昭和52年)

 なお、罪種別に最近5年間の推移をみると、表5-2のとおり窃盗犯と知能犯が増加を続け、他はおおむね減少の傾向にある。

表5-2 刑法犯少年の罪種別補導人員の推移(昭和48~52年)

イ 非行の低年齢化
 昭和52年における刑法犯少年の年齢別構成をみると、図5-5のとおり15歳が23.2%を占めて最も多く、次いで16歳、14歳の順となっている。

図5-5 刑法犯少年の年齢別構成(昭和52年)

 また、過去10年間の刑法犯少年の年齢層別補導人員の推移をみると、図5-6のとおりで、18、19歳の年長少年はおおむね減少傾向にあり、また16、17歳

図5-6 刑法犯少年の年齢層別補導人員の推移(昭和43~52年)

の中間少年はほぼ横ばい傾向にあるのに対し、14、15歳の年少少年は44年を底にして以後増加を続け、52年には43年の1.5倍に上り、非行の低年齢化が一層顕著になっている。
ウ 中、高校生が約3分の2
 刑法犯少年の学職別補導人員について、最近5年間の推移をみると、図5-7のとおりで、昭和52年の学職別補導人員は、前年と比べ、41年以降減少を続けていた有職少年も含め、すべて増加している。

図5-7 刑法犯少年の学職別補導人員の推移(昭和48~52年)

 また、52年における刑法犯少年の学職別構成比をみると図5-8のとおりで、中、高校生が66.9%と刑法犯少年の3分の2以上を占めている。
 刑法に触れる行為をして補導された中学生の触法少年及び中学生の刑法犯少年(以下「刑法犯中学生」という。)と全中学生を対比しながらその推移をみると、図5-9のとおり全中学生は横ばい傾向にあるが、刑法犯中学生は44年を底にほぼ一貫して増加し、その人口比は52年には43年を3.3人上回り11.3人となった。
 次に、刑法犯で補導した高校生(以下「刑法犯高校生」という。)と全高校生を対比しながらその推移をみたものが図5-10である。全高校生は横ばいからわずかずつ増加傾向にあるが、刑法犯高校生は著しく増加しており、52年の人口比は43年を4.3人も上回る10.3人となった。

図5-8 刑法犯少年の学識別構成比(昭和52年)

〔事例〕 男子中学生54人は、ゲームセンターをたまり場として、喫煙をしたり深夜に遊び回るなど不良行為を繰り返していたが、万引きのスリルに味をしめ2、3人の組になって兵庫県はじめ3県にわたり、スーパーマーケット、百貨店等で83件、被害総額57万円に上る万引きを続けていた(兵庫)。

図5-9 刑法犯中学生と全中学生の推移(昭和43~52年)

エ 増加の著しい女子少年の非行
 刑法犯少年の補導人員について、男女別に最近5年間の推移をみると、図5-11のとおりで、男子はほぼ横ばいであるのに対し、女子は著しい増加の傾向を示している。昭和52年の性別補導人員をみると、男子が9万5,701人、女子が2万3,498人で、前年に比べて男子が2.6%の増加にとどまっているの

図5-10 刑法犯高校生と全高校生の推移(昭和43~52年)

図5-11 刑法犯少年の男女別補導人員の推移(昭和48~52年)

に対し、女子は増加率で男子のほぼ2倍に当たる5.0%の増加となった。また、刑法犯少年総数中に占める女子の割合いについて、最近5年間の推移をみると、毎年増加の傾向にあり、52年は19.7%と前年(19.3%)を上回った。
 52年の男女別の罪種別構成比をみると、女子では窃盗犯が全体の93.0%とそのほとんどを占めており、男子の70.5%に比べて著しく高くなっている。
〔事例〕 学校内で、万引きをした生徒からその成功談を聞かされ、刺激された26人の女子高校生グループは、3~5人ずつの組になって約1年間にわたり、隣接2県下のデパートやスーパーマーケットから衣料品や化粧品等430点、117件、被害総額47万5,000円相当の万引きを続けていた(富山)。
オ 深刻化する性非行
 昭和52年に性非行で補導した女子中、高校生は、表5-3のとおり4,380人に上っている。これを前年と比べると207人減少しているが、問題性の高い売春(売春防止法)、淫行(児童福祉法第34条第1項第6号)及びみだらな性交(青少年保護育成条例)で補導された女子中、高校生は102人増加しており、女子中、高校生の性非行が深刻化していることがうかがえる。
〔事例〕 女子高校生グループ8人は、学校や喫茶店等において、ポルノ雑誌を回し読みしたり、性の体験談をしているうちに性に異常な関心を持ち、ボーイフレンドらと不純異性交遊を重ねていたが、「どうせ遊ぶならお金をもらって遊ぼう」と相談し、グループの1人がアルバイト先で知り合ったボーイフレンドを仲間に紹介するなど、相互に相手客を紹介し合いモーテルで売春を重ねていた(岩手)。
カ 中学生に多い校内暴力事件

表5-3 女子中、高校生の性非行の補導人員(昭和51、52年)

 昭和52年における校内暴力事件の状況は、表5-4のとおりで、発生件数は1,873件、被害者は3,648人(うち、教師252人)に上り、また、補導人員6,343人のうち中学生が4,358人と、中学生の多いのが目立っている。
 校内暴力事件のうち、教師に対する暴力事件の補導状況について、最近5年間の推移をみると、表5-5のとおり48年は71件発生し、補導人員は180人であったものが、52年には215件、補導人員405人と著しく増加し、被害教師も252人に上っている。

表5-4 校内暴力事件の発生件数と補導人員数(昭和51、52年)

表5-5 中、高校生による教師に対する暴力事件の補導状況(昭和48~52年)

〔事例1〕 市立中学校2年生の粗暴非行グループ21人は、連日にわたり教室の窓ガラスを破ったり、授業中爆竹を鳴らすなどの粗暴行為を繰り返していたため、生徒指導主事である教師が注意した上、警察に補導方を依頼した。ところが、同生徒らは、「なぜ警察を呼んだ。お前らを殺してやる。」等と騒ぎ出し、会議室や教室の窓ガラスを破壊し、制止する教師数人に対し、いすを投げたり足げにするなどの暴行を加え、教師1人に全治3週間の傷害を与えたほか、窓ガラスを損壊させた(大阪)。
〔事例2〕 市立高校2年生数人が「上級生に対する言葉遣いや態度が悪い。」と1年生に対して暴行を加え、更に、リーダーが1年生の教室に押し掛けるなどのいやがらせを行い、1、2年生の対立意識が深まっていた。このため、双方のリーダーらが中心となり1年生と2年生が集団で対決することを決め、放課後双方50数人が空地に集結し、木刀、鉄パイプ、ヌンチャク等の凶器を持って乱闘し、3人が傷害を負った(兵庫)。
 警察としては、教育の場における事案であることや学校の教育的立場を考慮し、教師による生活指導の強化を要請して、その効果を期待するとともに、学校と警察の連携を緊密にし、積極的な情報交換を行うことによって、関係者の認識を高め、学校等による自発的な、あるいは警察と共同の補導活動を促進するなど、連携して粗暴非行集団による非行の解明と集団の解体に努めている。
キ 粗暴性を増した暴走族
 暴走族少年に対する補導状況をみると、表5-6のとおり犯罪によって補導された少年は、昭和52年には4,051人で、前年に比べ1,175人(40.9%)増加し、特に、少年を主体とした暴走族によるグループ間の対立抗争事件、警察施設に対する投石事件等が多発し、暴走族の粗暴性が目立った。罪種別にみると、強盗、強姦等の凶悪犯は減少したが、グループ間の対立抗争事件が

表5-6 暴走族の少年に対する補導状況(昭和51、52年)

69件と、前年に比べ33件も増加し、それに伴い凶器準備集合、暴力行為、傷害等粗暴犯罪が著しく増加した。
〔事例〕 対向して走行してきた暴走族「シャドー」グループの車両24台(52人)と「北関東連合」グループの車両21台(43人)は、相互にセンターラインをオーバーして走行したところから、走行を妨害されたと現場で対立し、所持していた角材、鉄パイプ、旗ざお、スコップ等の凶器を持って乱闘し、15人が重軽傷を負い、車両7台を大破させた(山梨)。
 警察は、検挙補導活動を通じてグループの解体に努めているほか、暴走族のたまり場における街頭補導の強化、暴走族少年の保護者等に対する「レター作戦」の推進、グループのリーダーに対する説得等暴走族による非行の防止に努めている。
ク シンナー等の乱用少年の減少

図5-12 シンナー等の乱用によって補導された少年(昭和48~52年)

 シンナー等の乱用により補導された少年の最近5年間の推移は、図5-12のとおりで、昭和49年以降3年連続して増加していたが、52年には、補導された少年は前年より4,468人減の3万2,578人となり、4年ぶりに減少した。乱用少年を学職別にみても、前年に比べすべて減少しているが、なかでも高校生が1,859人(22.1%)減少したのが目立っている。
 シンナー等の乱用による少年の死者数も、図5-13のとおり前年に比べ26人減少した。
 このように、乱用少年が減少したのは、重点的な補導活動、販売、授与行為に対する取締り、シンナー等乱用防止に関する広報活動等総合的な活動の成果が徐々に実を結んだためと考えられる。しかし、この種の事犯は潜在して行われること、トルエン、シンナー等の密売が暴力団等の資金源となっていることなどを考えれば、更に、乱用の危険性と有害性を強く訴えて、住民の関心を高めるとともに、シンナー等の供給源となっている悪質な販売業者等に対する取締りや乱用少年の早期発見、補導を強化して、積極的な乱用防止活動に取り組む必要がある。

図5-13 シンナー等の乱用による死者数(昭和48~52年)

〔事例1〕 有職少年A(17) ら4人は、自動車修理工場敷地に置いてあった廃車内においてシンナーを吸って死亡しているところを発見された(宮城)。
〔事例2〕 暴力団員が、トルエンが少年たちに高価で売れることに目を付け、トルエンを密売して暴利を得ることを企て、7箇月にわたり工務店等からトルエンを窃取しては、炭酸飲料水のビンやウィスキービン等に小分けして、中、高校生に密売していた(神奈川)。
(3) 少年の補導活動
ア 警察の補導活動
 少年の非行は、少年自身はもちろん、その家庭にとっても極めて不幸な、しかも深刻な問題である。将来の日本を担う少年が非行に陥ることなく健やかに成長することは、子供を持つ親ばかりでなく国民誰もが切に願っていることである。
 少年は、心身ともに未成熟であり、また、環境の影響を受けやすいため、非行に走りやすい反面、適切な教育や指導によって立ち直る可能性も極めて高い。それが早ければ早いほどその矯正は容易である。
 警察では、非行を芽のうちに摘み取るために、少年係の警察官や婦人補導員等による街頭補導や少年相談等を通じて、非行少年や不良行為少年を早期に発見することに努めている。
 発見した非行少年については、家庭、学校、職場等の関係者と連絡を取りながら、少年の特性を考慮しつつ捜査や調査を行い、非行の内容とともに、その原因、動機、少年の性格、経歴、交友関係、保護者の状況 その他を明らかにし、再び非行を繰り返さず、健全な姿に立ち戻るにはいかなる処遇が最も適切であるかを判断し、警察としての意見を付して、少年法や児童福祉法の規定に従って、家庭裁判所、検察官、児童相談所等の関係機関に送致、通告している。
 また、非行少年に至らない不良行為少年については、適切な注意、助言を行い、必要に応じて保護者等に連絡することにしている。

イ 警察と地域社会との連携
 少年非行を防止するためには、それをいち早く発見して適切な処遇を行うことが何よりも大切であるが、そのためには独り警察の活動のみでなく、関係機関、団体をはじめ地域社会の人々の理解と協力により、地域社会ぐるみの活動が自主的かつ活発に行われる必要がある。そのため、警察では少年非行や少年補導活動の実態等を関係機関、団体をはじめ広く住民に訴えて、非行防止活動に対する理解と協力を得ることに努めている。

2 少年の保護活動

(1) 少年をめぐる環境の浄化
 最近の社会環境をみると、著しく少年の性的感情を刺激し、又は残虐性を助長するおそれのある出版物、映画、広告物、テレビ番組等が目立ち、また、転落や非行化の温床となりやすい享楽的なスナック、深夜飲食店等が増加するなど憂慮すべきものがある。
 昭和52年に、都道府県の青少年保護育成条例によって、少年の健全育成にとって有害と認められた雑誌類の指定は約1万5,600件に上り、この数は10年前の3.5倍となっている。その上、このような低俗な雑誌が店頭や自動販売機で販売され、誰でも容易に購入できる状況にある。また、風俗営業、深夜飲食店、ストリップ劇場等の享楽的営業の数は10年前の1.5倍になっている。
 少年は、人格が未完成であるために、社会環境の影響を受けやすく、現にこのような環境の影響を受けたと認められる非行例も多い。
〔事例〕 勉強部屋や下宿等をたまり場にしていた男女高校生ら18人のグループは、持ち込んだポルノ雑誌を回し読みしているうち、セックスに対する異常な興味をもち、シンナー等を乱用しては乱交パーティーにふけり、更に小遣い銭に窮しては、デパート、スーパーマーケット、商店等から衣料品や化粧品をはじめ、酒、ウィスキー等を万引きしていた(青森)。
 このような情勢から、警察は、少年非行を防止し、少年の健全育成を図るため、有害環境の浄化を少年警察活動の重点として取り上げ、低俗な出版物、有害広告物、享楽的な諸営業等の有害環境の実態は握、法令に基づく指導取締り等に積極的に取り組んでいるところである。
〔事例〕 東京都の出版業者が、自動販売機によるわいせつ写真誌の販売に目を付け、わいせつ写真誌「人妻の浮気調査」約3万部を発行し、これを全国の雑誌自動販売業者や書店を通じて、自動販売機で販売していた事案で、同出版業者らを猥褻(わいせつ)図画販売で検挙した(警視庁)。
 しかし、環境浄化は警察の活動だけでは実効が上がるものではなく、家庭、学校、職場等が一体となった地域ぐるみの活動として推進される必要があり、現に地域住民、団体の自主活動や業界の自主規制の措置が推進され、更に、52年には新たに3県で青少年保護育成条例が制定され、19県で改正が行われるなど活発に取り組まれている。
〔事例〕 福岡県下の各少年センター、婦人団体、少年補導連絡会等は、低俗雑誌の自動販売機が、少年に対し有害であるとして、自動販売機業者に対し、自主規制の協力を粘り強く要請した結果、1月から8月までの間に75台の自動販売機が自主的に撤去された(福岡)。
(2) 少年相談
 少年の非行、家出、自殺等を未然に防止し、また、早期に発見する方法の一つに少年相談がある。警察では、自分の悩みや困りごとを親や教師等に打ち明けることができない少年や、子供の非行、不良行為の問題で悩んでいる保護者等から相談を受けて、経験豊かな少年係の警察官、婦人補導員、少年の 心理の専門家等が助言や指導を行っている。
 昭和52年に受理した少年相談は、全国で8万894件に上っており、このうち37都道府県警察で実施している電話相談(いわゆるヤング・テレフォン・コーナー)は3万8,660件となっている。
 相談者の状況は、表5-7のとおりで、保護者等が全体の67.7%、少年が32.3%となっている。少年では、中、高校生が多く、また、男子よりも女子

表5-7 相談者の状況(昭和52年)

図5-14 少年相談の内容(昭和52年)

が多い。電話相談では、少年が全体の57.0%を占めており、いつでも、どこからでも、しかも面接することなく、気軽に相談できるという利点が少年に

表5-8 子供の事故発生状況(昭和52年8月)

好まれているものと思われる。
 相談の内容は、図5-14のとおりで、非行問題に限らず、性、学業、健康、進路等の様々な問題に及んでいる。少年の場合には、異性との交際等に関することが18.6%と最も多く、次いで性、交友関係、学業の順であり、保護者等の場合は、子供の家出に関することが28.0%と最も多く、次いで非行、しつけの順となっている。
(3) 子供の事故及び少年の自殺の防止
ア 子供の事故
 子供を取り巻く生活環境は年々危険になっており、思わぬ事故に遭って幼い生命を落とすことが多い。このため、警察では、子供の事故防止に努めており、その一環として事故実態のは握に努めている。
 例えば、昭和52年8月に全国で発生した15歳以下の子供の死亡事故(自然災害、火災、山岳遭難事故及び交通事故を除く。)をみると、表5-8のとおり総数で300人に上っている。その内訳をみると、水の事故が223人と4分の3を占め、夏季の水の事故が多いことを示しているが、その他の事故も、転落、窒息等多種多様なものに及んでいる。特に、未就学児に「布団等による鼻口部圧迫」による窒息死が多いのが目立った。
イ 少年の自殺の実態
 最近、短絡的に死を選ぶケースが目立っているが、この傾向は少年の自殺に特に顕著で、進学、性の問題や親子の断絶から逃避的に、あるいは、死を

表5-9 自殺少年の学職別(昭和52年)

表5-10 自殺の原因、動機(昭和52年)

美化して衝動的に幼い生命を絶つ例が多く、社会に大きな衝撃を与えている。
〔事例〕 女子中学生3人は、日ごろの生活態度が悪いと家庭や学校から注意を受けていたが、友人関係の悩み等が重なり、また、期末テストが近づいたことから、発作的に集団で入水自殺を図り、うち2人が死亡した(愛知)。
 昭和52年に、警察が認知した少年の自殺者(20歳未満の者で、未遂者は除く。)は、表5-9のとおり総数784人で、うち男子は529人(67.5%)、女子は255人(32.5%)であった。この自殺者を学職別にみると、高校生が242人と最も多く、次いで有職少年171人、無職少年159人となっている。
 原因、動機別にみると、表5-10のとおりで、「学業不振」、「入試苦」等学業問題によるものが27.9%と最も多く、次いで「失恋」等異性問題によるもの13.7%、「父兄しっ責」等家庭問題によるもの12.1%となっている。
 なお、警察では、市民保護活動の推進に資するため、53年から、全国で発生した自殺者の年齢、職業、原因、動機別等の統計をとり、自殺の背景を調査して、関係行政機関等による自殺防止の諸施策の促進に寄与しようとしている。
(4) 家出少年の保護
ア 女子が男子を上回る
 警察が発見保護した家出少年の数は、図5-15のとおりで、昭和49年から4年連続して増加を続けているが、なかでも女子の増加が著しく、2万8,766人を数え、男子の2万6,619人をついに上回るに至った。
 この家出少年を学職別にみると、表5-11のとおりで、女子少年の家出のうち、中、高校生の増加が目立っている。
 警察では、一般的に、少年が心理的に動揺しやすい時期、すなわち、進学、就職前後と夏休み明けの時期に、それぞれ春季(3月1日から4月30日までのうち1箇月)と秋季(9月)の全国家出少年発見保護活動強化月間を設け、発見保護活動を強化している。52年には、この月間中に1万4,425人(年間総数の26.0%)の家出少年を発見保護している。

図5-15 家出少年発見保護人員の推移(昭和48~52年)

表5-11 家出少年の学職別発見保護状況(昭和52年)

イ 主な原因は家庭、学校、異性
 家出の原因、動機を春季及び秋季強化月間中に保護した少年についてみると、表5-12のとおりで、「学校ぎらい」、「異性問題」がそれぞれ14.0%と最も多く、次いで「親子間不和」、「放浪癖」の順となっている。
ウ 12人に1人が非行に走る
 春季及び秋季強化月間中に保護した家出少年1万4,425人についてその非行状況をみると、表5-13のとおり家出中に罪を犯した少年は1,200人に上り、これは約12人に1人(男子の場合は約8人に1人)の割合で罪を犯していたことになる。

表5-12 家出の原因、動機(昭和52年春季及び秋季強化月間)

エ 女子の10人に1人が被害
 春季及び秋季強化月間中に保護した家出少年の被害状況をみると、表5-

表5-13 家出少年の非行状況(昭和52年春季及び秋季強化月間)

表5-14 家出少年の被害状況(昭和52年春季及び秋季強化月間)

14のとおり851人が犯罪の被害者となっている。その81.4%に当たる693人が女子であり、家出した女子少年は約10人に1人の割合で何らかの被害を受けたことになる。
 また、52年に検挙したいわゆる人身売買等少年の福祉を害する犯罪の被害少年1万6,484人のうち3,762人(22.8%)が家出少年であった。
〔事例〕 高校受験を失敗した女子少年(16)は、自宅近くの中華料理店に勤めたが、仕事がいやになって家出し、繁華街をはいかいするうち、暴力団員に誘惑されて肉体関係を強いられた上、覚せい剤をうたれては売春させられていた(警視庁)。
オ 無関心な保護者
 春季及び秋季強化月間中に発見保護した家出少年1万4,425人のうち、捜索願が出されていた者は8,279人(57.4%)にすぎず、残り6,146人(42.6%) については保護者から捜索願は出されていなかった。捜索願を出さなかった理由は、表5-15のとおりで、「すぐ帰ると思って」43.9%、「家出を知らなくて」21.2%、「家出しても構わないと思って」6.0%等保護者の放任、無責任な態度が強くうかがわれる。

表5-15 捜索願を出さなかった理由(昭和52年春季及び秋季強化月間)

(5) 福祉犯の取締り
 福祉犯(注)として検挙した被疑者及び保護した被害者数について、最近5年間の推移をみると、表5-16のとおりで、被疑者数、被害者数ともおおむね増加の傾向にある。

 この種の犯罪は、被害者である少年自身が被害意識を持たない場合が多いため、自ら訴え出ることが少なく、また、犯罪の手段も巧妙化しているため、潜在性が強い。検挙の端緒をみても、その95.1%が警察による家出少年の捜索や聞込み等によるものであって、被害者からの訴え出によるものは全体の1.7%にも満たない状況であった。
 昭和52年に検挙した福祉犯の被疑者は9,267人で、これを法令別にみると、図5-16のとおり青少年保護

図5-16 福祉犯検挙人員の法令別構成比(昭和52年)

表5-16 福祉犯の推移(昭和48~52年)

育成条例違反が多くなっている。
(注) 福祉犯とは、少年の福祉を害する犯罪をいう。
ア 福祉犯の被害者
 昭和52年の福祉犯による被害者は1万6,484人で、うち女子が9,879人とその6割を占めている。
 被害者を学職別にみると、表5-17のとおりで、前年に比べ男子は587人(8.2%)減少したが、女子は363人(3.8%)増加している。特に、女子の無職少年、中学生の増加が目立つ。
イ 暴力団による福祉犯
 昭和52年の福祉犯の被疑者総数に占める暴力団員数は681人(7.3%)であるが、福祉犯のうち、最も悪質ないわゆる「人身売買」、「中間搾取」、「売春

表5-17 福祉犯の学職別被害者数(昭和51、52年)

表5-18 悪質福祉犯被疑者の中に占める暴力団員数(昭和51、52年)

をさせる行為」及び「淫行をさせる行為」の4種類についてみると、表5-18のとおりで、暴力団員の占める割合は22.4%と高くなっている。
〔事例〕 暴力団員が、覚せい剤の購入資金を得るため、スナックや街頭等において、高校2年生A(16)ほか7人の少女を言葉巧みに誘惑し、覚せい剤を施用させて肉体関係を結んだ後、暴力団仲間や会社役員らを相手に売春をさせていた(神奈川)。


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