第5章 生活の安全の確保と環境の浄化

1 風俗事犯への対応

(1) 風俗営業等の取締り
ア 変ぼうを続ける風俗営業
 風俗営業等取締法により都道府県公安委員会の許可を受けて営業しているキャバレー、バー、料理店、パチンコ屋、マージャン屋等の風俗営業の営業所数の推移は、表5-1のとおりであり、総数では最近5年間ほぼ横ばいの状況にあるが、これを業種別に見ると、キャバレー、ナイトクラブ、マージャン屋、パチンコ屋等が増加し、バー、料理店等は逆に減少している。

表5-1 風俗営業の営業所数の推移(昭和46~50年)

 このように風俗営業の業種別状況は、社会一般の動きを反映して徐々に変ぼうしているが、その背景に「より享楽的なもの」、「より射幸的なもの」への志向が認められるところから、営業内容においても徐々に変化が出てきており、それが一部のキャバレー等における卑わいなサービスのような形で現れてきている。
〔事例〕 全国各地にチェーン店を持つ大手のキャバレー営業会社の一チェーン店で、店長の音頭でホステスに全裸でゴーゴーダンスを踊らせ、その際、客に乳房や陰部に触れさせるなどの極めて卑わいな接待行為による営業を行っていた(福島)。
 したがって、これら風俗営業における違反も増加しているものと推測されるが、これに対する検挙状況は、深夜飲食店営業、ソープランド営業等対象となる業態の拡大に伴う業務量の増大等の理由もあって、表5-2のとおり減少している。
 今後においては、年少者雇用事犯、卑わいなサービス提供事犯等の悪質な

表5-2 風俗営業による違反の検挙状況(昭和46~50年)

事犯を見逃すことのないよう取締りを行う必要がある。
 なお、昭和50年中における風俗営業に伴う法令違反を態様別にみると、図5-1のとおりで、営業時間の制限違反が最も多く、次いで年少者(18歳未満の者)を客として立ち入らせたり、年少者を雇って客の接待をさせるなどの年少者に関する禁止行為の違反がこれに続いている。

図5-1 風俗営業に伴う法令違反件数の態様別比較(昭和50年)

 都道府県公安委員会では法令違反を犯し、善良の風俗を害した風俗営業者に対しては、許可の取消し、又は6箇月以内の営業停止を命じているが、最近5年間の風俗営業に対する行政処分の状況は、表5-3のとおりである。

表5-3 風俗営業の行政処分状況(昭和46~50年)

イ 風俗営業まがいの営業を行う深夜飲食店
 スナック、サパークラブ、コンパ等の名称で営まれている深夜飲食店営業
(午後11時以降営業している飲食店営業)は、風俗犯罪や少年非行の温床となるおそれがあるところから、風俗営業等取締法によって、営業場所、営業時間、営業行為等の制限を受けているが、夜間における生活時間の拡大等国民の生活様式の変化を反映して、その数は、表5-4のとおり逐年増加を続けている。

表5-4 深夜飲食店営業の推移(昭和46~50年)

 これを業態別にみると、表5-5のとおりで、酒場等の「主として酒類を提供する営業」が年々増加を続け、なかでもスナック、サパークラブ、コンパ等洋風の営業の増加が著しい。
 反面、喫茶店、食堂、レストラン等の「主として酒類以外の飲み物や食事を提供する営業」は、昭和50年にはこれまでの増加から減少に転じている。
 このような深夜飲食店の増加、とりわけ、主として酒類を提供するスナック、サパークラブ、コンパ等の営業の急増は、業者間の過当競争をもたらし、その結果、客を確保するためにインテリアに工夫を凝らし、バンド演奏を行うなど次第に享楽度の高い風俗営業まがいの営業形態をとるものが増加している。
 最近では、一部の悪質な業者に
・ いわゆる隠しホステスを置き、客の求めに応じて、同伴客を装って接接させるもの
・ 一見OL風のキャッチガールを置き、路上で客を誘い、又は客の誘いを待って同伴して来店させ、法外な料金を請求するもの
・ 店内の照明を異常に暗くしたり、バンド演奏をして客にダンスをさせるなど風俗営業と同様のふんい気を醸し出して営業しているもの
などの違反形態が数多くみられる。

表5-5 深夜飲食店営業の業態別推移(昭和46~50年)

 このほか、深夜飲食店営業については、年少者(18歳未満の者)への悪影響を防止する目的から、年少者を深夜に客として営業所に立ち入らせること、年少者を深夜に客に接する業務に就かせることなどが禁止されているが、客の関心をひくためや人手不足から女子中学生や高校生を雇い入れ、深夜、客の接待に従事させるものがあるなど、悪質な営業が目立ってきている。
 最近5年間における深夜飲食店営業の違反態様別検挙状況は、表5-6のとおりで、時間外営業(例えば、「主として酒類を提供する営業」については、午前零時以降営業ができない。)が最も多く、無許可風俗営業、年少者の使用がこれに続いている。

表5-6 深夜飲食店営業の検挙件数(昭和46~50年)

〔事例〕 レストラン経営者が、見張りに発信機を持たせて店外に配置するなどして警察の取締りに備え、店内では客の男女高校生等に午前4時ころまでダンスをさせ、無許可風俗営業(ナイトクラブ)を行っていた(青森)。
 最近5年間に、都道府県公安委員会が深夜飲食店営業に対して行った営業停止処分の状況は、表5-7のとおりである。

表5-7 深夜飲食店営業の営業停止処分状況(昭和46~50年)

(2) 善良な性風俗保持のための取組
ア 素人の増加が目立つ売春事犯
 最近5年間における売春防止法違反の検挙状況は、表5-8のとおりで、事犯の内容をみると、ソープランドにおける売春、マッサージを偽装した売春、バーのホステスによる売春のほか、女子高校生らによるグループ売春、主婦による売春、暴力団員が関連する売春事犯等が目立っている。

表5-8 売春防止法違反検挙状況(昭和46~50年)

 昭和50年中に売春防止法違反で検挙した被疑者を職業別にみると、図5-2のとおりである。
 なお、保護した売春婦の年齢構成についてみると、20歳代が34.7%と最も多く、次いで30歳代(30.5%)、10歳代(7.6%)の順となっている。

図5-2 売春防止法違反被疑者の職業別状況(昭和50年)

 また、最近5年間に売春防止法違反で検挙した暴力団関係者の検挙人員は、表5-9のとおりで、依然として売春事犯に介在する暴力団関係者が多いことが分かる。

表5-9 暴力団関係者の検挙状況(昭和46~50年)

 警察は、従来から管理売春、暴力団の介入する事犯、未成年者に売春をさせる事犯等を重点に取締りを行っているが、客の供述を確保することが次第に困難になってきていること、売春事犯が近年特に巧妙化しつつあることなどから、捜査にこれまで以上の時間、人員を要する事犯が多くなり、検挙に多くの困難が伴うようになってきている。
〔事例1〕 17歳の女子高校生が、顔見知りのガソリンスタンド従業員から、売春する女子高校生の紹介を依頼され、同級生をあっ旋して手数料を得たことに味をしめ、次々に同級生に売春客をあっ旋し、更に、これに応じた女子高校生5人も、互いに客をあっ旋し合っていた(岐阜)。
〔事例2〕 温泉地のカフェー経営者が、同地の芸妓不足に目をつけて、即席の芸妓による売春でひともうけすることを企て、顔見知りの一般家庭の主婦7人に対して、「楽しみながら高収入の得られるうまいもうけ口があるので働いてみないか。」と言葉巧みに誘って同女らを即席の芸妓に仕立てて温泉旅館の宴席に送り込み、客と売春させてその対価を折半していた(群馬)。
イ 悪質、巧妙化するソープランド売春
 ソープランド営業では、その構造及び営業形態から半ば公然と売春が行われているといわれており、一部の地域では、かつての赤線地域を思わせるような形態で営業が行われているとして批判を受けているが、その数は、表5-10のとおり逐年増加を続けている。また、ソープランド従業員の数も、前年に比較してわずかながら増加している。

表5-10 ソープランド営業及びソープランド従業員の推移(昭和46~50年)

 最近5年間のソープランド営業における売春関係事犯の検挙状況は、表5-11のとおりである。

表5-11 ソープランド営業における売春関係事犯の検挙状況(昭和46~50年)

〔事例〕 ソープランド従業員28人を擁するソープランドの経営者が、ソープランド従業員に対し、「使用した避妊用具は店内に捨てず、責任をもって処理すること。」、「検挙された場合は、自分の一存で売春した旨供述し、店長やマネージャー等に累が及ばないようにすること。」などと詳細に教え込んで売春をさせ、更に、取締りを免れるため、3~6箇月ごとにソープランド従業員をチェーン店間でたらい回ししていた(新潟)。
ウ わいせつ犯罪の取締り
 海外における「ポルノ解禁」のムードの高まりは、近年我が国にも微妙な影響を及ぼし、国内における享楽的風潮のまん延と一部における法無視の傾向とあいまって、公然猥褻(わいせつ)(刑法第174条)、猥褻(わいせつ)物販売等(刑法第175条)に該当するとみられる事犯が激増している。
 このような情勢のなかで、特に注目すべき傾向は、次の3点である。
[1] 映画、公刊出版物等の中に“性”を取り扱うものが著しく増加しており、これらの中には、猥褻(わいせつ)に該当するものや青少年保護育成条例によって有害と指定されるものも少なくなく、これらが一般家庭、特に青少年に極めて悪い影響を与えている。
[2] ストリップ劇場等において行われるショーは、近年ますます露骨なものとなっており、舞台上で性交の実演をして検挙されたものも現れている。
 これらは、警察の相次ぐ取締りにもかかわらず執ように繰り返されており、しかも、警察の取締りの間げきを縫ってますますエスカレートする傾向にある。
[3] わいせつ物の我が国への持込みは禁止されているが、欧米諸国では比較的容易に入手できるところから、近年における海外旅行ブームの影響を受けて急増した観光旅行客等により、大量のわいせつ図画等が我が国に持ち込まれており、これらの密輸入わいせつ物及び国内において密造されたわいせつ物の販売が、暴力団の大きな資金源になっている。
 警察としては、このような情勢に対応して、昭和50年においては、ストリップ劇場等における行き過ぎた行為を取り締まるため、9月に「全国いっせいの興行場における公然猥褻(わいせつ)事犯等の取締り」を行い、全国のストリップ劇場305軒の32.1%に当たる98軒を、ヌードスタジオ229軒の13.1%に当たる30軒を摘発し、劇場経営者、興行主、照明係等280人、踊り子466人を公然猥褻(わいせつ)等で検挙したのをはじめ、暴力団による組織的なブルーフィルム密造販売事犯等を検挙した。今後においても、性風俗の乱れが社会一般の善良の風俗を害し、青少年等に対し悪影響を与えている現状に歯止めをかけるため、性風俗に関する複雑な社会実態を注視しながら、
・ 青少年の目に容易に触れるような形で行われる公然猥褻(わいせつ)、猥褻(わいせつ)物販売等の事犯
・ ストリップ劇場等における悪質な公然猥褻(わいせつ)事犯
・ 暴力団等による組織的な猥褻(わいせつ)物密造販売等の事犯
等の悪質なものに対しては、これを看過することなく、的確な取締りを行うこととしている。
 最近5年間におけるわいせつ犯罪の検挙状況は、表5-12のとおりであり、わいせつ犯罪で検挙した暴力団関係者の状況は、表5-13のとおりである。
〔事例1〕 ブルーフィルムの密造販売事件で検挙されたことのある広域暴力団の幹部が、保釈後、再びブルーフィルムの密造販売によってひともうけすることを企て、15箇所のアジトを確保し、最新式のカラーフィルム自動現像機を購入し、10数人の配下を使って約8箇月の間に1万5,000巻のわいせつカラーフィルムを密造し、8系列12団体の暴力団を通じて全国各地に販売していた事犯で、暴力団員40人を含む被疑者96人を検挙するとともに、ブルーフィルム9,142巻、製作機材トラック2台分を押収した(大阪)。
〔事例2〕 密輸入事件等で13回の検挙歴のある密輸入業者が、ブルーフィルムの密輸入でひともうけすることを企て、タクシー運転手や外国船乗組員らと共謀し、スウェーデン、デンマーク、オランダ、西ドイツ等のポルノグラフィ9,800冊、ブルーフィルム43巻を密輸入した事犯で24人を検挙し、ポルノグラフィ3,073冊、ブルーフィルム7巻を押収した(兵庫)。

表5-12 わいせつ犯罪検挙状況(昭和46~50年)

表5-13 わいせつ犯罪における暴力団員の検挙状況(昭和46~50年)

 わいせつ物には、ブルーフィルム、わいせつ写真のほか、観光地の土産品や大人のおもちゃ店で販売されている性器を模造したものや春本、春画等があるが、昭和50年中に押収したわいせつ物は、図5-3のとおりである。

図5-3 押収したわいせつ物の状況(昭和50年)



(3) まん延するギャンブル事犯との対決
ア ギャンブルマシンによる賭博事犯の激増
 近年スロットマシン、ルーレット、ビンゴ等のいわゆるギャンブルマシンが激増しており、特に最近では、このような遊技機を多数設置して、専業として営むいわゆるゲームセンター、メダルゲーム場等と称する営業所の数は、前年に比べ43.5%増の1,158軒と大幅に増加している。
 ゲームセンター、メダルゲーム場等の営業所で使用されている遊技機の外国製品と国産品の別は、図5-4のとおりである。

図5-4 遊技機の外国製国産別状況(昭和49、50年)

 外国製遊技機はむしろ減少しているのに対し、前年わずか22.1%を占めるのみであった国産の遊技機が、昭和50年には総数においては約2.7倍、構成比においても44.4%と前年の倍以上の割合を占めるほど増加しており、この種の遊技が定着しつつある傾向が認められる。
 これらのギャンブルマシンは、改造が比較的簡単であるところからメダルの代わりに直接100円硬貨を利用できるように機械を改造して、客に現金をかけさせたり、客が遊技の結果得たメダル、チップを閉店後に換金したりする賭博行為に使用している営業者が多い。
 一方、暴力団は、この遊技機が比較的容易に収益をあげられることに目をつけ、自らメダルゲーム場を経営し、あるいは数県にわたり、ドライブイン、食堂等に遊技機を設置して客に賭博行為を行わせるなどしており、暴力団の資金源としても無視できない状況にある。
 このほか飲食店の経営者が店内にギャンブルマシンを設置し、出入りする高校生を相手に賭博行為を行っていた事例や、遊技客の中でギャンブルマシンによる賭博にとりつかれ、借金の挙げ句家庭不和に陥り、家族から警察に相談が持ち込まれた例などが、相次いで発生している。
 ギャンブルマシンによる賭博事犯の検挙は、表5-14にみられるとおり年ごとに増加しており、賭博の検挙総数の中に占める比率も、逐年高くなってきている。
 また、ギャンブルマシンを使用した賭博事犯によって検挙した営業所数は、1,089軒で、前年に比べ23.9%の増加であるが、その内訳は、図5-5のとおりである。

表5-14 ギャンブルマシンによる賭博事犯検挙状況(昭和47~50年)

図5-5 ギャンブルマシンを使用した賭博事犯で検挙した営業所数(昭和50年)

 昭和50年中に、賭博の証拠品として押収したギャンブルマシンは、2,497台で、前年に比べ848台(51.4%)の増加となっている。
 なお、ギャンブルマシンと同時に押収したかけ金は、昭和50年中で8,644万余円に上っており、前年に比べ41.3%も増加している。
〔事例1〕 ゲームセンターの経営者が、暴力団員を用心棒として雇い入れ、高校生を含む延べ約1,150人の客に約650万円をかけさせ、約520万円の利益をあげ、暴力団員と折半していた(京都)。
〔事例2〕 ゲームセンターで大穴を当てたことからメダルのとりこになったサラリーマンが、その後貯金を使い果たし、マイカーを売りとばし、更にサラリーマン金融から100万円近い借金をし、その返済に迫られて蒸発した(大阪)。
イ 公営競技をめぐる犯罪
 公営競技(競馬、競輪、競艇及びオートレース)をめぐるノミ行為の最近5年間の検挙状況は、図5-6のとおりである。ノミ行為は、麻薬・覚せい剤に次ぐ暴力団の非合法資金源となっており、検挙人員に占める暴力団関係者の比率は、依然として高い。警察では、これら暴力団の封圧に重点を置き、特別取締班の編成、集中的取締りの反復実施等ノミ行為の取締りに努めている。

図5-6 ノミ行為検挙状況(昭和46~50年)

 また、競技の公正を阻害する八百長事犯等の最近5年間の検挙状況は、表5-15のとおりで、昭和50年には、浦和競馬、名古屋競馬、笠松競馬等地方競馬における八百長事犯が目立った。
〔事例〕 名古屋競馬、笠松競馬における八百長事犯の検挙
 名古屋競馬場所属の馬丁がからむ場外ノミ行為グループの検挙を端緒として、バー経営者夫妻等が、騎手、馬丁等と組んで、昭和49年4月から50年7月までの間に、合計23回にわたり八百長競馬を敢行し、総額4,450万円に上る不法利益をあげていた事犯をはじめ、名古屋、笠松両競馬場を舞台にした8グループによる八百長事犯を検挙した(愛知)。

表5-15 八百長競技等検挙状況(昭和46~50年)

2 不況に伴う経済事犯の取締り

(1) 激増した金融事犯
 昭和50年における金融事犯の検挙状況は、図5-7のとおり931件、823人で、前年に比べ228件(32.4%)、189人(29.8%)増加した。これは、「出資等取締法」(出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律)違反が多発したことによるものである。
 金融事犯を態様別にみると、高金利事犯が697件と全体の約75%を占めており、次いで、無届貸金業事犯(165件)、頼母子講事犯(15件)、預り金事

図5-7 金融事犯検挙状況(昭和46~50年)

犯(13件)、無免許証券業事犯(12件)等が続いている。
 この中でも、金融事犯の大部分を占める高金利事犯が、図5-8のとおり、前年に比べて204件(41.4%)増と急激な増加を示した。これは、長引く不況を反映して、街の貸金業者への資金需要が多くなり、これに伴い貸金業者も増加し、これら業者による悪質な高金利事犯が多発したことによる。

図5-8 高金利事犯検挙件数と貸金業者数の推移(昭和46~50年)

 このため、元利金の返済を迫られ、返済に窮した借受け人の自殺、無理心中等の悲惨な事例が目立った。また、暴力団が資金源を開拓するため金融業に進出し、出資等取締法違反を敢行しており、昭和50年には、前年に比べ、件数において2.26倍、人員において2.11倍に当たる154件、120人を検挙した。
〔事例1〕 貸金業を営む夫婦が、市役所職員の妻に法定利率(1日0.3%以下)の7倍の高利で貸し付け、厳しい取立てをし、借受け人の夫を自殺に追い込み、遺族に要求して生命保険金、退職金を元利金に充当させた(福岡)。
〔事例2〕 前科8犯の貸金業者が、主婦を対象に高利で貸し付け、返済できない主婦には、売春を強要して元利金の返済に充当させた(静岡)。
(2) 売り急ぎによる不動産事犯
 最近5年間の主な不動産事犯は、図5-9のとおりである。昭和50年には1,483件、1,333人を検挙し、前年に比べ284件(23.6%)、165人(14.1%)と大幅に増加した。これは、売れない土地を抱え、長引く不況の中で、不動産業者の売り急ぎによる「宅建法」(宅地建物取引業法)違反が増加したためである。

図5-9 不動産事犯検挙件数の推移(昭和46~50年)

 その主な態様は、図5-10のとおりで、その内容をみると、依然として無免許営業事犯が多いが、不況下で資金繰りに悩む不動産業者が、物件を詐欺的手段を用いて売り急いだと認められる誇大広告事犯、重要事項不告知事犯が激増した。

図5-10 宅建法違反態様別検挙状況(昭和50年)

〔事例1〕 昭和46、7年の不動産ブームの折に買い占めた不動産を抱え込み、資金繰りに困った宅建業者が、手持ち不良物件の処分のため、開発及び上水道給水の見込みが全くないのに、その事実を秘して系列会社4社を通じ、446人に8億1,198万円で分譲販売した事犯により、5法人56人を検挙した(愛知)。
〔事例2〕 不動産詐欺の前科者グループが、別荘専門の開発会社を設立し、阿蘇国立公園に開発した別荘団地を販売するに際し、温泉ゆう出の事実も給湯の計画もないのに、「温泉が出る。」などの誇大広告を行い、総額約6億円で分譲した事犯により、1法人25人を検挙した(福岡)。
(3) 金融、不動産事犯被害者の実態
ア 金融事犯
 北海道、秋田、静岡、愛知、大阪及び兵庫の6道府県警察において、昭和50年1月から6月までの間に検挙した金融事犯の被害者1,399人について実態を調査した結果は、図5-11のとおりで、被害者の職業別では、主婦が434人(32.4%)と最も多く、次いで中小企業経営者、会社員の順となっている。年齢別では、30歳代451人、40歳代475人で両年代合わせて全体の69.2%を占めている。借受け理由についてみると、生活費590人、営業資金248人で、これを合わせると全体の62.6%を占めている。また、借受け金額別では、50万円未満が1,298人で、全体の92.5%を占めている。この調査から、比較的少額の金銭に困っている庶民の被害が多いことがうかがえる。

図5-11 金融事犯被害者の実態(昭和50年1~6月)

イ 不動産事犯
 岩手、埼玉、神奈川、愛知、京都、岡山、福岡及び宮崎の8府県警察において、昭和50年1月から6月までの間に検挙した不動産事犯の被害者655人について実態を調査した結果は、図5-12のとおりで、被害者の年齢別では30歳代189人、40歳代235人で、両年代を合わせると全体の64.7%を占めている。職業別では、会社員と公務員を合わせると275人で、全体の41.9%を占めている。また、対象物件の購入目的別についてみると、自宅建築のためが251人で最も多く、全体の38.3%を占めている。被害金額では、100万円以上300万円未満が50.5%で最も多い。
 この調査から、マイホームを持とうとする庶民の被害が多いことがうかがえ、警察では今後とも、強力な不動産事犯の取締りに努めていくことにしている。

図5-12 不動産事犯被害者の実態(昭和50年1~6月)

(4) 国際金融事犯の多発と取締り
ア 概況
 我が国と外国との貿易、取引や旅行者の往来は逐年活発化しているが、これに伴って発生する関税法及び「外為法」(外国為替及び外国貿易管理法)違反等の検挙状況の推移は、表5-16のとおりである。

表5-16 関税法及び外為法等違反の検挙状況(昭和46~50年)

 昭和50年には、海外法人の設立運営資金、貿易代金や海外旅行費用等をヤミ決済する事犯(外為法違反)が多発し、前年に比べ件数で3.7倍、人員で6.5倍に当たる534件、240人を検挙した点が注目される。
 このようなヤミ決済事犯の背後に存在する、いわゆる“地下銀行組織”については、金塊密輸事犯が多発した昭和39年ころから42年ころにかけて、二、三の組織を摘発した例があり、当時の組織は、主として香港の「銭荘」(金融業者)が、ヤミ決済を行っていたものであった。ところが最近の例をみると、貿易業者や旅行業者、更には密輸ブローカー等が自己の仕事に関連して地下銀行業務を行うなど組織の多様化現象がみられる。
イ ヤミ決済の原因と相手国
 地下銀行組織等を利用してヤミ決済した事犯について、昭和50年に検挙した事犯の原因(支払等の原因となる行為又は取引)を分析した結果は、次のとおりである。
(ア) 支払原因と相手国
 外国へのヤミ送金は、これを原因別にみると、図5-13のとおり、海外法人設立運営資金が54.6%と最も多く、次いで低価申告輸入に伴う差額金、海外旅行に伴う諸経費の順となっており、総額19億3,300万円に上っている。

図5-13 不正支払の原因別状況(昭和50年)

 また、これら不正支払の相手国は、台湾が全体の約70%を占め、次いで韓国(12.4%)、インドネシア(10.6%)、アメリカ(3.9%)、香港(1.3%)の順となっている。
(イ) 受領原因と相手国
 外国からのヤミ送金は、総額30億3,023万円で、このうち原因が判明した分についてみると、図5-14のとおり、低価申告輸出に伴う差額金が44.1%と最も多く、次いで外国人バイヤー等からの機械類の売り掛け金、密輸出代金の順となっている。
 また、ヤミ送金は、香港からのものが53.0%を占め、次いで台湾(40.9%)、韓国(4.8%)、カナダ(1.2%)、タイ(0.1%)の順となっている。
〔事例1〕 都内に居住する元スペイン人宣教師が、香港の両替商の日本支部員となって、昭和48年2月から1年8箇月の間に香港から円表示の

図5-14 不正受領の原因別状況(昭和50年)

小切手1,682枚、総額16億2,000万円を不正に受領し、これを国内各地の銀行に開設した匿名の預金口座に振込入金して現金化し、香港からの指示に基づいて国内業者等に不正支払をした(警視庁)。
〔事例2〕 台湾の旅行業者が、我が国からの旅行者を誘致するために来日し、国内の大手旅行業者をはじめ、多数の業者との間で旅行契約をし、これに伴う旅費等はヤミ決済することとして国内銀行に当座預金口座を設け、昭和49年1月から約1年の間に国内旅行業者から総額2億4,000万円を不正に受領し、そのうち1億2,000万円を円表示の小切手として台湾へ不正に持ち出していた(大阪)。

3 麻薬・覚せい剤事犯等の取締り

(1) 麻薬事犯の取締り
ア 麻薬事犯の検挙状況
 最近5年間における麻薬事犯の検挙人員の推移は、図5-15のとおりで、昭和50年は、1,155件、1,019人を検挙したが、前年と比べて件数で24件(2.0%)、人員で6人(0.6%)とそれぞれわずかながら減少した。
 法令別にみると、麻薬取締法違反及びあへん法違反は、昭和49、50年と2年連続減少し、一方、大麻取締法違反は、49年に若干減少したが、50年には再び増加した。

図5-15 麻薬事犯検挙人員の推移(昭和46~50年)

表5-17 麻薬別押収量の推移(昭和46~50年)

 最近5年間における麻薬別の押収量の推移は、表5-17のとおりで、昭和50年は、前年に比べて、大麻草、あへん、モルヒネの押収量は増加したが、その他の麻薬の押収量は減少した。
イ 大麻事犯の増加
 大麻は、大麻草及びこれから採れる大麻樹脂、乾燥大麻等の総称であるが、これを用いると視覚、聴覚や思考、気分に変化を生じ、一種の精神障害を誘発する幻覚剤である。
 大麻事犯は、昭和40年代後半から増加傾向を示してきており、50年は前年に比べ145人(24.7%)増の733人を検挙し、麻薬事犯検挙人員の71.9%を占めている。50年には、大麻樹脂等より更に幻覚が強い液体大麻が我が国で初めて押収され注目された。
 昭和50年に大麻事犯で検挙された者の年齢構成は、図5-16のとおりで、25歳未満の青少年層が大半を占めている。

図5-16 大麻事犯年齢別検挙人員(昭和50年)

 大麻の乱用は、米軍人、ヒッピー族のほか、大学生、高校生、会社員等の一般青少年にまで及んでおり、その形態は、大麻草の葉や花穂を乾燥したいわゆるマリファナをグループで吸煙するマリファナパーティーによるものが中心である。乱用されるマリファナは密輸入されたものがほとんどであるが、国内の山野に自生する野生大麻草を採取したり、許可栽培大麻草を盗取する事犯も増加している。
〔事例〕 都内在住の大学生等が、栃木県下の栽培大麻草を盗取して、グループで吸煙していた事犯で、大学生4人を含む26人を検挙し、大麻草3.9キログラム、乾燥大麻6.1グラムを押収した(栃木)。
ウ 水際検挙
 我が国で乱用される麻薬のほとんどは、海外から密輸入されており、東京国際空港、神戸港をはじめ全国各地の開港地から、航空機、船舶を利用してひそかに行われるものが多いが、最近においては、外国郵便物を利用した密輸入も増加している。密輸入ルートの主なものは、タイルート、香港ルート、インドルートであり、昭和50年には、東南アジア諸国を中心とした18箇国から密輸入されている。密輸者は軍人、外国人船員、外国人旅行者等が依然多いが、最近の特徴として、不況のため資金繰りに困った会社経営者等が一獲千金を夢みて密輸入するケースや観光旅行者が密輸入するケースが増加している。
 麻薬禍を防止するためには、我が国に入ってくる段階、すなわち水際で押収検挙することが必要であり、警察では税関等関係機関と協力して「水際検挙」に努めている。
 昭和50年中に、警察で押収した麻薬のうち水際検挙による麻薬の押収量は、図5-17のとおりであり、押収量の大部分は密輸入後間もなく捕そくされたものである。
〔事例〕 不良外国人等が、タイで仕入れた大麻及びヘロインを東京国際空港から密輸入し、都内で密売しようとしたところを検挙し、乾燥大麻9キログラム及びヘロイン36グラムを押収した(警視庁)。

図5-17 水際検挙による麻薬別押収量(昭和50年)

エ 麻薬犯罪取締りセミナー
 麻薬犯罪取締りセミナーは、ヘロインが我が国で横行した昭和37年にコロンボ計画の一環として、警察庁と海外技術協力事業団(現在の国際協力事業団)の共催により始められ、以来毎年1回、東京において開催されている。第1回は、6箇国から8人の麻薬犯罪取締り担当官が参加したが、昭和50年の第14回目のセミナーには、正式参加12箇国16人、オブザーバー2箇国2人の計14箇国18人が参加した。
 このセミナーでは、麻薬犯罪に関する情報交換、相互理解による積極的協力関係の保持及び捜査技術の向上を図っている。
(2) 再び急増した覚せい剤事犯の取締り
ア 覚せい剤事犯の概況
 最近5年間における覚せい剤事犯の検挙人員の推移は、図5-18のとおりで、昭和48年に強力な取締りを実施したため、49年には5年ぶりに減少したものの、50年には外国からの密輸入や国内における本格的密造が増加するとともに、暴力団による密売が繰り返されるなど再び急増し、前年に比べて38.8%増の8,218人の検挙となった。
 覚せい剤事犯は、昭和44年ごろまでは、近畿を中心に中国、四国の都市部に集中していたが、次第に中部、関東、九州に広がり、46年には東北、北海道にも及び、48年には全国の都道府県で検挙をみるに至り、以後地域的格差はほとんど見られなくなってきており、現在では覚せい剤事犯のほとんどが、2以上の都道府県にまたがる広域事犯となっている。

図5-18 覚せい剤事犯検挙人員の推移(昭和46~50年)

 覚せい剤事犯の検挙人員に占める暴力団関係者の割合の推移をみると、表5-18のとおりで、その割合は例年高く、昭和50年には、検挙人員全体の59.7%に当たる4,908人が暴力団関係者によって占められており、また密売事犯についてはほとんどが暴力団関係者によって行われている。

表5-18 覚せい剤事犯における暴力団関係者の検挙状況(昭和46~50年)

〔事例〕 家出中の女子高校生等少女5人が、暴力団員の甘い言葉に誘われ、覚せい剤を注射してもらってから病み付きとなり、覚せい剤欲しさに暴力団員の言うまま、売春を行っていた(大阪)。
 覚せい剤及び同原料の押収状況は、図5-19のとおりで、昭和50年の覚せい剤粉末押収量は34.4キログラムとなっており、これは末端密売価格にして、約103億円にも相当する。

図5-19 覚せい剤、同原料の押収状況(昭和46~50年)

イ 増加する密輸入と密造
 覚せい剤密輸入及び密造事犯の検挙状況は、図5-20のとおりである。昭和44年ごろまでは国内における密造も相当あったが、45年ごろから韓国ルートの密輸入が増加し、供給源の大部分が外国から密輸入されている状況にあり、特に、50年には、素人よる一獲千金を夢みた密輸入事犯が多発するなど、密輸入が大幅に増加した。
 一方、昭和48年ごろから塩酸エフェドリンを原料として化学的に覚せい剤を密造する、いわゆる本格的密造が見られはじめ、それ以後漸増を続け、50年には、設備を設けて大量に覚せい剤を密造中爆発事故を起こすなど、大規模な密造事犯が目立った。

図5-20 覚せい剤密輸入、密造事犯検挙件数の推移(昭和46~50年)

〔事例1〕 不動産業者が、借金の返済に充てる目的で仲間2人と共謀して、2回にわたり覚せい剤をショルダーバックの中に隠して、航空機でタイ国から密輸入した事犯を検挙し、覚せい剤3キログラム余を押収した(神奈川)。
〔事例2〕 暴力団組長が、薬剤師等2人を雇って、問屋から覚せい剤原料を含んでいるせき止め薬を大量に買い集め、これから覚せい剤原料27キログラムを抽出し、これを原料として、昭和49年11月から50年10月までの間に、埼玉県内の借家等6箇所において覚せい剤12キログラムを密造させ、これを関東一円の暴力団仲間に密売し、巨利を得ていた(埼玉)。
ウ 覚せい剤をめぐる事犯の多発
 覚せい剤は、麻薬と同じように習慣性があるため、連用すると中毒となり、極端な場合は精神障害に陥り、一生廃人として惨めな生活を送ることもある。また、覚せい剤中毒者が、その薬理作用による幻覚、被害もう想等から発作的に殺人、放火、傷害等の犯罪を犯したり、あるいは、覚せい剤を求める金欲しさのために窃盗、詐欺、恐喝等の犯罪を犯すことが多い。
 覚せい剤をめぐる事犯の検挙状況は、表5-19のとおりで、昭和50年は366件、321人を検挙し、前年に比べ97件(36.1%)、108人(50.7%)増加した。このような覚せい剤乱用の影響は、単に中毒者自身の破滅にとどまらず、社会的にも大きな弊害をもたらしている。

表5-19 覚せい剤をめぐる刑法犯の検挙状況(昭和49、50年)

〔事例1〕 覚せい剤を常用していた男が、中毒となって精神錯乱に陥り、自宅において内妻が預っていた幼児3人に対し、木刀や素手で殴るなどの乱暴をし、2人を死亡させた(千葉)。
〔事例2〕 暴力団員が覚せい剤を密売して一もうけしようと考え、その資金を稼ぐため、詐欺、恐喝、横領等により、現金、ダイヤの指輪等194万円相当を入手し、覚せい剤の購入代金に充てていた(山口)。
(3) 保健衛生事犯の取締り
 最近における健康食品の流行や医薬品多用の傾向等にみられるように、国民の健康増進に対する期待は、一層増大している。
 このような事情を背景にして、「にせ医師」事犯や「にせ薬」の製造販売事犯、有害食品の製造販売事犯等の保健衛生事犯は、図5-21のとおり、増加の傾向にある。

図5-21 保健衛生事犯検挙状況(昭和46~50年)

 保健衛生事犯は、薬事、医事、食品衛生関係等に大別されるが、このうち薬事関係事犯としては、不況を反映して、安易な「にせ薬」の製造販売や不正な医療用具の製造販売事犯が全国的に多発した。また、医事関係事犯では、依然として無資格者による医療行為が数多く敢行された。食品衛生事犯は、昭和45~46年をピークに、その後減少傾向にあるものの、飲食店の無許可営業事犯が多発するとともに、死傷者を伴う食中毒事件の発生も跡を絶たない現況にある。このような保健衛生事犯は、直接に国民の生命、健康に影響を与えるものであるだけに、今後とも、更に徹底した監視を続けていく必要がある。
〔事例1〕 不況の波をかぶって経営不振に陥った千葉県下の金融業者らが、折からブームに乗っていた紅茶キノコの製造販売で活路を開こうと企て、医薬品の製造販売の許可を得ないで大量に製造し、新潟県下で高血圧、ガン等に非常に良く効くと大々的に宣伝して販売した(新潟)。
〔事例2〕 医院を経営する医師夫妻が、利益をあげるために看護婦、マッサージ師等を使い、長期間にわたって違法に治療行為をさせていたほか、数県に診療所を設けて出張診察させていた(警視庁)。

4 悪質、巧妙化する公害事犯の取締り

(1) 公害事犯の実態
ア 増加を続ける検挙件数
 公害事犯の検挙は、図5-22のとおり、昭和46年から逐年増加を続けており、昭和50年に検挙した事犯は3,572件で、前年に比べて716件(25.1%)の増加を示している。これは、警察をはじめ、関係行政機関の公害事犯に対する積極的な取組や地域住民の公害問題に対する関心の高まりによるものとみられる。

図5-22 公害事犯年次別検挙状況(昭和46~50年)

イ 依然として多い水質汚濁と廃棄物不法投棄
 公害事犯を態様別にみると、表5-20のとおり、公害対策基本法にいう公害のうちでは、水質汚濁に関するものが1,374件(38.5%)と最も多く、次いで悪臭、土壌汚染の順となっている。
 適用法令別にみると、表5-21のとおり、「廃棄物処理法」(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が2,417件(67.7%)と最も多く、次いで河川法、水質汚濁防止法の順となっている。

表5-20 公害事犯態様別検挙状況(昭和49、50年)

表5-21 法令別検挙状況(昭和49、50年)

 また、検挙した事犯を端緒別にみると、表5-22のとおり、内偵、聞込み等警察自らの活動によるものが2,440件と最も多く、被害者等や行政機関からの通報、告発も前年に比べ増加している。

表5-22 検挙の端緒別状況(昭和49、50年)

(ア) 水質汚濁事犯の実態
 検挙した水質汚濁防止法違反291件のうち、排水基準違反が201件(69.1%)と最も多く、次いで届出義務違反が84件(28.9%)、改善命令等の違反が6件(2.0%)となっている。
 排水基準違反の状況は、図5-23のとおり、健康項目(人の健康を害する有害物質の許容限度を定めたもの)が54件(26.9%)、環境項目(水素イオン濃度又は有機物による汚染の程度を示す生物化学的酸素要求量等の許容限度を定めたもの)が147件(73.1%)である。

図5-23 排水基準違反の項目別状況(昭和50年)

(イ) 産業廃棄物の不法投棄の実態
 昭和50年中における産業廃棄物の不法投棄事犯の検挙は1,676件、投棄量約39万1,000トンである。
 この不法に投棄された産業廃棄物を種類別にみると、図5-24のとおりで、鉱さい、建設廃材、汚でいによって大半が占められている。

図5-24 不法に投棄された産業廃棄物(昭和50年)

 これらの産業廃棄物を排出した事業場を業種別にみると、表5-23のとおりで、建設業からは建設廃材、汚でい、製造業からは鉱さい、汚でい、農業から

表5-23 業種別産業廃棄物排出量(昭和50年)

は動物のふん尿の排出が多い。
 産業廃棄物が不法に投棄された場所についてみると、図5-25のとおりで、河川、河川敷、道路、空地をはじめ、あらゆる場所に不法投棄が行われている。

図5-25 不法投棄場所(昭和50年)

ウ 目立つ悪質化
 取締りを通じて見られる主な傾向としては、全体として、公害防止に対する行政機関の指導の浸透、関係事業者の積極的な取組が見られる反面、取締りを免れるため、巧妙なやり方で違反をするものが多発している。
 例えば、不況の影響から、経費の節約を図るため、せっかく設置した公害処理施設を全く使用しないで未処理の廃水を排出するもの、処理施設の故障を知りながら修理せずに未処理で排水するもの、中和剤の使用を節約して強酸や強アルカリの水をそのまま流すもの等の事犯がみられ、また、最初から排水処理施設を設けずにシアン等の有害物質を多量に含有する廃水を流すもの、正規の排水路のほかにいわゆる隠し排水路の工事をし、監視の目を逃れて排水するもの等の悪質な事犯が目立っている。
 また、産業廃棄物を自ら処理し、又は、正規の処理業者に委託すると、処理費用がもぐり業者に処理を委託した場合に比較して割高とたることから、安易にもぐり業者に処理を委託するものが増加の傾向にあり、また、もぐり業者は、利益をより多くするため、手段を選ばずに不法投棄をするなどの傾向がみられた。
〔事例1〕 工場を秘匿して有害物質をたれ流す事例
 電気メッキ業者が、倉庫の2階に全く汚水処理施設を持たないいわば「隠しメッキ工場」ともいうべき施設を設置し、メッキ工場であることが発覚するのを防ぐために、光が外部に漏れないようにするなどの工作をして、隠し排水口からシアン等の有害物質をひそかにたれ流していた(富山)。
〔事例2〕 隠し排水路を設置する事例
 製あん、製菓工場が粗製あん沈でん槽から生ずる汚水を廃水処理施設を経由して排水口に流す正規の排水経路のほかに、処理施設を経ないで直接排水口へと通ずる排水管(いわゆる隠し排水路)を設け、バルブ操作によって、監視されていない時間を選んで基準違反の未処理水を排出していた(福岡)。
エ 公害苦情の処理
 警察に寄せられた公害関係の苦情は、表5-24のとおり、昭和48年をピークに減少傾向に転じているが、50年は3万3,714件を数えた。これを原因別にみると、騒音に関するものが最も多く、全体の69.0%を占め、次いで悪臭、水質汚濁、振動、大気汚染の順となっている。

表5-24 公害苦情の受理状況(昭和46~50年)

 これらの苦情の処理状況は、図5-26のとおり、警察が全体の81.9%を検挙、警告、話合いのあっ旋により処理し、市役所、保健所等の行政機関へ11.5%を引き継いで処理を依頼している。

図5-26 苦情の処理状況(昭和50年)

(2) 公害事犯に対する計画的取締り
ア 水質汚濁事犯の計画的、集中的取締り
 警察は、災害を伴う事犯、手口の悪質な事犯、行政機関の指導を無視する事犯等を重点として、汚濁の著しい河川、水域を指定して計画的、集中的に取締りを行った。
 具体的には、全国47都道府県のち40府県警察が「瀬戸内ブルーシー作戦」、「霞ヶ浦ブルーレイク作戦」、「木曾三川浄化作戦」等を推進した。「瀬戸内ブルーシー作戦」は、瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づき、国及び関係地方公共団体が瀬戸内海の浄化を図っているなかで、関係11府県警察が共同して瀬戸内海に流入する河川、港湾に対する工場排水による水質汚濁の計画的取締りを実施し、瀬戸内海の浄化対策に寄与しようとするもので、昭和49年から引き続いて行ったものである。
イ 産業廃棄物不法投棄事犯の広域的取締り
 警察は、水質汚濁、悪臭等の原因となる産業廃棄物の不法投棄事犯を重点に取締りを実施した。特に、工業地帯との関係で広域的事犯の多い関東7都県(東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川の各都県)、中部3県(岐阜、愛知、三重の各県)及び近畿6府県(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の各府県)の各警察は、京浜工業地帯、阪神工業地帯等から排出される産業廃棄物の不法投棄事犯に対し、昭和50年1月から、広域的、計画的な取締りを「産廃作戦」と呼称して、相互に連絡協調を図りながら進めた。この結果は、表5-25のとおりで、検挙件数は、産業廃棄物不法投棄事犯の総

表5-25 「産廃作戦」による検挙状況(昭和50年)

検挙件数の45.5%に当たる762件、投棄量は、総投棄量の66.1%に当たる25万8,491トンとなっている。
(3) 熊本水俣病事件の検挙
 昭和28年ごろから、水俣湾周辺の住民の中に原因不明の患者が発生しはじめ、35年ころまでの間に、多数の患者が発生するに至った。
 昭和43年9月に、いわゆる熊本水俣病の原因は、チッソ株式会社水俣工場のアセトアルデヒド酢酸設備内で生成されたメチル水銀化合物が、工場廃水に含まれて排出され、水俣湾に生息する魚介類を汚染し、住民が同湾で採れた魚介類を食べたことによって生じたものであるとの政府見解が出され、更に、48年3月には、民事事件として会社側に過失責任があるとする熊本地裁の判決が出された。
 熊本県警察は、この事件について資料収集、適用法令の検討等を行っていたが、昭和50年3月、水俣病認定患者117人から、チッソ株式会社及び同社水俣工場関係責任者を被告訴人とする殺人及び傷害の告訴が出されたこともあって、新たに認定された胎児性水俣病患者を中心に、積極的に捜査を進めた結果、当時の社長、工場長等3人については、31年以降同工場の排水が発病の原因として疑われていた経過を熟知しながら、的確な根拠がないのに、同排水には発病の原因毒物を含有していないものと軽信し、何ら適切な措置を講ずることなく、32年から39年までの間操業を続けた過失により、22人を水俣病に罹(り)患させ、そのうち11人を死に至らしめた業務上過失致死傷の容疑が明らかになったので、50年11月、熊本地検に業務上過失致死傷で送検した。なお同地検は、51年5月、元チッソ社長及び元同社水俣工場長の2人を業務上過失致死傷で起訴した。

5 銃砲・火薬類等の危険物対策の推進

(1) 銃砲の取締りと対策
ア 銃砲の取締り
 銃砲による危害を防止するため「銃刀法」(銃砲刀剣類所持等取締法)によって、銃砲の所持は一般的に禁止され、警察官、自衛官等が職務のために所持する場合や都道府県公安委員会の許可を受けた場合等を除いては、所持できないこととされている。なお、暴力団等は、そのぐ犯性にかんがみ許可の対象から除外されているが、銃砲、特にけん銃、猟銃及び空気銃を武装の手段等として不正に隠匿している場合が多い。
 警察では、凶器使用犯罪の未然防止を図るために、銃砲不法所持事犯の摘発に努めており、最近5年間に不法所持として押収したけん銃等、猟銃及び空気銃の丁数は、表5-26のとおりで、その総数は、昭和49年以降増加しているが、これは、けん銃の押収丁数の増加によるものである。
 けん銃の供給源としては、密造、密輸入等があるが、警察は、関係機関等の協力を得て、徹底した取締りに努めている。
 また、猟銃及び空気銃については、不法所持事犯の取締り、事故の防止等を重点にしている。

表5-26 主要銃砲押収状況(昭和46~50年)

イ 改造けん銃の取締り
 高級がん具けん銃を弾丸発射の機能を有するようにした、いわゆる改造けん銃の押収丁数は、図5-27のとおり増加傾向にあり、昭和50年は、過去の最高である1,026丁を押収した。

図5-27 改造けん銃の押収状況(昭和46~50年)

 改造けん銃の押収丁数が増加した理由としては、真正けん銃の入手が困難であることから、暴力団等が武装の手段又は密売による資金源とするために自由に購入でき、かつ、容易に改造し得る高級がん具けん銃に着目したことが考えられる。最近の検挙事例としては、暴力団が警察の摘発から逃れるため、大阪、岐阜、徳島の各府県下の6箇所に密造工場を分散させて、改造けん銃を大量に密造し、他の暴力団に密売し、又は、覚せい剤と交換していたものがある。
 警察は、高級がん具けん銃製造業者の協力を求め、組合の自主規制によって、改造できない高級がん具けん銃を製造するよう指導していたが、銃身、遊底等に改造工具(ドリルやカッター)の刃より硬い特殊鋼を挿入した容易に改造ができない、いわゆるsmマーク入り高級がん具けん銃が、昭和50年11月以降市販されることとなった。
ウ 密輸入けん銃の取締り
 押収したけん銃の内訳をみると、改造けん銃に次いで、密輸入したけん銃が多い。最近5年間の密輸入けん銃の押収丁数は、図5-28のとおりで、年年増加の傾向をたどっていたが、昭和50年は、前年に比べ11丁(5.1%)減少している。
 密輸入の方法をみると、日本人旅行者がけん銃を携帯品や着衣の中に隠したり、外航船員が小遣い銭欲しさにけん銃をひそかに陸揚げする事犯が、依然として跡を絶っていないが、昭和50年は、暴力団又は暴力団と結託した者が、主として東南アジア諸国からけん銃を大量に買い入れ、貨物として航空機や船舶で密輸入する事犯が目立った。また、不況により経営難に陥った会社が、資金繰りのために花びんの中に隠匿して密輸入し、暴力団に売りさばいていた事犯もあった。
 このように、密輸入したけん銃の押収丁数は、若干減少したとはいえ、手段方法は一層巧妙化しており、警察では、税関等の関係機関と情報交換を密にするなどして水際検挙に努めている。また、空港や海港においては、不審者の発見に努めている。

図5-28 密輸入けん銃の押収状況(昭和46~50年)

エ 所在不明銃の取締り
 銃砲のうち、猟銃及び空気銃については、5年ごとの許可の更新制度を設けるとともに、所持者及び銃番号をコンピューターに登録して異動状況等をは握している。しかし、所持者の中には、住所の変更を届け出なかったり、法定の手続を経ずに他人に譲渡等をする者がある。また、盗まれて所在が不明となる猟銃及び空気銃がある。
 このような原因によって所在が不明となった猟銃及び空気銃(所在不明銃)の丁数は、表5-27のとおりで、減少傾向にあるが、なお相当数の所在不明

表5-27 所在不明銃の推移(昭和46~50年)

銃があるので、所在不明者(銃)の全国手配書を作成し、都道府県警察の連携による追及捜査を全国的に実施した。
オ 狩猟事故の防止
 狩猟に伴う猟銃及び空気銃による事故は、図5-29のとおりで、昭和46年度以降増加傾向にあったが、50年度は、狩猟期間の短縮により狩猟を行う機会が制限されたこともあって、発生件数、負傷者ともに大幅に減少した。

図5-29 狩猟期間中における猟銃等事故発生状況(昭和46~50年)

 なお、狩猟事故の発生原因をみると、暴発によるものが72件(46.4%)と最も多く、次いで前方不確認の61件(39.4%)となっている。
 警察では、専門家や関係業者と協力して暴発事故の防止に努めている。
(2) 火薬類等による犯罪の防止活動
ア 火薬類の盗難防止
 我が国においては、行政庁の許可を受けた者以外の火薬類の所持、使用は認めない制度になっているところから、過去において発生した火薬類使用犯罪の多くは、火薬庫、土木工事現場等から盗まれたダイナマイト等が使用されている。このため、警察においては、昭和49年10月、関係省庁が協議して策定した「火薬類盗難防止対策」にのっとり、全国に約2万8,000箇所ある火薬類取扱事業所に対して立入検査を反復して実施し、指導取締りを強化した。その結果、昭和50年の火薬類取締法違反検挙は、表5-28のとおり、前年に比べ234件(7.0%)増の3,583件となった。また、火薬類盗難事件は、表5-29のとおり、件数において大幅な減少をみるとともに、火薬・爆薬の盗難被害数量は、前年の80キログラム(100グラムのダイナマイトに換算して800本分)に比べ2.8キログラムと約29分の1に激減し、また、火薬庫における火薬類の盗難被害を年間を通じて皆無に押さえることができた。
 なお、昭和50年には、図5-30のとおり、火薬類を使用した犯罪は、発生件数、被害者数とも前年に比べ大幅に減少している。

表5-28 火薬類取締法違反検挙状況(昭和46~50年)

表5-29 火薬類盗難事件の発生状況(昭和46~50年)

図5-30 火薬類使用犯罪の発生状況(昭和46~50年)

イ 塩素酸塩類等の不正流出防止対策の推進
 昭和49年8月以降、一連の企業爆破事件等の爆発物の原料として塩素酸ナトリウムが使用されたことから、警察においては、塩素酸塩類及び塩素酸ナトリウムを含有する除草剤の不正流出防止に努め、製造業者、販売業者、大量取扱者に対し、盗難防止のための保管管理の徹底、法定手続の厳格な励行、不審購入者の警察への通報等について、2回にわたる全国いっせい防犯指導を含め、再三にわたって指導を実施した。また、関係省庁において、5月、「爆発物の原料として使用されるおそれのある塩素酸塩等の規制に関する関係省庁申合せ事項」を決定し、業者団体等に対する指導監督の強化、保管管理の徹底を図ることとした。更に、厚生省等とともに検討を重ねた上、毒物及び劇物取締法施行令の一部を改正し(9月施行)、塩素酸塩類を35%以上含有する製剤を爆発性劇物に追加指定し、法規制の強化を図った。
〔事例1〕 昭和49年8月に発生した「丸の内ビル街爆破事件」の爆発物の原料には塩素酸ナトリウムが使用されたが、「東アジア反日武装戦線」のメンバーは、塩素酸ナトリウムを含有した除草剤を農薬販売店等から購入するに際し、偽名を用いるなど巧妙な方法を使い、怪しまれることなく入手していた。
〔事例2〕 19歳の少年が、塩素酸カリウム等の爆発性劇物を大量に買い求め、自宅で鉄パイプ爆弾等を製造し、自宅裏の水田や山中で爆発実験を繰り返し行っていた(福島)。
(3) 危険物事故の防止
 高圧ガス、石油類、放射性物質等の危険物は、産業活動や国民の日常生活等において、重要な役割を果たしている反面、いったん爆発火災等の事故が発生した場合には、その及ぼす被害はじん大かつ悲惨である。これらの危険物による爆発、中毒、漏出等の事故の発生件数は、その使用、消費の増大に伴い、図5-31のとおり逐年増加している。
 警察では、危険物による事故を防止するため、関係行政機関と緊密に協力して、危険物運搬車両の取締り、危険物の不法貯蔵事犯その他関係法令違反に対する指導取締りを実施している。
 特に、危険物運搬中の事故の防止のために、日常の警察活動を通じての指導取締りのほか、昭和50年11月に全国いっせい指導取締りを実施し、約1万4,000台の危険物運搬車両を検査し、うち2,373台について危険物運搬上の保安基準違反として検挙した。

図5-31 危険物事故発生状況(昭和46~50年)

6 生活の安全の確保と環境の浄化を目指して

(1) 社会の変化と警察業務の重要性の増大
 経済の急速な発展と社会構造の急激な変動が生じた我が国では、過去に経験したことのない「新しい社会問題」や「新しい犯罪」が数多く生じている。
 防犯・保安警察に関連するものとしては、大気汚染、水質汚濁、産業廃棄物の投棄等公害の社会問題化、エネルギー源の変化に伴う危険物事故の増加、貿易の拡大や出入国者の激増を背景とする国際金融事犯の激化、性の解放ムードを背景とする、いわゆるポルノ攻勢の激化、都市化の進展に伴う不動産需要及び小口金融需要に関連する犯罪の増加、極左暴力集団による銃砲、火薬類及び塩素酸塩類等に関連した犯罪の増加、暴力団の資金源になっている覚せい剤事犯とノミ行為事犯の増加、シンナー等の乱用、暴走族問題等に象徴される少年非行の増加、少年の福祉を害する犯罪の多発等が挙げられる。
 このような情勢に対処するため法令の立法等各種の対策が講じられており、これら特別法に関する規制については、第一次的には警察以外の行政機関の措置に待つべきものも多いが、その実効を担保し、国民生活の安全と公共の秩序を守る上で、警察の取締りが果たしている役割は大きい。
 また、大都市圏や地方中核都市の新興住宅地域においては、昼夜間人口の較差の拡大、住民の連帯感の希薄化等から防犯上の弱点が生じ、都市で増加しているビルについても防犯上の対策を迫られるなど、都市化の進展に伴い、犯罪の予防の面でも効果的な対策を進めていく必要がある。
 このような社会の変化に伴う「新しい社会問題」や「新しい犯罪」をめぐり、警察に対する要望や期待はますます高まってきている。
(2) 変化に対応した警察活動の強化
 社会の変化に対応して、国民生活の安全の確保と環境浄化のための警察活動を強化する必要性は高まってきているが、これらの状況に対して、警察が十分に対応してきたとは言い難い実情にある。これは、例えば特別法犯の取締りにおいては、その分野が多方面にわたること、事件の潜在性が強いこと、捜査に一般事件とは異なる専門的知識を必要とすること、多くの場合事件の摘発に多数の専従捜査員を必要とすることなどから、重点を絞った取締りにならざるを得ないことによるものである。
 警察としては、今後、この種の警察活動に対する国民の要望にこたえ、警察活動の強化を図るため、取締り力の充実等を計画的に進めていく必要がある。また、犯罪や事故の実態に最も明るい行政機関として、その原因等に関する的確な調査、分析と社会への問題提起を行い、地域住民及び関係機関・団体の自主活動や協力を促すよう努める必要がある。


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