第5章 少年の補導・保護

1 少年の非行と補導

 少年を健全に育成することは、いついかなる時代においても重要な国家的課題であることはいうまでもない。そのため、少年達が非行に陥らないように努めることはもとより、不幸にして非行に陥った少年に対しても、その再非行や非行度の深化を防止し、健全な育成を期するための処遇が適切に行われる必要がある。
 一般に、少年は心身が未熟であって、環境の影響を受けやすいため、過ちを犯しがちであり、そのような行動が社会のルールに違反するとき、それが非行とされるわけであるが、反面、たとえ罪を犯した場合でも適切な教育や指導によって矯正し、再び健全な姿に立ち戻らせることの可能性は極めて高いのである。
 このような少年の特性にかんがみ、少年法は、罪を犯した少年に対しては、刑罰を科さないで少年の性格の矯正と環境の調整を目的とする保護処分を行うことを原則としており、刑罰を科するのは、その罪質や情状からみて特に必要と認められるものに限ることとしている。
 また、少年を保護するという見地から、児童福祉法は、児童の虐待防止、不良行為をした児童の教護等に関する規定を設けて、児童を守っている。
 警察は、この少年法や児童福祉法の精神にのっとり、特に少年警察という部門を設けて、非行少年(注1)等の補導活動(注2)などを推進している。
(注1) 非行少年とは、少年法第3条第1項に規定されている少年であり、次表に示すものである。


(注2) 補導活動とは、非行少年等を発見し、発見した非行少年について、捜査又は調査を行い、家庭裁判所、検察官、児童相談所等に送致又は通告し、あるいは家庭、学校、職場等へ連絡、注意、助言する等少年について適切な処遇を行う活動をいう。
(1) 少年非行の現況(注1)
 昭和48年中警察において補導した非行少年の数は表5-1のとおりである。
 刑法犯(道路交通に起因する業務上(重)過失致死傷罪を除く。以下同じ。)を犯して補導された犯罪少年(以下「刑法犯少年」という。)、触法少年及び成人犯罪者の人員及び人口比(注2)の最近5年間の推移をみたものが図5-1である。
 刑法犯少年は、昭和45年以来3年ぶりに増加し、その幅も6.9%(6,923人)と比較的高い増加率をみせている。触法少年は過去5年間の増加傾向が依然として続いており、7.1%(2,541人)の増加となっている。
 また、昭和48年中の成人を含めた全刑法犯検挙人員(35万4,313人)の中に占める少年の割合は、30.1%となり、前年の28.8%を上回った。
 14歳以上20歳未満の少年人口は、昭和48年は約964万人であり、14歳以上の総人口約8,334万人の11.6%である。したがって、刑法犯少年の人口比は、従来の横ばい状態からやや増加して11.1人となった。また、触法少年は6.1人と増加の傾向が更に顕著であって、ともに成人犯罪者の人口比3.4人を大きく上回っている。
 罪種別にみると、刑法犯少年については窃盗の増加と凶悪犯の減少が特徴的であり、触法少年についてはすべての罪種において増加がみられる。
 刑法犯少年中に占める女子の割合は、表5-2のとおり、昭和48年は前年を上回る12.8%であり、年齢別では17歳が16.3%と最も高くなっている。また、女子少年の刑法犯を罪種別にみると約9割が窃盗であり、男子の約7割に比べて著しく高い。
(注1) 本章における数字は、特記する場合を除き、沖縄県を含まない。
(注2) 人口比とは人口1,000人当たりの数である。人口は昭和48年10月厚生省人口問題研究所推計による。

表5-1 非行少年の補導数(昭和48年)

表5-2 刑法犯少年に占める女子の割合の推移(昭和44~48年)

図5-1 刑法犯少年、触法少年及び成人犯罪者の人員及び人口比の推移(昭和44~48年)

ア 進む低年齢化と遊び的傾向
 刑法犯少年の人口比の年齢層別の推移をみたものが図5-2であるが、14・15歳の年少少年のそれが、昭和45年以降急激に上昇している。また、10歳から13歳までの触法少年の人口比も図5-1に示すとおり上昇を続けている。一方、実数においても、表5-3のとおり昭和48年は19歳を除く各年齢において増加しているが、特に14・15歳の少年は前年に比べそれぞれ17.4%、12.4%と著しい増加をみている。
 刑法犯少年人員の年齢層別の割合は、図5-3のとおりであり、年少少年が全体の41.1%を占めて最も多く、前年の38.3%を更に上回っている。
 このような低年齢少年の実数及び人口比における増加とその刑法犯少年全体に占める比率の増大を指して非行の低年齢化と呼んでいるが、昭和48年においては、このような非行の低年齢化の傾向が更に著しくなった。
 ところで、低年齢層の非行の増加は、かつて昭和30年代後半においてもみ

図5-2 刑法犯少年の年齢層別人口比の推移(昭和44~48年)

られたことであるが、当時と異なり今日の低年齢化は年長少年の非行の著しい減少を伴っていることが特徴である。

表5-3 刑法犯少年の年齢別増減状況(昭和47、48年)

図5-3 刑法犯少年人員の年齢層別構成比(昭和48年)

 表5-4は、主要刑法犯(刑法犯のうち凶悪犯、粗暴犯、窃盗、知能犯及び風俗犯をいう。)の人口比を年齢別に10年前の昭和38年と比較したものであるが、年少少年が増加しているのに対して、年長少年は大幅に減少している。

表5-4 主要刑法犯の年齢別人口比の推移(昭和38、48年)

 過去10年間、我が国の経済の発展とそれによってもたらされた物質的に豊かな社会を背景に非行は全体として減少を続けてきたのであるが、それはおおむね年長少年の非行の減少によってもたらされたものであり、いわゆる豊かな社会は低年齢の少年の非行については無力であるばかりでなく、最近の低年齢少年の非行の著しい増加をみると、むしろそれを助長しているということもできよう。
 低年齢少年による非行の増加の原因としては様々な理由が考えられるが、一般に少年の肉体的成長が早くなったことに加えて、既婚婦人の社会への進出に伴う共かせぎ家庭の増加などが少年に対するしつけを不十分なものとし、また、激しいコマーシャリズムによる欲望の拡大や享楽的な風潮が、発達したマス・メディアによって最も敏感で欲望に対する耐性の弱い低年齢の少年に深刻な影響を及ぼしている結果であると考えられる。
 一方、年長少年については、経済的な豊かさと娯楽的な施設や手段の発達が少年の欲求不満の解消に多種多様な機会を提供し、このことが非行の減少に寄与してきたと思われる。したがって、今後社会経済情勢が著しく不安定になることがあれば、再び年長少年の非行の増加も懸念されるところである。
 低年齢化の進行とともに、図5-4に示すように刑法犯少年と触法少年の総人員中に児童・生徒(小学生、中学生、高校生)の占める割合が増加していることが注目され、昭和48年は73.2%となって前年の69.5%を更に上回った。
 昭和48年中の刑法犯少年を罪種別にみると、図5-5のとおり窃盗が72.2%を占め、前年の71.2%を更に上回り、粗暴犯の18.0%がこれに次いでいる。
 図5-6に示す成人の刑法犯の罪種別状況と比較すると窃盗の占める割合が著しく高いことが分かる。
 図5-7は、窃盗により補導された少年(以下「窃盗少年」という。)の最

図5-4 刑法犯少年及び触法少年の学職別構成比の推移(昭和44~48年)

図5-5 少年による刑法犯の罪種別構成比(昭和48年)

図5-6 成人による刑法犯の罪種別構成比(昭和48年)

図5-7 窃盗少年の人員及び人口比の推移(昭和44~48年)

近5年間の補導人員と人口比の推移をみたものであるが、人口比が一貫して増加傾向にあることと、昭和48年の補導人員が最近5年間の最高の数であることが特徴的である。
 一方、凶悪犯(殺人、強盗、放火及び強かん)として補導された少年(以下「凶悪犯少年」という。)は、図5-8のとおり最近5年間著しい減少を示しており、昭和48年は44年を100とすると54.9にすぎない。
 このように、凶悪な犯罪が減少して窃盗が増加しているが、更に窃盗少年の主な手口別にその構成比を前年と比較してみると表5-5のとおりであって、一般に動機において単純で遊び的色彩の強い万引や、自分が乗りまわしてみたいというだけで面白半分に盗む自転車盗やオートバイ盗といったもの

図5-8 凶悪犯少年の人員及び人口比の推移(昭和44~48年)

表5-5 窃盗の手口別構成人員(昭和47、48年)

の占める比率が増加しており、空き巣ねらいのような悪質な手口の比率は減少している。
 このような遊び的非行の代表的なものと考えられる万引をした少年の動機やきっかけなどについては、熊本県警察が昭和48年1月から6月までの間に扱った万引をした少年275人について調査した結果、及び警視庁が管内の19の警察署で昭和48年4月から8月までの間に扱った万引をした少年130人について調査した結果からみると、図5-9,図5-10、図5-11のとおり、その大半が単純な動機によるものであることが分かる。また、これらの少年達に悪いことをしているという意識が欠けているか又は希薄なこと、及び他人がやるから自分もやるといった追随性が強い傾向をもうかがい知ることができる。
 このように今日では、少年非行の多くが、素質や環境に問題のある少年によって起こされるというかつてのイメージは通用しなくなっており、むしろ、少年非行のかなりのものが、普通の性格、普通の環境の少年によって行われているということができる。そしてこれらの非行に陥った少年達に一般に指摘できることは、社会的なルールに対する意識の欠如ないし希薄化、欲求不満に対する耐性の弱さ、安易な他者追随傾向などである。
 このことは、今後の少年非行の予防並びに非行に陥った少年の処遇に当たって十分考慮されるべきことと思われる。

図5-9 万引の動機(昭和48年1~6月)

図5-10 万引のきっかけ(昭和48年4~8月)

図5-11 万引したときの感じ(昭和48年4~8月)

 次に、図5-12は、最近5年間の性犯(強かん及びわいせつ)によって補導された少年(以下「性犯少年」という。)の人員と人口比の推移をみたものであるが、実数においては毎年大幅に減少しており、また、人口比でも減少傾向が続いている。もちろん、性犯罪は一般に暗数が多いといわれており、実態をそのまま示すものであるかどうかについては疑問がないわけではないが、少なくとも性解放の風潮に象徴される風俗環境の変化を背景にこのような現象がみられることは注目すべきである。
 しかしながら、性犯罪の減少傾向のなかにあって一部の少年達が、低俗な週刊誌、映画、テレビなどに刺激されて性犯罪に走るケースがみられる。
 例えば、昭和48年2月、兵庫県警察で補導した中学2年生(14歳)のケースをみると、小学5年生のとき独立した勉強部屋を与えられた少年は、中学1年生ごろから性に興味を持ち、親の目の届かないのをよいことに低俗週刊誌、ヌード写真に刺激を得て自慰にふけっていたが、次いで深夜外出して女性の下着を盗むようになり、更にエスカレートして実際に女性の体に触れてみたくなったことから、テレビドラマのシーンにヒントを得てストッキングで覆面し、一人歩きの女性を次々に襲うに至った。家庭も健全で学校でも真面目な生徒であったこの少年の非行に、関係者は大きなショックを受けている。
 一方、性犯少年の減少とは対照的に、犯罪に至らないぐ犯行為及び不良行為段階の性の逸脱行動は常軌を逸するものが目立っており、例えば、昭和48年中、4月に大阪で12人の男女小学生が乱交していた事例、6月に福岡県で3人の女子中学生が小遣い銭欲しさから売春を行っていた事例、11月に愛知県の中学生グループが無人の寮などを利用して乱交していた事例などこの種の補導事例は地域を問わずみられる。
 また、昭和48年中に女子中・高校生によるえい児殺3件、17歳の有職女子少年によるえい児殺及びえい児遺棄各1件があったが、いずれの場合も、保護者、教師がこれに気付いていなかった。

図5-12 性犯罪少年の人員及び人口比の推移(昭和44~48年)

イ 新たな非行の場、暴走族
 モータリゼーションの進展を反映して、少年の道路交通法令違反も、図5-13のとおり最近5年間おおむね上昇傾向にある。昭和48年は前年に比べて成人がほぼ横ばいであるのに対し、11.9%(8万1,856件)の増加をみており、成人を含めた総検挙件数に対する割合も前年の9.5%を上回る10.5%となっている。
 この検挙件数を、免許所持者数(昭和48年、少年約176万人、成人約2,902万人)に対する割合でみると、成人のそれが22.5%であるのに対し少年のそれは43.7%とはるかに高く、また、違反を態様別にみても図5-14のとおり、交通事故に直結するおそれのある最高速度違反と無免許運転の合計が44.3%を占め、成人の40.8%を上回っており、スピードやスリルにあこがれる少年の特質をよく表している。
 このような実態を背景に生まれたのが暴走族である。
 昭和47年5月に富山市を皮切りに各地で騒ぎを起こした暴走族は、その構

図5-13 道路交通法令違反検挙件数の推移(昭和44~48年)

成員のほとんどが20歳前後の青少年であることから少年非行対策上大きな問題となった。昭和48年に入ってからは、暴走族はスピードとスリルを求める暴走行為にとどまらず、その機動力を利用して広域にわたって強盗、強かんなどの悪質な犯罪を行うケースが目立ち始め、また、グループ相互に抗争を行う事案がしばしば発生した。

図5-14 少年による交通法令違反の態様別状況(昭和48年)

 暴走族のすべてが非行集団というわけではないが、その大半は道路上において法令違反行為を行うことを前提に結成されたものであるから、一般に非行化しやすい体質を持っており、新たな形態の集団非行の場として注目する必要がある。
 表5-6は昭和48年10月に埼玉県で補導したある暴走族の実態を示すものであり、構成員39人中31人が補導歴を有し、補導時に新たに判明した非行内容だけでも窃盗、恐喝、強かん等38件に及んでいた。
 暴走族についてはその実態がすべて明らかにされているわけではないが、例えば、昭和48年10月31日現在、東京213団体、5,921人、神奈川105団体、482人、兵庫53団体、827人、埼玉29団体、1,042人となっている。
 昭和48年中、5月に東京の高校生を主体とした46人の暴走族が、東京都、千葉県、静岡県などで15件に及ぶ強かん、暴行、恐喝などを行っていた事案をはじめとして全国各地で同種の事案の発生をみている。

表5-6 ある暴走族集団の実態(埼玉県警察調べ)

図5-15 少年による自動車利用犯罪件数及び罪種別犯罪少年事件総数に占める割合(昭和48年)

 このような暴走族による非行の背景には、発達したモータリゼーションの少年非行への影響が存在しており、それは少年による自動車利用非行として端的に現れている。例えば、昭和48年中の少年による凶悪犯、粗暴犯及び窃盗における犯行の際に自動車を利用したものの件数及び割合をみると、図5-15のとおりであり、件数においては窃盗が最も多く、罪種別にみた割合では、強かんと強盗に自動車利用のケースが多くなっている。
ウ 潜在化するシンナー乱用
 昭和48年中のシンナー等の乱用によって補導された少年は、図5-16のと

図5-16 シンナー等乱用少年補導人員数(昭和44~48年)

おり1万6,220人で、前年に比べ55.0%(1万9,835人)の大幅な減少をみた。昭和47年に制定されたいわゆるシンナー規制法(毒物及び劇物取締法等の一部を改正する法律)による乱用行為、販売行為の規制とこれによる取締りの効果は、極めて顕著であるということができよう。
 しかし、シンナー等による死者数は、図5-17のとおり昭和44年以降減少を続けていたが、昭和48年は96人で前年をわずかながら上回った。このうち、乱用死は76人であり、特に、少年の乱用死は前年の36人を大きく上回る58人を数え、補導人員の大幅な減少と際立った対照を示している。
 このことは、法規制や取締りによって半ば遊び的に行われる単純な乱用は減少したが、中毒に陥った少年による常習型の乱用は依然として潜在化した形で続けられていることを示すものと考えられる。
 昭和48年中には、11月に岡山県で20歳の無職の青年が、保護者に依頼されて乱用をやめるよう説得した警察官を刺殺した事件、同月横浜で21歳の大学生が乱用を注意した母親に暴行し、死に至らしめた事件など少年時代からの乱用常習者による特異な事件が目立っている。
 したがって、乱用少年数の減少だけから、シンナー乱用による害悪が弱まったと判断することは危険であり、乱用常習者の早期発見と適切な補導は、依然大きな課題として残されている。
 ちなみに、昭和48年中に乱用死した少年58人のうち乱用経験のあるものは56人であり、しかもそのうちの34人については保護者が少年の乱用を知っており、早期に適切な補導を行えば防止できるような事例が多い。
 なお、昭和48年中にシンナー等を乱用することを知って販売するなどしていた業者等1,390人を検挙した。
 一方、法による規制後、規制対象外の薬物を乱用するケースが増加しており、昭和48年中の成人を含めた乱用者2万166人の約15%(3,048人)が、トルエン、ニスなどの法規制対象外の薬物を乱用していた。

図5-17 シンナー等による死者数(昭和42~48年)

(2) 少年補導
 非行少年の処遇は、最終的には、家庭裁判所、児童相談所、少年院などの専門機関で行われるのであるが、発見される非行少年の大半は、まず警察において取り扱われる。その意味で警察における少年の処遇は、その再非行防止と健全育成のために極めて重要であるということができる。このため警察においては、特に少年を専門に取り扱う部門を設け、少年を対象とする警察活動が適切に遂行されるよう配慮している。すなわち、都道府県警察本部及び警察署にそれぞれ少年警察担当の課、係を置き、少年事件選別主任者(注1)、婦人補導員(注2)等を含む少年警察専従員を配置している。
 非行少年の事件等を取り扱うに当たっては、少年の特性を考慮して様々の配慮が必要であるが、警察においては、犯罪捜査規範(昭和32年に制定された犯罪捜査全般について規定する国家公安委員会規則)に少年に関する特則を設け、少年事件の捜査は少年の健全な育成を期する精神をもって当たり、できる限り身体の拘束を避け、取調べを行う場合には保護者に連絡し、取調べの言動等に注意してその心情を傷つけないようにするなど特別の考慮を払っている。更に、少年警察活動全般について、「少年警察活動要綱」(昭和35年警察庁次長通達)を設け、少年警察活動の目的は、少年の非行の防止を図り、その健全な育成に資するとともに、少年の福祉を図ることにあることを明示し、非行少年等の発見や処遇の方法とその心構えなどに関して特別の配慮をしている。
(注1) 少年事件選別主任者とは、少年事件の内容、非行の原因及び動機、再非行の危険性の有無、保護者の実情等を検討し、非行少年の処遇を正しく判断するための専門警察官であり、昭和45年から、全国の警察署に配置されている。
(注2) 婦人補導員とは、道府県警察の職員であって、一般にママポリスと呼ばれ、婦人の特性を生かして、街頭等において少年の補導に当たっている。
ア 健全な育成をめざして
 少年補導活動の中心となるのは少年係の警察官や婦人補導員であり、日常、非行少年や不良行為少年の発見のための活動とこれらの少年の処遇を行っているが、一般に少年が非行に陥る危険性が高い年末、年始、春季(3月、4月)、夏季(8月、9月)などには、特に少年補導の特別月間を設けるなどして補導活動を強化している。
 非行少年についてその補導状況を地域別にみると、東京で全刑法犯少年の約15%、全触法少年の約13%が補導され、以下、大阪、福岡、北海道、神奈川、兵庫、愛知、京都の順に多く、全刑法犯少年の約51%、全触法少年の約53%がこれらの8大都道府県で補導されている。
 非行少年を発見すると、警察では保護者等の関係者と連絡をとりながら、捜査や調査によって非行の内容を明らかにするとともに、非行危険性判定法(注1)や男子初犯少年再犯危険性判定法(注2)といった科学的な手法による非行危険性の判定を参考にしながら、その少年の再非行防止と健全育成のためにどのような措置が最も適切であるかを判断して処遇上の意見を決定し、図5-18に示すように少年法や児童福祉法の規定に従って関係機関に送致、通告している。昭和48年中に警察が補導した犯罪少年、触法少年及びぐ犯少年の送致、通告の状況は、表5-7のとおりである。

図5-18 警察における少年事件処理系統図

表5-7 警察による非行少年送致、通告の状況(昭和48年)

 関係機関に送致、通告する必要の認められない少年については、少年に対する説諭、訓戒、保護者に対する助言、指導などを行い、保護者からの依頼があり必要と認められるときは、継続して少年や保護者と接触を保って助言や指導を行ういわゆる継続補導を行うこともある。
 補導活動に当たっての警察の基本的な考え方は、常に健全な育成という点にあり、極めて軽微でなんらの措置も必要と認められない非行や不良行為については、警察を含めた関係機関がいたずらに少年に対する指導や矯正を試みるよりは、可能な限り家庭や学校、更には地域社会の人々による教育や監護に委ねることが少年の再非行防止と健全育成上望ましいと考えている。
 また、補導に際しても少年の心情に与える影響について細心の注意を払う必要があり、この意味で婦人補導員がその婦人としての特性を生かして活動することは少年の処遇上望ましいことである。例えば、北海道においては昭和48年中に補導した非行少年の7.7%(754人)、不良行為少年の33.5%(6,214人)は婦人補導員が取り扱っている。また、婦人補導員のいない都府県では、婦人警察官が活躍しており、補導活動における婦人職員の比重は大きい。最近の非行の低年齢化傾向に照してみても、婦人補導員等による補導活動を更に充実していく必要がある。

(注1) 非行危険性判定法は、非行少年の素質を検査するための心理検査法と環境要因等を明らかにするための項目調査法とを併せ用いて少年の非行危険性と要保護性を判定する方法であり、科学警察研究所と警察庁が共同して開発し、昭和34年10月から実施されている。
(注2) 男子初犯少年再犯危険性判定法は、昭和45年8月に全国の警察で補導した男子の初犯少年3,550人を6箇月間追跡調査し、科学警察研究所が、これを再犯群と非再犯群に分けてコンピューターによって数理統計的に分析し、再非行危険性を尺度化、得点化した判定法として開発されたもので、1年間の試験実施を経た後、昭和48年4月から実施されている。
イ 地域社会による補導活動
 最近における非行の質的な変化からみて、非行少年の発見とこれに対する関係機関の処遇だけではなく、むしろ、地域社会による自主的な非行対策、すなわち、少年の規範意識確立のための教育や指導がより重要なものとなっているといえよう。この意味で、非行対策における警察と地域社会との連携をより緊密なものとするための努力が必要とされている。
 地域社会における補導活動の中心となっているのは、ボランティアとして補導活動に従事している少年補導員であり、昭和48年9月現在、警察等の委嘱を受けている者は12万9,766人である。
 少年補導員は、地域社会において自発的に補導活動や非行防止のための啓蒙活動を行っており、例えば、東京においては昭和48年中、2万4,123人、同様に神奈川県においては1万4,401人の不良行為少年を発見・補導している。また、北海道における少年補導員の活動も活発であり、犯罪少年631人を含む2,365人を発見しており、これは同年中に北海道警察が扱った非行少年、不良行為少年2万8,323人の8.4%に当たる。
 次に、非行対策関係機関と少年補導員等地域のボランティアの合同活動の場として少年補導センターがあり、昭和48年4月現在、全国で425箇所設けられ、ここで活動している者は4万9,363人(うち警察職員461人)である。少年補導センターの活動については、最近の少年非行の傾向にもかんがみ、今後地域社会の非行防止組織の中核としての幅広い活動が進められることが期待される。
 また、児童・生徒の非行の増加に伴って、警察が行う少年補導と学校による生徒指導との間の緊密な連携の必要性が痛感されているが、そのための方法の一つとして学校警察連絡協議会(一般には「学警連」と呼ばれている。)が全国的に設けられており、昭和48年9月現在、1,988組織、小学校、中学校及び高校の90%以上に当たる3万5,727校が参加している。
 警察と学校とは、児童・生徒の非行防止に関して意見の交換を行うとともに、具体的な対策の検討を行うなど少年の健全育成という共通の目的のもとに非行対策に取り組んでおり、このような学校と警察との話合いは、昭和48年中の愛知県の例をとってみると、延べ418回開催され、4,707校が参加している。
 更に、職業を持っている少年が非行に陥ることを防止するため、職場警察連絡協議会(一般には「職警連」と呼ばれている。)が全国的に設けられており、昭和48年9月現在、973組織、3万9,199の事業所が加入している。各事業所には補導責任者が指定されており、各種の会合を通じて勤労少年の非行防止対策について検討し、警察の協力の下に具体的な補導活動を行っている。
ウ 保護者の悩みにこたえる
 少年補導の重要な方法の一つとして、全国の警察署で行っている少年相談がある。
 自分の子供の不良行為や非行の問題で悩んでいる保護者から相談を受けると、経験の豊かな少年係警察官や少年心理を鑑別する専門技術者が助言や指導を行うとともに、必要に応じ、少年に対する面接調査を行って非行防止のための措置を講じている。
 昭和48年中に行った少年相談は、全国で3万1,445件にのぼっている。
 表5-8は、同年中に警視庁で取り扱った少年相談の内容をみたものであるが、家出、放浪癖に関するものが538件で最も多く、交友関係、盗癖、怠学がこれに次いでいる。男女別にみると、男子では交友関係が、女子では家出、放浪癖が最も多くなっている。

表5-8 昭和48年中における警視庁少年相談受理件数とその内容

2 少年の保護

 心身が未熟で環境の影響を受けやすい少年達が、犯罪や事故などによって危険にさらされているとき、これを保護するための活動も少年警察の重要な仕事である。
 少年の保護のための活動には、大別して直接少年を対象とする活動、すなわち、自己の無分別によって家出をした少年や、暴力団員にだまされて過酷な労働を強いられているような少年を救出するための活動と、少年を取り巻く有害、危険な環境を除去するための活動とがある。
(1) 家出少年
 警察が発見・保護した家出少年数は、最近5年間、図5-19に示すように一貫して減少傾向にあり、昭和48年は4万5,089人(うち女子が44.1%)となっている。
 この家出少年を学生・生徒、有職、無職の別にみたものが、表5-9であるが、学生・生徒のうち男子では中学生、女子では高校生が多く、また、全体では有職少年の多いのが目立っている。
 少年の家出は、一般に少年が心理的に動揺しやすい時期、すなわち学年末の3月、4月及び夏休みの終わった9月に多いところから、警察ではこの時期に合わせ、春季(3月1日から4月30日までのうちの1箇月間)及び秋季(9月)に全国家出少年発見保護活動月間を設け、この活動を強化している。昭和48年には、この月間中に1万1,991人(年間総数の26.6%)の家出少年が保護されている。
 地域的に家出少年の発見・保護の状況をみると表5-10のとおりであって東京と大阪で全体の約3分の1が発見されている。
ア 少年を家出に走らせるのは
 家出の原因・動機を昭和48年の秋季発見保護活動月間中に保護した少年についてみたものが表5-11であるが、約50%が「遊び癖」、「都会にあこがれて」、「恋愛問題」など少年が自己の内部にその原因を持っていると考えられ

図5-19 家出少年の保護人員の推移(昭和44~48年)

表5-9 家出少年の学職別発見・保護の状況(昭和48年)

表5-10 家出少年発見・保護の多い都道府県(昭和48年)

表5-11 家出の原因・動機(昭和48年秋季発見保護活動月間)

るものである。次に「家庭の不和」など家庭問題を理由とするものが21.0%、「学校ぎらい」など学校に関係するものが20.8%、「仕事が性格に合わない」など職場に関するものが7.5%となっている。
 また、家出を決意した時期については、表5-12のとおり、家出当日とその前日が71%を占めている。これからみる限り、深刻な問題意識を持ち、重大な決意を秘めて家出をするといういわゆる目的志向型は少なく、衝動的に家出に走る傾向が指摘されよう。
 このような家出の背景には、人手不足などの理由から、家出少年を安易に雇用するといった社会環境のあることも見逃せないところである。

表5-12 家出を決意した時期(昭和48年秋季発見保護活動月間)

イ 無関心な保護者
 家出をした少年の保護者の態度をみる目安として、警察に対する捜索願の有無、捜索願出までの期間及び捜索願を出さなかった理由を昭和48年春季発見保護活動月間中に発見・保護した少年についてみたのが表5-13であるが、全体の半数近い44.1%の保護者は捜索願を出していない。捜索願出までの期間をみると家出から5日以上経過してからのものが16.0%あり、保護者自身による捜索の努力がなされているのであろうが、届出が早ければ早いだけ発見も早いのであるから、可能な限り速やかに捜索願を出すことが望まれる。
 また、捜索願を出さなかったものについてその理由をみると、「家出したことに気付かなかった」31.9%、「常習のため」12.1%、「世間体を気にして」3.8%などとなっており、理由はともかくも、保護者の放任と家出に対する認識の甘さがうかがわれる。

表5-13 捜索願出の状況(昭和48年春季発見保護活動月間)

ウ 家出は危険
 少年の家出は、少年期に特有の冒険心や好奇心によるものがほとんどであるから、余り問題にする必要はないといった意見がある。しかしながら、家出した少年の実態をみるとそれほど簡単には片付けられない問題がある。
 家出少年と非行との関係を昭和48年春季及び秋季全国家出少年発見保護月間中に保護した1万1,991人についてみると表5-14のとおり、家出中に罪を犯した少年は862人で全体の7.2%を占め、14人に1人の割合で罪を犯していたことになる。これは昭和48年中の刑法犯少年全体の人口比が、前述したとおり、90人に1人の割合であるのに比べて6倍以上であり、家出少年が非行に走りやすいことを物語っている。
 例えば、昭和48年2月、東京の男女中学生(いずれも15歳)が、親密な関係にあることを親に知られてしかられたことから家出し、都内のアパートを借り、勤め先をみつけて働いていたが、勤め先から金を盗み出して全国を転々とし、宿泊代等に困窮した結果次々に窃盗や詐欺を重ね、ついに愛知県でタクシー強盗をはたらいて運転手に重傷を負わせた事件があった。これは安易な家出が非行に結び付いた典型的なケースと言えよう。また、このようなケースを通じて、家出少年に安易にアパートを貸し、雇い入れ、宿泊させる等の社会一般の大人の在り方も大きな問題として指摘されよう。

表5-14 家出少年の非行状況(昭和48年春季及び秋季発見保護活動月間)

 また、この期間中に保護された家出少年のうち559人が犯罪の被害者となっていたが、その約8割に当たる441人が女子であり、家出した女子のうち12人に1人の割合で被害を受けていたことになる。表5-15は、この期間中に保護した家出少年について男女別に被害状況をみたものである。
 なお、昭和48年に検挙した人身売買等福祉犯の被害少年1万1,336人中、2,702人(約24%)が家出少年であった。

表5-15 家出少年の被害状況(昭和48年春季及び秋季発見保護活動月間)

(2) 少年の福祉を害する犯罪
ア 増加傾向にある福祉犯罪
 最近5年間の福祉犯(少年の福祉を守るため特に設けられた法令の規定に違反する行為)(注)として検挙した被疑者数及び保護した被害者数の推移をみると図5-20のとおりであり、昭和47年までは減少傾向にあったが、昭和48年には再び増加した。
 この種の犯罪は、被害者が少年であるとともに被害者自身が被害意識を持たない場合が多いこともあって、自ら訴え出ることが少なく、また、犯罪の手段も巧妙化しているため潜在的な傾向が強まっている。
 昭和48年中の福祉犯検挙の端緒をみると、その95%以上が警察による家出少年の捜索や聞込みなどによるものであって、被害者からの訴え出によるものは全体の2%にも満たない状況であった。
(注) 福祉犯とは、少年の福祉を害する犯罪であるが、少年の福祉を守るため特に設けられた法令名及び禁止されている行為の概要は次のとおりである。
児童福祉法  15歳未満の児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為等の禁止
労働基準法  15歳未満の少年を労働させる行為等の禁止
風俗営業等取締法  キャバレー等で18歳未満の少年を使用すること等の禁止
未成年者喫煙禁止法  少年に喫煙させること等の禁止
未成年者飲酒禁止法  少年に飲酒させること等の禁止
青少年保護育成条例  知事が有害と指定した図書を少年に販売すること等の禁止
学校教育法  子弟就学義務違反等

図5-20 福祉犯の推移(昭和44~48年)

 昭和48年中に検挙した福祉犯の被疑者総数は6,519人で、このうち主要福祉犯(児童福祉法、労働基準法、風俗営業等取締法等違反をいう。)の被疑者は、4,163人(63.9%)であった。その内訳は図5-21のとおりである。
 また、主要福祉犯を地域別にみたのが表5-16であり、東京など8大都道府県で2,632人(63.2%)が検挙され、6,268人の被害者中4,063人(64.8%)が保護されており、福祉犯の大都市集中の傾向は依然強いものがある。

図5-21 福祉犯の罪種別構成比(昭和48年)

表5-16 主要福祉犯の都道府県別検挙状況(昭和48年)

イ 学生・生徒の被害が増加
 昭和48年中の福祉犯による被害者総数は、1万1,336人であるが、このうち女子が58.7%(主要福祉犯では65.0%)を占めている。
 被害者を学生・生徒、有職、無職の別にみたものが表5-17であるが、前年より有職少年が2.7%、無職少年が21.6%いずれも減少しているのに対し、学生・生徒は28.7%増加しており、被害者全体に占める割合も前年の35.1%から43.9%へと増加している。
 このような学生・生徒の被害の増加は近年、学生・生徒が金銭を得る目的で安易にアルバイト等を行ったり、また、芸能界にあこがれて無思慮な行動に走ったりする傾向と無縁ではないと考えられる。
 例えば、昭和48年11月に、警視庁は芸能プロ経営者が、歌手にあこがれる少女119人を雑誌の募集広告で集め、歌の教授とは名ばかりでバー、キャバレーなどに年齢を偽って働かせ、レッスン料の名目で給料の6割から7割を取り上げていた事件を検挙したが、被害者119人の約40%(49人)が中、高校生(中学生2人、高校生47人)であった。

表5-17 福祉犯被害者の学職別状況(昭和48年)

ウ 少年をねらう暴力団
 昭和48年中の福祉犯の総検挙人員中に占める暴力団員の割合は6.4%(407人)であるが、福祉犯のうち最も悪質な「人身売買」、「中間搾取」、「売春をさせる行為」及び「淫行をさせる行為」の4種類についてみると、昭和48年中に検挙した被疑者の中に占める暴力団員の数及び割合は表5-18のとおり29.6%となっている。その手口も悪質で家出少女などに言葉巧みに誘いかけ関係をもち、結婚などを口実に、芸者、ソープランド従業員などに身売りさせ、前借金を取るなどして資金源に充てたりしている。
 暴力団と少年との関係で無視できないのは、少年の非行集団に働きかけて、自己の勢力下に入れ、あるいは少年の非行集団結成を指導したり、助長する動きのあることである。大阪府警察が昭和48年中に補導した非行集団の新梅田会や大日本蛇会連合などはその典型的な例であった。
 また、神奈川県警察が48年6月に検挙した例では、暴力団員が、市内の中、高校生や家出少年を自己の居住するアパートに集めて、脅し文句等の恐喝の方法を指導し、犯罪を行わせていた。
 その他、暴力団員が少年に覚せい剤を乱用させ、それによって縛り付けて窃盗や売春などをさせる動きが一部にみられる。

表5-18 悪質福祉犯被疑者中の暴力団員の人員及び割合(昭和48年)



(3) 有害環境の排除
 少年にとって有害な環境となるものはいろいろあるが、わいせつな映画、図書なども、しばしば非行の誘因となり、少年の健全な育成の大きな障害となるものである。また、バー、キャバレーといった享楽的色彩の強い風俗営業も決して少年によい影響を与えるものではない。
 現在、法律によってこれらの有害環境を排除することはおのずから限度があるため、昭和48年末現在、33の都道府県が青少年保護育成条例を制定し、少年の健全育成を目的とした少年の保護と有害環境の排除のための規定を設けている。
 更に、地域社会の人々による自主的な活動や民間団体による自主規制の措置も有害環境排除のうえで大きな成果をあげている。
ア 青少年保護育成条例による規制
 青少年保護育成条例は、青少年にとって有害なものとして知事が指定した映画、図書、広告物等については、これらを青少年に観覧させたり、販売することなどを禁止し、違反した者には罰則が適用されることになっている。
 最近5年間の条例による有害指定の状況は、図5-22のとおり、広告物が減少しているほかは、いずれも増加してきたが、昭和48年には若干減少している。なお、この条例により昭和48年中に有害映画等に関して439人、有害図書に関して73人、有害広告物に関して110人に対して指導取締りを行って

図5-22 青少年保護育成条例による有害指定件数(昭和39~48年)



いる。
イ 地域社会等による排除活動
 有害環境の排除における地域社会の人々の自主的な活動を無視することはできない。
 自分たちの子供を守るため、子供の通学路にある有害な広告物を業者に撤去させたり、有害な雑誌の回収を呼びかけたりする活動は、地味ではあるが全国至る所で行われている。
 例えば、下関市では、地域自治会、PTAなどが、俗悪広告物の排除を興業組合に申し入れた結果、写真入りのポスターをやめて文字だけのポスターに印刷替えすることとなり、昭和48年8月から実施されている。
 このような活動に対して警察は、資料の提供等可能な限りの援助を行っている。
 民間団体による活動の例としては、映画業者の自主的な審査機関である映倫が、少年に見せることが好ましくないと判断される映画を成人向き指定映画とし、有害環境の排除に寄与しているが、昭和48年中に成人向き指定をされたものは、日本映画、外国映画を合わせて358件、審査本数の58%(前年367件、58%)に及んでいる。
(4) 「子供を守る活動」
 社会環境の変化は、少年を取り巻く環境を非行防止の面だけでなく、事故や犯罪による被害から守るという面からみても悪化させつつある。交通事故はもとより、危険な遊び場所による事故や成人の犯罪による年少少年の被害は依然として絶えない現状にある。
 このため、昭和48年は、「子供を守る活動」を少年係を中心に推進することとし、各都道府県警察はそれぞれ独自の取り組みを行った。

 例えば、警視庁は、5月1日から「危険な環境をなくし、こどもを事故から守る活動」を展開したが、子供の遊び場を中心に2,239箇所の危険箇所の実態をは握し、1,906箇所について関係機関等に改善方を申し入れ、その約75%(1,437箇所)が改善された。
 同様に、山口県においても、6月中に1,066箇所をは握し、504箇所について改善措置を行っている。


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