警察白書の刊行に当たって

警察白書の刊行に当たって

 
国務大臣 国家公安委員会委員長 坂井学

昨年の刑法犯認知件数は、戦後最少となった令和3年から3年連続で増加となりました。また、財産犯の被害額は4,000億円を超え、これは刑法犯認知件数が過去最悪であった平成14年当時の被害を上回る額で極めて憂慮すべき状況にあります。特に詐欺被害が急増しており、昨年の詐欺の被害額は3,000億円を上回っています。


このような情勢の中、匿名・流動型犯罪グループが、凶悪な手口による強盗事件のほか、特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺、金属盗等の組織的窃盗、悪質ホストクラブ事犯等に関与し、国民の皆様に大きな不安を与えるなど、治安上の課題となっています。

こうした犯罪の手口の傾向として、各種犯罪により得た収益を吸い上げる中核部分は匿名化され、言わば「使い捨て」とする形で末端の犯罪実行者をSNSで募集していたり、メンバー同士がSNSを通じて結びついていたりする状況がみられています。また、例えばSNS型投資・ロマンス詐欺においては、犯罪者がSNSを通じて被害者に接近する手口がみられるなど、SNSを通じて犯罪者が国民の皆様に容易に接触できる状況となっています。このように、SNSが犯罪インフラとして悪用されており、SNSの悪用への対策が喫緊の課題であると認識しています。


そこで、本年は、第1部で「SNSを取り巻く犯罪と警察の取組」と題する特集を組み、SNSを悪用した犯罪の現状とその対策について紹介しています。


また、特に国民の皆様にお伝えしたい事項を取り上げて解説するトピックスでは、最近の悪質ホストクラブや違法オンラインギャンブルをめぐる情勢、金属盗の被害が増加している情勢等に鑑み、「構造的な風俗関係事犯に対する警察の戦略的取組」及び「組織的窃盗・盗品流通事犯に対する取組」を含む4つのテーマを取り上げています。


第2部(本編)では、最新の治安情勢や警察活動の現況等を分野ごとに紹介しています。

このほか、「警察活動の最前線」として、現場で活躍する警察職員が仕事上の苦労ややりがい等についての率直な心情をつづった手記等を掲載しています。


この白書が、警察行政に対する国民の皆様の御理解を深めていただく一助となりますとともに、今後の警察活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。



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