第4章 組織犯罪対策

第4節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和6年(2024年)中の薬物事犯の検挙人員は1万3,462人と、引き続き高い水準にあり、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。特に20歳代以下の若年層による大麻事犯が相次いで検挙されている。このような情勢の中、令和6年12月には、大麻の施用罪を含む大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律が施行された。薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は社会の安全を脅かす重大な問題である。

 
図表4-19 薬物事犯の検挙人員(令和6年)
図表4-19 薬物事犯の検挙人員(令和6年)
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(1)犯罪組織等の動向

① 暴力団による薬物事犯

令和6年中の薬物事犯の検挙人員(1万3,462人)のうち、暴力団構成員等が17.4%(2,346人)を占めている。また、密売関連事犯(注)の検挙人員(767人)のうち、暴力団構成員等が32.9%(252人)を占めているところ、これらを薬物事犯別でみると、覚醒剤の密売関連事犯の検挙人員(387人)のうち50.6%(196人)を、大麻の密売関連事犯の検挙人員(318人)のうち14.8%(47人)を、それぞれ暴力団構成員等が占めており、覚醒剤や大麻の密売に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け

② 来日外国人による薬物事犯

令和6年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は947人と、前年より77人(8.9%)増加した。このうち、営利目的輸入事犯の検挙人員は168人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが36.3%(61人)を占めているほか、密売関連事犯の検挙人員は46人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが30.4%(14人)を占めている。

(2)薬物密輸入事犯の検挙状況

令和6年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は327件と、前年より92件(22.0%)減少し、検挙人員は395人と、前年より100人(20.2%)減少した。

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-20のとおりである。令和6年中は、検挙件数・人員とも前年より減少したが、覚醒剤の押収量は前年より増加し、覚醒剤に対する根強い需要が存在しているものと考えられる。

 
図表4-20 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成27年(2015年)~令和6年)
図表4-20 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成27年(2015年)~令和6年)
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CASE

稲川会傘下組織の幹部の男(55)らは、令和6年2月、タイから国際郵便を利用し、ボクシングミット内に隠匿して大麻を密輸入した。同年10月までに、同男ら4人を大麻取締法違反(営利目的輸入)等で逮捕し、大麻約3キログラムを押収した(警視庁、千葉及び神奈川)。

 
押収された大麻及びボクシングミット
押収された大麻及びボクシングミット

(3)薬物事犯別の検挙状況

① 覚醒剤事犯

令和6年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より増加し、全薬物事犯の検挙人員の45.5%を占めている。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員に占める暴力団構成員等の割合が高いことのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

令和6年中、大麻事犯の検挙人員は、全薬物事犯の検挙人員の45.1%を占め、前年に続いて高い水準にある。近年、面識のない者同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら大麻の売買を行う例もみられる。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

 
図表4-21 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(令和2年~令和6年)
図表4-21 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(令和2年~令和6年)
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