4 警察における人材育成の推進
(1)サイバー空間における脅威への対処に係る人材育成
都道府県警察では、サイバー事案に的確に対処するため、事案発生時には、多数の捜査員を従事させるとともに、警察本部等にサイバー事案への対処について高度な知見を有するサイバー犯罪捜査官等の専門捜査員を配置している。サイバー犯罪捜査官等は、民間企業での経験や情報通信技術に関する高度な資格の保有を条件として中途採用・特別採用をした警察官等であり、その知識や技能を生かして捜査の第一線で活躍している。
また、警察庁では、従前から情報通信に関する専門的な技術を有する者を技術系職員として採用し、実践的な研修を実施するなどして育成しており、これらの職員は、その専門知識を生かして、情報技術解析等の第一線で活躍している。
さらに、サイバー特別捜査部においては、全国警察からサイバー分野の知見を持つ有為な人材を登用して重大サイバー事案対処に当たっており、同部での経験は、捜査員の能力を向上させ、帰任後の都道府県警察全体の対処能力向上にも寄与している。
こうしたサイバー空間における脅威への対処のための人的基盤を強化するため、警察では、高度な専門的知識・技術を有する人材を確保・育成するための取組を計画的に推進するとともに、高度な専門的知識・技術を有するサイバー人材が、その専門性を継続的に生かすことができるようなキャリアパスの管理等を部門横断的かつ体系的に実施している。
CASE
徳島県警察では、サイバー犯罪捜査官(中途採用・特別採用)の採用枠として、技術・経験に応じた採用区分を設け、幅広い人材の登用に努めている。令和6年度には、特に高度な技術・経験を有する者1人を捜査幹部となる警部として採用し、サイバー部門において業務に従事させている。

徳島県警察採用募集ポスター
MEMO 官民人事交流制度を活用した情報集約・分析業務の高度化
警察庁では、官民人事交流制度により、サイバーセキュリティ関連企業出身の職員を幹部警察官として採用し、当該職員が民間企業で培った最新の知見を、警察庁サイバー警察局及びサイバー特別捜査部におけるサイバー事案に関する情報集約・分析業務の一層の高度化に生かしている。
(2)サイバーコンテストの開催
警察庁では、全国の都道府県警察の捜査員等を対象に、サイバー空間における脅威への対処に関する知識・技能を競うサイバーコンテストを開催している。同コンテストでは、実際の事案を想定したシナリオを使用し、捜査員等の知識・技能の向上を図るとともに、全国の優秀な人材の発掘に取り組んでいる。

警察庁サイバーコンテスト
CASE
和歌山県警察では、令和6年10月、サイバーコンテストを開催し、県下12警察署の警察官が出場した。同コンテストでは、会場として、令和5年度に整備された研修訓練施設である「サイバー人材育成トレーニングルーム」を活用し、サイバー空間における脅威への対処能力の向上及び素養のある人材の発掘を図った。

和歌山県警察サイバーコンテスト
(3)捜査員等に対する実践的教育訓練
サイバー空間の利用が広がる中、どのような捜査分野においてもサイバー関係の知識が不可欠となってきており、サイバー部門のみならず全ての部門の幹部警察官にサイバーリテラシーに関する十分な知識を身に付けさせることが必須となっている。
こうした状況を踏まえ、令和7年4月、警察大学校にサイバー部門に係る研修・訓練に特化したサイバー警察教養部を新設した。サイバー警察教養部では、都道府県警察のサイバー部門においてサイバー事案の対処に当たる捜査員等を対象とした実践的な研修のほか、都道府県警察の各部門の幹部警察官に対するサイバーリテラシーに係る研修等を体系的・効果的・一元的に実施している。

また、警察大学校では、平成30年度以降、サイバーレンジ(注)を導入し、仮想環境下において実際の犯行手口や被害状況を再現することにより、最新の手口により行われるサイバー事案に対する実践的な捜査演習や、大規模なサイバー攻撃の被害事案を想定した訓練等を実施している。
さらに、警察庁では、高度な解析技術を持つ職員の育成を行うため、最新の技術を有する民間企業や研究機関との技術協力を推進している。
注:サイバー事案に対する実践的な訓練を行うためのサイバー演習環境
MEMO サイバーセキュリティ対策研究センターにおける取組
警察大学校サイバーセキュリティ対策研究センターでは、ハードウェア及びソフトウェアに関する知識や技術を駆使して、電子機器の解析に関する研究や、犯罪に悪用され得る最先端の情報通信技術に関する研究を行っている。
自動運転システムの解析に関する研究
自動運転システムを備えた自動車の中には、車載装置と外部のビーコンやサーバとの双方向通信による情報を基に運行するものが開発されているが、こうした通信を介して車載装置のぜい弱性を悪用された場合には、重大な事件・事故につながるおそれがある。こうした場合、当該自動車に記録された情報が捜査に必要となり得ることから、サイバーセキュリティ対策研究センターでは、自動運転システムに関する研究を行っている。令和6年度は、自動車に対するサイバー攻撃に備え、学術機関及び民間企業の知見を活用し、自動車におけるセキュリティインシデントの解明に関する共同研究を行った。

自動運転システムの解析に関する研究状況