警察白書の刊行に当たって

今、我が国における組織犯罪をめぐる情勢が大きく変化しています。匿名・流動型犯罪グループの台頭です。
昨年発生した「闇バイト強盗」と称される一連の事件に象徴されるように、匿名・流動型犯罪グループは、その「匿名性」と「流動性」を特徴とし、詐欺や強盗・窃盗といった様々な犯罪に関与しています。匿名・流動型犯罪グループは、暴力団のようなはっきりとした組織構造やメンバーを持ちません。多様な資金獲得活動によって得た収益を吸い上げる中核部分は陰に隠れて匿名化し、一方、メンバーは「闇バイト」などによって次々と勧誘され、逮捕されれば「使い捨て」にされるなど、メンバーを入れ替えながら犯罪を繰り返します。
匿名・流動型犯罪グループは、カネを得るためにあらゆる犯罪を行っており、特殊詐欺、強盗のほか、最近被害が増加しているSNS型投資・ロマンス詐欺への関与もうかがわれます。
国民の皆様の不安を払拭するためにも、こうした犯罪の検挙と抑止が急務です。
そこで、本年は、第1部で、「匿名・流動型犯罪グループに対する警察の取組」と題する特集を組み、匿名・流動型犯罪グループの特徴や動向、同グループへの対策について紹介しています。
また、本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、全国警察が一丸となって、石川県警察と共に、救出救助活動、交通対策、被災地における犯罪抑止など、様々な活動に従事しました。国家公安委員会委員長として、被災地における安全・安心のためのこうした任務の重要性を、改めて認識するとともに、今後の災害対策を更に充実させる必要があると考えています。
特に国民の皆様にお伝えしたい事項を取り上げて解説するトピックスでは、「令和6年能登半島地震への対応について」を含む5つのテーマを取り上げています。
第2部(本編)では、最新の治安情勢や警察活動の現況等を分野ごとに紹介しています。
このほか、「警察活動の最前線」として、現場で活躍する警察職員が仕事上の苦労ややりがい等についての率直な心情をつづった手記等を掲載しています。
この白書が、警察行政に対する国民の皆様の御理解を深めていただく一助となりますとともに、今後の警察活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。