警察白書の刊行に当たって

<治安への認識>
社会に大きな不安を与える事例が相次いで発生しています。高齢者を主たる被害者とする特殊詐欺の認知件数は増加しており、SNSで実行犯を募集する手口は、特殊詐欺のみならず、強盗や窃盗にまで拡大しています。また、本年に入っても、和歌山県において岸田内閣総理大臣の演説会場で爆発物が投てきされる事案、長野県において猟銃等により、警察官を含む4名の方が殺害される事案が発生するなど、殺傷能力の非常に高い凶器を用いた凶悪事件が発生しています。
昨今、科学技術の発展をはじめ社会情勢はめまぐるしいスピードで変化しています。こうした変化は、例えば、インターネットの普及により、武器や爆発物の製造方法等の情報が容易に入手できるようになるなど、社会と共に変化する治安面にも多大な影響を与えています。
そして、日本は「安全・安心な国」であると多くの国民の皆様が考えているものの、近年のこうした治安状況を懸念している声も多く聞かれます。
このような複雑化する治安課題に対処していくため、警察は、高度な専門性等を有する人材が相互に力を合わせ、先見性、発想力と創造性をもって課題に取り組む組織を構築することが求められています。
<本年白書の特集等>
そこで、本年は、第1部で、「複雑化する社会に適応する警察組織と多彩な人材」と題する特集を組み、各種の治安課題に的確に対処するための原動力である多彩な職員の姿や、こうした人材が活躍することができる環境の整備のための取組について紹介しています。
また、特に国民の皆様にお伝えしたい事項をトピックスとして取り上げて解説しています。本年は、昨年発生した安倍晋三元内閣総理大臣に対する銃撃事件の反省・教訓を踏まえ、新たな警護要則の下で行っている「要人警護の強化に係る警察の取組」や、国内外要人の身辺の安全と行事の円滑な進行の確保のため、総力を挙げて行った「G7広島サミット等の開催に伴う警備」等を取り上げています。
第2部(本編)では、最新の治安情勢や警察活動の現況等を分野ごとに紹介しています。
このほか、「警察活動の最前線」として、現場で活躍する警察職員が仕事上の苦労ややりがい等についての率直な心情をつづった手記等を掲載しています。
この白書が、警察行政に対する国民の皆様の御理解を深めていただく一助となりますとともに、今後の警察活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。