第4章 組織犯罪対策

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和4年(2022年)中の薬物事犯の検挙人員は1万2,142人と、引き続き高い水準にあり、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は社会の安全を脅かす重大な問題である。

 
図表4-11 薬物事犯の検挙人員(令和4年)
図表4-11 薬物事犯の検挙人員(令和4年)
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(1)薬物事犯別の検挙状況

① 覚醒剤事犯

令和4年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の50.4%を占めている。また、押収量は289.0キログラムと、前年より399.8キログラム減少した。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち約4割を暴力団構成員等が占めていることのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は過去最多となった前年から横ばいで推移しており、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯である。近年では、面識のない者同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら大麻の売買を行う例もみられる。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

 
図表4-12 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成30年(2018年)~令和4年)
図表4-12 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成30年(2018年)~令和4年)
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(2)薬物密輸入事犯の検挙状況

令和4年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は294件と、前年より82件(38.7%)増加し、検挙人員は376人と、前年より108人(40.3%)増加した。

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-13のとおりである。令和4年中は、覚醒剤の押収量が前年より減少したものの、暴力団構成員等や来日外国人の検挙人員は前年より増加し、覚醒剤密輸入事犯の検挙件数は、3年ぶりに100件を超えており、覚醒剤に対する根強い需要が存在しているものと考えられる。

 
図表4-13 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成25年~令和4年)
図表4-13 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成25年~令和4年)
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(3)犯罪組織等の動向

① 暴力団による薬物事犯

令和4年中の薬物事犯の検挙人員(1万2,142人)のうち、暴力団構成員等が24.0%(2,915人)を占めている。また、密売関連事犯(注)の検挙人員(626人)のうち、暴力団構成員等が33.9%(212人)を占めているところ、これらを薬物事犯別でみると、覚醒剤の密売関連事犯の検挙人員(280人)のうち53.6%(150人)を、大麻の密売関連事犯の検挙人員(305人)のうち20.0%(61人)を、それぞれ暴力団構成員等が占めており、覚醒剤や大麻の密売に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け

② 来日外国人による薬物事犯

令和4年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は652人と、前年より62人(8.7%)減少した。このうち、営利目的輸入事犯の検挙人員は150人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが48.0%(72人)を占めているほか、密売関連事犯の検挙人員は36人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが38.9%(14人)を占めている。

CASE

六代目山口組傘下組織幹部の男(53)らは、令和3年2月から令和4年2月にかけて、石川県内等において、覚醒剤の密売等をした。令和4年11月までに同男ら9人を覚醒剤取締法違反(営利目的所持等)等で逮捕するとともに、同男らから覚醒剤を購入するなどした客等40人を覚醒剤取締法違反(所持等)等で検挙した(石川、富山及び福井)。



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