警察白書の刊行に当たって

<痛恨の極み>
去る令和4年7月8日、奈良市内で街頭遊説中の安倍晋三元内閣総理大臣が凶弾に倒れました。警察による警護が行われていたにもかかわらず、このような事態を招いたことは、痛恨の極みであり、警察を所管する国務大臣として慚愧(ざんき)に堪えません。国家公安委員会では、事件後直ちに警察庁に対し、警察がこの事案を防ぐことができなかった要因の検証と対策の検討を指示し、議論を重ねました。本年8月25日、警察庁は、この検証・見直しに関する報告書を取りまとめました。要人の警護は、国の治安のみならず、民主主義の根幹にも関わる重要事項です。今回の報告書を踏まえた警護の見直しや高度化を確実に推進することはもちろん、一つ一つの警護から経験と反省を得て不断の見直しを行うことが求められます。全国の警察職員が、「警護対象者の身辺の安全を確保する」という職務を完遂することで、国民の期待と信頼に応えることを心から期待しています。
<本年白書の特集>
現代社会は、目覚ましいスピードで変化し続けています。目まぐるしい技術革新は生活の利便性を向上させている一方、先端技術等の悪用による脅威への懸念も生じさせています。
サイバー空間は、その具体的な例です。サイバー空間のもたらす大きな便益の一方、サイバー空間における脅威は極めて深刻な情勢となっています。警察では、サイバー事案への対処能力の強化を図るため、本年4月、警察庁にサイバー警察局を新設するとともに、関東管区警察局にサイバー特別捜査隊を新設したところです。
一方、我が国社会の人口減少・少子化の進展に伴い、警察としても、マンパワーの維持・向上に課題が生じています。警察には、先端技術等を活用し、こうした社会の変容に適応し続けることにより、国民の安全安心を守ることが求められています。
そこで、本年は、「技術革新による社会の変容と警察の新たなる展開」と題し、技術革新がもたらす様々な社会の変化やそれにより生ずる新たな脅威への対策と科学技術の利活用を通じた警察活動の高度化・合理化に向けた取組について、特集を組んで紹介しています。
このほか、身近な活動をよく知っていただくため、「警察活動の最前線」として、現場の第一線で活躍する警察職員の苦労ややりがい等をつづった手記等も掲載しています。
この白書が、我が国の警察行政と警察活動に対する国民の皆様の御理解を深めていただく一助となりますとともに、今後の活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。