第7章 警察活動の支え

4 警察の情報通信

(1)警察活動を支える警察情報通信

警察では、事件、事故又は災害がどこでどのように発生しても対応できるよう、各種の情報通信システムを開発し、これを全国に整備するとともに、その高度化に努めている。

具体的には、独自に整備・維持管理をしている無線多重回線、電気通信事業者の専用回線、衛星通信回線等により構成される全国的なネットワークにより、警察庁、管区警察局、警察本部、警察署、交番等を結ぶほか、車載通信系(警察本部を中心に警察署、パトカー、警察用航空機等を結ぶ無線通信系)、署活系(警察署を中心に所属する警察官を結ぶ無線通信系)、携帯通信系(機動隊による部隊活動等、局所的な警察活動での無線通信系)といった各種の移動通信システムを構築することにより、警察業務を遂行する上で不可欠な情報の伝達を実現している。

また、指名手配被疑者、行方不明者、盗難車両等に関する情報を警察庁に登録することにより、第一線の警察官からの照会に即時に回答したり、運転免許に関する情報を一元的に管理することにより、適切な行政処分を実施したりするための警察情報管理システムを全国に構築することで、第一線の警察活動を支えるとともに、迅速な警察行政に貢献している。

こうした警察情報通信の円滑な運営を図るため、国の機関である全国の情報通信部に、情報通信に関する専門的な技術を有した職員を配置している。

 
図表7-7 警察活動を支える警察情報通信
図表7-7 警察活動を支える警察情報通信

MEMO 高度警察情報通信基盤システム(PIII)の現場での活用状況

平成31年4月から全国警察で運用を開始したPIII(ポリストリプルアイ)(注1)は、画像収集機能や多言語翻訳機能のほか、スマートフォンやタブレット端末とIPR形警察移動無線通信システム(注2)の無線機とをペアリングすることにより、通常では警察無線が届かない地域等での無線通話を可能とする機能等を搭載しており、各種警察活動で活用されている。

注1:18頁参照(特集)

注2:Integrated Police Radioの略。警察が独自に整備・維持管理をしている耐災害性に優れた移動通信システムであり、通常では警察無線が届かない地域や災害現場においても、パトカー等に搭載された無線機が、その周囲の無線機の通信を臨時に中継することで、現場警察官相互の無線通話を可能にする機能等を有している。

 
図表7-8 PIIIの現場での活用状況
図表7-8 PIIIの現場での活用状況

(2)機動警察通信隊の活動

全国の情報通信部には機動警察通信隊が設置されており、現場の警察活動の基盤となる通信を確保するための様々な活動を行っている。具体的には、災害又は事故が発生した場合、警衛・警護警備や雑踏警備等を実施する場合、犯罪の捜査等を行う場合等に、警察本部と現場警察官との間の指揮命令や連絡等が円滑に行われるよう、無線の不感地帯対策(注)のほか、現場映像の撮影・伝送等の情報通信対策を講じている。

令和3年は、2020年東京大会に伴う警備の際や、「令和3年7月1日からの大雨」等の災害発生時等に出動した。

注:臨時の無線中継所の設置・運用を行い、警察無線が届かない地域等での無線通話を可能にすること。

 
「令和3年7月1日からの大雨」における警察部隊の活動状況の撮影・伝送
「令和3年7月1日からの大雨」における警察部隊の活動状況の撮影・伝送

(3)情報管理の徹底

警察では多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(注1)の策定・改正等により、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を進め、厳格な情報管理に努めている。

具体的には、警察内部ネットワークの外部ネットワークからの分離、外部記録媒体の利用制限等の情報流出等を防ぐための技術的環境を整備するとともに、警察職員の情報の取扱いに係る規範意識の向上のための取組を推進している。

また、警察庁及び全都道府県警察にCSIRT(注2)を設置し、警察情報管理システム等において情報セキュリティインシデント(注3)が発生した場合に、迅速かつ的確な情報の集約・分析、被害拡大を防止するための措置等を実施することとしている。

さらに、これらの取組の実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした情報管理業務監査及び情報セキュリティ監査を継続的に実施している。

注1:警察情報セキュリティに関する規範の体系

注2:Computer Security Incident Response Team の略

注3:不正プログラム感染事案等情報セキュリティの維持を困難とする事案



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