警察白書の刊行に当たって

警察白書の刊行に当たって

 
国務大臣 国家公安委員会委員長 棚橋 泰文

かけがえのない多くの命が失われ、東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生から、10年の歳月が流れました。「もう10年」「まだ10年」など、10年という歳月に寄せる想いは様々でしょうが、多くの方々の「当たり前」が一変したあの日とその悲痛な想いを忘れることはできません。東日本大震災以降も災害が相次いで発生する中、警察としても、これまで得られた1つ1つの教訓を生かし、災害に対する対処能力を一層向上させていく必要があります。

私たちの「当たり前」は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大でまた大きく変わろうとしています。第二次世界大戦以降で最も深刻な危機ともいわれ、社会全体で「新しい生活様式」を定着させる必要に迫られる中、日常生活や行政手続、経済活動におけるオンライン化も進んでおり、今やサイバー空間は国民生活に不可欠なものとなってきています。同時に、サイバー空間を悪用した事案も発生しており、国民の皆様に安心して利用していただくためにも、サイバー空間におけるセキュリティ確保は重要な課題です。こうした社会経済の変容に対応し、サイバーセキュリティ確保のための取組を的確に進めていくことが、国民の安全安心を守る警察として求められています。

本年は、こうした社会情勢の変化に応じて警察が講じている各種の対策について、上記のほか、「新型コロナウイルス感染症をめぐる警察の取組」等4つの特集を組んでおります。

また、「組織的に敢行される特殊詐欺に対する警察の取組」等、特に国民の皆様にお伝えしたい4つのテーマをトピックスとして取り上げています。

このほか、「警察活動の最前線」として、現場で活躍する警察職員が仕事上の苦労ややりがい等について率直な心情をつづった手記等を掲載しています。さらに本年は、「警察の1年」と題し、四季折々の警察活動を捉えた写真を集めたページを新たに加え、警察をより身近に感じていただくための工夫をしています。

この白書が、我が国の警察行政の現況と警察活動を国民の皆様にも理解していただく一助となりますとともに、今後の活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。



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