第7章 警察活動の支え

3 犯罪被害者支援

(1)警察による犯罪被害者支援

①基本施策

犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では図表7-6のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注)が導入されている。

注:令和元年末現在の要員総数 3万6,363人

 
図表7-6 犯罪被害者支援に関する主な施策
図表7-6 犯罪被害者支援に関する主な施策
②犯罪被害給付制度・国外犯罪被害弔慰金等支給制度

警察では、犯罪被害者等の経済的・精神的負担の軽減に資するため、犯罪被害給付制度及び国外犯罪被害弔慰金等支給制度を運用している。

 
図表7-7 犯罪被害給付制度
図表7-7 犯罪被害給付制度

犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者等に対し、犯罪被害者支援法(注)に基づき、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、昭和56年(1981年)1月に開始され、犯罪被害等の早期の軽減に重要な役割を果たしている。

国外犯罪被害弔慰金等支給制度は、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により死亡した日本国籍を有する者(日本国外の永住者を除く。以下同じ。)の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり200万円を、当該犯罪行為により障害等級第1級相当の障害が残った日本国籍を有する者に国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり100万円を、それぞれ支給するものであり、平成28年11月から開始された。

注:犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律

③犯罪被害者等の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

注1:163頁参照

注2:53頁参照

注3:53頁参照

注4:62頁参照

 
図表7-8 性犯罪被害者の特性に応じた施策
図表7-8 性犯罪被害者の特性に応じた施策
④関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県で、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等の関係機関・団体から構成される「被害者支援連絡協議会」が設立され、犯罪被害者支援のための相互の連携を図っている。

また、個々の事案において、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握した総合的支援を行うために、警察署等を単位とした連絡協議会「被害者支援地域ネットワーク」が構築されている。

さらに、よりきめ細かな犯罪被害者支援を行うため、全ての都道府県において、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定している。同団体では、犯罪被害者等の支援に関する広報啓発活動、犯罪被害等に関する相談への対応、犯罪被害者等給付金の裁定の申請の補助及び物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法による犯罪被害者等の援助を行っており、都道府県警察では、同団体に対し、犯罪被害者等の同意を得て、犯罪被害の概要に関する情報を提供することで、犯罪被害者等が同団体による支援を受けやすくなるよう努めている。

MEMO 「大切な命を守る」全国中学・高校生作文コンクール

犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようにするためには、犯罪被害者等の心情や抱えている問題について理解を深め、社会全体で思いやり、支えていくことが重要となる。

各都道府県警察では、次世代を担う中学生や高校生を対象に「命の大切さを学ぶ教室」を開催し、犯罪被害者等への配慮や協力意識のかん養に努めている。こうした意識を更に高めるため、警察庁では、これまで教室の受講生を対象とした作文コンクールを開催してきたが、令和元年度からは、犯罪被害者等への理解を更に深め共感を生む効果を高めるため、教室の受講生に限らず、全国の中学生や高校生を対象に、命の大切さに関する自らの考えや意見等についての作文を募る「「大切な命を守る」全国中学・高校生作文コンクール」を開催している。

警察では、こうした取組を通じて、社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくりに向けた気運の醸成を図っている。

(2)第3次犯罪被害者等基本計画の推進

犯罪被害者等基本法において、政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画を定めなければならないこととされている。

これに基づき、平成17年には犯罪被害者等基本計画が、平成23年には第2次犯罪被害者等基本計画がそれぞれ策定されていたところ、平成28年4月、それまでの基本計画の推進による成果を踏まえつつ、平成28年度から令和2年度までの5年間を計画期間とする第3次犯罪被害者等基本計画が策定された。

犯罪被害者等基本計画の作成及び推進に関する事務を担う警察庁では、関係府省庁が推進する具体的施策について、その進捗状況を定期的に確認するとともに、年次報告(犯罪被害者白書)等を通じて公表するなど、第3次犯罪被害者等基本計画の確実な推進を図っている。

 
図表7-9 第3次犯罪被害者等基本計画の概要
図表7-9 第3次犯罪被害者等基本計画の概要

MEMO 地方公共団体における総合的対応窓口の設置及び地域住民に対する周知の促進

警察庁は、地方公共団体に対して、犯罪被害者等に適切な情報提供等を行う総合的対応窓口の設置を要請していたところ、平成31年4月現在、全ての地方公共団体で総合的対応窓口が設置された。

今後は、その機能の充実を促進し、犯罪被害者等の生活支援を効果的に行うことが課題であり、地方公共団体に対して、研修会等の様々な機会を通じ、総合的対応窓口の機能の充実等を要請している。また、新たな取組として、総合的対応窓口に関するポスター等の作成・配布をはじめ、ウェブサイトやSNSを利用した広報を実施しており、犯罪被害者等のみでなく、一般の方々に対する総合的対応窓口の周知を促進している。

 
総合的対応窓口ポスター
総合的対応窓口ポスター


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